結論
オイシックスは、食材を定期宅配する Oisix と、施設の給食を請け負う旧シダックスの B2B を二本柱とする食品の会社だ。筆者の結論は適正である。事業は堅いが、営業利益率が 3% ほどと薄く、今の値段に安全域はほとんどない。
Oisix の会員は 35 万人で 2 年動いていない。会員が増えない中で稼ぎを伸ばす道は、1 人あたりの購入額を物価並みに上げることと、給食の契約施設を積み増すことの 2 つだ。2030 年度の会社目標は売上 3,250 億円、EBITDA 190 億円で、M&A 込みの強気の数字である。筆者は M&A を織り込まない素の力で 10 年を見積もった。
車両運行の売却と、シダックスの完全子会社化で、財務は軽くなった。自己資本比率は 25%、Net Debt/EBITDA は 0.3 倍だ。ただし直近の ROE 16.6% は少数株主の持ち分が消えた効果が大きく、そのまま続くとは見ない。事業の実力を測る ROIC は 9% で、資本コストの 8% を少し上回る程度だ。
強気の筋書きでは、給食の収益改善と Oisix の値上げが重なり、純利益が 170 億円台に届く。慎重な筋書きでは、競争で会員が減り、薄い利益が消える。確率を重ねた本質価値は、今の時価総額と同じ水準に収まった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「持ち続けたい事業」とは言い切れない。理由は、利益率が薄く、安全域が小さいことだ。
良い点は 2 つある。Oisix の会員は長く買い続ける。給食は契約が積み上がる、景気に強い事業だ。設備投資は年 30〜35 億円で、EBITDA 130 億円の 4 分の 1 ほどに収まる。株主のものになる利益は、営業利益より少し厚い。
気になる点も 2 つある。営業利益率が 3% ほどで、人件費か食材費が 1% 動くだけで利益が 3 割動く。M&A に稼ぎの大半を回す方針は、買収が当たれば価値を生み、外れればのれんが重荷になる。経営者が資本をうまく使うかは、これから数年の買収の実績で決まる。
筆者は、10 年後の純利益を 90 億円ほどと置いた。今の約 2 倍だ。その倍率は 12 倍で、本質価値は今の時価総額の周りに収まる。安く買える事業ではなく、値段と価値が釣り合っている事業だ。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は 2 つある。食材を定期宅配する B2C と、施設の給食を丸ごと請け負う B2B だ。2026 年 3 月期の売上 2,514 億円のうち、B2C が約 940 億円、B2B が約 830 億円を占める。
B2C の中心は Oisix だ。会員は 35 万人で、ここ 2 年は 35〜36 万人台から動かない。一方で 1 人あたりの月の購入額は 1.2 万円台を保つ。手間を減らす「超ラクKit」など、時短の商品で単価を支えている。大地を守る会とらでぃっしゅぼーやは、有機野菜に強い宅配ブランドだ。会員の減少が続き、売上は 1 年で 9% 減った。
B2B は旧シダックスの給食事業が土台である。高齢者施設・工場や病院・学校の約 2,500 施設に食事を届ける。2025 年 10 月に車両運行サービスを創業家へ売り、給食と公共施設の運営に絞った。シダックスへの出資は 66% から 100% になった。
稼ぎ方は薄利である。営業利益率は全社で 2.9%、B2B の EBITDA 率は 5% 前後だ。人件費・食材費・配送費の上昇を値上げで取り戻せるかが、毎年の勝負になる。2026 年 7 月に社名は「オイシックス」へ変わった。サービスの名前はそのまま続く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、Oisix に限ってはある。生産者と直接つながる仕入れと、「安心して買える食」というブランドだ。会員の継続率が高く、1 人が長く買うほど儲けが積み上がる。Oisix の EBITDA 率が 14% 前後と全社より高いのは、このためだ。ただし会員数が 35 万人で頭打ちである点を、筆者は重く見る。堀はあるが、広がってはいない。
B2B の堀は薄い。給食は価格と衛生・人手の確保で選ばれる事業で、大手の日清医療食品やエームサービスとの競争が続く。強みは、高齢者施設向けの完全調理品「元気ごはん」のように、調理の人手を減らす仕組みを持つことだ。人手不足が進むほど、施設は調理を外に出したがる。この追い風は 10 年続く。一方で、2025 年には価格を上げた施設から一部の解約が出た。値上げと契約の維持は両立しにくい。
資本の効率は、見かけより普通である。26/3 期の ROE は 16.6% だが、少数株主の持ち分が約 90 億円から 17 億円に減った効果が大きい。ROIC は 9.0% で、資本コスト 8% を少し上回るだけだ。経営は創業者の髙島宏平社長が率いる。M&A で規模を広げてきた会社で、買収後の統合(PMI)で利益を出せるかが課題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の食材宅配は、数量が伸びない市場である。食品のネット通販は 3.1 兆円(経産省、2024 年)と大きいが、人口は年 0.5% ずつ減る。共働きと時短のニーズで、1 世帯あたりの購入が増える余地はある。しかし競争相手は厚い。生協の宅配、イオンなどのネットスーパー、Amazon が同じ家庭の食費を取り合う。Oisix は価格でなく、品質と手間の少なさで戦う会社だ。
物価 3% の世界では、値上げできるかが利益を決める。食材費・配送費・人件費が毎年上がる。Oisix は会員の単価を物価並みに上げられると筆者は見るが、会員の流出とのせめぎ合いになる。
給食は 5 兆円の市場(矢野経済研究所、2025 年度)で、物価高が市場を押し上げている。人手不足で、施設は給食を外部へ委託する流れだ。矢野の見通しでは、高齢者施設と学校が伸び、病院は減る。会社は施設数を 10 年で 2 割増やせると筆者は置いた。上位の数社と中小が競う分散した市場で、小さな会社を買い集めるロールアップが成り立つ。
10 年の分かれ目は 2 つある。1 つは、AI やロボットが調理の人手を減らし、給食の利益率が上がるか。もう 1 つは、海外勢と大手ネットスーパーが宅配の会員を奪うかだ。
資本政策と M&A
資本政策は、2025 年に大きく変わった。シダックスのフード・社会サービス事業を完全子会社にし、車両運行を創業家へ売った。少数株主に流れていた利益が自社に残る形になり、純資産に占める非支配の持ち分は 90 億円から 17 億円に減った。
還元は始まったばかりだ。上場来初の配当を 2026 年 3 月期に出し、今期は増配の予想である。方針は、配当性向 20〜30% と、営業キャッシュフローの 70〜80% を M&A に回す形だ。M&A を優先する会社なので、自社株買いは多くない。借入は純有利子負債の対 EBITDA で 2.0 倍までと上限を置いた。
買う側としては、給食のロールアップが主戦場である。買われる側の可能性もある。時価総額が 574 億円と小さく、給食や食品流通の大手が興味を持ちうる規模だ。ただし創業者が大株主で、TOB は創業者の意向次第になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Oisix は購入額の高い層を増やせる。超ラクKit・たすだけシリーズなど、時短の商品が共働き世帯に合い、会員は 45 万人まで伸びる。会員が増えれば配送の効率も上がり、利益率は 14% に届く。
給食は、人手不足が最大の追い風だ。高齢者施設・学校の委託が進み、契約施設は 3,900 件になる。完全調理品の元気ごはんで調理の人手が減り、利益率は 7.5% まで上がる。2027 年 3 月期の B2B の EBITDA は 40% 増の 57 億円を見込み、収益の改善はすでに数字に出ている。
ロールアップ型の M&A も効く。分散した給食市場で小さな会社を買い、仕入れと調理の標準化で利益を引き上げる。2030 年度の会社目標、売上 3,250 億円・EBITDA 190 億円は、この延長にある。10 年で純利益が 170 億円台に乗れば、倍率 15 倍で時価総額は今の 4 倍を超える。
財務の余力もある。2025 年の再編で少数株主への利益の流出が減り、借入は EBITDA の 0.3 倍にすぎない。買収の資金を出しても、財務は崩れない。
慎重な見方
会員数が増えないのは、市場が飽和している証拠だ。35 万人の会員は 2 年間動かず、大地やらでぃっしゅぼーやは年 9% のペースで縮んでいる。人口が減る中で、Oisix だけが伸びる理由は見当たらない。
給食は、利益が出にくい事業だ。2025 年には価格を上げた施設から解約が出た。米や食材の高騰、人件費の上昇を転嫁しきれず、利益率は 3% 台のまま動かない。施設が増えても、1 件あたりの稼ぎが細れば利益は増えない。
M&A は成否が読めない。シダックスの買収で生じたのれんと顧客関連資産は、今も合わせて 200 億円ほど残る。買収に稼ぎの大半を使う方針は、外れた時の傷が深い。自己資本比率は 25% と薄く、赤字が続けば借り換えの条件が悪くなる。
さらに、2030 年度の目標は M&A 込みである。素の力は、純利益で今の 2 倍に届かない。
営業利益率が 3% ほどの事業は、少しの読み違いで赤字に近づく。人件費と食材費が物価を上回って上がり続ければ、利益は増えずに規模だけが増える。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、給食の収益改善が数字に出始めている点で説得力がある。ただし、会員が増えない Oisix の弱さと、薄い利益率は慎重な見方のほうが強い。筆者は確率の山を中立に置き、やや悲観に 27%、悲観に 13% を割いた。楽観とやや楽観は合わせて 27% とした。同じ領域で営業利益率の高い会社に比べ、この会社は一度の読み違いで利益が大きく動く。そのぶん悲観側を厚く見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,543 円1,578 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 435 円151 億円)。 今の値に割り戻すと 2,401 円834 億円、今との差 +41.7%、 期待の年率 +11.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,799 円3,751 億円 | 841 円292 億円 | +587.1% | +21.3% | 815 円283 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,921 円2,751 億円 | 651 円226 億円 | +406.0% | +17.6% | 1,714 円595 億円 |
| 中立 | 33% | 5,305 円1,843 億円 | 501 円174 億円 | +242.8% | +13.1% | 1,916 円665 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,607 円558 億円 | 259 円90 億円 | +10.2% | +1.0% | 504 円175 億円 |
| 悲観 | 13% | 141 円49 億円 | 86 円30 億円 | −86.6% | −18.2% | 30 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,543 円1,578 億円 | 435 円151 億円 | +193.9% | +11.4% | 4,979 円1,729 億円 |
今の株価時価総額 1,694 円588 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:時短の宅配と給食の収益改善がそろい、規模と利益率の両方が伸びる 10 年 利益 175 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 10,799 円3,751 億円
Oisix の会員は 45 万人まで増え、時短商品の浸透で 1 人あたりの購入額は物価を上回って上がる。配送の効率が上がり、営業利益率は 14% に届く。大地とらでぃっしゅぼーやの縮小は止まらないが、Oisix に会員を移すことで、グループ全体の宅配は守られる。
給食は契約施設が 3,900 件に増える。高齢者施設・学校の委託化が進み、完全調理品が調理の人手を減らす。利益率は 7.5% まで上がる。ロールアップ型の M&A で小さな給食会社を買い、仕入れと調理の標準化で利益を引き上げる。
社会サービスも自治体の委託の増加で伸び、売上は 4,200 億円台に乗る。純利益は 170 億円台になり、収益の質が上がった分、倍率も高く評価される。
- Oisix(食材宅配):数量 45.0(購入者数(万人))× 価格 21(年間の購入額(万円/人。月の ARPU×12))→ 売上 1,079 億円・営業利益 151 億円。会員 45 万人×購入額 20.7 万円。時短商品で単価が物価超
- その他の B2C(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや ほか):数量 11.5(購入世帯数(万世帯・推定))× 価格 38(年間の購入額(万円/世帯))→ 売上 439 億円・営業利益 35 億円。世帯 11.5 万×物価並み。縮小は小さい
- B2B サブスク(給食の受託):数量 3,900(契約施設数(件))× 価格 4,554(1 施設あたりの年間売上(万円))→ 売上 1,776 億円・営業利益 133 億円。契約 3,900 件×1 件 4,550 万円。元気ごはんと M&A
- 社会サービス・その他事業:数量 700(受託市場(億円・実質)× シェア)× 価格 1.40(受託単価の水準(今 = 1.0))→ 売上 951 億円・営業利益 52 億円。市場横ばいでシェア 3.5%、受託単価は物価超
倍率:事業の純利益 175 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍。全体の PER 20.25 倍、時価総額 3,536 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:給食の収益改善はすでに数字に出ているが、会員が増えない Oisix と薄い利益率の壁があり、楽観は 1 割に届かない 7% に置いた。
やや楽観 20% やや楽観:給食が着実に伸び、Oisix は単価で稼ぐ 10 年 利益 131 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 7,921 円2,751 億円
Oisix の会員は 41 万人まで緩やかに増える。値上げは物価をやや上回り、営業利益率は 13% になる。らでぃっしゅぼーやなどの縮小は、年 1% ほどに収まる。
給食の契約施設は 3,500 件に増える。新規の獲得が解約を上回り、1 件あたりの売上も物価を少し上回って上がる。利益率は 6.5% になり、標準化と調達の見直しが効く。社会サービスは、自治体の委託を少しずつ増やす。
M&A は小さな買収が当たり、売上は 3,800 億円台、純利益は 130 億円ほどになる。配当性向は 20〜30% を保ち、残りは買収と借入の返済に回る。
- Oisix(食材宅配):数量 41.0(購入者数(万人))× 価格 20(年間の購入額(万円/人。月の ARPU×12))→ 売上 962 億円・営業利益 125 億円。会員 41 万人。値上げは物価をやや上回る
- その他の B2C(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや ほか):数量 11.0(購入世帯数(万世帯・推定))× 価格 38(年間の購入額(万円/世帯))→ 売上 420 億円・営業利益 29 億円。世帯 11 万。縮小は緩やか
- B2B サブスク(給食の受託):数量 3,500(契約施設数(件))× 価格 4,457(1 施設あたりの年間売上(万円))→ 売上 1,560 億円・営業利益 101 億円。契約 3,500 件×1 件 4,460 万円
- 社会サービス・その他事業:数量 680(受託市場(億円・実質)× シェア)× 価格 1.37(受託単価の水準(今 = 1.0))→ 売上 904 億円・営業利益 41 億円。シェア 3.4%
倍率:事業の純利益 131 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.47 倍、時価総額 2,556 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が示す方向の素直な実現で、2027 年 3 月期の収益改善の勢いを延ばす筋書き。最も起こりやすい上振れとして 2 割に置いた。
中立 33% 中立:会員は横ばい、給食は施設を積み増し、物価分だけ伸びる 10 年 利益 92 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 5,305 円1,843 億円
Oisix の会員は 36.5 万人と、今とほぼ同じ水準で推移する。購入額は物価並みに上がり、営業利益率は 11.5% と、今よりやや高い。大地とらでぃっしゅぼーやは、会員が 15% ほど減り、営業利益は小さいままだ。
給食は契約施設が 3,150 件に増える。人手不足で委託が進むが、価格の適正化で一部の解約も出る。1 件あたりの売上は物価並みに上がり、利益率は 5.5% まで改善する。社会サービスは、市場の数量が横ばいで、シェアがわずかに上がる。
全社の売上は 3,450 億円、営業利益は 145 億円になる。会社が掲げる 2030 年度の目標は M&A 込みで、素の力では届かない。配当性向 27% を保ち、買収は借入の範囲の小口にとどまる。
- Oisix(食材宅配):数量 36.5(購入者数(万人))× 価格 20(年間の購入額(万円/人。月の ARPU×12))→ 売上 838 億円・営業利益 96 億円。会員 36.5 万人、購入額は物価並み(1.34 倍)
- その他の B2C(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや ほか):数量 10.2(購入世帯数(万世帯・推定))× 価格 38(年間の購入額(万円/世帯))→ 売上 390 億円・営業利益 25 億円。世帯 10.2 万に 15% 減、物価並みの値上げ
- B2B サブスク(給食の受託):数量 3,150(契約施設数(件))× 価格 4,359(1 施設あたりの年間売上(万円))→ 売上 1,373 億円・営業利益 76 億円。契約 3,150 件×1 件 4,360 万円
- 社会サービス・その他事業:数量 660(受託市場(億円・実質)× シェア)× 価格 1.34(受託単価の水準(今 = 1.0))→ 売上 858 億円・営業利益 34 億円。市場横ばい、シェア 3.3%、受託単価は物価並み
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.27 倍、時価総額 1,674 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:Oisix の会員の頭打ちと、給食の収益改善の進みが相殺する落としどころ。強気より慎重な見方が強いので、やや悲観側にも厚く確率を残した。
やや悲観 27% やや悲観:会員が減り、給食の値上げが解約を呼んで利益が伸びない 10 年 利益 42 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,607 円558 億円
Oisix の会員は 33 万人に減る。ネットスーパーと生協の宅配に押され、値上げは物価に届かず、購入額は 30% しか上がらない。営業利益率は 9.5% まで下がる。大地やらでぃっしゅぼーやは会員が 3 割減り、利益が出なくなる。
給食は、契約施設が 2,700 件にとどまる。食材と人件費の上昇に価格が追いつかず、利益率は 3.8% で動かない。社会サービスは、自治体の入札で競争が強まり、利益率が 3% ほどに下がる。
全社の営業利益は 68 億円、純利益は 42 億円と、今の水準にとどまる。ROE は資本コストに届かず、利益は増えるのに価値は増えない 10 年になる。
- Oisix(食材宅配):数量 33.0(購入者数(万人))× 価格 19(年間の購入額(万円/人。月の ARPU×12))→ 売上 735 億円・営業利益 70 億円。会員 33 万人。値上げは物価に届かない
- その他の B2C(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや ほか):数量 8.0(購入世帯数(万世帯・推定))× 価格 37(年間の購入額(万円/世帯))→ 売上 296 億円・営業利益 13 億円。世帯 8 万に 3 割減
- B2B サブスク(給食の受託):数量 2,700(契約施設数(件))× 価格 4,164(1 施設あたりの年間売上(万円))→ 売上 1,124 億円・営業利益 43 億円。契約 2,700 件。転嫁が遅れる
- 社会サービス・その他事業:数量 600(受託市場(億円・実質)× シェア)× 価格 1.30(受託単価の水準(今 = 1.0))→ 売上 757 億円・営業利益 24 億円。シェア 3.0%。入札で値上げ難
倍率:ROE 7.2%。ROE が k 8.0% に届かないので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。稼ぐ力が資本コストを下回る分を見て、約 8.4 割(10.5 倍)に置く。
確率:Oisix の会員の頭打ちが減少に変わり、給食で転嫁が遅れる、慎重な見方がかなり当たる筋書き。薄利の事業で起こりやすいので 27% と厚く置いた。
悲観 13% 悲観:宅配は大手に会員を奪われ、給食は値上げに失敗して利益が消える 10 年 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 141 円49 億円
Oisix の会員は 24 万人まで減る。大手ネットスーパーと生協の宅配が時短商品を強め、購入額の値上げも通らない。営業利益率は 8% に下がる。大地やらでぃっしゅぼーやは事業として成り立たなくなる。
給食は、大口の施設の解約が続く。契約施設は 2,200 件に減り、人件費が下がらない中で利益はほぼ消える。シダックスの買収で生じたのれんと顧客関連資産は、減損でかなりを失う。
全社の営業利益は 9 億円、純利益は 4 億円にとどまり、本社費が重荷になる。自己資本は減損で 160 億円まで減る。稼ぐ力はほぼゼロで、価値は持っている資産の売却額まで下がる。
- Oisix(食材宅配):数量 24.0(購入者数(万人))× 価格 18(年間の購入額(万円/人。月の ARPU×12))→ 売上 493 億円・営業利益 39 億円。会員 24 万人まで流出、購入額の値上げも通らない
- その他の B2C(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや ほか):数量 5.0(購入世帯数(万世帯・推定))× 価格 33(年間の購入額(万円/世帯))→ 売上 164 億円・営業利益 2 億円。世帯 5 万。事業の採算が崩れる
- B2B サブスク(給食の受託):数量 2,200(契約施設数(件))× 価格 3,741(1 施設あたりの年間売上(万円))→ 売上 823 億円・営業利益 21 億円。契約 2,200 件に減る。大口の解約
- 社会サービス・その他事業:数量 560(受託市場(億円・実質)× シェア)× 価格 1.15(受託単価の水準(今 = 1.0))→ 売上 625 億円・営業利益 16 億円。シェア 2.8%。採算が悪化
倍率:稼ぐ力は純利益 4 億円で、k 8.0% で割っても 50 億円。持っている資産の売却額も同じ水準になる。今の自己資本 273 億円に PBR 0.18 を掛けた 49 億円を価値とする。
確率:会員の流出と給食の転嫁の失敗が同時に起きる構造的な負け。自己資本比率 25% の薄い財務で、起これば利益が消える。13% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Oisix(食材宅配)
食材・ミールキットを定期宅配する中核事業。購入者数×1 人あたりの月額で稼ぐ。
| 数量購入者数(万人) | 価格年間の購入額(万円/人。月の ARPU×12) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.1 | 15 | 601 | 64 |
| 10 年後 中立 | 36.5 | 20 | 838 | 96 |
取り方:会員 35.1 万人(26/3 末)と月 ARPU 12.3 千円の年換算 14.76 万円から出る 518 億円に、非会員の購入・食品販売を乗せる係数 1.16 を掛け、売上 601 億円に合わせた。営業利益はセグメント EBITDA 83.6 億円から、のれん・減価償却の配賦分(推定 20 億円)を引いた。
その他の B2C(大地を守る会・らでぃっしゅぼーや ほか)
有機・特別栽培の食材を会員に届ける宅配ブランド群。会員は微減が続く。
| 数量購入世帯数(万世帯・推定) | 価格年間の購入額(万円/世帯) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 29 | 342 | 21 |
| 10 年後 中立 | 10.2 | 38 | 390 | 25 |
取り方:開示は売上 342 億円とセグメント EBITDA 29.2 億円だけ。会員数の開示が薄いので、購入世帯を 12 万と推定し、年間 28.5 万円で売上に合わせた(推定)。営業利益は EBITDA から配賦の償却 8 億円を引いた。
B2B サブスク(給食の受託)
高齢者施設・工場や病院・学校の給食を丸ごと受託する。契約施設数×1 施設あたりの年間売上で稼ぐ。
| 数量契約施設数(件) | 価格1 施設あたりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,563 | 3,253 | 834 | 27 |
| 10 年後 中立 | 3,150 | 4,359 | 1,373 | 76 |
取り方:26/3 の四半期の契約施設数の平均 2,563 件(ライフケア・コントラクト・学校給食の合計)に、売上 834 億円を割り戻して 1 施設 約 3,250 万円とした。営業利益はセグメント EBITDA 40.6 億円から、シダックス取得由来ののれんなどの配賦分(推定 14 億円)を引いた。
社会サービス・その他事業
公共施設の運営・自治体からの受託など(旧シダックスの社会サービス)と、その他事業。
| 数量受託市場(億円・実質)× シェア | 価格受託単価の水準(今 = 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 640 | 1.00 | 621 | 20 |
| 10 年後 中立 | 660 | 1.34 | 858 | 34 |
取り方:事業ごとの数量が開示されないので、公共施設の運営・自治体受託の市場を 2 兆円(推定)、シェア 3.2% として数量 640 億円相当とし、売上 621 億円との差は係数 0.97 で合わせた(推定)。営業利益は社会サービスとその他事業の EBITDA 計 28.4 億円から、配賦の償却 8 億円を引いた。
リスクと懸念
Oisix の会員が減る
Oisix の会員は 35 万人で 2 年動かず、直近半期は前の半期より 1 万人ほど減った。ネットスーパー・生協・Amazon との競争が強まれば、減少が構造になる。会員が 10% 減ると、Oisix の EBITDA は 8 億円ほど削られる。
給食の値上げが解約を呼ぶ
B2B は食材費と人件費の上昇を価格に転嫁しなければ利益が出ない。2025 年には価格適正化で一部の施設が解約した。契約数と単価の両立は難しく、利益率の改善が止まれば 10 年の利益が大きく下がる。
薄い利益率と固定費
営業利益率は 2.9% と薄い。人件費・配送費・食材費が 1% ずれるだけで、営業利益は 3 割動く。配送拠点や給食の施設は賃借で、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束として残る。2028 年 3 月期からは新リース会計の基準で、貸借対照表の形も変わる。
M&A の失敗と減損
会社は営業キャッシュフローの 70〜80% を M&A に回す方針だ。買収後の統合に失敗すれば、のれんと顧客関連資産(合わせて約 207 億円)の減損が出る。純資産が 291 億円と小さく、減損の影響は大きい。
財務の薄さ
自己資本比率は 25% で、借入金が 249 億円ある。Net Debt/EBITDA は 0.28 倍と低いが、会社の上限は 2.0 倍で、買収の借入が増えると財務は傾きやすい。金利が 3% 台へ上がる世界では、借り換えの負担も増える。
創業者と会社の意思決定
創業者の髙島宏平社長が経営を率いており、大株主でもある。事業の方向は明確な一方、後継や、M&A の判断が一人の見方に寄るリスクがある。TOB の可能性は創業者の意向次第になる。
今後の分かれ目
- Oisix の会員が 38 万人を超えて増え始める
- 会員の頭打ちが終わったことを意味し、やや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- B2B の営業利益率(EBITDA 率)が 2 期続けて 6% を超える
- 給食の収益改善が定着したと見て、やや楽観以上の確率を上げる。
- 契約施設数が 2,400 件を割り込む
- 値上げが解約を呼ぶ形が強まったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大型の M&A を借入で実行する
- のれんと借入が増える。買収先の利益率が高ければ価値が増えるが、失敗した時の傷は深くなる。
- 配当性向 30% を超える株主還元の強化が出る
- M&A 優先の方針が変わったことを示し、資本配分への評価が上がる。
- 創業者が保有株を大きく動かす・TOB の話が出る
- 買われる側になる筋書きで、価格は買収の条件で決まる。事業の価値の評価とは別に見る。
見ておくもの
- Oisix の会員数と月の ARPU(四半期の開示)
- B2B の契約施設数と EBITDA 率
- B2C 全体の EBITDA 率と配送費の動き
- M&A の件数・金額と、のれん・顧客関連資産の残高
- Net Debt/EBITDA と自己資本比率
- 配当性向(20〜30% の方針)と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE から出した正当化 PER の上限に、利益の質(営業利益率 4% ほどで価格転嫁が遅れやすい)を見て 8 割前後を掛けた。今の株価や同業の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力がほぼゼロなので、今の自己資本に PBR 0.18 を掛けた売却額の床にした。中立の純利益は 92 億円で、今の約 2 倍。会社の 2030 年度の目標は M&A 込みで、素の筋書きには入れていない。新リース会計(2028/03 期から貸借対照表に載る)の前の形、つまり家賃を営業費用に入れた形で数字をそろえている。車両運行の売却後(継続事業)の数字を起点にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→20.25 倍・やや楽観 PER 13→19.47 倍・中立 PER 12→18.27 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%。赤字や存続の疑いはなく、上乗せは置かない。