結論
ソーシャルワイヤーは、インフルエンサーを使った宣伝、プレスリリース配信、報道の収集、取引先のリスク調査を企業に売る会社である。筆者の結論は割高だ。リスクチェックに育ちつつある独自データの強みは認めるが、売上の大部分がAIによる制作・配信・調査業務の省力化にさらされ、現在の時価総額26億円を長い目で正当化するだけの持続的な稼ぎには確信が持てない。
会社は赤字事業の整理とジーニーとの資本提携を経て立ち直り、2026年3月期には売上35億円、営業利益2億円台を回復した。インフルエンサーPRの買収と固定費削減により、2028年3月期の売上50億円、営業利益8億円を目指す。ただし、この目標はまだ実績ではない。過去には売上が増えても2023年3月期に巨額の最終赤字を出し、自己資本がほぼ失われた。
10年後に残る価値を考えると、取引審査に不可欠な過去の報道データを持つRISK EYESと、広告主・媒体との関係を持つ既存サービスは同列に扱えない。前者は解約が少なく、顧客の審査フローに入り込める。一方、インフルエンサーの選定、文章作成、掲載記事の探索や集計は、発注側のAIエージェントが直接実行する可能性が高い。中立では単価の名目上昇だけで10年を乗り切れるとは見ない。
買収による短期の増収と10年後の本質価値を切り離す必要がある。新事業の立ち上げに市場が反応しても、顧客が繰り返し料金を払い、投下資本を上回る利益を残す証拠は別だ。良いニュースを過小評価するのではなく、今後の利益と現金の実績がそろうまで安全域を要求したい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって最初の問いは、この会社が十年後も広告主や企業の審査担当から欠かせない相手と見なされるかである。@Pressは配信先を、クリッピングは情報収集の経験を、RISK EYESは過去の報道に結び付く検索データを持つ。だが、参入障壁の強さは異なる。人が探し、選び、報告すること自体を顧客が買ってきたサービスは、AIが普及すると価格の根拠を失いやすい。
RISK EYESには、繰り返し利用される独自データと低解約率がある。ここに再投資して正確なデータの追加、顧客の審査履歴、API接続の便利さを高めれば、オーナー利益を長期に守れる余地はある。ただし、全社の売上に占める割合はまだ約14%であり、この優良な一部を根拠に会社全体へ高い倍率を払うことはできない。成長投資の成功を測るなら、売上の伸びよりも顧客維持後に残る利益と必要な資本の少なさが先である。
最大の懸念は、資本配分の判断を外したときに少数株主が負う痛みだ。撤退と損失で資本を失い、希薄化を伴う資金調達で再建した。今後も買収で売上を増やすだけなら、買収価格とのれん償却を含めた増分利益が資本コストを超えたか判定できない。無配で蓄える利益にも規律が必要だ。
現在の事業を買うとしたら、価格を決める前に三つの実績を待ちたい。リスクチェックの有料顧客が低い解約率を保って伸びること、PRサービスがAIを使って人員を減らしても単価を守ること、買収に支払った金額より明確に多い現金を生み出すことである。再建後の実績はまだ短い。十年持つ対象として否定するのではなく、その不確実性を十分に引いた値段でしか評価しない。
何で稼ぐ会社か
同社の開示上の報告セグメントはデジタルPRの一つだが、稼ぎ方は四つに分かれる。最大のインフルエンサーPRはFind Modelを軸に、買収したiHackなども使って広告主と発信者を結び、企画、出演者の選定、投稿制作、効果測定を請け負う。顧客の広告費から報酬を得るため、案件数だけでなく継続率、運用工数、外注費、広告主が内製化する範囲が利益を左右する。2026年3月期の売上は約14.8億円で、全体の約42%を占める。
次の柱はプレスリリース配信の@Pressである。企業から配信を受託し、多数の提携メディアや記者へ情報を届ける。配信網には一定の価値があるが、企業が原稿を作る費用はAIで下がり、顧客はPR TIMESなどとの配信先、掲載実績、単価を比較しやすい。年間売上約9.4億円に対して、四半期の取引社数は期中に減少しており、新規獲得による補充が欠かせない。
クリッピングは、新聞、ウェブ、テレビ、SNSの報道や評判を探して企業へ報告する。約6.1億円の売上には人が確認して納める部分が多く、AIが最初に置き換えやすい。もっとも、著作権に配慮した提供、必要な媒体へのアクセス、誤報や同名企業の取り違えを防ぐ品質管理には、引き続き専門業者への需要が残る。2026年10月に発表されたクリップマスター・セキュリティは新しい入口だが、売上実績の開示がないため基礎収益には加えていない。
RISK EYESは、反社・不祥事などの報道や制裁情報を収集した独自データベースで、取引先や関係者の審査を支える。2026年3月期の売上は約4.9億円と小さいが、会社が示す解約率は0.5%以下で、取引社数は四半期を追って増えている。API接続や判定履歴を通じて顧客の承認業務に入り込むため、単なる検索画面よりも乗り換えの負担が大きい。会社別の実際の顧客単価やサービス別営業利益は未開示なので、以下の数量と採算には推計が含まれる。
優良さと弱いところ
強みを一つだけ選ぶなら、RISK EYESに蓄積された検証済みのリスク情報だ。2015年から集めた過去報道と独自のスクリーニングデータに加え、会社の資料には0.5%以下という低い解約率が示されている。さらにAPI連携によって顧客の審査業務に組み込める。この二つ以上の証拠があるため、同サービスだけは単純な席課金ソフトではなく、独自データを正本として利用する事業に近い。ただし、法定の唯一の台帳ではなく、同業者も別のデータを整備できる。
ほかの三事業の堀は弱い。@Pressの配信先ネットワークとメディアとの関係は一日で複製できないが、PR TIMESが持つ顧客との接点や検索流入を奪うのは難しい。インフルエンサーPRでも、有力な発信者と広告主の信頼を得た担当者には価値がある一方、発信者の探索と提案書の作成そのものは機械化が進む。会社が過去の値上げを継続して通せたとの具体的な開示は見つからず、全社に強い価格決定力があるとは評価できない。
資本の稼ぐ力にはさらに慎重になる。営業利益率は2018年と2019年に二桁だったが、2023年には営業赤字に転落し、最終損失が自己資本を傷めた。翌年も赤字となった後、ジーニーの出資で財務を再建した。売上の見かけの拡大が株主一人当たりの価値を増やしたとは言い切れない。
買収した会社の収益、のれんの償却、人員費、既存顧客の契約更新を足し引きした増分の投下資本利益率は、まだ十分な期間で確かめられない。現金を豊富に持つ無借金企業とも違い、SEIRYO取得後は借入が増えている。市場が新サービスの可能性を高く評価しても、持続的な堀の判定は解約、値上げ、実際の現金回収がそろってからでよい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のインフルエンサーマーケティング市場は、サイバー・バズとデジタルインファクトの調査で2024年860億円、2027年1,305億円の予測である。同社の年間売上約14.8億円は2024年の市場と単純比較すると約1.7%に相当する。ただし分子と分母の年度が異なり、買収した会社の売上計上もあるため厳密なシェアではない。競争相手にはサイバー・バズ、BitStar、トリドリなどがいるが、同じ定義で計測した各社の国内シェアは開示されていない。
@Pressが属する広いPR市場には日本パブリックリレーションズ協会による約1,391億円という調査値がある。しかし広告会社への委託やPR活動全般を含み、リリース配信だけの市場ではない。同社が自ら定義する当面の営業対象は約97億円で、そこに売上を照らすと約10%だが、これは全市場シェアではない。PR TIMESとの競争ではネットワークの広さに加え、配信原稿の作成支援と掲載成果の可視化が問われる。
クリッピングについて会社が示す対象市場は約208億円で、自社売上はその約3%に相当する。新聞・雑誌の監視とSNS上の投稿分析では競合も異なり、Meltwaterなどの海外勢を含めて統一したシェアは不明だ。RISK EYESの比較対象として会社が示すリスク・コンプライアンス市場約498億円は、反社チェック専用よりはるかに広い。その広義市場に対する売上比率は約1%で、RoboRoboやリスクモンスターなどと競う実際の狭い市場での地位は別途確かめる必要がある。
今後の十年には二つの逆方向の変化が起こる。広告主のSNS活用と企業のコンプライアンス審査は増えうる一方、同じ売上を得るために必要だった人の制作・配信・調査工数は大きく減る。企業がAIエージェントを使って広告文の制作、発信者の選別、記事の分類を内製化すれば、業界全体の案件需要が増えても外部委託の数量と手数料が減る。独自の取引審査データだけがこの変化に比較的抵抗できる。
2036年にはPR関連の名目市場自体は大きくなっても、同社の獲得する実質の仕事量は全体では減ると考える。市場拡大率をそのまま会社の成長率に当てはめず、各サービスの取引社数、実現単価、競合と比べた顧客維持率から判断する。これが短期の強い受注見通しよりも、中立の長期利益に厳しい理由である。
資本政策と M&A
資本配分の記録は平坦ではない。過去に国内外のシェアオフィスや翻訳などへ事業を広げた後、収益悪化を受けて2023年から2024年にかけて撤退した。2023年3月期の大幅な純損失と翌期の悪化で自己資本が細り、2024年にはジーニーへの第三者割当増資で約13億円を調達した。財務再建に役立った反面、既存株主にとって発行株数のほぼ倍増という希薄化を伴った。
再建後はiHack、SEIRYOなどの取得でインフルエンサーPRを拡張している。取得価格やのれんだけでなく、買収後の広告主の残存、粗利益、人員の流出、借入返済に使える現金を追わなければならない。2026年3月期の純現金は約4.3億円だが、翌四半期は新たな企業取得と借入により余裕が縮んだ。本社移転による固定費削減も継続性を確認したい。
中期ターゲットは2028年3月期の売上50億円、営業利益8億円で、利益率に直すと16%である。明示されたROE目標はなく、2027年3月期は会社予想として売上44.12億円、営業利益4.25億円が示されている。旧方針の配当性向30%目安は見直され、現時点で新しい配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の数字の約束はない。
配当を見送り、代わりに200株以上を半年以上保有する株主向けのデジタルギフトを再開する。2027年3月期の年間総額の目安は約0.15億円であり、利益が再び傷めば継続は保証されない。ジーニーが約49%、上位10株主で約76.5%を保有するため、少数株主への現金の戻りは慎重に見る。現時点でTOBや上場廃止の決定は確認されず、スタンダード市場への変更準備は上場廃止予定と区別する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
事業再建の結果は数字に現れ始めている。赤字だったシェアオフィスと翻訳を整理し、主力のデジタルPRに資金と人員を集中させた。ジーニーの顧客基盤と広告技術を利用できるようになり、買収したiHackやSEIRYOの営業基盤も加わった。インフルエンサーPRの取引社数は2026年3月期の四半期を追って拡大しており、翌四半期にも増勢を保った。企画から効果測定まで一括で請け負えることは、広告主の手間を減らす。
国内のインフルエンサーマーケティング市場はまだ成長し、SNSでの信頼できる推薦の価値は文章生成だけでは消えない。AIは社内の制作工数を下げ、少ない社員で多くの案件を処理する道具にもなる。@Pressの提携メディア網、クリッピングの幅広い収集先、RISK EYESの過去の情報を束ねれば、企業の広報と審査を支える総合的なサービスに進化できる。営業利益率の改善が続けば、固定費を抑えた小規模な事業者の収益は大きく伸びる。
特にRISK EYESは稼ぎの質が高い。過去の報道をためた独自データ、低い解約率、API連携がそろっており、顧客が自ら別の仕組みを構築する費用も小さくない。利益率の高いこの商品が拡大すれば、従来の広告制作の弱さを補える。2026年10月に始めたセキュリティ診断が顧客の困り事を直接解決する新たな柱になる可能性もあるが、実際の売上はまだ見えないので期待にとどめる。中期の売上50億円、営業利益8億円が実現し、その後も再投資に見合う現金が残るなら、過去の混乱を克服した会社として再評価できる。
慎重な見方
再建の短い実績と長期の競争力は違う。2026年3月期の増収には買収が寄与し、翌期も企業取得と固定費削減を前提とする。買収で獲得した売上は経済的な堀ではなく、のれんの償却と借入返済を伴う。過去には売上が増え続けた後に利益を失い、自己資本が一時ほぼ消えた。再び事業領域を広げれば同じ過ちを繰り返す可能性がある。
顧客はAIエージェントを使い、文章作成、配信設定、インフルエンサーの探索、広告効果の比較、新聞・ウェブ報道の整理を社内で安く実行できるようになる。@Pressのメディア網は残っても、PR TIMESとの競争で配信手数料を守れるとは限らない。クリッピングは既に取引社数が横ばいで、インフルエンサーPRは人の企画と運用に依存する。会社がAIを導入して人件費を下げても、顧客も同じ技術を使えるため、節約分の多くが値下げとして渡るだろう。
RISK EYESも万能ではない。独自データの蓄積は評価できるが、制裁リストや公開報道を使った審査を手がける競合が増え、審査の正確性や法令対応の負担は高まる。API接続は便利だが、顧客企業が複数の審査データを統合するようになれば利用単価の引下げを迫られる。全社売上の約86%を占める三事業が縮小する場合、小さな成長商品だけで固定費を吸収できない。株主への現金配分も乏しく、大株主に議決権が集中している。十年後に利益がなくなった際、残った帳簿の自己資本をそのまま受け取れるとは考えるべきではない。
どちらに重みを置いたか
再建とRISK EYESの伸びには実績があり、事業が消えると決めつけるのは誤りだ。一方、売上の大部分はAIが人の作業を代替する領域であり、希薄化を伴った過去の資本政策と買収後の借入増加も無視できない。上側24%、中立32%、下側44%としたのは、短期計画の達成だけでは十年後の継続利益を証明できないからである。下に寄せる理由はこの会社固有の事業構成と資本再建の履歴であり、AI代替の影響は中立の数量と長期成長率に反映済みなので、確率で同じ減少をもう一度掛けたわけではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 134 円16 億円(+ 還元の換算額還元の合計 22 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 74 円9 億円、今との差 −69.9%、 期待の年率 −4.7%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 403 円47 億円 | 51 円6 億円 | +85.5% | +6.8% | 45 円5 億円 |
| やや楽観 | 14% | 272 円32 億円 | 38 円5 億円 | +26.8% | +2.6% | 44 円5 億円 |
| 中立 | 32% | 122 円14 億円 | 26 円3 億円 | −39.9% | −5.4% | 47 円6 億円 |
| やや悲観 | 28% | 51 円6 億円 | 10 円1 億円 | −75.1% | −13.8% | 17 円2 億円 |
| 悲観 | 16% | 12 円1 億円 | 3 円0 億円 | −94.1% | −25.7% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 134 円16 億円 | 22 円3 億円 | −36.5% | −4.7% | 156 円18 億円 |
今の株価時価総額 245 円29 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 省力化の利益を確保し、データの優位が定着 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 403 円47 億円
ジーニーからの案件紹介とFind Model、iHack、SEIRYOの顧客接点がうまく統合され、広告主との直取引が増える。国内のSNS広告利用は成熟後も続き、影響力のある発信者の実際の撮影や信用に対する需要は残る。社内では企画書や効果報告を機械化し、社員の人数を増やさずに案件を処理する。これにより制作工数の価格は上がらなくても、インフルエンサーPRの営業利益率は高まる。
@Pressは主要媒体との接点を維持し、顧客減少に歯止めがかかる。クリッピングは著作権処理と確認品質を組み合わせ、外注する意義のある高難度の仕事に絞って存続する。RISK EYESは古い不祥事報道の検索精度とAPI連携を強化し、審査データを切り替えたくない企業が継続利用する。新規のセキュリティ診断は売上金額の裏付けが出るまでは上振れとして扱わない。
固定費の削減が維持され、買収した事業で追加の減損を出さない。2036年の全社売上は約37億円と現在に近いが、少ない人員で稼ぐため営業利益は約5.7億円に改善する。創出した現金の一部は配当と優待に回り、希薄化を伴う大型増資は不要となる。事業の真の良化は、売上が増えることよりも同じ売上からより多くの利益を残せる点にある。
- インフルエンサーPR(Find Model・iHack):数量 195(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.07(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。顧客社年0.98倍、単価据え置き。人員生産性改善で営業利益率22%。
- プレスリリース配信(@Press):数量 2,799(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.00(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。顧客0.90倍、単価1.15倍。配信網と省力化を維持。
- クリッピング・メディアリスニング(Clip Master):数量 333(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.02(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。顧客0.80倍、単価1.30倍。人手の確認は付加価値部分だけに限定。
- リスクチェックSaaS(RISK EYES):数量 806(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。顧客1.00倍、単価1.30倍。独自データとAPI利用が残る。
倍率:資本コストk=8.5%、長期g_long=0%、全社の堀はweakでRONIC=k+(ROE-k)/3を使う。2036年ROE=3.41/48.0=7.1%でk以下のため、再投資成長による超過価値を認めない。正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=1/0.085=11.7647倍を上限どおり採用し、営業事業の純利益3.41億円に適用。
確率:案件の制作を省力化しながら顧客の直契約とリスク情報の品質を保ち、固定費改革と買収統合まで成功する複合条件であるため上側でも10%に限定する。AI製品の新規売上の金額開示はまだないため、AIという名称を理由に広告運用の数量増加を仮定しない。
やや楽観 14% 顧客維持と効率化で利益を守る 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 272 円32 億円
国内のインフルエンサー市場は伸びるものの、発注企業のAI活用で企画の外注量は減る。Find Modelは得意分野に営業を絞り、ジーニーとの協業と買収会社の既存顧客を生かすことで、案件の流出を緩やかに抑える。人件費と制作工程を整理し、単価を維持しながら営業利益率を保つ。売上よりも採算を優先する戦略が定着する。
@PressはPR TIMESとの競争で取引社数を失うが、配信メディアとの関係と成果の確認機能を使い、一定の料金を確保する。クリッピングは機械で処理できない権利確認と複雑な分析だけを受注し、総取引社数を減らす。RISK EYESは独自の過去報道データとAPIを理由に解約が比較的少なく、広告系三事業を下支えする。
買収で失敗を繰り返さず、主力の再編と本社費削減の効果を残す。2036年の売上は約33億円であるが、効率化により営業利益は約3.7億円を保つ。優待に加え、黒字の余剰分から小規模な配当を再開する余地が生まれる。ただし、なお拡大に多額の資本を必要とするため、買収による再希薄化がないことが前提となる。
- インフルエンサーPR(Find Model・iHack):数量 169(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.07(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 13 億円・営業利益 3 億円。数量0.85倍、単価横ばい。運用の自動化で利益率20%。
- プレスリリース配信(@Press):数量 2,644(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.00(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。数量0.85倍、価格1.12倍。重点顧客との契約継続。
- クリッピング・メディアリスニング(Clip Master):数量 312(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.02(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量0.75倍、価格1.22倍。権利処理などに集中。
- リスクチェックSaaS(RISK EYES):数量 766(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。数量0.95倍、価格1.25倍。データの品質が強み。
倍率:k=8.5%、企業全体の長期名目g_long=0%、堀はweak。事業ROE=2.21/44.1=5.0%でkを下回るため成長の超過価値なしとし、正当化PERの上限1/k=11.7647倍そのものを適用。AI代替の数量減少をPERに再度割り引いていない。
確率:配信とリスクチェックの顧客関係が残り、広告制作のAIによる縮小を内部の生産性向上で吸収するが、中期目標の利益率を十年保てるほどの証拠はまだない。
中立 32% AI代替により仕事量が縮み、データ事業が補う 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 122 円14 億円
インフルエンサーの撮影や商品の使用体験そのものは残る。しかし広告主は候補者の選別、契約の下書き、投稿案、数値報告をAIエージェントで処理し、制作会社に頼む仕事を減らす。Find Modelや買収した事業が市場の成長を十分に取り込めなくなり、顧客社年の数量は現在の約七割になる。報酬は値上げが難しく、名目でもやや下がる。内部の自動化で収益性は改善するが、売上減を完全には補えない。
@Pressは配信ネットワークに価値が残るものの、リリースの作成と配信設定を企業側が内製化するため取引社数は減る。クリッピングは調査・分類・報告の人月がAIに吸収され、売上の三割程度を失う。RISK EYESは報道データの継続整備と低い解約率を生かすが、より低価格の審査データと顧客側の検索統合が広がり、独自データにも価格競争が及ぶ。
収益を生まない買収は控え、本社費の抑制を続けても、全社の売上は約28億円、営業利益は約1.4億円まで細る。中期計画を早い時期に達成しても、それは十年後の同じ利益を保証しない。株主還元は優待を中心に小規模なものにとどまり、残した利益の多くが人員、データ、買収後の資本維持に回る。この筋書きでは純資産が積み上がっても、それに見合う株主利益を生まない。
- インフルエンサーPR(Find Model・iHack):数量 135(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.07(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。広告制作・人月型のAIエージェント代替:数量0.68倍、手数料0.95倍。
- プレスリリース配信(@Press):数量 2,488(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.00(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。画面型SaaSのAI代替:数量0.80倍、価格1.08倍。
- クリッピング・メディアリスニング(Clip Master):数量 270(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.02(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。調査BPOのAI代替:数量0.65倍、価格1.18倍。
- リスクチェックSaaS(RISK EYES):数量 725(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。独自データ型のみ数量0.90倍、価格1.20倍。
倍率:k=8.5%、g_long=0%、moat=weak。終端ROE=0.86/41.2=2.1%とk以下で再投資利益が株主要求利回りに届かない。正当化PER=(1-0/RONIC)/(0.085-0)=11.7647倍、ROEがk以下の上限1/kと一致する。中立は上限そのものを採用。業界の成長率を二重計上しない。
確率:四つのサービスのうち三つは外部委託や操作画面をAIが代替しやすいが、既存メディア網とRISK EYESの蓄積は完全には消えない。今の二事業の成長率をそのまま将来へ延ばさない中心シナリオとする。
やや悲観 28% 受託事業が縮み、調査商品の成長も鈍る 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 51 円6 億円
広告主がAIを使ってインフルエンサーの検索、契約調整、効果測定を自前で進め、外注するのは一部の複雑な企画だけになる。買収した事業の営業人員が失われ、既存顧客への追加販売も伸びない。@PressではPR TIMESを含む代替経路へ配信が移り、利用社数が減る。クリッピングではAIによる記事収集と要約が普及し、人的な調査依頼が大きく減る。
RISK EYESは過去のデータが残るため利用は続くが、反社チェックの競合と顧客の統合購買によって伸びが止まる。独自データの更新を怠れば信頼性が下がるので、事業規模が小さくなっても一定の情報収集費用と開発費を削れない。撤退した事業の固定費は戻らなくても、会社全体としての経営管理と上場維持の費用は残る。
売上は約22億円に減り、営業損益はほぼ均衡する。過去の黒字期に積んだ自己資本がまだ帳簿に存在しても、買収のれんやソフトウェアを現金同様に売れるわけではない。優待は縮小し、追加の配当も出せない。終わりの時価総額は今の純資産に低い倍率を掛けたものではなく、売却可能な金融・運転資産を保守的に処分できる範囲で評価する。
- インフルエンサーPR(Find Model・iHack):数量 113(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.07(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。顧客0.57倍、手数料0.90倍。顧客内製化が進む。
- プレスリリース配信(@Press):数量 2,177(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.00(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。顧客0.70倍、単価横ばい。価格競争が激しくなる。
- クリッピング・メディアリスニング(Clip Master):数量 229(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。顧客0.55倍、単価1.02倍。人手部分が消える。
- リスクチェックSaaS(RISK EYES):数量 685(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。顧客0.85倍、価格1.15倍。独自データへの支払は続く。
倍率:収益が赤字に戻るのでPERでなく清算可能な資産の床を採用する。PBR0.14045の分母は2036年の積み上がった自己資本29.1億円ではなく、現在の自己資本17.8億円に固定する。17.8×0.14045=2.50億円であり、のれん・ソフトウェアを差し引き、売掛金や契約負債を考慮した床2.5億円と整合する。
確率:四半期取引社数の減少が既に見える@Pressとクリッピングが弱含み、買収した広告PRでも顧客の内製化が広がる場合。固定費と償却を十分に減らせず営業赤字へ戻る可能性を重く見る。
悲観 16% 情報仲介の優位を失い、再び資本を傷める 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 12 円1 億円
広告主はSNS上の発信者を選び、契約を結び、投稿実績を把握する作業の大半を自社のAIに任せるようになる。限られた有名発信者との企画以外に広告代理会社を介在させる理由が薄れ、買収したインフルエンサー事業の顧客と担当者が離れる。@Pressのメディアへの送信経路は競合と顧客自身の配信機能に置き換えられ、クリッピングの定型作業は独立の商品としての価値をほぼ失う。
RISK EYESではデータの更新費が増える一方、RoboRoboや他の審査サービスが低価格で広く利用できるようになる。過去の報道を持つだけでは差別化できなくなり、顧客が自社の審査基盤へ情報を集約するため、使用料を引き上げることができない。新設のセキュリティ診断も継続課金の実績に結び付かず、足元の新製品発表は十年後の収益の支えにならない。
全社売上は約15億円にまで縮み、上場維持費用やのれん償却を賄えず営業赤字が続く。企業取得で増えた無形資産を減損し、借入返済に現金を使う。途中の資本流出で2036年の自己資本は約5億円まで減り、追加増資による希薄化も起こりうる。価値の床は現在の売却可能な資産のわずかな残りに限られ、投資家が将来の帳簿価額全額を取り出せる筋書きではない。
- インフルエンサーPR(Find Model・iHack):数量 84.0(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.06(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。顧客0.42倍、手数料0.80倍。受託領域を失う。
- プレスリリース配信(@Press):数量 1,555(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.00(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。顧客0.50倍、単価0.92倍。配信網の優位が損なわれる。
- クリッピング・メディアリスニング(Clip Master):数量 166(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。顧客0.40倍、単価0.95倍。定型調査が代替される。
- リスクチェックSaaS(RISK EYES):数量 564(四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年))× 価格 0.01(代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。顧客0.70倍、単価据え置き。低価格競合が台頭。
倍率:十年後の営業・最終赤字が続く構造的敗北なので利益へのPERは用いない。今の自己資本17.8億円を分母にして0.07865×17.8=1.40億円。将来の留保や2026年時点ののれん・ソフトウェアを清算の床に数えず、取引義務と売却費用を差し引いた純換金価値1.4億円のみを認める。
確率:2023~2024年の大幅な損失と増資の経験があるうえ、稼ぎの中心がAIで自動化されやすい。同じ失敗を必然視はしないが、広告顧客の流出、買収損失、審査データの競争が重なる構造的な敗北として無視できない確率を付ける。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インフルエンサーPR(Find Model・iHack)
広告主の企画に合わせて発信者の選定、投稿制作、運用、効果測定を請け負う。売上は案件ごとの受託費用や運用手数料であり、人の企画と調整に依存する部分が大きい。
| 数量四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年) | 価格代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 199 | 0.07 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.07 | 10 | 2 |
取り方:2026年3月期の会社説明資料ではサービス別売上1,481百万円を開示している。四半期取引社数90、172、240、293の平均は198.75社で、整数199社年を数量の代理指標とし、丸めた年度売上14.80億円÷199社=1社年当たり744万円と逆算した。実際の年間ユニーク顧客数、案件単価、外注の割合は非開示であり、買収による期中の顧客増がこの代理単価を歪める。2024年のインフルエンサー市場860億円に対し売上14.8億円は年次の違う参考比率で約1.7%、サイバー・バズ、BitStar、トリドリと競合する。営業利益1.48億円はサービス利益率10%の独自推定で実績開示値ではない。AIエージェント代替の広告制作・人月型として中立2036年の数量0.68倍、手数料単価0.95倍とする。
プレスリリース配信(@Press)
企業のニュース原稿をメディアに配信し、編集者との接点、配信ネットワーク、掲載実績の確認に対価を得る。単純な配信操作と原稿制作支援は代替圧力が強い。
| 数量四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年) | 価格代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,110 | 0.00 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,488 | 0.00 | 8 | 2 |
取り方:会社のサービス別年間売上942百万円、四半期取引社数3,294、3,254、3,163、2,730の単純平均3,110社を使い、9.42億円÷3,110=一社年30.3万円と推定。単発配信社も含むため契約数や公式料金表の単価ではない。国内PR全体約1,391億円は配信専用市場ではなく、会社が定義する営業対象97億円に対する同社売上の比率は約9.7%だが市場シェアとは呼ばない。最大級の競合PR TIMESの同条件のシェアは未検証。営業利益2.20億円は仮定のサービス採算であり、推定本社共通費は別に控除する。配信画面・制作補助のSaaS型に分類し、中立数量0.80倍、価格1.08倍、g_longは0%以下とする。
クリッピング・メディアリスニング(Clip Master)
新聞、雑誌、ウェブ、テレビ、SNSの記事や反応を収集、分類、照合し、企業の広報・危機管理部門へ納品する。調査と確認の人的な工数に価値が寄りやすい。
| 数量四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年) | 価格代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 416 | 0.01 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 270 | 0.02 | 5 | 0 |
取り方:会社の2026年3月期サービス売上606百万円と四半期取引社数422、411、415、415の平均415.75社を整数416社年にし、6.06億円÷416=一社年約145.7万円と推定。媒体ごとの収集件数・記事単価が開示されないため本来の件数×単価ではなく、稼働社年×年間支払額による代替式である。会社資料の対象市場208億円に対する売上の比率は約2.9%で、媒体定義が広い海外のMeltwater等と直接比較できない。営業利益0.45億円は人件費比率を考慮した独自仮定。AIエージェント代替のBPO・調査人月型で、中立数量0.65倍、価格1.18倍、長期g=0%とする。
リスクチェックSaaS(RISK EYES)
反社会的勢力、不祥事、制裁情報などを蓄積した独自データベースを用いて、企業の取引先審査を支える。システム間のAPI接続と継続利用が主な収益の支えとなる。
| 数量四半期取引社数の年度平均を代理的な社年とした数量(社年) | 価格代理数量1社年当たりの年間実現売上(億円/社年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 806 | 0.01 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 725 | 0.01 | 5 | 2 |
取り方:2026年3月期サービス売上485百万円と四半期取引社数734、782、836、872の平均806社から4.85億円÷806=一社年約60.2万円と逆算した。解約率0.5%以下という会社開示、2015年以来の独自の過去報道データ、API組み込みの三つがあるため、このサービスだけを独自データを正本として扱う型に区分する。価格引上げ実績やAPI連携社数は定量開示がないため断定しない。会社の広義のリスク・コンプライアンス市場498億円に対する売上は約1%だが、狭義の反社チェック市場シェアは不明。RoboRoboやリスクモンスターが競合する。営業利益2.07億円は仮定で実績ではない。中立数量0.90倍、単価1.20倍、当サービス単独の終端gを+1~2%とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替による外注工数の消失
インフルエンサー選定と投稿案、リリース原稿と配信、ニュースの抽出と分類には、顧客がAIエージェントで内製化できる作業が多い。会社自身が自動化で工数を減らしても、顧客も同じ技術を使えるため、節約分を料金に残せるとは限らない。中立では広告制作の顧客社年を0.68倍、クリッピングを0.65倍、配信を0.80倍とし、十年より先の名目成長率も全社で0%に抑えた。
@Pressの競争激化と顧客離れ
@Pressの四半期取引社数は2026年3月期中に3,294社から2,730社へ下がった。PR TIMESなどの配信サービスが広報担当者との接点を握るなか、リリース生成まで簡単になると、配信だけに支払う対価は縮みやすい。会社が示す広いPR市場の成長は同社の取り分の拡大を意味しない。契約数の減少と単価維持の失敗が同時に起きると、固定費を支える利益が急速に減る。
RISK EYESの独自データと解約率を守れるか
過去報道の蓄積は会社の数少ない明確な堀である。しかし、報道の出所や制裁データの利用条件、誤検知の削減、更新速度を維持するための費用は続く。RoboRoboやリスクモンスターなどが同じ審査予算を競い、顧客が複数の情報源をAIで統合すると、低い解約率を維持できても利用料が下がりかねない。表示画面だけでなく独自の情報そのものに顧客が支払うかを追う必要がある。
買収価格とのれん、追加借入と希薄化
iHackやSEIRYOを取り込んだ増収は有望だが、取得資産が期待どおりに利益を生まなければ、のれんの償却や減損が純利益と自己資本を圧迫する。2024年の大幅な第三者割当増資で過去の財務危機を乗り切った経緯があるため、次の資金需要を無視できない。買収後の売上だけでなく、取得対価、追加借入、少数株主の持分希薄化、投資後に残る営業現金流入を一組で確かめたい。
親会社ジーニーとの利益相反と還元の遅れ
ジーニーは約49%を保有する連結親会社で、上位10株主の議決権の集中度も高い。グループ内の顧客紹介や共同の商品開発は有利だが、取引条件や将来の事業再編が必ず少数株主に有利とは限らない。今は配当を出さず、年間総額約0.15億円のデジタルギフトを中心に還元する。利益が蓄積しても配当や自社株買いにつながらない場合、帳簿上の現金全額を株主の価値に足すことはできない。
市場区分変更の審査と上場維持・流動性
会社は2026年9月にスタンダード市場への区分変更に向けた取り組みを公表しているが、審査の承認は確定していない。グロース市場の上場維持基準への適合も投資家が確認すべき事項である。市場区分の変更は新規顧客や利益の増加を保証せず、準備費用や流動性の変化もありうる。上場廃止の決定が現在あるという意味ではないが、資本政策が株主価値を損なわないかを追跡したい。
今後の分かれ目
- RISK EYESの四半期取引社数が1,000社を超え、その後も低解約率と有料単価上昇が両立したら
- 独自データに値上げ力がある証拠となる。リスクチェックの数量と単価、採算を引き上げ、全社に占める堀のある事業の比率とやや楽観の可能性を見直す。
- @Pressの四半期取引社数が減少を止め、継続利用社の平均支払額も維持したら
- 配信網に残る競争力を評価し、数量縮小を和らげる。ただし新規顧客獲得の費用まで含めた営業現金の増加が必要である。
- 2028年3月期の売上50億円、営業利益8億円を実現し、買収後の営業キャッシュフローも増えたら
- 経営陣の統合実行力を評価し、上側の筋書きを重くする。ただし2036年のAI代替を否定するものではなく、継続的な顧客維持と利益率も確認する。
- 制作、配信、クリッピングのAI自動化で顧客の直接内製化が進み、平均料金が下がったら
- 外注先に残る仕事量を減らし、やや悲観と悲観の数量・単価を更新する。会社のAI導入による費用削減だけを競争優位とは見なさない。
- iHack、SEIRYOなどの買収後に減損が生じ、借入返済も営業現金を圧迫したら
- 再度の増資と株主の取り分の希薄化を個別に見積もる。悲観の純換金資産の床は新たな債務や費用の分だけ再評価する。
- 年間の実際の配当と自社株買いが継続的な純利益の半分以上になったら
- 余剰現金が少数株主へ戻る見通しを改善し、現金の戻り方を0.5から1.0へ再検討する。現時点の優待だけでは十分な根拠としない。
- 2026年10月開始のクリップマスター・セキュリティについて有料受注高と継続契約売上が金額で開示されたら
- 新サービスのセグメント内比率と顧客の更新率を独立に測る。実績が出るまではAI関連という名称だけで楽観の数量を膨らませない。
見ておくもの
- 四半期別の四サービス取引社数、特に@Pressの減少速度とインフルエンサーPRの買収前後の実質成長
- 各サービスの売上÷四半期平均顧客数で求めた代理的な顧客当たり年間売上の推移
- RISK EYESの解約率0.5%以下という実績の継続、利用単価、API連携顧客と独自データの更新品質
- 2028年3月期の売上50億円、営業利益8億円の目標に対する進捗と営業キャッシュフロー
- 買収対価、のれん残高、無形資産償却、増加借入の返済と追加増資の有無
- 親会社ジーニーとの取引条件、株主還元の実施額、少数株主への現金の戻り方
- クリップマスター・セキュリティの有料受注、スタンダード市場への移行審査と上場維持基準
倍率と資本コストの決め方
計算の起点は添付の2026年10月22日終値223円、株数11,708,747株、時価総額26.11億円で固定した。四事業の売上を顧客社年×推定単価に分け、未開示の事業別営業利益と本社費を推定した。中立の2036年売上27.55億円、営業利益1.44億円、純利益0.86億円はAI代替を数量に含む。k8.5%、全社g_long0%によるPER11.7647倍を楽観から中立まで機械的に適用し、悲観側のPBRは未来の積み上げ自己資本ではなく今の17.8億円に適用する。自己資本は現在17.8億円+十年間の純利益累計-配当・優待に沿う。純現金4.3億円は前受契約負債、取得後借入、運転資金のため自由な余剰現金に分けず、将来たまる現金の株主への帰属は0.5とする。新リース基準の資産・負債両建て後も家賃を費用に含む比較可能な形で評価する。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基礎7.5%に、景気・業績の振れ0.5%と弱い値決め力0.5%を加えた。個別の買収リスクと支配構造は確率と利益に反映し、追加の資本コストにはしない。