結論
rakumoは、Google WorkspaceやMicrosoft 365の上で動く業務ソフトを販売する会社である。筆者の結論は「割高」だ。企業の申請、承認、予定管理といった日常業務に入り込んだ製品には確かな需要がある。しかし、現在の時価総額約67億円を長期の稼ぐ力で支えるには、業務画面と利用者IDに対する課金が10年後も高い価値を保つ必要がある。
同社を単なる成長期待のSaaS企業として片付けるのは惜しい。2026年には既存顧客への価格改定を進め、利用料収入を増やした。2026年上期末の有料ライセンス数は126万4千ID、顧客企業数は2583社に達している。2026年9月にはMicrosoft 365向けワークフローの提供も始めた。既存のGoogle向け製品に加えて販路を広げられることは、今後数年の明確な追い風である。
ただし、10年先には業務ソフトの購入単位そのものが変わりうる。AIエージェントが画面を経由せずに予定登録、申請、承認依頼、情報検索を実行すれば、従来の利用者数と機能数に応じた課金の根拠は弱くなる。rakumoは業務の記録を保存するが、会計制度や法令によって他社への移行が難しい独占的な正本を握っているわけではない。現在の成長率をそのまま将来へ延ばすことには慎重でありたい。
さらに2025年の買収で事業の範囲が広がる一方、のれんと借入金も増えた。2027年までの中期目標は魅力的だが、買収資金が資本コストを超える利益を生むかはまだ判定できない。筆者の10年後の中立像は、会社自体は存続しても、利益と資本効率が現在より小さくなる姿である。五つの筋書きによる概算の現在価値は15億円程度にとどまり、今の値段との差は大きい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最初の問いは「この会社の製品が10年後も必要か」である。rakumoの製品が担う申請、承認、予定管理、情報共有という仕事は消えない。ただし、その仕事を人間が専用画面で行う必要があるかは別だ。AIエージェントが業務を処理するなら、既存画面を利用する人数が減り、同社が売っているライセンスの意味も変わる。仕事が残ることだけでは、現在の料金体系が残る証明にならない。
筆者が評価したいのは、値上げを実行して収入を増やした点と、小規模な顧客基盤から継続収入を積み上げてきた点である。企業ごとに設定された承認経路や勤怠規則は、すぐに捨てられるものではない。Microsoft 365への展開も、今の強みを隣の顧客群に持ち込める合理的な手だ。一方、その製品がGoogleやMicrosoftの標準機能に置き換わったとき、何を守れるかはまだはっきりしない。
次に見るのは、稼いだ資金の配り方である。借入や転換社債を使った買収は、株主の利益を増やせる場合にだけ意味がある。買収により帳簿上の売上と調整後利益が増えても、その後ののれん償却、減損、追加開発費と希薄化を含めて資本コストに勝たなければ価値は生まれない。株主還元の目標も、実行されるまでは現金と同じ価値を持たない。
結局、事業の一部には持ち続けたい性質があるが、事業全体を10年先まで高い確信度で見通せるほどの堀はない。純現金は損失を吸収する助けになるものの、買収したのれんは清算時の現金にはならない。長期の価値を測るなら、売上拡大への期待より、顧客が残り、価格が保たれ、買収後にも株主の取り分が減らないかを重く見るべきである。現在の時価総額には、その不確実性に見合う安全域を認めにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、企業が毎日使う細かな業務をGoogle WorkspaceやMicrosoft 365と連携させる月額課金ソフトである。rakumoカレンダー、ワークフロー、ボード、コンタクト、キンタイ、ケイヒなどを組み合わせて販売する。顧客は企業や自治体であり、従業員が増えたり導入製品が増えたりすると請求対象のIDも増える。製品によって異なる月額料金を徴収するため、継続利用が収益の土台となる。
2025年のrakumoサービス売上は約14.15億円で、全社売上約18.30億円の77%を占めた。有料ライセンス数は期末123万9千IDである。ただし、このIDは実人数ではなく製品ごとの有料ライセンスの合計であり、一人の従業員が複数製品を使えば重複する。会社が開示する契約企業数やライセンス当たり年間収入と合わせて読む必要がある。2026年上期には価格改定が効き、ライセンス当たりARRは1339円に上がった。過去の値上げが客離れを直ちに招かなかったことは重要な実績である。
残りの事業は性格が異なる。gamba!は社内の日報と情報共有、DEGINA ONEは企業サイトの運営、SmartVision IRは投資家向け動画配信、AGENT SHAREは人材紹介会社同士の案件共有を支える。さらにベトナムでの開発や受託業務もある。会社の法定セグメントは単一だが、開示上のサービス区分はrakumoサービスとその他サービスに分かれる。その他の内部にある製品別売上は十分に公表されていないため、数量と採算を分析上分解した推定値として扱う。
この事業は工場も大規模な在庫も要らず、一定数の顧客を超えると追加販売の利益率が上がりやすい。他方で、製品開発、クラウド利用料、販売代理店への支払い、顧客支援は継続的に必要である。買収した会社ののれん償却も会計上の利益を押し下げる。高い継続売上と、その売上から株主が自由に使える現金とは、区別して見るべきである。
優良さと弱いところ
rakumoの強みは、顧客の業務手順に入り込んでいることだ。承認経路、稟議書式、勤怠ルール、部門の予定表を一度整えると、別の製品への移行には設定のやり直しと従業員の教育が必要になる。販売代理店との関係、Google Workspaceとの長年の連携、自治体向けの営業経験も新規参入者には簡単に再現できない。営業利益率が20%台に達した実績は、こうした仕組みが一定の経済性を持つ証拠である。
価格を決める力にも実証がある。2025年から2026年にかけて料金改定を行い、2026年上期のライセンス当たり年間収入は前年同期比15.3%増えた。一方、会社の公表する月次の売上解約率は2026年上期に約0.71%であり、値上げ後も利用が急崩壊したわけではない。ただし月次0.71%は単純な年率換算で約8%に相当する。年率5%未満の極めて強い顧客定着を示す数字ではない。
筆者は、この堀を普通程度と判断する。業務上の切り替え費用はあるが、規制によって記録を独占する立場でも、独自データを蓄積し続けなければ業界が動かなくなる基盤でもない。MicrosoftやGoogleが標準機能を拡充すれば、rakumoの一部機能は追加料金を取れなくなる。自社製品を強化するほど基盤提供者の販売網を使える半面、基盤提供者との力関係は変えにくい。
資本効率には別の懸念がある。過去のROEはおおむね10%台半ばで資本コストを超えてきたが、2025年の企業買収でのれんと借入が増えた。買収後の利益増加を見ても、投じた資金に対する増分ROICが7.5%を継続的に上回ると断言できない。優れた小型ソフトを持つことと、買収を重ねた後も優れた資本配分をすることは別問題である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の業務ソフト市場は、企業のクラウド移行や人手不足を背景に、足元では成長している。会社の中期計画などが参照する国内グループウェア関連市場は2025年に約6365億円、2028年には約7401億円という推計がある。rakumoサービスの2025年売上約14.15億円は前者の約0.22%に相当する。ただし市場の大部分は基盤ソフトそのものを含むため、この割合は支出規模の比較にすぎず、同社の正式な製品別シェアではない。Google Workspace利用企業の周辺業務ソフトという狭い市場では、存在感はもっと大きいと考えられる。
競争相手は国内の独立系ソフト会社だけではない。サイボウズ、ラクス、勤怠・経費精算の各専門サービスに加え、Microsoft 365のPower AutomateやCopilot、Google WorkspaceのGeminiやAppSheetが機能を重ねてくる。MicrosoftとGoogleは顧客がすでに契約している基盤を持ち、追加機能を標準料金に含める選択もできる。この競争では、単なる機能数や見栄えの良い画面だけで高い単価を守るのは難しい。
10年の途中では、紙の稟議や表計算からの移行が残る。自治体や中堅企業向けの営業余地もあり、Microsoft 365への展開は同社固有の機会である。しかし長期的には、AIエージェントが業務ソフトを操作するのでなく、社内の認証とデータ連携を通じて処理を完了するようになる。価値の中心が利用者の操作画面から、業務の規則、履歴、権限、外部システムとの連携へ移る可能性が高い。
2027年の中期計画は組織改革支援の対象市場を約6200億円と見込むが、グループウェア市場と定義が重なるため足し算はしない。またAGENT SHAREの人材紹介会社向け共有機能やDEGINA ONEのCMSにも、それぞれ人材紹介プラットフォームやWeb制作ツールとの競争がある。人材紹介の事務作業やWeb更新はAIによる自動化の影響が特に大きい。市場全体の名目拡大と、独立系ソフト会社が取得できる付加価値の拡大は同じではない。
資本政策と M&A
2025~2027年の中期経営計画には具体的な約束がある。2027年のARR30億円、調整後EBITA10億円、営業利益7億円、配当性向30%を目指し、3年間のM&A投資枠を30億円、株主還元の合計目標を10億円としている。2025年にはスターレとエージェントシェアをグループ化し、買収投資は合計16.5億円に達した。成長投資と還元を同時に進める意思は明瞭である。
ただし、計画と株主の利益を同一視できない。2025年の配当性向は約19%で、2026年の年間配当予想は増配方向にあるものの、大規模な自社株買いが継続的に実行された実績はまだ乏しい。2026年には保有株数に条件のある株主優待も導入した。優待は現金と同じではないが、会社側には費用が生じるため、実施が続く場合は株主還元と営業費用の双方で考慮する必要がある。
買収の評価では、AGENT SHAREの成長鈍化と赤字、DEGINA ONE関連事業の改善を分けて見る。2026年上期には前者が競合増加の影響を受け、後者は採算を改善させたとの説明がある。調整後EBITAは買収関連の償却費などを足し戻すため、会社を保有する株主の価値を測る際には営業利益と現金収支も併せて確認したい。2025年末にはのれんが約16.4億円あり、買収の失敗は将来の減損に直結する。
希薄化も軽視できない。2025年有価証券報告書には、第8回新株予約権、第1回転換社債、第9回新株予約権が計約157万株分記載されている。全て実行されれば現在の株数に対して大きな追加発行となる一方、会社には払込資金が入り社債の負債も資本へ変わる。上側の筋書きではその両方を見込み、弱い筋書きでは権利が行使されず社債を現金償還する姿を想定する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
rakumoは、巨大な企業向け基盤に対抗する会社ではなく、その基盤を使う日本企業の細かな不便を解決する会社である。日本語の承認手順、自治体特有の申請、勤怠規則、部署をまたぐ予定調整は、グローバル企業の標準機能だけでは十分に満たせない。低価格で始めやすい製品を複数組み合わせられ、販売代理店も活用できる。顧客が自社の業務に合わせて設定した後は、別製品への切り替えには目に見えない手間がかかる。
値上げが成功した点は特に重要である。2026年上期のライセンス当たり収入は前年同期比15%以上増え、解約率は急上昇しなかった。利用者が便利さに対価を払う意思を示した以上、単なる価格競争の製品ではない。Microsoft 365向けのワークフローが2026年9月に正式に提供開始となったことも、Google依存を薄める具体的な一歩である。自治体向けの大口案件も、顧客企業数だけでは捉えにくい売上機会となる。
さらに生成AIの普及は、必ずしも既存ソフトの廃棄だけを意味しない。AIが申請を作成しても、権限確認、記録保持、監査のために業務システムが必要になる。rakumoがその連携先として残れば、従来の操作画面の価値が下がっても事業は続けられる。AGENT SHAREなどの買収先が改善し、DEGINA ONEとの相互販売が進めば、既存の顧客基盤を生かして開発費の負担を抑えられる可能性もある。
2027年の目標に向けた事業拡大はすでに進んでいる。営業利益率20%台を維持し、利益を生みながら配当を増やせることは、赤字の高成長企業とは異なる。慎重になりすぎて、現実の値上げ実績と日々の業務への定着を過小評価すべきではない。
慎重な見方
同社の長所は、AI時代には逆に弱点にもなる。仕事の便利な操作画面を小さな利用料で売る仕組みは、人が画面を使うことを前提としている。AIエージェントが予定を読み、申請を作り、承認を依頼するなら、従業員ごとのライセンスは必要数が減る。企業が支払うのは処理結果やシステム連携の費用となり、従来の業務画面へ支払っていた予算は縮む。これは一時的な景気循環ではなく、売り方そのものの転換である。
2026年の値上げが成功したことも、将来の値上げ力を保証しない。現時点では既存業務を変える方が面倒だから契約が続いているとしても、MicrosoftとGoogleが自社の認証、予定表、メール、文書にAI機能を組み込めば、追加ソフトを使わずに同じ結果を得やすくなる。顧客の解約率は極端に低いわけではない。法規制で独自の記録形式が求められるソフトでもないため、移行費用は技術革新によって下がりうる。
買収先の質にも疑問が残る。2025年の大型投資によって連結売上は増えたが、2026年上期の売上の伸びほど純利益は増えていない。買収した人材紹介会社向けサービスは競争が激しく、AIによって紹介業務の一部が自動化される。2025年末ののれんは約16.4億円であり、これが将来の利益を保証する資産ではない。加えて新株予約権と転換社債が行使されれば、事業全体の利益が増えても既存株主の取り分は薄まる。
最も厳しい見方では、今の利益率の良さを将来の高成長と取り違えることが危険である。業務ソフトは低い追加原価で販売できるため、売上が伸びる局面では美しい利益率になる。だが売上が落ちても開発者、保守、クラウド運用、買収後の固定費が残れば、利益の落ち込みは売上より速い。純現金という最後の守りはあっても、現在の時価総額まで守れるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
値上げと顧客定着には事実の裏付けがあり、短期的な成長余地も認められる。しかし10年保有する株主の立場では、席課金の存続、買収の投資採算、潜在株式による希薄化を同時に検討する必要がある。中立の数量と価格にはAIエージェント代替を織り込んだため、確率でその影響を二重に減らさない。下側を42%、上側を25%とした追加の理由は、買収先の利益の質、のれんの回収可能性、基盤提供者への依存という会社固有の不確実性である。結論として、現在の時価総額に対する安全域は乏しく、「割高」と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 379 円22 億円(+ 還元の換算額還元の合計 143 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 284 円17 億円、今との差 −74.3%、 期待の年率 −8.1%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 635 円37 億円 | 225 円13 億円 | −22.2% | −2.8% | 69 円4 億円 |
| やや楽観 | 17% | 547 円32 億円 | 188 円11 億円 | −33.6% | −4.5% | 125 円7 億円 |
| 中立 | 33% | 441 円26 億円 | 155 円9 億円 | −46.1% | −6.7% | 197 円11 億円 |
| やや悲観 | 26% | 235 円14 億円 | 128 円8 億円 | −67.1% | −12.2% | 95 円6 億円 |
| 悲観 | 16% | 178 円10 億円 | 55 円3 億円 | −78.9% | −15.7% | 37 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 379 円22 億円 | 143 円8 億円 | −52.8% | −8.1% | 522 円30 億円 |
今の株価時価総額 1,106 円65 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 業務基盤の補完ソフトとして残る 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 635 円37 億円
2027年までにMicrosoft 365向けのワークフローが定着し、Google Workspace向けと合わせて企業の申請・承認業務の補完役となる。標準のAI機能が進化しても、企業別に設定された権限や処理履歴の受け渡しにrakumoの製品が使われる。カレンダー、ワークフロー、勤怠などの有料ID総数は長期で維持され、製品構成の改善によって収入も大きく失わない。
DEGINA ONEは企業サイトの運用基盤として顧客を維持し、AGENT SHAREも料金体系を見直して赤字を解消する。ベトナムでの開発は受託工数を縮小しながら採算を改善する。買収先への追加のれん減損は発生せず、利益の多くを配当と自社株買いに回す。
一方、2028年までに転換社債と新株予約権がすべて行使され、発行株数は増える。払込資金は会社に残るが、新たに投じられた資本から以前ほど高い利益率を得られるわけではない。優良な中小企業向けソフトとして生き残るものの、過去のような高成長の値付けを正当化できるほど強い事業にはならない。
- rakumo主力業務SaaS:数量 1,239(期末有料製品ライセンス数(千ID。複数製品利用による重複を含む))× 価格 1,310(製品ライセンス1ID当たり年間実現売上(円、販売経路と製品構成を反映))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。有料製品IDは2025年比1.00倍、実現単価は1.147倍。値上げ実績を評価するが、AIエージェント代替のため席数の純増は見込まない。
- その他のHR・日報・CMS・IR向け製品:数量 600(推計有料企業契約相当数(社。実際の契約社数の開示値ではない))× 価格 0.01(推計契約1件当たり年間売上(億円/社・年))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。推計契約相当数は維持、単価1.133倍。DEGINA ONEやAGENT SHAREの改善が定着する。
- 受託開発・オフショア等の人月型サービス:数量 11.0(推計年間案件相当数(件))× 価格 0.07(案件1件当たり年間売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。工数型の数量は維持にとどめ、単価は物価相当の1.34倍。案件の選別で採算改善。
倍率:現行基準の全社当期純利益3.33億円を用いる。2025年自己資本18.7億円+2035年までの累積純利益38.48億円-累積株主還元16.70億円+新株予約権の払込・転換による資本増加約14.47億円=2035年自己資本54.95億円となり、ROEは約6.1%でk7.5%に届かない。長期成長率g_longは年-0.5%であるため、正当化PERの上限は1÷(7.5%-(-0.5%))=12.5倍。時価総額は3.33×12.5=41.625億円。潜在株式による既存株主の取り分0.788はmcap_okuに掛けず別欄で扱う。
確率:GoogleとMicrosoftの双方で業務の連携先として採用され続け、値上げ後も解約が増えず、買収先の採算が改善するという複数の条件が必要である。AIで業務画面の利用人数が減るため、最良でも従来の製品ID総数が2025年を大幅に超えるとは想定しない。
やや楽観 17% 値上げの成果が長く残る 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 547 円32 億円
Google Workspace向け製品は顧客の業務手順に根付き、Microsoft 365向けも既存製品の補完役として一定の契約を取る。値上げによる実現単価の改善は続くが、AIによる申請の自動化が進み、課金対象となる有料IDは2025年より減少する。それでも大型顧客と自治体向けの契約が残るため、売上の減少幅は数量の減少ほど大きくならない。
その他の製品ではDEGINA ONEが安定した保守収入を確保し、AGENT SHAREは競争が厳しいなかでも赤字をおおむね解消する。受託開発は稼働人数を減らし、高単価案件だけに絞る。これまでと同じ成長速度は失うが、固定費の管理によって利益率を守る。
新株予約権と転換社債の行使で既存株主の取り分は薄まる。経営は配当性向の目標に近づき、利益の一部を株主へ返す。高いROEを維持するほど新規の成長投資先は見つからず、事業は安定した小型ソフト会社へ成熟する。
- rakumo主力業務SaaS:数量 1,115(期末有料製品ライセンス数(千ID。複数製品利用による重複を含む))× 価格 1,295(製品ライセンス1ID当たり年間実現売上(円、販売経路と製品構成を反映))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。IDは2025年比0.90倍、単価1.134倍。Microsoft 365で一部の顧客を補うが全体の席数は減る。
- その他のHR・日報・CMS・IR向け製品:数量 540(推計有料企業契約相当数(社。実際の契約社数の開示値ではない))× 価格 0.01(推計契約1件当たり年間売上(億円/社・年))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。契約相当数は0.90倍、価格は1.117倍。買収先の黒字化は限定的。
- 受託開発・オフショア等の人月型サービス:数量 9.0(推計年間案件相当数(件))× 価格 0.06(案件1件当たり年間売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件相当数は0.82倍、価格は1.28倍。成果を求める案件だけ残る。
倍率:10年の累積純利益33.12億円、累積還元13.90億円、新株の払込・社債の転換による資本増加約14.47億円により、自己資本は52.39億円となる。純利益2.67億円からROEは約5.1%でk7.5%を下回る。AIエージェント代替による長期名目成長g=-0.5%のため、稼ぐ力の正当化PER上限12.5倍を採用する。2.67×12.5=33.375億円。希薄化係数0.788は別欄で適用する。
確率:短期の価格改定とMicrosoft 365市場の開拓が一定の成果を生み、買収先の悪化も軽微という条件なら実現しうる。ただしAIの普及による席数減少は免れないため、数量を10年前より増やさない。
中立 33% 業務画面の席数が徐々に減る 利益 2 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 441 円26 億円
2027年までは料金改定、買収した会社の連結効果、Microsoft 365向けの新製品で売上を伸ばす。その後は、企業がAIエージェントを利用して予定登録や稟議の作成を自動化し、人ごとの業務アプリ契約を見直し始める。業務の記録自体は残るが、GoogleとMicrosoftの標準機能を使う範囲が広がり、rakumoの有料IDは10年かけて緩やかに減る。
その他のHR・日報・CMS製品も画面課金の圧力を受ける。DEGINA ONEには保守需要が残るが、AGENT SHAREの収益化は難しく、買収した無形資産の一部に減損が生じる。受託開発はAIを使った内製化によって案件数が減り、利益は小さくなる。会社は大幅な赤字には転落しないものの、現在の高い資本効率を維持できない。
経営は増配と小規模な還元を続けながらも、一部の買収資金を回収できない。2028年までの潜在株式の行使は進み、会社の資本は厚くなるが、利益の伸びが伴わずROEは低下する。長期では事業そのものは残る一方、株主のものになる利益が現在より細る。
- rakumo主力業務SaaS:数量 1,000(期末有料製品ライセンス数(千ID。複数製品利用による重複を含む))× 価格 1,270(製品ライセンス1ID当たり年間実現売上(円、販売経路と製品構成を反映))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。有料IDは2025年比0.807倍、価格は1.112倍。AIエージェント代替の席課金型中立レンジ内に収めた。
- その他のHR・日報・CMS・IR向け製品:数量 470(推計有料企業契約相当数(社。実際の契約社数の開示値ではない))× 価格 0.01(推計契約1件当たり年間売上(億円/社・年))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。推計契約相当数は0.783倍、価格は1.083倍。HR・CMSの画面型サービスもAI代替の圧力を受ける。
- 受託開発・オフショア等の人月型サービス:数量 7.0(推計年間案件相当数(件))× 価格 0.06(案件1件当たり年間売上(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件数量は0.636倍、価格は1.20倍。受託人月型の中立数量レンジ0.55~0.75倍に入る。
倍率:累積本業純利益30.55億円から、2028~2032年ごろの買収のれん等の非現金減損7億円を控除した会計利益23.55億円を見込む。2025年自己資本18.7億円+会計利益23.55億円-累積還元11.5億円+新株払込・転換の資本増約14.47億円=45.22億円。2035年純利益2.05億円に対するROEは約4.5%で資本コストを下回る。g_long-0.5%の稼ぐ力の上限PER12.5倍を用い、2.05×12.5=25.625億円。現在の株価や同業のPERは根拠に使っていない。
確率:AIエージェント代替の標準型に従い、主力席課金の数量を0.81倍、単価を1.11倍とする中心像である。下に寄せる理由はAIだけではなく、買収のれんを回収し切れない可能性とプラットフォーム依存である。
やや悲観 26% 標準機能とAIに顧客を奪われる 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 235 円14 億円
MicrosoftとGoogleがAIによる承認、予定調整、情報共有を標準機能として提供し、rakumoの有料製品は一部の日本固有の業務だけに残る。大企業や自治体は複数の追加アプリを使うより、基盤製品へ集約する選択を強める。顧客企業数は急減しなくても、一社が契約する有料IDや製品の組み合わせが減るため、課金できる数量が縮む。
AGENT SHAREは採用業界の厳しい競争で黒字化が進まず、DEGINA ONEもAIによるWebサイト制作・管理の自動化で料金を下げる。買収で計上したのれんなどに大きな減損が生じ、追加開発や管理に必要な人件費が利益を圧迫する。会社全体の売上は2025年より小さくなり、営業利益率は大きく低下する。
経営は新規買収を抑え、配当と株主優待も利益に応じて縮小する。株価の条件を満たさないため転換社債と大口新株予約権の行使は起こらず、2028年に社債を現金償還する。会社はなお存続するが、事業価値より回収できる金融資産が株主価値の下支えになる。
- rakumo主力業務SaaS:数量 800(期末有料製品ライセンス数(千ID。複数製品利用による重複を含む))× 価格 1,120(製品ライセンス1ID当たり年間実現売上(円、販売経路と製品構成を反映))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。IDは0.646倍、単価は0.981倍。AIに加えプラットフォーム標準機能への顧客移動が進む。
- その他のHR・日報・CMS・IR向け製品:数量 360(推計有料企業契約相当数(社。実際の契約社数の開示値ではない))× 価格 0.01(推計契約1件当たり年間売上(億円/社・年))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約相当数0.60倍、単価0.967倍。採算の悪い製品が残る。
- 受託開発・オフショア等の人月型サービス:数量 5.0(推計年間案件相当数(件))× 価格 0.06(案件1件当たり年間売上(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件数量0.455倍。AIによる受託業務の内製化で固定費を吸収できない。
倍率:事業の純利益0.69億円を資本コスト7.5%で評価した稼ぐ力は約9.2億円である。2026年6月末の現金同等物約22.02億円から借入金約6.61億円と転換社債5億円を引いた純金融資産約10.41億円を出発点とし、回収可能な債権の純額約0.39億円を加えた資産床10.8億円を採用する。これは今の自己資本18.7億円の0.57754倍であり、将来自己資本23.94億円の帳簿を床に使っていない。事業の稼ぐ力と売却可能資産の大きい方から評価する。
確率:主力の便利機能がGoogle・Microsoftの標準機能に統合され、買収先の競争力も伸び悩む筋書きである。AIによる席数縮小は中立に織り込み済みなので、追加の下振れは競合へのシェア移動と買収の回収不足による。
悲観 16% 席課金が崩れ、金融資産だけが支えになる 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 178 円10 億円
2035年には、多くの申請・承認や予定登録がAIエージェントとMicrosoft・Googleの標準機能で処理される。企業は人間が操作するrakumoの追加ライセンスを大きく減らす。日本の勤怠・承認ルールへの対応が必要な一部の顧客は残るものの、製品ごとの利用料金を現在の水準では維持できない。主力の有料ID数は2025年の約半分に近づき、値下げも必要になる。
その他の製品にも逆風が及ぶ。人材紹介会社はAIによって事務を内製化し、Web制作と運用は標準の自動化ツールに置き換わる。買収先ののれんは大きく減損し、開発と保守の最低限の費用を売上で賄えなくなる。2035年には会社全体が営業赤字となり、配当や株主優待は段階的に縮小される。
新株予約権は行使されず、転換社債は現金償還となる。資金を使った新しい買収も成果を生まず、経営は事業縮小と資産保全を迫られる。それでも既存の現預金から金融債務を控除した部分には価値が残ると考え、のれんやソフトウェアの帳簿価格をそのまま清算価値にはしない。長期の株主にとっては、事業の成長ではなく資産がどれだけ守られるかという状態である。
- rakumo主力業務SaaS:数量 650(期末有料製品ライセンス数(千ID。複数製品利用による重複を含む))× 価格 1,010(製品ライセンス1ID当たり年間実現売上(円、販売経路と製品構成を反映))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。有料ID数0.525倍、単価0.885倍。標準機能・AIとの競争に構造的に敗れる。
- その他のHR・日報・CMS・IR向け製品:数量 300(推計有料企業契約相当数(社。実際の契約社数の開示値ではない))× 価格 0.01(推計契約1件当たり年間売上(億円/社・年))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約相当数0.50倍、単価0.933倍。HR・CMS・日報ソフトの競争で赤字が定着する。
- 受託開発・オフショア等の人月型サービス:数量 3.0(推計年間案件相当数(件))× 価格 0.05(案件1件当たり年間売上(億円/件))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件数0.273倍。売上減少に固定費削減が追いつかない。
倍率:2035年の純利益は約-0.61億円であり、将来の継続利益からプラスの事業価値を認めない。2026年6月末現金同等物約22.02億円-借入金約6.61億円-転換社債5.00億円=純金融資産約10.41億円を基準とし、実現額を10.4億円に丸めた。今の自己資本18.7億円に対する倍率は10.4÷18.7=0.55615倍であり、2025年以降に蓄積した帳簿純資産では値付けしない。長期赤字のため利益倍率で評価せず資産床を使う。
確率:主力製品が標準機能に広く代替され、買収の減損と人材関連事業の不振まで重なる構造的な敗北を想定する。2026年時点では黒字で顧客基盤があるため倒産を中心にはしないが、独自の規制基盤を持たない以上、無視できない確率とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
rakumo主力業務SaaS
Google Workspace、Microsoft 365、Salesforceなどと連携するカレンダー、ワークフロー、勤怠、掲示板、経費精算などの席課金型業務アプリ。AIエージェント代替の分類は「席課金の業務SaaS・操作画面が価値の中心」であり、規制対応や独自データの正本という特例は使わない。
| 数量期末有料製品ライセンス数(千ID。複数製品利用による重複を含む) | 価格製品ライセンス1ID当たり年間実現売上(円、販売経路と製品構成を反映) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,239 | 1,142 | 14 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 1,270 | 13 | 4 |
取り方:2025年有価証券報告書および会社の主要KPIで、rakumoサービスの年間売上1414.7百万円と期末有料ライセンス1239千IDを確認した。売上をID数で割り、暦年の年間実現売上を1ID当たり約1142円とする。これは販売単価そのものではなく、代理店経由の収入、複数製品契約、期中のID増加、製品構成を混ぜた実現単価である。2026年上期の期末ARR基準の単価1339円とは時点と定義が異なる。営業利益4.75億円は全社営業利益4.28億円から推定配賦した分析値であり、会社が公表した事業別営業利益ではない。会社公表の2025年売上14.147億円に対し数量×単価の再現誤差は0.1%未満である。価格表はhttps://rakumo.com/price/、KPIはhttps://investor.rakumo.com/ja/ir/finance/service.htmlを参照した。
その他のHR・日報・CMS・IR向け製品
gamba!、DEGINA ONE、SmartVision IR、AGENT SHAREなどの製品・プラットフォーム型収入を分析上まとめた区分。AGENT SHAREの利用・情報共有機能には独自の業務上の価値があるが、法令対応の正本や他社が取得不能なデータによる長期独占は立証されていない。
| 数量推計有料企業契約相当数(社。実際の契約社数の開示値ではない) | 価格推計契約1件当たり年間売上(億円/社・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.01 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 470 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:2025年開示のその他サービス売上約4.153億円から、製品・サブスクリプション・プラットフォームに相当する3.60億円を分析上推計した。会社はgamba!、DEGINA ONE、SmartVision IR、AGENT SHAREごとの有料顧客数と売上を同じ粒度で開示していないため、600社相当×年60万円という契約換算数で表す。この600社は観測した有料契約社数ではなく、会社のサービス構成や法人向け料金水準をもとにした仮定である。営業利益0.14億円も推定であり、DEGINA ONEの採算改善とAGENT SHAREの競争激化が相殺する姿を意図した。席課金や人が操作する画面の価値が中心で、AIエージェント代替の型は主力と同じである。
受託開発・オフショア等の人月型サービス
ベトナム関連の受託・オフショア開発や導入支援など、顧客の作業を人の工数で請け負う小規模収入をその他サービスから分析上切り出したもの。AIエージェント代替の分類は「人月・工数で売る仕事」とする。
| 数量推計年間案件相当数(件) | 価格案件1件当たり年間売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.0 | 0.05 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 0.06 | 0 | 0 |
取り方:2025年のその他サービス約4.153億円と、製品型の分析上の割当3.60億円との差約0.55億円を人月・工数型の残余とした。案件数11件と年間案件単価500万円は開示された数量ではなく、年間約0.55億円の売上を案件単位で説明するための仮定である。旧区分のITオフショア開発サービスが新しい開示ではその他サービスに含まれるため、この推定の精度には限界がある。受託人員の稼働費と管理費を勘案して営業損失0.11億円を割り当てた。
リスクと懸念
AIエージェント代替による席課金の縮小
申請、予定管理、情報検索をAIが実行するようになると、従業員一人ごとの業務ソフトの契約数が減る。rakumoの製品が処理履歴や権限管理の連携先として生き残っても、画面を操作する人数による課金は維持しにくい。中立で主力の有料IDを約8割、価格を約1.11倍としたのはこの構造変化による。AI自体を有償エージェント製品として販売した実績額が未確認のため、楽観でも席数の増加を見込まない。
Google・Microsoftによる機能の標準化
rakumoはGoogle WorkspaceとMicrosoft 365の顧客基盤を利用するが、基盤提供者はメール、予定表、認証、文書、AIを一体で提供できる。ワークフローや予定調整が標準機能に統合されれば、独立した製品への追加課金は難しくなる。販売先をGoogleからMicrosoftへ広げることは当面の成長機会である一方、長期的には依存する相手が二社になるだけという危険も残る。
買収のれんと増分ROICの低下
2025年の買収により売上と事業領域は拡大したが、のれんが大きく増え、借入金も発生した。AGENT SHAREの採算改善が遅れれば、支払った買収代金が将来の利益に見合わず、減損を通じて自己資本を減らす。調整後EBITAが成長しても、償却費を含む営業利益と投下資本に対する税後利益が伸びなければ、既存株主には経済的な利益が残らない。
新株予約権と転換社債による希薄化
2025年有価証券報告書に記載された主要な新株予約権と転換社債の潜在株式は合計約157万株で、現在株数に比べて大きい。行使時には会社へ資金が入り、社債の一部が資本に変わるが、既存株主が受け取る将来価値の割合は低下する。逆に行使が進まなければ2028年の社債償還が必要になる。株数だけ、あるいは現金だけを見れば資本政策の実際の負担を誤る。
値上げの持続性と販売経路
2026年に実現した値上げは確かな強みだが、その後も同じ割合の上昇が続くとは限らない。AIや標準機能による代替が進めば、契約更新時の価格交渉は厳しくなる。販売代理店やプラットフォームの変更で顧客への到達費用が上がる可能性もある。実現単価の上昇が、有料IDの減少や解約率の悪化を補えているかを四半期ごとに見る必要がある。
前受収入と見かけの現金創出力
サブスクリプションでは契約期間の対価を先に受け取るため、営業キャッシュフローが一時的に良く見える。2026年上期には契約負債が増加し、現預金も増えた。しかし顧客にサービスを提供する義務が残るため、受け取った現金の全額が株主への分配原資になるわけではない。さらに買収で増えたのれんと顧客関連資産は、清算の際に帳簿通り売れる資産とは限らない。
今後の分かれ目
- 2027年末までにARR30億円と営業利益7億円の目標を達成し、その後も買収を除いた有料IDが増え続けたら
- Microsoft 365展開が既存サービスの減少を上回っている証拠となる。AI代替の下で席課金が維持できるかを再検証し、楽観側の数量と確率を上方修正する。ただし買収による連結増収と自力成長は分ける。
- AIエージェントを自社の独立した有償製品として販売し、その売上高または受注金額を開示したら
- 従来の画面型SaaSが減る一方で、新しい成果連動・処理量連動の売上が生まれているかを確認する。実際の金額と粗利益が確認できれば、その事業に限って楽観の数量上限を見直す。機能搭載や実証実験だけでは変えない。
- 月次売上解約率が1%を超えて定着し、値上げ後のライセンス数も前年割れしたら
- 価格改定による増収の一過性が明らかになる。主力SaaSの数量、価格、営業利益率を引き下げ、やや悲観側の筋書きを重くする。顧客企業数の増加だけでは相殺したと判断しない。
- AGENT SHAREが継続して赤字となり、買収先ののれん減損が公表されたら
- 利益の実現性と追加投資負担を見直す。減損自体は現金流出ではないが、買収代金を回収できない証拠であるため、将来利益と増分ROICの評価を下げる。
- 第8回新株予約権や転換社債が行使されて株数が大きく増えたら
- 既存株主の取り分を実際の発行株式数で更新し、払込金と負債の転換も自己資本に反映する。逆に権利が失効・償還された場合は、希薄化係数と現金残高を同時に直す。
- 2027年以降、買収を伴わずに増分ROICが資本コストを継続して上回り、配当性向30%と自社株買いが実行されたら
- 経営の資本配分に対する評価を高め、将来に蓄積される現金の株主還元可能性を見直す。約束した還元額だけでなく、実際の支払額、株数減少、投下資本に対する利益を同時に確認する。
見ておくもの
- rakumoサービスの有料ライセンス数、顧客企業数、1ID当たりARR、月次売上解約率
- Google Workspace向けとMicrosoft 365向けの新規契約社数・有料ID数・売上高
- 2027年の中期計画ARR30億円、調整後EBITA10億円、営業利益7億円の達成状況
- AGENT SHAREとDEGINA ONEの営業利益、のれん償却費および減損の有無
- 第8回・第9回新株予約権と転換社債の残存数、行使、転換、現金償還
- 買収投資額、買収後の増分営業利益、ROIC、累積の配当と自社株買い
- Microsoft Copilot、Google Gemini、Power Automate、AppSheetの業務機能追加
- 現金同等物から借入金・社債を引いた純金融資産と契約負債の推移
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額は株価1150円×5838000株で約67.14億円と確認したが、将来の数量・単価・採算と倍率の決定には使っていない。主力とその他の画面型SaaSはAIエージェント代替の席課金型、人月サービスは工数型として数量と価格を別々に推計した。物価3%による名目上昇を数量に含めず、価格もAIの競争圧力で物価を下回る。長期gは-0.5%、資本コストは7.5%とし、ROEが届かない楽観~中立では利益ベースの上限PER12.5倍を使用した。悲観側の床は2026年上期の純金融資産を起点とし、のれんを清算価値から除いた。上側の潜在株式行使に伴う払込金と希薄化は別々に反映し、下側では行使なしとした。五つの筋書きの10年後時価総額と期間中還元を、時価総額は10年、還元は平均5年の時点から割り引いて確率加重すると現在価値は概算14.7億円、現時価総額との差は約-78%であり、判定は割高となる。新リース会計基準による表示変更は、継続する家賃の経済的負担が突然増減するものとして評価しない。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計を使用する。会社固有の買収失敗、希薄化、AIによる業務代替は資本コストに追加せず、利益の筋書きと既存株主の取り分に反映する。