結論
木曽路は、しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」を126店出す、名古屋発の外食企業である。ほかに焼肉の「大将軍」「くいどん」や居酒屋を持ち、全体で189店になる。
筆者の結論は割高である。祝いの席という堅い需要は本物の強みだが、利益が薄すぎる。売上546億円に対して営業利益は29億円、営業利益率は5%台にとどまり、今の時価総額は純利益の40倍にあたる。
稼ぎの源は店である。店の数に、1店あたりの売上がかかる。値上げは物価並みに通るが、人口減と宴会離れで客数は細る。家賃は年に約40億円かかり、売上が落ちても減らない。2021年3月期は売上が3割減り、営業損益は42億円の赤字になった。
財務は強そうに見える。純現金は81億円あり、自己資本比率は65%だ。ただ家賃の約束と食肉の仕入れを考えると、自由に使える金は見かけより小さい。
中立では、10年後の営業利益は40億円ほどで、今の1.4倍になる。それでも時価総額は今の3割に届かない。今の値段は、利益が大きく伸びる姿を先に払っている。
バリュー投資の観点から
木曽路は、バリュー投資の観点で見ると、堅実だが儲からない会社である。
まず事業の質。祝いの席という需要は長く続く。ただ堀は強くなく、営業利益率は5%台から動かない。コロナ前の山でも5%台半ばだった。
次に資本の使い方。店は借りて出し、改装は自前で払う。自己資本は316億円あるが、そこから出る利益は17億円で、資本の稼ぐ力は低い。ROEは過去10年の中央値で2%ほどである。資本コストを下回る事業の中に資金をためても、ためた利益は額面どおりの価値にならない。
3つ目は安全域。10年後の利益を中立で置いても、今の値段は先に払いすぎている。純現金は厚いが、家賃の約束と相殺すると見かけほど自由にならない。
筆者が持ち続けたいと思えるのは、今の値段の3分の1ほどまで下がった時である。それまでは、事業を理解できる点を評価しつつ、様子を見る立場になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、ほぼ一本である。売上の約8割を、しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」が占める。
木曽路は126店で、関東と中部に集まる。結婚や還暦、法事といった「ハレの日」の会食が主な客である。個室を備えた大きな店で、社内で育てたマイスターと呼ぶ接客係が、肉の切り方から鍋の運びまで気を配る。1店あたりの売上は3億円台半ばと、外食の中では大きい。
2番手は焼肉で、「大将軍」と「くいどん」を合わせて44店ある。売上の約14%だ。くいどんは食べ放題が中心の業態で、いま作り直しの途中にある。大将軍は企業の宴会を取り込んでいる。
残りは居酒屋の「とりかく」、和食の「鈴のれん」、からあげ専門店の「からしげ」と、食肉の加工販売である。2022年に食肉加工の建部食肉産業を子会社にし、肉の調達にも手を伸ばした。
店はほとんど賃借で、自社で持つ土地は7店だけである。家賃は年に約40億円かかる。しゃぶしゃぶは冬に売れるので、利益は10月から3月に偏る。
従業員は正社員が約1,360人で、パートなどの臨時の人員が年平均で約2,900人いる。人手に頼る商売で、人件費の上昇がそのまま利益率に響く。仕入れの半分以上は肉・野菜・魚介である。
優良さと弱いところ
強みは3つある。第一に、値段より「失敗しない店」が選ばれる祝いの席の需要を握っていること。第二に、社内で育てた接客で、安い店との差を出していること。第三に、財務が厚く、借金に追われないことだ。
収益力は低い。営業利益率は5%台で、外食の中では下位に近い。コロナ前の2019年3月期も5%台半ばだった。過去10年のROE(自己資本利益率)の中央値は2%ほどにとどまる。
堀、つまり他社がまねできない強みは、強くはない。しゃぶしゃぶは参入しやすく、食べ放題や低価格の焼肉に客を取られやすい。値上げをすれば客数が減るので、値決めの力は普通である。
弱みは需要の質と固定費だ。会食と宴会は景気と感染症にもっとも弱い需要で、2021年3月期は売上が3割落ちた。そのうえ家賃は売上が落ちても減らない。売上の8割が1つのブランドに偏る点も重い。
経営は慎重で、無理な買収はしていない。ただ資本の使い方が上手とも言えず、純現金は厚いまま、自社株買いの実績もない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は大きいが、国内の数量は頭打ちである。日本フードサービス協会によれば、2023年の外食市場は約24兆円で、コロナ前への戻りが続いている。人口は減り、店は飽和に近い。
木曽路が戦うのは、その中でも会食という狭い市場だ。競う相手は、ゼンショーの「しゃぶ葉」のような食べ放題と、ホテルや料亭の会食である。木曽路は値段がずっと高く、客は「祝いだから行く」という理由で選ぶ。法事や長寿の祝いの会食は、高齢化で一定は残ると筆者は見る。一方で、結婚式の小規模化と企業の宴会離れは向かい風になる。
足元の逆風はコストだ。肉の値段、米の値段、物流費、最低賃金がそろって上がっている。有価証券報告書も、これらが利益を圧迫すると書く。
2026年4〜6月は売上が0.4%減り、営業損失が2.4億円に広がった。しゃぶしゃぶは冬に売れるので、この時期は例年赤字だが、前年より広がった。通期の営業利益は32億円を見込む。
外食全体では、人件費を値上げで吸収できる店と、できない店の差が広がる局面である。木曽路は大きな店を借りて出すので、客が減った時に身を縮めにくい点で、小さな店を多く持つ会社より分が悪い。
資本政策と M&A
還元は配当が中心である。配当性向は2025年3月期が40%で、2026年3月期は特殊要因で純利益が減ったため約5割に上がった。自社株買いの実績は見当たらず、自己株は約38万株と少ない。
純現金は81億円で、時価総額の12%にあたる。ただ家賃は年に約40億円、店の敷金や保証金は39億円あり、冬の仕入れや改装の投資も要る。事業に必要な分が大半と見て、余った現金としては分けない。
成長は出店と改装で行う。2024年6月に中期経営計画を出し、売上の伸びと経常利益率を指標に掲げた。M&Aは小さく、2022年に食肉加工の建部食肉産業を子会社にし、2023年に大将軍を吸収合併した。
株主は個人が約7割と多い。10年以内にTOB(株式公開買付け)で買われる確率は、kabufuの参考値で約18%ある。ただ店は借り物が多く、買い手にとっての魅力は限られると筆者は見る。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):純現金 81 億円は家賃・敷金の事業用が大半として余りに分けず、悲観の床にだけ入れた(二重なし)。中立の営業利益は直近実績の延長、倍率は ROE 5.5% < k で式どおり。
株主優待(現物の還元):年およそ3.5億円を会社の費用ベースで見込む(優待券(100株で年数千円)×優待株主約3万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
木曽路の祝いの席は、なくならない。人は結婚、還暦、法事のたびに、失敗しない店を選ぶ。木曽路はその定番として、126店を関東と中部に築いてきた。社内のマイスターによる接客は、値段だけで選ぶ客が入れない領域を作る。
値上げも通る。祝いの席は値段で店を変えにくく、肉と米の値上がりを価格に乗せやすい。2026年3月期は営業利益が7.6%伸び、木曽路部門の売上も2.8%増えた。
高齢化は追い風になる。70代以上の客が増えれば、法事や長寿の祝いの会食は増える。
財務は強い。純現金は81億円、自己資本比率は65%で、不況でも潰れない。出店にも、くいどんのような業態の作り直しにも、原資に困らない。
店の数が少し増えるだけでも、値上げが物価並みに通れば利益は名目で伸びる。しかも木曽路は、個室を備えた大型店という、まねしにくい店の形を持つ。
中期経営計画の売上と利益率の改善が進み、くいどんの再構築が当たれば、営業利益率は7%台に乗る。純現金を使った自社株買いに動けば、資本の効率も上がる。
慎重な見方
利益が薄すぎる。売上は546億円、営業利益は29億円で、営業利益率は5%台にとどまる。コロナ前の山でも同じ水準だった。祝いの席は、客の数が人口とともに細る需要でもある。
家賃は年に約40億円ある。営業利益の1.4倍にあたり、売上が少し落ちただけで利益が消える。2021年3月期は売上が3割減り、営業損益は42億円の赤字になった。同じ打撃は、また来る。
肉・米・人件費がそろって上がっている。しゃぶしゃぶは参入しやすく、食べ放題や低価格の店との値段の差が開くほど、客はそちらに移る。値上げを重ねるほど、祝いの席の客数も減る。
2026年4〜6月は営業損失が2.4億円に広がった。通期の営業利益32億円の計画は、下半期の冬に頼っている。
財務の強さも見かけほどではない。純現金81億円は、家賃・敷金・仕入れ・改装の前提の金で、自由に配れない。今の値付けは、利益が大きく伸びる前提でしか成り立たない。祝いの席の需要が堅いことと、儲かることは別の話である。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は祝いの席の需要と財務で、これは本物である。慎重な見方の根拠は、利益率が10年以上5%台で動かないことと、固定費の重さで、こちらの方が数字に表れている。
確率は中立を中心に、やや悲観を厚めに置いた。家賃が重く谷の深い業態なので、悲観にも12%を置いた。結果は、中立でも10年後の時価総額と還元の合計が今を大きく下回り、総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 848 円239 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 412 円116 億円)。 今の値に割り戻すと 658 円185 億円、今との差 −73.3%、 期待の年率 −6.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,583 円446 億円 | 586 円165 億円 | −12.1% | −1.3% | 174 円49 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,241 円350 億円 | 522 円147 億円 | −28.5% | −3.3% | 388 円109 億円 |
| 中立 | 33% | 1,027 円289 億円 | 483 円136 億円 | −38.8% | −4.8% | 498 円140 億円 |
| やや悲観 | 25% | 320 円90 億円 | 305 円86 億円 | −74.7% | −12.8% | 156 円44 億円 |
| 悲観 | 12% | 247 円70 億円 | 117 円33 億円 | −85.2% | −17.4% | 44 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 848 円239 億円 | 412 円116 億円 | −48.9% | −6.5% | 1,260 円355 億円 |
今の株価時価総額 2,467 円695 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 祝いの席を取り込み、利益率が過去の山を越える 利益 37 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,583 円446 億円
祝いの席の需要を取り込み続け、利益率が過去の山を越える10年である。木曽路は関東と中部を中心に145店まで増え、1店あたりの売上は値上げが定着して物価を少し上回る。結婚式の小規模化は、少人数の祝い膳の需要で受け止める。くいどんの業態の作り直しが当たり、焼肉は黒字が安定する。肉の調達は子会社の建部食肉産業で一部を内製し、仕入れの値上がりを和らげる。人件費は配膳や会計の省力化で吸収する。営業利益率は木曽路で9%に上がり、全体では7%台になる。ただ家賃は固定費として残るので、店の数を増やすほど利益は店の質に左右される。この姿には、出店・値上げ・コスト吸収が10年そろう必要がある。
株主優待は現物の還元で、年およそ3.5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に35億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 木曽路(しゃぶしゃぶ・日本料理):数量 145(木曽路の店数(店))× 価格 4.75(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 689 億円・営業利益 62 億円。木曽路の営業利益率 9.0%
- 焼肉(大将軍・くいどん):数量 46.0(焼肉の店数(店))× 価格 2.45(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 6 億円。焼肉の営業利益率 5.0%
- その他(居酒屋・和食・からあげ・食肉加工):数量 20.0(その他の店数(店))× 価格 2.33(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。その他の営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 446 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店・値上げ・コスト吸収が10年そろう必要があり、過去10年の営業利益率は5%台が上限だった。高くは置けない。
やや楽観 22% 出店と値上げが計画に近く進む 利益 29 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,241 円350 億円
出店と値上げが近年の実績に近く進む10年である。木曽路は137店まで増え、値上げは物価並みに通る。客数は人口の減少で少しずつ細るが、法事や長寿の祝いが下支えする。くいどんは食べ放題からの転換が一定の成果を上げ、焼肉は薄い黒字を保つ。人件費の上昇は値上げでほぼ吸収し、営業利益率は6%台に上がる。コロナ前の山の5%台半ばを少し上回る程度で、劇的な改善は置かない。家賃は店の増加と物価で膨らむが、売上の伸びの範囲に収まる。純現金は改装と配当に回り、財務の厚さは保たれる。ただ冬の売上に利益が偏る構造は変わらず、春夏の赤字を冬の黒字で取り返す商売のままである。
株主優待は現物の還元で、年およそ3.5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に35億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 木曽路(しゃぶしゃぶ・日本料理):数量 137(木曽路の店数(店))× 価格 4.62(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 632 億円・営業利益 51 億円。木曽路の営業利益率 8.0%
- 焼肉(大将軍・くいどん):数量 44.0(焼肉の店数(店))× 価格 2.39(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 105 億円・営業利益 4 億円。焼肉の営業利益率 4.0%
- その他(居酒屋・和食・からあげ・食肉加工):数量 19.0(その他の店数(店))× 価格 2.29(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。その他の営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 350 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店と値上げが近年の実績に近く進む現実的な上振れ。会食需要の底堅さと厚い財務が確率を支える。
中立 33% 中立:店数は少し増え、利益は物価並みに伸びる 利益 24 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,027 円289 億円
店数は少し増え、利益は物価並みに伸びる10年である。木曽路は130店と今より4店増えるだけで、1店あたりの売上は値上げで物価並みに上がるが、客数は人口減と宴会離れで3%ほど減る。焼肉は店を少し絞り、居酒屋などの小さな業態は横ばいで利益はほとんど出ない。肉・米・人件費の上昇は値上げでほぼ吸収し、営業利益率は5%台で動かない。名目の利益は物価に沿って伸びるが、実質ではほぼ横ばいである。家賃は固定費として残り、利益率の改善を阻む。純現金は改装と配当に回り、財務の厚さは保たれる。会食の需要は残るが、成長するほどの追い風はない。
株主優待は現物の還元で、年およそ3.5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に35億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 木曽路(しゃぶしゃぶ・日本料理):数量 130(木曽路の店数(店))× 価格 4.48(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 582 億円・営業利益 44 億円。木曽路の営業利益率 7.5%
- 焼肉(大将軍・くいどん):数量 42.0(焼肉の店数(店))× 価格 2.34(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 3 億円。焼肉の営業利益率 3.5%
- その他(居酒屋・和食・からあげ・食肉加工):数量 18.0(その他の店数(店))× 価格 2.22(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。その他の営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数が少し増え、利益が物価に沿って伸びるという中心の筋書き。直近の第1四半期の赤字拡大と利益率の低さを織り込み、やや慎重な側に寄せた。
やや悲観 25% 客数の減少と固定費で利益が削られる 利益 10 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 320 円90 億円
客数の減少と固定費で利益が削られる10年である。木曽路は不採算店の閉鎖で118店まで減り、1店あたりの売上は値上げが客数に響いて物価に追いつかない。企業の宴会と結婚式の会食が細り、法事と長寿の祝いだけでは穴が埋まらない。肉と米の値上がり、最低賃金の上昇が毎年のしかかり、営業利益率は2%台まで下がる。焼肉は38店に減り、居酒屋などは赤字が続いて整理される。家賃は売上が落ちても減らないので、売上が1割減っただけで利益が半分以下になる構造が表に出る。配当は維持できず、減らす。名目の利益は今の半分ほどで、実質では3分の1ほどになった姿である。
株主優待は現物の還元で、年およそ3.5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に26億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 木曽路(しゃぶしゃぶ・日本料理):数量 118(木曽路の店数(店))× 価格 4.27(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 504 億円・営業利益 23 億円。木曽路の営業利益率 4.5%
- 焼肉(大将軍・くいどん):数量 38.0(焼肉の店数(店))× 価格 2.25(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 86 億円・営業利益 1 億円。焼肉の営業利益率 1.5%
- その他(居酒屋・和食・からあげ・食肉加工):数量 14.0(その他の店数(店))× 価格 2.17(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。その他の営業利益率 -1.0%
倍率:ROE 2.5%(純利益 10 億円 ÷ 自己資本 396 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 8.3% + 残る割合 1/2 ×(2.5 − 8.3)= 5.4%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 6.1 倍。伸びと堀の持ちを低く見る。ROE が資本コストを大きく下回るので式の 6.0 倍より上に出るが、事業の稼ぐ力(純利益 10 億円 ÷ k 8.3%= 120 億円)の範囲に収め、やや悲観は 8.5 倍に置いた。
確率:直近の第1四半期は赤字が広がり、家賃の固定費が重い。利益率が低い業態で、慎重な見方の方が数字に表れているので確率を厚くした。
悲観 12% 谷と構造的な客離れが重なり、稼ぐ力を失う 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 247 円70 億円
感染症や景気後退のような谷が、構造的な客離れと重なる10年である。祝いの席が小さな家族の会食に細り、法人の宴会は戻らない。木曽路は不採算店の閉鎖が相次ぎ95店まで減る。1店あたりの売上は客数が大きく減って物価に追いつかず、売上は今を下回る。肉・米・人件費の値上がりを値上げで転嫁できず、営業損益は赤字になる。家賃は固定費として残り、閉店には違約金や原状回復の費用がかかる。敷金の一部は返ってこず、店の減損も出る。焼肉は30店、居酒屋などは8店まで縮む。それでも祝いの席の需要自体が消えるわけではなく、店と接客の技術は残る。ただ利益は家賃と人件費に消え、株主に残る分は小さい。配当は大きく縮め、手元の現金から払う形になる。10年の配当の累計15億円は床の資産90億円の中の現金から出るので、時価総額70億円と合わせても85億円で、床を超えず二重に数えていない。
株主優待は現物の還元で、年およそ3.5億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に18億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 木曽路(しゃぶしゃぶ・日本料理):数量 95.0(木曽路の店数(店))× 価格 3.96(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 376 億円・営業利益 4 億円。木曽路の営業利益率 1.0%
- 焼肉(大将軍・くいどん):数量 30.0(焼肉の店数(店))× 価格 2.07(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 −1 億円。焼肉の営業利益率 -2.0%
- その他(居酒屋・和食・からあげ・食肉加工):数量 8.0(その他の店数(店))× 価格 2.00(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。その他の営業利益率 -5.0%
倍率:赤字の年は稼ぐ力で測れないので、純現金と返ってくる敷金などの売れる資産の税後 90 億円を床とし、今の自己資本 316 億円に対する PBR 0.22 倍の約 70 億円に置いた。家賃は固定費として残るので、資産の床より上には置かない。
確率:宴会と会食は景気と感染症に最も弱く、2021年3月期は営業損益が42億円の赤字になった。その谷が構造的な客離れと重なる筋書きとして、5%を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
木曽路(しゃぶしゃぶ・日本料理)
結婚・還暦・法事などの会食を主な客とする大型の個室店。売上の約8割を占める主力。
| 数量木曽路の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 126 | 3.45 | 434 | 31 |
| 10 年後 中立 | 130 | 4.48 | 582 | 44 |
取り方:2026年3月期の木曽路部門の売上は434億円(部門間の取引を消す前)、期末の店数は126店。1店あたりは割り算で出した。部門の利益は開示がなく、全社29億円を木曽路31・焼肉3・その他1・本社費等−6と推定した。先の1店あたり売上は、値上げが物価並みに通る一方、人口減と宴会離れで客数が減るとみて、中立で10年1.30倍(物価1.34倍より低い)に置いた。
焼肉(大将軍・くいどん)
焼肉の「大将軍」と食べ放題主体の「くいどん」。くいどんは業態の作り直しの途中。
| 数量焼肉の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 44.0 | 1.80 | 79 | 3 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 2.34 | 98 | 3 |
取り方:2026年3月期の焼肉部門の売上は79億円、期末の店数は44店。1店あたりは割り算で出した。利益は開示がなく、薄い黒字(約4%)と推定した。先の売上は値上げが物価並みに通るが、客数は減るとみて、中立で10年1.30倍に置いた。
その他(居酒屋・和食・からあげ・食肉加工)
居酒屋「とりかく」、和食「鈴のれん」、からあげ専門店「からしげ」と、物販・食肉の加工販売。
| 数量その他の店数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.0 | 1.74 | 33 | 1 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 2.22 | 40 | 0 |
取り方:全社売上546億円から、木曽路434億円と焼肉79億円を引いた残り約33億円を、居酒屋10店・鈴のれん5店・からしげ4店の計19店で割った(食肉加工などの物販を含む)。利益は開示がなく、ほぼ収支とんとんの1億円と推定した。先の売上は中立で10年1.28倍に置いた。
リスクと懸念
家賃という固定費
店は賃借が基本で、家賃は年に約40億円ある。営業利益29億円の1.4倍にあたり、売上が落ちても減らない。新しいリース会計の基準が2028年3月期から始まると、家賃の約束が貸借対照表に載り、純現金の見かけはさらに小さくなる。
会食・宴会需要の谷
祝いの席や会食は、景気と感染症にもっとも弱い需要である。2021年3月期は売上が3割減り、営業損益は42億円の赤字になった。同じ谷が来れば、家賃の重さが利益を直接削る。
肉・米・人件費の上昇
肉と米の値上がり、物流費、最低賃金の上昇がそろって続いている。有価証券報告書も利益を圧迫する要因として挙げる。値上げで吸収しきれなければ、5%台の営業利益率はすぐ薄くなる。
単一ブランドへの偏り
売上の約8割が「木曽路」の1ブランドに偏る。しゃぶしゃぶは参入しやすく、食べ放題や低価格の店に客を取られやすい。このブランドの客数が落ちれば、他の業態では埋められない。
冬への偏りと直近の赤字
しゃぶしゃぶは冬に売れるので、利益は10月から3月に偏る。2026年4〜6月は営業損失が2.4億円に広がった。通期の営業利益32億円の計画は、下半期の冬の売上に頼っている。
店の減損と敷金の回収
有形固定資産は総資産の約34%、敷金・保証金・建設協力金は約8%ある。立地が悪化したり、閉店で返還を受けられなかったりすると、減損や損失が出る。業態の作り直し中のくいどんで先に表れやすい。
今後の分かれ目
- 木曽路の既存店の客数が数か月連続で前年を割ったら
- やや悲観・悲観に重みを移す。値上げが祝いの席の客を遠ざけていると見る。
- 営業利益率が6%を超えて定着したら
- 中立の利益率の前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を上げる。値上げと省力化が人件費を上回ったと見る。
- くいどんの再構築が決算で黒字として確認できたら
- 焼肉の利益率の前提を上げる。食べ放題からの転換が成功したと見る。
- 冬の期(10月〜3月)の営業利益が予想を下回ったら
- 通期の計画に無理があったと見て、中立の利益の前提を下げる。
- 大型の自社株買いや増配を出したら
- 純現金が減っても、事業に要らない分を返す動きと見る。ただし家賃と運転資金の裏づけは確かめる。
- 他社が買収の提案をしてきたら
- 10年以内のTOBは参考値で約18%ある。提案の価格を、中立の本質価値と比べて判断する。
見ておくもの
- 木曽路部門の既存店の客数と客単価(月次)
- 営業利益率と、食材費・人件費の比率
- 冬の期(10月〜3月)の営業利益と通期予想の進み具合
- くいどんの業態転換の成果と、焼肉部門の利益
- 不採算店の閉鎖と出店の数、敷金・保証金の残高
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)×1店あたり売上(名目)で積み上げ、倍率は式の上限(ROEが資本コストを下回るので、式の値)の7〜9割に置いた。今の株価や過去の倍率から置いてはいない。悲観は稼ぐ力と売れる資産の税後で測った。部門ごとの利益は開示がなく推定。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.05 倍・やや楽観 PER 8.4→12.05 倍・中立 PER 7.8→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.8 を足した 8.3%。堀は強くないので、財務の厚さや老舗の歴史で k を下げない。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず上乗せ(extra)も置かない。