結論
GENDA はゲームセンター「GiGO」を軸に、小さな同業を次々に買って大きくなった会社だ。創業 8 年で買収は 60 件を超え、売上は 4 年で 4 倍以上になった。筆者の見立ては、今の時価総額は 10 年先の稼ぐ力に対してやや高い、というものだ。成長を買収と借金で買ってきたことが、その理由である。
稼ぎの源は店と置き場所だ。国内に GiGO が 600 店あまり、これにカラオケとフォトスタジオが加わる。北米では約 1 万カ所に小型の設置機を置く。日本のアニメの景品を揃えることが、客を呼ぶ武器になっている。
ただし、見かけの売上ほど利益は厚くない。2026 年 1 月期の売上は 1,708 億円だが、営業利益は 77 億円にとどまる。買収の費用とのれん(買収で払った上乗せ分)の償却が重いためだ。有利子負債は約 1,100 億円あり、のれんは純資産の 8 割に迫る。
10 年後の中立は、のれんの償却が終わり、北米が立ち直り、純利益が 200 億円近くになる姿である。それでも妥当な倍率は 11 倍ほどで、価値は今の値段をやや下回る。強気の筋書きが実現すれば価値は倍近くになる。買収が資本コストを稼げなければ、半分以下に落ちる。
分かれ目は二つある。北米の景品補充という地味な運営を直せるか。買収を続けても借金が減っていくか。この二つで価値は大きく動く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、利益より先に、お金の使い道の質を見る。GENDA は成長を買っている会社で、買収が資本コストを超えて稼ぐかどうかが、価値のほぼすべてを決める。
良い点ははっきりある。買収の倍率は安く、国内の既存店は伸びている。景品と店づくりを一体で運営できる。公募増資の凍結と借金の削減へ舵を切ったことも、評価できる。
悪い点は、見せている利益に会計の飾りが多いことだ。会社が示す調整後の利益は、のれんの償却と買収の費用を除く。この二つは現金の支出ではないが、買収そのものは現金で買っている。償却を足し戻して喜ぶのは、設備投資を忘れて利益を語るのに近い。
10 年後も持ち続けたい会社か。国内の店網は残る。ただ堀が浅く、IP と景品の仕入れ値に左右され、家賃という固定の約束も重い。筆者は、堀の確かな会社ほど高い倍率に値すると考える。この会社の倍率の上限は 11 倍前後にとどまる。
安全域は薄い。借金の重い会社は、悪い年の傷が深い。北米の立て直しと借金の減少が確かめられるまで、安全域は薄いままだ。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。国内の店舗、北米の設置機、そして景品などのコンテンツだ。
国内の中心は、セガ エンタテインメントを母体とする「GiGO」である。2026 年 1 月期末で 600 店あまりを運営する。主役はクレーンゲームで、景品の仕入れと店づくりを自前で持つのが強みだ。カラオケ「BanBan」は 100 店あまりで、アプリ会員は 250 万人に達した。フォトスタジオも運営する。ゲームセンター関連が売上と EBITDA(営業利益に償却費などを足し戻した、現金の稼ぎに近い指標)の約 7 割を占める。
ミニロケも欠かせない。ミニロケとは、30 台以下の小型の遊技機をスーパーや商業施設の一角に置く形で、国内外で約 1 万 3 千カ所ある。店を建てず置き場所を借りるだけなので、投資は軽い。
北米は 2025 年に買った Player One(約 100 店)と NEN(約 1 万カ所の設置機)が柱だ。日本のアニメの景品を米国の店頭へ持ち込む事業である。日本 IP の景品の仕入れ比率は、2022 年の 0 から 2026 年に 54% まで上がった。
コンテンツは景品・キャラクター商品と映画で、売上の約 8% を占める。自前の店網に景品を流せるので、店と景品が一体で回る。
会社は中期経営計画を出していない。買収を織り込んだ数値目標が、無理な買収を招くという考えからだ。代わりに長期ビジョンとして「2040 年に世界一のエンタメ企業」を掲げている。
優良さと弱いところ
堀は深くない。ゲームセンターは参入が易しく、国内ではタイトー、バンダイナムコ、ラウンドワンなどと競う。ただ GENDA には、他社にない道具が三つある。
一つは仕入れの規模だ。国内外で 1 万を超える置き場に景品を一括で流せば、原価が下がる。二つ目は買収の手際である。小さな同業を安い倍率で買い、景品と店づくりの仕組みを横に広げる。北米の NEN は EBITDA の 3.6 倍、Player One は 8.5 倍で買った。三つ目は国内の既存店で、売上が前年を上回り続けている。
一方で弱点も多い。資本の効率が急に落ちた。会社が使う指標の ROIC(投じた資本に対する利益率)は、2024 年 1 月期の 24% から 8% に下がった。有利子負債は EBITDA の 5 倍近くあり、のれんは純資産の 8 割に迫る。買収の目利きが外れれば、減損で自己資本が削られる。
景品は他社の IP(キャラクターの権利)に頼る。人気の移り変わりと仕入れ値の上昇は、利益率を直撃する。店舗の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。
経営の面では、買収を主導した申真衣氏が 2025 年に社長を退き、2026 年 4 月には取締役からも退いた。社長は共同創業者の片岡尚氏が務める。人が替わった影響は、まだ数字に出ていない。
堀の広さより、資本の使い方が評価の中心になる会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のゲームセンター市場は、一度は縮んだあと、クレーンゲームを足場に息を吹き返した。業界団体の集計では、施設の運営売上は 2024 年 3 月期で 5,400 億円ほどだった。クレーンゲームだけで 2024 年度に 3,900 億円、前年から 18% 伸びた。
伸びの理由は、少ない元手で景品を取れる機械が増えたことと、アニメなどの景品が客を呼んだことだ。カプセルトイの市場も 2025 年度に 2,000 億円近くまで膨らんだ。
とはいえ、これは流行の山である可能性が強い。クレーンは 1 回数百円の少額消費で、景気にも左右される。10 年後の国内の客数は、人口が減る分だけ細ると見るのが自然だ。景品の原価が上がれば、店の利益は削られる。
競争は分散している。大手が数社あり、その下に数十店規模の中小が多数並ぶ。大手でも寡占には遠い。その中で GENDA は、買収で規模を取りに行く。小さな運営者は後継者がおらず売りに出ることが多く、買い手に有利な市場だ。
北米は 10 年先も伸びる余地がある。日本のアニメの人気が高く、クレーンゲーム自体がまだ珍しいからだ。会社は今、北米の立て直しの最中にある。景品の補充が追いつかず、売上が落ちた店が出た。小売大手への出店拡大など、手は打っている。
会計の面では、2027 年 1 月期の第 4 四半期から IFRS(国際会計基準)に移る。のれんの償却が消え、家賃が償却と利息に変わるため、営業利益と EBITDA が大きく見える。会社の実力が変わるわけではない。
資本政策と M&A
資本政策の中心は買収だ。創業から買収は累計 62 件、2026 年 1 月期だけで 26 件に上る。多くは同業の小さな運営会社を、EBITDA の 3〜9 倍で買う手法だ。
資金は借金と増資で集めてきた。2025 年 5 月には約 200 億円の公募増資を行い、格付けを取って社債も出した。ところが会社は方針を改めた。買収の待機資金を目的とする公募増資を、2029 年 1 月末まで行わない。買収は中核の同業に絞り、北米の買収は当面休む。既存事業で 50 億円のお金を生み、借金を減らす計画だ。
株主還元は始まったばかりである。2026 年 3 月に初めての配当を決め、毎年増やす方針を出した。自社株買いの枠も設けた。ただ利益に対する配当の割合は小さく、成長の資金が優先される。
見るべきは買収の収益性だ。ROIC は 24% から 8% に下がり、資本コストに近づいた。買収を重ねるほど価値が増える構図ではなくなってきた。
買われる側になる可能性は小さい。のれんと借金が重く、時価総額に対して買収の負担が大きいからだ。
株主優待は、100株以上で年4千円相当(ポイント)、500株以上で年2万円相当。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約7万人(割引額×利用率5割×変動費率5割)から年5億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の店網はまだ増やせる。GiGO は 600 店あまりで、地方の中小運営者は後継者難から売りに出る。買収の倍率は EBITDA の 3〜9 倍と安く、買った店に景品の仕入れと運営の仕組みを入れれば、利益は買値を上回って育つ。既存店の売上は前年を上回り続けている。
北米は伸びしろが大きい。日本のアニメの景品は米国で人気が高く、仕入れ比率は 54% まで上がった。景品が足りなかったという失敗の原因は分かっている。補充を適切にした店では、売上の伸びが大きく戻った。小売大手への出店も、来期に 100 店を超える。
のれんの償却は年 50 億円ほどで、10 年のうちにほぼ終わる。償却が消えれば、営業利益は自然に増える。借金も来期から減り始め、成長投資を止めれば年 160 億円ほどのお金が出る。
成長を止めても利益が出る土台は、すでにある。買収が資本コストを超えて稼ぎ続ければ、10 年後の純利益は 300 億円を超える。会社は国内最大のエンタメ運営者になる。
慎重な見方
利益の質が悪い。2026 年 1 月期の売上は 1,708 億円なのに、営業利益は 77 億円しかない。会社が示す調整後の数字は、のれんの償却と買収の費用を除いて、よく見せている。2026 年の中間決算では営業利益が 3 割減り、最終は赤字になった。
資本の効率は落ちた。ROIC は 24% から 8% に下がり、ほぼ資本コストだ。これ以上買収を重ねても、価値は増えにくい。有利子負債は EBITDA の 5 倍近くあり、のれんは純資産の 8 割を占める。北米の買収が計画を下回れば、減損で自己資本が一気に削られる。
北米はすでに不調だ。景品の補充が追いつかず売上が落ち、北米の EBITDA の見通しは 65 億円から 55 億円へ下がった。
国内も安心できない。クレーンゲームの伸びは流行の山にあたる可能性がある。人口は減り、景品の仕入れ値は上がり、店の家賃は固定で残る。
IFRS への移行も目を曇らせる。家賃が利息と償却に移るだけで実力は変わらないのに、EBITDA は 450 億円を超えて見える。そこに目が慣れると、借金の重さを見誤る。
どちらに重みを置いたか
事業の勢いは強気の見方に分がある。しかし値段と確率を決めるのは利益の質で、そこでは慎重な見方が重い。借金とのれんが厚く、投じた資本の利益率は資本コストに近づいている。北米の立て直しという具体的な課題も残る。このため確率は、楽観を 7%、やや楽観を 17%、中立を 36%、やや悲観を 28%、悲観を 12% とし、悲観側に厚く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,116 円2,030 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 187 円340 億円)。 今の値に割り戻すと 569 円1,035 億円、今との差 −13.7%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,032 円5,513 億円 | 379 円690 億円 | +416.9% | +17.9% | 239 円434 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,949 円3,544 億円 | 283 円514 億円 | +238.2% | +13.0% | 379 円690 億円 |
| 中立 | 36% | 1,297 円2,359 億円 | 212 円386 億円 | +128.7% | +8.6% | 543 円988 億円 |
| やや悲観 | 28% | 336 円611 億円 | 109 円198 億円 | −32.6% | −3.9% | 125 円226 億円 |
| 悲観 | 12% | 97 円176 億円 | 47 円85 億円 | −78.3% | −14.2% | 17 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,116 円2,030 億円 | 187 円340 億円 | +97.5% | +7.0% | 1,303 円2,370 億円 |
今の株価時価総額 660 円1,200 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 買収が資本コストを超えて稼ぎ、北米も立ち直る 10 年 利益 403 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,032 円5,513 億円
国内は店舗が 1,750 店まで増え、景品の仕入れと店づくりの仕組みが買った店に効く。1 店あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。北米は景品の補充体制が整い、小売大手への出店が進んで設置拠点は 1 万 7 千カ所に広がる。買収は国内の同業に絞った小さなものが続き、新たな借金は利益の増加で吸収される。のれんの償却が消える一方、買収の費用も落ち着き、営業利益は 600 億円に届く。景品の自社企画が育ち、コンテンツも伸びる。自己資本は 2,300 億円まで積み上がり、ROIC は資本コストを大きく上回る。会社は国内最大のゲームセンター運営者になり、世界へ出ていく足場もできた 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内店舗(ゲームセンター・カラオケ・フォト・ミニロケ):数量 1,750(国内の運営店舗数(店・期末))× 価格 1.74(1 店あたり年間売上(億円、ミニロケ・機器レンタルの売上を店に按分))→ 売上 3,050 億円・営業利益 473 億円。店舗 1,750 店×1 店あたり 1.74 億円、営業利益率 15.5%
- 北米(Player One・NEN などの設置機事業):数量 17.0(北米の設置拠点数(千カ所・期末))× 価格 693(1 拠点あたり年間売上(万円))→ 売上 1,178 億円・営業利益 141 億円。拠点 1.7 万カ所、補充体制が整い利益率 12%
- エンタメ・コンテンツ(景品・キャラクター商品・映画など):数量 38.0(景品・グッズの出荷点数(百万点、推定))× 価格 1.15(1 点あたり売上(千円、推定))→ 売上 436 億円・営業利益 44 億円。点数が倍増、自社企画で利益率 10%
倍率:事業の純利益 403 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.8% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.38 倍、時価総額 5,392 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の買収が安い倍率で続き、北米の運営も直り、のれんの償却も消える。三つが同時にうまくいく必要があり、実現すれば強いが確度は高くない。
やや楽観 17% 国内の買い増しと北米の回復が続く 10 年 利益 271 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,949 円3,544 億円
国内は店舗が 1,500 店まで増え、既存店の売上は物価並みに伸びる。買収は小粒で、借金は 10 年かけて減っていく。北米は景品補充の仕組みを直し、設置拠点は 1 万 4 千カ所になる。利益率は国内ほど上がらないが、赤字は消える。のれんの償却は終わり、営業利益は 400 億円台になる。景品の仕入れ値の上昇は店の値上げで吸収する。自己資本は 1,800 億円ほどに積み上がるが、のれんを含むので資本の効率は伸びきらない。IFRS への移行で見かけの利益は増えるが、実力の変化はない。堅実に伸びる、普通よりやや良い 10 年である。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内店舗(ゲームセンター・カラオケ・フォト・ミニロケ):数量 1,500(国内の運営店舗数(店・期末))× 価格 1.69(1 店あたり年間売上(億円、ミニロケ・機器レンタルの売上を店に按分))→ 売上 2,540 億円・営業利益 356 億円。店舗 1,500 店×1 店あたり 1.69 億円、営業利益率 14%
- 北米(Player One・NEN などの設置機事業):数量 14.0(北米の設置拠点数(千カ所・期末))× 価格 630(1 拠点あたり年間売上(万円))→ 売上 882 億円・営業利益 79 億円。拠点 1.4 万カ所、利益率 9%
- エンタメ・コンテンツ(景品・キャラクター商品・映画など):数量 30.0(景品・グッズの出荷点数(百万点、推定))× 価格 1.10(1 点あたり売上(千円、推定))→ 売上 331 億円・営業利益 30 億円。点数 3,000 万点、利益率 9%
倍率:事業の純利益 271 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.4% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.78 倍、時価総額 3,463 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の既存店と買収が堅調で、北米も時間をかけて直る。会社の予想に近い筋書きだが、のれんと借金の重さが残るので強気には寄せすぎない。
中立 36% のれんの償却が終わり、北米が普通の利益を出す 10 年 利益 191 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 1,297 円2,359 億円
国内は店舗が 1,350 店まで増え、1 店あたりの売上は物価並みに上がる。クレーンゲームの伸びは落ち着くが、景品の企画と仕入れの力で既存店は崩れない。北米は景品の補充という地味な運営を直し、設置拠点は 1 万 2 千カ所に増える。利益率は 7% ほどで、買収時の期待ほどは育たない。買収は小粒で、投じた資本は資本コストをわずかに上回る程度の稼ぎになる。のれんの償却と買収の費用が消え、営業利益は 300 億円ほどに育つ。借金は返済が進み、金利負担も軽くなる。ただし配当は利益の 3 割弱にとどまり、成長への再投資が続く。事業の質は凡庸だが、崩れない 10 年である。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内店舗(ゲームセンター・カラオケ・フォト・ミニロケ):数量 1,350(国内の運営店舗数(店・期末))× 価格 1.66(1 店あたり年間売上(億円、ミニロケ・機器レンタルの売上を店に按分))→ 売上 2,241 億円・営業利益 280 億円。店舗 1,350 店×1 店あたり 1.66 億円、営業利益率 12.5%
- 北米(Player One・NEN などの設置機事業):数量 12.0(北米の設置拠点数(千カ所・期末))× 価格 598(1 拠点あたり年間売上(万円))→ 売上 718 億円・営業利益 50 億円。拠点 1.2 万カ所、利益率 7%
- エンタメ・コンテンツ(景品・キャラクター商品・映画など):数量 24.0(景品・グッズの出荷点数(百万点、推定))× 価格 1.07(1 点あたり売上(千円、推定))→ 売上 257 億円・営業利益 21 億円。点数 2,400 万点、利益率 8%
倍率:事業の純利益 191 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.03 倍、時価総額 2,298 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の店網は物価並みに伸び、北米は時間をかけて黒字になる。買収は小粒にとどまり、借金は少しずつ減る。強気と慎重のどちらの言い分も一部ずつ当たる最も重い筋書き。
やや悲観 28% クレーンの流行が冷め、買収の稼ぎが資本コストに届かない 10 年 利益 75 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 336 円611 億円
クレーンゲームの伸びが止まり、店の客数は人口減とともに細る。景品の仕入れ値は上がるが、値上げは客離れを恐れて十分にできない。店舗数は 1,200 店までしか増えず、1 店あたりの売上は物価に届かない。北米は景品補充の問題を直しきれず、利益率は 3% に届かない。買収は続けるが、買った店の稼ぎは資本コストに届かず、のれんの一部を減損する。借金は減らず、金利が上がった分が利益を削る。営業利益は 140 億円ほどにとどまる。自己資本は買収の失敗で目減りし、ROE は資本コストを下回る。会社は存続するが、成長で評価される会社ではなくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×0.8=37.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内店舗(ゲームセンター・カラオケ・フォト・ミニロケ):数量 1,200(国内の運営店舗数(店・期末))× 価格 1.54(1 店あたり年間売上(億円、ミニロケ・機器レンタルの売上を店に按分))→ 売上 1,853 億円・営業利益 158 億円。店舗 1,200 店、値上げが物価に届かず利益率 8.5%
- 北米(Player One・NEN などの設置機事業):数量 10.5(北米の設置拠点数(千カ所・期末))× 価格 504(1 拠点あたり年間売上(万円))→ 売上 529 億円・営業利益 13 億円。拠点 1.05 万カ所、利益率 2.5%
- エンタメ・コンテンツ(景品・キャラクター商品・映画など):数量 20.0(景品・グッズの出荷点数(百万点、推定))× 価格 0.97(1 点あたり売上(千円、推定))→ 売上 193 億円・営業利益 11 億円。点数 2,000 万点、利益率 5.5%
倍率:ROE 6.7% は k 9.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 10.8 倍が上限。買収の稼ぎが資本コストに届かず新しく投じるお金が稼がない筋書きなので、上限の約 7 割(8.0 倍)に置いた。
確率:ROIC がすでに 24% から 8% に落ち、北米も不調で、利益の質に疑問がある。クレーンの流行の山が過ぎる可能性もあり、強気の見方より慎重な見方が重いので、確率を厚く置いた。
悲観 12% 買収が行き詰まり、借金とのれんが重荷になる 10 年 利益 27 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 97 円176 億円
クレーンゲームの流行が終わり、景品の仕入れ値は上がり続ける。店は閉鎖が増え、国内の店舗数は 1,000 店に減る。1 店あたりの売上は物価に追いつかず、家賃と人件費だけが重く残る。北米は景品の補充が最後まで直らず、拠点は 8 千カ所まで減り、赤字のまま買収したのれんを減損する。借金の借り換えの金利が上がり、買収はできず、増資で自己資本を補う場面も出る。営業利益は 60 億円ほどまで縮み、純利益は 30 億円に届かない。自己資本は減損で 600 億円を割る。会社は存続するが、稼ぐ力は今の時価総額にはるかに及ばない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×0.5=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内店舗(ゲームセンター・カラオケ・フォト・ミニロケ):数量 1,000(国内の運営店舗数(店・期末))× 価格 1.25(1 店あたり年間売上(億円、ミニロケ・機器レンタルの売上を店に按分))→ 売上 1,245 億円・営業利益 106 億円。店舗 1,000 店、単価が物価に届かず利益率 8.5%
- 北米(Player One・NEN などの設置機事業):数量 8.0(北米の設置拠点数(千カ所・期末))× 価格 378(1 拠点あたり年間売上(万円))→ 売上 302 億円・営業利益 −6 億円。拠点 8 千カ所に減り赤字
- エンタメ・コンテンツ(景品・キャラクター商品・映画など):数量 15.0(景品・グッズの出荷点数(百万点、推定))× 価格 0.86(1 点あたり売上(千円、推定))→ 売上 129 億円・営業利益 4 億円。点数 1,500 万点、利益率 3%
倍率:ROE 4.6% は k 9.5% 以下なので正当化 PER の上限は 1÷k = 10.8 倍。稼ぐ力(純利益 27 億円 ÷ k 9.5% = 約 290 億円)の約 6 割(PER 6.5 倍)に置いた。構造的に負けた姿で利益の振れも大きいので、やや悲観の 8.0 倍より低く置く。店舗設備と景品在庫を売っても借金と家賃の約束を超えて残る額は小さく、床は稼ぐ力で測る。
確率:買収の収益性が資本コストを割り、北米が失敗し、借金の借り換えが苦しくなる構造的な負け。ROIC がすでに急落しており、起こりうる筋書きとして 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内店舗(ゲームセンター・カラオケ・フォト・ミニロケ)
GiGO を中心とする国内のゲームセンター、カラオケ BanBan、フォトスタジオ、小型の設置機(ミニロケ)。
| 数量国内の運営店舗数(店・期末) | 価格1 店あたり年間売上(億円、ミニロケ・機器レンタルの売上を店に按分) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 1,100 | 1.08 | 1,185 | 140 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 1.66 | 2,241 | 280 |
取り方:店舗数×1 店あたり年間売上で置いた。GiGO・BanBan・フォトなどで約 1,100 店(期末)。国内の売上は開示がないため、全体の 1,708 億円から北米と景品事業の推定を引いて約 1,185 億円とし、ミニロケ・機器レンタルの売上も店に按分した(推定)。期末の店数で割るので、年の途中で買った店の分は 1 店あたりに薄く入る。10 年では、通年化の一回きりの上げ(約 15%)に物価 3% の 1.34 倍が乗る。実質の客数は人口減で伸びにくい。
北米(Player One・NEN などの設置機事業)
米国のゲーム機・クレーン機を店や小売の店頭に置く事業。Player One の約 100 店とミニロケ約 1 万カ所。
| 数量北米の設置拠点数(千カ所・期末) | 価格1 拠点あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 10.1 | 376 | 380 | −15 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 598 | 718 | 50 |
取り方:拠点数×1 拠点あたり年間売上で置いた。Player One 約 100 店とミニロケ約 1 万カ所で、拠点は約 1 万 1 百。北米の売上は開示がなく、全体から国内と景品を引いた約 380 億円(買収の途中計上を含む推定)。Player One は 2025 年の買収で年の途中から入るため、10 年では通年化の約 25% の一回きりの上げと、物価の 1.34 倍が乗る。
エンタメ・コンテンツ(景品・キャラクター商品・映画など)
ゲームセンターや小売に流す景品・グッズの企画販売、映画の配給などのコンテンツ事業。
| 数量景品・グッズの出荷点数(百万点、推定) | 価格1 点あたり売上(千円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 17.9 | 0.80 | 143 | 12 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 1.07 | 257 | 21 |
取り方:景品・キャラクター商品・映画の売上は、会社の説明で全体の 8.4% にあたる約 143 億円。点数と 1 点あたり売上は開示がないので、出荷約 1,790 万点×1 点あたり約 0.8 千円と置いた(推定)。点数は店網の拡大とともに増え、1 点あたりは物価で上がる。
リスクと懸念
買収の収益性の低下
ROIC は 2024 年 1 月期の 24% から 2026 年 1 月期の 8% に落ちた。のれんは純資産の 8 割に迫り、買収が計画を下回れば減損で自己資本が削られる。買収で成長を買う手法そのものが、資本コストに近い稼ぎに変わってきた。
借金の重さと金利
有利子負債は約 1,100 億円で、EBITDA の 5 倍近い。借り換えのたびに金利は上がっていく。悪い年に利益が薄くなる会社で、借金の重さは減損や増資の引き金になりうる。
北米の運営の不調
景品の補充が追いつかず売上が落ちた店が出て、北米の EBITDA の見通しは 65 億円から 55 億円へ下がった。買った会社の統合が進むほど現金回収の負担も増える。北米ののれんは約 230 億円ある。
クレーンゲームの流行と景品の仕入れ値
クレーンゲームは 2024 年度に 18% 伸びたが、流行の山の可能性がある。景品は他社の IP に頼るため、人気の移り変わりと仕入れ値の上昇が利益率を直撃する。
家賃という固定の約束
店舗の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。IFRS 適用後の EBITDA の増え方から、年間の家賃は 150 億円ほどと推定され、約束の総額は 700 億円前後に及ぶ。悪い年はこの固定費が利益を削る。
経営の人の交代
買収を主導した共同創業者の申真衣氏が、2025 年に社長を、2026 年 4 月に取締役を退いた。社長は片岡尚氏が務める。買収の目利きと実行の力が保たれるかは、これから数字で試される。
今後の分かれ目
- 北米の既存店売上が景品の補充体制の整備で回復する
- 北米が黒字に定着し、10 年の楽観・やや楽観の確度が上がる。
- 北米の調整後 EBITDA の見通しがさらに引き下げられる
- のれん約 230 億円の減損が現実味を帯び、やや悲観・悲観の確度が上がる。
- 有利子負債が EBITDA の 3 倍を切るところまで減る
- 借金の重さによる資本コストの上乗せが小さくなり、中立の価値が増す。
- IFRS への移行後も、のれんの償却を除いた純利益が計画どおりに伸びる
- 買収の収益性が資本コストを超えていた証拠になり、やや楽観に近づく。
- 新たに大型の買収を発表する
- 借金が再び膨らみ、利益の質への疑問が強まって、やや悲観の確度が上がる。
- クレーンゲームの業界売上が前年を下回る
- 流行の山が過ぎたことになり、国内の店舗の客数と客単価の見方を悲観寄りに改める。
見ておくもの
- 国内既存店の売上成長率と、クレーンゲーム市場の業界売上
- 北米の拠点数・景品の補充状況と、北米の EBITDA の達成度
- 有利子負債と EBITDA の比率、自己資本比率
- のれんの残高と減損の有無、ROIC の推移
- IFRS 移行後の営業利益と純利益、配当の増え方
倍率と資本コストの決め方
倍率は式で決めた。資本コスト 9.5%(基本 7.5% に、4 つの目安の合計 +1.75%)、長期の g 4%、堀は普通として、ROE のうち資本コストを超える分の半分が先も残るとして正当化 PER を出し、楽観〜中立はその 9 割、やや悲観・悲観は ROE が k 以下なので上限 1÷k の約 7〜9 割に置いた。今のトレーリング PER や PBR、同業の倍率は使っていない。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れ、のれんの償却を引いた日本基準の形)にそろえた。2027 年 1 月期の第 4 四半期から IFRS に移ると、のれんの償却が消え、家賃が償却と利息に移って EBITDA が 450 億円を超えて見えるが、実力は変わらないため筋書きには入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.38 倍・やや楽観 PER 11.5→12.78 倍・中立 PER 10.9→12.03 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。