結論
SAKIGAKEホールディングスは、京都の背脂醤油ラーメン「魁力屋」を全国に約 190 店構える会社だ。2026 年 1 月に「三田製麺所」の運営会社を 50 億円で買い、7 月に今の名前の持株会社になった。筆者の結論は、今の時価総額はやや高いというものだ。店を増やす力は本物だが、買収で背負った借金とのれんの償却が、この先 10 年の利益を削り続ける。
買収の前、この会社は純現金を持つ堅い財務だった。今は 80 億円を超える借入を抱え、自己資本比率は 3 割を切った。2026 年 12 月期の純利益の予想は 2.5 億円で、前の期より減る。
魁力屋の店は郊外の幹線道路沿いに年十数店のペースで増えてきた。三田製麺所も都市部のつけ麺の店として名前が通る。二つの看板で店を増やし、食材の仕入れを束ねれば、10 年で利益は今の 4 倍前後になりうる。
それでも、ラーメンは参入が容易で、値上げのたびに客の目が厳しくなる。借金を返し終えるまで、株主に回るお金は細い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い店を作る力はあるが、資本の使い方がまだ試されていない会社」だ。
魁力屋を年十数店のペースで増やし、利益率を保ってきた実績は評価できる。ただ、その力で生んだ純現金を、負債超過の会社に 50 億円払って使い切った。買った看板が稼ぐ力を持つかどうか、答えはまだ出ていない。
オーナーにとっての利益は、会計の純利益より少し厚い。のれんの償却は現金が出ていかない費用だからだ。それでも、店を増やすには毎年の設備投資が要り、借金の返済も待っている。株主の手元に残るお金は、この先数年は細い。
今の時価総額は、10 年の中立の姿をおおむね先取りしている。安全域、つまり見込み違いに備えたゆとりは薄い。筆者なら、三田製麺所の利益率が上がり、借金が目に見えて減るのを確かめてから考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。店でラーメンと餃子を売り、客 1 人あたり千円前後を受け取る。売上のほとんどは直営の店から入り、加盟店からはロイヤルティが入る。セグメントの開示は飲食の 1 つだけだ。
柱は「ラーメン魁力屋」だ。京都の屋台の背脂醤油を看板に、郊外の幹線沿いに大きめの店を構え、家族連れを呼ぶ。2026 年 6 月末で直営と加盟を合わせて 186 店、ほかに持ち帰りの中食の店が 10 店ある。台湾にも百貨店の中に 4 店を出した。
二つ目の柱が、2026 年 1 月に買ったエムピーキッチンだ。都市部の駅前を中心に「三田製麺所」を約 70 店営む。天下一品の加盟店だった「伍福軒」を抱えていたが、その店を魁力屋と三田製麺所の看板に掛け替えている。
三つ目は、2025 年に買ったグランキュイジーヌだ。「肉そばけいすけ」や「天丼専門 銀座いつき」など、小さな専門店の看板を持つ。
2026 年 12 月期の売上は 245 億円の見込みで、前の期の 1.7 倍になる。ただし営業利益は 7.5 億円で横ばいだ。のれん、つまり買った値段のうち純資産を超えた分を、年 4 億円強ずつ費用にしているためだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは浅い。魁力屋の背脂醤油は固定客をつかんでいるが、似た味の店を出すのは難しくない。ラーメンは国内で数万軒がしのぎを削る、最も細かく割れた外食の一つだ。
強みは店を開く手順の確かさにある。郊外の大型店の型を磨き、毎年十数店を開いても利益率を崩さなかった。2024 年 12 月期の営業利益率 7.0% は、上場してからの山だ。
弱点は二つある。一つは値上げの余地だ。ラーメン千円の壁は客の心に残り、食材と人件費の上昇を価格に乗せるたびに客数との綱引きになる。もう一つは今回の買収だ。三田製麺所の運営会社は、買った時点で負債が資産を上回っていた。50 億円の大半は看板と店の稼ぐ力への支払いで、それが 15 年かけて利益から引かれる。
資本効率は、借金で買った分だけ見かけの ROE が上がる。筆者は、借金が減るまでは ROE の数字を割り引いて見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ラーメンは外食の中でも需要が底堅い。単価が千円前後と手ごろで、景気が冷えても客が離れにくい。半面、参入が容易で、個人店から全国チェーンまでが入り乱れる。最大手の幸楽苑や一風堂の力の源ホールディングス、山岡家でも、国内の店は数百店にとどまる。上位の集中度は低く、買収で束ねる余地は大きい。
10 年の流れを決めるのは人と物の値段だ。最低賃金は上がり続け、小麦・豚骨・油・電気代も円安で高止まりする。値上げが通る店と、通らずに客を失う店の差が広がる。券売機と配膳の機械化で厨房の人手を減らせる会社が勝つ。
国内の店の数は飽和に近い。人口が減る地方では、郊外の大型店の出店余地も細っていく。伸びしろは都市部の駅前、訪日客、海外だ。三田製麺所の都市型の店は、魁力屋の郊外型と重ならない点で理にかなう。
業界の再編は進む。天下一品の加盟店だった伍福軒が看板を掛け替えたように、加盟店や中堅のチェーンが大手の傘下に入る動きは続くだろう。この会社は買う側に立つと決めた。問題は、買う値段と借金の重さだ。売り手の多い市場では、良い看板ほど値段が上がる。束ねる側が勝つには、仕入れと店の運営で原価を下げ、買った値段を取り戻すしかない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、総額は年 1.3 億円ほどだ。2026 年 12 月期は利益が減るが、配当は据え置く予定だ。自己株の取得はしていない。株主優待として食事券を配り、会社の負担は年 0.4 億円台と小さい。10 年の還元には、この負担の額を受け取りとして足した。
資本の使い方は、2025 年から買収に大きく振れた。グランキュイジーヌを約 10 億円、エムピーキッチンを 50 億円で買い、後者は借入で賄った。純現金 16 億円の会社が、半年で純負債 56 億円の会社に変わった。
株主は創業家の色が濃い。筆頭株主のマルフジコーポレーションが 48%、社長の藤田宗氏が 14% を持つ。外からの買収はまず起きず、非上場化の選択肢を持つのは創業家の側だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
魁力屋の店を開く力は、外食の中でも上位だ。郊外の大型店の型ができあがっており、年十数店を開いても利益率は崩れなかった。国内のラーメンは上位の会社でも数百店で、全国にはまだ空白の地域が多い。魁力屋が 300 店を超えるのは十分ありうる。
三田製麺所の買収は、郊外と都市の両方の客を取る一手だ。食材の仕入れと製麺を束ねれば原価が下がる。伍福軒の店を魁力屋と三田製麺所に掛け替えた分は、すでに客の付いた立地で新しい看板を試せる。
のれんの償却は現金が出ない費用だ。会計の利益は年 4 億円強だけ小さく見えている。借金は店の稼ぎで返せる額で、5 年もすれば財務は元の堅さに戻る。その時、利益は今の数倍になっている。
値上げの力も見くびれない。魁力屋は食材と人件費が上がる中でも、売上を毎年 2 割前後伸ばしてきた。郊外の家族客は、千円台のラーメンと餃子に戻ってくる。持株会社に移り、次の買収の受け皿も整った。創業家が大株主で、長い目で経営できるのも強みだ。
慎重な見方
三田製麺所の運営会社は、買った時点で負債が資産を上回っていた。50 億円は稼ぐ力への高い支払いだ。つけ麺は流行の波が大きく、都市部の駅前は家賃が重い。三田製麺所の利益率が魁力屋に並ぶ保証はない。
ラーメンは値上げの天井が低い。小麦・豚骨・人件費が物価以上に上がれば、利益率は削られる。家賃は年 24 億円を超える固定の約束で、客が減っても下がらない。
借金は 80 億円を超え、金利は上がる方向にある。2026 年上期は純損失だった。もし買収した店の稼ぎが伸びなければ、のれんの減損で自己資本が大きく減り、配当も細る。創業家が 6 割を持つので、少数株主が経営の向きを変える手段も無い。
店を増やす余地も思うほど広くない。地方は人口が減り、郊外の大型店は一度開くと動かせない。人手の確保も年々難しくなり、時給を上げなければ店が回らない。買収で売上は 1.7 倍になったが、営業利益は横ばいの見込みだ。規模を買っても稼ぐ力が増えないなら、借金だけが残る。
どちらに重みを置いたか
店を開く力は本物で、成長の筋は通っている。ただ、買収の値段と借金の重さには、まだ答えが出ていない。上期の純損失と、負債超過の会社に払った 50 億円を重く見て、確率はやや慎重な側に寄せた。中立は魁力屋が着実に店を増やし、三田製麺所がゆっくり持ち直す姿だ。のれんの減損まで進む悲観は、外食の買収の失敗の多さを思えば軽く見られない。一方、魁力屋の出店の実績は確かで、楽観を消すほどではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,959 円168 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 477 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 1,695 円96 億円、今との差 +2.3%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,080 円457 億円 | 936 円53 億円 | +444.1% | +18.5% | 721 円41 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,873 円276 億円 | 662 円38 億円 | +234.0% | +12.8% | 1,107 円63 億円 |
| 中立 | 37% | 3,150 円178 億円 | 512 円29 億円 | +121.0% | +8.3% | 1,355 円77 億円 |
| やや悲観 | 23% | 659 円37 億円 | 272 円15 億円 | −43.8% | −5.6% | 214 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 173 円10 億円 | 147 円8 億円 | −80.7% | −15.2% | 38 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,959 円168 億円 | 477 円27 億円 | +107.4% | +7.6% | 3,436 円195 億円 |
今の株価時価総額 1,657 円94 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:魁力屋が 320 店、三田製麺所も利益率を上げる 利益 25 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 8,080 円457 億円
魁力屋は年 12 店前後のペースで店を増やし、東北や九州の空白を埋めて 320 店に届く。台湾の百貨店の店も軌道に乗る。値上げは物価を少し上回って通り、利益率は 9% に上がる。
三田製麺所は仕入れと製麺を魁力屋と束ね、原価が下がる。店は 110 店に増え、利益率は 6.5% まで上がる。伍福軒から掛け替えた店も客を戻す。
借金は 5 年ほどで大半を返し終える。のれんの償却は続くが、会社全体の営業利益は今の 5 倍に届く。配当は利益に合わせて増え、優待も続く。次の買収にも手が届く。
買収で束ねた仕入れの力が、ほかの中堅のラーメンの会社を引き寄せる。業界の再編で買う側に立った判断が、10 年後に正しかったと言われる姿だ。
- ラーメン魁力屋(台湾・中食を含む):数量 320(店舗数(直営+加盟+中食、店))× 価格 1.07(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 343 億円・営業利益 31 億円。店 1.63 倍、1 店あたり 1.40 倍
- エムピーキッチン(三田製麺所ほか):数量 110(店舗数(直営、店))× 価格 1.58(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 174 億円・営業利益 11 億円。店 1.57 倍、1 店あたり 1.38 倍
- グランキュイジーヌ(肉そば・天丼ほか):数量 30.0(店舗数(店))× 価格 1.36(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 2 億円。店 2 倍
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18.01 倍、時価総額 452 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魁力屋が過去の出店のペースを 10 年保ち、三田製麺所の利益率が魁力屋に近づく筋書き。両方が同時に要るので 1 割に満たない。
やや楽観 20% やや楽観:魁力屋が 280 店、三田製麺所は利益率 5% 利益 16 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 4,873 円276 億円
魁力屋は年 8 店前後を純増させ、280 店になる。値上げは物価並みに通り、利益率は 8% と 2024 年の山に近い水準を保つ。
三田製麺所は都市の駅前の客を取り戻し、店は 90 店に増える。利益率は 5% に上がる。グランキュイジーヌの看板も少しずつ店を増やす。
借金は着実に減り、利払いは細る。会社全体の営業利益は今の 3.5 倍になり、ROE は 14% 台に上がる。配当は利益の 3 割強を回し、優待も続ける。
三田製麺所の買収は高い買い物だったが、10 年かけて値段に見合う稼ぎを生むようになる。借金が減るにつれ、次の店への投資も自分のお金で賄えるようになる。
- ラーメン魁力屋(台湾・中食を含む):数量 280(店舗数(直営+加盟+中食、店))× 価格 1.05(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 294 億円・営業利益 24 億円。店 1.43 倍、1 店あたり 1.37 倍
- エムピーキッチン(三田製麺所ほか):数量 90.0(店舗数(直営、店))× 価格 1.55(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 140 億円・営業利益 7 億円。店 1.29 倍、1 店あたり 1.36 倍
- グランキュイジーヌ(肉そば・天丼ほか):数量 22.0(店舗数(店))× 価格 1.34(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。店 1.47 倍
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.71 倍、時価総額 272 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魁力屋が出店をやや緩めながら続け、三田製麺所が持ち直す筋書き。魁力屋の出店の実績は確かなので 2 割に置いた。
中立 37% 中立:魁力屋は 250 店、三田製麺所はゆっくり持ち直す 利益 11 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 3,150 円178 億円
魁力屋は年 5 店ほどの純増で 250 店になる。地方の郊外は出店の余地が細り、閉める店も出る。値上げは物価並みに通り、利益率は 7.5% を保つ。
三田製麺所は 80 店まで増え、仕入れの統合で利益率は 4% に上がる。魁力屋並みには届かない。グランキュイジーヌは小さいまま利益をわずかに出す。
のれんの償却は年 4 億円強が続く。借金は 10 年で 3 分の 2 ほどを返し、利払いは細る。会社全体の純利益は 11 億円台になる。配当は利益の 3 割強で、優待も続ける。
利益は今の 4 倍余りになるが、のれんの償却が終わるのは 2040 年代だ。借金を返す間は、株主への還元が大きく増えることはない。
- ラーメン魁力屋(台湾・中食を含む):数量 250(店舗数(直営+加盟+中食、店))× 価格 1.03(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 256 億円・営業利益 19 億円。店 1.28 倍、1 店あたり 1.34 倍
- エムピーキッチン(三田製麺所ほか):数量 80.0(店舗数(直営、店))× 価格 1.53(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 123 億円・営業利益 5 億円。店 1.14 倍、1 店あたり 1.34 倍
- グランキュイジーヌ(肉そば・天丼ほか):数量 18.0(店舗数(店))× 価格 1.34(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。店 1.2 倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.4 倍、時価総額 176 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魁力屋が国内の飽和を受けて出店を緩め、三田製麺所が少しずつ持ち直す姿。どちらの見方にも決め手が無く、業界の向きに沿った姿として一番厚くした。
やや悲観 23% やや悲観:三田製麺所が伸びず、利払いが利益を削る 利益 3 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 659 円37 億円
魁力屋の出店は年 2 店ほどに鈍り、215 店で止まる。値上げは物価に届かず、客数を守るために利益率は 5.5% に下がる。家賃は固定の約束なので、客が減っても下がらない。
三田製麺所は都市の駅前で競合に押され、店は 65 店に減る。利益率は 2% にとどまり、買った値段に見合わない。
のれんの償却と利払いが利益の大半を食う。純利益は 3 億円前後で、ROE は資本コストに届かない。配当は年 1 億円強を守るが、増えない。優待は縮める。
店の数は増えても、稼ぎの質は買収の前より落ちる。借金を返すのに精一杯で、次の買収どころではない。創業家は非上場化を考えるかもしれないが、その値段は低い。
- ラーメン魁力屋(台湾・中食を含む):数量 215(店舗数(直営+加盟+中食、店))× 価格 0.99(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 214 億円・営業利益 12 億円。店 1.10 倍、1 店あたり 1.30 倍
- エムピーキッチン(三田製麺所ほか):数量 65.0(店舗数(直営、店))× 価格 1.43(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 2 億円。店 0.93 倍、1 店あたり 1.25 倍
- グランキュイジーヌ(肉そば・天丼ほか):数量 14.0(店舗数(店))× 価格 1.25(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。損益ゼロ
倍率:PBR 0.723 倍を今の自己資本 51.6 億円に掛けた。ROE 4.5% で k を下回り、価値は稼ぐ力(純利益 3.0 億円 ÷ k 8% ≒ 37 億円)で測る。
確率:2026 年上期の純損失に近い姿が続く筋書き。買収した店の稼ぎが伸びず、魁力屋も値上げで客を失う。上期の実績に根拠があるので、楽観側より厚くした。
悲観 12% 悲観:のれんを減損し、借金だけが残る 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 173 円10 億円
三田製麺所は客を失い、店は 50 店に減って赤字になる。会社はのれんの大半、約 45 億円を減損し、自己資本は 1 割ほどまで細る。
魁力屋も地方の店を閉め、185 店に減る。食材と人件費に値上げが追いつかず、利益率は 3% に沈む。家賃は固定のまま残る。
借金は返しきれず、借り換えの金利が上がる。純利益は赤字になり、配当は大きく減らす。優待もやめる。創業家が持つ株の比率が高く、外からの救いの手も入りにくい。
買収の前に純現金を持っていた堅い会社は、借金とやせた看板だけを抱える会社に変わる。株主に残るのは、魁力屋の店の事業の値打ちから借金を引いた、ごくわずかな額だ。
- ラーメン魁力屋(台湾・中食を含む):数量 185(店舗数(直営+加盟+中食、店))× 価格 0.96(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 177 億円・営業利益 5 億円。店 0.94 倍、1 店あたり 1.25 倍
- エムピーキッチン(三田製麺所ほか):数量 50.0(店舗数(直営、店))× 価格 1.37(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 −2 億円。店 0.71 倍、赤字
- グランキュイジーヌ(肉そば・天丼ほか):数量 10.0(店舗数(店))× 価格 1.20(1 店あたりの売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。赤字
倍率:PBR 0.19 倍を今の自己資本 51.6 億円に掛けた。純利益は赤字で稼ぐ力はゼロに近く、純負債が残るので純現金の床も無い。価値は魁力屋の店の事業を売った時の値段の残りで測る。積み上げた自己資本には掛けていない。
確率:三田製麺所の稼ぎが崩れ、のれんの大半を減損する筋書き。負債超過の会社を高く買った事実があり、外食の買収の失敗は珍しくないので 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ラーメン魁力屋(台湾・中食を含む)
京都の背脂醤油ラーメンの直営と加盟の店。持ち帰りの中食の店と台湾の 4 店を含む。
| 数量店舗数(直営+加盟+中食、店) | 価格1 店あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 196 | 0.77 | 150 | 9 |
| 10 年後 中立 | 250 | 1.03 | 256 | 19 |
取り方:セグメント開示が無いので推定。2026/12 予想売上 245 億円から、2025/12 の魁力屋中心の売上 147 億円に出店の伸びを足して 150 億円とした。店は半期報告書の 196 店。利益はのれん償却前の営業利益 12 億円の予想を 3 つに按分した推定。
エムピーキッチン(三田製麺所ほか)
都市部の駅前のつけ麺「三田製麺所」と、伍福軒から掛け替えた店。2026 年 1 月に取得。
| 数量店舗数(直営、店) | 価格1 店あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 70.0 | 1.14 | 80 | 3 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 1.53 | 123 | 5 |
取り方:取得時の直営 約 70 店(報道)。売上は中間の連結売上 116.7 億円と魁力屋の推移の差から年 80 億円と推定。利益率 3% 強は推定。
グランキュイジーヌ(肉そば・天丼ほか)
「肉そばけいすけ」「天丼専門 銀座いつき」など小さな専門店。2025 年に取得。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 15.0 | 1.00 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 1.34 | 24 | 1 |
取り方:店の数と売上の開示が無く、取得額約 10 億円と業態から 15 店・15 億円と推定。
リスクと懸念
三田製麺所の買収
運営会社は買った時点で負債が資産を上回っており、50 億円の大半はのれんになった。稼ぎが伸びなければ、のれんの減損で自己資本が大きく減る。今の自己資本は約 50 億円で、のれんとほぼ同じ大きさだ。
借金と金利
純現金の会社が、半年で純有利子負債 56 億円の会社に変わった。借入は 80 億円を超え、金利は上がる方向にある。借り換えの金利が 1 ポイント上がれば、利払いは年 0.8 億円増える。
値上げの天井
ラーメンは千円の壁が客の心に残る。小麦・豚骨・油・人件費が物価以上に上がれば、値上げのたびに客数との綱引きになり、利益率は削られる。
家賃の固定の約束
店はほぼ借りて営んでおり、家賃は年 24 億円を超える。売上が落ちても家賃は下がらない。新しいリースの会計基準では、この約束が負債として帳簿に載る。
創業家の支配
マルフジコーポレーションと社長で 6 割強を持つ。経営の向きを少数株主が変える手段は無く、非上場化の値段も創業家の側が決める。
今後の分かれ目
- 三田製麺所の既存店売上が 2 年続けて前年を 3% 以上上回る
- 中立の三田製麺所の利益率を 4% から 5% に上げる。
- のれんの減損を計上する
- 悲観の確率を上げ、中立の三田製麺所の店と利益率を下げる。
- 借入金が 50 億円を下回る
- 借金の分の資本コストの上乗せを外し、k を 8.25% に下げる。
- 魁力屋の出店が年 15 店以上を 3 年続ける
- 中立の魁力屋の店を 250 店から 280 店に上げる。
- 新たな大型の買収を借入で行う
- 借金の上乗せを 1% に上げ、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 魁力屋の出店と閉店の純増
- 三田製麺所の既存店売上(月次)
- のれん償却前営業利益(2026/12 予想 12 億円)
- 借入金の残高
- 値上げの後の客数
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE・g・k の式だけで決め、今の PER や同業の倍率は見ていない。中立の PER 11.5 倍は正当化 PER の 9 割。のれんの償却は現金が出ない費用で、会計の利益は現金の稼ぎより年 4 億円強小さいが、利益は会計のまま置き、倍率で上振れを足していない。家賃は営業費用に入れた今の形でそろえ、2028 年からの新リース会計で数字の形が変わる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→18.01 倍・やや楽観 PER 12.4→16.71 倍・中立 PER 11.5→15.4 倍・やや悲観 PBR 0.66→0.723 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。同じ領域のハチバン(+0.5%)より借金の分だけ高い。幸楽苑(+1.3%)とほぼ同じ。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。