結論
フジは中国・四国と兵庫で約480店のスーパーを運営する、地域最大手の食品小売だ。2024年にイオン系のマックスバリュ西日本などと合併し、売上は8,000億円を超えた。ただし儲けは薄い。営業利益率は1%台で、利益で測ると今の株価は高い。これが筆者の結論だ。
今の利益の水準は、2027年2月期の会社予想で営業利益が150億円前後だ。昨期の純利益80億円は有価証券の売却益と税効果で膨らんだもので、実力ではない。筆者はならした純利益を60億円台とみる。
10年後の中立は、客数が1割減り、客単価が物価並みに上がり、営業利益率が2%に届くという筋書きだ。ここまで上げるのも楽ではない。賃上げと物流費は毎年重く、改装と閉店の費用も続く。ROEは5%前後にとどまり、資本コストを下回る。新しく投じるお金が価値を増やさない会社に、高い倍率は付けられない。
強みは、多くの県で1位の店網と、イオンの調達力だ。弱みは、人口が全国より速く減る地域に、店が集中していることだ。親会社のイオンが完全子会社にする可能性はあるが、それは株主への上乗せ幅の話で、事業の価値が上がるわけではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フジは「持ち続けたい会社」ではない。地域の暮らしに欠かせない店という点は堅い。しかし、稼ぐ力が薄い。10年たっても、営業利益率は2%台にとどまると筆者は見る。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、薄い。店の改装に毎年100億円を超える投資が要る一方で、営業利益は100億円台前半だ。ROEは資本コストを下回る。ためた利益は、帳簿の額より小さい価値しか生まない。
経営の資本配分も、決め手に欠ける。統合のシナジーは期待できるが、実現は数年先だ。上場子会社のため、少数株主に有利な判断が出るとは限らない。
安全域という点では、今の時価総額は事業の利益に比べて高い。純資産に近い値段にも見えるが、帳簿の自己資本は利益を生まなければ価値を持たない。10年の期待は、確率をかけて割り引くと今の値段を下回る。
何で稼ぐ会社か
フジの稼ぎの源は、地域の暮らしに近い食品スーパーの売上だ。店は中国・四国と兵庫に約480あり、屋号は「フジ」「マックスバリュ」「マルナカ」の3つが中心だ。ほかに安売りの「ザ・ビッグ」と、衣料や雑貨まで並べる大型店「フジグラン」がある。
売上の大半は生鮮・総菜・日配品で、利益率は低い。仕入れ値と売値の差が薄く、人件費と家賃を払うと営業利益は売上の1〜2%しか残らない。このため、客数と客単価の少しの変化が利益を大きく動かす。
2024年3月に、持株会社だったフジ、フジ・リテイリング、マックスバリュ西日本の3社が合併した。屋号は残したまま、仕入れ・物流・加工・システムを一本にまとめる作業が続いている。中計は3年で860億円を投じ、150店を改装または建て替える。改装した店の売上は前の年より6〜7%伸びている。
店に来ない客への手当てもある。移動スーパーは146台で、ネットスーパーなども使う。不動産の賃貸収入もあるが、利益への寄与は小さい。
収益の柱は食品の粗利と、店ごとの運営費の差だ。客数が少ない店でも、家賃と人件費はほぼ変わらない。そのため、閉店と改装で店ごとの採算をそろえる作業が、利益率を決める最大の仕事になっている。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、中程度だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、地域のドミナント(同じ地域に店を集めること)の密度と、仕入れの規模にある。多くの県でシェア1位という位置は本物だ。イオンのトップバリュも仕入れに使えるので、中小の競合より調達で有利になる。
弱いのは、稼ぐ力そのものだ。営業利益率は過去10年で1.4〜2.3%の間にあり、いちばん良い年でも2.3%だった。ROEは過去10年の中央値で4%台、資本コストを大きく下回ってきた。資本効率が高い会社とは言えない。
昨期の純利益の伸びは、投資有価証券の売却益と税負担の減少によるものだ。一方で、本業の営業利益は前の期より13%減った。減損も119億円あり、不採算店の整理が続いている。経営の方向は合っているが、成果はまだ数字に出ていない。
経営は慎重で、配当は安定している。ただし筆者がオーナーなら、薄い利益のまま店を増やし続ける会社には資金を追加したくない。改装の投資が利益を実際に増やしているかが、今後の判断の分かれ目になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーの業界は、人口が減る国内で、客の数が増えない構造にある。中国・四国は高齢化と人口減の速度が全国より速い。同社の社長も、この傾向が今後も続くと述べている。
競合は地場の強豪が多い。広島ではイズミ(ゆめタウン、ゆめマート)とフレスタ、愛媛ではママイ、岡山・香川ではハローズなどがひしめく。ほかに、ドラッグストアの食品強化、ディスカウント業態の拡大がある。安さで客を取り合う構図が、利益率を押し下げている。
一方、生活必需品が中心なので、景気が悪くなっても売上の落ち込みは浅い。物価が上がる局面では、客単価が伸びて売上は増えやすい。ただし客数は減り、買上点数も減る。売上が増えて利益が減る流れは、2025〜2026年の業界に共通している。
人件費が最大の重荷だ。最低賃金は年々上がり、パート・アルバイトの確保も難しい。セルフレジ、電子棚札、自動発注といった省人化投資で吸収できる会社と、できない会社に分かれる。同社は統合で規模を持ち、これらの投資に踏み出している。地域の再編は今後も続き、買う側にも買われる側にもなりうる。
資本政策と M&A
資本政策は、イオンの傘下にあることが中心だ。イオンは2022年に議決権の51.6%を握り、同社を連結子会社にした。イオンは近年、イオンモールやイオンディライト、ジーフットなどの上場子会社を次々に完全子会社にしている。同社が次の対象になる可能性は、10年のうちに否定できない。
配当は純利益の3割ほど、年に26億円前後だ。自社株買いは目立たない。2026年2月期は、投資有価証券を売却して100億円を超える利益を得た。持ち合いの株を減らす動きは続く見込みだ。
自己資本比率は55%で、純有利子負債はほぼゼロだ。ただし店の多くは借りている。家賃は毎年必ず払う約束で、借金と同じ重さがある。2028年2月期からの新リース会計で、見かけの負債は増える。事業の実力が変わるわけではない。
株主優待は年約1.4億円(会社の費用ベース。買物割引券6,000円(または特産品3,000円)×単元株主約6.5万人(額面約2億円)×使われ率7割)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+14億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
統合の効果は、これから数年かけて出る。旧マックスバリュ西日本と旧フジ・リテイリングは、仕入れ・物流・加工を一つにする。それだけで、食品の粗利は厚くなる。トップバリュの活用も進む。
改装店の売上は前の年より6〜7%伸びている。150店規模の改装が一巡すれば、既存店全体の客数の減りは止まる。会社の中計は、2026年度に営業利益率2%、2030年度に3%を掲げる。過去最高の2.3%を超える水準だが、規模の経済が働けば不可能ではない。
さらに、イオンが完全子会社化に動く可能性がある。イオンはモールやディライトで、市場価格に上乗せした条件で買い取ってきた。株主にとっては、事業の価値が見直される機会になる。統合会社の物流センターや加工拠点が動き出せば、店ごとの人手も減らせる。電子棚札や自動発注の導入も、人件費の上昇を和らげる。
加えて、中四国の同業が人手不足で店を閉じれば、残る店に客が移る。店網の密度で勝つ会社には追い風になる。
慎重な見方
まず、足元の数字が弱い。2027年2月期の上期は営業利益が約半分に落ちた。改装による休業と閉店が売上を押し下げている。計画は下期の回復頼みだ。昨期の最終利益も、売却益と税効果で作った数字にすぎない。
次に、構造が悪い。中四国は人口減が速く、客数は毎年減る。賃上げは止まらず、営業利益率は10年間で2.3%を超えたことがない。中計の3%は、いまの構造では届かない。
資本効率も問題だ。ROEは過去10年の中央値で4%台、資本コストを大きく下回る。新しく店を改装しても、売上が伸びなければ減損が積み上がる。昨期の減損は119億円だった。
イオンの完全子会社化も、あてにならない。買い取りは、イオンにとって得なときにしか起きない。起きても、価格は事業の本質価値ではなく、市場価格の周辺で決まる。
さらに、競合の存在が重い。広島のイズミは自社の大型商業施設と食品を組み合わせて客を集める。ドラッグストアも食品を安く売る。安さを競う限り、利益率は上がらない。
どちらに重みを置いたか
強い見方は、慎重な方だ。統合の効果と改装の効果は本物だが、人口減と賃上げの重さがそれを打ち消す。10年後の中立でも、営業利益率は2%どまりで、ROEは5%前後にとどまる。資本コストを稼げない会社に、高い倍率は付かない。
確率は、中立に最も重みを置いた。やや楽観と楽観を足した確率より、やや悲観と悲観を足した確率を少し高くした。統合後も営業利益が減る期が続いているためだ。結果として、価値は今の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,182 円1,891 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 441 円382 億円)。 今の値に割り戻すと 1,389 円1,203 億円、今との差 −29.6%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 7.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,529 円3,058 億円 | 743 円644 億円 | +116.5% | +8.0% | 342 円296 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,849 円2,469 億円 | 557 円483 億円 | +72.6% | +5.6% | 681 円590 億円 |
| 中立 | 38% | 2,335 円2,023 億円 | 454 円393 億円 | +41.3% | +3.5% | 1,060 円918 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,442 円1,250 億円 | 320 円277 億円 | −10.7% | −1.1% | 423 円366 億円 |
| 悲観 | 10% | 969 円840 億円 | 205 円178 億円 | −40.5% | −5.1% | 117 円102 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,182 円1,891 億円 | 441 円382 億円 | +32.9% | +2.9% | 2,623 円2,273 億円 |
今の株価時価総額 1,973 円1,710 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 統合の成果が出て、利益率が中計に近づく 利益 218 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,529 円3,058 億円
統合の成果が10年かけて形になる。旧マックスバリュ西日本と旧フジ・リテイリングの仕入れ・物流・加工が一本になり、改装した店は売上を伸ばし続ける。イオンのトップバリュも使い、粗利が厚くなる。店の整理は早めに終わり、客数の減りは1割未満で止まる。中計が掲げる営業利益率3%には届かないが、2.8%まで上がる。賃上げは省人化で吸収する。それでも新しく店に投じたお金の稼ぎは、資本コストをわずかに下回るにとどまる。薄利多売の業態では、利益率が上がっても自己資本の厚みが利益を薄めるからだ。株主への還元は純利益の半分近くまで高まる。それでも、会社全体の利益は営業収益の3%に届かず、店網を広げるより絞る方が価値を生む会社であることに変わりはない。
- スーパーマーケット等(中国・四国・兵庫):数量 3.9(延べ買上客数(億人・推定))× 価格 2,740(1人あたり客単価(円))→ 売上 10,821 億円・営業利益 303 億円。営業利益率2.8%
倍率:事業の純利益 218 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 2,989 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率2.8%は過去最高の2.3%を大きく超える。統合の成果と賃上げの吸収の両方が要るので、確率は低く置いた。
やや楽観 20% 改装が効き、利益率は過去最高圏で安定 利益 172 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,849 円2,469 億円
改装と統合の効果が着実に出て、営業利益率は過去最高の2.3%台で安定する。150店規模の改装が一巡し、不採算店の整理も終わる。客数は人口減に沿って1割弱減るが、改装店は周りの店から客を取る。物流の統合も進み、物流費の上昇は一部を吸収できる。ただし賃上げと電気代は毎年重く、利益率の上積みは小幅にとどまる。中計の2030年に3%という目標は、この筋書きでも遠い。中四国の同業が店を減らす分、同社の既存店には客が少し移る。ただしその効果は、人件費の上昇でほとんど消える。10年後も、薄利で安定した地域の食品スーパーであることに変わりはない。還元は純利益の4割ほどで、自己資本は少しずつ厚くなる。
- スーパーマーケット等(中国・四国・兵庫):数量 3.8(延べ買上客数(億人・推定))× 価格 2,700(1人あたり客単価(円))→ 売上 10,333 億円・営業利益 243 億円。営業利益率2.4%
倍率:事業の純利益 172 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 2,362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改装店の売上は伸びているが、2027年2月期の利益計画は上期で大きく遅れている。過去最高圏の維持は十分ありうるが、確かではない。
中立 38% 中立:人口減の中で店を絞り、薄い利益率を守る 利益 138 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,335 円2,023 億円
人口が減る中四国で、店を絞りながら薄い利益率を守る10年になる。客数は10年で1割ほど減り、客単価は物価並みに上がる。営業利益率は2%まで上がる。会社が2026年度に掲げる水準だ。2027年2月期の上期が計画に大きく届いていないことを考えると、これ以上の上積みは見込みにくい。賃上げは毎年続き、改装と閉店の費用も出続ける。還元は純利益の4割弱で、自己資本は3,000億円に近づく。ROEは5%前後で資本コストに届かず、新しく投じるお金は価値をほとんど増やさない。イオンの傘下で、店も人も大きくは変わらない。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.4億円×10年)を足している。
- スーパーマーケット等(中国・四国・兵庫):数量 3.7(延べ買上客数(億人・推定))× 価格 2,680(1人あたり客単価(円))→ 売上 9,820 億円・営業利益 196 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,884 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の営業利益率は1.4〜2.3%の帯にあり、2%はその上限近くだ。中計の目標より控えめに置いた中心の筋書き。
やや悲観 24% 賃上げと競争で利益率が1%台の前半にとどまる 利益 90 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 1,442 円1,250 億円
賃上げと競争で、営業利益率が1%台の前半にとどまる。ゆめタウンを運営するイズミ、ママイ、ハローズなど地場の強豪に加え、ドラッグストアが食品を安く売る。ディスカウント業態の客がそちらへ流れ、客数は10年で15%減る。値上げは通りにくく、客単価の伸びは物価に届かない。改装には費用がかかるが、売上の伸びは追いつかない。減損が続き、自己資本の増え方も鈍る。還元は純利益の3分の1ほどになる。統合のシナジーは出るが、人件費と物流費の上昇に食われる。営業利益は100億円台の前半にとどまり、ROEは3%台に沈む。株主に戻せる額も細り、自己資本の厚みだけが残る。店の資産価値で下支えされるが、利益の力は弱い。
- スーパーマーケット等(中国・四国・兵庫):数量 3.5(延べ買上客数(億人・推定))× 価格 2,640(1人あたり客単価(円))→ 売上 9,136 億円・営業利益 137 億円。営業利益率1.5%
倍率:ROE 3.3%(純利益 90 億円 ÷ 自己資本 2,764 億円)。ROE が資本コスト以下なので、正当化 PER は 1÷k が上限。値下げ競争で利益の質が落ち、新しい投資の稼ぎも k を下回るため、上限の 7.5 割に置いた。 今の利益はそのまま残る前提。
確率:賃上げと競争の圧力は構造的で、統合後も営業利益が減る期が続いている。中立より少し悲観に重みを置いた。
悲観 10% 地域の客を失い、利益が薄い赤字すれすれに落ちる 利益 36 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 969 円840 億円
客を失い、利益がほとんど残らなくなる。中四国の人口減は全国より速く、高齢化した地域の店は客数が2割以上減る。値上げは通らず、競合の安売りにつられて値下げが続く。人件費は下がらず、営業利益率は1%を割る。店の改装を続けても売上が戻らず、減損が積み上がる。店は売れる土地と建物がある限り、閉めて資産に換える道も残る。イオンがグループ再編の一環として完全子会社にする道もあるが、その価格は筋書きに入れていない。この筋書きでは、利益の力より店と土地の価値が値段を決める。営業利益は60億円台まで落ち込み、中計の目標とはまるで違う姿になる。賃借の店は家賃だけが残り、閉店の費用がさらに重くのしかかる。
- スーパーマーケット等(中国・四国・兵庫):数量 3.2(延べ買上客数(億人・推定))× 価格 2,560(1人あたり客単価(円))→ 売上 8,130 億円・営業利益 65 億円。営業利益率0.8%
倍率:稼ぐ力は純利益 36 億円 ÷ k 7.3% = 約 490 億円と小さい。店の土地・建物など売れる資産の税後から借金を引いた約 850 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 2,270 億円に PBR 0.37 倍を掛けた。営業利益が 65 億円の谷では利益で測らず、資産で測った。家賃(年約 200 億円と推定)は売上が落ちても減らない固定費として利益率に入れてある。
確率:客数の大幅な減と値下げ競争の複合は、地域の小売のどこかで起きうる。事業が崩れるほどではないが、無視できない確率として10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スーパーマーケット等(中国・四国・兵庫)
スーパー「フジ」「マックスバリュ」「マルナカ」、ディスカウント「ザ・ビッグ」、大型店「フジグラン」、移動スーパー等。単一の事業として開示される。
| 数量延べ買上客数(億人・推定) | 価格1人あたり客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4.1 | 2,000 | 8,143 | 112 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 2,680 | 9,820 | 196 |
取り方:開示は営業収益 8,142.6 億円だけで客数は出ない。食品スーパーの客単価を約 2 千円と推定し、売上を割り戻して年間の延べ買上客数約 4.07 億人とした(推定)。先の客数は中四国の人口減と店の整理で、中立は 10 年 0.90 倍。客単価は物価並みの 10 年 1.34 倍に置いた。
リスクと懸念
人口減と客数の減り
中国・四国は高齢化と人口減が全国より速い。客数は毎年減り、同じ売上を保つだけでも客単価を上げ続ける必要がある。値上げが客離れを招けば、売上と利益が同時に落ちる。
賃上げと物流費の上昇
最低賃金とパートの確保で人件費は毎年上がる。物流費の上昇も続く。営業利益率が1〜2%の会社では、人件費が0.3%上がるだけで利益が2割動く。省人化の投資が間に合うかが問われる。
統合のシナジーが出ない
旧マックスバリュ西日本と旧フジ・リテイリングの統合は、仕入れ・物流・システムを一本にする大工事だ。統合後も営業利益が減る期が続いており、シナジーが人件費の上昇に食われる可能性が高い。
改装・閉店による減損
昨期は減損が119億円、閉店損が15億円に上った。150店規模の改装を進めるなかで、売上が伸びない店が出れば、減損がまた積み上がる。純利益の見かけは、その年の特別損益で大きく動く。
競合とドラッグストアの食品強化
広島のイズミ、愛媛のママイ、岡山・香川のハローズなどの強豪に加え、ドラッグストアが食品を安く売る。ディスカウント業態の客が流れると、同社の安売り業態の利益が薄くなる。
家賃という固定費
店の多くは賃借で、家賃は年に約200億円と推定される。売上が落ちても家賃は減らない。純有利子負債がゼロでも、実質の負担は軽くない。2028年2月期からの新リース会計で、見かけの負債が増える。
イオンの出方
イオンは議決権の51.6%を持つ。完全子会社化が起きれば株主は市場価格に上乗せされた価格を受け取れるが、イオンの都合で時期も条件も決まる。決まらなければ、少数株主の利益が後回しになる懸念も残る。
今後の分かれ目
- 2027年2月期の営業利益が計画の150〜170億円に届き、2028年2月期に180億円に近づいたら
- 中立の利益率2%の確度が上がる。やや楽観・楽観の確率を少し上げてよい。
- 営業利益が2期続けて100億円台前半にとどまり、減損が続いたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。統合のシナジーが人件費に食われたと見る。
- 改装した店の売上の伸びが全店の客数減を上回る状態が続いたら
- 改装の投資の稼ぎが資本コストに近づく。ROEが上がる筋書きに重みを移す。
- イオンが完全子会社化の方針を発表したら
- 市場価格に上乗せされた価格で買い取られる可能性がある。ただし事業の本質価値は変わらないので、価値の数字は動かさない。
- 最低賃金の上昇が想定を超えて続いたら
- 営業利益率は1%台の前半に押し戻される。やや悲観の確度が上がる。
- 中四国で地場の同業の再編や撤退が進んだら
- 店舗網の取り合いが減り、客数の減りが緩む。やや楽観の確度が上がる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期・通期)と、改装店・既存店の売上の伸び
- 減損・閉店損の金額
- 人件費・物流費の販管費比率
- イオンの上場子会社の扱い(完全子会社化の発表)
倍率と資本コストの決め方
セグメントは単一の事業で、延べ買上客数(推定)×客単価で売上を積み、利益率は過去10年の1.4〜2.3%の帯と中計の目標を見て、中立は2.0%に置いた。純利益は営業利益の0.70倍(過去の中央値0.71)で、純現金がほぼゼロなので利払いの変化は入れていない。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流した(ROEは結果)。倍率は ROE が資本コスト以下なので 1÷k を上限に、その7.5〜8.8割に置いた。悲観は売れる資産の税後の床と今の自己資本から置き、過去の PBR の底は使っていない。2027年2月期の会社予想は出発点としてだけ使い、今の株価には寄せていない。新リース会計(2028年2月期から)で営業利益と負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→13.7 倍・やや楽観 PER 11.6→13.7 倍・中立 PER 11→13.7 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.2% を足した 7.3%。食品の必需性で循環を −0.5%、人口減の速さを寿命の +0.3% で見た。アークス・バローと同じ水準で、首都圏のライフより高い。統合の実行や上場子会社としての扱いなど個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いておらず、上乗せは置かない。