結論
NEW ART HOLDINGSは、「銀座ダイヤモンドシライシ」と「エクセルコダイヤモンド」で婚約・結婚指輪を売る会社だ。全国に約70店舗を持ち、売上の7割強をジュエリー事業が占める。香港・深圳の食品卸、美容、軽井沢のリゾート開発も抱える。
筆者の結論は「やや割高」だ。直近の営業利益は49億円で、前の期より26%伸びた。値引きに頼らない売り方が利益率を押し上げた。この稼ぐ力は本物である。
割高と見る理由は三つある。一つ目は、婚約・結婚指輪の買い手そのものが、少子化と婚姻数の減少で細ることだ。二つ目は、前期の配当が純利益の1.3倍を超え、借入が88億円あること。三つ目は、軽井沢に約100億円を投じる計画で、回収がまだ見えないことだ。
強みは、銀座の名前と、指輪の高い利益率である。ジュエリー事業の利益率は25%に近い。この力で、食品と美容の赤字や全社費用を吸収している。
10年の中立は、婚姻数の減少を値段と海外で一部補う姿とした。営業利益は、今より1割ほど増える水準にとどまると見る。
バリュー投資の観点から
安全域の目で見ると、利益率の高さと、配当の厚さが目につく。ただ、この高い利益率は、天然ダイヤの高い値段と、買い手の数が保たれることが前提である。婚姻数が減り、人工ダイヤが広がれば、前提が崩れる。
経営陣の資本配分は、評価が割れる。配当と自己株消却は株主の利益になるが、前期の配当は利益を超えた。その一方で、軽井沢には約100億円を投じる。本業で稼いだお金を、別の事業に振り向ける動きは、成功すれば価値が増えるが、外れれば傷が深い。
本業の力と、周辺事業の重さを、分けて見る必要がある。筆者は、指輪の稼ぐ力を高く評価しつつ、食品・美容・リゾートの3事業が、全体の質を下げると見る。10年で見れば、本業の縮小をどこまで補えるかが、価値を決める。
筆者の目では、この会社の価値の源は、銀座の名前という無形の資産にある。名前は一度傷つくと戻りにくい。値引きをやめた判断は、名前を守る点で理にかなう。ただ、守る名前の市場が細る以上、10年で見た成長は大きく見込めない。株主に厚く返す姿勢は評価できるが、返す原資は本業の利益に限られる。借入で返す形になれば、安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、婚約指輪と結婚指輪である。売上320億円のうち231億円がジュエリー・アート・オークション事業で、利益は58億円と全体を支える。銀座に二つの本店を置き、全国に約70店舗を構える。
指輪は、一生に一度の買い物である。ブランドへの信頼が値段を支えるため、値引きをやめて適正価格に戻す方針が利益率を押し上げた。2025年12月に香港、2026年2月にシンガポールへ新店を出し、海外にも手を伸ばす。ダイヤの原石を自前で調達するため、ドバイに子会社を置く方針も示した。
二番手は、香港と深圳の食品卸で、売上72億円と急に伸びたが、利益は1億円と薄い。美容は赤字が続く。軽井沢では、芸術を軸にした高級住宅「Sampen House of Art」を2027年に完成させる計画だ。
店は借りるものが多く、連結子会社の賃借料は年約14億円に上る。
収益の柱は、売上の7割を占めるジュエリー事業だ。利益は食品、美容、リゾートの赤字や全社費用を合わせた分を上回って余り、連結の営業利益49億円を支える。ほかの事業が足を引っ張る構図でもあり、ジュエリーの調子が会社全体の調子を決める。
従業員は連結で981人。指輪は接客で売れるため、販売員の質と定着が、そのまま売上の質になる。
優良さと弱いところ
事業の質は、ジュエリー部門だけを見れば高い。指輪は、品質や品ぞろえより、名前への安心で選ばれる。銀座ダイヤモンドシライシは、30年近い歴史でその名前を築いた。値引きをやめても客が離れず、部門の利益率は25%近くに達した。
一方、全体の質は一段落ちる。食品卸の利益率は1.5%と低く、規模が伸びても利益はほとんど増えない。美容は赤字が続き、リゾート開発は投資が先行している。ジュエリーで稼いだ利益を、薄い事業や赤字の事業で目減りさせる構造だ。
指輪は、天然ダイヤの原価や為替で仕入れが動く。人工ダイヤの広がりが、天然ダイヤの高い値段の根拠を揺らす点も忘れられない。堀は、ブランドの信用と販売員の接客にあるが、技術のような固い堀ではない。
利益の質で見れば、ジュエリーの利益率の高さは、値決めの力が支えている。ただ、その値決めは、買い手が減る市場の中で、どこまで通じるかが分からない。安い事業と赤字の事業が同居するため、全体の営業利益率は15%台にとどまる。10年後の姿は、本業の縮小を値上げと海外でどこまで補えるかにかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の婚約・結婚指輪の市場は、成熟し、量は減る方向にある。婚姻数は年間約50万組を下回り、少子化で今後も細る。結婚式を挙げない「ナシ婚」も増え、指輪の買い方は多様になった。
一方で、1組あたりの支出は、ブランド品への集中や、品質の高い石への志向で、下がりにくい面がある。婚姻数の減少を、値段の上昇でどこまで補えるかが、市場の見方の分かれ目だ。
競合は、百貨店系のブランド、チェーンの大手、ネットの安売り店と多い。さらに、人工ダイヤが米国で急に広がり、日本にも波及しつつある。天然ダイヤにこだわる客は残るが、価格の低い人工ダイヤへ移る客が増えれば、単価に響く。
この会社は、天然ダイヤと「銀座」の名前で、上位の客層を狙う位置にいる。市場全体の量が縮む中で、シェアを少し上げつつ、海外で新しい客を取れるかが課題である。
指輪の需要は、景気より人の数と習慣で決まる。婚姻数の減少は、景気が良くても止まらない。そのため、市場の成長を前提にした事業計画は組みにくく、シェアを奪うか、値段を上げるかしか成長の道はない。国内の量は中立で1割ほど減るとみて、価格は物価の上昇に少し届かない程度とした。海外は、客の数が増える余地がある一方、現地の競合や為替の影響を受ける。
資本政策と M&A
資本の使い方は、前期に大きく動いた。配当は年間で1株あたり前期の4倍にあたる額まで引き上げられ、総額は約13億円と、純利益の1.3倍を超えた。今期も同じ水準を維持する方針で、予想の配当性向は5割台に下がる。
自己株の取得にも3億円を使い、保有する自己株は消却した。株主への還元は手厚い。
一方で、借入は88億円(リース債務を含む)、現金は20億円で、差し引きの負債は約68億円ある。借入の一部は、連結子会社と関連当事者の不動産を担保にしている。返済期限は2027年末と2028年で、近く借り換えの時期が来る。
今後は、軽井沢の開発に約100億円を投じる計画がある。還元を保ちつつ、開発の資金も出すなら、借入は増える。純利益を超える配当を続けると、自己資本の積み上がりが遅れ、財務の余裕が小さくなる点が気がかりだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
指輪の値段を戻す動きは、まだ途中である。ジュエリー事業の利益率は25%近くまで上がり、会社は営業利益率20%の早期達成を掲げる。値引きをやめても客が逃げなかったことは、ブランドの強さの証拠だ。
海外には伸びしろがある。香港とシンガポールに新店を出し、ドバイで原石を調達する体制を固める。天然ダイヤの品質を売りにして、アジアの富裕層をつかめば、国内の縮小を補える。
株主還元も厚い。配当は大幅に引き上げられ、今期も維持する方針だ。借入を減らしながら、利益の半分以上を配当に回せるなら、財務の傷は浅い。軽井沢が当たれば、美術と宿泊を組み合わせた新しい稼ぎが加わる。
10年先の利益は、国内の客数の減少を、値段と海外で補えるかにかかる。強気の見方では、値引きをやめた後も客が逃げなかった事実が、価格を上げる余地の証拠になる。人工ダイヤが広がっても、一生に一度の買い物で名前に払う人は、残ると見る。
指輪は景気の波を受けにくい買い物でもある。結婚が決まれば、買う時期は動かせない。
慎重な見方
買い手が減る。婚姻数は少子化で細り、指輪を買わない「ナシ婚」も広がる。1組あたりの値段を上げて補う戦略は、客の数が減れば、いずれ行き詰まる。
人工ダイヤの脅威は大きい。米国では婚約指輪の石が人工に急速に置き換わった。日本でも同じ流れが来れば、天然ダイヤに高い値段を払う理由が弱まり、値引き圧力が強まる。
財務の余裕も小さい。前期の配当は純利益の1.3倍を超え、借入は88億円ある。一部は不動産を担保にしており、借り換えの時期も近い。そこに軽井沢の約100億円が重なる。食品は利益が薄く、美容は赤字が続くため、ジュエリーの稼ぎが細れば、全体の利益は一気に落ちる。
配当が利益を超えた期は、いつまでも続かない。借入の返済期限が近づく中で、軽井沢に資金を割けば、還元と財務の両立が難しくなる。弱気の見方では、本業が少し縮むだけで、配当の維持も開発の資金も、同時には賄えなくなる。
人の数が減る市場では、シェアを取っても総量は増えない。
どちらに重みを置いたか
ジュエリー事業の稼ぐ力は本物だが、買い手の減少と人工ダイヤという構造の逆風が長く続く。借入と軽井沢の投資という重しもあり、悲観側の確率を厚めに置いた。強気と弱気の両方の筋に理があるため、確率は中立に最も厚く、慎重な側に少し寄せた。
10年では、本業の質と財務の重さの両方を見て、判断の重みを分けた。確率は中立に厚く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,374 円407 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 727 円125 億円)。 今の値に割り戻すと 1,563 円268 億円、今との差 +16.9%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,410 円757 億円 | 1,043 円179 億円 | +307.9% | +15.1% | 327 円56 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,770 円647 億円 | 938 円161 億円 | +252.2% | +13.4% | 848 円145 億円 |
| 中立 | 36% | 3,077 円528 億円 | 834 円143 億円 | +192.5% | +11.3% | 1,408 円242 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,118 円192 億円 | 571 円98 億円 | +26.3% | +2.4% | 439 円75 億円 |
| 悲観 | 14% | 228 円39 億円 | 332 円57 億円 | −58.1% | −8.3% | 79 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,374 円407 億円 | 727 円125 億円 | +131.9% | +8.8% | 3,100 円532 億円 |
今の株価時価総額 1,337 円229 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 海外とブランドで婚姻減を補い、利益率20%を超える 利益 42 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 4,410 円757 億円
国内の客数は、シェアを少し上げて今の水準をほぼ守る。香港やシンガポールなどアジアの富裕層をつかみ、客単価は物価以上に上がる。天然ダイヤのブランドとして、銀座の名前が定着する。
ジュエリー事業の利益率は25%を保ち、食品は規模が倍近くなる。美容は黒字になり、軽井沢は完成後に稼ぎ始める。営業利益は今の1.7倍の83億円になり、ROEは16%に上がる。人工ダイヤは、別の客層を取るにとどまる。
配当は利益の半分強を保ち、自己資本は着実に積み上がる。借入は返済が進み、金利の負担は軽くなる。
配当を保ちながら、借入は着実に減り、財務の余裕が戻る。
- ジュエリー・アート・オークション事業:数量 2.3(購入組数(万組・年。推定))× 価格 142(1組あたり売上(億円/万組・名目))→ 売上 328 億円・営業利益 82 億円。数量1.00倍、単価1.42倍、利益率25%
- 食品事業:数量 10.0(納品件数(万件・年。推定))× 価格 13(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 134 億円・営業利益 4 億円。数量1.40倍、単価1.34倍、利益率3%
- ヘルス&ビューティー事業:数量 1.9(施術・販売件数(万件・年。推定))× 価格 14(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。数量1.30倍、単価1.40倍、利益率6%
- リゾート開発・その他:数量 152(案件数(件。推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。軽井沢が稼ぎ始め、利益率15%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.02 倍、時価総額 710 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚姻数の減少と人工ダイヤの広がりを考えれば、国内の客数を保ち、さらに値段も上げる筋書きは、最も条件が厳しい。確率は低くとどめる。
やや楽観 18% 客数は少し減るが、単価と海外で売上が伸びる 利益 35 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 3,770 円647 億円
国内の客数は6%減るが、単価を物価に近い水準で引き上げて補う。海外は着実に増え、売上全体の2割に近づく。
営業利益は70億円に伸び、ROEは14%台に乗る。食品は規模が伸び、美容の赤字は縮む。軽井沢は小さな黒字になる。借入は少しずつ減るが、配当は利益の半分以上を保つ。
国内の客数は少しずつ減るが、客単価の上昇で売上は保たれる。海外店舗が育ち、全社費用の増加も吸収できる。人工ダイヤは影響が限られ、天然ダイヤの値段は大きく崩れない。
全社費用は物価で増えるが、売上の伸びで吸収できる。食品は伸びが続き、規模が増える。
- ジュエリー・アート・オークション事業:数量 2.2(購入組数(万組・年。推定))× 価格 136(1組あたり売上(億円/万組・名目))→ 売上 295 億円・営業利益 72 億円。数量0.94倍、単価1.36倍、利益率24.5%
- 食品事業:数量 9.0(納品件数(万件・年。推定))× 価格 13(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 3 億円。数量1.25倍、単価1.34倍、利益率2.5%
- ヘルス&ビューティー事業:数量 1.7(施術・販売件数(万件・年。推定))× 価格 14(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。数量1.20倍、単価1.40倍、利益率4%
- リゾート開発・その他:数量 118(案件数(件。推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。軽井沢が小さな黒字、利益率8%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.82 倍、時価総額 592 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚姻数は減るが、ブランドの強さで客を保ち、値上げも通る筋書き。強気に近いが、人工ダイヤの影響を一部織り込んだ。
中立 36% 婚姻減を値上げと海外で一部補い、利益は1割ほど増える 利益 29 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 3,077 円528 億円
国内の客数は、婚姻数の減少に沿って1割強減る。単価は物価の上昇より少し低く、1.3倍にとどまる。人工ダイヤの広がりで、高い値段を取りにくくなるためだ。
ジュエリー事業の利益率は23.5%と、今より1.4ポイント下がる。食品は規模が伸びるが利益は薄く、美容は小さな黒字、軽井沢は小さな黒字になる。営業利益は58億円で、今の1.2倍ほどだ。
配当は利益の55%を保ち、ROEは12%台に落ち着く。借入は大きく動かない。
人工ダイヤは一部の客層に広がるが、天然ダイヤのブランドは主流に残る。全社費用は物価で増えるが、売上の伸びで吸収する。
- ジュエリー・アート・オークション事業:数量 2.0(購入組数(万組・年。推定))× 価格 130(1組あたり売上(億円/万組・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 62 億円。数量0.88倍、単価1.30倍、利益率23.5%
- 食品事業:数量 8.2(納品件数(万件・年。推定))× 価格 13(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 2 億円。数量1.15倍、単価1.34倍、利益率2%
- ヘルス&ビューティー事業:数量 1.6(施術・販売件数(万件・年。推定))× 価格 13(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。数量1.10倍、単価1.34倍、利益率1%
- リゾート開発・その他:数量 101(案件数(件。推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。軽井沢が小さな黒字、利益率5%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.37 倍、時価総額 468 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚姻数の減少と、値上げ、海外の伸びを順に当てはめた、最も筋の通った姿。会社の営業利益率20%の目標には届かないと見た。
やや悲観 26% 人工ダイヤで単価が崩れ、利益が半分近くに落ちる 利益 16 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,118 円192 億円
国内の客数は2割強減る。単価は物価の上昇に追いつかず、1.2倍弱にとどまる。人工ダイヤへの流出と、競合の値引きが理由である。
ジュエリー事業の利益率は20%に下がる。食品の利益はほぼゼロ、美容の赤字は続き、軽井沢の開発は赤字になる。営業利益は35億円と、今の7割に落ちる。
借入の利払いも増え、純利益は16億円にとどまる。配当は半分に減らす。ROEは7%台で、資本コストを下回る。
景気の悪化や円安が重なると、ダイヤの仕入れ値も上がる。値上げが通らず、利益率はさらに薄くなる。
借り換えの金利が上がり、利払いの負担も重くなる。
- ジュエリー・アート・オークション事業:数量 1.8(購入組数(万組・年。推定))× 価格 118(1組あたり売上(億円/万組・名目))→ 売上 212 億円・営業利益 42 億円。数量0.78倍、単価1.18倍、利益率20%
- 食品事業:数量 7.2(納品件数(万件・年。推定))× 価格 12(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 1 億円。数量1.00倍、単価1.20倍、利益率1%
- ヘルス&ビューティー事業:数量 1.5(施術・販売件数(万件・年。推定))× 価格 13(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。数量1.00倍、単価1.25倍、赤字5%
- リゾート開発・その他:数量 67.4(案件数(件。推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。軽井沢が赤字、利益率-5%
倍率:10年後のROEは7.5%で、資本コストの9.25%を下回る。正当化PERは10倍ほどになるが、人工ダイヤと客数の減少で利益の質が落ちるため、8.0倍に置いた。借入が重いため、EV÷営業利益も確認した。
確率:天然ダイヤの値段を支える力が弱まり、客数も減る筋書きは、現実味が高い。婚姻数の減少に人工ダイヤが重なる点を重く見た。
悲観 14% 人工ダイヤと婚姻減で本業が縮み、開発の投資が重くのしかかる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 228 円39 億円
国内の客数は4割近く減り、単価は物価の上昇に追いつかず、ほぼ横ばいにとどまる。人工ダイヤへの流出で、天然ダイヤの高い値段が成り立たなくなる。
ジュエリー事業の利益率は12%に落ちる。食品は縮み、美容とリゾートの赤字が続く。営業利益は6億円まで減る。
借入の返済と利払いが重くなり、純利益は2億円にとどまる。配当は大きく減らす。資産の売却と、借入の返済が焦点になる。
店舗の賃料は固定で残り、利益率は急に落ちる。ブランド価値の低下が続けば、再建には時間がかかる。
配当の停止と資産の売却で、財務の立て直しを急ぐ。
- ジュエリー・アート・オークション事業:数量 1.4(購入組数(万組・年。推定))× 価格 100(1組あたり売上(億円/万組・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 17 億円。数量0.62倍、単価1.00倍、利益率12%
- 食品事業:数量 5.0(納品件数(万件・年。推定))× 価格 11(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 −1 億円。数量0.70倍、単価1.10倍、赤字1%
- ヘルス&ビューティー事業:数量 1.3(施術・販売件数(万件・年。推定))× 価格 11(1万件あたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 −2 億円。数量0.90倍、単価1.10倍、赤字15%
- リゾート開発・その他:数量 33.7(案件数(件。推定))× 価格 0.13(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 −2 億円。軽井沢の投資が重く、赤字50%
倍率:稼ぐ力は純利益が2億円まで落ちて小さい。値段は今の自己資本に0.35倍を掛けて置いた。天然ダイヤの高い値段が崩れた後も、店舗網、在庫、不動産の資産価値が残るためだ。借入の返済後に残る売れる資産を床とみて、合わせて確認した。
確率:婚姻数の減少、人工ダイヤの普及、借入と軽井沢の投資が、同時に最悪の形で表れる筋書き。起きる確率は低いが、起きれば傷が深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ジュエリー・アート・オークション事業
銀座ダイヤモンドシライシ、エクセルコダイヤモンドの婚約・結婚指輪を、全国と香港・シンガポールの店で売る。
| 数量購入組数(万組・年。推定) | 価格1組あたり売上(億円/万組・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.3 | 100 | 231 | 58 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 130 | 263 | 62 |
取り方:ジュエリー・アート・オークション事業の売上は231億円(有報)。1組あたり約100万円と置き、年2.3万組の購入を推定した。組数は開示がないため、婚姻数と売上から逆算した推定である。部門の利益は58億円。
食品事業
香港・深圳の食品卸。中国本土への展開を進める。
| 数量納品件数(万件・年。推定) | 価格1万件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.2 | 10 | 72 | 1 |
| 10 年後 中立 | 8.2 | 13 | 110 | 2 |
取り方:食品事業の売上は72億円(有報、前期比51%増)。香港・深圳の食品卸で、納品の件数を7万件、1件10万円と置いた。件数は開示がなく推定である。部門の利益は1億円と薄い。
ヘルス&ビューティー事業
美容・健康関連の施術と商品の販売。赤字が続く。
| 数量施術・販売件数(万件・年。推定) | 価格1万件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 10 | 15 | −2 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 13 | 21 | 0 |
取り方:ヘルス&ビューティー事業の売上は14億円で、利益は2.5億円の赤字(有報)。施術や商品販売の件数を1.5万件、1件10万円と置いた。件数は推定である。
リゾート開発・その他
軽井沢のリゾート開発(高級住宅とホテルコンドミニアム)と、小さな周辺事業。
| 数量案件数(件。推定) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.7 | 0.10 | 3 | −2 |
| 10 年後 中立 | 101 | 0.13 | 14 | 1 |
取り方:リゾート開発とその他の売上は合わせて3.4億円で、利益は2億円の赤字(有報)。案件の件数を34件、1件1千万円と置いた。件数は推定である。軽井沢の開発は2027年に完成予定で、投資が先行している。
リスクと懸念
婚姻数の減少
婚姻数は年間約50万組を下回り、少子化で細り続ける。結婚式を挙げない「ナシ婚」も増え、指輪を買う客の母数が縮む。客数の減少を値段で補えるのは、限られた範囲だけだ。
人工ダイヤの普及
米国では婚約指輪の石が、人工ダイヤへ急速に置き換わった。日本でも広がれば、天然ダイヤの高い値段が揺らぐ。ブランドの値決め力が試される。
利益を超える配当と借入
前期の配当は純利益の1.3倍を超えた。借入は88億円あり、一部は不動産を担保にしている。返済期限は近く、利益が落ちると配当が止まり、借り換えが難しくなる。
軽井沢の大型投資
約100億円をリゾート開発に投じる計画がある。本業とは違う分野で、完成後の稼ぎが見えない。投資の回収が遅れれば、借入が増え、配当の余力を削る。
食品と美容の薄利と赤字
食品は利益率が1.5%で、規模が伸びても利益が増えない。美容は赤字が続く。香港や中国の景気、規制にも左右される。ジュエリーの稼ぎを、これらが目減りさせている。
ダイヤ原価と為替
ダイヤの原価は国際相場と為替で動く。原価が上がっても値段に転嫁できなければ、利益率が落ちる。ドバイでの調達も、軌道に乗るまで負担になる。
今後の分かれ目
- ジュエリー事業の利益率が25%を超えて定着し、営業利益率20%に近づく
- やや楽観・楽観の確率を上げる。値段を戻す戦略が、国内で通じていると見る。
- 婚姻数の減少が加速し、1組あたりの単価も下がり始めた
- やや悲観・悲観の確率を上げ、中立のジュエリーの数量と単価を下げて見直す。
- 日本で人工ダイヤの婚約指輪の比率が急に上がった
- 天然ダイヤの値決め力が弱まるとみて、単価と利益率を下げ、悲観側に重みを寄せる。
- 配当が利益を下回る水準に下がり、借入が減り始めた
- 財務の傷が浅くなるため、借金の質の評価を見直し、悲観の確率を下げる。
- 軽井沢の開発費が当初の約100億円を超えた、または販売が遅れた
- 借入が増え、利益を食うとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 香港・シンガポールの店で売上が計画を超え、他の海外にも店を出した
- 海外の伸びが国内の縮小を補うとみて、やや楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- ジュエリー事業の利益率と、1組あたりの客単価の動き
- 婚姻数と、国内の組数の変化
- 人工ダイヤの扱いと、天然ダイヤの値決めの変化
- 配当性向、借入の残高、借り換えの条件、軽井沢の投資額
倍率と資本コストの決め方
本稿は、10年後のROEと資本コスト(9.25%)から正当化PERの上限を計算して置いた。今の株価や、過去・同業のPERには寄せていない。営業利益は、2026年3月期の山(49億円)の1.2倍ほどを中立とし、婚姻数の減少と人工ダイヤの影響を織り込んだ。純利益と営業利益の比は、過去の中央値(0.49)に合わせた。配当は、会社の方針(維持)に沿い、利益の55%で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→17.02 倍・やや楽観 PER 11.6→16.82 倍・中立 PER 10.8→16.37 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。