結論
コジマは、ビックカメラが株式の半分を持つ家電量販店だ。売上は 2,800 億円で、郊外の大型店を中心に全国 139 店を構える。
筆者の結論は「割高」だ。いちばんの理由は、稼ぐ力に比べて今の時価総額が重いことにある。純利益は 47 億円で、時価総額はその 24 倍にあたる。10 年先の中立で見ても、この水準には届かない。
事業は堅い。営業利益率は 2.6% と薄いが、2016 年 8 月期以降、純利益は黒字を保っている。ここ数年は経費の絞り込みとスマホの高単価品で、利益が伸びた。現金は借入を上回り、財務に不安は小さい。
弱いのは資本の効率だ。自己資本は 700 億円あるのに、ROE は 6〜7% で、資本コストの 8.5% に届かない。会社は 2029 年 8 月期に営業利益 90 億円を目標にする。実現はありうるが、達成しても利益は今の 1.2 倍にとどまる。
ビックカメラの傘下という立場は、仕入れでは助けになる。一方で、利益の使い道は親会社の意向に縛られる。完全子会社化の可能性は残るが、筆者はそれを値段に織り込まない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、コジマは「堅実だが、割安に買わなければ報われない会社」だ。
良い会社の条件は、少ない資本で多く稼ぎ、稼いだ現金を株主に返せることだ。コジマは、自己資本の 7% ほどを稼ぐ。資本コストの 8.5% に届かず、ためた利益が価値に変わりにくい。
オーナーとして持ちたいかを問えば、答えは条件つきだ。財務は堅く、潰れる心配は小さい。ただ、堀は薄く、利益の使い道は親会社が決める。
本質価値を決めるのは、ならした稼ぐ力だ。営業利益は 80〜100 億円、純利益は 55〜70 億円と筆者は見る。名目で伸びても、10 年後に純利益が 100 億円を超える姿は描きにくい。
安全域は、今の値段にはない。時価総額は純利益の 24 倍で、PBR は 1.6 倍近い。完全子会社化の期待や、資本効率の改善を先に買った値段に見える。筆者は、それが実現するかを見極めてから、払う値段を決めたい。
現金が厚いのは確かな強みだ。ただ、その価値は半分ほどしか株主に届かないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中身は、家電を売る店そのものだ。冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビなどの家電に加え、パソコンとスマホを売る。全国に 139 店あり、郊外のロードサイド型の大型店が主力になる。
店は「コジマ×ビックカメラ」の名で出す形も多い。仕入れの面で、親会社の規模の恩恵を受けられるのが親子の強みだ。
成長事業は 3 つある。ネット通販・法人向け・住設(リフォームや住宅設備)だ。店に来た客に工事つきの商品を売り、1 人あたりの金額を引き上げる狙いがある。
店の動かし方は、新しく広げるより磨く構えだ。改装は年 20 店、新規の出店は年 2 店のペースで進める。
店は借りて営む分が多い。家賃は売上が落ちても払う固定の約束で、筆者は年 80〜100 億円と推定する。現金が厚く見えても、この約束が裏にある。
売上のほとんどは家電の商品販売で、利益は薄い。利益を左右するのは、人件費・物流費・広告費をどこまで絞れるかだ。2025 年 8 月期は、この経費の抑え込みが営業利益を 15% 押し上げた。
店の中身では、スマホの売れ行きも効く。高単価の機種が売れる年は、客 1 人あたりの金額が上がり、利益率も持ち上がる。逆に、通信会社の施策で需要が冷えれば、利益はすぐ薄くなる。
優良さと弱いところ
筆者がまず見る堀、つまり他社がまねできない強みは、コジマには薄い。店の数も仕入れの規模も、ヤマダ・ビックカメラ・エディオン・ケーズに劣る。客から見れば、冷蔵庫は他の店でも EC でも同じ物が買える。値段は市場が決める。
強みは、親会社の傘にある。ビックカメラの仕入れの力を借りられ、グループとして売上は 1 兆円近い。ただ、その恩恵は仕入れの条件であり、値決めの力ではない。
資本の使い方は、堅いが物足りない。借金より現金が多く、自己資本比率は 58% ある。一方で、自己資本 700 億円から稼ぐ純利益は 50 億円足らずで、ROE は 6〜7% だ。2019 年 8 月期には 13.6% を出したが、その水準は続かなかった。
良い点もある。経費の絞り込みで、営業利益率は 0.4% だった 2015 年 8 月期から 2.6% まで上がった。数年の努力が数字に出ている。
経営は、親会社のもとで安定している。社長の中澤裕二氏は 2020 年 11 月の就任で、大きな買収で資本を無駄にする動きは見えない。ただし、親会社の意向が少数株主より先に立つ構造は、持ち続ける側には不安の種だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家電量販店市場は 10 兆円を超え、2024 年は前年比で 5% 近く伸びた。省エネ家電への買い替えと価格の上昇が支えた。筆者は、10 年後の数量が横ばいから微減と見る。人口は減り、1 世帯あたりの家電も増えにくいからだ。
競争の形は上位への集中だ。ヤマダ・ビックカメラ・エディオン・ケーズが 4 強で、その下にノジマ・コジマ・Joshin が続く。コジマは中堅の中では大きいが、4 強の背中は遠い。
外からの圧力は EC だ。家電の EC 化率は 4 割を超え、アマゾンや楽天では価格がすぐ比べられる。店は商品を試す場所になりかねない。対抗策は、設置工事・保証・下取りのような、店でしかできない仕事を厚くすることだ。
スマホは別の力学で動く。高単価機種への買い替えが売上を押し上げたが、通信会社の施策や規制で、需要は波打つ。コジマは 2025 年 8 月期に、この高単価品で利益を伸ばした。
景気にも弱い。家電は買い替えを延ばせる耐久財で、リーマンの時は既存店の売上が 2 割ほど落ちた。
再編は続く。中堅は規模を求めて、統合や提携を探す。コジマはすでにビックカメラの傘下にあり、独立して生き残る形ではなく、グループの中で役割を持つ形だ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2025 年 8 月期の配当は年 17 億円ほどで、創業 70 周年の記念配当を含む。配当性向は 36% で、自社株買いは確認できなかった。
筆者が気にするのは、利益の使い道を決めるのが親会社だという点だ。ビックカメラは 2012 年に 140 億円の増資を引き受け、いまも 50.4% の株を持つ。上場の維持で合意したが、少数株主の利益と親会社の都合は、いつも重なるとは限らない。
手元の現金は 265 億円ある。借入を引いた純現金は 170 億円で、時価総額の 15% に当たる。ただ、仕入先への支払い・ポイント・固定の家賃が裏にあり、全部が余りではない。筆者は、余りを 50 億円とみる。
家賃は売上が落ちても払う約束で、筆者の推定では年 80〜100 億円だ。2028 年 8 月期から始まる新しいリース会計で、この約束が BS に載り、自己資本比率は見かけ上下がる。
完全子会社化の可能性は、kabufu の見立てで 10 年以内に 19% ほどだ。買われる側になれば、少数株主には値上がりの機会になる。ただ、いつ・いくらかは読めず、筆者は値段に織り込まない。
株主優待は年約1.3億円(会社の費用ベース。買物優待券2,000円×単元株主約9.5万人の下限(額面1.9億円)×使われ率7割)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+13億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益は今も伸びている。2025 年 8 月期の営業利益は 73 億円で、前の期より 15% 増えた。2026 年 8 月期も 80 億円台への増益が見込まれる。会社の 2029 年の目標 90 億円は、すでに視野に入る。
経費の絞り込みは、まだ終わっていない。物流費と広告費を磨き、店員 1 人あたりの生産性を上げる。利益率が 0.3 ポイント上がるだけで、営業利益は 1 割増える。
成長の種もある。ネット通販・法人・住設の 3 事業は、付加価値が高い。店に来る客に工事つきの商品を売れば、1 人あたりの金額が上がる。ビックカメラの仕入れと EC を使えるのも、他の中堅にない強みだ。
資本の面でも変わる余地がある。純現金は 170 億円あり、自社株買いも配当の増額もできる。会社は中計で「資本効率向上」を重点の 1 つに掲げた。ROE を 9% 台へ引き上げられれば、倍率は 11 倍を超える。
さらに、親会社が完全子会社にする可能性がある。その時は、少数株主に上乗せの価格が示されやすい。
慎重な見方
営業利益率が 3% を超えた年は、過去 12 年で 1 度もない。ピークは 2021 年 8 月期の 3.0% で、巣ごもり需要の追い風があった。足元の 2.6% は、すでに平時の天井に近い。
増益の中身は、経費の絞り込みとスマホの高単価品だ。どちらも長く続く力ではない。経費は削り切れば、あとは人件費の上昇が効く。スマホは通信会社の施策や規制で、需要が一気に変わる。
EC は強まる一方だ。家電の EC 化率は 4 割を超える。コジマは店舗型の中堅で、アマゾンや楽天と同じ値札で戦うほどの規模がない。
資本効率も変わらない。自己資本 700 億円から稼ぐ純利益は 50 億円足らずで、ROE は資本コストを下回る。現金を貯めても、還元は配当性向 36% 止まりで、自社株買いの実績もない。
親会社の影が最後に残る。過半の株を持つのはビックカメラで、利益の使い道を決めるのは親会社だ。完全子会社化の期待は、少数株主を守る保証にはならない。
今の時価総額は純利益の 24 倍だ。これは堅実な小売の値段ではなく、期待の値段だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強いと筆者は判断した。理由は 2 つある。資本効率が資本コストを下回ること、そして今の値段が期待を先に買っていることだ。
強気の見方は、増益の流れと中計の目標が現実的な点で筋が通る。ただ、その増益は 10 年を通じた力ではなく、数年かけて積んだ経費の絞り込みの果実だ。
確率は、中立に 4 割弱を置き、やや悲観と悲観に合わせて 3 割台前半、楽観とやや楽観に 3 割弱を置いた。同じ領域の会社と比べて悲観を厚くはしていない。会社が行き詰まる確率は小さく、深い谷でも純現金が床になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,096 円844 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 335 円258 億円)。 今の値に割り戻すと 721 円556 億円、今との差 −48.6%、 期待の年率 +0.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,903 円1,466 億円 | 562 円433 億円 | +75.6% | +5.8% | 197 円152 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,521 円1,171 億円 | 432 円333 億円 | +39.1% | +3.4% | 391 円301 億円 |
| 中立 | 38% | 1,267 円976 億円 | 341 円263 億円 | +14.6% | +1.4% | 611 円471 億円 |
| やや悲観 | 24% | 575 円443 億円 | 273 円210 億円 | −39.6% | −4.9% | 203 円157 億円 |
| 悲観 | 10% | 195 円150 億円 | 86 円66 億円 | −80.0% | −14.9% | 28 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,096 円844 億円 | 335 円258 億円 | +1.9% | +0.2% | 1,431 円1,102 億円 |
今の株価時価総額 1,404 円1,082 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画が前倒しで進み、ROE 10% の堅実な小売になる 利益 103 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,903 円1,466 億円
会社の計画が前倒しで進む。経費の絞り込みが続き、ネット通販・法人・住設の 3 事業が収益の柱に育つ。工事つきの高付加価値品が増え、1 人の客から取れる金額が伸びる。営業利益率は 3.7% まで上がり、営業利益は 150 億円に迫る。
ビックカメラの仕入れとネット通販の仕組みが生き、中堅の弱点だった価格競争力が埋まる。スマホも高単価機種の売れ行きが堅い。
資本政策も変わる。純現金を使って配当を厚くし、自社株買いも組み合わせる。ROE は 10% に届き、資本コストを上回る。市場はこの会社を、資本効率のよい堅実な小売として評価する。
この筋書きでも、コジマが 4 強に並ぶわけではない。ただ、親会社のグループの中で、利益の出る役割を持つ会社になる。
- コジマ(郊外型を中心とした家電量販店):数量 10.5(年間の会計件数(百万件))× 価格 38,080(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,998 億円・営業利益 148 億円。客数が微増、客単価に高付加価値品と工事つきの商品が乗り、利益率が 3.7% へ
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,439 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経費の絞り込みと成長事業の収益化が重なり、ROE が資本コストを超える筋。これまでの実績は 7% 前後で、1 割に届かせない。
やや楽観 20% 計画どおりに進み、利益率が 3% 台前半で定着する 利益 85 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,521 円1,171 億円
計画どおりに進み、利益率が 3% 台前半に定着する。2029 年 8 月期の営業利益 90 億円は達成し、その後も緩やかに積み上がる。店は改装を重ねて強さを保ち、法人と住設が利益に厚みを足す。
数量は人口減で微減だが、客 1 人あたりの金額が物価並みに上がる。スマホは高単価化が続く。人件費の上昇は、効率化で吸収できる。
還元は、配当性向を 4 割台へ引き上げる程度で、大きな変化はない。ROE は 8% 台で、資本コストにわずかに届かない。市場は安定した利益に 10 倍あまりを払う。
ビックカメラとの連携は深まり、仕入れとネット通販の面で恩恵が増す。ただ、親会社が完全に吸収する形にはならず、上場子会社のまま続く。
- コジマ(郊外型を中心とした家電量販店):数量 10.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 37,520(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,827 億円・営業利益 122 億円。客数は微減から横ばい、客単価は物価並み、利益率は中計の水準を上回る
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 12.79 倍、時価総額 1,116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益 90 億円の中計目標を達成し、その後も緩やかに積み上がる筋。会社の計画の水準に近く、実績の薄い利益率の定着が条件なので 2 割とした。
中立 38% 堅実だが、資本効率で評価されない 利益 72 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,267 円976 億円
数量は人口減で 1〜2% 減るが、価格は物価並みに上がる。経費の絞り込みは一巡し、利益率は 2.8% 前後で落ち着く。営業利益は 100 億円ほどで、中計の目標をかろうじて上回る。
EC への流出は緩やかに進むが、設置工事や保証を手がける店の役割は残る。スマホは波がありながら、全体では横ばいを保つ。
還元は配当が中心で、配当性向は 4 割に近づく。自己資本は緩やかに積み上がり、ROE は 7% 前後にとどまる。堅実だが、資本効率で評価される会社にはならない。ビックカメラとの関係は変わらず、上場子会社のまま続く。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.3億円×10年)を足している。
- コジマ(郊外型を中心とした家電量販店):数量 9.9(年間の会計件数(百万件))× 価格 37,520(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,714 億円・営業利益 104 億円。客数は微減、客単価は物価並み、利益率は平常
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 902 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率は 2.8% 前後で落ち着き、数量は微減、価格は物価並み。直近の実績と中計の水準に最も近い。
やや悲観 24% EC と 4 強に押され、利益率が 2% を割る 利益 40 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 575 円443 億円
EC への流出が進み、客数は 1 割ほど減る。値上げが物価に追いつかず、客単価の伸びは鈍る。人件費と家賃は物価で上がり、利益率は 1.9% に落ちる。営業利益は 60 億円まで下がる。
中堅の店が、4 強との価格競争で押される。コジマ独自の強みは出せず、親会社グループの調達の恩恵だけが頼りになる。新リース会計の導入で、家賃の重さが表に出て、見かけの自己資本比率も下がる。
配当は守るが、増やす余力は乏しい。ROE は 4% 台に落ち、市場は低い倍率を付ける。
景気が悪くなれば、買い替えの延期で既存店の売上はさらに落ちる。それでも潰れる会社ではなく、純現金が谷の下支えになる。ただ、利益を食う局面が長引き、自己資本の積み上がりも止まる。
- コジマ(郊外型を中心とした家電量販店):数量 9.0(年間の会計件数(百万件))× 価格 35,840(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,226 億円・営業利益 61 億円。客数が減り、値上げが通らず、家賃と人件費が残る
倍率:ROE 4.3%(純利益 40 億円 ÷ 自己資本 941 億円)。事業の ROE が資本コスト 8.25% を大きく下回り、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。EC と上位 4 社に押される構造的な弱さを見て、やや悲観は上限の 7.5 割の 8.8 倍に置いた。余った現金は谷で食われるとして、今の額の 0.75 倍の 37.5 億円を戻り方 0.5 で足した。
確率:EC と上位 4 社の価格競争で、客数が減り値上げが通らない筋。中堅の弱さが現れる筋で、強気側よりやや厚く置いた。
悲観 10% 家電が汎用品になり、店の存在価値が薄れる 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 195 円150 億円
家電が完全に汎用品になり、店の存在価値が薄れる。客数は 3 割近く減り、閉店が続く。売上が落ちても家賃と人件費は残り、利益はほぼ消える。営業利益は 10 億円を割る。
住設・法人・ネット通販への転換は実を結ばず、閉店の費用や減損が重なる。自己資本は 600 億円まで減る。親会社も、規模の小さい子会社を支える余裕を失い、グループ内の役割は縮む。
この筋書きでは、会社は消えないが、優良な小売ではなくなる。時価総額は、純現金と売れる資産が支える床の水準まで下がる。配当は純利益ではなく、現金や資産の売却で維持するのが精いっぱいで、実質は取り崩しだ。
- コジマ(郊外型を中心とした家電量販店):数量 7.2(年間の会計件数(百万件))× 価格 33,600(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 2,419 億円・営業利益 7 億円。客数が 3 割近く減り、固定費だけが残る
倍率:谷の底で純利益はほぼゼロ、稼ぐ力(2 億円 ÷ k)は 24 億円にすぎない。家賃が固定費として残り、売れる資産の税後と純現金からなる約 150 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 701 億円に対する PBR 0.21 倍で測った。EV÷営業利益は谷の利益が小さく意味を持たない。
確率:家電が EC に完全に取られ、店舗型の中堅が構造的に負ける筋。優良ではなくなる筋で、同領域の会社と同じ 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コジマ(郊外型を中心とした家電量販店)
全国 139 店のコジマ・コジマ×ビックカメラの店とネット通販で、家電・パソコン・スマホを売り、住設・法人も手がける。
| 数量年間の会計件数(百万件) | 価格1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 10.1 | 28,000 | 2,828 | 73 |
| 10 年後 中立 | 9.9 | 37,520 | 3,714 | 104 |
取り方:売上 2,828 億円(2025/08 期)を、1 会計あたり約 2.8 万円(推定)で割った件数が約 1,010 万件。国内の家電量販店市場(約 10.3 兆円)に対するシェアは 2.7% ほど。件数は人口と EC への流出で細る需要で、中立は 10 年 2% 減。1 会計の金額は物価並みに上がる(10 年 1.34 倍)。単独の開示なので、セグメントは 1 つとした。
リスクと懸念
親会社の意向
過半の株を持つビックカメラが、利益の使い道を決める。還元の厚さも、事業の広げ方も、親会社グループの都合で決まりうる。少数株主の利益が後回しになる局面があることを、前提に置くべきだ。
EC との価格競争
家電の EC 化率は 4 割を超え、価格はすぐ比べられる。コジマは店舗型の中堅で、アマゾンや楽天と同じ土俵で戦う規模がない。店は商品を試す場所になり、客数と粗利が同時に落ちる恐れがある。
スマホ頼みの利益
2025 年 8 月期の増益は、スマホの高単価品に助けられた。通信会社の施策や規制が変われば、需要は急に冷える。スマホの利益が剥がれると、薄い営業利益率はすぐ 2% を割る。
家賃と人件費の固定費
借りている店の家賃は、売上が落ちても払う。筆者の推定では年 80〜100 億円で、営業利益に近い規模だ。最低賃金の上昇で人件費も増え、売上が 1 割落ちるだけで利益は大きく削られる。新リース会計で BS に載ると、見かけの借金も増える。
資本効率が上がらない
ROE は 6〜7% で、資本コストの 8.5% に届かない。純現金が積み上がっても、自社株買いの実績はない。会社が資本効率向上を掲げても、親会社が動かなければ、数字は動かない。
4 強との規模の差
仕入れ・物流・広告の規模は、ヤマダやビックカメラに劣る。業界の再編が進めば、中堅の交渉力はさらに薄れる。親会社の傘に入っていても、規模の経済は 1 社ごとに働く。
今後の分かれ目
- 2029 年 8 月期の営業利益 90 億円を前倒しで達成する
- 経費の絞り込みが一過性でなかったと確かめられ、利益率 3% 台の定着を見直す。強気の筋書きの確率を上げる。
- 自社株買いや大幅な増配を発表する
- 純現金が還元に回り、ROE が資本コストに近づく。倍率を 1 倍ほど高く置ける。
- ビックカメラが完全子会社化の方針を発表する
- 少数株主に上乗せの価格が示される可能性が高い。条件を見て評価し直す。値上がりは今の時価総額の水準に左右される。
- スマホの高単価品の売れ行きが 2 期続けて落ちる
- 足元の増益の源が剥がれたと判断し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 家電 EC の比率がさらに上がり、既存店の客数が 2 年続けて減る
- 店舗型の中堅の価値が崩れ始めたと判断し、悲観の確率を厚くする。
- 最低賃金の上昇が想定を上回り、人件費率が 1 ポイント上がる
- 利益率の定着が崩れ、営業利益は 3 割ほど減る。中立の見立てが下向く。
見ておくもの
- 既存店売上高と客数
- 営業利益率(3% の定着)
- 成長事業(EC・法人・住設)の売上比率
- ビックカメラとの取引条件と持株比率
- 配当性向・自社株買い
- 家賃・人件費率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、その時点の ROE と資本コスト 8.25%(基本 7.5% + quality 1.0%)から置いた。ROE が資本コストを下回るので、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍と低く、中立は上限の 8.5 割、楽観は 9 割とした。今の PER 24 倍は根拠にしていない。
結果として中立は今の時価総額を大きく下回り、割高に出る。同じ領域のエディオン・ケーズ・ヤマダと同じ形で置いており、差は ROE と利益の質で説明できる。
純現金 170 億円のうち、運転資金・ポイント・固定の家賃の裏づけを除いた 50 億円だけを余りとし、戻り方は親会社が過半を持つので 0.5 とした。店舗の家賃は固定の約束なので、悲観では売上が落ちても残るとして営業利益率に入れた。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。2028 年 8 月期からの新リース会計で営業利益が少し増え、純有利子負債がリース負債の分だけ増える点は、比較のときに注意が要る。含み益は確認できておらず、純資産には足していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。同じ領域のビックカメラ(+0.75%)やノジマより値決めの項を厚くした。個別のリスク(親会社の意向・上場子会社の立場)は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。事業が傾いてはいないので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。