結論
薬王堂ホールディングスは、岩手を拠点に東北6県で456店を持つドラッグストアである。売上の約半分が食品で、調剤はほとんど持たない。小さな商圏に店を密に出す方式(ドミナント)で育ち、今は栃木・茨城など関東へ急拡大している。2026年2月期の売上は1,638億円、営業利益は53億円だ。
筆者の結論は、成長の実行力が価値を決める、というものだ。会社の計画は、2030年2月期に売上3,000億円、営業利益100億円、店舗数853。だが2026年2月期の出店は計画の77%、営業利益も計画の約9割にとどまった。
拡大の資金は借入に頼る。店の土地と建物を自前で持つため、2026年2月期の設備投資は161億円と営業キャッシュフロー33億円の5倍近い。借入は長期で224億円に膨らんだ。会社は借入の目安を自己資本の0.9倍としており、金利が上がれば利払いが利益を削る。
10年後の中立は、店舗770店、営業利益130億円、純利益77億円ほど。ROEは8〜9%で資本コストをわずかに上回る。拡大が続けば価値は積み上がるが、関東で東北並みに稼げなければ、借入だけが残る。
見るべきは三つだ。出店の達成率、関東の新店の採算、借入と金利。いずれも売上の伸びでは測れない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、薬王堂は、地域の運営の型は良いが、資本の使い方は賭けを含む。問いは三つある。10年後も事業は残り強いか。稼いだお金のうち、株主が自由に使えるのはいくらか。経営者は資本を賢く使うか。
事業は残る。生活必需品を扱い、東北の小商圏では強い。ただし、大手の巨大化で、10年後に強いままかは言い切れない。
株主が自由に使えるお金は、今はほとんどない。営業キャッシュフローは33億円で、設備投資161億円には届かず、不足は借入で埋める。10年の中立でも、利益の大半は出店と運転資金に消え、借入は600億円まで増える。減価償却は取得時の値段のままだが、更新と新店の投資は物価で高くなる。
資本配分は、評価と不安が半々だ。ROE10%台の事業に、利益のほぼ全部と借入を足して再投資するのは、うまくいけば価値を積み上げる。ただし、関東で同じ利益率が出る保証はなく、前期は出店と利益が計画に届かなかった。
安全域を測る。時価総額300億円に対し、自己資本は402億円。店の資産は自前で、倒れにくい。しかし借入が増え、金利が上がると利益が削られる。安全域は、資産の側にあり、利益の側にはない。
何で稼ぐ会社か
薬王堂は1978年に岩手で創業したドラッグストアで、2019年に持株会社になった。2026年2月期末の店舗は456店。岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島の東北6県に加え、2025年4月に栃木、6月に茨城へ出店した。
売上は食品が48.8%、ホーム(日用品)が21.7%、ヘルスが16.1%、ビューティが13.4%。食品を主役にして客数を稼ぎ、医薬品や化粧品を買ってもらう。調剤は併設4店と専門1店だけだ。
店は300〜600坪の大型で、地方の小さな商圏に出す。土地と建物を自前で持つ店が多く、有形固定資産は456億円ある。物流は専用のセンターで食品と非食品を一括配送し、2024年9月には宮城の白石で南東北向けを始めた。
従業員は正社員1,094人、臨時社員2,917人(8時間換算)。2026年2月期は54店を出し、うち関東が26店。新店は関東で売上・粗利率が東北より高いと会社は説明した。
成長の仕込みは、AIの自動発注、物流網の再構築、既存店300店の改装。関東では「超高速ドミナント」で一気に面を取る方針だ。
優良さと弱いところ
優良さは、東北の小商圏で積んだ運営の型にある。ただし、利益率は同業より薄く、借入も重い。
強みは三つある。第一に、東北で456店を持つドミナント。物流と販促の効率が高い。第二に、食品を軸にした集客力。第三に、店の土地・建物を自前で持ち、家賃の固定費が小さいこと。リース料は年12.7億円と小さい。
弱みも三つある。第一に、営業利益率が3%台で、同業大手の多くより低いこと。調剤が少なく、食品中心で粗利率が低い。第二に、設備投資が営業キャッシュフローを大きく上回り、借入に頼ること。第三に、大手の再編が進み、東北の競合が巨大化していることだ。
資本効率は悪くない。過去7年のROEの中央値は11.5%で、資本コストを上回ってきた。ただし2026年2月期は10.0%に下がり、拡大の費用が先に出ている。
筆者は、運営の型は本物だが、関東で同じ利益率を再現できるかは証明されていないと見る。経営は創業者の西郷辰弘社長が率いる。2022年にプライム市場へ移り、2023年に監査等委員会設置会社になった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドラッグストアは、日本チェーンドラッグストア協会によると2024年度の全国総売上が10兆307億円で、初めて10兆円を超えた。店舗は2万3,700店ほど。食品が前年比13.2%増、調剤が9.1%増と伸びた。協会は2030年度に13兆円を目指す。
ただし店舗は飽和に近く、客の奪い合いが始まっている。上位10社ほどで業界の大半を占め、再編が活発だ。2026年1月にはイオンがツルハホールディングスを連結子会社にした。東北では、ツルハ、ウエルシア、コスモス薬品、ゲンキー、カワチ薬品などが出店を続ける。
薬王堂の中期計画の発表時、経営陣は「生き残るには最低限の規模が不可欠」と述べた。巨大化する競合に対する危機感が、急ぎの関東出店の背景にある。
価格は物価で上がるが、食品中心では価格比較が働き、転嫁は医薬品や化粧品より難しい。人件費の上昇も重く、東北の最低賃金は毎年のように上がる。
10年の見立ては、店の数が増える分だけ売上は伸びるが、既存店の実質は横ばい。中立の1店あたり売上は物価並みの1.34倍(実質は横ばい)とした。
資本政策と M&A
配当は累進配当(減らさない)を基本方針とする。2026年2月期の配当性向は14.0%で、同業より低い。2027年2月期の配当予想は14.5%だ。株主優待はなく、自社株買いもない。
利益のほとんどは出店に回る。中期計画では5年間で出店に990億円を投じ、営業キャッシュフロー492億円に対し、543億円を借入などで調達する。配当は5年間で30億円しか見込まない。
財務の目安は、D/Eレシオ(借入÷自己資本)0.9倍まで。2026年2月期末の借入は長期224億円、リース債務66億円で、現預金100億円を引いた純負債は180億円。自己資本比率は39%だ。
株主は、筆頭が株式会社TKコーポレーションで39.0%、日本マスタートラスト信託銀行7.2%、日本カストディ銀行5.2%、従業員持株会3.3%。TKコーポレーションが創業家の資産管理会社かは確認できなかった。
保有する上場株は3銘柄、3.1億円と小さい。持ち合い株の厚みはない。
TOB(株式公開買い付け)の確率は、kabufuの推計で10年以内に29.9%。業界再編の流れがあるが、価値には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
薬王堂は、東北で証明した型を関東に広げる成長企業だ。456店のうち26店が関東で、新店の売上と粗利率は東北を上回ると会社は説明している。食品を軸にした小商圏の店は、大手が手薄な地方で強い。
計画の目標は大きい。2030年2月期に売上3,000億円、営業利益100億円、店舗853。直近の達成率は売上97%、営業利益92%と、完全な未達ではない。出店が遅れたのは、関東の許認可と用地のリードタイムが長かったためで、構造的な問題ではないと会社は言う。
資産は堅い。店の土地・建物を自前で持ち、自己資本は402億円。時価総額300億円は、純資産を下回る。ROEは10%で資本コストを上回り、利益の大半を再投資できる。
業界は再編の流れで、薬王堂も規模を取れば、大手と組む選択肢が生まれる。TOBの確率も高めだ。
外から見れば、強みが証明された地域で、資産に裏打ちされて成長する会社だ。強気の見方は、関東の店が成熟する数年後に、利益率が戻ると考える。
慎重な見方
出店と利益が計画に届かない会社に、計画の目標は信用できない。2026年2月期の出店は54店で、計画70店の77%。営業利益は計画の約9割。2027年2月期の第1四半期は売上が11.7%増えても、営業利益は5.1%減り、利益率は3.8%から3.2%に下がった。
資金の面でも、拡大は無理をしている。営業キャッシュフロー33億円に対し、設備投資は161億円。差は借入で埋め、長期借入は224億円に増えた。金利が3.5%に上がれば、利払いは今の3倍になる。
利益率は低い。営業利益率3%台は、同業大手の多くより低い。調剤が少ない食品中心の店は、粗利率が低く、人件費の上昇に弱い。
関東は大手が先行する。栃木・茨城で東北と同じ利益率が出るかは、まだ数店の実績しかない。会社自身も、想定より売上が低い店があると認めた。
配当性向は14%と低く、株主に回るお金は少ない。拡大が失敗すれば、借入と減損だけが残る、と弱気の見方は考える。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、東北の運営の型と資産の堅さについて正しい。だが、関東での再現は証明されておらず、前期の出店と利益の未達、借入への依存は、弱気の指摘が重い。事業の質では勝ち、拡大の実行と財務では不安が残る、という整理になる。確率は、中立を最大の4割弱に置き、やや悲観を28%と、やや楽観の17%より厚くした。10年の中立でもROEは8〜9%で、資本コストをわずかに上回るだけ。出店の遅れと借入の利払いを織り込んで価値を出した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 4,985 円970 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 401 円78 億円)。 今の値に割り戻すと 2,820 円549 億円、今との差 +86.9%、 期待の年率 +13.6%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 9,990 円1,943 億円 | 545 円106 億円 | +598.1% | +21.4% | 632 円123 億円 |
| やや楽観 | 17% | 7,788 円1,515 億円 | 488 円95 億円 | +448.5% | +18.6% | 1,407 円274 億円 |
| 中立 | 37% | 6,231 円1,212 億円 | 437 円85 億円 | +341.9% | +16.0% | 2,467 円480 億円 |
| やや悲観 | 28% | 2,257 円439 億円 | 355 円69 億円 | +73.1% | +5.6% | 731 円142 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,033 円201 億円 | 206 円40 億円 | −17.9% | −2.0% | 149 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,985 円970 億円 | 401 円78 億円 | +256.9% | +13.6% | 5,386 円1,048 億円 |
今の株価時価総額 1,509 円294 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 計画どおりに店を増やし、関東でも東北並みに稼ぐ 利益 111 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 9,990 円1,943 億円
2036年2月期までに店が900店を超える。東北は深耕で既存店が伸び、関東は栃木・茨城に続いて埼玉・群馬へ面で広がる。物流センターを関東にも置き、配送の費用が下がる。
食品が客を呼び、ヘルス・ビューティの比率が少しずつ上がる。調剤併設はほとんど増やさず、小商圏の低コスト運営を保つ。関東の店は売上が東北より大きく、粗利率も高い。
営業利益率は3.7%まで上がる。過去の山(4.5%)よりは低い。借入は膨らむが、利益が増えて返済が追いつく。
営業利益は190億円ほど、純利益は110億円ほど。配当は純利益の15%前後で、累進配当を続ける。ROEは11%台で、資本コストを上回る。
- 東北(岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島):数量 560(期中平均の店舗数)× 価格 5.27(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 2,951 億円・営業利益 115 億円。出店と既存店が計画どおり伸びる
- 関東(栃木・茨城ほか):数量 340(期中平均の店舗数)× 価格 6.30(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 2,142 億円・営業利益 73 億円。関東で計画に近い出店と黒字化
倍率:事業の純利益 111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.49 倍、時価総額 1,943 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店を計画の9割以上こなし、関東の新店が東北並みの利益率に届き、人件費の上昇も売値に移せる必要がある。出店は前期で計画の77%、利益は92%にとどまった実績があり、1割を切る確率にした。
やや楽観 17% 出店は計画の8割ほどで、東北の深耕が利益を支える 利益 91 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 7,788 円1,515 億円
出店は計画の8割ほどの速度で進み、2036年2月期に840店ほどになる。東北は福島・宮城を中心に空白地へ出店し、関東は栃木と茨城に集中して、物流を共有する。
既存店は物価並みに伸びる。食品の集客が続き、PB(プライベートブランド)と低温物流で粗利率を少し改善する。人件費の上昇は値上げで転嫁し、営業利益率は3.4%に上がる。
関東の新店は、成熟するまでに時間がかかり、東北より利益率が低い。借入は800億円前後に膨らむ。
営業利益は150億円ほど、純利益は90億円ほど。ROEは9〜10%と、資本コストをわずかに上回る。
- 東北(岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島):数量 535(期中平均の店舗数)× 価格 5.17(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 2,766 億円・営業利益 100 億円。東北は深耕で堅調
- 関東(栃木・茨城ほか):数量 295(期中平均の店舗数)× 価格 6.11(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 1,802 億円・営業利益 54 億円。関東は計画の8割ほど
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.61 倍、時価総額 1,515 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の下振れを織り込んでも、東北の深耕と関東の立ち上がりで利益が伸びる姿。前期の出店・利益の達成率が8〜9割だったので、その延長上に置いた。
中立 37% 出店は計画の6〜7割にとどまり、利益率は3%台で足踏み 利益 77 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 6,231 円1,212 億円
出店は計画の6〜7割で、2036年2月期に770店ほどになる。東北は人口減が進むが、小商圏の食品強化型で客を集め、既存店は物価並みに伸びる。関東は栃木・茨城を足がかりに250店ほどまで広げるが、現地の大手との競争で東北より利益率は低い。
営業利益率は3.1%に下がる。関東の新店の立ち上がり費用、人件費の上昇、物流網の再構築が重なるためだ。会社の目標(3%超)に近い水準である。
新店の土地・建物を自前で持つため、設備投資が重い。借入は600億円前後まで増え、金利が3.5%まで上がると利払いが利益を削る。純利益は営業利益の6割にとどまる。
営業利益は130億円ほど、純利益は77億円ほど。配当は純利益の15%前後。ROEは8〜9%で、資本コストをわずかに上回る。
- 東北(岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島):数量 510(期中平均の店舗数)× 価格 5.07(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 2,586 億円・営業利益 88 億円。東北は微増、既存店は物価並み
- 関東(栃木・茨城ほか):数量 250(期中平均の店舗数)× 価格 5.98(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 1,495 億円・営業利益 39 億円。関東は計画の6〜7割、利益率は東北に届かない
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.8 倍、時価総額 1,212 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は前期に計画の77%、利益は92%だった。直近4期の営業利益率は3.2〜3.7%。この実績の延長で、出店の遅れと関東の立ち上がりの重さを織り込み、最大の確率を置いた。
やや悲観 28% 大手の出店と人件費で既存店が細り、関東の採算が悪い 利益 52 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 2,257 円439 億円
東北で大手の出店が続き、薬王堂の既存店は実質で横ばいを割る。値上げが通りにくく、人件費の上昇が利益率を削る。営業利益率は2.5%まで下がる。
関東は先行する大手に勝てず、新店の売上は計画を下回る。出店は計画の半分で止まり、2036年2月期は680店ほど。これまでの設備投資は店の償却と利払いで重くなる。
調剤をほとんど持たないため、調剤報酬の引き下げの影響は小さい。その代わり、食品スーパーや量販店との価格競争の影響を受けやすい。
営業利益は85億円ほど、純利益は52億円ほど。配当は純利益の15%、借入の返済を優先する。ROEは6〜7%で、資本コストを下回る。
- 東北(岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島):数量 480(期中平均の店舗数)× 価格 4.86(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 2,333 億円・営業利益 65 億円。東北は競合の出店で既存店が細る
- 関東(栃木・茨城ほか):数量 190(期中平均の店舗数)× 価格 5.67(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 1,077 億円・営業利益 19 億円。関東の出店が鈍り、採算が悪い
倍率:ROE6.6%が資本コスト7%を下回る。正当化PERの上限は1÷k=12.9倍(ためた利益は額面未満の価値)。その約65%(8.4倍)に置いた。設備投資が重く、利益率が薄い点を織り込んだ。
確率:東北にはイオン傘下のツルハ、ウエルシア、コスモス薬品などが出店を続ける。関東は先行する大手が多い。出店・利益が計画を下回り続けた実績から、4分の1強を置いた。
悲観 12% 関東で失敗し、東北は人口減と競合で縮み、借入が重くのしかかる 利益 13 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,033 円201 億円
関東の新店が計画の売上に届かず、減損が続く。経営は出店を止め、関東の一部を閉める。ただし建てた店は自前なので、閉店しても土地・建物は残り、売却は簿価を下回る。
東北でも人口の減少と大手の出店で既存店が細る。値上げは通らず、人件費の上昇が利益を削る。営業利益率は1%まで落ちる。
借入が数百億円残るため、金利が3.5%まで上がると利払いが利益を食う。純利益は10億円ほどで、2〜3年は赤字の期も出る。配当は据え置くか減らす。
営業利益は20億円ほどまで落ちる。店舗の資産は残るが、稼ぐ力は大きく損なわれる。
- 東北(岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島):数量 440(期中平均の店舗数)× 価格 4.56(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 2,006 億円・営業利益 24 億円。東北は人口減と競合で縮小
- 関東(栃木・茨城ほか):数量 120(期中平均の店舗数)× 価格 5.16(1店舗あたりの年売上(億円、名目))→ 売上 619 億円・営業利益 −3 億円。関東から撤退・減速、減損
倍率:稼ぐ力は薄く、店の土地・建物と在庫が支える床で値が付く。今の自己資本402億円に0.5倍を掛けた約201億円。店舗は地方の専用物件で買い手が限られ、売却は簿価を大きく下回る。内訳は床の資産の欄に書いた。
確率:関東の出店が採算に合わず、東北の人口減と競合が重なり、金利上昇で借入の負担が増す複合の筋書き。店を自前で持ち、借入に頼って拡大した会社の構造的な弱さを見る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
東北(岩手・宮城・青森・秋田・山形・福島)
ドミナント出店した大型店。食品を軸に客を集め、日用品・医薬品・化粧品を買ってもらう。人口の減少と大手の出店が重しになる。
| 数量期中平均の店舗数 | 価格1店舗あたりの年売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 417 | 3.78 | 1,576 | 54 |
| 10 年後 中立 | 510 | 5.07 | 2,586 | 88 |
取り方:2026年2月期末の456店から関東26店を除く東北430店。期首403店からの増加を平均して期中平均を約417店と置いた。売上は全社1,638億円から関東の推定を引いた1,576億円で、1店あたり約3.78億円。営業利益は全社52.85億円に関東の赤字(推定−1.5億円)を足し戻した54.4億円(営業利益率3.5%、直近4期の3.2〜3.7%の範囲)。10年後の価格=今×物価1.34倍×実質の係数(中立1.00)。店数は中立で510店(出店は東北が鈍化、年に10店前後)。
関東(栃木・茨城ほか)
2025年4月に栃木、6月に茨城へ出店した新エリア。360坪型を中心に、超高速ドミナントで面を取る。新店の売上と粗利率は東北より高いが、立ち上げ費用が重い。
| 数量期中平均の店舗数 | 価格1店舗あたりの年売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 13.0 | 4.70 | 61 | −2 |
| 10 年後 中立 | 250 | 5.98 | 1,495 | 39 |
取り方:栃木19店・茨城7店の計26店を、年度途中の開店のため期中平均で約13店と置いた。1店あたり年売上は、東北より高いという会社の説明を踏まえ、東北の約1.25倍の4.7億円と推定(開示は無く推定)。営業利益は立ち上げ費用で−1.5億円と推定。10年後の価格=今×物価1.34倍×実質の係数(中立0.95、先行する大手との競争を見て下げた)。店数は中立で250店(会社計画の約6〜7割)。
リスクと懸念
出店の遅れと計画の未達
2026年2月期の出店は計画の77%、営業利益は9割にとどまった。2023年10月には通期の出店を15店から9店へ下げた前例もある。計画の遅れが続けば、固定費だけが先行する。
関東での採算
関東は大手が先行する市場で、栃木・茨城の実績は数十店にすぎない。想定より売上が低い店があると会社も認めた。東北並みの利益率が出なければ、減損が出る。
借入と金利
設備投資が営業キャッシュフローを大きく上回り、長期借入は224億円に増えた。借入の目安は自己資本の0.9倍。金利が上がると利払いが利益を削る。
大手の再編と競合
イオンのツルハ子会社化など、東北の競合が巨大化している。価格競争と出店競争が強まれば、既存店の客数が細る。
人件費の上昇
従業員のうち臨時社員が約3,000人。最低賃金の上昇は、利益率3%台の事業には重い。値上げで転嫁できなければ、営業利益率が下がる。
東北の人口減少
東北の人口は長期に減る。小商圏の店は客数に直結する。新店と深耕で補えるかが問われる。
今後の分かれ目
- 2027年2月期の出店数が計画の90店の8割(72店)を超えたら
- 出店の実行力が戻ったとして、やや楽観の確率を厚くする。
- 関東の店の営業利益率が東北並みの3%台になったら
- 関東の再現が確認できたとして、楽観の確率を厚くする。
- 営業利益率が3%を割る期が2期続いたら
- 拡大の費用が利益率を構造的に削っているとして、やや悲観の確率を上げる。
- 借入が自己資本の0.9倍を超えたら
- 財務の上限に当たり、出店が止まるとして、やや悲観の確率を厚くする。
- 他社が東北で大型の出店・買収をしたら
- 既存店の客数が競合に取られるとして、東北の既存店の筋書きを下げる。
見ておくもの
- 出店数の達成率と、関東の新店の売上・利益率
- 営業利益率(四半期ごと)と、既存店売上高
- 借入残高とD/Eレシオ、金利
- 営業キャッシュフローと設備投資の差
- 競合(ツルハ・ウエルシア・コスモス薬品など)の東北・北関東での出店
- 配当性向と、累進配当の維持
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後のROEと資本コスト7%から、利益ベースで置いた。中立のROEは8.7%で資本コストをわずかに上回るため、正当化PERの上限は13.6倍、下限は1÷k=12.9倍。ROEが資本コストを上回るので13.0倍に置いた(上限の約96%)。今の株価や自己資本に対する倍率には寄せていない。同業のサンドラッグ・ツルハ・クスリのアオキより利益率が低く、借入も重いため、倍率を低く、資本コストを高く置いた。営業利益率は過去7年の山(4.5%)以下で、中立は直近4期より低い3.1%。関東の新店の立ち上がり費用、人件費の上昇、物流網の再構築を織り込んだ。純利益÷営業利益は中立で0.60と、過去の中央値0.73より低い。借入が増え、金利が1%台から3.5%へ上がる影響を、利払いとして純利益に入れたためだ。賃借の約束は年12.7億円と小さく、残高43億円(20年)。店の多くは自前で、家賃の固定費は大きくない。リース債務66億円は純負債180億円に含めて見ている。新リース会計基準(2028年2月期から店舗の賃借が貸借対照表に載る)で営業利益が少し増え、負債が増えて自己資本比率が下がるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.00%。