結論
メドレーは、医療・介護の求人サイト(ジョブメドレー)と、電子カルテ・オンライン診療(CLINICS)などの医療プラットフォーム、調剤などの現場事業を持つ会社だ。売上は5年で5倍以上に伸びたが、営業利益率は直近で6%台にとどまる。
筆者の結論は、10年の本質価値は今の時価総額を下回るというものだ。電子カルテは記録の正本に近く、縮みにくい。ただ、利益率は過去の山13%を超えて置けず、採用事業はAIの検索に流れる恐れもある。
配当性向3割の方針は前進だが、純負債もあり、少数株主に戻る額は大きくない。値段は成長を先取りしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、医療・介護という長く続く需要と、切り替えにくい電子カルテは好ましい。売上の伸びは速い。
ただ、営業利益率は直近で6%台、過去の山でも13%で、資本効率は高くない。買収で純負債を抱え、先行投資が実るかは見えにくい。配当性向3割の方針は評価できるが、積み上がる利益の大半は内部に残る。安全域は薄く、利益が出てから値段を考えたい。事業の将来性は認めるが、値段が見合わない。経営者の実行力も確かだ。
何で稼ぐ会社か
事業は3つだ。人材プラットフォームは売上の約35%で、医療・介護の求人を載せる月額と採用の成果報酬で稼ぎ、利益の中心になっている。医療プラットフォームは売上の約40%で、電子カルテやオンライン診療を診療所に売る。先行投資が重く、利益はまだ薄い。医療ヘルスケア(調剤・訪問看護など)は約25%で、現場の体で稼ぎ利益率は低い。売上の内訳と利益は資料で確かめられなかったため、割合と利益は推定した。顧客は国内の医療機関・介護事業者が中心だ。売上は国内に限られ、為替の影響はほぼ無い。採用の売上は期の後半に偏りやすい。
優良さと弱いところ
強みは、医療・介護の求人で国内の大手に育ち、電子カルテで診療所に食い込んだことだ。一度入った電子カルテは切り替えにくい。売上の伸びも速い。
弱みは、利益率の低さと財務の厚みだ。直近は純負債75億円で、買収と自社株買いで自己資本が減った。現場事業は利益率が低い。採用事業は求職者の行動の変化に弱い。堀は普通とみる。経営の拡大志向は評価できるが、資本効率はまだ高くない。創業者が経営を続けている点は、実行力の面で強みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療・介護は人手不足が続き、採用の需要は底堅い。医療DXの政策で電子カルテの普及も後押しされる。
一方、生成AIは求人探しを変え、求人サイトを通さない応募も増えうる。電子カルテは大手ベンダーや新興の競合が多く、診療所向けは価格競争が起きやすい。薬局や訪問看護などの現場事業は報酬改定の影響を受ける。国内の医療ITは需要が伸びるが、取り分は競争で薄くなる。大手の電子カルテ各社や、求人専業の同業も同じ需要を取りにくる。報酬改定などの政策の変更も読みにくい。人手不足そのものは、10年続く追い風だ。賃上げも続く。
資本政策と M&A
還元は2026年12月期から動き出した。来期以降は配当性向30%を目安とし、期末に初配当を行う予定で、自社株93万株の消却も公表された。中期経営計画の売上・利益の目標数字は確認できなかったが、還元は性向30%という数字の約束がある。
M&Aには積極的で、2024年にグッピーズへ公開買付けを行った。買収の効果が出るまで時間がかかり、資本の使い方には慎重に見る。
見通しをどちらに寄せたか
強気の材料は電子カルテの普及と売上の速い伸び、慎重な材料は低い利益率と先行投資の重さ、採用事業のAIによる置き換えである。利益率が過去の山を超えた実績は無く、確率はやや下側に寄せた。やや悲観と悲観で36%、上側は28%とし、中立は36%だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,072 円626 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 233 円70 億円)。 今の値に割り戻すと 1,168 円353 億円、今との差 −52.3%、 期待の年率 −0.6%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,089 円1,538 億円 | 495 円150 億円 | +127.8% | +8.6% | 447 円135 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,390 円1,024 億円 | 367 円111 億円 | +53.3% | +4.4% | 751 円227 億円 |
| 中立 | 36% | 2,438 円737 億円 | 277 円84 億円 | +10.8% | +1.0% | 977 円295 億円 |
| やや悲観 | 24% | 408 円123 億円 | 85 円26 億円 | −79.9% | −14.8% | 118 円36 億円 |
| 悲観 | 12% | 99 円30 億円 | 0 円0 億円 | −95.9% | −27.4% | 12 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,072 円626 億円 | 233 円70 億円 | −5.9% | −0.6% | 2,306 円697 億円 |
今の株価時価総額 2,451 円741 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 医療プラットフォームが花開き利益率が上がる 利益 90 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 5,089 円1,538 億円
電子カルテとオンライン診療が全国の診療所に広がり、医療プラットフォームの契約は今の1.8倍に増える。値上げも物価並みに通り、利益率は2割を超える。採用事業も人手不足で数量が1.3倍になる。営業利益は今の6倍近くになる。配当は性向3割の方針が続く。
- 人材プラットフォーム:数量 4.2(契約施設数(万施設、推定))× 価格 54(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 223 億円・営業利益 67 億円。求人の掲載と採用の成果報酬。価格は物価の下まで
- 医療プラットフォーム:数量 2.7(契約医療機関数(万施設、推定))× 価格 131(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 355 億円・営業利益 78 億円。電子カルテ・オンライン診療。記録の正本に近く縮みにくい
- 医療ヘルスケア:数量 390(拠点数(拠点、推定))× 価格 0.42(1 拠点当たり年間売上(億円))→ 売上 162 億円・営業利益 13 億円。調剤・訪問看護など現場の体の事業。利益率は低い
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。
確率:電子カルテの普及と利益率の上昇がそろう筋書き。8%。
やや楽観 20% 電子カルテが広がり、採用事業も堅調 利益 64 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,390 円1,024 億円
電子カルテは今の1.6倍に増え、先行投資が利益に結びつき始める。採用事業は医療・介護の人材不足を背景に1.2倍に伸びる。調剤などの現場事業は利益率が低いまま、営業利益は今の4倍に近づく。性向3割の配当が続く。採用事業は価格を物価の少し下まで上げ、利益率を保つ。
- 人材プラットフォーム:数量 3.8(契約施設数(万施設、推定))× 価格 52(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 200 億円・営業利益 56 億円。求人の掲載と採用の成果報酬。価格は物価の下まで
- 医療プラットフォーム:数量 2.4(契約医療機関数(万施設、推定))× 価格 129(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 311 億円・営業利益 56 億円。電子カルテ・オンライン診療。記録の正本に近く縮みにくい
- 医療ヘルスケア:数量 360(拠点数(拠点、推定))× 価格 0.42(1 拠点当たり年間売上(億円))→ 売上 149 億円・営業利益 9 億円。調剤・訪問看護など現場の体の事業。利益率は低い
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。
確率:電子カルテが伸びる一方、先行投資の回収は時間がかかる。20%。
中立 36% 医療が伸びて先行投資が実る。利益率は1割強 利益 46 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,438 円737 億円
医療プラットフォームは電子カルテの更新需要で今の1.4倍に増え、値上げは物価の手前で止まる。採用事業は1.15倍と堅調で、価格は物価に届かない。現場事業は数量が少し増えるが利益率は低い。営業利益は今の3倍になり、利益率は1割強で止まる。性向3割の配当が続く。
- 人材プラットフォーム:数量 3.7(契約施設数(万施設、推定))× 価格 50(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 184 億円・営業利益 48 億円。求人の掲載と採用の成果報酬。価格は物価の下まで
- 医療プラットフォーム:数量 2.1(契約医療機関数(万施設、推定))× 価格 127(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 268 億円・営業利益 40 億円。電子カルテ・オンライン診療。記録の正本に近く縮みにくい
- 医療ヘルスケア:数量 345(拠点数(拠点、推定))× 価格 0.42(1 拠点当たり年間売上(億円))→ 売上 143 億円・営業利益 7 億円。調剤・訪問看護など現場の体の事業。利益率は低い
倍率:事業のROEとkから式で置いた正当化PERの上限そのもの。
確率:医療の伸びと採用事業の堅調を合わせた落としどころ。36%。
やや悲観 24% 先行投資が実らず、採用事業も頭打ち 利益 11 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 408 円123 億円
電子カルテの伸びが鈍り、先行投資の回収が遅れる。採用事業は求職者がAIの検索に流れ、数量が頭打ちになる。本社と開発の固定費が重く、利益率は数%にとどまる。営業利益は今の2倍に届かず、還元は縮む。純負債の返済も重く、買収の余力は小さくなる。人件費の上昇が、採用事業の利益を圧迫する。
- 人材プラットフォーム:数量 3.0(契約施設数(万施設、推定))× 価格 46(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 140 億円・営業利益 25 億円。求人の掲載と採用の成果報酬。価格は物価の下まで
- 医療プラットフォーム:数量 1.7(契約医療機関数(万施設、推定))× 価格 118(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 194 億円・営業利益 14 億円。電子カルテ・オンライン診療。記録の正本に近く縮みにくい
- 医療ヘルスケア:数量 300(拠点数(拠点、推定))× 価格 0.39(1 拠点当たり年間売上(億円))→ 売上 116 億円・営業利益 2 億円。調剤・訪問看護など現場の体の事業。利益率は低い
倍率:事業のROEが資本コスト以下なので、稼ぐ力の値(1÷k)まで。
確率:利益率が過去の山を一度も超えておらず、先行投資が実らない確率は小さくない。24%。
悲観 12% 採用はAIに置き換わり、医療は赤字が続く 利益 −19 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 99 円30 億円
求職者が生成AIの検索や直接応募に流れ、採用事業の数量が3割減って価格も下がる。電子カルテは海外や大手との競争で伸び悩み、赤字が続く。開発の固定費だけが残り、営業赤字に沈む。会社に残る価値は現場事業と現金の一部に限られる。配当は止まり、再び増資で株が薄まる恐れもある。
- 人材プラットフォーム:数量 2.2(契約施設数(万施設、推定))× 価格 40(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 90 億円・営業利益 9 億円。求人の掲載と採用の成果報酬。価格は物価の下まで
- 医療プラットフォーム:数量 1.2(契約医療機関数(万施設、推定))× 価格 98(1 施設当たり年間売上(万円))→ 売上 118 億円・営業利益 −6 億円。電子カルテ・オンライン診療。記録の正本に近く縮みにくい
- 医療ヘルスケア:数量 255(拠点数(拠点、推定))× 価格 0.34(1 拠点当たり年間売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 −2 億円。調剤・訪問看護など現場の体の事業。利益率は低い
倍率:悲観の床は稼ぐ力でなく、のれん・無形資産を除く現金・売掛・現場事業の資産から純有利子負債を引いた30億円を今の自己資本148億円で割った値。
確率:採用事業がAIに置き換わり、医療が赤字のままの筋書き。12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
人材プラットフォーム
医療・介護の求人の掲載と、採用の成果報酬で稼ぐ。
| 数量契約施設数(万施設、推定) | 価格1 施設当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.2 | 40 | 128 | 36 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 50 | 184 | 48 |
取り方:売上368億円の約35%と推定。1施設年約40万円と置いて3.2万施設に推定(軽い版)。【AI エージェント代替】求人の仲介は、求職者がAIの検索に流れ数量が縮む恐れがある。
医療プラットフォーム
電子カルテ・オンライン診療などを診療所・病院に売る。
| 数量契約医療機関数(万施設、推定) | 価格1 施設当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.5 | 98 | 147 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2.1 | 127 | 268 | 40 |
取り方:売上の約40%と推定。1施設年約98万円と置いて1.5万施設に推定。【AI エージェント代替】電子カルテは記録の正本で、席課金型ほどは縮まない。
医療ヘルスケア
調剤・訪問看護など現場の体で稼ぐ事業。
| 数量拠点数(拠点、推定) | 価格1 拠点当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 0.31 | 93 | 2 |
| 10 年後 中立 | 345 | 0.42 | 143 | 7 |
取り方:売上の約25%と推定。1拠点年約0.31億円と置いて300拠点に推定。現場の体の事業で、AI代替は限定的。
リスクと懸念
利益率が上がらない
営業利益率は過去の山でも13%、直近は6%台だ。医療プラットフォームの先行投資が実らなければ、10年後も1割に届かない。
AI エージェントによる採用仲介の置き換え
求職者が生成AIの検索や直接応募に流れれば、成果報酬型の求人の数量が縮む。中立でも価格は物価に届かないと置いた。
電子カルテの価格競争
診療所向けは大手や新興の競合が多く、値下げ圧力が強い。契約は伸びても単価が上がりにくい。
買収と純負債
買収で純負債が75億円に増えた。のれんの減損や、買収の効果が出ない場合は、自己資本が痩せる。
今後の分かれ目
- 医療プラットフォームの営業利益率が2桁に乗る
- 先行投資の回収が始まった証拠。利益率を高く置き、やや楽観に近づく。
- 採用事業の契約施設数と成果報酬が減り始める
- AIによる置き換えの兆し。数量を下げ、やや悲観に近づく。
- 配当性向30%を超える還元や大型の自社株買いが出る
- 現金の戻り方を上げる根拠になる。
- 大型の買収で純負債が自己資本を超える
- 財務の余裕が消える。確率を下側へ寄せる。
見ておくもの
- 医療プラットフォームの営業利益率
- ジョブメドレーの契約施設数と成果報酬
- 純有利子負債と自己資本
- 27年12月期の営業利益36億円が届くか
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や売上の倍率を見ず、事業のROE・k・gから式で置いた。黒字化済みで、先行投資の回収は筋書きの確率で扱った。kは7.5%にqualityの0%を足した7.5%。g_longは2%。売上の内訳と利益は推定。中期経営計画の数字は確認できず、還元は性向30%の数字があった。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。