結論
トレジャー・ファクトリーは、衣料を軸に、服飾雑貨・家具・家電・ブランド品まで買い取って売る中古品チェーンだ。2026年2月期の売上は485億円、営業利益は47億円で、ともに過去最高を更新した。筆者の結論は、事業の質は高いが、10年の本質価値は今の時価総額を1割ほど上回るにとどまり、大きな割安とは言えない、というものだ。
稼ぐ力の源は、粗利率の高さにある。店頭の粗利率は64%に達する。仕入れ先が一般の消費者なので、新品を仕入れる小売より取り分が厚い。営業利益率は約10%で、同業のブックオフの3%台を大きく上回る。
伸びの源は出店だ。年に30店ほどのペースで増やし、国内の出店余地は800〜1,000店と会社は見る。国内のリユース市場は15年連続で広がり、環境意識と物価高が追い風になっている。創業者の野坂英吾氏が3割強を持つ経営は、判断が速い。
弱みは、利益率がすでに高いことだ。中期計画は営業利益率を9%へ下げる前提で、AIと物流への先行投資を見込む。賃料の増額要請も出始めた。フリマアプリに品が流れる構造もある。10年後の中立は、売上が1,100億円強、純利益が59億円。伸びは大きいが、倍率は15倍台にとどまり、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「質の良い成長を、ほどほどの値段で買う」ことになる。買取と再販という仕組みは堅く、不況でも需要が減りにくい。粗利率の高さが、利益率の高さを支えている。営業利益率は10%近くで、小売としては際立つ。
資本の使い方は評価できる。出店は、1店ごとに採算が見えやすい投資だ。自己資本利益率は25%と高く、利益の多くを出店に回せば、さらに稼ぎが増える。配当と自社株買いも、利益の3割から4割は株主に返す姿勢だ。
気になるのは、堀の幅である。店の網と目利きは強いが、他社もまねできる。同業はみな出店を続けており、物件と人材の取り合いになる。賃料は上がり、人も足りない。成長を支える原料、つまり良い中古品の買取は、フリマという代替の影響を受ける。
安全域は、ほどほどだ。中立で10年後の価値は、今の値段をやや上回る。楽観の筋書きに入れば大きく上回るが、利益率が下がる筋書きでは半分以下に落ちる。事業は好きだが、買う値段に余裕があるとは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業は、中古品を買い取り、検品して売る小売である。主力は衣料で、商品販売の約5割を占める。服飾雑貨を足すと7割を超える。ほかに家具・家電・ブランド品・ゴルフ用品などを扱い、リユース事業が売上の97.6%を占める。
業態は10を超える。総合型の「トレジャーファクトリー」、衣料専門の「トレファクスタイル」、ブランド古着の「カインドオル」、スポーツ用品の「トレファクスポーツ」など、立地と品目に合わせて使い分ける。グループの店は、2025年10月末で314店ある。
仕入れは、店頭・宅配・出張の三つの買取だ。2026年2月期は店頭が12.5%増、宅配が6.4%増、出張が8.1%増だった。買取の入口が太いほど、売る品が増える。販売は店とネット通販で、通販の比率は15.7%。免税の売上も10.7%を占める。
海外は、タイに5店、台湾に3店ある。米国は2027年2月期中に1号店を出す計画だ。引越し・レンタル・オークションなどの周辺事業も育てている。2026年2月期の営業利益は、前期比で18%伸びた。
人員は正社員の比率が高く、買取の査定と接客を社員が担う。これが仕入れの質を保ち、粗利の高さにつながっている。
優良さと弱いところ
堀は、買取の目利きと、店をたくさん持つ運営力である。中古品は、いくらで買うかで利益が決まる。同社は正社員の比率が高く、店ごとの裁量が大きい。地域に合わせた品揃えと、丁寧な査定で良い品を集める。自社システムの売買データで値付けと在庫を管理し、回転を速くしている。筆者は、この堀を「普通」と見る。
収益の質は高い。営業利益率は2023年2月期から9%台を保つ。それ以前は4〜5%で、段階が一つ上がった形だ。単体既存店は54か月連続で前年を上回った。営業キャッシュフローも増えている。
一方、気になる点もある。利益率が高いぶん、人件費や賃料が上がった時の下がり幅も大きい。2021年2月期は新型コロナで営業利益率が0.6%まで落ちた。自己資本比率は50%と厚いが、店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。純有利子負債の22億円は小さく見えて、固定の約束は見かけより大きい。
そして、人への依存がある。社長の野坂英吾氏は創業者で、持株は3割強(有価証券報告書ベース)。強い指導力は強みだが、世代交代の時に何が変わるかは、今は見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリユース市場は、15年連続で広がっている。リユース経済新聞の推計では、2025年の店頭販売は約1兆3,000億円で、前年比6.8%増だった。環境意識と物価高で、中古品を選ぶ人が増えている。環境省は2030年に向けた拡大の道筋を示している。
中古品の値段は、物価と一緒に動く。買取の値段も同じだけ上がるので、粗利の額を決めるのは点数、つまり数量だ。10年の中立では、市場の数量は実質で1割ほどの増加にとどまる。人口は減る。それでも中古品を選ぶ人は増える、と筆者は見る。
競合は多い。ゲオ傘下の「セカンドストリート」、ハードオフ、ブックオフ、コメ兵などの専門チェーンが品目ごとに競う。ネット側ではメルカリなどのフリマアプリが最大の競合だ。個人が直接売り買いすれば、店の買取に入る品が減る。
同社の強みは、衣料に強く、都心にも郊外にも出せる業態の幅だ。国内の店頭市場に対する売上のシェアは、まだ3〜4%である。同業の出店規模と比べて、国内に800〜1,000店という会社の見立ては、極端ではない。不況の時は節約の需要が増えるので、中古品は景気に強い。ただし、金や貴金属のような相場物が少ないぶん、同社は相場の下落には強い。
資本政策と M&A
資本政策は、出店への投資を優先しつつ、配当を増やす形だ。2026年2月期の配当性向は約3割で、2027年2月期は増配を予定する。目標は30%以上を目標にしている。自社株買いは、株価が業績に比べて出遅れているとして、具体的に検討する段階にあると説明している。
中期計画(2027年2月期〜2029年2月期)は、最終年度に売上710億円・営業利益63億円を掲げる。3年間の営業キャッシュフローは120〜130億円で、銀行借入60億円を足し、出店に95〜110億円を投じる。成長投資の4〜5割を借金でまかなう方針で、今の純有利子負債22億円は増える。
M&Aは、前期に無人レンタルドレスの事業を買った。グループとの相乗効果がある案件を、今後も探す。買う側の立場で、大型の買収は見当たらない。創業者が3割強を持つため、買われる側のTOBは実現しにくい。kabufuの推定では、10年以内のTOBの確率は16.9%である。
株主優待は、100株で店で使えるポイント(トレポ)と、買取額が2割増えるクーポンだ。費用は開示を確かめられなかったが、原価で年1億円を下回るとみて、還元への加算は一言にとどめる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社は、中古品の小売で最も効率が良い会社の一つだ。単体既存店の粗利率は64%で、営業利益率は約10%。2023年2月期から4期続けて、9%台の高い利益率を保っている。単体既存店は54か月連続でプラスだ。
出店余地が大きい。国内の店頭市場は約1兆3,000億円で、同社のシェアは3〜4%にすぎない。ハードオフやセカンドストリートが数百店規模を展開するなか、同社は国内で800〜1,000店まで増やせると考える。年30〜40店の出店は、既存店舗数の1割にあたり、会社の制約は店ではなく人材と在庫だ。
海外にも芽がある。タイは5店で、利益への貢献が高まっている。台湾も新店の費用を除けば黒字だ。米国は3年で6〜10店を目指す。DXとAIで査定を省力化できれば、人件費の上昇も吸収できる。2027年2月期の第1四半期は営業利益が24%増え、通期の予想も上方修正した。この勢いが続くなら、営業利益率が10%を超える余地もある。
慎重な見方
利益率がすでに高い会社は、そこから先が難しい。中期計画は営業利益率を9.0%に下げる前提で、会社自身が先行投資の重さを認めている。AIと物流拠点、米国進出が費用を先に食う。
出店の質も気になる。前期は郊外への出店が多く、新店の立ち上がりが遅れた。賃料の増額要請や、条件が合わない退店も出ている。同業がみな出店を急げば、良い物件は取り合いになり、同じ商圏で客と品を奪い合う共食いが起きる。人材の確保も制約だ。
買取の入口も安泰ではない。メルカリのようなフリマアプリは、衣料のように写真で売りやすい品目ほど影響が大きい。同社の売上の7割は衣料と服飾雑貨で、まさにそこだ。免税売上が10%を超えるため、中国人客の減少のような外部の変化にも弱い。
2021年2月期のように、需要が止まれば営業利益率は1%を割る。家賃は固定で残る。新規出店のための借入も増える。ここまで稼ぎが良いのに、中期計画では利益率が下がる。市場がそれを成長の鈍化と受け取るのは、理由がある。
どちらに重みを置いたか
出店の余地と粗利の高さは本物で、強気の見方に分がある。ただし、利益率がすでに過去の山にあることと、賃料・人件費・競争が重なる10年を考えると、山を超える筋書きの確率は低くしたい。このため、中立は営業利益率を過去の山の手前(8.8%)にとどめた。
確率は、慎重な側にやや寄せた。やや悲観を25%、悲観を11%に置き、中立を36%とした。強気側は合わせて28%である。それでも、出店で利益が伸びる分が効き、本質価値は今の時価総額を上回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 4,403 円1,032 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 672 円157 億円)。 今の値に割り戻すと 2,604 円611 億円、今との差 +38.1%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,326 円2,187 億円 | 1,156 円271 億円 | +455.8% | +18.7% | 839 円197 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,069 円1,657 億円 | 925 円217 億円 | +323.9% | +15.5% | 1,599 円375 億円 |
| 中立 | 36% | 5,174 円1,213 億円 | 734 円172 億円 | +213.2% | +12.1% | 2,127 円499 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,390 円326 億円 | 439 円103 億円 | −3.0% | −0.3% | 457 円107 億円 |
| 悲観 | 11% | 299 円70 億円 | 183 円43 億円 | −74.4% | −12.8% | 53 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,403 円1,032 億円 | 672 円157 億円 | +169.1% | +10.4% | 5,074 円1,190 億円 |
今の株価時価総額 1,886 円442 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 出店が計画を上回り、利益率が山を超える10年 利益 104 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 9,326 円2,187 億円
国内の出店は800店近くまで進み、新店も既存店に近い採算で立ち上がる。買取の入口を守り、衣料に加えて高単価のブランド古着が伸びる。点数は2倍強になり、単価はブランド古着の比率が高まって物価を少し上回る。
海外は、タイと台湾が育ち、米国も複数の都市に広がる。店は90ほどになる。利益も有意に出る。
AIと物流への投資が効き、査定と在庫の効率が上がる。営業利益率は10%に乗り、会社の掲げる水準を超える。人件費の上昇は価格と省力化でほぼ吸収する。自社株買いも進み、還元は厚くなる。
同業に出遅れていた分野でも、買取の入口が広がり、通販と免税の売上が伸びる。ここまで来れば、中古の衣料の専門店として国内で確かな地位を築いている。
- 国内リユース(店舗・通販・買取、周辺事業を含む):数量 0.4(年間販売点数(億点。国内の店頭リユース市場の実質の伸び × 店舗網の拡大で動かす))× 価格 3,174(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 1,421 億円・営業利益 142 億円。点数2.2倍(出店で店舗網が倍以上)。単価は高単価の比率上昇で物価を少し上回る
- 海外(タイ・台湾・米国):数量 90.0(海外の店舗数(店))× 価格 3.11(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 279 億円・営業利益 22 億円。海外90店。米国が複数都市に広がる
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍。全体の PER 20.9 倍、時価総額 2,169 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の店頭市場に余地があり、出店ペースも会社は上限を置いていない。ただし利益率が過去の山を超える条件が重なる必要がある。上振れの確率は1割弱に置く。
やや楽観 20% 計画どおりに出店し、利益率を9%台で保つ10年 利益 79 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 7,069 円1,657 億円
出店は年30店前後の計画どおり進み、国内の店は600店を超える。新店の点数は既存店より少ないが、都市部と地方のバランスが取れて、共食いは限られる。点数は2倍弱になる。
海外はタイと台湾で着実に増え、米国も6〜10店に届く。店は65ほどになり、利益は小さいながら黒字を保つ。
営業利益率は9%台半ばで、過去の山にほぼ並ぶ。粗利の改善は一巡するが、DXで人件費を抑える。配当性向は30%台後半から40%近くまで少しずつ上がり、自社株買いも時々行う。
買取の三つの入口(店頭・宅配・出張)がそろって伸び、仕入れの質が保たれる。自社システムの値付けが効き、粗利率も高い水準で保たれる。
- 国内リユース(店舗・通販・買取、周辺事業を含む):数量 0.4(年間販売点数(億点。国内の店頭リユース市場の実質の伸び × 店舗網の拡大で動かす))× 価格 3,082(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 1,192 億円・営業利益 113 億円。点数1.9倍。単価は物価並み
- 海外(タイ・台湾・米国):数量 65.0(海外の店舗数(店))× 価格 3.02(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 196 億円・営業利益 14 億円。海外65店。米国が6〜10店に届く
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.48 倍、時価総額 1,622 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年2月期の第1四半期は営業利益が24%増え、通期予想も上方修正された。中期計画の達成ペースが、この姿の裏づけになる。実績に近い、現実的な上振れである。
中立 36% 出店で規模は育つが、利益率は山を超えない10年 利益 59 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 5,174 円1,213 億円
国内の店頭市場は実質で1割ほど大きくなる。同社は出店を年30店前後から、後半は年20店台へ減らしながら進め、国内の店は550店ほどになる。点数は1.6倍。単価は物価並みの1.34倍で、売上は国内だけで10年で2倍強になる。
海外は店が45ほどになる。タイと台湾が育ち、米国も数店増えるが、海外の利益は小さいままだ。
賃料と人件費は物価どおりに上がり、中期計画の言うAIや物流への投資も続く。営業利益率は9.8%の山の手前、8.8%で止まる。純利益は59億円ほどで、今の1.9倍。配当は性向38%程度、自社株買いを時々行う。借入は増えるが、営業キャッシュフローで返せる範囲だ。
- 国内リユース(店舗・通販・買取、周辺事業を含む):数量 0.3(年間販売点数(億点。国内の店頭リユース市場の実質の伸び × 店舗網の拡大で動かす))× 価格 3,082(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 1,004 億円・営業利益 88 億円。点数1.6倍(店舗網の拡大と新店の割引)。単価は物価並み
- 海外(タイ・台湾・米国):数量 45.0(海外の店舗数(店))× 価格 3.02(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 136 億円・営業利益 8 億円。海外45店。海外の利益は小さいまま
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.8 倍。全体の PER 19.83 倍、時価総額 1,166 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の伸びと既存店の勢いは続くが、賃料・人件費の上昇と先行投資で、利益率は過去の山の手前にとどまる。中期計画も率の低下を見込んでおり、最も起こりやすい姿である。
やや悲観 25% 出店が鈍り、賃料と人件費が利益を削る10年 利益 28 億円 · PER 10.1 倍 · 株価時価総額 1,390 円326 億円
物件と人材の取り合いで、出店は年15店ほどに落ちる。同じ商圏で客と品を奪い合う共食いも起きる。フリマアプリに衣料が流れ、点数は1.25倍までしか伸びない。
賃料と人件費は物価どおり上がるのに、販売価格は競争で物価に届かない。単価は1.27倍にとどまる。海外は米国で費用が先に出て、収益化が遅れる。
営業利益率は6%台に下がり、純利益は28億円と今より小さい。配当は維持するが、自社株買いは行わない。借入の返済が進みにくく、出店のペースもさらに落ちる。
免税の売上も伸びが止まり、中国人客の減少を他国の客で埋めきれない年も出る。新店の人員を確保するための賃金も重い。
- 国内リユース(店舗・通販・買取、周辺事業を含む):数量 0.3(年間販売点数(億点。国内の店頭リユース市場の実質の伸び × 店舗網の拡大で動かす))× 価格 2,921(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 743 億円・営業利益 48 億円。点数1.25倍。単価は競争で物価に届かず1.27倍
- 海外(タイ・台湾・米国):数量 25.0(海外の店舗数(店))× 価格 2.81(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。海外25店。米国の収益化が遅れる
倍率:ROE 8.7% は k 7.5% を超えるが、利益が伸びない構造的な負けの途中。正当化 PER = 14.4 倍に対し、上限の約 7.0 割(10.1 倍)に置いた。
確率:賃料の増額要請や新店の立ち上がりの遅れは、すでに出ている。競合が同じ立地を狙い、利益率は中期計画どおり下がる。構造がすでに現れているため、確率を厚めに置く。
悲観 11% 買取が細り、固定費だけが残る10年 利益 6 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 299 円70 億円
フリマアプリと新品メーカーの下取りに、衣料の買取を奪われる。点数は実質で15%減り、単価は競争で1.15倍にとどまる。新店の多くが採算を割り、出店は止まって閉店が出る。
海外は米国で失敗し、台湾も縮小する。店は10ほどに減る。
賃料と人件費は物価で上がり続けるため、営業利益率は3〜4%に落ちる。配当は性向の方針を保てず減らす。借入はあるが、営業キャッシュフローで返せる範囲にとどまる。優良な小売ではなくなる。
創業者から次の世代に変わる時期とも重なり、方針が定まらない。買取点数が落ちて在庫が回らず、値引き販売が増える悪循環に入る。
- 国内リユース(店舗・通販・買取、周辺事業を含む):数量 0.2(年間販売点数(億点。国内の店頭リユース市場の実質の伸び × 店舗網の拡大で動かす))× 価格 2,645(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 458 億円・営業利益 16 億円。点数0.85倍(市場縮小とシェア低下)。単価は物価を大きく下回る
- 海外(タイ・台湾・米国):数量 10.0(海外の店舗数(店))× 価格 2.48(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。海外10店。米国は撤退
倍率:利益が小さくなる筋書きなので、PBR で測る。床は商品在庫と敷金・保証金などの資産だが、家賃の約束と借入が残るため、今の自己資本 127 億円の約 0.55 倍(約 70 億円)に置いた。稼ぐ力(純利益 6 億円 ÷ k)は約 84 億円だが、清算でなく継続の筋書きなので資産側で置く。
確率:フリマへの流出、出店の失速、賃料の上昇が重なる構造的な負け。2021年2月期のように営業利益率が1%を割った実績があり、1割ほどは置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内リユース(店舗・通販・買取、周辺事業を含む)
国内のトレジャーファクトリー、トレファクスタイル、カインドオルなど10を超える業態での中古品の買取と販売。通販と、引越し・レンタル・オークションなどの周辺事業を含む。
| 数量年間販売点数(億点。国内の店頭リユース市場の実質の伸び × 店舗網の拡大で動かす) | 価格1点あたりの平均販売単価(円。物価込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 0.2 | 2,300 | 468 | 46 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 3,082 | 1,004 | 88 |
取り方:全社売上486億円(2026年2月期)から、海外の推定18億円を除いた約468億円を、販売点数 × 平均単価で置いた。点数は約2,000万点、単価は2千円台前半と当社が推定した(開示は無い)。衣料が商品販売の約5割、服飾雑貨が2割強で、低単価の品が多いためこの水準とした。将来の点数は、国内の店頭市場(約1.3兆円、実質で10年に1割増)に、出店による店舗網の拡大(国内に最大800〜1,000店の余地、年30〜35店の出店)を重ねて動かし、新店は既存店より点数が少ないとして割り引く。単価は物価の指数で動かす。営業利益は全社47.8億円から海外の推定1.5億円を除いた46.3億円(本社費を含む)。セグメント別の開示は無い。
海外(タイ・台湾・米国)
タイのバンコクを中心とする総合リユース店、台湾のトレファクスタイル、2027年2月期に出す米国の1号店。
| 数量海外の店舗数(店) | 価格1店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 8.0 | 2.25 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 3.02 | 136 | 8 |
取り方:タイ5店・台湾3店の合計8店で、年間売上を約18億円と当社が推定した(海外の売上は開示が無い)。1店あたり約2.25億円。営業利益は、タイが利益に貢献し台湾がほぼ黒字、新店の費用が出ているため、約1.5億円と推定した。米国は2027年2月期中に1号店を出し、3年で6〜10店を目指す。
リスクと懸念
出店の失速
成長の柱は年30店以上の出店だ。物件が取れない、人が足りない、新店の立ち上がりが遅れる、といったことが重なれば、売上の伸びは数年で止まる。前期は郊外の新店の立ち上がりが遅れた。
賃料と人件費の上昇
賃料の増額要請や退店がすでに出ている。最低賃金の上昇で人件費も上がる。利益率が10%近い会社は、この二つを価格に転嫁しきれないと、利益が先に削られる。
フリマアプリへの流出
売上の7割が衣料と服飾雑貨で、写真で売りやすい品目だ。メルカリなどに品が流れると、店の買取が細り、粗利率の高さが崩れる。
利益率の先行投資と下げ幅
中期計画は営業利益率を9%へ下げる前提だ。AIと物流拠点、米国への先行投資の回収が遅れれば、率は想定より下がる。海外は費用が先に出る。
固定費と新リース会計
店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。2028年2月期からの新リース会計で、賃借の約束が貸借対照表に載り、自己資本比率の50%は下がる。借入も増える計画だ。
創業者への依存とインバウンド
社長で創業者の野坂英吾氏が3割強を持つ。世代交代の時の判断が読みにくい。免税売上は10%を超え、中国人客のような外部要因の変化に左右される。
今後の分かれ目
- 出店が年30〜40店のペースで続き、新店の採算が既存店並みになれば
- 売上が中期計画の710億円を超え、本質価値は楽観〜やや楽観の筋書きに近づく。
- 賃料の増額と人件費の上昇が、価格や粗利の改善を上回れば
- 営業利益率が9%を割り、中立よりやや悲観の筋書きに近づく。
- 米国の1号店が早期に採算に乗れば
- 海外が利益の柱の一つになり、成長の伸びしろが広がる。
- フリマアプリへの流出で買取点数が落ちれば
- 店の仕入れが細り、粗利率と回転が崩れ、悲観の筋書きに近づく。
- 自社株買いが実行されれば
- 還元が厚くなり、1株あたりの価値は上がるが、事業の価値が増えるわけではない。
- 景気が悪化し、新品の値上げが続けば
- 節約の需要が中古品を押し上げ、買取点数と販売が伸びる。
見ておくもの
- 単体既存店売上高と買取点数(店頭・宅配・出張)
- 単体既存店の粗利率と、新店の立ち上がり
- 出店数と退店数、賃料の増額の動き
- 営業利益率(中期計画の9%に対する実績)
- 米国1号店の採算とタイ・台湾の利益
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER(約14倍)を見て筋書きを作ってはいない。先に国内の販売点数(出店で増える店舗網 × 点数)× 物価の指数で国内を、店舗数 × 1店の売上で海外を積み、営業利益率は過去の山(9.8%)の手前の8.8%を中立に置いた。倍率は ROE 約14%と資本コスト7.5%から出した正当化 PER 約18倍の約85%、15倍台とした。結果が今の時価総額を1割ほど上回るのは、出店で利益が10年に倍近く伸びるためで、今の株価に寄せた結果ではない。店の家賃は営業費用に入れた形で置いており、新リース会計(2028年2月期から BS に載る)の後は営業利益が少し増え、純有利子負債にリース負債が加わるが、ここでは今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.4→20.9 倍・やや楽観 PER 16.5→20.48 倍・中立 PER 15.4→19.83 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の 7.5% に上乗せも差し引きもなし。同じ領域のブックオフ(+0.25%)より、利益率が高く値付けを自分で決められるぶん値決めの分が軽い。