結論
ハローズは、広島・岡山・香川などで24時間営業の大型食品スーパーを113店営む会社だ。筆者の結論は、今の値段は安く見える、というものだ。10年の中立で、稼ぎは今の1.6倍に育つ。それでも市場は、利益の9倍弱でしか値を付けていない。
強みは、同じ地域に店を集める出店のやり方にある。450坪から600坪の店を、近隣の商業施設と一体で開く。物流もまとめて効率を上げる。この型で、売上は10年でおよそ2.4倍になった。営業利益率は5%台と、同業の中では高い。
弱みも書いておく。食品スーパーは薄利で、人件費の上昇が直撃する。会社の短期予想は増収でも純利益は減る。出店には毎年100億円を超える資金が要り、稼ぎの大半は新しい店に消える。ROEが上がりにくいのはそのためだ。
筆頭株主の福山市の会社サンローズと社長で3割台の株を持ち、イオンも8%余りを持つ。再編の話は出やすいが、確かな材料はない。筆者は、負ける筋書きでも今の値段を大きくは割らないと見ている。
バリュー投資の観点から
店の数が増え、地域の密度が上がる事業は、オーナーとして持っていたいと思える。立地の目利きで同じ稼ぎを繰り返し増やせるからだ。ただし、食品スーパーは薄利で、他社も同じことをやる。勝ち続けるには、毎年の運営の規律が要る。
見るべきは、新しい店の投下資本に対する稼ぎだ。会社全体のROEは11%台だが、新店は土地や建物に大きな投資が要り、稼ぎは今より低くなりやすい。筆者は、稼ぎの大半を新店に回す会社を、高く評価はしない。それでも、今の利益は残り、純現金もあって、安全域は厚い。
10年先の価値は、今の時価総額を大きく上回る。市場の値付けは、薄利の小売への警戒を映しているが、この会社の資本の使い方は堅実だ。悲観の筋書きでも、売れる資産と稼ぐ力の床があり、元本を大きくは割らない。ただし、これは本質価値の話で、買い時を言うものではない。出店の規律が崩れたら、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
ハローズの店は、売場450坪か600坪の大型食品スーパーで、24時間営業が基本だ。生鮮と総菜を軸に、衣料や日用品の売場を並べる。多くの店は、ドラッグストアや均一価格の雑貨店などの専門店と同じ敷地に入り、近隣型の商業施設をつくる。敷地ごと集客力を高める作りで、専門店からは家賃収入も入る。
商圏は広島、岡山、香川、愛媛、徳島、兵庫、山口の7県。同じ地域の中に店を重ねて出す。店が近いと、配送の効率が上がり、広告も地域で共有できる。2026年2月末で113店。前の計画では、2025年度に120店を掲げていたが、実際の歩みはやや遅れた。
新しい計画は「瀬戸内2814計画」。2030年2月期までに新店へ約600億円、物流に約70億円、既存店に約70億円を投じる。長期では「西日本5000億円構想」を掲げる。営業収益は2026年2月期の2,257億円から、今期は2,456億円と、1割近い増収を見込む。
事業の中身は、食品の小売が大半で、専門店の家賃収入が上乗せになる。国内の食品小売は成熟しており、伸びる余地は店の数にある。店ごとの稼ぎは、地域ごとの競争の強さで決まる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、地域ごとの店の密度と、立地の目利きにある。大型店は広い駐車場が要るので、郊外で良い土地を押さえた会社が有利だ。出店の実績を長く積み、土地の持ち主や開発業者との関係もできている。この目利きが、10年先も店を増やせる条件になる。
ただし、強い堀とまでは言えない。食品は価格の比較が簡単で、地域ごとにライバルが多い。値決めの力は普通だ。筆者は、店の立地と運営の標準化は本物だが、ブランドで客を縛る力は弱いと見る。
資本の使い方は堅実だ。借金は少なく、純現金が148億円ある。ROEは10年間おおむね11〜13%で、同業の平均より高い。一方で、配当性向は2割前後と低く、稼いだ利益は新しい店に回す。この再投資が、同じ稼ぎを生み続けられるかが、いちばんの見どころだ。筆頭株主は福山市の会社サンローズで、株主構成は安定している。ただし少数株主の目線で見ると、還元が厚くない点は気になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
西日本の食品スーパーは、地域ごとに有力な会社がある。岡山・広島には、イオン系のマルナカ・山陽マルナカ、広島のフレスタ、イズミのゆめタウン、愛媛・広島のエブリイなどがひしめく。そこにトライアルなどのディスカウント業態が入り込み、ドラッグストアも食品を強化している。価格の競争は厳しい。
人口は地方で減る。食品の量は、これから10年でじりじり減ると筆者は見る。物価が3%で上がり続けるので、売上の金額は伸びるが、客数は増えにくい。伸びるのは、新しい店で客を取れる会社だけだ。
人件費は最低賃金とともに年3〜5%で上がる。レジの無人化や、物流の集約で吸収できる会社と、できない会社に分かれる。ハローズは店が大型で、1店あたりの人数効率は高い方だ。ただし、中小の地場スーパーが弱って閉店すれば、その商圏は大手が取りに行く。再編と閉店が続くこの市場で、地域ごとに店を重ねるやり方は、まだ有利に働く。コンビニやドラッグストアが食品を伸ばすので、スーパーの客は少しずつ分散する。大型店で品ぞろえと価格を保てるかが、勝ち負けを分ける。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は前期に約15億円、今期は小幅の増配を予想する。配当性向は2割前後で、中期計画の末の目標も20%としている。自社株買いは2026年2月期に約4億円で、前の期はゼロだった。稼ぎの大半は新店と物流に回す方針だ。
大株主は、福山市の資産管理会社サンローズが22.8%、社長の佐藤利行氏が11.7%、イオンが8.5%。この3つで4割を超える。浮動株は少なく、買収の話は、大株主の判断で決まる。イオンは地域の競合の親会社でもある。
純現金が148億円あるが、これは新店の投資の原資だ。5年間で営業のお金の流れは約840億円、投資は760億円以上を見込む。余ったお金として分けず、事業の中に置いて見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同じ地域に集中して店を出すやり方は、前の計画で実績を積んだ。土地の目利き、大型店、商業施設との一体運営という型がそろっていて、年5店以上の出店は無理のない数字だ。新店投資に約600億円を計画し、営業のお金の流れは5年で840億円を見込む。借金に頼らずに自力で出店を続けられる。
人件費が上がっても、店が大型で、1店あたりの人数効率が高い。物流の集約も進み、利益率は5%台を保てる。物価が年3%で上がるので、値上げも通りやすい。西日本5000億円構想が進めば、売上は今の倍以上になる。純現金があり、配当性向は2割と低いので、余力は大きい。安定した株主構成も、長期の出店を支える。この事業を、利益の9倍弱で買えるのは安すぎる。人口が減る地方でも、物価の上昇で金額は伸び、稼ぎの水準は残る。悲観の筋書きでも、店という資産と純現金が下値を支える。店を借りる家賃より、自分で持つ土地建物を生かす出店も多く、固定の重さは見かけほど大きくない。
慎重な見方
食品スーパーは薄利で、人件費と電気代の上昇が利益率を削り続ける。会社の今期予想は増収でも純利益が減り、出店の効果が利益に出にくくなっている。新店の立地は年々難しくなり、稼ぎは今の店より低い。出店の資金は毎年100億円を超え、稼ぎの大半を食う。ROEが上がらないのは、この重さのせいだ。
競合は多い。イオン系のマルナカ、イズミのゆめタウン、エブリイに加え、トライアルなどのディスカウント業態が出店を続け、ドラッグストアも食品を強化している。地方の人口は減るので、客数は減る方向だ。値上げが通らなければ、人件費の分だけ利益が落ちる。大株主のサンローズと社長で3割以上を持つので、少数株主の声は届きにくい。配当性向も低い。物価が3%で上がる世界では、人件費も同じように上がり、値上げは競争で通りにくい。出店の効果は、利益に出るまでに年数がかかる。10年の中立でも、ROEは今より下がる。配当や自社株買いの厚みで株主に報いる姿勢が見えない点も、慎重に見る理由になる。
どちらに重みを置いたか
出店の実績と、地域の密度という強みは本物なので、強気の見方がやや優勢だ。ただし、薄利と人件費の上昇、競争の激しさという慎重な見方の指摘も的を射ている。確率は中立に厚く置き、利益率が下がる側(やや悲観・悲観)に合わせて3割を置いた。ROEは、出店に回す利益の分だけ10年で下がるとみた。価値を決めるのは、利益の残る力で、市場の倍率ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 10,408 円2,222 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,346 円287 億円)。 今の値に割り戻すと 6,117 円1,306 億円、今との差 +64.4%、 期待の年率 +12.2%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 16,090 円3,435 億円 | 2,038 円435 億円 | +387.3% | +17.2% | 1,994 円426 億円 |
| やや楽観 | 24% | 13,645 円2,913 億円 | 1,616 円345 億円 | +310.2% | +15.2% | 3,663 円782 億円 |
| 中立 | 34% | 11,409 円2,436 億円 | 1,358 円290 億円 | +243.2% | +13.1% | 4,341 円927 億円 |
| やや悲観 | 20% | 6,123 円1,307 億円 | 1,077 円230 億円 | +93.6% | +6.8% | 1,440 円307 億円 |
| 悲観 | 11% | 2,360 円504 億円 | 515 円110 億円 | −22.7% | −2.5% | 316 円68 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,408 円2,222 億円 | 1,346 円287 億円 | +216.0% | +12.2% | 11,754 円2,509 億円 |
今の株価時価総額 3,720 円794 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 11% 西日本5000億円構想が前倒しで進む 利益 203 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 16,090 円3,435 億円
中四国から近畿西部まで、450坪型の店が計画どおり、あるいはそれ以上のペースで増える。10年で店は185店まで増え、人口の減る地域でも、近隣の商業施設と組んだ集客力で1店ごとの客数を保つ。値上げは通りやすく、1店の売上は物価を少し上回って伸びる。物流センターの稼働が上がり、仕入れと配送の費用が下がって、利益率は5%台の後半まで上がる。営業収益は5,000億円に届く。強気の筋書きでは、会社の長期構想がほぼ実現し、地域の食品の買い物の中心に位置する会社になる。事業が大きくなる一方で、新店への投資を続けるため、自己資本は積み上がり、ROEは10%を少し超える水準にとどまる。
- 食品スーパー(大型店):数量 185(店数 × 客数の指数(今を 1))× 価格 28(1店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 5,099 億円・営業利益 286 億円。185店×客数指数1.0・営業利益率5.6%
倍率:事業の純利益 203 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.75 倍、時価総額 3,400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店と既存店の両方が会社の計画を上回り、人件費の上昇も値上げで吸収できる必要がある。小売では連続して成功するのは難しく、確率は低めに置いた。
やや楽観 24% 出店が計画どおり進み、利益率は今の水準を保つ 利益 172 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 13,645 円2,913 億円
店は10年で170店になり、年に5〜6店の出店が続く。1店ごとの客数はわずかに減るが、値上げが通るので1店の売上は物価並みに伸びる。人件費と電気代の上昇は、物流の効率化と店の標準化で吸収し、利益率は今の5%台前半を保つ。成長を支えるのは新しい店で、既存店の力だけでは売上は伸びない。配当性向は計画どおり2割台後半まで上がり、稼いだ利益の大部分は新店投資に回る。伸びは緩やかだが、安定していて、利益の質も高く保たれる。イオン系などの競合は商圏の外で動くので、主力の地域では出店の競争が極端には激しくならない。売上は着実に増え、利益も同じ歩調で伸びる。大きな買収や再編には頼らず、自力の出店を続ける。
- 食品スーパー(大型店):数量 168(店数 × 客数の指数(今を 1))× 価格 27(1店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 4,548 億円・営業利益 241 億円。170店×客数指数0.99・営業利益率5.3%
倍率:事業の純利益 172 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.37 倍、時価総額 2,816 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は前の計画で店数を着実に積み上げてきた実績があり、計画どおりの出店は十分ありうる。中立より少し上の置き方として、高めの確率を置いた。
中立 34% 中立:着実に出店し、利益率は少し下がる 利益 143 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 11,409 円2,436 億円
店は10年で155店になり、出店は年4〜5店に落ち着く。地方の人口減で1店ごとの客数は3%ほど減るが、値上げは物価並みに通る。人件費は物価を上回って上がるので、利益率は今の5.5%から5.0%に下がる。強みである24時間営業の大型店、豊富な駐車場、近隣の商業施設との組み合わせは保たれ、今の稼ぎの力は残る。ただし新しい店ほど立地は難しくなり、投下資本の稼ぎは今より低くなる。稼ぎの伸びは出店で決まるので、株主への還元は計画どおり配当が中心で、自社株買いは小さい。10年の間に、競合の再編や撤退で、一部の商圏では店が増やしやすくなる。ただし、大きな買収はせず、自力の出店で伸びる。
- 食品スーパー(大型店):数量 150(店数 × 客数の指数(今を 1))× 価格 27(1店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 4,023 億円・営業利益 201 億円。155店×客数指数0.97・営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.91 倍、時価総額 2,275 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画を少し下回るペースの出店と、人件費の上昇で利益率が少し下がる姿を、強気と慎重の見方の落としどころとした。会社の短期予想が増収・微益にとどまることも織り込んだ。
やや悲観 20% 値引き競争で利益率が薄くなり、出店も鈍る 利益 98 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 6,123 円1,307 億円
ディスカウント業態やドラッグストアの食品売場に、客を取られる。店は140店にとどまり、1店ごとの客数は6%ほど減る。値上げも競争のせいで物価に届かない。人件費は物価を上回って上がり続け、営業利益率は4.0%まで落ちる。出店で売上は増えるが、新店の稼ぎが低いので、利益はあまり増えない。それでも需要が消えるわけではなく、生活必需品の店として、そこそこの利益は続く。新規出店の効果が利益に出るまでの年数は長くなり、会社の成長の物語は、今より地味になる。大株主の動きも読みにくく、再編があっても利益の水準は変わらない。10年たっても、市場に評価される成長の物語は描きにくい。
- 食品スーパー(大型店):数量 132(店数 × 客数の指数(今を 1))× 価格 26(1店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 3,417 億円・営業利益 137 億円。140店×客数指数0.94・営業利益率4.0%
倍率:事業の ROE 6.7%(純利益 98 億円 ÷ 自己資本 1,465 億円)が k 7.25% を下回る。この場合の正当化 PER は 1÷k = 13.8 倍が上限。伸びも堀の持ちも低いので、上限の 8 割、11.0 倍に置いた。
確率:食品スーパーは地域内の値下げ競争が起きやすく、人件費の上昇も重い。会社の利益率は、前の5年で上がった分を、一部戻す可能性が十分にある。
悲観 11% 地域の競争に敗れ、優良さを失う 利益 36 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 2,360 円504 億円
岡山・広島・香川などで、ディスカウンターとドラッグストアの食品売場、ネットスーパーが同時に力を増す。店は120店まで減り、客数は15%落ち、値上げも物価に届かない。人件費だけが上がり続け、営業利益率は2%台前半まで落ちる。24時間営業の大型店は固定費が重く、売上が落ちると利益が一気に削られる。店の数は残るが、地域の中堅として価格で負ける店になり、利益は今の4割にとどまる。借金が少ないので倒れはしないが、成長の物語は終わる。大型店の固定費と家賃は売上が落ちても減らないので、利益の落ち込みは売上の落ち込みよりずっと大きい。
- 食品スーパー(大型店):数量 102(店数 × 客数の指数(今を 1))× 価格 24(1店あたり年間営業収益(億円))→ 売上 2,445 億円・営業利益 54 億円。120店×客数指数0.85・営業利益率2.2%
倍率:ROE 3.0%、稼ぐ力(事業の純利益 36 億円 ÷ k 7.25% = 497 億円)が小さい。売れる資産の税後(floor_assets_oku)を床とみて、今の自己資本 775 億円に対する PBR 0.65 倍で測った。
確率:ディスカウンターの出店とEC・宅配の食品が同時に強まり、地方の人口減も重なる複合の筋書き。生活必需品の店は消えないが、地域の中堅が競争に負けて利益を失う例は十分にあり、無視しない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー(大型店)
瀬戸内・西日本の大型食品スーパーと、専門店の入る近隣型商業施設。営業収益は商品売上と家賃収入の合計。
| 数量店数 × 客数の指数(今を 1) | 価格1店あたり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 113 | 20 | 2,257 | 125 |
| 10 年後 中立 | 150 | 27 | 4,023 | 201 |
取り方:2026年2月期の営業収益2,257億円を期末の113店で割り、1店あたり約20億円を出した。数量は店数に客数の指数(今を1)を掛けたもの。価格は1店の売上の名目の値で、中立では物価並みの10年1.34倍とした。客数は地方の人口減で10年0.97倍、店数は年4〜5店の純増で155店とした。
リスクと懸念
人件費の上昇
最低賃金とパート不足で、店の運営費は年3〜5%で上がる。値上げが追いつかなければ、利益率は直接削られる。会社の今期予想で、増収でも純利益が減るのは、この重さを映している。
新店の稼ぎの低下
良い立地は先に押さえられ、新しい店ほど稼ぎは下がりやすい。出店に毎年100億円超を投じるので、稼ぎの低い新店が続けば、ROEが下がる。
競合の出店と価格競争
イオン系のマルナカ、イズミのゆめタウン、エブリイ、トライアルなど、地域の競合は多い。ドラッグストアも食品を強化している。価格で負ければ、客数と利益率を同時に失う。
大株主の動き
サンローズと社長で3割以上、イオンも8%余りを持つ。浮動株が少なく、大株主の判断で再編や株の売却が起きうる。少数株主の意向は通りにくい。
家賃の固定費
店の多くを借りて営むなら、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束になる。2028年2月期からの新しいリース会計で、借金とリースの負債が貸借対照表に載り、見かけの財務は弱く見える。
地方の人口減
食品の量は人口に結びつく。出店する地域の人口が減れば、1店あたりの客数は減る。値上げで金額を保てる間はよいが、物価の波が引けば数量の減りが表に出る。
今後の分かれ目
- 年の出店が6店を超え、新店の営業利益率が既存店並みに出たら
- 楽観・やや楽観の筋書きに重みを移す。
- 純利益が増収にもかかわらず2期続けて減ったら
- 人件費の吸収が難しいとみて、やや悲観側に重みを移す。
- トライアルなどが主力の商圏で連続して出店したら
- 価格競争の激化として、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- サンローズやイオンが株の売却や再編を表明したら
- 買収・統合の筋書きを点検し、条件次第で価値を見直す。
- 配当性向が中計の目標を超えて上がり、自社株買いが厚くなったら
- 資本の使い方の規律が上がったとみて、倍率の質の評価を上げる。
見ておくもの
- 年間の出店数と、新店の営業利益率
- 既存店の客数と客単価(月次)
- 人件費の増加額と営業利益率の推移
- 大株主(サンローズ・イオン・フィデリティ系)の持ち株の変化
倍率と資本コストの決め方
店数×客数の指数を数量、1店の売上を名目の価格として積み、利益率は人件費の上昇と競争から出した。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 7.25%、g 3.5%、RONIC=k+1/2×(ROE−k))の8〜9割に置いた。ROEが10年で下がるのは、稼ぎの大半を新店に回す前提による。今の値段や過去の倍率は、倍率の根拠にしていない。悲観は稼ぐ力と売れる資産の床から置いた。10年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえ、2028年2月期からのリース会計基準で数字の形が変わることは考えに入れない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→16.75 倍・やや楽観 PER 13.5→16.37 倍・中立 PER 12.7→15.91 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25% を足した 7.25%。地方の人口減を寿命 +0.25% で見る点は、同じ中四国のフジに合わせた。ライフコーポレーション・ベルク(7.0%)より高いのは、首都圏との人口の差による。出店の実行や大株主の動きは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いておらず上乗せは置かない。