結論
すかいらーくは国内最大のファミリーレストラングループだ。筆者の結論は割高である。主力の「ガスト」は値ごろ感が売りの業態で、価格を自分で決める力が弱い。専門業態のしゃぶ葉やバーミヤンは客単価がやや高く、利益率もガストより良い。2024年に買収した資さんうどんと台湾など海外の店は、まだ規模は小さいが1店あたりの稼ぎが大きく、会社が次の成長の軸に据えている。
筆者はガスト・専門業態・資さんうどん+海外の3つに分けて、店の数と1店あたりの売上を積み上げてみた。ガストの堀、つまり他社がまねできない強みは薄いので、強気の目線でも倍率は高くしすぎていない。それでも10年後の中立の時価総額は今の4割弱(約3,000億円)にしかならない。資さんうどんと海外が計画を上回って伸びる強気の筋書きでも、10年後の時価総額に還元を足してやっと今の値に並ぶ程度だ。今のPERは46.7倍、PBRは4.17倍。資さんうどんと海外の成功をかなり先取りした値段だ。筆者はここから買う安全域は乏しいと見る。
バリュー投資の観点から
ガストの店網と一括調達の力は、規模の経済という意味での強みではある。だが低価格帯のファミリーレストランという業態そのものは、価格の叩き合いから逃げられない。筆者はこれを本物の堀とは見ない。
ROEは8.9%で、資本コストの8.0%(基本7.5%に品質の調整+0.5%を足した値)をわずかに超える程度にすぎない。再投資が株主の取り分を大きく増やす段階には、まだ届いていない。2024年の資さんうどん買収は、1店あたりの稼ぎが大きい良い資産を取り込んだ判断であり、自前主義から規律あるM&Aへ軸を移した経営の判断力は評価できる。
ただ専門業態・資さんうどん・海外という複数の種を同時に育てる今の形は、どれが本当に資本コストを超える再投資になるのか、まだ見極めがついていない。今のPER46.7倍、PBR4.17倍という値段は、資さんうどんと海外の将来の成功をかなり先取りしている。10年という長い時間で見ても、払った値段を取り戻す余地、つまり安全域は乏しい。10年という長さで資さんうどんと海外が本当にもう一つの成長の柱に育てば、今の値段にも根拠が出てくる。だが筆者は、その確証はまだないと見る。
何で稼ぐ会社か
すかいらーくの稼ぎ方は3つに分かれる。筆者はまずこの3つで会社を見る。
柱の1つ目は「ガスト」だ。国内に約1,211店を持つ、グループ最大の看板で、売上のおよそ4割を占める。安さと使いやすさで客を呼ぶ業態で、セルフレジや配膳ロボットを使って人手を減らし、値ごろ感を保っている。朝から深夜まで幅広い客層を取り込む、祖業らしい強さがある。
2つ目は専門業態だ。しゃぶしゃぶの「しゃぶ葉」、中華の「バーミヤン」、ステーキの「ステーキガスト」などで、店数は約1,767店とグループの過半を占める。ガストより客単価が高く、利益率もやや良い。業態ごとに個性があり、ガスト1つに頼らない客層の広さを支えている。
3つ目は資さんうどんと海外だ。資さんうどんは2024年に約240億円で買収した、北九州発のうどん店である。1店あたりの売上がグループ平均の3倍ともいわれる稼ぎ頭で、関東・関西へ急速に広がっている。海外は台湾を中心に、まだ115店ほどの規模にすぎない。この2つを合わせても店数は225店ほどで、グループの中では小さい。だが会社はここに次の成長を賭けている。
優良さと弱いところ
すかいらーくの堀、つまり他社がまねできない強みは、正直に言えば薄い。筆者はそう見る。
看板のガストは値ごろ感で勝負する業態で、サイゼリヤのような超低価格チェーンとの価格の叩き合いから逃げられない。値上げをしたくても、客が離れる怖さが常にある。ROE(自己資本に対する儲けの率)は8.9%で、資本コストの7.0%(優良度の調整を含む)をわずかに超える程度にすぎない。ゼンショーのすき家・はま寿司のような、客を独占できる強さには届かない。
一方で、しゃぶ葉などの専門業態には業態なりの個性があり、資さんうどんは1店あたりの稼ぎが際立って高い。この2つは、グループの中では質の良い資産だと筆者は見ている。配膳ロボットやタブレット注文は人手不足への備えとして評価できるが、スープなど人の手が要る仕事は残り、万能ではない。2026年1月には社長が交代した。拡大路線の規律が新しい体制でも保たれるかは、これから数年の決算で確かめる必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食業界の数量と価格の見通しは、業種ノートにまとめた前提をそのまま使う。すかいらーくに固有の事情だけをここに書く。
ガストは値ごろ感の業態なので、不況で客が外食から下がるときの受け皿になりやすい。一方で専門業態を含め、国内のファミリーレストランはすでに店数が飽和に近い。会社が国内の新規出店を3年で300店にとどめ、M&Aと海外に成長の軸を移しているのは、この天井への対応そのものだ。
競合はロイヤルホストやジョイフルといった同じ価格帯のチェーンに加え、サイゼリヤのようなさらに安いチェーンもいる。値上げの通りやすさで各社の差がつきやすい局面が続く。資さんうどんは北九州のソウルフードという強い地元ブランドを武器に、関東・関西へ広がっている。うどん業態では丸亀製麺などとも競うが、1店あたりの稼ぎの大きさは独自の強みだ。海外はまだ台湾・マレーシア・米国の115店ほどで、はま寿司の持ち帰り寿司のような規模には育っていない。人件費の上昇は業界全体の逆風で、ロボットなどの自動化でどこまで吸収できるかの差が、各社の利益率を分けていく。
資本政策と M&A
株主への還元は配当が中心だ。2025年12月期から2026年12月期にかけて、会社は増配の方針を示しており、連続増配の流れは続いている。自社株買いはここ数年実績がないが、2026年2月には導入を検討しているとの報道も出た。
M&Aは2024年の資さんうどん買収で大きく動いた。再上場後では初めての大型買収で、2027年までにさらに3〜5件を実施する計画を掲げている。買収の目利きが続けられるかどうかが、この会社の今後を左右すると筆者は見る。2026年1月には社長が交代した。新しい体制のもとで資本配分の規律が保たれるかを、これから見ていく必要がある。時価総額はすでに7,800億円規模まで育っており、この会社自身が買収される可能性は高くないと筆者は見ている。
点検済み(2026-10-19):起点の利益(直近が山でないこと)、純有利子負債とリース、倍率と ROEを確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 9.6 億円(株主約 448,046 人×100 株の年額面 4,000 円×単元以上の割合 0.7×大口の上乗せ 3.0×使われる割合 0.85×原価率 0.3。推定)。10 年で中立 96 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 48 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資さんうどんは買収からわずか2年で、店数を72店から121店規模へ伸ばした。関東・関西への進出も滑り出しは良い。1店あたりの売上はグループ平均の3倍と言われる稼ぎ頭で、台湾への1号店も出した。会社が掲げる店数4倍という目標は、絵に描いた餅ではない。
2027年までのM&A3〜5件という計画は、資さんうどんに続く買収の種をまだ残している。海外も、しゃぶ葉のような専門業態を武器にすれば広げられる余地は大きい。配膳ロボットやセルフレジは、ランチの回転率を上げ、店員の歩く距離を4割以上減らす実績をすでに出している。人件費の上昇という業界共通の重荷を、技術で吸収できる会社だ。
ガストも、値ごろ感という武器がある。景気が悪くなっても、外食から完全に客が消えるわけではなく、ガストのような中間的な値段の業態が受け皿になる。2026年の社長交代後も拡大路線は続いており、資さんうどんと海外という新しい柱が育てば、専門業態の個性と合わさって、グループ全体の利益率を一段上げる好循環に入る。
慎重な見方
ガストという看板は、安さで勝負する業態である以上、サイゼリヤのような一段安いチェーンとの価格競争から逃げられない。値上げをすれば客が離れる怖さが、常に経営の判断を縛る。
国内のファミリーレストランはすでに店数が飽和している。計画する国内出店300店は、業界の数量の天井を解決するには小さすぎる。資さんうどんの急拡大も、関東・関西へ店を増やすほど、北九州の地元ブランドという強みが薄れていく怖さをはらむ。1店あたりの稼ぎの高さが、このまま続くとは言い切れない。
海外もまだ115店程度で、はま寿司の持ち帰り寿司のような規模には遠い。現地の品質管理や競合対応にはコストがかかり、利益率を押し下げるリスクがある。2027年までのM&A計画も、資さんうどんのような良い買収先を毎回見つけられる保証はなく、統合に失敗すればのれんの目減りという形で跳ね返る。2026年の社長交代は、拡大の規律が新体制でも保たれるかを確かめる、まだ始まったばかりの段階だ。最低賃金の上昇が自動化の効果を上回れば、ガストと専門業態の両方で利益率が削られる。今のPER46.7倍、PBR4.17倍という値段は、まだ小さい成長の柱の将来の成功を大きく先取りしており、計画が少し遅れるだけで市場の期待は崩れやすい。
どちらに重みを置いたか
ガストの価格競争の重さと、国内の店数飽和については、慎重な見方のほうに筋がある。資さんうどんと海外という、まだ小さい柱の将来の成功を、今の値段がどこまで織り込んでよいかは、強気の側も慎重に見るべきところだ。筆者はこの会社の堀を弱いと見て、新しく投じたお金の稼ぎは3分の1しか残らない前提で倍率を置き、確率も慎重な側を厚めにした。自己資本を流れで置くとROEは8〜13%程度にとどまり、場面によっては1÷kの床を使う。それでも今のPER46.7倍には遠く届かず、総合では割高という結論になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,485 円3,378 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 367 円835 億円)。 今の値に割り戻すと 901 円2,049 億円、今との差 −74.4%、 期待の年率 −6.2%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,139 円7,140 億円 | 628 円1,429 億円 | +7.0% | +0.7% | 452 円1,028 億円 |
| やや楽観 | 25% | 2,207 円5,019 億円 | 466 円1,060 億円 | −24.1% | −2.7% | 668 円1,520 億円 |
| 中立 | 32% | 1,369 円3,113 億円 | 346 円788 億円 | −51.3% | −6.9% | 549 円1,248 億円 |
| やや悲観 | 21% | 558 円1,268 億円 | 212 円483 億円 | −78.1% | −14.1% | 162 円368 億円 |
| 悲観 | 10% | 18 円41 億円 | 197 円448 億円 | −93.9% | −24.4% | 22 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,485 円3,378 億円 | 367 円835 億円 | −47.4% | −6.2% | 1,853 円4,213 億円 |
今の株価時価総額 3,520 円8,005 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 資さんうどん・海外が第二の成長エンジンに定着 利益 534 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,139 円7,140 億円
10年かけて資さんうどんが400店を超え、台湾に続いて東南アジア・米国でも海外の店が大きく育つ10年だ。追加のM&Aも複数成立し、資さんうどんのような1店あたりの稼ぎが大きいブランドをもう一つ手に入れる。ガストは配膳ロボットやAIを使った発注で人件費の上昇を構造的にこなし、専門業態のしゃぶ葉・バーミヤンも客単価の上昇が続く。国内の店数はほぼ横ばいだが、1店あたりの稼ぎは物価以上に伸びる。2026年の社長交代後の新体制のもとでも拡大路線は世代を超えて定着し、資さんうどんと海外という新しい柱が、国内のファミリーレストランという成熟した本業の利益率を一段押し上げる、強気が報われる10年になる。
- ガスト(ファミリーレストラン・最大業態):数量 1,250(ガストの国内店舗数(店))× 価格 2.23(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 2,783 億円・営業利益 250 億円。営業利益率9.0%
- 専門業態(バーミヤン・しゃぶ葉・ステーキガスト等):数量 2,000(専門業態の国内店舗数(店))× 価格 1.96(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 3,916 億円・営業利益 411 億円。営業利益率10.5%
- 資さんうどん・海外(M&A・海外展開の成長エンジン):数量 1,500(資さんうどん+海外店舗数(店))× 価格 2.28(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 3,416 億円・営業利益 376 億円。営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 534 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.38 倍、時価総額 7,140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:資さんうどん・海外・追加M&Aが10年間一貫して計画以上に進む必要があり、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 25% 資さんうどん・海外が計画線上で成長する 利益 399 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,207 円5,019 億円
資さんうどんは関東・関西・台湾での拡大が続き、海外の店もおおむね順調に増える10年だ。ガストと専門業態は、国内の店数の伸びはほぼ止まるが、配膳ロボット・セルフレジによる自動化と客単価上昇で利益率は緩やかに上がる。追加のM&Aは一部実現するが、資さんうどんほどの大きな成功例はまだ限られる。会社全体としては、本業の成熟と新しい柱の緩やかな成長が両立し、業界平均を上回る成長を保つ。社長交代後の新体制も大きな混乱なく定着し、既存店の値上げも物価の範囲でおおむね通る、現実的な上振れの10年になる。台湾に続く海外の2拠点目も検討が進む。
- ガスト(ファミリーレストラン・最大業態):数量 1,220(ガストの国内店舗数(店))× 価格 2.15(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 2,622 億円・営業利益 210 億円。営業利益率8.0%
- 専門業態(バーミヤン・しゃぶ葉・ステーキガスト等):数量 1,950(専門業態の国内店舗数(店))× 価格 1.84(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 3,596 億円・営業利益 342 億円。営業利益率9.5%
- 資さんうどん・海外(M&A・海外展開の成長エンジン):数量 1,100(資さんうどん+海外店舗数(店))× 価格 2.17(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 2,386 億円・営業利益 239 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 399 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.58 倍、時価総額 5,019 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界見通しの上位レンジに近い想定で、資さんうどん・海外が主軸として定着するという現実的な上振れ。
中立 32% 中立:ガストは成熟、資さんうどん・海外が主な伸び 利益 265 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,369 円3,113 億円
10年後もガストは店数がほぼ横ばいで成熟し、サイゼリヤなどとの価格競争の中で利益率の改善は小幅にとどまる10年だ。専門業態も客単価が緩やかに上がる程度にとどまる。資さんうどんは関東・関西や海外への拡大で規模を伸ばすが、資さんうどんほどの高い1店あたりの稼ぎを再現する新しいブランドはまだ出てこない。新体制のもとで拡大路線は続くが、創業期のような大胆さはやや後退し、海外出店のペースも計画よりゆっくりになる。それでも国内の既存店は人件費の上昇を自動化でほぼ相殺し、「ガストの成熟とM&Aの緩やかな成長が両立する会社」として評価される10年になる。 株主優待は年およそ 9.6 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 96 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。
- ガスト(ファミリーレストラン・最大業態):数量 1,150(ガストの国内店舗数(店))× 価格 2.06(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 2,366 億円・営業利益 154 億円。営業利益率6.5%
- 専門業態(バーミヤン・しゃぶ葉・ステーキガスト等):数量 1,850(専門業態の国内店舗数(店))× 価格 1.69(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 3,130 億円・営業利益 244 億円。営業利益率7.8%
- 資さんうどん・海外(M&A・海外展開の成長エンジン):数量 850(資さんうどん+海外店舗数(店))× 価格 2.00(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,696 億円・営業利益 144 億円。営業利益率8.5%。海外の小型店が増える構成変化で平均単価が下がる
倍率:事業の純利益 265 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 3,113 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界見通しの中心値と、ガストの成熟・資さんうどん・海外の緩やかな拡大を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 21% 国内飽和と人件費高で成長が鈍る 利益 106 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 558 円1,268 億円
ガストと専門業態は国内の店数飽和がさらに進み、新規出店の余地が乏しくなる10年だ。資さんうどんと海外も店数こそ1,000店規模まで増えるが、現地の競合やブランドの薄まりで1店あたりの稼ぎの伸びが鈍る。人件費の上昇が配膳ロボットなどの自動化の効果を上回る状態が長引き、追加のM&Aも見送られがちになる。新体制のもとでの資本配分も慎重になり、国内のファミリーレストラン業界全体の地力の弱さが、10年たっても解消しない。会社の成長は業界の中位にとどまり、投資家の期待を下回る10年になる。配当だけは減らさない方針を会社は維持する。
- ガスト(ファミリーレストラン・最大業態):数量 1,000(ガストの国内店舗数(店))× 価格 1.84(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,842 億円・営業利益 74 億円。営業利益率4.0%
- 専門業態(バーミヤン・しゃぶ葉・ステーキガスト等):数量 1,650(専門業態の国内店舗数(店))× 価格 1.52(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 2,501 億円・営業利益 125 億円。営業利益率5.0%
- 資さんうどん・海外(M&A・海外展開の成長エンジン):数量 550(資さんうどん+海外店舗数(店))× 価格 1.84(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,014 億円・営業利益 56 億円。営業利益率5.5%
倍率:ROE 3.7%(純利益 106 億円 ÷ 自己資本 2,836 億円)。事業の ROE が資本コスト 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍。ROE が k を下回り、国内飽和と人件費高で成長が鈍るので、やや悲観は上限の 7.5 割 の 9.4 倍に置いた。
確率:国内の店舗数飽和が10年たっても解消せず、人件費上昇の吸収力が構造的に不足する想定。
悲観 10% 構造的に優良さを失う 利益 6 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 18 円41 億円
ガストはサイゼリヤなどとの価格競争に劣後して客を減らし、専門業態も新しい専門店チェーンに客を奪われる10年だ。資さんうどんは急拡大のひずみで北九州発という地元ブランドが薄まり、1店あたりの高い稼ぎを失う。海外も現地競合と品質管理の問題で伸びず、追加のM&Aも統合に失敗し、のれんの目減りが自己資本を圧迫する。2026年の社長交代後の新体制でも拡大の規律を保てず、資本配分の優先順位が揺らぐ。それでもファミリーレストランという業態自体の需要が消えるわけではなく、店網という資産を使った再編・ブランド売却の道は残る、構造的に優良さを失う10年になる。売上が落ちても店の家賃は減らないため、利益率の落ち込みはその分だけ深くなる。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 48 億円を足した。
- ガスト(ファミリーレストラン・最大業態):数量 800(ガストの国内店舗数(店))× 価格 1.69(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,351 億円・営業利益 27 億円。営業利益率2.0%
- 専門業態(バーミヤン・しゃぶ葉・ステーキガスト等):数量 1,300(専門業態の国内店舗数(店))× 価格 1.39(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,806 億円・営業利益 27 億円。営業利益率1.5%
- 資さんうどん・海外(M&A・海外展開の成長エンジン):数量 350(資さんうどん+海外店舗数(店))× 価格 1.63(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 570 億円・営業利益 6 億円。営業利益率1.0%
倍率:ROE 0.3%(純利益 6 億円 ÷ 自己資本 1743 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 9.4 倍より低い 7.5 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:ガストが価格競争で劣後し、資さんうどん・海外のM&Aも定着しないという複合シナリオ。業態自体は消えないが、個社の優位性喪失は10年で定着しやすいため無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ガスト(ファミリーレストラン・最大業態)
グループ最大のブランド「ガスト」を中心とした低価格帯のファミリーレストラン業態。値ごろ感と自動化投資で人件費上昇に対応する。
| 数量ガストの国内店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,211 | 1.54 | 1,859 | 112 |
| 10 年後 中立 | 1,150 | 2.06 | 2,366 | 154 |
取り方:全社売上4,578億円のうちガストの売上構成比を約40.6%(2023年12月期の報道参考値)とみて1,858.9億円と推定し、国内店舗数1,211店(2026年6月時点)で割って1店舗当たり売上を逆算した。営業利益率は全社平均6.5%より低い6.0%とみた(価格競争が強く利益率が薄い業態のため)。
専門業態(バーミヤン・しゃぶ葉・ステーキガスト等)
しゃぶしゃぶの「しゃぶ葉」・中華の「バーミヤン」・ステーキの「ステーキガスト」など、ガストより客単価が高い差別化ブランド群。
| 数量専門業態の国内店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,767 | 1.26 | 2,232 | 156 |
| 10 年後 中立 | 1,850 | 1.69 | 3,130 | 244 |
取り方:全社売上からガスト・資さんうどん・海外を除いた残差(約2,231.5億円)を専門業態の売上とみて、国内店舗数の残差(グループ総店舗数3,203店から海外115店・資さん約110店・ガスト1,211店を除いた約1,767店)で割って1店舗当たり売上を逆算した。差別化ブランドでガストより利益率が高いとみて7.0%を置いた。
資さんうどん・海外(M&A・海外展開の成長エンジン)
2024年に買収した北九州発のうどん・和食チェーン「資さん」と、台湾・マレーシア・米国で展開する海外店舗を合わせた成長の柱。
| 数量資さんうどん+海外店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 225 | 2.17 | 488 | 44 |
| 10 年後 中立 | 850 | 2.00 | 1,696 | 144 |
取り方:資さんうどん(約110店、買収時72店から拡大)と海外店舗(115店、台湾89・マレーシア25・米国2)を合わせた約225店とみて、資さんうどんの高い1店舗当たり売上(既存業態平均の約3倍と報道)と海外の小型店の低い1店舗当たり売上を混ぜた水準として488億円・1店舗当たり2.169億円を置いた。まだ小規模だが利益率は9.0%とグループ内で最も高いとみた。
リスクと懸念
価格競争と値上げの通りにくさ
ガストは低価格帯のファミリーレストランという業態特性上、サイゼリヤ等の超低価格チェーンとの価格競争に常にさらされる。人件費・食材費が物価以上に上がる環境で値上げが通らなければ、グループ最大のブランドの利益率が直接圧迫される。
国内店舗数の飽和
ファミリーレストラン業態全体で国内の店舗数はほぼ飽和に近づいており、中期経営計画の国内出店300店という規模は業界全体の数量天井に対する限定的な対応にすぎない。既存店売上・客数での僅かな劣後が積み重なるリスクがある。
資さんうどんのブランド希薄化
資さんうどんは北九州のソウルフードという強いローカルブランドを武器に急拡大しているが、関東・関西への店舗転換・新規出店が進むほどブランドの独自性が薄まり、1店舗当たり売上の高さが長期的に維持できるかは未知数である。
M&A統合・のれん減損リスク
中期経営計画は2027年までにM&A3〜5件を掲げるが、資さんうどんのような質の良い買収を毎回見つけられるとは限らない。統合管理に失敗すれば店舗網の効率が落ち、積み上げたのれんの減損リスクにつながる。
海外展開の採算
海外展開は台湾・マレーシア・米国でまだ115店程度の規模にとどまり、はま寿司の持ち帰り寿司のような大規模フォーマットに育つ保証はない。現地の品質管理・調達・競合対応のコストが利益率を圧迫するリスクがある。
経営体制の交代とガバナンス
2026年1月に代表取締役の交代があり、谷真氏が会長CEO、佐藤拓男氏が6代目の社長COOに就任した。拡大路線を支えてきた経営の規律とM&Aの目利きが、新しい体制でも従来どおり保たれるかは、まだ確かめがついていない初期段階にある。複数年の決算を通じて、資本配分の優先順位に変化が出ていないかを見ていく必要がある。
人件費上昇と労務リスク
最低賃金の継続的な上昇とパート・アルバイト不足は外食業界共通の逆風。配膳ロボット・セルフレジ・タブレット注文による自動化投資で吸収を図っているが、スープ類の配膳など機械化できない業務も残り、吸収しきれなければ営業利益率を直接削る。
今後の分かれ目
- 資さんうどんが店舗数4倍(400店規模)の目標に向けて計画どおり拡大できたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。資さんうどんが第二の成長エンジンとして定着していると見る。
- 海外店舗の拡大が計画の100店に届かず、現地での苦戦が続いたら
- やや悲観側に重みを移す。海外展開が規模だけで収益に結びついていないと見る。
- 2026年1月の新体制のもとで大型M&Aや資本配分の方針が大きく変わったら
- 新体制の規律を見極めたうえで前提を見直す。規律あるM&Aへの転換なら中立〜やや楽観、逆に規律が崩れればやや悲観に寄せる。
- 最低賃金上昇のペースが自動化投資の効果を上回り続けたら
- やや悲観側に寄せる。人件費吸収力が構造的に不足していると見る。
- 自社株買いが実際に開始されたら
- 資本政策の前向きな変化として中立〜やや楽観側の確度を上げる。
- ガストの既存店売上がサイゼリヤ等との価格競争で継続的に劣後したら
- 国内の価格競争力の前提を下方修正し、やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 中期経営計画(2027年12月期)の進捗(売上・営業利益の実績と目標の差)
- 資さんうどんの店舗数・1店舗当たり売上の推移(関東・関西・台湾での拡大状況)
- 海外店舗数(台湾・マレーシア・米国)の四半期推移
- 自社株買いの実施有無
- 2026年1月の新体制下での新規M&A・資本配分方針の変化
- ガスト・専門業態の既存店売上・客数(日本フードサービス協会の業界統計との比較)
倍率と資本コストの決め方
ガスト・専門業態・資さんうどん・海外の3区分で店舗数(実質)×1店舗当たり売上(名目)を積み上げ、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流し(ROEは結果)、堀は弱いとみて残る割合1/3で薄めたRONICと長期g(k−g≥3.5%の上限)から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 8.5%)を出した。楽観・やや楽観は上限の8割、中立はROEがkに届かず上限が1÷k=12.5倍なので9割、やや悲観は7割5分に置いた。悲観は市場の倍率や床のPBRでなく、のれん減損後の稼ぐ力(純利益6億円÷k)で置いた。今の値段やPERには寄せていない。決算は国際会計基準(IFRS)で、家賃の大半はすでに使用権資産とリース負債として貸借対照表に載っている。新リース会計基準による形の変化は受けず、日本基準の同業と純負債や EV を比べるときは、リース負債の扱いをそろえて見る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→13.38 倍・やや楽観 PER 11→12.58 倍・中立 PER 11.2→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。価格競争の重さで値決め +0.25%、堀の弱さと利益の読みにくさで寿命 +0.25%、循環と借金は普通の 0。赤字の年はあったが今は黒字で存続に疑いは無く、上乗せ(extra)は置かない。M&A(資さんうどん)の統合といった個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.50%。
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