結論
G-7ホールディングスは、業務スーパーとオートバックスの加盟店(フランチャイジー)を軸にする、神戸市の持株会社だ。業務スーパーは223店で、同じ看板の運営会社として国内最大である。売上の6割近く、稼ぎの6割強をここで得ている。
この会社の本質は、他人の強い看板を、現場の運営の腕で利益に変えるところにある。仕入れと商品づくりは本部の神戸物産が担う。G-7は店の回転と人の生産性で勝負する。自己資本利益率(ROE)は過去10年の中央値で15%台と高い。
筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当、というものだ。中立の見立てでは稼ぎが伸びるが、悲観側の重みがそれを打ち消す。店は年10店前後のペースで増え、国内の食品需要が横ばいでも売上は10年で7割ほど増える。利益率は3%台のまま動かない前提でも、純利益は7割ほど増える。会社は配当性向50%を目安にする方針を打ち出しており、配当で回収できる部分も大きい。
一方で、気がかりは三つある。会社の運命を、本部との契約が握っていること。精肉などの新しい事業が、まだ稼げていないこと。大株主の上位が信託と財団で、合わせて4割を超えること。これらは資本コストに足さず、やや悲観・悲観の確率を厚くして表した。確率で重み付けした10年後の価値は、今の時価総額を5%ほど上回るだけで、安全域と呼べる差ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、看板を借りて高い資本効率を出す店の運営者として評価できる。投資額が小さく、店が稼働すれば短期間で回収でき、稼いだお金の半分は配当に回せる。オーナー利益の質は悪くない。
一方で、安全域は厚くない。看板は他人のもので、契約の条件が変われば、堀の中身が変わる。利益率が薄いので、少しの悪化で利益が大きく減る。店舗は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても払う固定費として残る。純現金は4億円ほどで、見かけほど財務が強いわけではない。
経営の資本配分は、おおむね合理的だ。配当を上げ、買収も小さく刻む。ただ、精肉や食品の新事業は、まだ株主のお金を増やしたと言える段階にない。買収を膨らませるときは、買い値と稼ぐ力を照らして見直したい。
筆者は、確信を持てるのは業務スーパーの運営と車関連の整備までだと考える。それ以外は、株主として持ち続けたいと言える水準にはない。確率を悲観に厚く置くと、価値は今の値段とほぼ並ぶ。安全域と呼べる差はなく、割安とも言いにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は業務スーパー事業だ。子会社のG-7スーパーマートが、神戸物産の看板で223店を運営している。内訳は関東88、中部54、関西34、九州27、北海道20。売上は1,328億円、経常利益は47億円(2026年3月期)だ。業務スーパーの看板は全国で1,100店を超え、G-7はその最大の加盟店にあたる。
この事業の仕組みは、メーカーでもある本部が低価格の商品を作り、加盟店が売る、という分業にある。加盟店は商品を開発しない。代わりに、人の配置と在庫の回転で利益を生む。G-7は従業員1人あたりの生産性と在庫回転率を重く見ており、ここが他の加盟店との差になっている。
二つ目の柱は車関連事業で、売上の2割強、経常利益の3割近くを占める。オートバックスの加盟店として約76店(兵庫県に半数)を持つほか、鈑金・塗装の拠点、バイク用品店「バイクワールド」、中古車の輸出、京滋地区の自動車販売まで広げている。
三つ目は精肉事業だ。「お肉のてらばやし」を、業務スーパーの店内などに出すテナント型で展開する。店数は200店前後とみられるが、利益はまだ小さい。2026年3月期の中間決算では、経常段階で赤字の寄与だった。
残りは、ミニスーパー、こだわり食品のPB、農業など。2020年にユニーから譲り受けた小型スーパー事業と、2024年に株式を取得したボン・サンテが含まれる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、二重構造だ。外側には、業務スーパーという全国で通じる看板がある。内側には、加盟店として店を黒字で回す運営の腕がある。ただし前者は本部の持ち物で、G-7のものではない。
腕の証拠は数字にある。ROEは過去10年の中央値で15%台、営業利益は10年で3倍超になった。同じ看板を掲げる店でも、運営会社によって収益力には差が出る。G-7の店は、その差の良い側にいる。
弱点は三つある。第一に、契約の条件を決めるのは本部であること。仕入れ価格や出店エリアの調整が不利に動けば、利益率が数%の事業では致命傷になりうる。第二に、利益率の薄さだ。営業利益率は直近で3.1%、売上が1%ずれれば利益は3割ずれる。第三に、前の中期計画の躓きだ。2026年3月期の目標は売上2,500億円・経常利益100億円だったが、途中で2,300億円・86億円に下げた。実績の経常利益は77億円で、下げた後の目標にも届かなかった。
経営は、車関連で培った店舗運営を食品にも移し、買収で新事業を足す戦略をとってきた。精肉と買収した新事業が稼げるかは、まだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食品小売は、人口が減り、数量が伸びない成熟市場だ。そこで伸びているのは、価格の安い業態である。節約志向が定着し、業務スーパーのような低価格の食品専門店は客を集めている。同じ土俵には、ロピア、オーケー、トライアルなどの食品ディスカウントがあり、ドラッグストアも食品を安く売る。
業務スーパーの本部、神戸物産は店数を年30〜40店のペースで増やしてきた。直近は出店ペースが少し鈍っている。長期の目標は1,500店で、今の店数との差はまだある。出店余地が残るのは、中部・近畿などの地方部と、まだ薄い地域だ。
G-7の戦略はこの出店余地を取りにいくことだ。新しい中期計画「中計2030」は、2031年3月期に売上3,500億円・経常利益130億円を掲げ、5年で200店の新規出店を見込む。ただ、好立地は取り合いになる。出店の費用も、物価と人件費の上昇で重くなっている。
車関連は別の事情を抱える。国内の車の保有台数は人口とともに減る方向で、ネット通販との競争も続く。一方で、整備と鈑金は現場の仕事で、通販に取られにくい。オートバックス本体はマレーシアの小売から撤退し、G-7は2026年3月末にその加盟契約を解消した。海外は独自の資本で続ける。
同じ小売業でも、ホームセンターやドン・キホーテとは事業の形が違う。都市の深夜型でも郊外の大型店でもなく、近所で毎日使う食品を安く売る業態だ。だから、住宅着工や訪日客より、家計の節約志向が効く。
資本政策と M&A
配当は厚い。2026年5月に、配当性向の目安を30%から50%へ引き上げ、今の水準を下限とする累進配当(減らさず、増やす方向)に改めた。2026年3月期の配当には、創業50周年の記念配当が含まれる。配当の総額は年30億円ほどで、純利益の6割を超える。
M&Aは積極的だ。2020年にユニーから小型スーパー事業を引き継ぎ、2024年にボン・サンテの全株式を取得し、2026年7月にはグループ内の食品の運営会社を合併した。中計は、食品スーパー、生鮮、宅食、リカー、アウトドア、カスタムカーなどを買収の候補に挙げる。買収の目利きは、ROEを維持できるかの分かれ目になる。
資本構成には特徴がある。大株主の上位は、信託口が27%、公益財団法人が17%ほど。この2つで4割を超え、株が市場に出回る量は少ない。買収提案が成立しにくい構造だが、実質の議決権を誰が持つのかは公開資料からは確かめられなかった。
2022年には、当時の社長が酒気帯び運転の疑いで逮捕され、辞任した。現在の経営は会長兼CEOの金田達三氏が率いる。
還元の点検(P3 2026-10-19):配当性向50%を下限とする累進配当。中立の還元は約55%。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
業務スーパーは、物価高と節約志向が追い風の事業だ。食品の数量は人口とともに減るが、安く買える店に客が移るので、低価格の店は店数も売上も伸びる。神戸物産の長期の目標は1,500店で、全国の店数にはまだ余地がある。G-7はその最大の加盟店で、中部・近畿の出店余地は大きい。
G-7の強みは運営の腕にある。同じ看板の店でも、人の配置と在庫の回転で差が出る。ROEが10年を通じて15%前後を保ったのは、その結果だ。新しい中期計画は5年で200店を出し、売上3,500億円・経常利益130億円を目指す。今の水準から見て、不可能な数字ではない。
車関連は安定した稼ぎ頭だ。オートバックスの店は、整備と鈑金の需要が通販に取られにくい。精肉は店内に併設する形で伸び、出店が進めば黒字化する余地がある。
還元も大きな材料だ。配当性向50%の方針は、配当だけで利益の半分を株主に返す宣言である。累進配当で下限は今の水準、利益が伸びれば増える。大株主が信託と財団で安定しており、経営は長期の戦略を取りやすい。買収の候補も具体的で、小さく刻んで成功を積めば、利益はさらに上積みできる。
慎重な見方
この会社の稼ぎは、他人の看板に乗っているだけだ。業務スーパーの仕入れ条件も、出店エリアも、神戸物産の判断で変わる。本部が直営店を増やしたり、他の加盟店を優先したりすれば、G-7の出店余地は閉ざされる。
利益率はそもそも薄い。営業利益率は直近で3%程度、売上のわずかなずれで利益が大きく動く。2026年3月期の純利益は、投資の回収遅れと減損で減った。中期計画を2,300億円・86億円に下げた後にも、経常利益は77億円で未達だった。計画を守れない実績が、直近で出ている。
精肉は、2026年3月期の中間で経常赤字だった。買収した新事業の収益化も、道半ばだ。新しい買収を積み上げるほど、資本配分の失敗の確率は上がる。
車関連は、国内の保有台数の減少と、EVへの移行が重なる。整備の需要が今の形で残る保証はない。出店には物件の確保と人件費がかかり、家賃は売上が落ちても払い続ける固定費だ。
大株主の上位が信託と財団で、4割を超える。市場に株が少なく、実質の議決権が誰にあるかもつかみにくい。2022年には社長が辞任に至る不祥事もあった。ガバナンスの透明度は、高いとは言えない。
どちらに重みを置いたか
運営の腕と食品の底堅い需要は、強気の見方に分がある。一方で、本部への依存と、計画を割った実績は、慎重な見方が突く急所だ。看板を持たない会社の収益力は、10年後に見通せない。
確率は、中立を37%に置き、悪い側の合計を40%とやや厚くした。良い側の合計は23%だ。この寄せ方で、確率で重み付けした価値は今の時価総額を5%ほど上回る。適正の範囲で、はっきりした割安とは言えない。利益率の薄さと本部への依存を確率で割り引くと、今の値段とほぼ釣り合うというのが計算の答えである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,747 円1,203 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 746 円326 億円)。 今の値に割り戻すと 1,852 円811 億円、今との差 +34.2%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,043 円2,645 億円 | 1,060 円464 億円 | +414.7% | +17.8% | 426 円187 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,538 円1,986 億円 | 923 円404 億円 | +295.7% | +14.7% | 928 円406 億円 |
| 中立 | 37% | 3,342 円1,463 億円 | 818 円358 億円 | +201.5% | +11.7% | 1,539 円674 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,253 円549 億円 | 665 円291 億円 | +39.0% | +3.3% | 537 円235 億円 |
| 悲観 | 12% | 215 円94 億円 | 304 円133 億円 | −62.4% | −9.3% | 62 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,747 円1,203 億円 | 746 円326 億円 | +153.1% | +9.7% | 3,493 円1,529 億円 |
今の株価時価総額 1,380 円604 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 出店が加速し、新しい食品事業も育つ 利益 138 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 6,043 円2,645 億円
業務スーパーの出店が中部と近畿で加速し、店は420店まで増える。節約志向の客を取り込み、1店あたりの売上も物価以上に伸びる。
精肉の「お肉のてらばやし」は新店への併設で収益が出るようになり、買収した事業もグループの稼ぎに加わる。車関連は、オートバックスの新規出店とバイク用品の拡大で堅調に推移する。
会社の中計が掲げる売上3,500億円・経常利益130億円に早く届き、その先も同じ調子で伸びる10年になる。大株主が信託と財団に偏る構造も、増配が続くかぎり市場に受け入れられる。神戸物産の出店も続き、看板の知名度が地方でも定着する。本部との関係は良好で、G-7は新しい商品の売り場づくりでも先行して成果を出す。
- 業務スーパー事業:数量 420(店舗数(店))× 価格 8.34(1店舗あたり年間売上高(億円))→ 売上 3,502 億円・営業利益 147 億円。出店加速・1店売上が物価超。営業利益率4.2%
- 車関連事業:数量 135(拠点数(箇所))× 価格 6.24(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 842 億円・営業利益 40 億円。台数の増加と整備比率の上昇。営業利益率4.8%
- 精肉・その他食品事業:数量 380(拠点数(箇所の推定))× 価格 2.32(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 881 億円・営業利益 25 億円。新店に併設して黒字化。営業利益率2.8%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.18 倍、時価総額 2,645 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店が計画を上回って続き、精肉など新事業まで黒字になる必要がある。過去の中計は下方修正が続いており、確率は低く置いた。
やや楽観 17% 中計に近い歩みで出店が進む 利益 108 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 4,538 円1,986 億円
中計の歩みにおおむね沿って進む。業務スーパーは370店まで増え、1店あたりの売上も物価並みに伸びる。
精肉は赤字を脱し、食品の新事業も小さな黒字で定着する。車関連は拠点が緩やかに増え、整備と鈑金の比率が高まって利益率が少し上がる。
配当は性向50%の方針どおりに続き、純利益の伸びと合わせて株主への還元も厚くなる。ただし中計の数字に完全に届く10年ではなく、利益率の改善は一部にとどまる。出店の費用と好立地の取り合いが、伸びの上限を決める。神戸物産の出店と看板の認知も安定して続き、本部との関係に大きな波風は立たない。買収は小さな案件にとどまり、失敗しても致命傷にならない。
- 業務スーパー事業:数量 370(店舗数(店))× 価格 8.04(1店舗あたり年間売上高(億円))→ 売上 2,975 億円・営業利益 113 億円。中計に近い出店。営業利益率3.8%
- 車関連事業:数量 128(拠点数(箇所))× 価格 6.05(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 775 億円・営業利益 36 億円。緩やかに拠点が増える。営業利益率4.6%
- 精肉・その他食品事業:数量 345(拠点数(箇所の推定))× 価格 2.25(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 777 億円・営業利益 17 億円。赤字を脱し小さな黒字。営業利益率2.2%
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.39 倍、時価総額 1,982 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の中計(売上3,500億円・経常130億円)におおむね沿う筋書き。実績が一度計画を割った会社なので、中立より低く置いた。
中立 37% 中計より数年遅れで、出店が続く 利益 83 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 3,342 円1,463 億円
出店のペースは年10店前後にとどまり、業務スーパーは325店になる。好立地が減り、新店は今より小さな商圏に出るため、1店あたりの売上は物価の伸びをわずかに下回る。
精肉は黒字化するが規模は小さく、食品の新事業も会社を変えるほどには育たない。車関連は、国内の車の保有台数が細る逆風の中で、拠点を少し増やし、整備と鈑金で売上を支える。
利益率は今の水準から大きく動かない。中計の数字には数年遅れで届く。大きな驚きのない、堅実な10年である。配当は方針どおり純利益の半分あまりを返し続ける。本部との関係は今のまま続き、仕入れ条件も大きく変わらない。人件費と物流費の上昇は、物価に沿った値上げでほぼ吸収できる。買収は小さな案件が中心になる。
- 業務スーパー事業:数量 325(店舗数(店))× 価格 7.74(1店舗あたり年間売上高(億円))→ 売上 2,516 億円・営業利益 88 億円。年10店前後・1店売上は物価をやや下回る。営業利益率3.5%
- 車関連事業:数量 120(拠点数(箇所))× 価格 5.87(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 705 億円・営業利益 30 億円。拠点を少し増やす・保有台数の減少が逆風。営業利益率4.3%
- 精肉・その他食品事業:数量 330(拠点数(箇所の推定))× 価格 2.15(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 711 億円・営業利益 11 億円。黒字化するが小規模。営業利益率1.5%
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.55 倍、時価総額 1,450 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は年10店前後と、これまでの実績の延長。本部(神戸物産)の供給力と食品の底堅い需要が支える、中心の筋書き。
やや悲観 28% 本部との関係と出店難で伸びが鈍る 利益 49 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,253 円549 億円
出店コストが上がり、好立地が見つからず、業務スーパーは275店にとどまる。新店の売上は既存店より小さく、1店あたりの売上は物価の伸びに追いつかない。
本部が直営店や他の加盟店を優先する動きが強まり、G-7の取り分も薄くなる。精肉は赤字が長引き、車関連はEVの普及と国内の保有台数の減少で利益率が下がる。
利益は今の水準から横ばいに近づく。配当は方針どおり出すが、内部に残るお金は減る。物価の分だけ数字は膨らむが、実質では伸びない10年になる。人件費の上昇を価格に転嫁しきれず、利益率は今よりやや下がる。買収した事業は思うように稼げず、小さな減損がいくつか出る。ただ会社の存続を揺るがすほどではない。
- 業務スーパー事業:数量 275(店舗数(店))× 価格 7.15(1店舗あたり年間売上高(億円))→ 売上 1,965 億円・営業利益 55 億円。出店鈍化・取り分の低下。営業利益率2.8%
- 車関連事業:数量 108(拠点数(箇所))× 価格 5.33(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 576 億円・営業利益 21 億円。EV化と保有台数減で利益率低下。営業利益率3.6%
- 精肉・その他食品事業:数量 290(拠点数(箇所の推定))× 価格 1.91(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 552 億円・営業利益 4 億円。赤字が長引く。営業利益率0.8%
倍率:ROE 9.0%(純利益 49 億円 ÷ 自己資本 549 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく出す店の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.5% + 残る割合 1/2 ×(9.0 − 8.0)= 8.5%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 13.2 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の約 8 割(7.9 割)に置いた。 計算の前提は借金が実質ゼロ(純現金 4 億円)で、利払いの変化は織り込んでいない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.5 倍・時価総額 519 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:出店コストの上昇・好立地の枯渇・本部との取り分の変化など、すでに前の中計で起きた躓きが10年続く、十分にありうる筋書き。
悲観 12% 看板の優位を失い、店の数も減る 利益 11 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 215 円94 億円
業務スーパーの契約条件が変わり、本部が直営を増やして、G-7の出店余地が閉ざされる。店は235店と今より少し増えるだけで、既存店の売上は物価に負ける。
人件費と家賃は固定費として残るため、売上が落ちると利益はそれ以上に減り、営業利益率は1%台まで落ちる。精肉と新事業は撤退や減損が続き、車関連もEVへの移行で整備の需要を取り込めない。
配当は減らされ、自己資本は減損で目減りする。優良な加盟店ではなく、ふつうの低採算の小売に戻る10年である。それでも店と運営の人材は残り、事業の稼ぐ力はゼロにはならない。
- 業務スーパー事業:数量 235(店舗数(店))× 価格 6.25(1店舗あたり年間売上高(億円))→ 売上 1,469 億円・営業利益 22 億円。契約条件の悪化・直営優先。営業利益率1.5%
- 車関連事業:数量 90.0(拠点数(箇所))× 価格 4.52(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 407 億円・営業利益 8 億円。整備需要を取り込めず低採算。営業利益率2.0%
- 精肉・その他食品事業:数量 250(拠点数(箇所の推定))× 価格 1.66(1拠点あたり年間売上高(億円))→ 売上 414 億円・営業利益 −2 億円。撤退・減損が続く。営業利益率-0.5%
倍率:ROE 2.5%(純利益 11 億円 ÷ 自己資本 457 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 10.5 倍より低い 8.4 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:看板を貸す本部への依存が深く、契約条件が変われば会社の稼ぎが一気に細る。精肉・新事業の失敗と重なる複合の筋書きで、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務スーパー事業
神戸物産の看板で、子会社G-7スーパーマートが運営する低価格食品店。223店(関東88・中部54・関西34・九州27・北海道20、2026年3月末)。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗あたり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 223 | 5.96 | 1,328 | 46 |
| 10 年後 中立 | 325 | 7.74 | 2,516 | 88 |
取り方:売上高1,328億円(会社開示)を期末店数223店で割った。期中に出た店は年間分に満たないため、実際の1店あたりは少し高い。営業利益は、事業の経常利益47億円と、全社の営業利益と経常利益の差から、約45.5億円と推定した。先の価格は、物価で1.34倍、そこから新店が小さな商圏に出る分を差し引き、中立で10年1.30倍とした。
車関連事業
オートバックスの加盟店(約76店)、鈑金・塗装拠点、バイクワールド、中古車輸出、京滋の自動車販売。
| 数量拠点数(箇所) | 価格1拠点あたり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 4.52 | 497 | 22 |
| 10 年後 中立 | 120 | 5.87 | 705 | 30 |
取り方:売上は全社売上2,322億円の21.4%(フィスコ記事の構成比)で約497億円、経常利益は構成比29.2%から約22.6億円、営業利益は約22億円と推定。拠点数は、オートバックス69+同エクスプレス7、鈑金・塗装7、バイクワールド国内14・マレーシア8、京滋の自動車販売4、スズキカーズ1の合計110(出典の拠点別内訳。時期が混在する推定)。先の価格は、物価1.34倍に、国内の車の保有台数の減少で拠点あたりの客が減る分を引き、中立で10年1.30倍とした。
精肉・その他食品事業
精肉小売「お肉のてらばやし」(店舗内テナント中心)、小型スーパー「リコス」、こだわり食品、農業。
| 数量拠点数(箇所の推定) | 価格1拠点あたり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1.66 | 497 | 5 |
| 10 年後 中立 | 330 | 2.15 | 711 | 11 |
取り方:精肉(売上の10.4%)とその他(11.0%)を合わせた約497億円を、拠点数の推定300で割った。拠点数は、精肉の店数約200(会社概要は204店、2024年6月の資料では157店)と、その他食品の約100を足した推定で、開示の数字ではない。営業利益は両事業の経常利益構成比(3.5%・3.6%)から約5億円と推定した。先の価格は物価並みの1.30倍とした。
リスクと懸念
本部(神戸物産)への依存
業務スーパーの仕入れ条件・出店エリア・直営の方針は、本部の判断で変わる。G-7の稼ぎの6割は、この看板に乗っている。契約条件が不利に動けば、利益率が3%台の会社には致命傷になりうる。
利益率の薄さ
営業利益率は直近で3.1%と薄く、売上が1%ずれると利益は3割ずれる。人件費・物流費・家賃の上昇を価格に転嫁できなければ、増収でも減益になる。2026年3月期は増収で純利益が3.5%減った。
中期計画の達成力
前の中計は、2026年3月期の売上2,500億円・経常100億円から、2,300億円・86億円へ下げられた。実績の経常利益は77億円で、下げた後の目標にも届かなかった。新しい中計も、出店の費用と好立地の確保しだいで遅れうる。
精肉と新事業の収益化
精肉は2026年3月期の中間で経常赤字だった。ミニスーパーや買収した新事業も、まだ稼げる形になっていない。買収を重ねるほど、資本配分で価値を壊す可能性が高まる。
大株主の構成とガバナンス
大株主の上位は信託口(27%)と公益財団法人(17%)で、合わせて4割を超える。実質の議決権が誰にあるのかは公開資料から確かめられない。2022年には当時の社長が酒気帯び運転の疑いで逮捕され、辞任した。
車関連の構造的な逆風
国内の車の保有台数は減り、EVへの移行で整備の需要の形も変わる。ネット通販や量販のタイヤ店との競争も続く。マレーシアの小売はオートバックス本体の撤退を受けて加盟契約を解消し、独自運営に移ったため、固有の運営リスクが増えた。
家賃の固定費と新リース会計
店舗は賃借中心で、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。純現金4億円と自己資本比率43.6%は、見かけほど強くない。2028年3月期から新リース会計が入り、貸借対照表の見た目は変わるが、家賃の負担そのものは変わらない。
今後の分かれ目
- 神戸物産が直営店を大きく増やす、または加盟店への条件を厳しくしたら
- G-7の出店余地と取り分が縮む。やや悲観・悲観へ確率を移す。
- 業務スーパーの出店が年20店を超えるペースで定着し、既存店も伸びたら
- 中計の数字に近づく。強気側へ確率を移す。
- 精肉・食品の新事業が2期連続で黒字になったら
- 買収の目利きに信頼がおけるようになり、中立〜やや強気の確率を上げてよい。
- 精肉・新事業の減損や撤退が続いたら
- 資本配分への疑いが強まり、やや悲観側へ寄せる。
- 配当性向50%の方針が崩れる、または累進配当が止まったら
- 還元の前提が外れ、10年の価値を下方修正する。
- 大株主(信託・財団)の持ち分や議決権の使い方が明らかになる、または動いたら
- 買収・再編の可能性や経営の規律の見方が変わる。内容を見て筋書きを見直す。
- 営業利益率が4%を超える水準で定着したら
- 2020年代前半の高い収益力が戻ったことになり、中立〜やや強気を厚くする。
見ておくもの
- 業務スーパーの期末店数と新規出店数(中計は5年で200店)
- 既存店の売上と、営業利益率(直近3.1%)
- 精肉・食品の新事業の損益
- 配当性向と配当の推移(目安50%・累進)
- 神戸物産の直営比率・出店方針・加盟店との契約条件
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)×1店あたり売上(物価込みの名目)でセグメントを積み、利益率は物価で動かさず、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流した(ROEは結果)。倍率は正当化PERの上限(k 7.5%・g 4.0%・残る割合1/2)の8割前後で、中立は中立PERの下限1÷k(12.5倍)に合わせた。悲観は市場の値付けや過去の底でなく、稼ぐ力(純利益÷k)から置いた。今の株価に寄せて幅を狭めてはいない。借金は実質ゼロで金利の影響は織り込んでいない。店舗は賃借中心で、10年後の数字も家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いている(2028年3月期の新リース会計では、営業利益が増え純負債・自己資本比率の見え方が変わる)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.4→19.18 倍・やや楽観 PER 13.3→18.39 倍・中立 PER 12.5→17.55 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。個別のリスク(本部との契約・大株主の構成・新事業の成否)は k に足さず、確率で表した。事業は傾いておらず上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。