結論
カバーは、VTuber(動画や配信で活動するバーチャルなタレント)の事務所「ホロライブ」を運営する会社だ。稼ぎはグッズ、ライブ、配信の課金、ライセンスの 4 本に分かれる。2026年3月期の売上は 493 億円で、前の期より 14% 増えた。
筆者の結論は、今の値段はやや割高だ。ファンに支えられた IP の力は本物だが、営業利益率は 14% で、同じ業界のトップの 36% にまだ遠い。10 年後の利益を堅めに見積もると、本質価値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。
グッズ、とくにホロライブのトレーディングカードが成長を引っ張った。一方で、配信と自社ショップは足踏みし、2026年4〜6月は売上が前年より 8% 減った。タレントの顔ぶれの入れ替わり、北米の関税、物流の移行が重なった。メタバース「ホロアース」の終了で 33 億円の減損も出た。
強みは、ファンの熱量と、世界に開いた出口の多さだ。ライブは世界ツアーに広がり、ライセンスは海外企業との取引が増えている。スマホゲーム「hololive Dreams」も 2026年7月に世界配信が始まり、200 万ダウンロードを超えた。
弱みは、稼ぎの源が人に寄りかかることだ。タレントが卒業すれば、その人のファンの財布は動く。会社は育成の枠を広げているが、利益率を上げながら人を増やすのは簡単ではない。
今の株価はこの会社の利益が会社予想どおり戻り、さらに伸びることを前提にしている。10 年の筋書きで測ると、楽観でようやく今の値段が見える。こうした見立てが筆者の結論だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは、10 年後もこの事業が存在し、いまより強いかだ。ホロライブの IP は、すでに世界の標準的なバーチャル芸能の 1 つになった。この点は評価できる。
次に、オーナーの利益だ。利益のうち、物販の在庫と人への投資に回る分は大きい。売上が伸びても、手元に残る現金は売上ほど増えない。2026年3月期の純利益 30 億円には減損が含まれるが、会社予想の 49 億円も、売上の 1 割にとどまる。
堀は強いが、人に結びついている。企業の価値の多くが、個々のタレントの活動の継続に依存している。10 年後を見通す力は、普通の消費財より低いと筆者は考える。だから資本コストにも、ある程度の安全域を載せた。
経営の資本配分は、まだ試験中だ。ホロアースの損失、500 億円の投資計画、自社株買いと、評価は割れる。ただし、自社株買いを出した決断は、数字で現金を返す意思を示した。
払う値段の安全域は、薄い。今の時価総額は、会社予想の利益の 20 倍を超える水準にある。この値段を正当化するには、利益率が ANYCOLOR に近い水準まで上がる必要がある。そこまで読み込めない以上、筆者は今の値段を割高とみる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は物販だ。2026年3月期の売上 493 億円のうち、マーチャンダイジングが 237 億円と半分近くを占める。アクリルスタンド、アパレル、ボイスなどに加え、ホロライブのトレーディングカードが約 72 億円まで育った。自社ショップと小売店、海外への越境販売で売る。
2 つ目はライブとイベントで、92 億円。ワールドツアー、国内の大型ライブ、台北での野球球団とのコラボなどがあたる。3 つ目は配信とコンテンツで、91 億円。投げ銭、メンバーシップ、広告、楽曲やアーカイブの収益が入る。4 つ目はライセンスとタイアップで、72 億円。企業が IP を借りて商品や広告に使う。案件の数も取引先の数も増えている。
この 4 本は利益率がちがう。物販は原価と物流がかかるので薄い。ライセンスは貸すだけに近く、利益率が高い。配信は元手が小さい。ライブは会場と演出に費用がかかる。会社全体の営業利益率は、この 4 本の混ざり方で決まる。
新しい柱も立ち上がり始めた。スマホゲーム「hololive Dreams」は、事前登録が 90 万人を超えた末、2026年7月に世界で配信された。ファンクラブ「hololive FANCLUB」、ID 製品「ホロライブアカウント」(登録 100 万人超)は、買ってもらう関係を IP の外側にも広げる試みだ。2024年には米国の子会社も営業を始めた。
優良さと弱いところ
堀は、タレントとファンが作る共同体だ。ファンは推しの活動を毎日見る。毎日見れば、グッズ、ライブ、ゲームにお金を使う。この循環を、他社は簡単にはまねできない。ホロライブは国内外に多くのタレントを抱え、1 人が抜けても、箱としての魅力が残る点が強い。
ただし、堀は人の中にある。2025年は卒業の発表が相次ぎ、同年末には株価が急落した。谷郷元昭社長は 2026年2月の決算説明会で、会社が原因のミスが残っていると認めた。筆者は、この認め方を評価する。同時に、人を大切にできない会社の堀は薄い、という見方も強まる。
収益の質では、同業の ANYCOLOR が見本になる。売上 557 億円に対して営業利益は 202 億円で、利益率は 36% だ。カバーは 14% で、物販の比重が大きく、在庫の評価減や物流の移行費が利益を削る。同じ規模の売上で利益が 3 分の 1 という差は、物販の原価と在庫に由来する。
財務は健全だ。純現金は 160 億円で、自己資本比率は 57% ある。ただし、直近の ROE は 15% まで下がった。減損の影響を除いても、過去の 30% 台の ROE には戻りにくい。事業が広がり、元手のかかる物販と人への投資が増えたからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
VTuber 市場は、国内で 2 強が頂点を占める。ホロライブのカバーと、にじさんじの ANYCOLOR だ。どちらも、配信を入口にライブ、物販、ライセンスへ広げる同じ型で伸びてきた。
ANYCOLOR の 2026年4月期は、売上が 3 割増の 557 億円、営業利益が 202 億円だった。ただし、今期は人件費の増加で増収減益の予想だ。人気を保つには、タレントへの支援を厚くするしかない。この費用はカバーにも等しく効く。
市場そのものの伸びは、国内のゲーム全体より速い。理由は、海外のファンが増えているからだ。カバーは台北、北米、東アジアで取引と動員を増やしている。Twitch との協業や、ゲームの授賞式での露出も続く。ただ、為替は 150 円で変わらないと置くので、円安の恩恵は見込まない。
脅威は 3 つある。1 つ目は、海外の大手が VTuber に本気で参入することだ。2 つ目は、生成 AI による低コストのバーチャルタレントが増え、人気が分散することだ。3 つ目は、アプリストアの手数料と課金の規制だ。ゲームの利益を直接削る。ホロライブの TCG は、国内外のカードゲームの大手と棚を争う。ここは、IP の力だけでは勝てない世界だ。
業界共通の前提として、世界のゲーム市場は年 4〜6% で伸びる。カバーは、その外側にあるファン経済の伸びも取り込むが、その分、ヒットの有無で利益が振れる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、いま方針の転換点にある。会社は「量的拡大から質的拡大へ」と掲げ、2030年に向けた財務目標は変えていない。営業キャッシュフローのうち約 500 億円を、組織の強化、研究開発、機動的な買収に回す方針だ。筆者は、この 500 億円の使い道を最も注視している。
2026年5月には、30 億円を上限とする自社株買いを発表し、7 月までに金額の上限まで終えた。会社は「現金創出力と今の市場価値の隔たり」を理由に挙げた。配当は大きくなく、還元の主役は今のところ自社株買いだ。
創業者で社長の谷郷元昭氏は、約 3 割(集計サイトの値)を持つ。売り買いの自由度は高いが、支配株主がいる会社なので、買収される可能性は低い。外部への買収より、タレントの育成と自社の事業の強化に資金が向かう。
メタバース「ホロアース」の 33 億円の減損は、資本配分の失敗だった。筆者は、この反省が今後の投資の規律につながるかを見る。原宿の店舗や倉庫の賃借は、将来にわたって払う固定の約束で、2028年3月期から新しいリース会計で貸借対照表に載る。
【実行済み分の扱い】2026/5〜7 月に実行した上限 30 億円の自社株買い(株数に反映ずみ)は、自己資本の起点を 170 億円に引き済みで、10 年の還元には入れていない(純現金も 30 億円引き済み)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホロライブは、まだ世界で数%の人にしか届いていない。海外のファンの伸びは速く、台北の 3 日間で約 10 万人が動いた。北米でも Twitch と 24 時間のイベントを開いた。ライブ、物販、ライセンスのどれも、海外はこれからが本番だ。
スマホゲーム「hololive Dreams」は初日に 100 万ダウンロードを超え、すぐに 200 万を超えた。ゲームは、物販より利益率が高く、ファンの課金を毎日起こす。これまで足りなかった、安定した継続課金の柱になる。
ライセンスは、72 億円から 190 億円超へ伸ばせる。企業が IP を借りる案件は、貸すだけで利益率が 4 割を超える。ANYCOLOR の営業利益率は 36% で、カバーの 14% との差は、物販と在庫の効率化で縮められる。調達の改善と倉庫の統合は、すでに動いている。
2027年3月期の営業利益は、人への投資で 32 億円の費用増を飲み込んで、前期と同じ 70 億円を見込む。この投資は、次の育成枠、サポート体制、ゲームの開発に向く。投資が実を結べば、利益率が 20% を超える局面が来る。会社は 2030年の目標を取り下げていない。
慎重な見方
利益は、すでに減り始めている。2026年3月期の営業利益は前の期より 12% 減り、2026年4〜6月は 33% 減った。売上が伸びているのに利益が減るのは、利益の出ない売り方に偏っているからだ。
原因はタレントにもある。卒業が相次ぎ、配信の売上は 2% 減った。谷郷社長は、会社が原因のミスが残っていると認めた。人が辞めれば、ファンの財布は動く。育成枠を広げても、新人がスターになるには時間がかかる。
物販は、トレーディングカードに寄りすぎている。TCG は発売時期と商品の組み合わせで売上が大きく動き、2026年4〜6月に物販は 22% 減った。在庫の評価減も出た。カードゲームの市場は、すでに国内外の大手が占めている。
メタバース「ホロアース」の 33 億円の減損は、IP の活用が必ずしも収益に結びつかない証拠だ。500 億円の投資計画は、同じ失敗を繰り返しかねない。ゲームのヒットは、確率の低い賭けだ。
今の値段は、会社予想の純利益の 20 倍を超える。この予想が達成できなくても割高だが、達成できても割高だ。ANYCOLOR との利益率の差は、構造の差だ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には、海外の伸び、ゲーム、ライセンスという具体的な柱がある。慎重な見方の指摘は、利益が売上に追いついていない、人への依存が高い、という現実の数字に支えられている。
どちらも事実だが、10 年の利益と資本コストで測ると、慎重な見方のほうが強い。強気の見方が正しくても、利益率が 20% 台に届くかどうかが分かれ目で、中立では 18% 弱にとどまる。確率は、中立にやや厚く、悲観にも 1 割強を置いた。人に依存する事業は、構造的に崩れる場合の損失が大きいからだ。結論はやや割高である。割安とは言えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,215 円2,688 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 408 円260 億円)。 今の値に割り戻すと 2,279 円1,453 億円、今との差 +43.3%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,322 円5,944 億円 | 703 円448 億円 | +530.5% | +20.2% | 1,002 円639 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,454 円4,116 億円 | 528 円337 億円 | +339.1% | +15.9% | 1,536 円980 億円 |
| 中立 | 36% | 4,462 円2,845 億円 | 408 円260 億円 | +206.3% | +11.8% | 1,753 円1,118 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,142 円728 億円 | 356 円227 億円 | −5.8% | −0.6% | 300 円191 億円 |
| 悲観 | 12% | 235 円150 億円 | 31 円20 億円 | −83.2% | −16.4% | 32 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,215 円2,688 億円 | 408 円260 億円 | +190.8% | +11.3% | 4,623 円2,948 億円 |
今の株価時価総額 1,590 円1,014 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 世界の標準的な芸能になる 利益 249 億円 · PER 22.7 倍 · 株価時価総額 9,322 円5,944 億円
ホロライブが世界の標準的なバーチャル芸能になる筋書きだ。海外のファンが倍以上に増え、ライブは世界の主要都市を回る。「hololive Dreams」は、ファンの課金を毎日起こす柱として定着する。ライセンスは数倍に伸び、企業の使い方も商品から広告、ゲームへ広がる。利益率の高い収益が増え、物流の効率化も進み、営業利益率は 2 割を超える。ANYCOLOR との差は大きく縮まる。育成枠から次のスターが生まれ、卒業の波も吸収できる。会社は 500 億円を成長投資に回し、自社株買いも続ける。筆者は、この姿を可能性として認めるが、全部が同時にうまく行く必要があるので、確率は低くみる。
- 配信・コンテンツ:数量 244(課金・視聴で支えるファンの数(万人))× 価格 8,280(1 人あたり年間支出(円))→ 売上 202 億円・営業利益 73 億円。海外ファン 2 倍超
- ライブ・イベント:数量 264(延べ来場・視聴チケット数(万人))× 価格 10,637(1 人あたり単価(円))→ 売上 281 億円・営業利益 62 億円。ライブ世界ツアー
- マーチャンダイジング:数量 2,090(販売点数(万点))× 価格 3,450(平均単価(円))→ 売上 721 億円・営業利益 87 億円。物流効率化
- ライセンス・タイアップ:数量 1,920(取引・案件の件数(件))× 価格 1,656(1 件あたり売上(万円))→ 売上 318 億円・営業利益 153 億円。ライセンス 3 倍
倍率:事業の純利益 249 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 45.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 26.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.7 倍。全体の PER 22.67 倍、時価総額 5,645 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外、ゲーム、ライセンスが同時に当たる必要があり、強いが連続成功の確度は高くない。利益率が 2 割を超える前例が、同業の ANYCOLOR にあることを考慮して 1 割を置いた。
やや楽観 22% ゲームとライセンスが育つ 利益 175 億円 · PER 22.2 倍 · 株価時価総額 6,454 円4,116 億円
ゲームとライセンスが育ち、物販も伸びる筋書きだ。海外の売上が着実に増え、TCG は安定した柱になる。ゲームは当たりと外れを繰り返しながらも、毎年の継続課金が積み上がり、会社の第 2 の稼ぎ口に育つ。営業利益率は 2 割弱まで上がる。ただし、人への投資が重く、ANYCOLOR の水準には届かない。卒業は続くが、新人の育成が追いつく。ライブは毎年、世界ツアーを開き、動員が増える。500 億円の投資は、買収と育成に分かれて使われる。株主への還元は純利益の 3 割ほどで、自社株買いが中心となる。タレントの入れ替わりが続いても、新しい顔ぶれが人気を引き継ぐ。会社は、IP の使い道を広げることに成功し、10 年後も世界の主要なバーチャル芸能の 1 社であり続ける。
- 配信・コンテンツ:数量 206(課金・視聴で支えるファンの数(万人))× 価格 8,040(1 人あたり年間支出(円))→ 売上 165 億円・営業利益 55 億円。海外が着実に増加
- ライブ・イベント:数量 222(延べ来場・視聴チケット数(万人))× 価格 10,329(1 人あたり単価(円))→ 売上 229 億円・営業利益 44 億円。ライブ拡大
- マーチャンダイジング:数量 1,710(販売点数(万点))× 価格 3,350(平均単価(円))→ 売上 573 億円・営業利益 57 億円。TCG が安定
- ライセンス・タイアップ:数量 1,560(取引・案件の件数(件))× 価格 1,608(1 件あたり売上(万円))→ 売上 251 億円・営業利益 113 億円。ライセンス 2.6 倍
倍率:事業の純利益 175 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 39.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.2 倍。全体の PER 22.18 倍、時価総額 3,879 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ライセンスと海外が伸びる道筋は具体的に見え、会社予想の人への投資が実を結べば到達できる。やや楽観は中立より少し低く置いた。
中立 36% 売上は倍、利益率は少し改善 利益 123 億円 · PER 21.6 倍 · 株価時価総額 4,462 円2,845 億円
人気が続き、売上は 10 年で 2 倍になる。ただし利益率は大きくは上がらない筋書きだ。配信は海外のファンで微増にとどまり、ライブとライセンスが伸びる。物販は TCG と海外の越境販売で増えるが、利益率は低いままだ。営業利益率は 17% ほどで、2026年3月期の 14% から少し良くなる。ゲームは育つが、会社全体の利益を押し上げるほどにはならない。ホロアースのような失敗がまた出る年もある。タレントの入れ替わりは続くが、会社全体のファンは減らない。この中立の姿は、IP の力が確かで、利益の質は物販の重さにしばられる、という見立てだ。
- 配信・コンテンツ:数量 175(課金・視聴で支えるファンの数(万人))× 価格 8,040(1 人あたり年間支出(円))→ 売上 141 億円・営業利益 42 億円。配信は微増
- ライブ・イベント:数量 180(延べ来場・視聴チケット数(万人))× 価格 10,329(1 人あたり単価(円))→ 売上 186 億円・営業利益 32 億円。ライブ 1.5 倍
- マーチャンダイジング:数量 1,425(販売点数(万点))× 価格 3,350(平均単価(円))→ 売上 477 億円・営業利益 38 億円。物販 TCG 中心
- ライセンス・タイアップ:数量 1,200(取引・案件の件数(件))× 価格 1,608(1 件あたり売上(万円))→ 売上 193 億円・営業利益 81 億円。ライセンス 2 倍
倍率:事業の純利益 123 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.6 倍。全体の PER 21.56 倍、時価総額 2,652 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上が伸びても利益率が大きくは上がらない姿が、足元の数字(営業利益率 14%、2026年4〜6月の 33% 減)と整合する。2 つの見方の落としどころとして最も厚くした。
やや悲観 20% 競争に押され利益が伸びない 利益 63 億円 · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 1,142 円728 億円
物販とゲームが伸び悩み、競合に押される筋書きだ。ANYCOLOR などが人材と海外で先行し、ホロライブの伸びが国内で鈍る。TCG は海外の大手に棚を取られ、物販は横ばいに近くなる。ゲームは当たらず、投資だけが残る。タレントの卒業が続き、配信は縮む。営業利益率は 1 割ほどに落ちる。会社は、人への投資を減らせず、費用が固定化する。500 億円の投資は、利益に結びつかない案件も混ざる。売上は増えても利益が増えない。株主への還元は、成長投資を優先して小さくなる。ファンの熱量は残るが、その熱量を利益に変える仕組みが追いつかず、会社の評価は 2 番手の事業者としての扱いにとどまる。
- 配信・コンテンツ:数量 145(課金・視聴で支えるファンの数(万人))× 価格 7,800(1 人あたり年間支出(円))→ 売上 113 億円・営業利益 27 億円。卒業で配信縮小
- ライブ・イベント:数量 138(延べ来場・視聴チケット数(万人))× 価格 10,020(1 人あたり単価(円))→ 売上 138 億円・営業利益 17 億円。ライブ横ばい寄り
- マーチャンダイジング:数量 1,045(販売点数(万点))× 価格 3,250(平均単価(円))→ 売上 340 億円・営業利益 17 億円。TCG が競争に負ける
- ライセンス・タイアップ:数量 900(取引・案件の件数(件))× 価格 1,560(1 件あたり売上(万円))→ 売上 140 億円・営業利益 51 億円。取引先の伸び鈍化
倍率:事業の ROE 12.4%(自己資本は今 170 億円+10 年の純利益−還元で流した)。RONIC=10.5%、g 4%。正当化 PER=13.7 倍。競争に押され利益が固定費にのみこまれる筋書きなので、構造的な負けとして上限の 7 割、9.6 倍に置く(7 割への引き上げはしない)。
確率:人気の分散、TCG の競争、ゲームの不発という慎重な見方が突く点は、足元の数字にすでに出ている。強い見方に確率を寄せ、やや悲観を厚めに置いた。
悲観 12% 人の流出で構造的に負ける 利益 −10 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 235 円150 億円
構造的に負ける筋書きだ。主力のタレントの卒業が重なり、ファンが他の事務所や海外の VTuber に移る。生成 AI による低コストのバーチャルタレントが現れ、配信の人気が分散する。物販は在庫が積み上がり、価格を下げて売る。ゲームは失敗し、投資が回収できない。ライブは赤字が出る。ライセンスの取引先も減り、IP の価値が下がる。会社は固定費(人件費、倉庫、店舗の家賃)を減らせず、営業赤字に沈む。IP は残るが、成長する会社ではなく、普通のコンテンツ企業として評価される。減損も出て、自己資本は減る。還元は赤字の年に止まり、それまでの自社株買いと小さな配当を、手元の現金や資産の売却で払うだけにとどまる。
- 配信・コンテンツ:数量 91.4(課金・視聴で支えるファンの数(万人))× 価格 6,900(1 人あたり年間支出(円))→ 売上 63 億円・営業利益 8 億円。タレント流出
- ライブ・イベント:数量 84.0(延べ来場・視聴チケット数(万人))× 価格 8,864(1 人あたり単価(円))→ 売上 75 億円・営業利益 0 億円。ライブ赤字
- マーチャンダイジング:数量 570(販売点数(万点))× 価格 2,875(平均単価(円))→ 売上 164 億円・営業利益 −5 億円。在庫で値下げ
- ライセンス・タイアップ:数量 480(取引・案件の件数(件))× 価格 1,380(1 件あたり売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 10 億円。取引先減少
倍率:営業赤字で稼ぐ力の価値がほぼ無いので PBR で測る。床は今の自己資本 200 億円に 0.75 倍を掛けた 150 億円で、純現金(自社株買い後で約 130 億円)に売れる資産の税後をわずかに足した水準。市場の値付けからは置いていない。
確率:卒業の相次ぎと、会社起因のミスを社長が認めたこと、AI タレントなど新しい競争があり、人に依存した事業の崩れ方は大きい。資本コストの寿命の上乗せとは別に、構造が崩れる確率として 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
配信・コンテンツ
投げ銭・メンバーシップ・広告・楽曲やアーカイブの収益。
| 数量課金・視聴で支えるファンの数(万人) | 価格1 人あたり年間支出(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 152 | 6,000 | 91 | 25 |
| 10 年後 中立 | 175 | 8,040 | 141 | 42 |
取り方:配信・コンテンツ売上 91.4 億円(開示)を、支えるファン約 152 万人×1 人あたり年間約 0.6 万円で割った推定。人数と単価は非開示で、投げ銭・メンバーシップ・広告の平均を想定した。営業利益はセグメント非開示のため推定(利益率約 27%)。単価は物価並みに上げ、人数は卒業と海外ファンの増減で動かした。
ライブ・イベント
ワールドツアー、国内の大型ライブ、コラボイベント、ファンイベント。
| 数量延べ来場・視聴チケット数(万人) | 価格1 人あたり単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 7,708 | 93 | 12 |
| 10 年後 中立 | 180 | 10,329 | 186 | 32 |
取り方:ライブ・イベント売上 92.5 億円(開示)を、延べ約 120 万人×1 人あたり約 0.77 万円で割った推定。台北の 3 日間で約 10 万人など、会場とオンラインを合わせた動員の目安。人数・単価は非開示。営業利益は推定(利益率約 13%、会場と演出の費用が重い)。単価は物価並みに上げた。数量は実物(延べ来場・視聴チケット数)で、ワールドツアーなど公演を増やす事業の事実による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 人あたり単価の 1.34 倍だけで見ている。
マーチャンダイジング
アクリルスタンド・アパレル・ボイスなどのグッズ、トレーディングカード、越境 EC。
| 数量販売点数(万点) | 価格平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 950 | 2,500 | 238 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1,425 | 3,350 | 477 | 38 |
取り方:マーチャンダイジング売上 237.5 億円(開示、うちカード約 72 億円)を、平均単価約 0.25 万円で割って約 950 万点と逆算した推定。点数・単価は非開示。営業利益は推定(利益率約 5%、2026年3月期は在庫評価減と物流の移行費で押し下げられた年)。単価は物価並みに上げた。数量は実物(販売点数)で、グッズ・トレーディングカードの展開を広げる事業の事実による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は平均単価の 1.34 倍だけで見ている。
ライセンス・タイアップ
企業が IP を借りて商品・広告・コラボに使う収益。
| 数量取引・案件の件数(件) | 価格1 件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 1,200 | 72 | 28 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 1,608 | 193 | 81 |
取り方:ライセンス・タイアップ売上 72.0 億円(開示)を、年間約 600 件×1 件あたり約 1,200 万円で割った推定。件数・単価は非開示で、取引企業数の伸びに合わせた目安。営業利益は推定(貸す事業なので利益率約 39%)。単価は物価並みに上げた。数量は実物(取引・案件の件数)で、取引企業数が増える事業の事実による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 件あたり売上の 1.34 倍だけで見ている。
リスクと懸念
タレントの卒業と配信の細り
稼ぎの源がタレントの活動にある。2025年は卒業が相次ぎ、2026年3月期の配信売上は 2% 減った。社長は会社起因のミスが残ると認めている。新人が育つ前に主力が抜ければ、ファンの財布も動く。
物販・TCG への偏り
物販が売上の約半分を占め、TCG が成長を引っ張る。TCG は発売時期と商品の組み合わせで売上が動き、2026年4〜6月は物販が 22% 減った。利益率が低く、在庫の評価減も出る。
新規投資の失敗(ホロアース型)
メタバース「ホロアース」は 33 億円の減損で終わった。営業キャッシュフローのうち約 500 億円を成長投資に回す方針なので、同じ型の失敗が出れば自己資本を削る。
ゲームの不確実性
「hololive Dreams」は立ち上がりが良いが、スマホゲームは数か月で課金が落ちるのが普通だ。アプリストアの手数料と課金規制も、利益を直接削る。ゲームは強気の見方の要で、外れれば筋書きが崩れる。
海外関税と為替・原油
北米向けの EC は、関税で一時、前年の半分まで落ち込んだ。原油高は商品の製造原価を押し上げる。会社も下振れ要因に挙げている。この前提では為替は 150 円で変わらないと置く。
創業者と支配構造
谷郷社長が約 3 割を持つ。意思決定は早いが、1 人への依存が高く、少数株主の声が届きにくい。後継の体制や役員報酬の返納など、ガバナンスの動きを見ておく必要がある。
賃借の固定費
原宿の店舗、倉庫、事務所は賃借で、家賃は売上が落ちても減らない固定費だ。2028年3月期から新リース会計で貸借対照表に載り、見かけの純現金や自己資本比率が下がる。
今後の分かれ目
- 2026年度の営業利益が会社予想の 70 億円を超え、利益率が 15% を超えたら
- 投資の負担を飲み込めている。やや楽観の確率を少し上げてよい。
- 「hololive Dreams」が 1 年たっても課金が落ちず、ゲームが継続的に収益を出したら
- ゲームが利益率を押し上げる。楽観とやや楽観の筋書きに重みを移す。
- 主力タレントの卒業が 2〜3 年続けて重なり、配信売上が減り続けたら
- 人に依存した堀が崩れ始めたと見て、悲観とやや悲観の確率を上げる。
- ライセンスの取引件数が毎年 2 割以上伸び続けたら
- 利益率の高い収益が積み上がる。中立の利益率を見直し、18% を超える方向へ動かす。
- 500 億円の投資で大型の買収や、ホロアースに似た失敗が出たら
- 資本配分の規律に疑いが出る。悲観の確率を上げ、倍率の安全域を厚くする。
- 海外の大手が VTuber 事業に大規模に参入したら
- ファン経済の競争が一気に激しくなる。物販・配信の筋書きを下方に見直す。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と物販・配信の売上の前年比
- hololive Dreams のダウンロードと継続課金の推移
- ライセンス・タイアップの取引件数と海外クライアントの数
- 主力タレントの卒業と新人(mekPark など)の立ち上がり
- 500 億円の成長投資の使い道と、自社株買いの追加
倍率と資本コストの決め方
先にセグメントを 4 つに分け(配信・ライブ・物販・ライセンス)、ファンの数や点数などの数量と物価並みの単価で 10 年を積んだ。セグメントの利益は非開示のため推定で、同業 ANYCOLOR の利益率を参考に実力の上限をみた。倍率は式(正当化 PER =(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 7.75%、堀は普通で残る割合 1/2)から置き、今の PER や同業の倍率は見ていない。純現金は運転資金・前受金・リースの約束が厚く、余りとして分けていない。2028年3月期の新リース会計で数字の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→22.67 倍・やや楽観 PER 13.2→22.18 倍・中立 PER 11.9→21.56 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。