結論
幸楽苑は、東北と関東を中心に直営346店のラーメン店を営む。福島県発で、麺と餃子を自社の2工場でつくる。筆者の結論は割高だ。10年で測った価値は、今の時価総額のおよそ4割にとどまる。
2026年3月期は営業利益15億円、利益率5.1%で、赤字続きだった数年前から大きく戻った。純現金も35億円ある。回復は本物だと筆者は見る。ただし、この水準は過去20年の山に近く、そこから先の積み上げは少ない。
外食はもともと人件費と食材費に利益が削られやすい。売上は10年で年率2.6%縮み、赤字の期も4回あった。店を増やして規模を取る計画はあるが、前の計画は何度も崩れた。
中立の10年後は、売上約410億円、営業利益約21億円、純利益約15億円と置く。倍率は約11倍。余った現金は新工場などの投資に回るとみて分けていない。中立の時価総額でも今を3割弱下回り、確率を掛けて割り戻した価値は今を6割ほど下回る。
バリュー投資の目では、立て直しの成果を認めつつ、先の利益に払う値段には慎重になる。会社が元気に見える時期ほど、数字の持続性を疑うのが筋だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くない会社になった途中だ。ただし、持ち続けたいと言い切れる会社ではない。事業は単純で、味と値段で客が来る。10年後もラーメンは残るだろう。しかし利益率は薄く、人件費の上昇と値上げの綱引きで勝ち続けられるかは見通せない。
資本の使い方は評価できる。赤字の時期に財務を立て直し、今は設備投資と配当を無理のない範囲で進めている。買収で規模を追わず、本業に集中している点も良い。
一方、利益が出始めてまだ2年で、過去の赤字からの回復を『この先も続く力』とは見なせない。10年先の利益を確かな数字として置くには、実績が足りない。安全域の観点では、今の値段は回復が続く前提を先に払っている。
数字の安全域だけでなく、経営の誠実さも見る。幸楽苑は苦しい時期に店を閉じ、メニューを絞り、借入を返した。この実行力は評価できる。だが一度崩れた会社の回復は、次の景気の谷で試される。
何で稼ぐ会社か
幸楽苑は、ラーメン専業の外食会社だ。2026年3月末で366店、うち直営346店、フランチャイズ(国内11・海外9)20店。17都県に店があり、2024年10月に子会社を吸収して、会社そのものがラーメン事業になった。
主力は看板の中華そばで、価格を抑えた商品とセットメニューで家族連れと一人客の両方を取る。ロードサイド店が中心で、ロードサイド店は24時までの営業を広げている。麺と餃子は郡山と小田原の2工場でつくり、店に届ける。製造を自社で持つのは原価の安定と味の統一に効くが、2工場に集中するリスクにもなる。
2026年3月期の直営店売上は290億円。人手はパート・アルバイトが約2,500人と大半を占める。賃金の上昇が最も効く。新しい中期計画(2027年3月期〜2029年3月期、暫定)は、最終年度に400店、年10〜20店の出店と年21店の改装を掲げる。2028年12月に郡山で新工場が動く予定で、投資額は開示されていない。
商品は中華そばを軸に、餃子、チャーハン、セットを組み合わせる。客単価は低く、来店頻度で稼ぐ型だ。店の運営はパートが中心で、店長の裁量が売上に効く。
優良さと弱いところ
優良とまでは言えない。堀、つまり他社が真似できない強みは、自社工場による味と原価の安定と、全国に張った店舗網にとどまり、立地とメニューの差は他のチェーンとさほど大きくない。ラーメンは価格の比較がしやすく、値上げが通りにくい。
財務は大きく改善した。純現金35億円、自己資本比率53%、利払いの負担はほぼない。ただし、自己資本は2023年3月期に8億円まで細り、赤字の期が4回もあった事実は消えない。これだけ短い間に傷んだ会社を、安定した事業とは見ない。
経営は「原点回帰」で、メニューの絞り込み、店舗の品質の立て直し、不採算店の整理を進めてきた。結果は出ているが、まだ2年にすぎない。利益率5%は日高屋などの好調な同業と比べて高くない。大株主はラニケアコーポレーションが11%台、信託口が7%台。創業家や特定の支配株主が動かす会社とは言いにくく、少数株主に近い立場から見られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のラーメン市場は店の数が多く、地域ごとに強い独立系と、ハイデイ日高や王将フードサービス、壱番屋のような全国チェーンが混在する。幸楽苑は中価格帯のロードサイド型で、客を取り合う相手は餃子の王将、ラーメンの専門店、ファミレス、牛丼やうどんの大手になる。
外食全体では、2023年の市場規模は24兆円台で、コロナ前の水準へ戻る途中だ。物価3%の世界では、食材と人件費の上昇を値上げで吸収できるチェーンと、できないチェーンの差が広がる。幸楽苑は麺と餃子を自社工場でつくるため、食材の調達力ではやや有利だが、小麦と豚肉の価格に左右される。
人手不足も深刻だ。最低賃金は毎年上がり、パート比率の高い会社は直撃を受ける。省人化の設備投資(配膳ロボット、調理の自動化)ができる会社に利益が偏る。景気の谷では、外食回数が減り、低価格チェーンへの下方シフトが起きる。ラーメンは価格が低いので谷に比較的強いが、客数が減れば人件費の固定部分が重い。
M&Aでは、中小チェーンの事業承継と統合が続いている。幸楽苑が買われる側になる可能性も、外部の推計では10年で2割ほどある。
資本政策と M&A
配当は『水準の向上と安定化』が方針だ。2026年3月期は中間無配、期末は総額約1.9億円で、配当性向は2割に届かない。利益が戻ったので増やす余地はある。自社株買いの実績は確かめられなかった。
投資は店舗の改装と出店、郡山の新工場が中心だ。2026年3月期の設備投資は約17億円、2026年4月以降の計画は約15億円で、自己資金で賄う。新工場の総額は未開示で、純現金35億円の使い道として大きい。
株主優待は、有報の本文では確かめられなかった。10年の還元には足していない。M&Aは近年なく、子会社を吸収して事業を一本化した。第三者割当やTOBの記録も見当たらない。
店舗の土地・建物の賃借は、リースの約束として毎年払う固定費だ。新リース会計基準(2028年3月期から)で貸借対照表に載るが、数字は今と同じ形(賃借料を営業費用に入れた形)にそろえた。償却は、今ある設備は取得時の値段のままで、新工場と改装の新しい分だけ新しい値段で足されると考えた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
幸楽苑は不採算店の整理とメニューの絞り込みで、利益率を5%台に戻した。第1四半期も売上は約10%増え、経常利益は2割以上伸びた。今期の会社予想(営業利益16億円)は確実に見え、来期は5.5%まで上がる予想だ。
新中計は最終年度に400店。年10〜20店の出店は、自己資金で賄える範囲だ。純現金35億円と営業のキャッシュで、新工場も建てられる。工場の稼働で原価と物流が改善すれば、利益率は6%台に乗る。
外食の需要は物価の上昇で名目が伸びる。値上げが通り始めている。ロードサイド店の24時営業と改装が、客数の下支えになる。10年で営業利益が2割増えるだけで、今の時価総額は妥当になる。
加えて、同社はこの2年で営業利益を15億円まで戻し、純現金も35億円ためた。財務は攻めに転じられる状態で、他の外食が人手不足で出店を抑える中、立地を押さえる余地もある。
外食の中でもラーメンは低価格で、景気が悪くなると中価格帯のレストランから客が移ってくる。この下方シフトの追い風は、他の業態より強い。
慎重な見方
利益率5%は、過去20年の幸楽苑の山(9%)から見ても高くない一方、直近8年の平均よりはるかに高い。回復は強い値上げと店舗整理の一巡による面が大きく、同じ勢いは続かない。売上は10年で年率2.6%縮み、赤字は4回あった。
人件費は毎年上がる。パート約2,500人を抱える会社は、最低賃金の上昇がそのまま利益を削る。ラーメンは値上げがしにくく、競合は多い。自社工場も2か所に集中し、事故や災害で止まれば全店に響く。
新工場の建設費は未開示で、純現金35億円を食う可能性が高い。ロードサイドの出店競争が激しい中で、400店の計画は前の計画と同じ道をたどりかねない。株主優待も大株主の動きも読みにくい。
また、足元の増収の一部は値上げによるもので、客数が戻っているとは確かめられていない。値上げ頼みの増益は、物価の上昇が一服すれば止まる。
さらに、大株主の持分は11%台と小さく、経営を引き締める強い支配株主もいない。環境が悪化した時に、資本の使い方が少数株主に向くとは限らない。
どちらに重みを置いたか
事業の立て直しは本物だが、利益の持続性に慎重な見方の指摘が上回る。回復の勢いを素直に10年に延ばすと、中立でも今の時価総額を3割弱下回る。確率は中立を中心に、やや悲観と悲観を合わせて4割弱、楽観とやや楽観で3割に置いた。立て直しの実行力は評価するが、10年の収益力として置くには足りない。事業の質では中立、収益の持続性では慎重な見方が上回る。そのため確率は、楽観側に厚く寄せず、中立を軸にやや悲観側へ置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 998 円191 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 246 円47 億円)。 今の値に割り戻すと 603 円115 億円、今との差 −49.8%、 期待の年率 +0.4%(資本コスト 8.6%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,016 円386 億円 | 444 円85 億円 | +104.9% | +7.4% | 197 円38 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,524 円291 億円 | 366 円70 億円 | +57.4% | +4.6% | 416 円80 億円 |
| 中立 | 33% | 1,196 円229 億円 | 288 円55 億円 | +23.5% | +2.1% | 489 円94 億円 |
| やや悲観 | 25% | 372 円71 億円 | 131 円25 億円 | −58.2% | −8.3% | 126 円24 億円 |
| 悲観 | 12% | 115 円22 億円 | 21 円4 億円 | −88.7% | −19.6% | 16 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 998 円191 億円 | 246 円47 億円 | +3.6% | +0.4% | 1,244 円238 億円 |
今の株価時価総額 1,201 円230 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.6% を下回るほど割高。
楽観 8% 新工場と出店が実り利益率が6%台に乗る 利益 24 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,016 円386 億円
新工場の稼働で原価と物流が改善し、中計の400店は2030年代前半に超える。出店は年15店ほどで、直営は450店に近づく。物価の中で値上げが続き、客数は横ばいを保つ。営業利益率は6.5%と過去の山(9%)を下回るが、直近の5.1%より高く、自動化と原価の合理化が実る。FCも海外を中心に40店へ広がる。配当は利益に合わせて増え、増配と自社株買いが続く。
海外のFCも東南アジアを中心に増え、ロイヤルティ収入が積み上がる。新工場の稼働は他社への外販の余地も生む。純現金は十分に厚く、増配と自社株買いの両立が可能になる。
経営陣は株主還元に前向きになり、総還元性向を高める。
- 直営店(ラーメン店):数量 440(直営店舗数換算(客数の増減を店舗数で表す))× 価格 1.12(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 494 億円・営業利益 32 億円。営業利益率6.5%
- フランチャイズ・その他:数量 40.0(FC店舗数(店))× 価格 0.29(1店舗当たり収入(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。営業利益率25.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.6% が k 8.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.98 倍、時価総額 362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の400店は達成しても、利益率6%超まで上げる展開は、直近の回復が2年にすぎないことを考えると確率は低い。
やや楽観 22% 会社の中計に近い展開 利益 19 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 1,524 円291 億円
新工場と改装が計画どおり効き、直営は400店まで増える。客数はやや目減りするが、値上げが通って名目の売上は伸びる。営業利益率は5.5%と会社の来期予想(5.5%)に並び、そのまま10年保つ。人件費の上昇は自動化で吸収する。海外FCは34店。ただし利益率の上がり方は中計の終盤の目標に届かず、競合と価格を張り合う分だけ頭打ちになる。
本社費も物価で増えるが、店の規模の拡大で吸収できる。新店は年10〜15店で、投資の回収は4〜5年と見る。配当は利益の4割台で、緩やかに増える。
景気の谷が来ても、低価格の強みで客数の落ち込みは浅い。海外FCの収入も小さく積み上がる。
- 直営店(ラーメン店):数量 400(直営店舗数換算(客数の増減を店舗数で表す))× 価格 1.12(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 449 億円・営業利益 25 億円。営業利益率5.5%
- フランチャイズ・その他:数量 34.0(FC店舗数(店))× 価格 0.29(1店舗当たり収入(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。営業利益率25.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 8.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.37 倍、時価総額 269 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期予想と来期予想が実現し、その水準が保たれる筋書き。会社の計画の達成実績は乏しいが、直近2年は予想をほぼ達成した。
中立 33% 回復した水準がそのまま続く 利益 15 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,196 円229 億円
回復した今の水準が10年続く。直営は370店まで増え、客数はやや減る(店舗数換算で355)。1店舗当たりの売上は物価並みに上がる。営業利益率は5.0%で、直近の5.1%と同じ水準にとどめる。人件費と食材費は物価で上がり、償却は新工場と改装の分だけ増える。FCは28店。配当は利益の4割ほどに引き上げるが、自社株買いは大きくない。郡山の新工場の建設に純現金の一部が回る。
FCの収入は小さな上積みにとどまる。物価と同じ速度で人件費が増える前提で、営業利益は名目で3割ほど増えるが、実質では横ばいに近い。現金の使い方は投資と配当に分かれ、自社株買いは小さい。
- 直営店(ラーメン店):数量 355(直営店舗数換算(客数の増減を店舗数で表す))× 価格 1.12(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 398 億円・営業利益 20 億円。営業利益率5.0%
- フランチャイズ・その他:数量 28.0(FC店舗数(店))× 価格 0.29(1店舗当たり収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。営業利益率25.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 8.55% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.81 倍、時価総額 202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外食の人件費上昇と値上げの綱引きの中心値。直近の水準を保つが、積み上げは置かない。
やや悲観 25% 人件費に負けて利益が薄いまま 利益 6 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 372 円71 億円
人件費の上昇と客数の減少で、利益率が2.8%まで戻る。店舗数は320店に減り、客数も8%落ちる。値上げは競合に阻まれ、客単価の伸びは物価を下回る。新工場の償却が先に出て、利益を削る。自己資本は目減りし、配当は据え置きか減配になる。FCは18店に減る。2018年から2023年の苦境に似た、利益が薄いままの10年だ。
新店の採算が既存店に劣り、出店を絞る。24時営業の延長も人手が集まらず広がらない。新工場は稼働するが稼働率が上がらず、償却と固定費が重くなる。
景気の谷では、客単価を守るために値引きに頼る場面が増え、利益率をさらに押し下げる。
- 直営店(ラーメン店):数量 295(直営店舗数換算(客数の増減を店舗数で表す))× 価格 1.09(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 321 億円・営業利益 9 億円。営業利益率2.8%
- フランチャイズ・その他:数量 18.0(FC店舗数(店))× 価格 0.29(1店舗当たり収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。営業利益率20.0%
倍率:事業の純利益6億円・事業ROE約5%でk 8.55%以下なので、PERの上限は1÷k=11.4倍。利益が薄く質が低いので上限の約7.5割の8.5倍に置いた。
確率:売上が10年で年率2.6%縮んだ実績と、4回の赤字の歴史から、利益が戻りきらない筋書きを厚く置く。
悲観 12% 赤字に戻り立て直しが再び必要になる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 115 円22 億円
人件費と食材費の上昇を値上げで吸収できず、営業赤字に戻る。店舗数は270店に減り、客数は大きく落ちる。新工場の稼働直後に売上が減り、固定費が重くなる。減損が出て、自己資本が目減りする。配当は止まり、純現金が赤字で食われる。FCは8店に縮む。過去に起きた2021年〜2023年の赤字が再来し、立て直しが再び必要になる筋書きだ。
最終的には店舗網の再編と、同業や投資ファンドへの売却が現実的な選択肢になる。少数株主の価値は、純現金と店舗の残りの価値に近づく。賃借の約束が重く、閉店のたびに特別損失が出る。
- 直営店(ラーメン店):数量 220(直営店舗数換算(客数の増減を店舗数で表す))× 価格 1.01(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 222 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-1.0%
- フランチャイズ・その他:数量 8.0(FC店舗数(店))× 価格 0.29(1店舗当たり収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率20.0%
倍率:赤字で稼ぐ力がなく、純利益×PERでは測れない。純現金から赤字と新工場の投資を引いた売れる資産(約22億円)を床とし、今の自己資本71億円に掛けたPBRに直すと約0.31倍。
確率:2021年〜2023年に3年連続の営業赤字を出した実績がある。ラーメン専業で単一事業のため、再び崩れる確率を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(ラーメン店)
国内の直営346店。ロードサイドを中心に中華そばと餃子を売る。
| 数量直営店舗数換算(客数の増減を店舗数で表す) | 価格1店舗当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 346 | 0.84 | 290 | 15 |
| 10 年後 中立 | 355 | 1.12 | 398 | 20 |
取り方:2026年3月期の直営店売上289.6億円(有価証券報告書)を2026年3月末の直営346店で割った。数量は店舗数換算で、客数が減る筋書きは店舗数換算を減らして表し、価格は物価3%(10年1.34倍)の名目に客単価の変化を掛けた。営業利益は全社15.2億円から他を引いた推定。
フランチャイズ・その他
国内11・海外9のFC店からの収入と、麺・餃子の外販など。
| 数量FC店舗数(店) | 価格1店舗当たり収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 0.22 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 28.0 | 0.29 | 8 | 2 |
取り方:連結売上294.0億円から直営店売上289.6億円を引いた約4.4億円を、FC20店で割った。営業利益は推定で、利益率は約23%と高い(ロイヤルティと製造品の外販のため)。
リスクと懸念
人件費の上昇
パート・アルバイト約2,500人を抱える。最低賃金の引き上げと人手不足で、時給は毎年上がる。値上げで吸収できなければ、利益率5%はすぐに削られる。
単一事業と2工場への集中
事業はラーメン一本。麺と餃子の製造は郡山と小田原の2工場に集中している。食品事故や災害で工場が止まれば全店に影響し、ブランドの信頼も傷つく。
新工場の投資と償却
2028年12月稼働予定の郡山新工場は、投資額が開示されていない。純現金35億円の相当部分を使う可能性があり、稼働後は償却が増えて利益率を押し下げる。
過去の赤字と信用
2021年〜2023年に営業赤字が続き、自己資本は8億円まで細った。利益が戻って2年にすぎず、景気の谷や食材高が重なると、再び崩れる土台は残る。
食材と為替
小麦・豚肉・油などの価格と、円安150円の仕入れコストが原価に響く。自社工場で一部吸収できるが、値上げが通らない時期は利益を削る。
店舗の賃借の固定費
ロードサイドの土地・建物は賃借が多い。売上が落ちても賃料は減らず、閉店には違約金や減損が伴う。新リース会計基準で数字の形も変わる。
今後の分かれ目
- 既存店売上が1年以上、物価を上回って伸び続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。値上げが客数を減らさずに通っている証拠になる。
- 営業利益率が2年続けて5%を割ったら
- 回復の一巡とみて、中立から下の筋書きに重みを移す。
- 郡山新工場の投資額が開示され、純現金を大きく超えたら
- 借入や増資の可能性を含め、悲観側の床を下げる。
- 出店が年10店以上のペースで続き、新店の採算が既存店並みになったら
- 中計の400店が現実味を帯びる。やや楽観の確度を上げる。
- パートの時給上昇が値上げを上回るペースで続いたら
- 営業利益率の前提を下げる。
- 他社が幸楽苑の株式の取得を表明したら
- TOBの可能性を含め見直す。ただし筆者は本質価値を基準にし、買収の期待で上げない。
見ておくもの
- 既存店売上・客数・客単価の月次
- 営業利益率と人件費率
- 純現金の推移と新工場の投資額
- 出店・閉店の数(直営・FC)
- 最低賃金の改定と時給の動き
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに、店舗数換算×1店舗当たり売上(名目)で積み、客数の減は店舗数換算を減らして表したので価格に物価を掛けても二重がけにならない。営業利益率は過去12年の山(2026年3月期の5.1%)以下を中立にし、楽観だけ6.5%に置いた(自動化と新工場の原価改善。過去20年の山9%は下回る)。本社費は物価で増やした。資本コストは基本7.5%にquality +1.3%を足した8.8%。ROEがkを少し超える中立〜やや楽観は、PERの下限1÷kと正当化PERの上限の間に置いた。今の株価やPER(約19倍)は見ていない。悲観は稼ぐ力がなく、純現金から赤字と新工場の投資を引いた売れる資産の床で置いた。減価償却は物価で増やさず、新工場と改装の新しい分だけ新しい値段で足される形で利益率に含めた。投資は自己資金で賄い、還元は利益の4割ほどに抑えた。優待は確かめられず還元に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.98 倍・やや楽観 PER 11.6→14.37 倍・中立 PER 11.4→13.81 倍)。
資本コスト 8.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.3% を足した(決まり v2)。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.80% → 8.55%。