結論
ダスキンは、マットやモップのレンタルで知られる「訪販」と、ミスタードーナツの本部を二本柱とする会社だ。筆者の結論は割高である。事業は堅いが、稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。
稼ぎの中心はミスドで、営業利益の約 6 割をフードグループが生む。値上げが通って利益は伸びたが、1 店ごとの来店客数は減っている。もう一つの柱の訪販は顧客軒数が増えず、売上は微増にとどまる。しかも本社費が重く、連結の営業利益は 10 年間、50〜100 億円のあいだを往復している。
10 年の中立では、物価の分だけ売上は伸びるが、人手不足と客数減で利益率は大きく上がらない。純利益は 110 億円ほど、ROE は 5〜6% にとどまる。資本コストを下回る会社では、ためた利益は、額面の価値に届かない。
手元の現金と保有株の厚みは安心材料だ。ただ配当性向 60% を掲げて還元に回すので、積み上がり続けるわけではない。中立の 10 年後の時価総額は 1,200 億円台で、今の約 2,200 億円に届かない。楽観の筋書きでようやく今の値段に並ぶ。分かれ目は、ミスドの中国展開と、訪販の新しい商品だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ダスキンは「良い事業を、資本を持て余して運営している会社」だ。
事業は分かりやすい。ミスドは加盟店に原材料を売ってロイヤルティを取り、訪販はマットやモップを貸して定期の収入を得る。どちらも店舗や機械に大きな資金を要さず、本来は資本効率の高い形のはずだ。ところが ROE は 4〜6% で、筆者はここに違和感を持つ。現金・保有株・本社などの資産が、利益を生まないまま自己資本を厚くしている。
持ち続けたいかと問われれば、事業は今後も続くが、今より強くなるとは言いにくい。顧客軒数が減り、担い手の加盟店は人手不足に悩む。堀は狭くなる方向に傾く。
資本配分では、配当性向 60% と政策保有株の縮減は前進だ。ただ自社株買いは行わず、現金を使い切る意思は弱い。
安全域は薄い。手元の現金と保有株が下値を支えるが、利益で測った価値は今の時価総額を大きく下回る。良い会社でも、払う値段が高ければ報われない。
何で稼ぐ会社か
ダスキンの事業は大きく三つに分かれる。
訪販グループ(売上の約 57%)は、家庭と事業所にマットやモップなどを貸し出し、定期的に交換する。クリーンサービスと呼ぶ主力だ。ほかに、エアコンやキッチンを掃除するケアサービス、介護・健康機器のレンタルがある。お客と接するのは全国の加盟店で、ダスキンは商品を加盟店に卸してロイヤルティを受け取る。仕事の担い手が加盟店の人であることは、この事業の強みでもあり、弱みでもある。
フードグループ(売上の約 35%)はミスタードーナツの本部だ。国内に約 1,000 店あり、ほとんどが加盟店である。ダスキンの売上は、加盟店への原材料の販売とロイヤルティで成り立つ。2024 年 7 月と 2025 年 3 月の値上げで客単価が上がり、営業利益は 100 億円を超えた。一方、1 店当たりの来店客数は減っている。
その他事業は、海外と小さな事業の寄せ集めだ。台湾向けのマット輸出や、海外のミスドの契約がここに入る。
3 つの営業利益を足すと 160 億円ほどだが、連結の営業利益は 90 億円に届かない。差額は本社費と調整で、全社で約 75 億円かかる。ダスキンの利益は、この大きな本社費を事業が背負う形になっている。
優良さと弱いところ
堀はある。ただし鉄壁ではない。
いちばんの強みは、全国に張った加盟店の網と、お客との長い契約だ。マットやモップは一度入れると替わりにくく、定期の収入になる。ミスタードーナツは国内のドーナツ専門店で圧倒的で、店数は 2 位のクリスピー・クリーム・ドーナツの十数倍ある。ブランドの知名度が値上げを支えた。
弱いのは成長力である。訪販の顧客軒数は増えず、クリーンサービスは家庭向け・事業所向けとも減収だった。値上げで売上を保っているが、人口が減る国内で、顧客の数は伸ばしにくい。ミスドも来店客数が落ちる中で、単価で稼いでいる。コンビニやカフェのドーナツとの競争が続く。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 4% と、資本コストに遠く及ばない。自己資本比率は 75% あり、現金も保有株も厚いが、その厚みが収益にならないまま積まれている。筆者がいちばん気にしているのは、経営が資本を持て余している点だ。配当性向 60% を打ち出し、政策保有株を減らし始めたのは、変化の兆しと言える。
本社費の重さも弱みだ。事業が稼いだ利益の半分近くが、本社と調整で消えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の生活関連サービスは、人口が減る中で需要が増えない成熟市場だ。ただし人手不足が、外部委託と値上げを後押しする面もある。
清掃・衛生の分野では、事業所の人手不足から外部に任せる動きが広がる。マットやモップのレンタルは、手間を省く道具として需要が残る。大阪・関西万博の清掃・衛生管理を受けたことも、実績になった。一方、国内の家庭は減り、家庭向けの顧客は縮む。サニクリーンなど同業との値引き競争も続く。
ドーナツは、ミスドが国内の専門店市場の半分ほどを握る。店数は 2013 年 3 月期の約 1,400 店から 2021 年 3 月期の 961 店へ減り、その後 1,000 店強まで戻した。値上げが通ったことで客単価は上がったが、来店客数は戻っていない。コンビニのドーナツやカフェが、手軽さで客を奪う。
10 年後も、国内の人口は減り続け、最低賃金は物価並みに上がる。人を使う事業の訪販は、人件費を価格に載せ続けられるかが課題になる。海外では、中国のミスドがマスターフランチャイズ契約で 2027 年 3 月期中に 1 号店を出す。投資を抑えて収入を取る形だが、規模が利益を動かすのは先の話だ。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向にある。中期経営方針 2028 では、配当性向 60% か、自己資本に対する配当率(DOE)の高い方を配当にする。2026 年 3 月期は増配で、2027 年 3 月期も増配を見込む。一方、自社株買いは 2026 年 3 月期には行っていない。
政策保有株は縮める方針で、売却益が純利益を押し上げる年がある。2027 年 3 月期の純利益予想にも売却益が入る。本業の稼ぎと、一回限りの益は分けて見る必要がある。
提携では、2025 年 7 月に宅配食のナッシュと資本業務提携を結んだ。加盟店の訪問網で相手の商品を売り、ダスキンの顧客に新しい商品を届ける狙いだ。ほかに、ナック(9788)の発行済み株式の約 28% を持つ筆頭株主でもある。大型の買収で事業を広げた実績はなく、成長は自前の出店と小さな提携に頼ってきた。
株主は信託口の機関投資家と取引先、従業員持株会に分かれ、特定の支配株主はいない。ただ、事業の核が全国の加盟店との関係にあり、買収で買い手が得る価値は小さい。TOB の対象になる可能性は低いと見る。
株主優待は、100株以上で1,000〜1.5千円分、300株以上で4,000〜5千円分の優待券。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約3万人(券の利用率8割×原価率約5割)から年2億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミスドは値上げを重ねても売上を伸ばせるブランド力を持つ。2024 年 7 月と 2025 年 3 月の値上げで客単価が上がり、フードグループの営業利益は前期比 17% 増の 100 億円に達した。国内のドーナツ専門店では圧倒的で、2 位のクリスピー・クリーム・ドーナツとは店数が 1 桁違う。中国ではマスターフランチャイズ契約を結び、2027 年 3 月期中に 1 号店を出す。投資を抑えてロイヤルティを積む形は、資本効率の改善に合う。
訪販は景気に左右されにくい定期収入の事業だ。大阪・関西万博の清掃・衛生管理を受けた実績が示すように、人手不足で外部委託を探す企業は増える。レスキューサービスは加盟 23 店で売上が前期比 35% 増え、防災サポートは 104 の自治体と契約した。ナッシュとの資本業務提携は、宅配食という新しい商品を加盟店の訪問網に乗せる試みで、顧客軒数を増やす糸口になる。
財務は自己資本比率 75% で、純現金を持つ。配当性向 60% か DOE の高い方という方針で、還元を厚くする姿勢は明確になった。中期経営方針 2028 は売上 2,078 億円、純利益 106 億円、ROE 7% 以上を掲げる。達成できれば、資本効率は改善に向かう。
慎重な見方
訪販は売上の過半を占めながら、顧客軒数が増えない。2026 年 3 月期もクリーンサービスは家庭向け・事業所向けとも減収で、利益はモップクリーナーの原価先行で 8 億円削られた。担い手は加盟店で、人手不足と高齢化が進めば、需要があってもサービスを届けられない。
ミスドは値上げで客単価を上げたが、来店客数は減った。店数は 2013 年 3 月期の約 1,400 店から 2021 年に 961 店へ減り、1,000 店強まで戻したに過ぎない。コンビニのドーナツやカフェとの競争が続くなかで、値上げをもう一巡させる余地は限られる。
連結の営業利益は 10 年間、50〜100 億円のあいだを往復している。3 つの事業の利益は 160 億円あるのに、本社費と調整が 75 億円を食う。2027 年 3 月期の純利益予想 98 億円には、政策保有株の売却益が含まれ、本業の伸びではない。ROE は過去 10 年の中央値で 4% だ。厚い現金と保有株を持ちながら、収益に変えられていない。
中国進出やナッシュ提携は新規事業で、成果が見えるまで時間がかかる。成功しても、全社の利益を動かす規模になるのは遠い先だ。
どちらに重みを置いたか
事業の安定と財務の堅さでは、強気の見方に分がある。しかし価値を決めるのは、稼ぐ力と資本コストの差で、ここでは慎重な見方が強い。訪販の顧客軒数は伸びず、ミスドは客数が減り、ROE は資本コストに届かない。そこで確率は中立に厚く置いたうえで、悲観側を楽観側より厚くした。強気の材料である海外と新サービスは、成功しても利益全体を押し上げる力が小さく、楽観の確率は 8% にとどめた。中立の 10 年後は、時価総額が今の半分強にとどまる。楽観の筋書きでようやく今の値段に並ぶ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,267 円1,539 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,361 円641 億円)。 今の値に割り戻すと 2,486 円1,171 億円、今との差 −48.3%、 期待の年率 −0.4%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,454 円2,569 億円 | 1,720 円810 億円 | +49.3% | +4.1% | 574 円270 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,327 円2,038 億円 | 1,571 円740 億円 | +22.8% | +2.1% | 1,180 円556 億円 |
| 中立 | 38% | 3,642 円1,715 億円 | 1,391 円655 億円 | +4.8% | +0.5% | 1,913 円901 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,017 円950 億円 | 1,221 円575 億円 | −32.6% | −3.9% | 712 円335 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,145 円539 億円 | 934 円440 億円 | −56.7% | −8.0% | 250 円118 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,267 円1,539 億円 | 1,361 円641 億円 | −3.7% | −0.4% | 4,628 円2,180 億円 |
今の株価時価総額 4,804 円2,262 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 中国のミスドと訪販の新サービスが当たり、顧客の減少が止まる 10 年 利益 169 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 5,454 円2,569 億円
中国のミスドがマスターフランチャイズ契約で広がり、ロイヤルティ収入が国内の客数減を補う。国内でも店は 1,100 店まで増え、値上げがさらに通る。訪販ではナッシュとの提携で宅配食などの新商品を加盟店の顧客に売り込み、顧客軒数が増える。レスキューサービスや自治体向けの防災サポートも広がり、人手不足で外部委託が増える流れに乗る。本社費は DX で抑えられ、10 年後の営業利益は今の 2 倍を超える。配当性向 60% の方針は守られ、政策保有株の売却資金は還元に回る。それでも ROE は 8% にとどまり、資本コストをわずかに上回る程度だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 訪販グループ(クリーンサービス・ケアサービス・レンタル):数量 125(顧客軒数(万軒、換算値))× 価格 13(1 軒当たり年間売上(万円))→ 売上 1,680 億円・営業利益 109 億円。顧客軒数 125 万軒×1 軒 13.4 万円。新サービスで軒数が増える
- フードグループ(ミスタードーナツ):数量 1,100(国内の店数(店、推定))× 価格 0.93(1 店当たりの連結売上(億円))→ 売上 1,023 億円・営業利益 164 億円。国内 1,100 店×1 店 0.93 億円。値上げが通り客数減も止まる
- その他事業(海外・小さな事業):数量 2,000(事業の拠点数(換算値、推定))× 価格 0.15(1 拠点当たり売上(億円))→ 売上 300 億円・営業利益 21 億円。海外のロイヤルティ等が育ち 2,000 拠点相当
倍率:事業の純利益 167 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 13.55 倍、時価総額 2,412 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の展開、訪販の新サービス、加盟店の人手確保の 3 つがそろって成功する必要がある。どれも前例が乏しく、実現すれば強いが確率は低く置いた。
やや楽観 20% 値上げは通り、顧客の減少は止まる 10 年 利益 136 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,327 円2,038 億円
ミスドは来店客数の減少が緩やかになり、1 店当たり売上が物価を上回って伸びる。店は 1,070 店まで増える。訪販ではクリーンサービスの顧客軒数が横ばいを保ち、ケアサービスとレンタルが伸びる。原価先行で利益を削ったモップクリーナーの負担も一巡する。人件費の上昇は価格に転嫁できる。中国にも 1 号店が開き、小さな利益が積み上がるが、まだ主役ではない。本社費は物価並みに増える。経営計画が掲げる ROE 7% 以上には届かないが、利益は物価をわずかに上回って伸びる。配当性向 60% の方針は守られ、政策保有株の売却は進むが、現金の積み上がりを使い切るところまでは行かない。ブランドの強さが、ほかの堀の弱さを覆う形で 10 年が過ぎる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 訪販グループ(クリーンサービス・ケアサービス・レンタル):数量 120(顧客軒数(万軒、換算値))× 価格 13(1 軒当たり年間売上(万円))→ 売上 1,535 億円・営業利益 95 億円。顧客軒数 120 万軒を維持×1 軒 12.8 万円
- フードグループ(ミスタードーナツ):数量 1,070(国内の店数(店、推定))× 価格 0.89(1 店当たりの連結売上(億円))→ 売上 952 億円・営業利益 143 億円。国内 1,070 店×1 店 0.89 億円
- その他事業(海外・小さな事業):数量 1,850(事業の拠点数(換算値、推定))× 価格 0.14(1 拠点当たり売上(億円))→ 売上 263 億円・営業利益 14 億円。海外の小さな利益が積み上がる
倍率:事業の純利益 134 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,877 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ミスドの値上げと訪販のケア・レンタルの伸びで利益は物価並みを少し上回る。ただし客数減と人手不足は残るので、中立よりやや軽く置いた。
中立 38% 物価並みに売上は伸びるが、客数減と人件費で利益は横ばい圏の 10 年 利益 111 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,642 円1,715 億円
国内の人口が減り、訪販の顧客軒数は 10 年で 2〜3% 細る。クリーンサービスは値上げで売上を保つが、加盟店の人手確保に費用がかかり、利益率は上がらない。ミスドは店数をほぼ保つが、1 店当たりの来店客数は減り、単価の上昇がそれを吸収する程度にとどまる。海外は中国と東南アジアで少しずつ店が増え、ロイヤルティが入るが、全体の利益を押し上げるほどではない。本社費は DX と修繕で物価を上回って増える。配当性向 60% は守られ、自己資本はゆっくり積み上がる。ROE は 5〜6% で、堅いが稼ぐ力が資本コストに届かない会社のまま 10 年が過ぎる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×1.0=20億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 訪販グループ(クリーンサービス・ケアサービス・レンタル):数量 117(顧客軒数(万軒、換算値))× 価格 12(1 軒当たり年間売上(万円))→ 売上 1,453 億円・営業利益 84 億円。顧客軒数 120 万軒から 117 万軒へ微減×1 軒 12.4 万円(物価並み)
- フードグループ(ミスタードーナツ):数量 1,040(国内の店数(店、推定))× 価格 0.86(1 店当たりの連結売上(億円))→ 売上 894 億円・営業利益 125 億円。国内 1,040 店×1 店 0.86 億円。値上げは客数減で一部相殺
- その他事業(海外・小さな事業):数量 1,760(事業の拠点数(換算値、推定))× 価格 0.13(1 拠点当たり売上(億円))→ 売上 235 億円・営業利益 11 億円。海外が緩やかに増える
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,555 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:訪販の顧客軒数は減り、ミスドの単価上昇が客数減を吸収する程度、という今の流れが続く最も自然な筋書き。強気と慎重のどちらも決め手がなく、最も厚く置いた。
やや悲観 22% 客数減が値上げを上回り、利益が削られる 10 年 利益 71 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,017 円950 億円
ミスドの値上げが限界に近づき、来店客数の減少が速まる。コンビニやカフェのドーナツとの競争で、店は 1,000 店に落ちる。訪販では事業所の取引先が経費削減で減り、家庭向けは人口減で縮む。加盟店の廃業と高齢化も重なり、顧客軒数は 1 割ほど減る。物価の分は価格に載せきれず、利益率が下がる。本社費は固定的なので、営業利益は今の 8 割ほどに落ちる。海外は黒字化が遅れ、中国への投資が重荷になる。配当性向 60% と DOE の下限が利益を超える配当を迫り、自己資本は痩せていく。ブランドと現金の厚みは残るので、事業が行き詰まるわけではない。ただ、国内の顧客を守る力が細ったまま、人件費と原価の上昇だけが重くのしかかる 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×0.8=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 訪販グループ(クリーンサービス・ケアサービス・レンタル):数量 105(顧客軒数(万軒、換算値))× 価格 12(1 軒当たり年間売上(万円))→ 売上 1,260 億円・営業利益 63 億円。顧客軒数 105 万軒×1 軒 12.0 万円。値上げが物価に届かない
- フードグループ(ミスタードーナツ):数量 1,000(国内の店数(店、推定))× 価格 0.78(1 店当たりの連結売上(億円))→ 売上 780 億円・営業利益 94 億円。国内 1,000 店×1 店 0.78 億円。客数減が単価上昇を上回る
- その他事業(海外・小さな事業):数量 1,650(事業の拠点数(換算値、推定))× 価格 0.12(1 拠点当たり売上(億円))→ 売上 195 億円・営業利益 6 億円。海外の黒字化が遅れる
倍率:ROE 3.9% は k 7.75% 以下で、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。顧客数と来店客数が縮み、新しく投じるお金が稼がない筋書きなので、上限より大きく下の 9.0 倍に置いた。余った現金は今の 0.75 倍(約 112 億円)で数える。
確率:ミスドの値上げは限界に近く、訪販の顧客も増えていない。加盟店の人手不足も重なれば、利益の後退は十分ありうる。強気の材料が弱いので悲観側をやや厚くした。
悲観 12% 加盟店網が崩れ、客離れと重なって事業が縮む 10 年 利益 34 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,145 円539 億円
訪販の加盟店が人手不足で次々と撤退し、顧客軒数は 4 分の 3 まで減る。マットのレンタルは低価格の競合に取られ、値上げもできない。ミスドは客数の減少に歯止めがかからず、不採算店の閉鎖が続いて店は 900 店台まで減る。単価は物価の分すら上がらない。海外の投資は回収できず、その他事業は赤字になる。本社費を絞っても追いつかず、営業利益は 30 億円台まで落ちる。配当は減らされ、ブランドは残るが、もう優良な会社ではなくなる。手元の現金と保有株が、価値の下支えになる。中国など海外の投資も回収の見通しが立たず、新サービスの提携も実を結ばない。顧客と加盟店の双方が離れる負の連鎖で、会社は縮小均衡に向かう。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年2億円×10年×0.5=10億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 訪販グループ(クリーンサービス・ケアサービス・レンタル):数量 92.0(顧客軒数(万軒、換算値))× 価格 12(1 軒当たり年間売上(万円))→ 売上 1,086 億円・営業利益 43 億円。顧客軒数 92 万軒×1 軒 11.8 万円。加盟店の撤退で軒数が減る
- フードグループ(ミスタードーナツ):数量 920(国内の店数(店、推定))× 価格 0.72(1 店当たりの連結売上(億円))→ 売上 662 億円・営業利益 53 億円。国内 920 店×1 店 0.72 億円。客数減で単価も伸びない
- その他事業(海外・小さな事業):数量 1,500(事業の拠点数(換算値、推定))× 価格 0.11(1 拠点当たり売上(億円))→ 売上 162 億円・営業利益 0 億円。海外が赤字で利益ゼロ
倍率:ROE 1.9% は k 7.75% 以下で、PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。稼ぐ力は純利益 34 億円で、収益が縮み続ける筋書きなので 8.5 倍に置き、余った現金は今の 0.5 倍(75 億円)で足した。床は純現金と持分の売却で見る。
確率:人手不足で加盟店が撤退し、ミスドも客数減に歯止めがかからない構造的な負け。起こる可能性は高くないが、起これば利益の大半が消える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
訪販グループ(クリーンサービス・ケアサービス・レンタル)
家庭と事業所にマットやモップなどを貸し出して定期に交換するクリーンサービスと、掃除の役務を売るケアサービス、介護・健康機器のレンタル。担い手は加盟店。
| 数量顧客軒数(万軒、換算値) | 価格1 軒当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 9.27 | 1,112 | 56 |
| 10 年後 中立 | 117 | 12 | 1,453 | 84 |
取り方:顧客軒数は開示が見当たらないため、売上 1,112 億円を 120 万軒で割った換算値(推定)。商品を加盟店へ卸す売上を含む。数量は人口減で 10 年 0.95〜0.98 倍、価格は物価並みの 1.34 倍が中立。
フードグループ(ミスタードーナツ)
ミスタードーナツの本部。加盟店への原材料の販売とロイヤルティ、直営店の売上。
| 数量国内の店数(店、推定) | 価格1 店当たりの連結売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,040 | 0.66 | 689 | 100 |
| 10 年後 中立 | 1,040 | 0.86 | 894 | 125 |
取り方:国内は約 1,000 店で 2024 年 3 月期に 1,017 店。1,040 店と置き、売上 689 億円で割った 1 店当たり売上(推定)。来店客数は減り、単価の上昇で補っているため、中立の価格は物価の 1.34 倍に届かない 1.30 倍に置いた。
その他事業(海外・小さな事業)
海外のミスドのフランチャイズ契約、台湾向けマット輸出、その他の小さな事業。
| 数量事業の拠点数(換算値、推定) | 価格1 拠点当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,700 | 0.10 | 170 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,760 | 0.13 | 235 | 11 |
取り方:開示が乏しい寄せ集めのため、売上 170 億円を 1,700 拠点相当で割った換算値(推定)。物価並みの 1.34 倍で上がる。
リスクと懸念
加盟店の人手不足と高齢化
訪販もミスドも、お客と接するのは加盟店だ。人が集まらず廃業や縮小が続けば、需要があっても売上が立たない。加盟店の採算が悪化すれば、本部が支える費用も増える。この事業の最大のもろさだ。
国内の顧客の減少
訪販の顧客軒数は増えておらず、クリーンサービスは家庭向け・事業所向けとも減収だった。人口が減る国内では、新規の獲得が解約を補えなくなる恐れがある。値上げで売上を保つ戦略には限りがある。
ミスドの客数減と値上げの限界
2 回の値上げで客単価は上がったが、1 店当たりの来店客数は減っている。単価と客数が同時に落ちれば、フードグループの利益が崩れる。利益の約 6 割がここに集中している点も弱い。
原価と人件費の上昇
小麦・油・物流・人件費の高騰は、加盟店への卸値と本部の費用の両方を押し上げる。2026 年 3 月期にはモップクリーナーの原価の先行計上で、訪販の利益が 8 億円削られた。値上げが追いつくとは限らない。
新規事業と海外の投資回収
中国のミスド、ナッシュとの提携、レスキューサービスはどれも立ち上げの段階だ。成功しても全社の利益を動かす規模になるまで長くかかり、失敗すれば費用だけが残る。
重い本社費と一回限りの益
3 つの事業の利益 160 億円に対し、連結の営業利益は 90 億円に届かない。本社費と調整が約 75 億円かかり、2027 年 3 月期は DX や本社ビルの修繕でさらに増える。純利益には政策保有株の売却益も入り、売るほど将来の配当収入が減る。
資本効率の低さ
自己資本の厚い割に利益が小さく、ROE は資本コストを下回り続けている。現金や保有株を活かす方針が遅れれば、価値は帳簿の厚みより小さいままだ。
今後の分かれ目
- 中国のミスドが 2027 年 3 月期中に開業し、店数が計画どおり増える
- ロイヤルティが積み上がり、10 年の楽観・やや楽観の確率が上がる。
- 訪販の顧客軒数が 3 年続けて増える
- 減少が止まった証拠で、やや楽観の筋書きに近づく。
- ミスドの 1 店当たり来店客数の減少が続き、次の値上げで客数がさらに落ちる
- 値上げの余地が尽きた合図で、やや悲観・悲観の筋書きに近づく。
- 加盟店の廃業が目立って増える
- 訪販とミスドの両方の売上に響き、悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 自社株買いや政策保有株の売却資金の還元が大きく出る
- 資本の使い方が改善し、ROE が上がる方向に働く。
- 本社費が営業利益の伸びを上回って増え続ける
- 事業が稼いだ分が本社で消え、中立の利益率に届かなくなる。
見ておくもの
- ミスドの 1 店当たり来店客数と、2 回の値上げ後の既存店売上
- 訪販のクリーンサービスの顧客軒数(家庭向け・事業所向け)
- 加盟店の数と廃業の動き
- 中国のミスド 1 号店の開業と、その後の出店ペース
- 本社費・調整額の推移と、純利益に占める売却益の大きさ
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量(顧客軒数・店数。開示が乏しいので換算値)と価格(物価の 1.34 倍が基本)で 10 年を積み、本社費を引いて営業利益を出した。ROE は自己資本を今の値+利益の合計−配当の合計で流して結果として出し、資本コスト 7.75%・g 4% から利益ベースの正当化 PER を置いた。ROE が資本コスト以下なので上限は 1÷k の 13.3 倍で、中立から楽観は式の約 9 割、やや悲観・悲観は稼ぐ力の縮み方から低く置いた。今の株価・PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。訪販もミスドも加盟店が担い直営は少ないので、リースの約束は大きくないが解約不能リース料は未確認。新リース会計(2028/03 期)で営業利益と負債の形が変わる点は、今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→13.55 倍・やや楽観 PER 11.1→12.9 倍・中立 PER 10→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。