結論
エコスは、東京の多摩から埼玉、栃木、茨城、福島に約140店を持つ食品スーパーの連合体だ。エコス、たいらや、マスダなどの屋号で、食べ物を中心に売る。本社は東京都昭島市にある。
筆者の結論は、割安だ。理由は単純で、人が毎日食べる物を売る商売は需要が崩れにくく、無借金に近い財務が失敗の幅を小さくしているのに、利益に対する値段が低いからだ。
直近の決算は純利益26億円で、前の年より36%減った。ただ減益の主因は、21店の減損22億円という一時の費用だ。営業利益は57億円と、過去最高の水準に近い。
弱点は利益率の薄さだ。営業利益率は4%台で、賃金や家賃が上がると、利益が簡単に削られる。オーケーやロピアのような安売りの競合も、郊外へ近づいている。
それでも筆者は、10年後の中立で、純利益が物価並みに伸びると見る。客数が少し減っても、客単価の上昇が補う。中立の時価総額は今の2倍を超え、確率で重みをつけた本質価値も、今の4割増しほどになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、エコスは「地味だが、損をしにくい会社」だ。
人は景気が悪くても食べる。食品スーパーの需要は崩れにくく、無借金に近い財務が、それをさらに堅くする。経営も、出店と減損の入れ替えを淡々と進めている。
ただし、儲けの質は高くない。営業利益率は4%台で、競争に勝って値段を決められる会社ではない。賃金が上がれば、利益は簡単に削られる。
バリュー投資で重要なのは、安全域だ。今の値段は、利益の10倍前後で、純現金もある。10年後の中立でも、利益が物価並みに伸びれば、時価総額は今の2倍を超える。悲観でも、財務の堅さで大きく割れにくい。
筆者は、利益率の低さを織り込んでもなお、値段が安いと見る。10年後に何が起きているかは誰にもわからないが、人が食べる限り店は残る。ただし、強い堀を持つ会社ではないので、中立の倍率は式の下限に近い13倍台にとどめた。
何で稼ぐ会社か
エコスは、食品スーパーを展開する連合体だ。エコス単体で74店、子会社のたいらやが28店で、グループ全体では約140店を運営する。たいらやは北関東を地盤とし、与野フードセンターは埼玉、ココスナカムラやマスダも地域の店を持つ。売上の大半は生鮮食品、総菜、日配品など、毎日の食卓に必要な物だ。
営業収益は約1,380億円。営業利益率は4%台で、過去10年の最高は4.4%だった。粗利を左右するのは、生鮮や総菜の自社加工と、仕入れの交渉力だ。埼玉県川越市のグループ食品工場と、物流子会社のTSロジテックが、その土台になる。
店は郊外の幹線道路沿いや駅前に多く、車で来る客が中心だ。駐車場の広い店が多く、まとめ買いの客を取り込む。半径数キロの暮らしに近い品ぞろえで、安さだけでなく鮮度と品揃えで客をつなぐ。
会社は創立60周年を迎え、毎月の特売や価格施策に力を入れている。2026年2月期は、収益性が落ちた一部の店を見直し、21店で減損を出した。店の入れ替えを進める局面にある。減損は、閉店ではなく、帳簿の額を実力に合わせて下げる会計の処理だ。
株主には、年2回の基準日に、優待券または米を出す。100株の株主にも出る。
優良さと弱いところ
堀は、ほとんどない。食品スーパーは参入が容易で、商品は他店と大きく変わらない。差が出るのは、立地と鮮度、価格、そして人の働きぶりだ。
それでも守りは3つある。まず、地域に密着した店を140近く持ち、その規模で仕入れの交渉力を保っている。次に、自社の食品工場と物流で、総菜や生鮮の加工を内製している。そして、無借金に近い財務で、不況でも店を維持できる。
弱点も明らかだ。営業利益率は4%台で、物価や賃金が1ポイント動くだけで利益が大きく動く。店の多くは借りたもので、売上が落ちても家賃は落ちない固定費になる。
計画の実績は厳しい。中計は2027年2月期に営業収益1,600億円、経常利益70億円を掲げたが、直近は1,380億円、59億円にとどまる。目標を達成するための出店や買収は進んでいない。
資本効率は、過去10年のROE中央値が15%と高いが、これは自己資本が薄かった時期の数字だ。自己資本が積み上がった今は、10%を下回る年が出ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
首都圏の食品スーパーは、人口が横ばいで需要は崩れにくいが、競争が激しい。需要の数量は実質で緩やかに減り、値上げで売上を保つ姿だ。
競合は大きく3つある。ヤオコー、ライフ、サミットのような上位の食品スーパー、オーケーやロピアのような安売りの勢い、そしてドラッグストアの食品強化だ。特に安売りの競合は、郊外にも出店を広げ、客を引き寄せている。
食料品の値上がりは、客に節約志向を強めた。直近の第1四半期も、エコスは減収減益だった。売上総利益率は改善したが、販管費の増加がそれを上回った。
賃金上昇は、最大の逆風だ。食品スーパーの人件費は売上の1割強を占め、最低賃金が上がるたびに利益が削られる。価格に転嫁できるかが、各社の分かれ目になる。
食品の需要は、景気より人口と物価に左右される。値上げが続けば、客は買う量を減らさずに安い店へ移る。高齢化で一人あたりの食べる量は減るが、外食から内食へ戻る動きや、総菜の需要は伸びている。
この領域の業界ノートは無いので、市場の見通しは本稿で置いた。客数は10年で0.95倍、価格は物価並みの1.34倍を中立とした。
資本政策と M&A
配当利回りは約3%で、利益の約3割を配当に回す。自社株買いは確認できなかった。優待は、2月末と8月末の名簿に連続で記載された100株以上の株主が対象で、100株なら優待券60枚か米4kgだ。
筆者は優待の費用を年1.8億円ほどと見積もった。開示された額は確認できていないので、推定だ。優待は株主への現物の配当なので、10年の還元に原価ベースで加えた。
借入はほぼない。純有利子負債はマイナス2億円で、自己資本比率は52%。ただし店の多くは借りたものなので、家賃は借金と同じ固定の約束だ。新リース会計基準が2028年2月期から適用されると、リース負債が貸借対照表に載り、純負債は増え、自己資本比率は下がる。10年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。
減価償却は、既存の店は取得時の値段のままで、新しい店と改装だけ建築費の上昇で重くなる。更新投資が償却を上回る分は現金が出ていく。
M&Aは、傘下に入れた地域の食品スーパーが中心だ。TOBの確率は、参考値で10年30%(kabufu 推定)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食品スーパーは、人が毎日使う店だ。景気が悪くても売上は崩れにくい。エコスは無借金に近く、郊外で地域に密着した140近い店を持つ。直近の純利益の減少は、21店の減損という一時の費用が主因で、営業利益は57億円と高水準を保っている。
売上総利益率は改善している。第3四半期は27.0%と前年から0.66ポイント上がった。自社の食品工場と物流で、生鮮と総菜の加工を内製する体制が、粗利の改善を支えている。
減損を出した21店は、不採算店の整理を終えた意味でもある。減損で将来の償却が軽くなり、利益率は保たれる。
会社は創立60周年の施策で価格を見直し、改装を進めている。物価で客単価が上がれば、客数が少し減っても売上は保てる。来店頻度の高い店は、客の暮らしに組み込まれ、一度ついた客は簡単に離れない。純利益が今の35億円から、10年後に物価並みに47億円まで伸びれば、今の利益に対する値段の低さは大きな割安になる。
慎重な見方
営業利益率は4%台で、賃金や家賃が上がるたびに簡単に削られる。直近の第3四半期は、売上総利益率が上がっても、販管費が15億円増えて営業減益だった。
競合は強い。オーケーやロピアは郊外にも広がり、ドラッグストアは食品を伸ばしている。エコスは規模でも価格でも優位に立てない。
中計は未達だ。2027年2月期の営業収益1,600億円は、直近の1,380億円から遠い。会社の計画は、たびたび実績を上回っていない。
21店の減損は、立地の見立てが外れたことを示す。減損は今後も続きうる。
人口が減る郊外や地方の店は、10年で客数が細る。新リース会計基準の適用で、店の家賃が借金と同じ負債として見えるようになり、見かけの財務の強さも薄れる。
そして、強い堀がない会社の利益は、競争のたびに削られていく。優待も、業績が悪くなれば真っ先に縮められる。10年の間に、営業利益率が3%台前半まで落ちる年は十分にありうる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。需要の堅さ、無借金に近い財務、減損を済ませた体質は、数字に出ている事実だ。慎重な見方の賃金と競合の圧力は、利益率を4.0%に置き、悲観側の確率を3割台後半に置くことで反映した。
確率は、中立に最も厚く、悲観側の合計を楽観側の合計より厚くした。それでも、悲観の側でも財務の堅さが下を支えるので、株主に残る値は小さくならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 6,748 円743 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,234 円136 億円)。 今の値に割り戻すと 4,221 円465 億円、今との差 +82.5%、 期待の年率 +13.2%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,890 円1,199 億円 | 1,726 円190 億円 | +445.4% | +18.5% | 1,009 円111 億円 |
| やや楽観 | 17% | 9,402 円1,035 億円 | 1,508 円166 億円 | +371.7% | +16.8% | 1,855 円204 億円 |
| 中立 | 38% | 8,282 円911 億円 | 1,372 円151 億円 | +317.4% | +15.4% | 3,668 円404 億円 |
| やや悲観 | 24% | 4,093 円450 億円 | 1,054 円116 億円 | +122.5% | +8.3% | 1,235 円136 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,146 円126 億円 | 500 円55 億円 | −28.9% | −3.3% | 214 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,748 円743 億円 | 1,234 円136 億円 | +245.1% | +13.2% | 7,982 円878 億円 |
今の株価時価総額 2,313 円255 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 集客力が上がり、首都圏郊外で店を増やす 利益 63 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 10,890 円1,199 億円
首都圏の郊外で、エコスは「近くて安い、鮮度のいい店」として客を増やす。改装を終えた店の売上が伸び、プライスセレクトのような価格施策で、安売り勢との差を縮める。客数は今の1.08倍になる。
川越の食品工場と物流子会社を生かし、生鮮と総菜の自社製品を広げる。仕入れから売り場までの無駄が減り、売上総利益率が上がる。営業利益率は過去最高の4.4%に並ぶ。
新規出店は年に数店ずつ続き、同業の小規模な食品スーパーを傘下に迎える動きも出る。借入はほぼ使わず、配当は利益の35%を守る。
賃金や家賃の上昇は、値上げと効率化で吸収する。
- 食品スーパー:数量 7,452(年間の来店客数(万人、推定))× 価格 0.28(客単価(億円/万人=1人あたり円÷1万、名目))→ 売上 2,087 億円・営業利益 92 億円。客数7452万人×客単価0.28億円/万人(今の1.40倍)、営業利益率4.4%
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.91 倍、時価総額 1,132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格施策と改装、新規出店が噛み合い、客数が増え続ける筋書き。計画(27年2月期の営業収益1,600億円)に届いていない実績から、高くは置かない。
やや楽観 17% 客数を守り、利益率を保つ 利益 55 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 9,402 円1,035 億円
客数は今と同じ水準を保つ。人口が減る地域の店は縮むが、駅前や幹線道路沿いの店が補う。価格は物価並みに上がり、売上総利益率は今の27%台を保つ。
営業利益率は4.2%。過去最高の4.4%に近い水準で、直近3期の平均とほぼ同じだ。
新規出店と改装を続け、既存店の鮮度と品ぞろえを高める。配当は利益の3割強を維持し、優待も続ける。
減損を出した21店のような不採算店の入れ替えが一段落し、利益が安定する筋書きだ。出店のペースは年に数店と控えめで、借入に頼らず自己資金の範囲で続ける。
競合の安売りには、特売と自社製品で応じる。客を取り合う局面でも、粗利を守りながら客数を保つ。
- 食品スーパー:数量 6,900(年間の来店客数(万人、推定))× 価格 0.27(客単価(億円/万人=1人あたり円÷1万、名目))→ 売上 1,891 億円・営業利益 79 億円。客数6900万人×客単価0.274億円/万人(今の1.37倍)、営業利益率4.2%
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.5 倍、時価総額 954 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数を保ちつつ、売上総利益率の改善(直近+0.66ポイント)が続く筋書き。実績に近く、置きやすい。
中立 38% 中立:客数は緩やかに減り、値上がりで売上を保つ 利益 48 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 8,282 円911 億円
客数は今の0.95倍に緩やかに減る。首都圏は人口が横ばいでも、エコスの店は郊外・地方の割合が高く、高齢化の影響を受ける。
価格は物価並みに上がり、客単価は1.34倍。売上は1,757億円ほどで、営業利益率は4.0%。過去最高の4.4%を下回る水準に置いた。賃金の上昇で人件費が増えるが、値上げと効率化で大半を吸収する。
設備は、既存店の償却は取得時のまま、新しい店と改装は建築費の上昇で重い償却が足される。減損で償却の重い店を減らしたぶん、利益率は保てる。
営業利益は70億円、純利益は47億円ほど。ROEは8%台で、資本コストをやや上回る。
- 食品スーパー:数量 6,555(年間の来店客数(万人、推定))× 価格 0.27(客単価(億円/万人=1人あたり円÷1万、名目))→ 売上 1,757 億円・営業利益 70 億円。客数6555万人×客単価0.268億円/万人(今の1.34倍)、営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.09 倍、時価総額 822 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数は減るが、物価で客単価が上がり、売上は保つ。直近の減損21店は、立地の入れ替えが済んだ形と読む。いちばん厚く置いた。
やや悲観 24% 安売り勢に客を奪われ、利益率が薄くなる 利益 33 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,093 円450 億円
オーケーやロピアなど、安さを前面に出す競合が郊外にも出店する。エコスの客数は今の0.88倍に減り、値上げも十分に通らず、価格は物価に届かず1.30倍にとどまる。
売上総利益率は圧縮され、営業利益率は3.1%まで下がる。2023年2月期の3.6%を下回る水準だ。
賃金は物価並みに上がるが、売上が伸びないので固定費の重さが効く。減損が続き、店舗の入れ替えに費用がかさむ。
配当は出し続けるが、増やせない。ROEは7%を下回り、資本コストに届かない。優待は続けるが、新店の出店は止まり、既存店の改装だけが続く。
- 食品スーパー:数量 6,072(年間の来店客数(万人、推定))× 価格 0.26(客単価(億円/万人=1人あたり円÷1万、名目))→ 売上 1,579 億円・営業利益 49 億円。客数6072万人×客単価0.26億円/万人(今の1.30倍)、営業利益率3.1%
倍率:ROE 6.3%はkを下回り、上限は1÷k=13.3倍。上限の約8.3割の11.1倍に置いた。
確率:オーケー・ロピアなど安売りの競合が郊外にも入り、客数と利益率が削られる。直近の営業利益率の動きと、値上げの転嫁の難しさを踏まえて置いた。
悲観 13% 客数が落ち、賃金上昇と家賃が重荷になる 利益 11 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,146 円126 億円
郊外にも安売りの競合とドラッグストアの食品が広がり、客数は今の0.78倍まで落ちる。値上げは通らず、価格は1.22倍にとどまる。
店の家賃や人件費は固定費として残るため、売上が落ちると営業利益率は1.2%まで急に下がる。減損が相次ぎ、閉店も増える。
減損した店の閉店が進み、優待は縮小され、配当は業績連動で減る。新規の出店は止まり、改装の投資も絞られる。財務は無借金に近く倒れはしないが、成長の芽もなくなり、地方の小さな食品スーパーとして細っていく。銀行の借入に頼らない経営は変わらないが、利益が薄いので、自己資本の厚みだけが残る。
- 食品スーパー:数量 5,382(年間の来店客数(万人、推定))× 価格 0.24(客単価(億円/万人=1人あたり円÷1万、名目))→ 売上 1,313 億円・営業利益 16 億円。客数5382万人×客単価0.244億円/万人(今の1.22倍)、営業利益率1.2%
倍率:純利益10.6億円は谷の水準。ROE 2.2%はkを下回り、上限は1÷k=13.3倍。稼ぐ力を重く見て、約8.6割の11.9倍に置いた。店は借りているものが多く、売上が落ちても家賃は落ちない固定費として利益率に入れてある。
確率:競合の出店と賃金上昇、家賃の固定費が重なり、利益率が1%台まで落ちる構造的な負け。無借金に近く、倒れる形ではないので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー
エコス、たいらや、マスダなど約140店での食料品の小売。生鮮・総菜・日配品が中心。
| 数量年間の来店客数(万人、推定) | 価格客単価(億円/万人=1人あたり円÷1万、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 6,900 | 0.20 | 1,380 | 57 |
| 10 年後 中立 | 6,555 | 0.27 | 1,757 | 70 |
取り方:客数は開示がなく、営業収益1,380億円を、1人あたりの買い物額(客単価、0.2億円/万人)で割り戻した6,900万人(1店あたり年約50万人、1日約1,400人)の推定。中立は郊外の高齢化と競合で0.95倍、客単価は物価並みの1.34倍。
リスクと懸念
賃金上昇
食品スーパーの人件費は売上の1割強を占める。最低賃金が上がるたびに、営業利益率が4%台の薄い利益が削られる。価格に転嫁できるかが分かれ目になる。
安売りの競合
オーケーやロピアなど、安さを前面に出す競合が郊外にも広がる。エコスの客数と売上総利益率を、同時に押す。
不採算店の減損
2026年2月期は21店で減損22億円を計上した。立地の見立てが外れた店は今後も出うる。減損は一時の費用だが、続けば自己資本を削る。
中計の未達
2027年2月期に営業収益1,600億円、経常利益70億円を掲げたが、直近は1,380億円、59億円。目標と実績の差が大きく、会社の計画は割り引いて読む。
家賃の固定費
店の多くは借りたもので、売上が落ちても家賃は落ちない。新リース会計基準が2028年2月期から適用されると、リース負債が表に載り、見かけの財務は弱くなる。
郊外の人口減
多摩の外側、北関東、福島の店は、人口が減る地域にある。10年で客数が細り、閉店や統合が増える可能性がある。
今後の分かれ目
- 売上総利益率が27%台を保ち、販管費の伸びが売上の伸びを下回る
- 営業利益率が4%台に戻り、中立から楽観寄りに動く。
- 減損が2期続けて10億円を超える
- 店の見立てが外れ続けているとみて、悲観の確率を上げる。
- オーケー・ロピアがエコスの主要商圏に出店する
- 客数と利益率が削られ、慎重な筋書きの確率が上がる。
- 新リース会計基準の適用で純負債が大きく増える
- 数字の形が変わるだけで、価値は変わらない。同じ形にそろえて比べる。
- 食品スーパー同士の再編でエコスがTOBの対象になる
- プレミアムが乗る可能性があり、強気の確率を上げる。
見ておくもの
- 既存店売上と売上総利益率
- 販管費の伸び(人件費)
- 減損の額と閉店・改装の数
- プライスセレクトなど価格施策の成果
- 優待・配当の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト7.25%(基本7.5%+quality0%)とROEから決めた。中立のROEは8%台でkを少し上回り、PERは1÷k=13.3倍を下回らせず、13倍台に置いた。今のPER10倍前後や、同業の倍率には寄せていない。利益率は過去最高の4.4%を超えず、中立は4.0%。数量は実質、価格は名目で、物価を二重に掛けていない。減価償却は既存分を取得時のままとし、新店・改装だけ建築費の上昇を乗せた。優待は原価ベースで還元に加えた(年1.8億円の推定)。悲観は稼ぐ力から置き、今の時価総額を割る形にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→17.91 倍・やや楽観 PER 13.7→17.5 倍・中立 PER 13.4→17.09 倍・悲観 PER 11.5→11.9 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。