結論
燦ホールディングスは、「公益社」を中核に全国で300を超える葬儀会館を持つ、上場最大手の葬儀会社だ。筆者の結論は、今の値段は事業の価値に近い、というものだ。
需要に不安はない。国内の死亡者数は2040年ごろまで高止まりし、景気にも左右されない。問題は、葬儀が小さく安くなっていることだ。一日葬と家族葬が増え、1件の単価は2006年のピークを2割下回る。
会社はその中で、会館を増やして件数を取る道を選んだ。2024年に家族葬のきずなを約150億円で買い、2026年2月にはこころネットを加えた。目標は2031年度に550会館だ。ただ新しい会館は、家賃と人件費が先に出て、利益が育つまで時間がかかる。のれんの償却も重く、ROEは資本コストに届かない。
足元の利益は、見かけより低い。2026年8月期の予想純利益45億円には負ののれんの発生益28億円が入り、前期の47億円もビルの売却益を含んでいた。それらを除いた実力は年20億円強だ。
10年後の中立は、売上が約680億円、営業利益が約58億円。件数は2割弱増えるが、単価は物価に追いつかない。強気の筋書きは550会館に迫って家族葬の採算が戻る姿、慎重な筋書きは単価の崩れと減損だ。確率を重ねた本質価値は、今の時価総額を1割弱下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の質と、資本の使い方を分けて見る。
事業の質は悪くない。葬儀は10年後も、20年後も続く。景気に関係なく、人は亡くなる。社葬を担う信用と、会館の網が、地域で積み上がる。だが、葬儀が小さく安くなる流れは止まらず、堀は広くない。
問題は資本の使い方だ。買収でのれんが107億円に膨らみ、毎年約7億円ずつ利益を削る。この償却は現金が出ていかない費用で、戻した利益は年29億円ほどある。しかし、成長投資の計画が年45億円ほどあり、株主の手元に残る分は薄い。10年の中立でも、ROEは資本コストに届かない。稼ぎが資本コストを下回る会社が、資本を厚くして規模を追う構図だ。
きずなの買収が試金石になる。150億円の代金に対し、償却前の利益は年7億円前後。買収前の12億円台からも落ちている。この数字が10億円を超えて戻れば、見方は変わる。
安全域は、あまり大きくない。土地と建物で300億円超を持ち、財務は堅い。だが、会館は他に転用しにくく、売れる価値は帳簿より低い。筆者が見たいのは、買収と出店の収益が数字に出る2年後の姿だ。
何で稼ぐ会社か
燦ホールディングスは持株会社で、稼ぎの中心は葬儀の施行だ。グループには四つの顔がある。
一つは「公益社」。関西と首都圏で、企業の社葬や大きな葬儀を得意とする。1件の売上は、葬儀本体で約112万円、返礼品や法要などを足すと140万円ほどになる。二つ目は、2024年に買ったきずなグループの「家族葬のファミーユ」。小さな会館を各地に建て、少人数の葬儀を請け負う。三つ目は、2005年と2006年に買った葬仙(鳥取)とタルイ(兵庫)。地域に根を張る葬儀社だ。四つ目は、2026年2月に株式交換で加わったこころネット。福島と北関東で、葬儀、石材、婚礼、生花を手がける。
稼ぎ方は単純だ。会館で葬儀を営むたびに、式場の使用料、祭壇、料理、返礼品が売上になる。葬儀のあとの法要、仏壇、不動産の仲介も取り込み、人生の終わりに関わる費用を広く受けとる。会社はこれを「ライフエンディングサポート事業」と呼び、2031年度に売上100億円を目指す。リハビリ特化のデイサービスや訪問マッサージも、その一部だ。
こころネットを除いて、年間の施行はおよそ3万3千件、会館は267。こころネットの45会館を足して312になった。
費用の大半は人件費と会館の維持費だ。公益社は土地と建物を持つ会館が多いが、新しい出店は賃借が多い。家賃は件数が減っても減らない固定の約束だ。年換算の売上で見ると、公益社が約4割、きずなが約3割、こころネットが約2割を占める。
優良さと弱いところ
堀は、地域と信用にある。ただ、広くは築けていない。
公益社の強みは、社葬と大きな葬儀だ。関西では戦前からの実績があり、会社は「圧倒的なシェア」と説明している。葬祭ディレクターの有資格者は507名(2025年3月末)で、エンバーミングや遺族の会も持つ。大口の葬儀は、価格より信用で選ばれる。この部分の堀は本物だ。
一方、家族葬は違う。喪主は近くて安い会館を選び、ネットの紹介サイトで見積もりを比べる。のれんで買ったきずなは、この競争の中にいる。切り替えの費用が低い事業で、値決めの力は弱い。
資本効率は低い。2025年3月期のROE 12.7%は、ビルの売却益を含む数字だ。年換算の実力は5%前後に見える。2024年度のROICも6.1%と、前の中期計画の目標に届かなかった。買収の代金が重く、のれんは107億円、自己資本の3割近い。
経営は攻めの姿勢が強い。2年で2社を買い、会館を増やしている。その分、2026年8月期の営業利益予想は、5月に35%下方修正された。拡大の速さに、収益の立ち上がりが追いついていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、人口が決める。2025年の国内の死亡者数は158.9万人で、5年ぶりに前年を下回った。ただ、2040年ごろに164万〜167万人のピークを迎える見通しは変わらない。10年後の2036年には、今より4%ほど多い165万人前後になる。とくに関東と近畿は高齢者が増えるので、件数は伸びやすい。
市場の大きさは、見る物差しで違う。経済産業省の統計では葬儀業の売上は6,109億円(2024年)、矢野経済研究所の推計では葬祭ビジネス全体で1.8兆円だ。経産省統計の葬儀1件の売上は121.5万円で、2006年の152.1万円を2割下回る。一日葬は1年で17.7%から25.0%に増え、家族葬は喪主調査で5割に達した。件数は増えても、単価の下落が市場を押さえている。
競争は三層だ。大手は、燦、ティア(219会館)、平安レイサービス、サン・ライフ、ニチリョクなど。この数年は、上場の葬儀社どうしの買収が続く。地方の零細は、後継者難で売りに出る。三つ目が、ネットの葬儀紹介サイトと低価格の新規参入で、広済堂ホールディングスも葬儀に入ってきた。ティアの2026年9月期は、2025年10月から6月の累計で件数が3.6%減り、営業利益が半分近く減った。燦だけの問題ではなく、業界全体で出店競争が過熱している。
燦の件数は、こころネットを含めて年4万件弱で、全国の死亡者数の約2.5%にあたる。10年後の中立は、これが約2.8%に上がる。強気なら3.3%、慎重なら2.2〜2.5%だ。
資本政策と M&A
還元は、累進配当が軸だ。原則として減配せず、中期経営計画(2025〜2027年度)の3年間で30億円超を株主に返す。年10億円ほどの規模で、純利益の5割に近い。自社株買いは、株価を見て機動的に行う。株主優待は2012年に廃止した。
資本の使い道は、成長に傾いている。3年間で140億円超を、新しい会館、IT、M&Aに投じる。目標は2031年度に550会館。出店とM&Aで3年に130会館を増やす計画だ。前の3年間は、営業キャッシュフロー116億円、借入53億円、資産売却39億円で計209億円を集め、成長投資に173億円、株主還元に25億円を使った。稼いだ現金の大半を、再投資に回している。
買収の歴史は短く、大きい。2005年と2006年に小さな葬儀社を買ったあと、長く止めた。2024年にきずなを約150億円で買い、2026年にこころネットを株式交換で取得した。こころネットは、受け取る純資産が代金を28億円上回り、負ののれん発生益を計上した。
2025年12月末の自己資本比率は64.8%、借入は142億円、現金は69億円。財務は堅いが、新店の投資と買収で現金は減り続けている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、需要の確かさと、規模の力に賭ける。
死亡者数は2040年まで増え、とくに関東と近畿は伸びる。高齢者が増える大都市圏では、死亡者数は全国より早いペースで伸びる。そのうえで、会館が増えれば、シェアがついてくる。きずなは、買収前の2024年5月期に営業利益率が10%を超えていた。新しい会館が育てば、その水準に戻る。会館が480に届けば、年間の件数は5万を超え、シェアは3%を超える。
単価は、数だけで見ると下がる。だが付帯収入と、エンバーミングや遺族ケアなどの上乗せで、1件の売上は支えられる。公益社の社葬と大きな葬儀は、信用で選ばれ、価格競争に巻き込まれにくい。会葬者が減っても、故人を送る場の価値は残る。
業界の再編も味方になる。後継者のいない地方の葬儀社は売りに出る。上場している燦は、株式交換でこころネットを取り込めた。株式を使えば、現金を使わずに会館を増やせる。同じ手を重ねれば、仕入れや間接部門を共通にでき、利益率が上がる。
会社が掲げる営業利益率11.5%も、会館が育った先では届く。会社はROE 8%以上とPBR 1倍超を目標に掲げた。改善の圧力は強く、資本効率は上がる。
慎重な見方
慎重な見方は、需要の確かさと、利益の確かさは別だと指摘する。
死亡者数は2025年に5年ぶりに減った。会社も、今期の件数の見通しを下げた。2026年8月期の営業利益の予想は、当初の6割強にとどまる。会館が増えても、1館あたりの件数が増えないのでは、固定費だけが膨らむ。同業のティアの営業利益が半分近く減ったことは、その実例だ。
葬儀は小さく安くなり続ける。一日葬の比率は1年で17.7%から25.0%に上がり、家族葬は5割になった。ネットの紹介サイトが価格を見える化し、会館は価格で比べられる。きずなは、まさにこの市場で戦う会社だ。買収して9か月の実績は、のれんの償却を引くと、利益がほぼゼロだった。
資本の面でも、懸念が残る。のれんは107億円で、ROEは資本コストに届かない。出店と買収を続けるほど、稼ぎの薄い資本が積み上がる。借入は金利の上昇で負担が増す。会社の目標である営業利益率11.5%は、今の7%台から遠い。
買収の連発も気にかかる。2年で2社を取り込み、統合の手間は大きい。経営の目が行き届かないうちに、次の買収に進めば、失敗の確率は上がる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は需要と再編を正しく捉えているが、足元の利益が下方修正されている事実と、新店の収益が見えていない点を説明できていない。慎重な見方は、単価の下落と資本の薄さを的確に突いている。ただ、需要が確かに増える事業で、10年間を通して利益が崩れる姿は描きにくい。
そこで、中立を最も厚くしたうえで、確率はやや慎重な側に寄せた。強気は、会館が480に届き家族葬の採算も戻る場合に限った。慎重な側は、買収の失敗と単価の崩れが重なる場合まで含めた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,767 円418 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 582 円138 億円)。 今の値に割り戻すと 1,263 円299 億円、今との差 +4.9%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,616 円855 億円 | 804 円190 億円 | +267.1% | +13.9% | 265 円63 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,616 円619 億円 | 698 円165 億円 | +175.3% | +10.7% | 597 円141 億円 |
| 中立 | 38% | 2,013 円476 億円 | 634 円150 億円 | +119.9% | +8.2% | 1,006 円238 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,010 円239 億円 | 508 円120 億円 | +26.0% | +2.3% | 425 円100 億円 |
| 悲観 | 10% | 317 円75 億円 | 254 円60 億円 | −52.6% | −7.2% | 57 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,767 円418 億円 | 582 円138 億円 | +95.2% | +6.9% | 2,350 円556 億円 |
今の株価時価総額 1,204 円285 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 550会館に迫り、家族葬の採算が戻る 利益 58 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 3,616 円855 億円
出店とM&Aが計画に近い速さで進み、2036年には会館が480を超える。きずなの新店が育って1館あたりの件数が戻り、きずなの件数は2万7千件になる。公益社は首都圏で社葬と大きな葬儀を増やす。同業の買収も続き、燦は業界再編の中心に立つ。
1件の売上は物価に近い伸びを保つ。会葬者は減るが、返礼品、法要、仏壇などの付随収入と、エンバーミングや遺族ケアの上乗せが定着して補う。
きずなの利益率は償却前で11%に戻り、償却後でも9%。全社の営業利益率は11%に乗る。会社が掲げる11.5%の目標に、遅れて届く姿だ。買収は統合に成功し、のれんの減損は出ない。この筋書きは、出店、買収、単価、人件費のすべてがうまくいく場合に限り、確率は低い。
- 公益社グループ(近畿・首都圏の大規模葬・社葬):数量 16.0(葬儀施行件数(千件))× 価格 184(1件あたり売上(万円。葬儀本体約112万円+付随収入。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 294 億円・営業利益 41 億円。件数1.6万、単価+30%、利益率14%
- きずなグループ(家族葬のファミーユ):数量 27.0(葬儀施行件数(千件))× 価格 116(1件あたり売上(万円。家族葬中心。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 312 億円・営業利益 28 億円。件数2.7万、単価+34%、償却後9%
- 葬仙・タルイ(鳥取・兵庫の地域葬儀社):数量 3.5(葬儀施行件数(千件))× 価格 152(1件あたり売上(万円。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。件数3.5千、利益率14%
- こころネット(福島・北関東の葬祭・石材・婚礼):数量 7.5(葬儀施行件数(千件。石材・婚礼・生花の売上も1件あたりに含める))× 価格 232(1件あたり売上(万円。葬祭以外の売上を含む総額。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 174 億円・営業利益 15 億円。件数7.5千、利益率8.5%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.64 倍、時価総額 855 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会館の純増、きずなの採算の回復、単価の維持、人件費の転嫁の4つが重なる必要がある。直近で営業利益の予想を35%下げた会社なので、確率は低く6%に置いた。
やや楽観 18% 計画が遅れて実現し、営業利益率は10%弱 利益 46 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,616 円619 億円
会館は430ほどに増え、買収もおおむね計画どおりに進む。きずなの新店が育ち、公益社の件数も都市部の死亡者数の増加に乗って伸びる。こころネットの統合も進み、石材と婚礼の落ち込みは葬祭の伸びが埋める。
単価は物価より少し遅れて上がる。小規模化の流れは続くが、付随収入が一部を補う。人件費の上昇は、価格の転嫁と効率化で吸収する。
きずなの利益率は償却前で10%、償却後で7%まで戻る。全社の営業利益率は10%弱。営業利益は約74億円になる。強気の筋書きに届かないのは、出店の回収に時間がかかり、きずなが以前の水準まで戻りきらないためだ。ここまでは、会社の計画が遅れて実現する姿で、十分に現実味がある。
- 公益社グループ(近畿・首都圏の大規模葬・社葬):数量 15.5(葬儀施行件数(千件))× 価格 178(1件あたり売上(万円。葬儀本体約112万円+付随収入。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 276 億円・営業利益 36 億円。件数1.55万、単価+26%、利益率13%
- きずなグループ(家族葬のファミーユ):数量 24.0(葬儀施行件数(千件))× 価格 113(1件あたり売上(万円。家族葬中心。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 271 億円・営業利益 19 億円。件数2.4万、単価+31%、償却後7%
- 葬仙・タルイ(鳥取・兵庫の地域葬儀社):数量 3.4(葬儀施行件数(千件))× 価格 149(1件あたり売上(万円。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 51 億円・営業利益 7 億円。件数3.4千、利益率13.5%
- こころネット(福島・北関東の葬祭・石材・婚礼):数量 7.0(葬儀施行件数(千件。石材・婚礼・生花の売上も1件あたりに含める))× 価格 227(1件あたり売上(万円。葬祭以外の売上を含む総額。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 159 億円・営業利益 12 億円。件数7.0千、利益率7.7%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 618 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要が確かで、会社の計画が遅れて実現する姿は十分にありうる。ただ、小規模化と競争の逆風があり、きずなの採算がまだ見えていないため、2割弱に抑えた。
中立 38% 件数は2割弱増えるが、単価が遅れ、ROEは6% 利益 36 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,013 円476 億円
死亡者数の増加と、会館の純増で、件数は今より17%ほど増える。会館は390前後になる。ただ、新店は既存店の客を食い合い、1館あたりの件数は薄まる。
単価は、小規模化の影響で物価に追いつかない。1件の売上は10年で2割台の伸びにとどまり、物価の1.34倍を下回る。会葬者の減少と、一日葬や直葬の増加が重いためだ。公益社の1件の売上は10年で22%増にとどまり、きずななどは28%増になる。物価の34%増に届かない分は、小規模化による減りだ。
きずなの利益率は償却前で8%まで戻り、償却後で5%。買収前の水準(10%超)には届かない。賃上げが年3%続き、会館の家賃も上がる。全社の営業利益率は8.6%、営業利益は約58億円。ROEは6%で、資本コストに届かない。事業は伸びるが、資本の効率は上がりきらない。
- 公益社グループ(近畿・首都圏の大規模葬・社葬):数量 14.8(葬儀施行件数(千件))× 価格 172(1件あたり売上(万円。葬儀本体約112万円+付随収入。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 255 億円・営業利益 31 億円。件数1.48万、単価+22%、利益率12%
- きずなグループ(家族葬のファミーユ):数量 21.0(葬儀施行件数(千件))× 価格 111(1件あたり売上(万円。家族葬中心。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 232 億円・営業利益 12 億円。件数2.1万、単価+28%、償却後5%
- 葬仙・タルイ(鳥取・兵庫の地域葬儀社):数量 3.3(葬儀施行件数(千件))× 価格 145(1件あたり売上(万円。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 48 億円・営業利益 6 億円。件数3.3千、利益率12.5%
- こころネット(福島・北関東の葬祭・石材・婚礼):数量 6.6(葬儀施行件数(千件。石材・婚礼・生花の売上も1件あたりに含める))× 価格 222(1件あたり売上(万円。葬祭以外の売上を含む総額。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 146 億円・営業利益 10 億円。件数6.6千、利益率7%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:死亡者数の増加が件数を支え、単価と利益率は小規模化で物価に遅れる。買収は一部が当たり、一部は期待に届かない。最も起こりやすい姿として、4割弱に置いた。
やや悲観 28% 競争で頭打ち。名目の利益は10年横ばい 利益 22 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,010 円239 億円
死亡者数は増えるが、競争が激しく、燦のシェアは伸びない。会館は350ほどで頭打ちになり、1館あたりの件数は薄まる。ネットの紹介サイトや低価格勢に客を奪われ、きずなの件数は1万8千件台にとどまる。出店を止めるまでの間に、家賃と人件費が積み上がる。
1件の売上は物価に大きく遅れ、10年で16〜22%の上昇にとどまる。大きな葬儀も縮み、公益社の単価も上がらない。賃上げは続く。
きずなの利益率は償却後で2%。全社の営業利益率は6%台で、営業利益は約38億円と、今とほぼ同じ。物価を考えると、実質では2割ほど細る。純利益は年22億円ほどで10年動かず、株主の取り分は目減りする。拡大路線を止め、配当を守るだけの会社になる姿だ。
- 公益社グループ(近畿・首都圏の大規模葬・社葬):数量 14.2(葬儀施行件数(千件))× 価格 164(1件あたり売上(万円。葬儀本体約112万円+付随収入。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 233 億円・営業利益 23 億円。件数1.42万、単価+16%、利益率10%
- きずなグループ(家族葬のファミーユ):数量 18.5(葬儀施行件数(千件))× 価格 105(1件あたり売上(万円。家族葬中心。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 195 億円・営業利益 4 億円。件数1.85万、単価+22%、償却後2%
- 葬仙・タルイ(鳥取・兵庫の地域葬儀社):数量 3.1(葬儀施行件数(千件))× 価格 138(1件あたり売上(万円。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。件数3.1千、利益率10%
- こころネット(福島・北関東の葬祭・石材・婚礼):数量 6.2(葬儀施行件数(千件。石材・婚礼・生花の売上も1件あたりに含める))× 価格 211(1件あたり売上(万円。葬祭以外の売上を含む総額。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 131 億円・営業利益 7 億円。件数6.2千、利益率5%
倍率:事業の純利益は22億円、ROEは4%で資本コストを大きく下回る。上限は約13.3倍だが、利益が実質で細る局面で、建て替えや改装の投資も重いので、約8割の11倍に置いた。
確率:足元で件数の見通しが下がり、同業のティアも減益に転じた。出店競争と低価格勢の攻勢が続く姿は、現実味が高い。強気の側より厚く3割弱に置いた。
悲観 10% 単価が崩れ、買収が失敗。のれんを減損 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 317 円75 億円
構造的に負ける。ネットの紹介と低価格の新規参入が、小規模葬儀の価格を決めてしまう。きずなの新店は件数が育たず、家賃と人件費が重く、赤字が続く。のれんと店舗の減損が出て、自己資本は90億円ほど削られる。
公益社の大きな葬儀も、会葬者の減少と企業の社葬の簡素化で縮む。1件の売上は10年で5〜10%しか上がらず、物価に大きく遅れる。会館の網は広がらず、一部は閉じる。
全社の営業利益率は3%に落ち、営業利益は13億円。純利益は3億円ほどにとどまる。借入が重く、配当は大きく減る。事業の稼ぐ力は小さく、残る価値は、土地や建物など売れる資産から借入を引いた額に近い。清算されない限り、少数株主は資産の価値をそのまま受け取れず、現金化の道も会社の意向次第になる。
- 公益社グループ(近畿・首都圏の大規模葬・社葬):数量 12.5(葬儀施行件数(千件))× 価格 148(1件あたり売上(万円。葬儀本体約112万円+付随収入。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 186 億円・営業利益 12 億円。件数1.25万、単価+5%、利益率6.5%
- きずなグループ(家族葬のファミーユ):数量 15.5(葬儀施行件数(千件))× 価格 95(1件あたり売上(万円。家族葬中心。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 147 億円・営業利益 −3 億円。件数1.55万、単価+10%、赤字
- 葬仙・タルイ(鳥取・兵庫の地域葬儀社):数量 2.8(葬儀施行件数(千件))× 価格 125(1件あたり売上(万円。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。件数2.8千、利益率5%
- こころネット(福島・北関東の葬祭・石材・婚礼):数量 5.2(葬儀施行件数(千件。石材・婚礼・生花の売上も1件あたりに含める))× 価格 191(1件あたり売上(万円。葬祭以外の売上を含む総額。物価で10年1.34倍が中立の基準))→ 売上 99 億円・営業利益 2 億円。件数5.2千、利益率2%
倍率:稼ぐ力は、純利益3億円を資本コストで割って約43億円。一方、売れる資産の税後は約75億円で、床のほうが大きい。床に置いた。今の自己資本に対しては0.2倍にあたる。
確率:需要の確かな事業なので、構造的に負ける可能性は低い。ただ、のれんが重く、出店と買収を急ぐ会社の失敗が、小規模化と重なる姿は無視できない。1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公益社グループ(近畿・首都圏の大規模葬・社葬)
関西と首都圏で、社葬や大きな葬儀を営む。1件の売上が高く、利益の柱。付随収入(返礼品・法要・仏壇)を含む。
| 数量葬儀施行件数(千件) | 価格1件あたり売上(万円。葬儀本体約112万円+付随収入。物価で10年1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 13.7 | 141 | 194 | 23 |
| 10 年後 中立 | 14.8 | 172 | 255 | 31 |
取り方:2026年8月期の12か月換算。2025年4〜12月の9か月の実績(外部売上145.2億円)を4/3倍して193.6億円。件数は葬儀施行収入115.5億円÷葬儀施行単価112.4万円で約1.03万件(9か月)、年換算で約1.37万件と推定し、1件の売上は141.3万円。営業利益はセグメント利益16.2億円の4/3に、持株会社の純額と金利の戻しを売上比で配って、全社の営業利益36億円の水準にそろえた。
きずなグループ(家族葬のファミーユ)
少人数の家族葬を、小さな専用会館で請け負う。会館は新設が続き、のれんの償却を負担している。
| 数量葬儀施行件数(千件) | 価格1件あたり売上(万円。家族葬中心。物価で10年1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 16.0 | 86 | 138 | 1 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 111 | 232 | 12 |
取り方:2026年8月期の12か月換算。9か月の外部売上103.5億円の4/3で138億円。件数は会社全体の年間約3.3万件から公益社・葬仙・タルイを引いて約1.6万件と推定し、1件の売上は86.3万円。セグメント利益は償却後で赤字(のれん償却5.35億円/9か月)だったが、配分後の営業利益は0.9億円。償却前では約8億円。
葬仙・タルイ(鳥取・兵庫の地域葬儀社)
地域に根を張る2社。一般の葬儀が中心で、利益率が高い。
| 数量葬儀施行件数(千件) | 価格1件あたり売上(万円。物価で10年1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 3.2 | 113 | 36 | 5 |
| 10 年後 中立 | 3.3 | 145 | 48 | 6 |
取り方:2026年8月期の12か月換算。9か月の外部売上27.2億円(葬仙12.1億円、タルイ15.2億円)の4/3で36.3億円。件数は約3.2千件と推定(施行単価は両社とも100万円台前半)。営業利益は両社のセグメント利益の4/3に配分を加えて5.4億円。
こころネット(福島・北関東の葬祭・石材・婚礼)
2026年2月に株式交換で加わった。葬祭が半分強、石材と婚礼、生花も持つ。会館45。
| 数量葬儀施行件数(千件。石材・婚礼・生花の売上も1件あたりに含める) | 価格1件あたり売上(万円。葬祭以外の売上を含む総額。物価で10年1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 6.0 | 173 | 104 | 7 |
| 10 年後 中立 | 6.6 | 222 | 146 | 10 |
取り方:2026年8月期の12か月換算。こころネットの2025年3月期の売上は101億円、営業利益7.5億円、葬祭セグメントは68億円。年間の売上を104億円とし、葬儀施行は約6千件と推定(開示なし)して、総売上÷件数で173.3万円。営業利益は石材・婚礼の減収を見て7億円。2026年2月から連結で、年換算は連結の12か月分を仮定。
リスクと懸念
件数と単価の同時の下押し
死亡者数は2025年に5年ぶりに減り、会社も今期の件数の見通しを下げた。同時に、一日葬・直葬が増えて1件の単価が下がる。数量と価格が両方下を向くと、固定費の重い会館事業では利益が大きく削れる。2026年8月期の営業利益予想の35%下方修正は、その表れだ。
新規出店の回収が遅れる
会社は3年で130会館を増やす計画だ。新しい会館は家賃と人件費が先に出て、件数が育つまで赤字に近い。需要が足りない地域に出すと、既存の会館と客を奪い合う。出店の速さが、利益の立ち上がりを超えるおそれがある。公益社グループの利益が、新店費用で前年より17%減ったのが、すでに出た兆候だ。
のれんの減損と統合の失敗
のれんは107億円で、このうちきずなが大半を占める。きずなは買収後9か月の実績で、償却後の利益がほぼゼロだった。件数が計画に届かなければ、減損で自己資本が削られる。こころネットは石材と婚礼が弱く、統合に時間がかかる。2年で2社の取り込みは、経営の負荷も重い。
ネット紹介と低価格勢の攻勢
ネットの紹介サイトは、会館の価格を比べやすくした。低価格の新規参入も増え、広済堂ホールディングスも葬儀に入った。現場の仕事はAIエージェントに置き換わりにくいが、見積もりの比較は自動化が進み、価格の透明化が単価をさらに押す。家族葬の領域ほど、影響が大きい。
人手の確保と人件費
葬祭ディレクターなど、資格のある人の確保が出店の速さを決める。賃上げは年3%前後で続き、単価の伸びがそれに届かなければ、利益率は下がる。会館が増えるほど、採用と教育の負担が先に出る。家賃も物価で上がるので、固定費の増加は避けにくい。
金利の上昇
借入は142億円で、借り換えのたびに金利が上がる。10年国債が3%になる想定では、利払いは今より年1億円ほど増える。新店の投資が続くと、借入も減りにくく、利益の押し下げが重くなる。きずな買収の借入で、支払利息はすでに前年の3倍強に増えた。
今後の分かれ目
- 2026年度以降、公益社グループの件数が2期続けて前年を下回った
- 社葬と大きな葬儀という、堀のある事業でも需要が細っている合図になる。やや悲観の確率を上げる。
- きずなの償却前の営業利益率が10%に戻った
- 買収の代金に見合う稼ぎが出始めた証拠になる。強気の筋書きの確率を上げ、のれんの減損の心配は薄れる。
- きずなやこころネットで減損が出た
- 買収の失敗が表に出た合図になる。自己資本が減り、慎重な筋書きの確率を上げる。拡大路線そのものも見直しが要る。
- 550会館の目標の下方修正、または出店ペースの減速が発表された
- 成長の速さを落として利益の質を戻す動きなら、悪い話ではない。ROEの改善が見えれば、中立の確率を上げる。
- 同業や互助会大手が、燦の株式の公開買い付けを提案した
- 少数株主に有利な価格が付く可能性がある。事業の価値は変わらないが、時価総額は上振れうる。
- ティアなど同業の件数が回復し、単価の下落が止まった
- 業界の需給が持ち直す兆しになる。やや楽観の確率を上げてよい。
見ておくもの
- 公益社グループときずなの葬儀施行件数と、1件あたりの単価
- きずなの償却前の営業利益率と、のれんの減損の有無
- 会館数の推移と、新規出店1館あたりの件数
- 国内の死亡者数と、一日葬・直葬の比率
- 借入残高と金利、自己資本比率の推移
- 同業(ティア、平安レイサービスなど)の件数と営業利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストに届かない中立では、PERの上限は資本コストの逆数の約13倍で、その9割に置いた。のれんの償却という現金の出ない費用が利益を押し下げているので、上限に近い。今の株価やPER、同業の値付けは、倍率の根拠に使っていない。起点は、17か月の変則決算(負ののれん28億円を含む)でも、2025年3月期(ビルの売却益34億円を含む)でもない。直近9か月の実績にこころネット1年分を足した12か月換算で、営業利益は36億円。会社の2027年8月期の予想38億円より低く置いた。数量は件数、価格は1件あたり売上で、件数の一部(きずなとこころネット)は推定だ。新リース会計基準は2028年8月期から会館の賃借が貸借対照表に載るが、10年後の数字は家賃を費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.9→14.64 倍・やや楽観 PER 12.6→13.33 倍・中立 PER 12→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0 を足した。買収の失敗や出店の遅れなど個別の事情は、筋書きと確率で表した。