結論
情報企画は、銀行や信用金庫、信用組合の信用審査、財務分析、自己査定、担保評価を支える専門ソフトウェア会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。金融機関の業務に深く入り込んだ優良な小型企業だが、10年間の利益の持続性と資本の使い方を考えると、現在の時価総額約158億円には十分な安全域がない。
最大の強みは顧客基盤である。会社の開示によれば、2025年3月末時点で全国536金融機関に対するシステム利用実績は72.9%に達する。これは金融機関が何らかの同社システムを利用した実績を示し、個別製品の独占的なシェアを意味するものではない。それでも、信用金庫や地方銀行で業務知識と導入経験が広く蓄積されていることは、大手システム会社に対抗できる実際の競争力である。
過去10年の事業成績も優れている。2025年9月期の売上高は約38億円、営業利益は約15億円で、営業利益率は約40%に達した。純現金は約28億円、自己資本比率は82.6%であり、財務面の危険は小さい。2026年9月期の第3四半期累計も増収増益で、目先の需要が崩れているわけではない。
ただし、これからの10年を過去の延長では測れない。決算書の読み取り、融資稟議書の作成、入力作業、システム改修は、AIエージェントによって人手や操作画面の必要量が減る可能性がある。規制対応や信用リスクの計算基盤は残るとしても、導入・改修の売上が従来の規模で続くとは限らない。さらに、蓄積した資本の相当部分が利回りの低い賃貸不動産に向かっており、ソフトウェアの高い収益力がそのまま株主資本全体の高い再投資利回りにつながる構造ではない。
10年後の評価では、金融機関との関係を維持しながらも受託開発の仕事量が縮む筋書きを中心に据える。配当と将来蓄積する余剰現金を含めた現在価値は、おおむね120億〜130億円程度を中心とする見立てで、現在の時価総額を2割前後下回る。優れた会社であることと、長く保有する株主にとって今の値段が有利であることは別の問題だ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場なら、最初に考えるのは10年後も顧客が金を払ってくれるかどうかだ。金融機関の信用リスク管理と自己査定はなくならない。規制を守るために計算を実行し、記録を保存し、監査で説明する必要は続く。全国の多くの金融機関に導入された実績も、簡単には新規参入者が再現できない。こうした部分には、将来も稼ぐ力が残ると判断するだけの根拠がある。
それでも、導入に多くの人手が必要だった時代の売上を永続的なものとは扱えない。AIエージェントが融資書類を読み、評価案を出し、銀行の既存データを直接操作できるようになると、ソフトウェアの操作画面や改修工数に支払われていた費用は減る。情報企画に残るのは、金融機関が結果を信頼できる仕組みの提供と、制度への確実な対応だ。そこまで価値を移せれば堀は維持されるが、現時点で新しい収益への転換を数字で証明したとは言えない。
オーナー利益を見ると、ソフトウェア事業には大きな魅力がある。自社のパッケージを改良し、多くの顧客に販売できるため、追加の開発費に対する利益の増え方は大きい。一方、余剰資金の使い道として保有する不動産は、同じ高利回りの再投資ではない。賃貸利益が資本コストを大幅に下回る物件を買い続ければ、資本が増えるほど株主資本利益率は下がる。今回の資産売却が継続的な資本効率改善につながるかを見極めたい。
2025年の利益だけを見れば魅力的な会社だが、株主が今日払う価格には将来の不確実性を織り込まなければならない。筆者は、既存の信用リスク管理基盤を高く評価しつつ、受託開発や画面課金の利益には長い成長期間を与えない。保有現金や売却可能な資産には価値があるが、その存在を理由に本業の縮小リスクを消してしまうこともしない。優良企業を所有することより、優良企業を十分に有利な値段で所有することを重視する。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は金融機関向けシステムである。2025年9月期の売上高約38.4億円のうち、システム事業が約36.0億円、不動産賃貸事業が約2.5億円を占める。システム事業は、ソフトの導入、開発、更新を担うシステムインテグレーション部門と、保守管理やシステム使用料を受け取るシステムサポート部門に分かれる。
導入・開発部門の売上は約23.1億円である。主な製品は総合決算書リーディングシステム、財務分析・融資判断支援システム、担保不動産評価管理システム、自己査定支援システム、契約書作成支援システム、融資稟議支援システムなどだ。融資の審査から担保評価、債権管理まで、金融機関の日常業務の複数の工程を支えている。2025年9月期は決算書・財務分析関連や融資稟議関連が伸びる一方、担保関連は前年より減少し、製品別の受注にはかなりの振れがあった。
保守・使用料部門の売上は約12.9億円である。このうちシステムメンテナンスが約10.35億円、月額のシステム使用料が約2.53億円、データ入力代行などが約0.03億円を占める。保守には路線価などのデータ更新や制度改正への対応も含まれる。導入時の大型案件と違って、既存顧客の業務が続く限り売上が積み上がりやすい。ただし、保守契約数や解約率は開示されておらず、すべてを解約困難な継続課金とみなすべきではない。
不動産賃貸事業は、大阪などの賃貸マンション、店舗、オフィス、駐車場から賃料を得る。2025年9月期には9物件を保有し、売上高約2.48億円に対して営業利益は約0.52億円だった。システム事業に比べて資産を多く必要とし、利回りが低い。2026年10月には保有物件の譲渡が公表され、2027年9月期に約7億円の特別利益を見込む。資産を売却して利益を実現できる証拠ではあるが、毎年繰り返せるシステム収益とは区別する必要がある。
顧客は地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合が中心である。会社全体の取引先が多くても、最終需要は地域金融という一つの業界に集中している。銀行のシステム投資、制度変更、金融機関の統合が収益を左右するという意味で、顧客数の多さと需要先の分散は同じではない。
優良さと弱いところ
この会社の競争力は、金融機関の専門業務を理解し、それを使いやすいパッケージにして広く導入してきた点にある。自己査定支援システムは財務登録から格付、償却・引当までをつなぎ、融資統合データベースとの連携にも対応する。信用リスクアセット算定システムはバーゼル規制への対応を担う。単なる入力画面ではなく、監査、融資判断、内部管理に使われる仕組みであり、変更には銀行側の検証作業が伴う。
この業務知識は数字にも表れている。2015年9月期から2025年9月期にかけて売上高は約23億円から約38億円へ増え、営業利益は約6.5億円から約15.4億円へ伸びた。営業利益率も30%弱から約40%に上昇した。限られた従業員数で共通のソフトウェアを複数の金融機関に販売できるため、製品開発に投じた費用を顧客間で分担できる構造だ。値上げの成功率は開示されていないが、高い営業利益率は少なくとも安値でしか受注できない会社ではないことを示す。
ただし、堀、つまり顧客が離れにくい強みを過大評価してはならない。システム利用実績72.9%は大きな強みだが、年間解約率5%未満、移行に数年かかる事実、法改正ごとの値上げ実績について定量的な開示は見つからない。銀行の業務データは主として顧客側が所有しており、それを同社だけが独占利用できるわけでもない。したがって、全システム事業を強固な「記録の正本」と認定するには証拠が足りない。
過去の増分利益の稼ぎ方は良好だったが、今後の再投資先には注意が必要だ。2025年9月期の賃貸不動産の帳簿価額は約38億円、年間の賃貸損益は約0.52億円で、単純な利益利回りは約1.4%にとどまる。これは株主の要求収益率を大きく下回る。資産価格が上がれば売却益は得られるものの、低利回りの物件を持ち続けるだけでは、ソフトウェア事業が生み出す高い資本効率を薄めてしまう。会社の質は高いが、資本配分まで含めると無条件に強い堀を認める段階ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場を考える際には、国内SaaS市場全体を情報企画の市場規模として使ってはならない。同社が主に売るのは金融機関向けの信用リスク管理、融資支援、経理・総務の専門システムである。会社の2025年3月末の資料では対象金融機関は536先、システム利用実績は72.9%だった。これを約391先の利用実績相当と読み替えると、2025年のシステム売上約36億円は一先当たり年約920万円に相当する。536先すべてが同程度の製品群を購入すると仮定した市場の目安は年間約49億円となる。ただし、これは同社の製品構成と単価を全市場に広げた試算であり、第三者が調査した市場規模ではない。
競争相手は存在する。NTTデータは信用リスクアセット計算のBasel Masterや信用金庫向け融資業務ソリューションを提供し、BIPROGYは地域金融機関向けのLevee XやAIを用いた格付急変先の分析を展開している。これらは情報企画の信用リスク管理や融資審査と機能が重なる。各製品の導入行数や売上高が同じ定義では開示されていないため、競合各社の金額シェアを確定することはできない。情報企画の72.9%も、競合が売上の27.1%を分け合っているという意味ではない。
金融機関の数そのものには成長を期待しにくい。地域銀行や信用金庫は人口減少と経営統合の影響を受け、10年後には金融機関の母数が減る可能性が高い。他方で、バーゼル規制、貸倒引当金の管理、企業の財務データの電子化、融資業務の監査対応はなくならない。金利のある世界では与信管理の重要性も高まる。制度対応の需要は底堅いが、従来と同じ人数を掛けて改修する仕事がそのまま残るとは限らない。
最大の変化はAIエージェントの普及である。決算書の読み取り、科目の分類、融資稟議の下書き、入力画面の操作は自動化しやすい。NTTデータやBIPROGYのような大手が、金融機関の勘定系、業務データ、AIによる判断支援を一体化して提供すれば、専門パッケージ会社が受け取る開発費や画面単位の利用料に下押し圧力がかかる。情報企画自身もAI-OCRや自動判定、融資稟議の自動作成を中期戦略に掲げるが、これらのAI製品がどれだけ新しい収益を生んだかは金額で確認できない。
10年間の中立では、地域金融の実質的な業務量が大きく増えない中、導入・改修に相当する仕事量が減少する一方、既存システムの保守は比較的粘るとみる。10年より先の成長についても、AIで作業量が減る効果と金融機関の統合による減少を重く見て、名目成長率をゼロとする。過去の業界成長率をそのまま延長するより、この会社が将来いくらの仕事を有償で提供できるかを重視すべきである。
資本政策と M&A
資本政策は安定配当が中心である。2025年9月期の有価証券報告書は配当性向40%程度を目標として掲げているが、実際の配当性向は約33%だった。過去10年では増配が続き、2023年には自己株式の取得によって株数も減少した。2022年から2023年にかけて調整後の流通株数は約1,675万株から約1,512万株となり、株主還元の実行実績はある。ただし、これほどの規模の自社株買いが毎年続くとは考えない。
2025年11月の資料に示された第40期から第42期の中期経営戦略は、既存製品の拡販、AI導入、SaaS化、新しいクラウドサービス、営業体制の増強が柱である。戦略そのものには最終年度の売上高、営業利益、ROE、DOE、自社株買い額についての具体的な数字の約束はない。一方、2026年8月の決算短信における2026年9月期の会社予想は、売上高41億円、営業利益15.4億円、純利益11億円である。添付の下調べにある2026年・2027年の予想値とは区別し、会社が公表した単年度予想を長期目標と取り違えない。
最も評価が分かれるのは不動産投資である。2025年9月期には不動産事業に約38億円の帳簿資産を抱えながら、賃貸損益は約0.52億円しかない。2026年10月21日公表の資産売却は、資産効率改善に踏み出した点で評価できる。約7億円の売却益を見込むことから、含み価値を実現する余地も確認できる。ただし、売却代金と帳簿価格は非開示であり、その資金が配当、買収、再投資のどこに向かうかはまだ分からない。
将来の還元は中立で累積純利益の約40%とし、利益が減る場合は配当額も減らす。株主優待については継続保有条件を満たす株主数が非開示のため、対象500人、平均年間6,000円相当と仮定した費用約0.03億円を年間の還元に含める。10年では約0.3億円であり、還元全体への影響は小さい。大型買収による成長は確認できる具体的案件がないため、中立の利益には含めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金融機関への導入実績72.9%は、単なるブランド認知度ではない。信用リスク、担保評価、融資稟議の複数システムが銀行の日常業務に使われているため、乗り換えにはデータ連携、規程への適合、監査対応を確認する手間がかかる。導入先の金融機関が減少しても、一先当たりに売れる製品を増やせれば成長余地は残る。会社は決算書リーディング、自己査定、電子契約、クラウド化まで製品群を広げており、既存顧客への追加販売は新規顧客の獲得より低い費用で進められる。
AIも必ずしも脅威だけではない。会社はAI-OCR、担保評価の自動判定、融資稟議の自動作成を中期戦略に明示している。金融機関が外部の汎用AIに機密性の高い信用情報を全面的に委ねるには、説明責任や情報管理の壁がある。銀行の規程と既存データに接続する会社がAIの導入窓口になる可能性は十分にある。ただし、今の時点でAI関連の新規売上額が開示されていない以上、これを確定した高成長の根拠にはしない。
財務も強い。借入金に依存せず純現金を持ち、2009年のような業績の谷を経験した後も会社は存続してきた。システム事業の高い営業利益率は研究開発や金融業務の専門人材の維持を支える。2026年の第3四半期累計は増収増益で、銀行の投資需要は今も実際に存在する。不動産売却による資産効率改善が続けば、これまで十分に働いていなかった資本も株主の利益に変えられる。こうした強みが維持される場合、現在の時価総額を上回る10年後の企業価値は十分に考えられる。
慎重な見方
高い導入実績を持つことと、その顧客から今後も同額を受け取り続けられることは違う。金融機関の数は人口減少と業界再編で減り、導入済みの銀行や信用金庫にこれ以上何社売れるかという余地も小さい。2025年の好業績には決算書リーディングなどの更新需要が寄与しており、その案件数が10年後にも同じ頻度で発生する保証はない。制度改正のたびに案件が発生するとは限らず、基盤を共同利用する動きが広がれば個別金融機関ごとの改修費も減る。
AIエージェントは、同社が得意とする業務自動化をさらに外側から置き換え得る。金融機関が勘定系や文書管理システムにAIを直接組み込めば、個別の決算書読み取り画面や融資稟議画面を買い続ける必要が薄れる。NTTデータは金融制度対応や融資業務のシステムを提供し、BIPROGYも信用リスク管理とAIを組み合わせている。競合は単なる小さなソフト会社ではなく、銀行の基幹業務との接点を持つ企業である。新しい機能を追加しても、従来の料金体系が守れるとは限らない。
資本配分にも弱点がある。不動産の帳簿価額に対する賃貸利益の低さは、ソフトウェア事業の高収益に比べて際立っている。銀行から受け取った利益を低収益の資産に投じれば、会計上の純資産は増えても、株主が求める収益率には届かない。2026年の売却益約7億円は大きいが、一度物件を売れば同じ含み益を翌年も計上できるわけではない。銀行の統合、AIによる工数削減、競合のクラウド統合が同時に進めば、10年後には立派な財務を残しながら、稼ぐ力が大きく細ることもあり得る。
どちらに重みを置いたか
顧客基盤の厚さと財務の安定性では強い見方に説得力がある。実際、足元の受注は好調で、金融機関の規制対応も消えない。しかし、受託開発の仕事量を維持できるか、低利回りの不動産に資本が向かい続けないかという二つの疑問は残る。
確率は楽観側27%、中立35%、悲観側38%とした。下に寄せる理由は、金融機関の統合と、72.9%という高い導入実績ゆえに新規開拓余地が限定的なこと、そして不動産への資本配分の不確実性である。AI代替による数量減少は既に中立の事業予測に入れており、確率に同じ損失を二重に掛けていない。余剰現金の蓄積を評価しても、現在の時価総額には十分な安全域がないと判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,197 円181 億円(+ 還元の換算額還元の合計 250 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 803 円121 億円、今との差 −16.9%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,780 円269 億円 | 375 円57 億円 | +122.9% | +9.4% | 194 円29 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,686 円255 億円 | 341 円52 億円 | +109.5% | +8.6% | 365 円55 億円 |
| 中立 | 35% | 1,396 円211 億円 | 265 円40 億円 | +71.8% | +6.1% | 581 円88 億円 |
| やや悲観 | 25% | 767 円116 億円 | 182 円28 億円 | −1.9% | −0.2% | 237 円36 億円 |
| 悲観 | 13% | 410 円62 億円 | 125 円19 億円 | −44.7% | −6.4% | 70 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,197 円181 億円 | 250 円38 億円 | +49.6% | +4.6% | 1,447 円219 億円 |
今の株価時価総額 967 円146 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 導入基盤を維持し、規制対応とクラウド化で単価を守る 利益 14 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,780 円269 億円
金融機関はAIを導入するが、規制対応と信用リスクの計算基盤については、長年の導入実績を持つ情報企画のシステムを使い続ける。決算書リーディング、自己査定、担保評価、電子契約の各製品は、銀行側の既存データと連携しながら更新される。AIエージェントは単純な入力を肩代わりするものの、監査で説明できる計算結果を残すための仕組みは従来の顧客基盤の上で維持される。
会社が掲げるSaaS化とクラウドサービスが進み、個別の導入案件は減っても保守・使用料が安定する。金融機関への追加販売と価格改定により、人件費の上昇を吸収できる。NTTデータやBIPROGYとの競争は続くが、既存顧客の更新ではこれまでの業務知識が優位になる。売却可能な不動産の一部はより高い利回りの運用へ振り向けられ、株主還元も安定して続く。大型買収やAI新製品による未確認の売上拡大は必要条件にせず、既存事業の収益を守り切る好調な10年間となる。
- 金融機関向けシステム導入・開発:数量 391(金融機関とのシステム利用実績を起点にした年間案件量の換算先数。実際の契約先数や開発案件数そのものではない)× 価格 0.08(換算先1先当たり年間売上高(億円、開発・導入・ライセンス売上込みの推定平均))→ 売上 31 億円・営業利益 11 億円。案件量は現在と同水準、価格は物価並みの1.34倍。営業利益率35.5%を維持。
- 金融機関向けシステム保守・使用料:数量 391(金融機関とのシステム利用実績を起点にした保守・使用契約の換算先数。個別製品の実契約件数ではない)× 価格 0.04(換算先1先当たり年間保守・使用料(億円、名目の推定平均))→ 売上 15 億円・営業利益 7 億円。保守・使用契約換算数量1.0倍、価格1.15倍。規制対応を通じて高い利益率を維持。
- 不動産賃貸事業:数量 10.0(年間に賃料を生む保有物件数(件、空室率は平均単価側で調整))× 価格 0.36(1物件当たり年間賃貸収入(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。収益物件10件、平均賃料1.30倍。資産の入れ替えで稼働率と利益率が改善。
倍率:AIエージェント代替により10年後以降のg_longを名目0%とするため、事業の正当化PERは1÷k=14.81倍。10年後のROEは約10.1%でk6.75%を超えるが、gが0のため将来の超過利益の再投資価値は上乗せしない。事業純利益から余剰現金15億円の税後利息相当0.21億円を除き、余剰現金を戻り方1.0で加える。賃貸不動産は営業利益の現在価値との重複を控除し、収益還元利回り5.5%で評価した資産相当の差額約6.7億円を考慮する。10年間で追加的に蓄積する余剰現金は自動計算の対象であり、ここでは重複して足さない。
確率:金融機関の統合やAIによる開発工数の削減が進んでも、既存の換算案件量を10年間維持し、物価並みの価格改定まで実現するには多くの条件がそろう必要がある。AI製品の新規売上額は確認できないため、楽観でもSIと保守の実質数量を現在の1.0倍より増やさない。
やや楽観 18% 既存顧客を深耕し、保守収入の粘りが勝る 利益 12 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,686 円255 億円
地域金融機関の統合に伴い利用実績のある金融機関数は少し減るが、情報企画は大部分の顧客との取引を維持する。決算書の読み取りと融資稟議の自動化は進み、個別の開発案件に必要な工数が減る。しかし、自己査定、信用リスクアセット算定、担保評価など制度対応の計算機能には継続的な更新が必要であり、顧客は既存製品の保守を続ける。
新しいクラウドサービスは成長の主役とまではならないものの、既存顧客への追加販売に役立つ。保守の単価には緩やかな値上げが反映される。NTTデータなどの大手との競争は続くが、細かな金融業務に精通した製品と顧客対応によって急激なシェア喪失を防ぐ。不動産事業では一部の物件を入れ替えて賃料を増やす。利益率は現在より少し低下するものの、無借金の財務と安定配当は維持される。
- 金融機関向けシステム導入・開発:数量 371(金融機関とのシステム利用実績を起点にした年間案件量の換算先数。実際の契約先数や開発案件数そのものではない)× 価格 0.08(換算先1先当たり年間売上高(億円、開発・導入・ライセンス売上込みの推定平均))→ 売上 28 億円・営業利益 10 億円。案件換算数量約0.95倍、価格1.29倍。高いパッケージ共通化率で利益率を維持。
- 金融機関向けシステム保守・使用料:数量 371(金融機関とのシステム利用実績を起点にした保守・使用契約の換算先数。個別製品の実契約件数ではない)× 価格 0.04(換算先1先当たり年間保守・使用料(億円、名目の推定平均))→ 売上 14 億円・営業利益 7 億円。保守換算数量約0.95倍、価格1.13倍。顧客離脱は比較的少ない。
- 不動産賃貸事業:数量 10.0(年間に賃料を生む保有物件数(件、空室率は平均単価側で調整))× 価格 0.34(1物件当たり年間賃貸収入(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。収益物件10件、平均賃料1.24倍。資産売却と購入を平準化。
倍率:資本コスト6.75%、10年より先のg_long0%なので正当化PERの上限1÷k=14.81倍を適用する。AIリスクをすでに数量とgに反映しているため上限から手動で再び割り引かない。余剰現金15億円の利息を事業利益から外して元本を足し、賃貸不動産の税引後利益のPER評価と収益還元資産の価値との差額約6.1億円を補正する。将来蓄積する現金は別計算である。
確率:導入先との関係を維持しながら案件量がわずかに減る筋書き。AIの代替圧力を受けても、銀行固有の規制対応と保守契約が残る蓋然性は相応に高い。
中立 35% 中立:金融業務は残るが開発工数の単価と量が変わる 利益 9 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,396 円211 億円
信用リスク管理、自己査定、担保評価、規制対応は10年後も金融機関の仕事として残る。情報企画の製品もその業務の一部を支え続けるが、決算書の読み取りや融資稟議の作成はAIエージェントの利用が広がり、人が操作する画面や個別改修の必要量は減る。金融機関に請求する導入・開発の案件換算量は縮小し、名目の価格上昇だけでは現在の売上規模を保てない。
保守は比較的強い。法令改正に合わせた更新、信用リスクの計算結果の保存、銀行の既存データとの連携には引き続き対価が支払われる。しかし、保守契約の席数や利用画面には削減圧力がかかるため、使用料は物価上昇を十分には転嫁できない。NTTデータやBIPROGYの金融機関向け統合サービスとの競争では、自社製品の専門性で重要な顧客を守りながらも、更新契約の交渉力がやや低下する。
不動産は大きく拡張せず、売却・入れ替えを進める。ソフトウェアの利益は一定程度残るため赤字にはならないが、会社全体の営業利益率は現在より低くなる。利益の一部は配当として支払われ、残りは現金や事業資産として積み上がる。高い自己資本比率を維持しながらも、増えた純資産を使って過去と同じ高いROEを生み出すことはできない。
- 金融機関向けシステム導入・開発:数量 274(金融機関とのシステム利用実績を起点にした年間案件量の換算先数。実際の契約先数や開発案件数そのものではない)× 価格 0.07(換算先1先当たり年間売上高(億円、開発・導入・ライセンス売上込みの推定平均))→ 売上 20 億円・営業利益 6 億円。AIエージェント代替により実質案件量は現在の約0.70倍。名目平均単価は1.25倍で、物価1.34倍を下回る。
- 金融機関向けシステム保守・使用料:数量 352(金融機関とのシステム利用実績を起点にした保守・使用契約の換算先数。個別製品の実契約件数ではない)× 価格 0.04(換算先1先当たり年間保守・使用料(億円、名目の推定平均))→ 売上 13 億円・営業利益 6 億円。保守・利用の換算数量約0.90倍、平均価格1.12倍。規制対応の継続収入が下支えする。
- 不動産賃貸事業:数量 9.0(年間に賃料を生む保有物件数(件、空室率は平均単価側で調整))× 価格 0.33(1物件当たり年間賃貸収入(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。物件数は9件相当、平均賃料1.20倍。設備更新費用と空室リスクが賃料上昇分を一部相殺する。
倍率:中立のROEは約7.1%で資本コスト6.75%をわずかに上回るが、AIエージェント代替による構造的な市場縮小を考慮し、g_longは名目0%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)より、gが0なので14.81倍を上限そのものとして使う。長期の再投資超過利益を想定しない。純利益9.097億円から余剰現金15億円の税後利息0.21億円を除いて事業利益を評価し、現金元本15億円と、賃貸不動産の重複調整後の資産差額約4.65億円を加える。賃貸の収益還元利回りは5.5%の想定で、鑑定時価41.75億円をそのまま営業利益に重ねて足さない。10年間に追加蓄積する余剰現金はSCHEMAの自動計算に委ね、この時価総額に二重に加算しない。
確率:信用リスク管理システムの需要は続くが、金融機関の統合とAIによる作業量削減が実際の請求額を減らすという中心的な見通し。既存顧客に強い一方、導入実績がすでに高く、新規金融機関による数量成長だけでは縮小を補えない。
やや悲観 25% 金融機関の統合と統合ソフトへの移行が収益を圧迫 利益 5 億円 · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 767 円116 億円
地方銀行や信用金庫の統合が進み、金融機関ごとに別々のシステムを更新する案件が減る。規制対応の機能は必要だが、複数金融機関が共同で利用する仕組みや、基幹システムと一体化した金融ソフトウェアへの移行が進む。情報企画の導入済み顧客の一部も、NTTデータなどが提供する広い業務基盤へ機能を移す。会社は既存顧客を守るために価格交渉に応じ、更新費用を以前ほど請求できなくなる。
決算書や担保関連の定型処理ではAIの導入が進むが、その効率化による節約分を同社が料金として十分には取り込めない。保守収入も安定している部分は残るものの、製品数の統合によって契約額が減る。専門人材を維持するための給与やセキュリティ費用は簡単には下げられず、利益率が低下する。資金繰りが急に悪化するほどではないが、ソフトウェア事業の超過利益はかなり薄くなる。不動産は利回りを改善できず、会社は配当額を利益に見合う水準へ引き下げる。
- 金融機関向けシステム導入・開発:数量 215(金融機関とのシステム利用実績を起点にした年間案件量の換算先数。実際の契約先数や開発案件数そのものではない)× 価格 0.07(換算先1先当たり年間売上高(億円、開発・導入・ライセンス売上込みの推定平均))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。実質案件量約0.55倍、単価1.20倍。統合案件の減少と価格競争により利益率23%。
- 金融機関向けシステム保守・使用料:数量 274(金融機関とのシステム利用実績を起点にした保守・使用契約の換算先数。個別製品の実契約件数ではない)× 価格 0.03(換算先1先当たり年間保守・使用料(億円、名目の推定平均))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。保守換算数量約0.70倍、価格1.05倍。業務統合と契約縮小が進む。
- 不動産賃貸事業:数量 8.0(年間に賃料を生む保有物件数(件、空室率は平均単価側で調整))× 価格 0.31(1物件当たり年間賃貸収入(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。物件数8件相当。修繕費増加や空室によって賃貸利益率が低下。
倍率:ROE約4.0%は資本コスト6.75%を下回るため、成長による付加価値は認めず、利益の稼ぐ力として1÷k=14.81倍を上限とする。制度対応の基盤が一部失われる筋書きなので、やや悲観では12.2倍の事業利益評価とする。SCHEMAのやや悲観における現金の評価条件に従い、余剰現金15億円の0.75倍である11.25億円だけを株主価値に算入する。対応する税後利息0.1575億円を純利益4.817億円から除き、事業利益4.6595億円にPER12.2倍を掛ける。これに現金11.25億円と賃貸事業の収益還元による差額約2.4億円を加えるため、時価総額は約70.5億円となる。10年間に留保される現金はこの時価総額に手で加算しない。
確率:顧客業界の統合に加え、金融機関の基幹システム事業者による業務統合が進む場合を想定する。基礎となる規制対応の仕事は残るが、開発案件と保守の料金体系の双方に圧力がかかる。
悲観 13% 融資業務の統合基盤に代替され、専門ソフトの稼ぐ力を失う 利益 2 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 410 円62 億円
地域金融機関の再編が進み、融資審査、担保評価、自己査定が銀行の統合データ基盤上で処理されるようになる。金融機関は複数の専門ソフトを個別に買うより、基幹システムと一体化したサービスを選ぶ。決算書の読み取りや融資稟議書の作成はAIエージェントが担い、情報企画の独立した画面と個別受託開発の必要性が大きく減る。残る顧客のために規制対応や保守は続けるが、従来の価格を守ることは難しい。
売上が縮んでも、金融業務に詳しい技術者の確保、システムの安全性維持、顧客データの保護には固定費が掛かる。システム事業の営業利益率は大きく低下し、かつての高収益企業という評価を失う。不動産も賃料収入だけでは十分な資本収益を生まず、会社は利益の再投資先を見直す必要に迫られる。経営破綻を前提とするのではなく、純現金と実際に売却できる不動産の価値が株主価値の中心になる10年間である。
- 金融機関向けシステム導入・開発:数量 195(金融機関とのシステム利用実績を起点にした年間案件量の換算先数。実際の契約先数や開発案件数そのものではない)× 価格 0.06(換算先1先当たり年間売上高(億円、開発・導入・ライセンス売上込みの推定平均))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。案件換算数量は現在の約半分、単価は名目でほぼ横ばい。高付加価値案件が失われる。
- 金融機関向けシステム保守・使用料:数量 196(金融機関とのシステム利用実績を起点にした保守・使用契約の換算先数。個別製品の実契約件数ではない)× 価格 0.03(換算先1先当たり年間保守・使用料(億円、名目の推定平均))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。保守換算数量も約半分、単価は現在より低下。基幹システム事業者へ顧客が移る。
- 不動産賃貸事業:数量 7.0(年間に賃料を生む保有物件数(件、空室率は平均単価側で調整))× 価格 0.29(1物件当たり年間賃貸収入(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。物件は7件相当となり、修繕費や空室負担で賃貸営業利益が消える。
倍率:営業利益とROEが著しく低下するため、利益を永続的に資本還元できる企業としては評価しない。現在の自己資本69.5億円に対する約0.892倍に相当する時価総額62億円を、純現金と売却可能な不動産から求めた悲観の床とする。10年後に留保利益で増えた自己資本112.9億円へPBRを掛け直さない。過去の株価や谷のPBRは使用しない。
確率:金融機関の統合と大手ベンダーの統合基盤への移行が重なり、システム事業の売上が現在のおおむね半分になる複合的な損失シナリオ。純現金と売却可能な不動産があるため、直ちに倒産する筋書きにはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金融機関向けシステム導入・開発
信用リスク管理、担保不動産評価、決算書の読み取り、融資稟議などのパッケージ導入、改修、受託開発。AI代替の分類は主として人月・工数型とする。
| 数量金融機関とのシステム利用実績を起点にした年間案件量の換算先数。実際の契約先数や開発案件数そのものではない | 価格換算先1先当たり年間売上高(億円、開発・導入・ライセンス売上込みの推定平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 391 | 0.06 | 23 | 8 |
| 10 年後 中立 | 274 | 0.07 | 20 | 6 |
取り方:2025年のシステム事業売上35.95569億円からシステムサポート売上12.90536億円を差し引き、SI売上23.05033億円を得た。会社開示の2025年3月末の対象536金融機関×利用実績72.9%=約391先を数量の代理指標とし、23.05033÷391=0.058952億円を平均単価とした。391は個別製品の契約先数ではなく、過去のシステム利用実績に基づく換算数量である。売上の開示には決算書・財務分析約7.66億円、担保約4.82億円、融資稟議・契約書作成約4.23億円などがあるが、製品別の案件数と個別販売単価は非開示である。営業利益8.3億円はシステム事業全体の営業利益14.84518億円を、SI利益率約36%、保守部門約51%と仮定して配分した推計であり、部門別開示利益ではない。中立の数量0.70倍、価格1.25倍はAIエージェントによる受託工数縮小を反映し、価格上昇は物価3%の10年累積1.34倍より低くする。
金融機関向けシステム保守・使用料
信用リスク管理などの既存システムのメンテナンス、路線価等のデータ更新、月額システム使用料、少額の入力代行。
| 数量金融機関とのシステム利用実績を起点にした保守・使用契約の換算先数。個別製品の実契約件数ではない | 価格換算先1先当たり年間保守・使用料(億円、名目の推定平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 391 | 0.03 | 13 | 7 |
| 10 年後 中立 | 352 | 0.04 | 13 | 6 |
取り方:2025年の決算説明資料にあるメンテナンス約10.3453億円、月額使用料約2.5284億円、データ入力代行等約0.0317億円を合計した。年間実契約先数は非開示なので、SIと同じ約391先のシステム利用実績相当で割り、年0.033006億円の換算価格とした。同じ金融機関が複数システムを使うため、391件の単独契約があるという意味ではない。営業利益6.54518億円は全システム事業利益からSI推定利益8.3億円を差し引いた推計。保守には銀行内データの規制対応が含まれるが、会社独占データや解約率の証拠が不足するため、AI代替では席課金・操作画面中心型を採用する。中立の実質数量を約0.90倍、価格を1.12倍とし、単価への下押しを考慮する。
不動産賃貸事業
賃貸マンション、店舗、オフィス、駐車場からの賃料。ITやAIエージェントによる業務代替の型には当たらない。
| 数量年間に賃料を生む保有物件数(件、空室率は平均単価側で調整) | 価格1物件当たり年間賃貸収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 9.0 | 0.28 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 0.33 | 3 | 1 |
取り方:会社が2025年9月期に保有した賃貸物件9件と、不動産賃貸事業の売上2.47930億円から平均単価を計算した。営業利益0.52314億円は2025年有価証券報告書のセグメント利益。物件ごとの面積、稼働率、賃料は十分に開示されていないため、物件1件当たりの平均を使う。2026年10月に公表された物件売却は2027年9月期に約7億円の特別利益を生む見込みだが、継続的な賃料にも通常の営業利益にも加えない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
同社のSI部門には、決算書読み取り、融資稟議作成、個別改修など、AIエージェントが人の作業を減らし得る仕事が多い。会社自身もAI-OCRや自動作成機能を開発しているが、その新しい収益を金額で証明した開示は確認できない。中立では開発案件換算量を10年で約0.70倍に縮小し、保守・使用料にも数量と単価の圧力を織り込んだ。
地域金融機関の統合と顧客市場の成熟
システム利用実績72.9%は強みである反面、既存の金融機関以外に新たな顧客を増やす余地が限られることも意味する。地方銀行、信用金庫、信用組合の統合が進めば、複数金融機関で行っていたシステム更新が一本化される。金融業界以外の市場へ大きく広がった実績は限定的であり、数量の伸びを簡単には期待できない。
銀行の基幹システム事業者との競争
NTTデータはBasel Masterや信用金庫向け融資システムを、BIPROGYはLevee Xなどを提供する。これらの大手は金融機関の基幹システムや広範囲の業務基盤と結び付きがある。信用リスク管理と融資業務がクラウド上で統合されると、情報企画の専門パッケージが担っていた機能の一部が吸収される恐れがある。
高い導入実績を解約不能な収益と誤認する危険
会社の72.9%という数字は、金融機関に何らかのシステムを導入した利用実績の割合であり、継続課金の契約件数や解約率ではない。製品別の導入行数、価格改定率、年間契約継続率は十分に開示されていない。高い導入実績を根拠に、全売上が規制対応の記録基盤として永続するとみるのは危険である。
不動産の再投資利回りと含み益の実現
2025年9月期の賃貸不動産は帳簿価額約38億円に対し、賃貸損益が約0.52億円にとどまる。金利が上昇する世界でこの収益性は十分ではない。2026年10月の物件売却は資本効率改善の兆しだが、将来の不動産価格、売却代金、売却後の資金使途は確定していない。売却益を経常的な利益に重ねて評価してはならない。
情報セキュリティとシステム障害
金融機関の融資関連データを扱う製品には高い信頼性が求められる。情報漏えい、AIによる誤判定、クラウド移行時の障害が起きれば、顧客との関係と保守収益が同時に傷つく。会社はISO27001、ISO27017やセキュリティ対応を掲げるが、その維持には継続的な人材と費用が必要である。規制対応を競争力にするほど、品質不良の損失も大きくなる。
今後の分かれ目
- システムサポート売上が数年間にわたり年率5%以上増え、解約率5%未満などの数字も開示されたら
- 規制対応の記録基盤としての持続力を再評価する。単なる画面課金でなく、顧客の業務に不可欠な継続収益と確認できれば、保守部門の数量と長期成長率を上方修正する。
- AI-OCR、融資稟議自動作成、クラウド新製品の売上高・受注高が金額付きで開示され、既存製品の減収を上回ったら
- AIが自社事業を代替するだけでなく収益を生む証拠となるため、楽観側の数量と確率を引き上げる。機能の発表だけでは業績の改善とみなさない。
- SI売上が大きく減少するのに保守・使用料が伸びず、システム事業の営業利益率が30%を継続して下回ったら
- AIエージェントや競合への代替が会社の利益に表れ始めたと判断し、やや悲観・悲観の確率を上げる。人件費を削って一時的に利益を守るだけでは長期の堀の改善とはみなさない。
- 金融機関向けのシステム利用実績比率が72.9%から大きく低下し、信用金庫の統合案件で他社への切り替えが続いたら
- 乗り換え費用による競争力が想定より弱いことを示すため、開発・保守双方の数量を下方修正する。金融機関の統合による母数減少と実際のシェア喪失は分けて確認する。
- 不動産売却後の資金が配当・自社株買い、または高い投資収益率が確認できるシステム開発へ移されたら
- 将来の資本効率と余剰現金の株主への戻り方を高く評価する。反対に低利回りの不動産を同じ規模で買い直すなら、資産売却益だけを理由に本質価値を引き上げない。
- 自己資本は増えるのに純利益が横ばいとなり、ROEが継続して資本コスト近くまで下がったら
- 再投資の経済性が低下している証拠として、10年後の利益と資本配分を点検する。財務が健全という理由だけで高い評価倍率を維持しない。
見ておくもの
- SI部門の売上高と決算書・財務分析、担保、融資稟議などの製品別売上高
- システムサポート部門のメンテナンス収入、月額使用料、契約数、解約率
- システム利用実績72.9%の推移と、導入金融機関の母数変化
- AI-OCR、融資稟議自動作成、SaaS化の実際の受注額・売上高
- システム事業の営業利益率と従業員当たり売上高
- NTTデータ、BIPROGYなどによる金融機関向け統合サービスの採用動向
- 配当性向40%目標の達成状況、自己株式取得の実績、流通株数の変化
- 2026年10月に公表した賃貸不動産売却の完了と資金使途
- 保有賃貸不動産の時価・帳簿価額・賃貸損益と新規取得物件の利回り
倍率と資本コストの決め方
評価の出発点は2025年9月期のシステム導入・開発23.05億円、システムサポート12.91億円、不動産賃貸2.48億円であり、現在の株価から逆算していない。数量は会社が公表した536金融機関に対する利用実績72.9%から約391先の換算数量を作り、10年後の価格はAI代替と物価上昇を別々に考えた。中立のSI実質数量0.70倍は人月・工数型、保守約0.90倍は席・操作画面型の範囲内である。金融業務の記録基盤に相当する部分は存在するが、解約率や値上げ実績などの複数の証拠がないため、長期成長率を安易に引き上げない。
倍率はk6.75%とg_long0%から導く正当化PER14.81倍を楽観から中立の上限として用いる。現在や過去、同業のPERは根拠に使っていない。賃貸不動産の鑑定時価は、低い賃貸利回りを無視して利益評価に全額加えることはしない。余剰現金15億円と10年間に蓄積する追加的な現金は区別し、後者は自動評価の対象とする。やや悲観では余剰現金の0.75倍のみを時価総額に算入し、その部分の受取利息を事業純利益から除外する。悲観側の床は過去のPBRではなく純現金と売却可能な不動産から計算した。2028年9月期から適用予定の新リース会計基準によって借手の貸借対照表の表示は変わるが、家賃を営業費用とした比較可能な利益ベースで10年後をそろえる。
参考として、将来蓄積する余剰現金の資本必要額による控除と戻り方を考慮した現在価値は、おおむね120億〜130億円を中心に想定する。現在の時価総額約158.35億円との差は約−18〜−24%で、「やや割高」と整合する。ただし、将来の留保利益が低利回りの不動産へ再投資される場合には現金としての回収価値が減るため、現金の蓄積を無条件に額面で見込む評価より慎重に考える必要がある。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%から、安定した過去の利益と厚い純現金による質の調整0.75ポイントを差し引く。β、時価総額の小ささ、AI代替、ガバナンスを個別の上乗せとして重複計上しない。