結論
リンガーハットは、野菜たっぷりの長崎ちゃんぽんと皿うどんで知られる外食チェーンだ。売上の8割がちゃんぽん事業で、残りがとんかつの「濵かつ」と、店の設備を直す子会社である。筆者の結論は、事業は残るが今の株価は利益に対して高すぎる、というものだ。
稼ぐ力が薄い。売上は450億円あるのに、営業利益は14億円、利益率は3%台にとどまる。2017年2月期の7.5%には遠い。人件費と原材料の値上がりを、値上げで取り戻しきれていない。
会社は2025年に中期計画を出し、2028年度に売上523億円・営業利益38億円を掲げた。海外は14店から46店へ増やす。筆者はこの計画を、実現しても利益水準が元に戻る程度の話とみる。
10年先の中立では、営業利益は39億円ほどだ。純利益は21億円で、自己資本は260億円まで積み上がる。それでも利益の伸びは物価並みで、時価総額は200億円ほどにしかならない。今の時価総額は約610億円。強気の筋書きでもこれを超えない。
勝ち筋は、国産野菜という中身の違いと、冷凍食品・海外への広がりだ。負け筋は、人手不足と日高屋など関東勢との競争である。筆者は、堀はあるが薄く、株主に残る利益はさらに薄い会社とみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいとは言いにくい。事業の中身は魅力的だが、株主に残る利益が少なすぎる。100億円を投じても、10年かけて資本コストを大きく超える稼ぎを生まない。
良い面は3つある。国産野菜という個性、工場を持つ強み、赤字から立て直した経営の粘りだ。悪い面は、人手に頼る店の運営と、価格を上げると客が減る構造にある。
オーナー利益、つまり再投資のあとに株主へ残る利益は、見た目より小さい。営業利益14億円から税金と利払いを引くと、純利益は12億円ほどだ。そこから新店と工場の投資を引くと、さらに減る。
10年後の中立は、営業利益39億円、純利益21億円とみる。それでも自己資本利益率は8%台で、資本コストと同じ水準にとどまる。ためた利益に、積んだ額以上の値が付かない、という会社だ。
安全域は、今の値段にはない。強気の筋書きでも価値は今の時価総額の3分の1ほどにとどまる。ただし、事業の底は固い。店と工場があり、10年後にも客はいる。悲観でも、資産の価値で値段の下限は支えられる。
だから、この株は事業の良し悪しではなく、値段の問題で評価が決まる。割り込む水準まで待つのが、バリュー投資の流儀である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は3つある。第1は長崎ちゃんぽん事業で、売上の8割を占める。国産野菜をたっぷり使う麺料理を店で出し、冷凍の商品も売る。店は559あり、うち135店はフランチャイズだ。直営は店ごとの採算で動き、FC店には食材などを卸す。
第2はとんかつ事業で、「濵かつ」を国内82店、海外4店で展開する。売上は80億円ほどだが、利益はほとんど出ていない。2026年2月期の営業利益は1億円台だ。中期計画では関東への再進出と、惣菜店の出店を進める。
第3は設備メンテナンスで、グループの店の設備を直す。売上は20億円ほどあるが、大半はグループ内向けと見られ、外部の稼ぎは小さい。ただ、営業利益は2億円ほどあり、全社の利益を下支えしている。
物を作る力も特徴だ。佐賀・京都・富士小山の3工場で麺や野菜やスープを作り、店へ運ぶ。いわば製造直売業である。店のコストを抑えられる反面、工場の償却と物流費が重い。
ロードサイドの店が多い。コロナ前は700店ほどあったが、2024年2月期には570店まで減った。今は都心の小型店と海外へ軸足を移している。
優良さと弱いところ
堀は、野菜のたっぷり入る長崎ちゃんぽんという「中身の違い」にある。同じ業態で全国に店を持つ競合は、ほかにほとんどない。ラーメンチェーンの店舗数でも、餃子の王将に次ぐ2位だ。筆者は、この独自性は本物だと見る。
ただし値決めの力は弱い。2026年2月期の既存店は、客単価が上がった一方で客数は減った。値上げで客が離れる、ぎりぎりの水準にいる。堀はあるが、利益に変えにくい堀である。
資本の効率も低い。自己資本利益率は過去10年の中央値で6%台で、資本コストに届かない年が多い。2026年2月期は11%に見えるが、税金の戻りで押し上げられた数字で、本業の姿ではない。
強みは工場を持つことだ。野菜の調達を国産に絞り、味を保てる。弱みは、人手に頼る店の運営と、一つの商品に寄った売り方だ。とんかつは第2の柱として育っておらず、利益が出ていない。
経営は、コロナ禍の大赤字から黒字へ戻した実績がある。ただ、赤字から戻した後も営業利益率が3%台にとどまる。筆者は、「守りの経営」の域を出ていないと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人口が減る国内では店を増やしにくい。成長の余地は都心の出店と海外にある。業界全体の見通しは、小売業のノートの外食の項に従う。国内の客数は横ばいか微減で、客単価の上昇が売上を押し上げる。
人件費の上昇は、すべての店に重くのしかかる。最低賃金が毎年のように上がるうえ、働き手も足りない。リンガーハットは野菜の仕込みなど手間のかかる作業が多く、省人化の効果が出るまで時間がかかる。
競合は2つの顔で現れる。ちゃんぽん・麺類では、日高屋や餃子の王将、幸楽苑のようなラーメン・中華チェーンが関東を中心に攻めてくる。とんかつでは、かつやや松のやのような低価格チェーンがあり、価格で競り合うことになる。
関東は人口が多く、ちゃんぽんの空白地でもある。ここで日高屋が迎え撃つ構えだと報じられている。リンガーハットの取りしろは、独自の味と野菜というイメージにある。
冷凍食品市場は広がっている。会社は外販を2028年度に42億円へ増やす計画だ。ただ、冷凍自販機は1台あたりの売上が伸びず、設置の拡大を一時止めている。外販は計画どおりには進まない、というのが筆者の見立てだ。
海外はタイ、カンボジア、ベトナムを狙う。外食市場の伸びは年4〜8%と、国内より高い。ただ店は小さく、1店の売上は国内の半分以下にとどまる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向30%以上である。自社株買いの実績は確認できていない。2026年2月期の配当性向は、税金の戻りで膨らんだ利益に対して2割弱だった。株主優待は食事のポイントで、長期の保有者を優遇する。
資本の使い道は、国内の改装と都心の出店、工場の自動化、海外の出店である。自己資本比率は49%で、借金は重くない。純有利子負債は54億円ほどで、今期予想の純利益の4倍ほどだ。借り換えの金利が上がる分は、利益を年1億円ほど削る。
M&Aは主な成長手段ではない。買う側に回る動きは、近年は確認できていない。買われる側としては、時価総額が600億円ほどで、対象になりうる規模ではある。ただ、TOBの確率を上げる具体的な材料は確認できていない。
2021年に第三者割当の新株予約権を出して資金を集めた。コロナ禍で自己資本が96億円まで減った時の対応で、株の希薄化を伴った。筆者は、資本政策は守りの色が濃いと見る。
店舗は借りて営むものが多い。家賃は毎年必ず払う固定の約束で、売上が落ちても減らない。2028年度から新しいリース会計が入り、貸借対照表の見え方が変わる。純負債は増え、自己資本比率は下がる。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の純利益は税金の戻りで膨らんだ値なので中立は営業利益から積み直し、純有利子負債 54 億円は引き済み、倍率は ROE÷k に合わせた。
株主優待(現物の還元):年およそ4億円を会社の費用ベースで見込む(食事優待券(100株で年6枚×550円)×優待株主約3.5万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中期計画どおりに進めば、利益は大きく伸びる。2026年2月期は営業利益が14億円まで落ちたが、2027年2月期の中間は41.6%増と早くも戻っている。ちゃんぽん事業の営業利益は半年で58%増えた。値上げと効率化が効き始めた証拠だ。
海外は高成長の市場である。タイ、カンボジア、ベトナムの外食市場は年4〜8%で伸びる。会社は14店を46店へ増やす計画で、現地の外食需要を取り込める。濵かつの関東再進出も、とんかつ事業が赤字から脱する突破口になる。
冷凍食品も追い風だ。ちゃんぽんは冷凍に向く商品で、味の再現度を上げれば外販が伸びる。専用ラインと外部委託で、生産の負担も軽くなる。
2028年度に営業利益38億円という目標が叶えば、利益率は7%を超える。その後も物価並みに伸びれば、10年先の営業利益は60億円に迫る。自己資本利益率も10%を超え、倍率も高く出る。
経営が守りに寄っていることも、悪いことではない。借金が少なく、赤字の時期を乗り切った実績がある。配当性向30%以上の約束もある。株主に優しい会社として評価される余地は十分にある。
慎重な見方
利益の薄さは構造的だ。2017年2月期には営業利益33億円を稼いだが、その後は下がった。コロナ禍の赤字を除いても、2024年以降の利益率は2〜4%にとどまる。ここ数年の戻りは、値上げの一巡にすぎない。
人件費の上昇は止まらない。最低賃金は上がり、働き手は減る。会社の人件費率は32%前後と高く、計画は30%への低下を前提にするが、省人化の道のりは長い。
値上げの余地も小さい。2026年2月期は客数が0.8%減り、客単価は4.5%増えた。さらに上げれば、客が日高屋や王将のような安い店へ流れる。
海外は店が小さく、利益への寄与は限られる。冷凍自販機は設置の拡大を止めた。外販の伸びも、組み立てを外部へ委託する計画が裏目に出る恐れがある。
経営の実績も計画に届かない。2026年2月期の経常利益は、会社の事前予想を2割下回った。前期の純利益が増えたのは税金の戻りが大きく、本業ではない。計画の達成率が低い会社に、高い倍率は付けられない。
最悪の場合、国内の店が再び減り、とんかつの赤字が続き、減損が出る。700店から570店へ減った歴史が、再び繰り返される。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。強気の根拠は計画と直近の戻りだが、会社の計画は過去に何度も届かず、利益率も3%台に戻ったままだ。人件費の構造が変わらない限り、利益率は物価と同じ速さで戻らない。
確率は、楽観を8%、やや楽観を22%、中立を34%に置き、やや悲観を25%、悲観を11%とした。強気の主張が通る筋書きでも、10年後の価値は今の時価総額に届かない。この会社の問題は、事業の行方ではなく、今の値段が利益に比べて高いことにある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 888 円230 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 333 円86 億円)。 今の値に割り戻すと 638 円165 億円、今との差 −73.1%、 期待の年率 −6.4%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,779 円461 億円 | 475 円123 億円 | −4.9% | −0.5% | 180 円47 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,361 円353 億円 | 417 円108 億円 | −25.0% | −2.8% | 391 円101 億円 |
| 中立 | 34% | 1,040 円269 億円 | 378 円98 億円 | −40.2% | −5.0% | 482 円125 億円 |
| やや悲観 | 25% | 264 円68 億円 | 251 円65 億円 | −78.3% | −14.2% | 129 円33 億円 |
| 悲観 | 11% | 241 円62 億円 | 108 円28 億円 | −85.3% | −17.4% | 38 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 888 円230 億円 | 333 円86 億円 | −48.5% | −6.4% | 1,220 円316 億円 |
今の株価時価総額 2,369 円614 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:計画どおりに利益が戻り、都心と海外が育つ 利益 32 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 1,779 円461 億円
中期計画が実現し、その勢いが10年続く。国内は都心の小型店と改装で565店を保ち、野菜中心のメニューで客数も戻る。海外はタイ、カンボジア、ベトナムで85店まで増え、現地の外食需要を取り込む。濵かつは関東再進出が当たり、110店で営業利益率が6%を超える。
省人化が進み、人件費率は計画どおり30%台前半まで下がる。値上げをしても客が離れず、ちゃんぽん事業の営業利益率は8%台に乗る。冷凍食品の外販も、店の味を再現した商品が売れて広がる。
それでも会社は、利益の多くを店と工場の投資に回し、配当性向は4割近くまで高める。10年後の営業利益は58億円ほどで、今の4倍。株主にとって悪くない10年だが、今の株価が織り込む水準には届かない。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 長崎ちゃんぽん(リンガーハット):数量 650(ちゃんぽん事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 0.87(1店舗当たり年間売上(億円。FC店は卸の売上のため直営より低く出る))→ 売上 565 億円・営業利益 46 億円。営業利益率8.2%。国内565店+海外85店
- とんかつ(濵かつ):数量 110(とんかつ事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 1.30(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 143 億円・営業利益 9 億円。営業利益率6.3%。関東再進出が当たる
- 設備メンテナンス:数量 780(グループの店舗数(国内+海外、店。サービスの対象))× 価格 0.04(1店舗当たり年間メンテナンス売上(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 4 億円。営業利益率11%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.5 倍、時価総額 461 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の利益率(7%超)が実現し、その後も物価並みに伸びる筋書き。会社の計画は過去に届かなかったので、強気の確率は1割を切る8%にした。
やや楽観 22% やや強気:利益率は戻るが計画には届かない 利益 26 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 1,361 円353 億円
利益率は戻るが、会社の計画までは届かない。国内の店は555店をほぼ保ち、海外は70店まで増える。値上げで客単価は物価並みに上がり、客数の減りは年1%以内にとどまる。
省人化は進むものの、最低賃金の上昇に追いつききらず、人件費率は31%前後で止まる。ちゃんぽん事業の営業利益率は7%台、濵かつは5%台まで戻る。濵かつの関東は数店の出店にとどまり、成長の柱にはならない。
外販は冷凍商品が堅調だが、会社の計画ほどの規模にはならない。営業利益は47億円ほどで、利益率は7%に乗る。会社の計画は10年かけてようやく実現した、という形になる。配当性向は3割台半ばで、自己資本は270億円ほどに積み上がる。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 長崎ちゃんぽん(リンガーハット):数量 625(ちゃんぽん事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 0.84(1店舗当たり年間売上(億円。FC店は卸の売上のため直営より低く出る))→ 売上 523 億円・営業利益 38 億円。営業利益率7.3%。国内555店+海外70店
- とんかつ(濵かつ):数量 100(とんかつ事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 1.26(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 126 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5.5%
- 設備メンテナンス:数量 740(グループの店舗数(国内+海外、店。サービスの対象))× 価格 0.04(1店舗当たり年間メンテナンス売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。営業利益率11%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.56 倍、時価総額 353 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと省人化で利益率は戻るが、計画の7%台には届かない筋書き。直近の半期の戻りがあるので、強気側に2割強を置いた。
中立 34% 中立:薄い利益が物価並みに伸びる 利益 21 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 1,040 円269 億円
中立は、利益率が少し戻り、あとは物価並みに伸びる10年だ。国内の店は545店でほぼ横ばい、海外が55店まで増えて合計600店になる。ちゃんぽんの営業利益率は6.5%で、直近の3%から倍になるが、計画の7%台には届かない。
濵かつは95店まで増え、営業利益率は4%に上がる。ただ、とんかつは低価格の競合が強く、利益率の改善は緩やかだ。設備メンテナンスはグループの店に連動し、安定して伸びる。
人件費は毎年上がる。値上げと省人化で何とか吸収するが、浮く分は少ない。営業利益は39億円ほどで、利益率は6%。自己資本は260億円まで増え、自己資本利益率は8%台と、資本コストと同じ水準にとどまる。
経営は守りの姿勢を続け、配当性向は3割台半ば、大型のM&Aもしない。事業は残り、会社は黒字を保つ。ただ、株主が大きく報われる会社にはならない。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 長崎ちゃんぽん(リンガーハット):数量 600(ちゃんぽん事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 0.82(1店舗当たり年間売上(億円。FC店は卸の売上のため直営より低く出る))→ 売上 491 億円・営業利益 32 億円。営業利益率6.5%。国内545店+海外55店
- とんかつ(濵かつ):数量 95.0(とんかつ事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 1.22(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 116 億円・営業利益 5 億円。営業利益率4.0%
- 設備メンテナンス:数量 700(グループの店舗数(国内+海外、店。サービスの対象))× 価格 0.04(1店舗当たり年間メンテナンス売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。営業利益率11%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.65 倍、時価総額 269 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通しの中心値に、計画の未達・値上げの限界を織り込んだ筋書き。最も起こりやすい形として最大の34%を置いた。
やや悲観 25% やや慎重:人件費に押され、利益率が低いまま 利益 8 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 264 円68 億円
利益率が今と同じ水準で張りつく10年だ。人件費が毎年4〜5%上がり、値上げで客が離れるので、物価並みの値上げができない。ちゃんぽんの営業利益率は3.5%にとどまる。
国内の店は閉店が出店を上回り、520店まで減る。海外は35店で、1店の売上が小さいため全体の利益には効かない。濵かつは赤字に近い水準が続く。
冷凍食品などの外販は、設備投資が先行して採算に乗らない。設備メンテナンスだけが安定した稼ぎで、全社の利益を支える。営業利益は18億円ほどで、税金の負担率が上がり、純利益は8億円ほどになる。
家賃や人件費という固定費が重く、売上が伸びても利益が増えにくい。自己資本は積み上がるが、利益に比べて膨らむだけで、株主にとっての価値は伸びない。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 長崎ちゃんぽん(リンガーハット):数量 555(ちゃんぽん事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 0.78(1店舗当たり年間売上(億円。FC店は卸の売上のため直営より低く出る))→ 売上 435 億円・営業利益 15 億円。営業利益率3.5%。国内520店+海外35店
- とんかつ(濵かつ):数量 85.0(とんかつ事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 1.11(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 95 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.5%
- 設備メンテナンス:数量 650(グループの店舗数(国内+海外、店。サービスの対象))× 価格 0.04(1店舗当たり年間メンテナンス売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。営業利益率10%
倍率:ROE 3.7% は資本コスト 8% を下回り、ためた利益は積んだ額より低い価値しか持たないので PER は 1÷k = 12.0 倍が上限。この筋書きは利益率が低いまま張りつき、稼ぐ力(純利益 8 億円 ÷ k)の 7 割にあたる 8.4 倍に置いた。店と工場の資産の床(今の自己資本 152 億円)は下回らない。
確率:人件費の上昇が値上げを上回り、利益率が今のまま動かない筋書き。ここ数年の実績に近く、4分の1を置いた。
悲観 11% 悲観:店が縮み、とんかつの減損で自己資本も傷む 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 241 円62 億円
人件費の上昇に負け、店が縮む10年だ。ちゃんぽんは値上げのたびに客を失い、1店の売上は物価に追いつかない。国内の店は440店まで減り、関東進出も採算に合わず撤退する。
濵かつは不採算店の閉鎖が続き、60店に縮む。関東再進出の費用は回収できず、減損で自己資本が傷む。海外も現地の競合に押され、店は25店にとどまる。
営業利益はほぼ消え、純利益は数千万円にとどまる。家賃と人件費は固定費として残り、売上が落ちても減らない。配当は最小限に絞られ、工場の稼働率が下がって償却と物流費が重くなる。
それでも店と工場の資産は残る。土地や設備を売れば、借金を返してなお手元に残る。会社は消えず、再編や身売りで資産が値段を持つ形で終わる。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 長崎ちゃんぽん(リンガーハット):数量 465(ちゃんぽん事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 0.71(1店舗当たり年間売上(億円。FC店は卸の売上のため直営より低く出る))→ 売上 330 億円・営業利益 2 億円。営業利益率0.5%。国内440店+海外25店
- とんかつ(濵かつ):数量 60.0(とんかつ事業の店舗数(国内+海外、店))× 価格 0.99(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率−2%。不採算店の閉鎖が続く
- 設備メンテナンス:数量 520(グループの店舗数(国内+海外、店。サービスの対象))× 価格 0.04(1店舗当たり年間メンテナンス売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。営業利益率8%
倍率:赤字すれすれで稼ぐ力は小さく(事業の純利益 ÷ k で数億円)、価値は売れる資産の床で測る。今の自己資本 152 億円に対する PBR 0.41 倍で、土地・工場・設備を売っても借金 54 億円と閉店費用を差し引くと残りは小さいとみた。減損で自己資本は 130 億円に減らした。営業利益が 1 億円に届かず EV ÷ 営業利益は 145 倍と高く出るが、谷の一年の利益で測る数字ではなく、資産の床で測った。
確率:人件費の構造的な上昇に負け、ちゃんぽんの客数も細り、とんかつも立て直せない筋書き。700店から570店へ減った歴史があり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
長崎ちゃんぽん(リンガーハット)
野菜たっぷりの長崎ちゃんぽん・皿うどんの店と、冷凍商品などの外販。直営とフランチャイズ(FC)の店を持ち、FC店には食材を卸す。
| 数量ちゃんぽん事業の店舗数(国内+海外、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円。FC店は卸の売上のため直営より低く出る) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 556 | 0.66 | 369 | 11 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.82 | 491 | 32 |
取り方:2026年2月期のちゃんぽん事業の売上368.8億円を、期末店舗数556店(国内約545+海外約11、中間期末の559店から逆算)で割った。FC店(約135店)は卸の売上だけが入るので1店当たりは低めに出る。先の1店当たり売上は、国内は客数がやや減り(人口減と人手)、値上げで物価並みに近く上がるとみて、中立で10年1.30倍。海外の小型店が増える構成の変化は店数と1店売上の平均に含めた。
とんかつ(濵かつ)
とんかつ専門店「濵かつ」と惣菜のテイクアウト店。国内82店、海外4店。2026年2月期の営業利益は1億円台と薄い。
| 数量とんかつ事業の店舗数(国内+海外、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 85.0 | 0.94 | 80 | 1 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 1.22 | 116 | 5 |
取り方:2026年2月期のとんかつ事業の売上80.1億円を、店舗数約85店(2027年2月期中間期末の86店から逆算)で割った。先は客数が横ばいで、客単価は低価格の競合に抑えられるため、中立では物価並みよりやや低い10年1.30倍。関東再進出と惣菜店は店数の増加に入れた。
設備メンテナンス
グループの店の設備を直す子会社の事業。売上の大半はグループ内向けと見られる。
| 数量グループの店舗数(国内+海外、店。サービスの対象) | 価格1店舗当たり年間メンテナンス売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 641 | 0.03 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 700 | 0.04 | 29 | 3 |
取り方:設備メンテナンス事業の売上19.8億円を、グループの店舗数約641店(ちゃんぽん556+とんかつ85)で割った。内訳の開示が無いため推定。セグメント売上の合計(469億円)は連結売上(451億円)より18億円ほど多く、この差は内部取引の消去とみる。先は店数と物価に沿って伸びるとみた。
リスクと懸念
人件費と人手不足
最低賃金の上昇と働き手の不足は、店の運営を直撃する。人件費率は32%前後と高く、計画は30.3%への低下を前提にする。省人化が遅れれば、値上げでも利益率は戻らず、店の閉鎖が増える。
値上げで客が離れる
2025年3月と2026年2月に値上げし、リンガーハットの客数は0.8%減った。さらに上げれば、日高屋や王将などの安い店へ客が流れる。値上げの余地は、他社より狭いと見ておく。
とんかつ事業の赤字体質
濵かつは売上が80億円ほどあるが、2026年2月期の営業利益は1億円台に半減した。関東再進出は費用が先に出る。軌道に乗らなければ、全社の利益を引き下げ、減損も出る。
計画の達成率
会社は2026年2月期の経常利益を19.9億円と予想したが、実績は16.0億円だった。2028年度の営業利益38億円は、今の14億円の2.7倍にあたる。達成率が低ければ、期待先行の株価は崩れやすい。
海外の収益化
海外は店が小さく、1店の売上は国内の半分以下だ。タイ、カンボジア、ベトナムで46店へ増やす計画だが、現地の競争と品質管理の費用がかさめば、赤字が積み上がる。
原材料と物流の費用
国産野菜にこだわる調達は、天候不順で価格が跳ねやすい。物流の人手不足と配送費の高騰も重なる。3工場体制の稼働率が上がらなければ、償却と物流費が利益を食う。
家賃の固定費
店舗の多くは借りている。家賃は売上が落ちても減らず、不況では利益率を一気に押し下げる。新しいリース会計で、約束の重さが貸借対照表にも載るようになる。
今後の分かれ目
- 人件費率が計画どおり30%台前半まで下がったら
- 省人化が効いている。中立から楽観の側に確率を寄せてよい。
- 値上げをしても、既存店の客数が前年を上回り続けたら
- 値決めの力が想定より強い。やや楽観以上の筋書きの確率を上げる。
- 濵かつの営業利益率が4%を超え、関東の出店が採算に乗ったら
- とんかつが第2の柱になる。やや楽観の営業利益率を上げて考えてよい。
- 海外が46店に届かず、閉店が出始めたら
- 海外の拡大は難しい。やや悲観の確率を上げ、海外の取りしろを小さく見直す。
- 国内の店が550を割り込み、既存店の客数が2期続けて落ちたら
- ちゃんぽんの客数が構造的に細っている。悲観の確率を上げる。
- 大手外食や商社が株を買い集めたり、TOBを発表したりしたら
- 事業の価値は変わらないが、買収の値段が付き、悲観の床の議論は変わる。
見ておくもの
- 中期計画の営業利益(2026年度22億円、2027年度29億円、2028年度38億円)の進捗
- リンガーハットの既存店の客数と客単価(月次)
- 人件費率(計画は2028年度に30.3%)
- 濵かつの営業利益と関東の出店数
- 海外店舗数(計画は2028年度に46店)と外販売上(同42億円)
- 国内店舗数の増減(閉店が出店を上回るか)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに、式から置いた。ちゃんぽん・とんかつ・設備メンテの3つで店数×1店あたり売上を積み、10年先の営業利益を出した。自己資本は今に純利益を足し、還元を引いて流し、ROEは結果として出した。中立のROEは8.2%で資本コスト8%と同じ水準なので、正当化PERの上限は12倍になり、その8割の9.6倍に置いた。会社の計画(2028年度の営業利益38億円)は強気の側の材料として使い、そのまま中立にはしていない。今の時価総額は約610億円で、直近の予想純利益12億円の50倍にあたる。この株価を見て倍率を下げたのではなく、式の結果として差が出た。なお、家賃は営業費用に含めた今と同じ形で10年後も置いた。新リース会計(2028年度から)で営業利益は少し増え、純有利子負債は増えるが、価値は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→14.5 倍・やや楽観 PER 10.2→13.56 倍・中立 PER 10.8→12.65 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の上乗せ+0.8%を足した8.3%。事業は黒字で傾いていないので、上乗せ(extra)は置かない。同じ領域の吉野家(+0.2%)やロイヤル(+0.8%)と比べ、規模の小ささと利益率の薄さから木曽路・ロイヤルと同じ水準に置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 8.00%。