結論
ヨシックスホールディングスは、握り寿司を看板にした低価格の居酒屋チェーンだ。「や台ずし」を中心に401店を構え、ほとんどが直営になる。2026年3月期は売上259億円、営業利益30億円(利益率11.6%)と、コロナ禍の赤字から立ち直って過去最高を更新した。今の株価は、出店の成功を大きく織り込んでいる。五つの筋書きを重ねた価値は234億円で、時価総額304億円より約23%低く、判定はやや割高だ。
強みは出店の型にある。駅の乗降客が6,000人以上の中堅立地に30〜40坪で出し、家賃を売上の約7%に抑える。内装は子会社の建装部門が安く仕上げる。年に20店あまり増やし、既存店の売上も前年を上回っている。
弱みは、市場そのものが縮む外食で、固定費の重い直営店を増やしている点だ。純現金は81億円と時価総額の27%あるが、家賃という毎年必ず払う約束がその裏にある。
10年後の筋書きは、店舗数が520店前後に増え、人件費の上昇で営業利益率が10%台前半に下がる姿を中心に置いた。居酒屋の客数が細る悲観の筋書きでは、家賃の固定費が利益を削る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、ヨシックスは「同じ型の店を安く出し続ける」ことで稼ぐ会社だ。堀は、ブランドではなく、家賃と内装の低さという運営の巧さにある。他社が同じ立地・同じコストで出せば、堀は消える。
株主のものになる利益は、純利益の6割ほどとみる。出店の設備投資と運転資金に、利益の4割近くを回すからだ。このお金が高い収益を生むうちは良いが、居酒屋の客数が減る世界では、出店の追加投資が先々報われる保証はない。
筆者がいちばん気にするのは、家賃という固定の約束だ。売上が1割落ちるだけで、利益は3割以上削られる。純現金は安全域に見えるが、その一部は家賃や閉店費用にあてる必要がある。
結論として、型の再現性は評価できるが、10年先の客数の減少という逆風を、価格の力で押し返せるかはまだ証明されていない。この不確かさを、純現金の厚みで割り引いて見るのが妥当だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は「や台ずし」だ。握り寿司や串、一品料理を低価格で出す居酒屋で、売上の9割を占める。2026年3月期は363店で、新規出店と退店を合わせて純増19店だった。1店あたりの年商は約7,000万円。駅から近い立地で、昼の15時から開ける店を増やし、時間帯を広げている。
新しい業態も育てている。ひとくち餃子の頂が15店、全品を均一価格で出すニパチが11店、名古屋で単価の高い「鋼」を試し、2025年7月にはエビフライと味噌かつの専門店「海老どて食堂」を買収した。ただし、これらを合わせても売上の1割にとどまる。
事業のもう一つの武器は、グループに建装部門を持つことだ。出店の内装を自社で手がけ、費用を抑えて、早く回収する。外部へも売っているが、売上は5億円と小さい。
運営は直営が中心で、フランチャイズ店は2店しかない。そのため売上が伸びれば利益に直結する一方、店が不振の時は固定費を自分で背負う。従業員は正社員が約930人、パートが約1,200人だ。出店は、社内で「地方戦略」と呼ぶ、人口の多くない地方都市の中堅立地が主力になる。
優良さと弱いところ
強みは、低コストで同じ型の店を何度も出せる仕組みだ。家賃を売上の約7%に抑え、内装を安く作れる。7%は、同業の10%超より3ポイント以上低い。これが営業利益率11%台を支えている。コロナ禍の赤字から2年で元の水準に戻った事実は、損益分岐点の低さを示す。
食材は産地を地域に分ける仕入れで高騰を吸収し、メニューの組み替えと価格改定で転嫁してきた。2026年3月期は原価率33%を保ち、粗利率は67%だ。
弱みは三つある。第一に、主力業態「や台ずし」に9割を依存する。第二に、アルコールの消費が長く減り、若い世代の飲み方も変わるなかで、居酒屋の市場そのものが縮む。第三に、代表取締役会長CEOへの依存が大きい。筆頭株主の株式会社吉岡が35%、会長個人が6%を持つオーナー会社で、経営の速さは出るが、少数株主の発言力は限られる。
資本効率は高い。ROEは10年の中央値で17%、直近も15%だ。ただし自己資本比率77%のうち、現金の積み上がりが目立ち、ROEを薄めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋市場は、コロナ禍で大きく縮んだ後、インバウンドと宴会の戻りで回復した。ただ、長い目で見れば、飲酒人口の減少と若年層の飲み方の変化で、居酒屋の客数は細っていく。外食全体としては人口減で数量は伸びにくい。
低価格の居酒屋は、鳥貴族や磯丸水産、塚田農場などの大手が都市部の好立地を取り合ってきた。ヨシックスは大手が出にくい地方都市の中堅立地に出ることで、競争を避けている。会社は、この方式であと4,000店あまり出せる余地があると見ている。その数字はそのまま受け取れないが、地方の駅前に空きがあるのは事実だ。
コストは上がる。食材は円安で高く、時給は最低賃金の引き上げで上がり、パート・アルバイトへの社会保険の適用拡大も人件費を押し上げる。光熱費と採用広告費も増えている。価格を上げても客数が落ちない間は耐えられるが、値上げの余地は小さい。
10年の分かれ目は三つある。出店を続けても1店あたりの売上を保てるか、人件費の上昇を価格で吸収できるか、そして居酒屋という業態の客数が細るスピードだ。
業界の構造として、居酒屋は参入の壁が低く、家賃と人件費が主なコストなので、立地を押さえた会社が強い。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当性向は15%にすぎない。2026年8月には自己株式の取得に関する開示があったが、規模は確認できなかった。利益のほとんどは出店の投資と現金の積み上げに回っている。設備投資は年8億円ほどで、営業キャッシュフロー32億円に対して小さい。
そのため純現金は81億円まで増えた。ただ、この現金は見かけほど強くない。家賃は売上の約7%、年18億円ほどを毎年払う約束だ。しかも新リース会計は2028年3月期から貸借対照表に載り、純負債は大きく増えて見える。事業に必要な運転資金の分も差し引くと、余る現金は25億円ほどとみる。
中期目標は、500店、売上300億円、経常利益率10%超だ。長期では3,000店、1,800億円を掲げる。買収はエビフライ専門店の子会社化があるが、規模は小さい。
株主優待は、100株以上に食事券と割引券を贈る。額面でも年1億円に満たない見込みで、価値の判断にはほとんど影響しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
出店の型は、すでに検証された。コロナ禍で売上が半分以下になっても、2年で利益率を11%台に戻した。家賃を売上の約7%に抑える方式は、同業より3ポイント以上の余裕を持ち、地方の中堅立地は競争相手が少ない。会社は500店で売上300億円、経常利益率10%超を掲げ、長期は3,000店だ。年に20店あまり出せば、10年後には550店を超える。
既存店の売上と客数は、直近の2四半期で前年を上回った。15時開店の拡大や新業態で、時間帯と客層を広げている。食材高は仕入れの地域化と価格改定で吸収し、粗利率は67%を保つ。建装部門が内装費を抑えるので、出店の回収も早い。純現金81億円と営業キャッシュフロー32億円があり、借り入れなしで出店を続けられる。配当性向15%という低さは、還元余力の大きさでもある。株価に織り込まれない成長を10年続ければ、利益は50億円近くまで増える。
さらに、地方の駅前に空き物件が出るのは、人口減で小さな店が閉まるからで、中堅立地の供給は当面続く。同業が都市部に偏る間に、会社は先に良い物件を押さえられる。
慎重な見方
稼ぎの質には注意が必要だ。2026年3月期の営業利益は29%増えたが、売上の伸びの多くは出店によるもので、既存店の伸びではない。しかも会社の2027年3月期の予想は、売上が10%増える一方、営業利益は4%しか増えず、利益率は10.9%に下がる。人件費と出店の初期費用が先に出るからだ。
居酒屋の市場は、飲酒人口の減少で長く縮む。ヨシックスは都市部を避けて地方に出ているが、地方こそ人口減が早い。出店を重ねるほど、近い店どうしの食い合いも起きる。家賃は毎年約18億円と固定で、売上が1割落ちるだけで、利益は3割以上減る。
コロナ禍の経験は、この固定費の重さを示した。2021年3月期は営業利益が22億円の赤字になった。純現金81億円は、売上が止まれば数年で減る。さらに、会長CEOとその資産管理会社が4割以上を握り、少数株主は現金の使い道を決められない。
そのうえ、新業態は店数が少なく、まだ全社の利益を支える段階にない。主力に何かあれば、全体が同時に傾く構造は変わらない。
どちらに重みを置いたか
やや割高。 判定の理由は、五つの筋書きを確率で重ねた価値と、今の時価総額との差から出た数字による。この差は、出店の型が10年通用するかという一点に大きく左右される。強気の筋書きと慎重な筋書きの差が大きいので、判定の幅は広い。確認すべきは、既存店の売上と営業利益率の二つだ。
見る順序としては、まず既存店の売上が前年を割らないかを四半期ごとに確かめ、次に営業利益率が10%を維持するかを見る。この二つが崩れなければ、強気寄りの筋書きに確率を移してよい。逆に崩れれば、慎重な筋書きの確率を上げる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,500 円563 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 925 円95 億円)。 今の値に割り戻すと 3,244 円332 億円、今との差 +7.4%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,046 円927 億円 | 1,386 円142 億円 | +245.4% | +13.2% | 1,043 円107 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,833 円802 億円 | 1,211 円124 億円 | +199.5% | +11.6% | 1,990 円204 億円 |
| 中立 | 38% | 6,468 円663 億円 | 996 円102 億円 | +147.2% | +9.5% | 2,836 円291 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,777 円182 億円 | 576 円59 億円 | −22.1% | −2.5% | 471 円48 億円 |
| 悲観 | 10% | 585 円60 億円 | 264 円27 億円 | −71.9% | −11.9% | 85 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,500 円563 億円 | 925 円95 億円 | +112.7% | +7.8% | 6,425 円658 億円 |
今の株価時価総額 3,020 円309 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 地方の出店を型どおり続け、600店に近づく 利益 47 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 9,046 円927 億円
年に20店あまりの純増を保ち、店舗数は600店に近づく。1店あたりの売上は、客単価の上昇で実質でも少し伸びる。建装部門の低コストと家賃7%の型が崩れず、営業利益率は12%近くを保つ。新業態の餃子やニパチも採算に乗り、売上は10年で540億円、営業利益は63億円になる。純現金は出店と還元に回り、配当性向も4割に上がる。さらに、自己資本比率は高いまま、利益の4割を配当や自社株買いに回しても出店の資金は足りる。店舗の増加は、地方の中堅都市で空いた駅前物件を押さえることで進む。建装部門が内装を内製するため、出店の費用は他社より軽く、回収は3年あまりで済む。新業態の餃子や均一価格の店は、や台ずしと違う時間帯と客層を取り、店あたりの利益率を押し上げる。10年後の純利益は47億円、ROEは14%台となり、資本コストを十分に上回る。
- や台ずし:数量 520(店舗数(期末、や台ずし))× 価格 0.92(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 478 億円・営業利益 57 億円。年20店の出店が続く(店舗520、1店あたり年商0.92億円)
- その他の業態・建装:数量 80.0(店舗数(期末、その他の業態))× 価格 0.79(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 5 億円。新業態が採算に乗る(店舗80、1店あたり年商0.79億円)
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 18.61 倍、時価総額 889 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の型が10年通用し、地方の中堅立地で食い合いが起きず、新業態も育つ。会社の中期目標を大きく超える筋書きなので1割に抑えた。
やや楽観 22% 中期目標をほぼ達成し、利益率11%台を保つ 利益 41 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 7,833 円802 億円
店舗は500店の少し先まで増え、1店あたりの売上は物価に沿って伸びる。人件費の上昇を価格改定でほぼ吸収し、営業利益率は11%に乗る。売上は約500億円、営業利益は56億円になる。新業態は小さく育つが、全体の1割程度にとどまる。配当は利益に連動して増え、自社株買いも小さく続く。一方で、居酒屋の市場は縮むので、成長の源は出店に限られ、既存店の伸びは物価の範囲にとどまる。人件費の上昇は価格改定と省人化の投資でほぼ吸収できるが、利益率の上積みは限られる。純利益は41億円、ROEは13%近くを保つ。この筋書きでは、会社が掲げる経常利益率10%超を、10年を通して守ることになる。
- や台ずし:数量 490(店舗数(期末、や台ずし))× 価格 0.91(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 446 億円・営業利益 52 億円。500店近くまで増える(店舗490、1店あたり年商0.91億円)
- その他の業態・建装:数量 72.0(店舗数(期末、その他の業態))× 価格 0.78(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 57 億円・営業利益 4 億円。新業態は小さく育つ(店舗72、1店あたり年商0.78億円)
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 18.19 倍、時価総額 762 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:500店・売上300億円という中期目標に近い形で出店が進む。実現しやすい好ケースとして2割強を置いた。
中立 38% 出店を続けるが、人件費で利益率が下がる 利益 34 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 6,468 円663 億円
年10店台の純増が続き、店舗数は520店になる。1店あたりの売上は、物価の上昇には届くが、客数の減少で実質ではわずかに減る。営業利益率は人件費の上昇で11%から10%強に下がる。売上は10年で約450億円と年5%強の伸びになり、営業利益は47億円、純利益は35億円になる。配当性向は3割台半ばに上がり、純資産の積み上がりで ROE は11%台に落ち着く。この筋書きで、会社の中期目標である500店と300億円は、時期を数年遅らせて届く計算になる。純現金は、出店の投資と配当に使っても増え続け、自己資本比率は7割台を保つ。ただし資本は積み上がる一方で、使い道は出店に限られるため、ROEは今の15%から11%台へ下がる。会社の姿は、手堅いが、驚きのない成長企業になる。
- や台ずし:数量 455(店舗数(期末、や台ずし))× 価格 0.88(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 402 億円・営業利益 44 億円。純増が年10店台に鈍る(店舗455、1店あたり年商0.88億円)
- その他の業態・建装:数量 65.0(店舗数(期末、その他の業態))× 価格 0.76(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。新業態は緩やかに増える(店舗65、1店あたり年商0.76億円)
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 17.62 倍、時価総額 617 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は続くが年10店台の純増に鈍り、人件費の上昇で利益率が少し下がる。最も蓋然性が高い。
やや悲観 20% 客数が細り、人件費で利益率が半分になる 利益 16 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,777 円182 億円
飲酒人口の減少が既存店を直撃し、客数は実質で1割以上減る。出店の食い合いも重なり、不採算店の閉鎖が増えて、店舗数は450店ほどで頭打ちになる。家賃は固定のまま、人件費が価格を上回って上がる。営業利益率は6.6%まで下がり、営業利益は23億円になる。ROE は6%台と資本コストを下回り、配当は据え置きに近づく。この筋書きでも、純現金があるので債務の問題は起きない。ただし、成長の物語は止まり、株主への戻りは配当が中心になる。この筋書きの利益は15億円で、今の20億円より少ない。ただ、コロナ禍の赤字の時期より、はるかに良い水準だ。純現金と、店の保証金が下支えをする。
- や台ずし:数量 400(店舗数(期末、や台ずし))× 価格 0.79(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 317 億円・営業利益 24 億円。既存店が細り出店が頭打ち(店舗400、1店あたり年商0.79億円)
- その他の業態・建装:数量 50.0(店舗数(期末、その他の業態))× 価格 0.68(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。新業態の不採算店を整理(店舗50、1店あたり年商0.68億円)
倍率:事業の ROE は6%台と k 7.75% を下回るので、PER の上限は 1÷k の12.1 倍。そこから稼ぎの質の低下を割り引き、7割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.5 倍・時価総額 144 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:居酒屋の客数の減少が出店の効果を打ち消し、人件費と家賃の固定費が利益を削る。過去の水準(利益率5〜8%)に近い。2割と厚めに置いた。
悲観 10% 居酒屋の客数が構造的に細り、固定費で赤字に近づく 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 585 円60 億円
居酒屋の客数が構造的に減り、既存店の売上は実質で2割以上落ちる。人件費は上がり、家賃は売上が減っても変わらないため、営業利益はほぼ消える。会社は不採算店を大量に閉めるが、解約の費用も出る。店舗数は300店ほどに減り、新業態も整理される。減損で自己資本は30億円ほど減る。それでも純現金と敷金・保証金が残るので、売れる資産の税後が株価の床になる。この筋書きは、コロナ禍で一度経験した水準に近い。違いは、今回は一時的な休業ではなく、構造的に客が戻らないと置く点だ。売れる資産の見積もりは、純現金のうち使える分と保証金の半分で、およそ60億円になる。時価総額の2割にあたる。この床は、事業が壊れても資産が残るという意味で、株主にとっての最後の守りだ。
- や台ずし:数量 270(店舗数(期末、や台ずし))× 価格 0.68(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 182 億円・営業利益 1 億円。客数が構造的に細り閉店が増える(店舗270、1店あたり年商0.68億円)
- その他の業態・建装:数量 30.0(店舗数(期末、その他の業態))× 価格 0.58(1店舗あたり年商(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。新業態を整理(店舗30、1店あたり年商0.58億円)
倍率:稼ぐ力はほぼ消え、価値は売れる資産の税後で決まる。今の自己資本に PBR 0.45 倍を掛けた額が、floor_assets_oku の内訳(純現金の6割、敷金・保証金の半分)と一致する。
確率:飲酒文化の変化と人口減が重なり、客数が構造的に細る。家賃と人件費の固定費が残り、利益はほぼ消える。純現金が床を作るので1割に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
や台ずし
握り寿司居酒屋。駅から近い中堅の立地に30〜40坪で出す。直営が中心で、FC はごく少数。
| 数量店舗数(期末、や台ずし) | 価格1店舗あたり年商(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 363 | 0.65 | 237 | 28 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.88 | 402 | 44 |
取り方:数量は期末の店舗数、価格は売上237.1億円÷期末店舗数。期中に出店が多い年は期末店舗で割ると低く出るので、先の筋書きの価格は期中平均店舗で割った0.672億円を起点に、物価の倍率と1店あたりの実質(客数×客単価)で置いた。利益は外食の単一セグメントのため業態別の開示がなく、連結11.6%から推定(推定)。
その他の業態・建装
ひとくち餃子の頂、ニパチ、華花、海老どて食堂などの新業態と、グループ向け建装事業。
| 数量店舗数(期末、その他の業態) | 価格1店舗あたり年商(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.0 | 0.58 | 22 | 2 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 0.76 | 50 | 3 |
取り方:売上259.1億円からや台ずし237.1億円を引いた22.0億円を、その他の業態の店舗数38(401−363)で割った。建装事業の売上5.0億円も含むため、1店あたりの値は参考値。利益は連結29.95億円からや台ずしの推定分を引いた残り(推定)。
リスクと懸念
家賃という固定費
家賃は年18億円ほどで、売上が落ちても減らない。売上が1割落ちると利益は3割以上削られる。2021年3月期は営業赤字22億円を出した。
居酒屋市場の縮小
飲酒人口の減少と若年層の飲み方の変化で、居酒屋の客数は長く細る。地方こそ人口減が早く、既存店の客数を保てるかが長期の焦点になる。
人件費と食材費の上昇
最低賃金の引き上げやパート・アルバイトへの社会保険の適用拡大で、人件費は構造的に上がる。円安による食材高も続き、価格転嫁には限界がある。
主力業態への依存
売上の9割が「や台ずし」で、ブランドの陳腐化や食中毒など一つの事故が全社の利益を揺らす。新業態はまだ小さい。
出店の食い合いと立地
同じ型の店を重ねるほど、近い店どうしで客を奪い合う。条件に合う立地を確保できなければ、出店の計画が遅れる。
オーナー支配と現金の使い道
筆頭株主の株式会社吉岡が35%、会長個人が6%を持つ。少数株主は、積み上がる現金の使い道を決められない。割高な買収や非効率な投資のリスクも排除できない。
今後の分かれ目
- 既存店の売上が2四半期続けて前年を下回る
- 客数の減少が本格化した証拠で、出店の効果が薄れる。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 営業利益率が10%を割り込み、出店を続けても利益が伸びなくなる
- 人件費の上昇が価格を上回り、成長が利益に結びつかなくなる。倍率の見方を下げる。
- 自社株買いや増配で総還元性向が4割を超える
- 積み上がった現金の戻りが進み、余った現金の価値の見積もりが上がる。
- 店舗数が500店に達し、経常利益率10%超を保つ
- 中期目標の達成で成長の型が証明され、強気の筋書きの確率が上がる。
- 新リース会計の適用で、純負債が見かけ上大きく増える
- 数字の形が変わるだけで価値は同じ。ただし家賃の約束が見える形になり、現金の評価が現実的になる。
- 新業態(餃子、ニパチ、鋼、海老どて)の中に、100店規模へ広がるものが出る
- や台ずし依存が薄れ、長期の成長に別の柱ができる。楽観側の確率が上がる。
見ておくもの
- 既存店の売上と客数の推移
- 営業利益率10%の維持
- 月次の出店と退店の数
- 人件費率と家賃率
- 総還元性向と自社株買い
- 純現金の増減
- 新業態の店舗数と採算
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見ず、店舗数と1店あたり年商、利益率から10年後の利益を積み、k 7.75%・長期成長 4%・残る割合 0.5 の式の正当化 PER の9割(楽観寄り)〜85%(中立)に置いた。やや悲観は ROE が資本コストを下回るので上限 1÷k から割り引き、悲観は売れる資産の床から置いた。余った現金は戻り方0.5で足した。新リース会計は2028年3月期から貸借対照表に載るが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.8→18.61 倍・やや楽観 PER 13→18.19 倍・中立 PER 11.8→17.62 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75%(循環・値決め・寿命が各 +0.25)を足して k 7.75%。純現金で借金の加算はなく、リースの約束は筋書き(悲観の固定費)で表すので k には足さない。事業が傾いてもいないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。