結論
フォーカスシステムズは、官公庁の基幹システムから企業向け業務ソフト、情報基盤の構築・運用まで手掛ける独立系のシステム開発会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。長年の顧客関係と財務の健全さは評価できるが、売上の大部分を人の工数に依存する収益構造が、AIエージェントの普及で根本から変わる可能性を十分に織り込む必要がある。
2026年3月期は売上高357億円、営業利益30億円となり、営業利益率は8.5%に改善した。公共案件の安定稼働、民間の基幹システム刷新、価格交渉の成果が重なった。新中期経営計画では2029年3月期に売上高450億円、営業利益45億円を目指す。前計画の利益率目標を達成した実績があり、向こう数年間の事業運営には一定の信頼を置ける。
だが、3年の成長と10年の本質価値は別の話である。AIが設計、プログラム作成、試験、運用監視を担うようになれば、顧客は同じ成果を少ない人月で買える。会社が生産性を上げても、その利益を顧客が価格引き下げとして取り戻す競争になるかもしれない。公共システムでは安全性や既存設備との接続が障壁となる一方、民間開発では発注工数の削減が先行すると考える。
現在の時価総額は約273億円で、純現金45億円と自己資本154億円が下支えになる。ただし、現金には運転資金としての役割があり、すべてを株主に分配できるわけではない。10年後の収益力と実際の株主還元を重視すると、現在の価格には十分な安全域がない。経営が人月商売を脱し、成果に対して継続的に対価を得る証拠が現れれば、この判断は変わりうる。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後も顧客が何に対してお金を払うかを考える。公共の社会基盤を正確に稼働させる責任はなくならない。複雑なシステムの移行や障害対応に必要な知識も、一朝一夕には身につかない。その意味でフォーカスシステムズの仕事には長い寿命がある。
しかし、仕事が必要であることと、現在の稼ぎ方が守られることは違う。以前は10人が1年かけて作ったシステムを、将来はAIを使う少人数のチームが短期間で完成させるかもしれない。顧客が買うのは技術者の時間ではなく結果である。生産性向上の利益を会社が取り続けられるか、顧客が値下げとして受け取るかが分かれ目になる。自社が利用者とデータを支配する製品を持たない限り、値上げの自由度は限られる。
オーナー利益にも注意が必要だ。会計上の利益から、必要な採用費、教育費、研究開発費、運転資金の増加を引いて、初めて株主が自由に使えるお金になる。人材への投資は設備投資と違って資産に残りにくいが、次の利益を維持するためには欠かせない。2026年3月期の営業キャッシュフローは約26億円と堅調だったものの、そのすべてを還元してよいわけではない。
経営には規律がある。過去の利益率改善を実現し、自己株買いと増配を進め、次の中計では投資の採算基準も掲げた。これは資本配分の信頼性を高める。ただし、大規模な戦略投資の成果はまだこれからだ。過去の利益成長は株主資本コストを超える収益を生んだが、AIによって従来の人月商売の追加投資利回りが下がれば、その超過収益は消える。
筆者が所有者として最も重視するのは、10年後に会社が何を所有し、何を独占的に提供できるかである。今ある信頼と技術力は十分な出発点だが、それだけで高い価値を払う理由にはならない。純現金と売却可能な資産は下値を支える一方、現在の時価総額と本質価値の差を埋めるほどではない。持続的な成果収益を証明するまでは、安全域を厚く求めたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は顧客のコンピューターシステムを作り、稼働後も守る仕事である。公共関連ではマイナンバー、年金、社会保険、貿易、航空管制、自動車登録などを扱う。長く使われる社会基盤なので、いったん参加した会社には業務知識と運用経験が積み上がる。ただし、フォーカスシステムズが制度のデータそのものを所有したり、基幹プラットフォームを独占したりするわけではない。大手元請け企業の下で技術支援を担う仕事もある。
エンタープライズ事業は企業の基幹業務システム、業務アプリケーション、クラウド、ネットワーク構築を扱う。intra-martやBiz∫を使う案件などで、顧客の業務改革とシステム導入を支援する。高度な設計や複雑な移行では人の判断が残るが、一般的な開発、試験、設定作業はAIによる効率化の対象になりやすい。製品の所有者ではなく導入・開発の担い手であることが、将来の価格交渉力を制限する。
広域ソリューションは通信制御、組込み、法人・行政向けの開発、AI関連サービスを含む。イノベーションは情報基盤の構築・運用、メインフレーム、金融系開発、IoT、情報セキュリティなどを担う。後者には自社製品もあるが、製品売上、継続課金、契約数が独立して開示される規模にはまだなっていない。2027年3月期からは広域ソリューションを公共関連とイノベーションに組み入れる組織再編が行われた。本分析の数量モデルは、実績を照合しやすい2026年3月期の旧4区分で統一した。
会社が公表する年間の案件数は約500件、顧客数は約200社である。1社に複数の案件を持つ取引関係は安定収益の源泉だが、これだけでは契約更新率も顧客別の価格決定力も分からない。セグメントの数量は開示された配属従業員数を稼働能力の代理変数としている。単価は外注売上や機器・ソフトの仕入れを含む従業員1人年当たり売上であり、純粋な人月請求単価ではない。この限界を踏まえ、10年後の実質数量は顧客に請求可能な仕事量として評価する。
優良さと弱いところ
最大の強みは、長期間運用される公共システムの業務知識とプロジェクト管理経験である。航空管制や社会保障のシステムでは、単にコードを書けるだけでは仕事にならない。制度変更、既存システムとの接続、障害時の責任分担まで理解する必要がある。会社が示す最長取引49年という実績も、顧客との関係が容易に切れないことを示唆する。ただし最長値は全体の継続率ではなく、低解約率を示す統計とは区別すべきだ。
利益率改善には実行力が見える。2026年3月期は高採算案件への切り替え、価格交渉、案件管理の徹底が奏功し、従来6%台だった全社営業利益率が8.5%に達した。人件費の上昇を価格に転嫁できた実績は重要である。ただし法令改正のたびに自動的に値上げできるような契約上の強さは確認できない。大手発注者との交渉と競争入札が続く限り、価格決定力は中程度と評価する。
財務は堅い。自己資本比率は約65%、純有利子負債はマイナス45億円であり、直ちに資金繰りが問題となる構造ではない。過去10年のROE中央値は約10%で、直近期は15%台まで上昇した。しかし、利益の伸びには人材の採用・育成と協力会社の活用が必要であり、少ない追加資本で無制限に売上を増やせるソフトウェア企業とは違う。
本物の堀が10年先も拡大するかは未証明である。会社には自社製品やセキュリティ事業があるものの、解約率5%未満、規制上移行に数年を要する独占基盤、独自データの所有、継続的な値上げ実績といった強い証拠を複数確認できない。公共案件の切り替え費用は強みだが、AI代替を免れる「記録の正本」の事業と評価する根拠にはならない。堀は普通とし、公共の優位も技術革新で少しずつ削られる可能性を見込む。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は拡大している。IDC Japanの2026年3月公表値では、2025年の市場規模は約7兆5,663億円で、2030年には約10兆2,541億円へ成長する見通しだ。既存システムの更新、クラウド移行、データ活用が主な需要源になっている。2025年のフォーカスシステムズの売上高326億円を同市場と比較した単純な比率は約0.43%で、2026年3月期売上357億円では約0.47%となる。国内市場に占める比率の概算であり、厳密な市場シェアではない。
競争相手は巨大である。国内ITサービスでは富士通、日立製作所、NEC、NTTデータなどが上位に並び、独立系では野村総合研究所、TIS、NSD、DTSなどが競合する。参考までに2026年3月期の連結売上は野村総合研究所が約8,147億円、TISが約5,965億円、NSDが約1,178億円である。国内ITサービス市場を分母にした単純比率は順に約10.8%、7.9%、1.6%に相当するが、海外売上やサービス範囲の違いを除いていないため、正式な競合シェアではない。フォーカスシステムズは市場を支配する会社ではなく、特定顧客や特定領域に深く入り込むことで利益を得ている。
公共関連の市場は、政府・自治体のシステム更新、標準化、制度改正に支えられる。民間の基幹システム更新にも長い需要がある。だが市場支出額の増加と、システム開発会社が請求できる工数の増加は同じではない。AIエージェントは要件整理、コード生成、試験、監視などを一体化し、人月を減らす可能性がある。今後10年は、市場全体が名目で成長しても、従来型受託開発の数量が減るという構造変化を中心に考える。
公共、企業向け業務開発、広域ソリューション、情報基盤の4区分それぞれについて、直接対応する国内市場規模と各社シェアの公表値は確認できない。公共を含む全ITサービス市場を共通の母集団とし、実際の競争力は個別案件の継続率と顧客別の受注額で見る方が正確である。10年後に市場シェアを維持しても、業界そのものが工数請求から成果購入へ変われば売上は縮みうる。逆に同社が成果責任を負う独自サービスを持てれば、市場シェア以上の利益を残す余地がある。
資本政策と M&A
資本配分では前進が見える。2026年3月期は配当総額約9.4億円に加え、約8.9億円の自己株式取得を実施した。取得株数は48万株で、発行済みの自己株控除後株数の約3%に当たる。配当も過去数年で増加している。2026年9月末の大株主構成は分散しており、支配株主による強い囲い込みがある会社とは評価しない。
新中期経営計画27-29には具体的な資本配分の約束がある。2029年3月期の目標は売上高450億円、営業利益45億円、営業利益率10%、ROE16%以上である。配当性向は40%以上、3年間の株主還元額は35億円を掲げる。同時に85億円の戦略投資を計画し、M&Aや製品開発、人材確保に振り向ける。現預金は月商約2か月分を維持し、有利子負債の自己資本に対する比率はおおむね0.35を上限とする。
買収方針は人材確保と事業領域の拡大である。既存の関連会社としてイノス、メティス、エー・アイ・エムスタッフなどがあり、近年はG.A.P、医療AIのOtoCheck、TryTreeなどへの出資も行っている。ただし会社本体は非連結決算で、これらの事業が将来の利益を大きく変えると断定できる実績はない。計画では投資案件の正味現在価値がプラスであることを求め、原則5年以内の回収を意識している。投資の規律は評価できるが、実際の買収後利益率と追加資本利益率は継続して確認する必要がある。
10年間の株主還元は、利益が伸びる場合は拡充し、AI代替によって利益が減る場合は縮小する。配当性向40%以上という方針を基本とし、好調時の自社株買いを加える。一方、3年間85億円の投資すべてが資本コストを上回る利益を生むとは見込まない。買収した人員の工数を増やすだけではAI時代の競争優位を築けないため、成果報酬型の事業への転換が投資の成否を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
公共システムの仕事は、AIがコードを書けるようになっても簡単には消えない。航空管制、年金、貿易、自治体の業務では、法令との整合、過去の記録、周辺システムとの接続、事故の責任まで考えなければならない。フォーカスシステムズには長年の参加実績があり、新規参入者より現場の事情を深く理解している。これまでの案件管理と価格交渉によって、会社は利益率改善の目標を達成した。
AIは脅威であると同時に、熟練した技術者の作業効率を高める道具でもある。人が行う作業を自動化すれば、受注工数が減っても利益を維持できる余地がある。公共や情報基盤の分野では、成果の正確さや安全性が重視されるため、単なる最安値の競争になりにくい。会社が案件全体を引き受ける立場を強めれば、技術者の人数よりプロジェクトの品質と責任に対して報酬を受け取れる。
中計では売上高450億円、営業利益率10%を目指している。前計画の目標達成に続いて、管理能力と価格交渉力をもう一段改善できれば、利益率の上昇は十分に考えられる。戦略投資85億円を通じてコンサルティング、人材、製品開発を強化する余地もある。2026年の自己株買いは株主への姿勢の変化を示した。財務の余力があり、大型の損失案件さえ避けられれば、顧客のシステム刷新需要を長く取り込める。
さらに、医療AIや地理情報関連の製品が実際の継続収益へ育てば、人月から独立した利益源になる。現時点では金額の確認ができないため確実視できないが、会社が顧客の業務を深く理解していることは、新たなサービスを作るうえでの利点である。事業の転換が成功すれば、現在の市場評価を上回る価値もありうる。
慎重な見方
最も大きな問題は、人月で請求する仕事に顧客が支払う理由そのものが弱くなることである。AIエージェントが設計、プログラム作成、試験、運用監視を一続きで実行するようになれば、技術者を多数投入するモデルは縮小する。会社が自らAIを導入して生産性を上げても、顧客は発注額の削減を要求する。競争入札のある公共案件や、大手発注者の価格交渉力が強い民間案件では、その利益を売り手が独占するのは難しい。
フォーカスシステムズの売上は自社ソフトの継続利用料ではなく、受託開発や運用・技術支援が中心である。公共システムへの参加実績は有利だが、基幹プラットフォームの所有権や独自データを握っている証拠はない。顧客がシステムを刷新する際、AI対応力で優れる大手企業や新しい開発会社へ仕事を集約する可能性がある。既存顧客との長い関係も、調達制度や技術基盤が変われば絶対的な防壁にはならない。
2026年3月期の利益率改善は評価できるが、その実績を10年先まで伸ばすのは危険である。現在の売上規模を支える人員と協力会社に対し、請求できる作業量が減れば、人件費や本社費が利益を圧迫する。物価上昇のもとで従業員の給与を維持する必要があるため、顧客への単価転嫁に失敗すると利益率は急低下する。2027年3月期第1四半期にも、一部大型案件の原価増による利益の弱さが表れた。
新中計の85億円の投資もリスクを伴う。買収で人員を増やすことが成長の近道だった時代とは条件が変わる。AIに代替される人月を高い価格で買えば、資本効率を損なう。自社製品への転換に成功する保証もなく、現時点ではAIエージェントを商品化して大きな売上を得た金額の開示もない。現金と投資有価証券があるため倒産に直結するとは考えにくいが、株主価値が長期に停滞する危険は十分にある。
どちらに重みを置いたか
公共分野の取引継続力、直近の価格交渉と利益率改善、資本配分の規律は評価できる。しかし、全社の収益を支える受託開発・工数請求の構造にはAIエージェント代替という重大な不確実性がある。自社製品や規制対応の独占基盤が利益の中心となった証拠はまだない。したがって上側32%、中立30%、下側38%とし、慎重側にやや重みを置く。極端に悲観へ寄せないのは、公共案件と財務の下支えがあるためだ。現金の蓄積と還元を考慮しても、現在の価格には十分な安全域がないとの判断を維持する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,958 円287 億円(+ 還元の換算額還元の合計 568 円83 億円)。 今の値に割り戻すと 1,400 円205 億円、今との差 −16.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 13% | 4,260 円625 億円 | 968 円142 億円 | +213.3% | +13.9% | 680 円100 億円 |
| やや楽観 | 19% | 3,306 円485 億円 | 818 円120 億円 | +147.1% | +10.9% | 784 円115 億円 |
| 中立 | 30% | 1,591 円233 億円 | 586 円86 億円 | +30.4% | +3.1% | 653 円96 億円 |
| やや悲観 | 25% | 896 円131 億円 | 368 円54 億円 | −24.3% | −3.2% | 316 円46 億円 |
| 悲観 | 13% | 573 円84 億円 | 143 円21 億円 | −57.1% | −8.8% | 93 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,958 円287 億円 | 568 円83 億円 | +51.3% | +4.8% | 2,526 円370 億円 |
今の株価時価総額 1,669 円245 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 13% 公共の信頼を生かし、AI時代の受託を高付加価値化 利益 39 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,260 円625 億円
公共関連では長期の顧客関係が維持され、制度改正や基幹システムの更新が継続する。AIは作業の自動化に使われるが、複雑な業務設計と安全性の確認について顧客が引き続き対価を払う。会社は2026年に始まった利益率改善を維持し、案件の採算管理によって高い収益性を保つ。
エンタープライズではintra-martやBiz∫を使う大規模な基幹更新案件に強く、顧客から上流設計と運用責任をまとめて任される。広域とイノベーションでは、組込みや金融基盤の専門知識が仕事を守る。AIエージェントが一部の工数を代替しても、受注単価と生産性の改善が収益を支える。
85億円の戦略投資では買収後の統合に成功し、不要な間接費を増やさず技術と顧客基盤を補強する。2036年の売上高は約469億円、営業利益は54億円を超える。利益率は11%台に達し、事業の優良さが高まる。AI関連の独立収益を証明する開示がないため、楽観でも全セグメントの実質数量は現在以下とし、価格上昇の上限は物価相当とする。
- 公共関連事業:数量 453(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力。顧客に提供する年間の実質作業量の代理指標)× 価格 0.32(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注売上を含む事業売上密度)→ 売上 144 億円・営業利益 29 億円。実質数量0.99倍、価格1.34倍。公共の長期案件を維持し、利益率20%。
- エンタープライズ事業:数量 322(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.44(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注・ソフト調達を含む)→ 売上 142 億円・営業利益 24 億円。実質数量0.97倍、価格1.34倍。上流工程の比率を高める。
- 広域ソリューション事業:数量 276(2026年3月期の旧セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.27(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注を含む)→ 売上 74 億円・営業利益 12 億円。実質数量0.95倍、価格1.34倍。組込み・制御で専門性を維持。
- イノベーション事業:数量 250(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.44(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。構築案件、外注、製品関連売上を含む)→ 売上 109 億円・営業利益 20 億円。実質数量1.00倍、価格1.34倍。金融・情報基盤の高採算化。
倍率:資本コストk=7.0%、2036年のROEは約11.9%。堀は普通で、追加資本の超過収益は半分が薄れる。AIエージェント代替を受ける人月型事業のg_long=0%なので、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=1/0.07=14.29倍となる。上限から任意に割り引かず、2036年の事業利益に適用する。現金の追加蓄積は資本配分の処理と区別して考える。
確率:価格転嫁、公共の取引継続力、案件管理の改善が10年続く必要がある。新規AIサービスの売上金額は未確認なので数量増加は認めず、利益率改善による上振れに限定する。
やや楽観 19% 公共と金融の継続案件がAIによる工数減を補う 利益 29 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,306 円485 億円
中期経営計画はおおむね順調に進むが、2030年代にはAIが開発工数を減らし始める。公共関連の更新需要は続き、官公庁と自治体の複雑な業務知識が取引の維持につながる。既存案件の運用を安定させる能力が評価され、価格転嫁も概ね物価に沿って実現する。
エンタープライズでは汎用的なプログラム作成や試験の受注が減少するが、大規模なシステム刷新と業務設計は残る。イノベーションでは金融基盤や運用案件が比較的安定する。会社はAIを使った効率化を進め、請求できる工数の減少の一部を原価低減で補う。利益率は2026年の水準を上回って推移する。
買収では人材と顧客を慎重に選び、過大なのれんを積み上げない。株主還元も計画に沿って継続される。ただし、自社製品が独立した大きな収益源になるところまでは想定しない。2036年の売上は約418億円、営業利益は41億円程度となる。事業は維持されるものの、AI普及前の数量成長には戻らない。
- 公共関連事業:数量 417(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力。顧客に提供する年間の実質作業量の代理指標)× 価格 0.32(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注売上を含む事業売上密度)→ 売上 132 億円・営業利益 25 億円。実質数量0.91倍、価格1.33倍。長期の公共需要が下支え。
- エンタープライズ事業:数量 292(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.43(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注・ソフト調達を含む)→ 売上 127 億円・営業利益 20 億円。実質数量0.88倍、価格1.32倍。高度な業務設計を維持。
- 広域ソリューション事業:数量 247(2026年3月期の旧セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.26(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注を含む)→ 売上 65 億円・営業利益 10 億円。実質数量0.85倍、価格1.32倍。組込みの専門技術を維持。
- イノベーション事業:数量 220(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.43(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。構築案件、外注、製品関連売上を含む)→ 売上 95 億円・営業利益 15 億円。実質数量0.88倍、価格1.33倍。金融・基盤運用が支える。
倍率:ROEは約9.8%、k=7.0%、g_long=0%。追加投資の利益は長期に薄れるため、RONICを用いる正当化PERは14.29倍となる。公共契約の持続性を利益の実績に織り込み、倍率には長期の高成長を重ねない。
確率:既存顧客の取引を維持しつつ、生産性改善で利益率を高める筋書き。公共・金融の継続性は実績があるが、民間開発の工数減少をすべて防げるわけではない。
中立 30% AIによる請求工数の減少が生産性改善を上回る 利益 13 億円 · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,591 円233 億円
2020年代後半は基幹システム更新と政府のデジタル化が続き、会社の事業規模は拡大する。しかし2030年代に入るとAIエージェントが一般的な開発、試験、システム監視の作業を担い、顧客は必要な技術者の工数を減らす。中期経営計画の目標達成だけでは、この長期変化を防げない。
公共関連は制度理解と運用責任によって他の事業より減少が浅い。エンタープライズでは基幹更新の需要が残るが、請求できる実質作業量は大きく減る。広域ソリューションも汎用的な開発・試験を失う。イノベーションでは金融基盤や情報セキュリティの運用案件が一定程度残るが、顧客の自動化投資によって受託工数は縮む。
会社は従業員の配置転換や採用抑制を進め、間接費の増加を制御する。ただし、技術転換と人材育成の費用がかかり、利益率は過去の高水準を維持できない。2036年の売上高は約314億円、営業利益は約17億円となる。財務は健全に残るものの、ROEは過去10年の中央値を大きく下回る。株主還元は継続するが、増配の勢いは弱まる。
- 公共関連事業:数量 344(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力。顧客に提供する年間の実質作業量の代理指標)× 価格 0.31(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注売上を含む事業売上密度)→ 売上 106 億円・営業利益 19 億円。AI人月型。実質数量0.75倍、価格1.30倍。公共の切り替え費用が数量減を緩和。
- エンタープライズ事業:数量 206(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.41(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注・ソフト調達を含む)→ 売上 85 億円・営業利益 11 億円。AI人月型。実質数量0.62倍、価格1.26倍。一般開発と試験の発注工数が減少。
- 広域ソリューション事業:数量 186(2026年3月期の旧セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.25(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注を含む)→ 売上 47 億円・営業利益 6 億円。AI人月型。実質数量0.64倍、価格1.27倍。組込み以外の一般開発が縮む。
- イノベーション事業:数量 180(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.42(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。構築案件、外注、製品関連売上を含む)→ 売上 76 億円・営業利益 11 億円。AI人月型。実質数量0.72倍、価格1.30倍。金融・情報基盤の運用を維持。
倍率:2036年のROEは約4.1%で、資本コスト7.0%を下回る。追加資本に高い超過収益を期待できないため、PERの上限は利益の稼ぐ力1/k=14.29倍となる。AI代替を受ける人月型事業の長期成長率はg_long=0%。ROE低下は10年後の利益と自己資本に既に反映しており、倍率を恣意的にさらに削らない。
確率:同社は公共・金融向けの長期案件を抱えるが、独立したデータや製品課金の堀が乏しい。従来型の工数請求が少しずつ減り、価格転嫁だけでは売上を守れない筋書きを中心にする。
やや悲観 25% 元請け集約とAI代替で市場での存在感が薄れる 利益 7 億円 · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 896 円131 億円
AIエージェントの導入が顧客企業で加速し、一般的なソフトウェア開発と試験に対する人月請求が大きく減る。大手SIerはAIを使った一括請負と価格引き下げを進め、中堅企業の下請け工程を減らす。フォーカスシステムズは専門性の高い公共や金融の案件を維持するが、民間の新規開発と一般運用では受注範囲が縮小する。
公共関連も調達方法の変更で一部の大型案件を失う。エンタープライズでは顧客が内製のAI開発環境を導入し、基幹更新以外の仕事が減る。広域は通信・組込みの一部を残すが、一般開発の縮小が大きい。イノベーションでは運用監視の自動化が進み、従来の要員配置を必要としなくなる。
会社は事業所と間接部門の縮小を進めるが、給与水準を維持する必要があり、費用削減が売上減少に追いつかない。買収で得た人材の稼働率が低下し、戦略投資の一部は期待収益を生まない。2036年の売上高は約248億円、営業利益は約9億円となる。配当は利益に応じて縮小し、株主資本の増加も鈍る。事業は存続するが、資本コストを十分に稼げない会社になる。
- 公共関連事業:数量 289(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力。顧客に提供する年間の実質作業量の代理指標)× 価格 0.29(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注売上を含む事業売上密度)→ 売上 84 億円・営業利益 15 億円。実質数量0.63倍、価格1.22倍。公共調達でも価格競争が強まる。
- エンタープライズ事業:数量 183(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.38(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注・ソフト調達を含む)→ 売上 70 億円・営業利益 9 億円。実質数量0.55倍、価格1.16倍。顧客内製化と大手への集約が進む。
- 広域ソリューション事業:数量 160(2026年3月期の旧セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.23(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注を含む)→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。実質数量0.55倍、価格1.15倍。汎用開発工程が大幅に減る。
- イノベーション事業:数量 150(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.39(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。構築案件、外注、製品関連売上を含む)→ 売上 59 億円・営業利益 8 億円。実質数量0.60倍、価格1.20倍。運用監視の自動化が収益を圧迫。
倍率:2036年ROEは約3.0%でk=7.0%を下回る。稼ぐ力の理論上限は1/k=14.29倍だが、やや悲観では人月型事業の長期存続と間接費削減の不確実性を反映して13.6倍とする。今や過去の市場PERは根拠にしない。
確率:AIによる発注工数削減が早まり、大手SIerへの案件集約が進む可能性がある。公共分野は残るが、民間開発と運用の請負範囲が大きく減る筋書き。
悲観 13% 人月商売の競争力を失い、金融資産が価値の床になる 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 573 円84 億円
AIエージェントによる開発の自動化が急速に普及し、顧客は従来の半分程度の実質工数しか外部に発注しなくなる。大手SIerは自社の開発工程を自動化して利益を維持するが、中堅企業への再委託を減らす。フォーカスシステムズは公共と金融の一部に残るものの、規模の縮小によって専門人材を維持する力も弱まる。
公共関連では新たな調達制度と基盤統合によって一部の案件を失う。エンタープライズではAI開発基盤を導入した顧客への継続請求が難しくなる。広域では組込みの専門技術だけが残り、一般的な開発受注は大幅に減少する。イノベーションでは監視・保守の自動化に加えて、一部の自社製品も競争力を獲得できない。
経営は採用抑制や組織縮小で現金流出を止めようとするが、一時的な赤字と投資の減損を避けられない。買収投資は期待した収益を生まず、株主還元も大幅に縮小する。2036年の売上は約191億円まで減り、営業利益はほぼゼロになる。事業の稼ぐ力だけでは高い価値を支えられず、純現金と売却可能な投資有価証券が株主価値の中心となる。倒産直前とは異なるが、優良企業としての地位は失われる。
- 公共関連事業:数量 252(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力。顧客に提供する年間の実質作業量の代理指標)× 価格 0.26(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注売上を含む事業売上密度)→ 売上 65 億円・営業利益 9 億円。実質数量0.55倍、価格1.08倍。公共の契約基盤も縮む。
- エンタープライズ事業:数量 159(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.33(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注・ソフト調達を含む)→ 売上 53 億円・営業利益 5 億円。実質数量0.48倍、価格1.02倍。AI内製化により受注が半減。
- 広域ソリューション事業:数量 139(2026年3月期の旧セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.20(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注を含む)→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。実質数量0.48倍、価格1.00倍。一般開発は大幅に代替される。
- イノベーション事業:数量 130(セグメント配属従業員の人年換算稼働能力)× 価格 0.35(配属従業員1人年当たり売上高(億円)。構築案件、外注、製品関連売上を含む)→ 売上 45 億円・営業利益 4 億円。実質数量0.52倍、価格1.06倍。インフラ運用も大幅に自動化。
倍率:事業の純利益0.26億円では稼ぐ力による価値は約4億円にすぎないため、純現金と売却可能資産による床を採用する。現在の自己資本153.8億円にPBR約0.546倍を適用し、時価総額約84億円とする。10年後の蓄積自己資本148億円にPBRを掛けて価値を膨らませていない。過去のPBRの谷は使用しない。
確率:AI代替の進展、案件集約、価格競争、買収失敗が重なる複合シナリオ。公共事業に一定の継続性があるため倒産を中心に置かないが、利益をほとんど生まない会社になる危険を評価する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共関連事業
官公庁・自治体向けの社会保障、マイナンバー、貿易、航空管制、自動車登録などのシステム開発、運用・保守。
| 数量セグメント配属従業員の人年換算稼働能力。顧客に提供する年間の実質作業量の代理指標 | 価格配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注売上を含む事業売上密度 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 458 | 0.24 | 109 | 19 |
| 10 年後 中立 | 344 | 0.31 | 106 | 19 |
取り方:2026年3月期決算短信の公共関連売上10,875百万円、セグメント利益1,922百万円を採用。2026年有報のセグメント配属従業員458人を数量とし、売上÷458人で1人年当たり約2,375万円と推定。従業員数は請求可能工数の代理であり、実際の人月単価ではない。AIエージェント代替の型は「人月・工数」で、中立数量は458人年の0.75倍、価格は1.30倍とする。制度知識と移行負担によって他の事業より数量減少を浅く見込む。2025年の国内ITサービス市場7兆5,663億円に対する同部門売上の単純比率は約0.14%だが、政府・公共だけのシェアではない。市場の分野別完全一致データは未確認。従業員数の照合先はhttps://j-lic.com/companies/4662/segments。
エンタープライズ事業
民間企業向け基幹システム、業務アプリ、クラウド、ERP、ネットワーク構築とコンサルティング。
| 数量セグメント配属従業員の人年換算稼働能力 | 価格配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注・ソフト調達を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 332 | 0.33 | 109 | 14 |
| 10 年後 中立 | 206 | 0.41 | 85 | 11 |
取り方:2026年3月期のエンタープライズ売上10,899百万円、セグメント利益1,433百万円。セグメント従業員332人を数量の代理とし、年間売上を割って1人年当たり約3,283万円と推定した。外注先の成果物、ライセンス調達や機器構築を含む売上なので労働者の請求単価とは一致しない。AIエージェント代替の型は「人月・工数」。中立では実質数量0.62倍、価格1.26倍とする。基幹刷新の需要は続くが、設計・実装・試験の作業量削減が特に大きい。国内ITサービス全体に対する同部門売上の単純比率は約0.14%。企業向けシステム開発だけの正式な市場シェアは開示なし。
広域ソリューション事業
通信制御、組込み、行政・法人向け開発、AIソリューション、運用・保守。2027年3月期から組織再編により他部門へ移管。
| 数量2026年3月期の旧セグメント配属従業員の人年換算稼働能力 | 価格配属従業員1人年当たり売上高(億円)。外注を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 290 | 0.20 | 58 | 8 |
| 10 年後 中立 | 186 | 0.25 | 47 | 6 |
取り方:2026年3月期の広域ソリューション売上5,781百万円、セグメント利益782百万円。配属従業員290人を使い、1人年当たり売上約1,993万円と推定。通信・組込みの現場固有の技術は残りやすいが、開発と試験はAIエージェント代替を受けるため、型は「人月・工数」とする。中立の実質数量は0.64倍、価格は1.27倍。医療AI関連の取り組みは公表されているものの、既存のセグメント売上から独立した商用売上額は確認できず、数量上振れの根拠には使わない。国内ITサービス全体に対する単純比率は約0.08%。2027年3月期からの再編による売上の二重計上はしない。
イノベーション事業
情報基盤の構築・運用、金融・メインフレーム開発、IoT、情報セキュリティ、自社製品・ソリューション。
| 数量セグメント配属従業員の人年換算稼働能力 | 価格配属従業員1人年当たり売上高(億円)。構築案件、外注、製品関連売上を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.33 | 81 | 11 |
| 10 年後 中立 | 180 | 0.42 | 76 | 11 |
取り方:2026年3月期のイノベーション売上8,142百万円、セグメント利益1,121百万円。配属従業員250人を数量代理として、1人年当たり売上約3,257万円と推定した。インフラ構築と金融システムの運用・開発が売上の主要部分であり、自社製品やセキュリティの厳密な構成比は開示されていない。AIエージェント代替の型は、確認できる収益の中心について「人月・工数」。現場知識を要する運用案件のため中立数量0.72倍、価格1.30倍とする。自社製品部分を「記録の正本」と扱う証拠が不足するため、特別な長期成長率を認めない。国内ITサービス全体に対する単純比率は約0.11%。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月収益の構造的減少
最も重要な長期リスクである。公共関連を含む全セグメントの収益の中心が、人月・工数を通じた受託開発や運用・技術支援である。AIが設計、開発、試験、運用を一体で自動化すれば、顧客は同じ成果を少ない外注工数で得られる。会社がAIを活用して効率化しても、競争や契約更改を通じて顧客に利益が移転する可能性がある。中立数量の縮小とg_long=0%に反映し、資本コストの寿命には重複させていない。
公共システムの切り替え費用を過大評価する危険
官公庁のシステムは制度知識と運用経験を必要とするが、その知識が同社独自のデータ資産として所有されているとは限らない。大型案件で元請けが変わる、共通基盤に統合される、調達契約が再編されるといった変化が起これば、長い取引関係だけでは売上を守れない。最長49年の取引実績と、全顧客の解約率や更新率は異なる。
人件費の上昇と単価交渉の限界
物価3%の前提では給与や外注単価も上がる。2026年3月期には価格交渉の成功と利益率改善が確認できるが、今後も毎年同じ成果を得られる保証はない。AIの導入で競争入札の価格が低下すれば、顧客向け単価が物価ほど上がらない一方で、人材確保費用は高止まりする。特に売上が縮む局面では本社費や教育費が利益を圧迫する。
85億円の戦略投資とM&Aの採算
2027年3月期からの3年間で85億円を戦略投資へ振り向ける計画は、会社の現在の時価総額と比較しても大きい。買収した人員や既存の開発契約がAIで代替されれば、投資時に想定した利益を生み出せない。買収後の統合費用、関連会社への追加支援、投資有価証券の評価損も考慮する必要がある。投資判断基準の開示だけでは高い増分ROICを保証しない。
情報セキュリティと重要システムの障害責任
公共や金融の重要システムでは障害、情報漏えい、開発品質の問題が顧客との関係に長く影響する。複雑なシステムをAIで開発する場合、生成した処理の検証責任は残る。品質管理やサイバーセキュリティに失敗すれば、損害対応費用と受注停止が重なりうる。社会インフラへの参加実績が強みであるだけに、一件の重大事故がブランドと収益へ及ぼす影響は大きい。
政策保有株式と現金の株主還元
2026年3月末の投資有価証券は約42億円あり、評価差額金も自己資本に含まれている。株価変動や換金時の税金によって、帳簿上の資産がそのまま株主の手に届くとは限らない。また会社は現預金を月商約2か月分確保する方針であり、純現金を全額余剰と扱うべきではない。投資有価証券の整理や追加還元が実際に進むかを検証する必要がある。
今後の分かれ目
- AIエージェントを使った成果報酬型案件や自社製品について、売上高・受注高・継続収益が明確に開示され、2期以上成長したら
- 人月型以外の事業比率を独立して評価し、その部分の実質数量とg_longを上方修正する。契約継続率や価格改定実績も確認し、堀の再評価を行う。
- 2029年3月期に売上高450億円、営業利益45億円を達成し、公共と民間の利益率改善が共に確認できたら
- 中期の利益水準を上方修正する。ただし10年先のAIによる請求工数減少を自動的に取り消さず、売上増加が数量によるものか、単価・外注・買収によるものかを区別する。
- 公共関連の顧客数、更新率、案件単価が安定し、制度改正後も同一顧客から継続受注できることが数量で示されたら
- 公共関連の中立数量0.75倍を見直し、下振れ確率を軽減する。ただし契約更新率の確認なしに「記録の正本」の堀へ分類しない。
- 技術者の稼働率や人月単価が低下し、全社営業利益率が2期連続で6%を下回ったら
- AI代替の進行または価格競争の深刻化を疑い、中立とやや悲観の売上・利益率を下方修正する。本社費削減の速度も合わせて確認する。
- M&A・関連会社への投資額が増えたのに、増分営業利益が資本コストを上回る水準で増加しなかったら
- 買収による成長の評価を引き下げ、損失・減損を悲観側に反映する。未回収の投資額と実現したキャッシュフローを継続して比較する。
- 投資有価証券の売却と自社株買いが継続し、配当を含む還元額が5年間の利益の過半に達したら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ再評価する。ただし現金を利益倍率と資産価値の両方に加える二重計上は避ける。
見ておくもの
- 2027年3月期以降の公共関連、エンタープライズ、イノベーションの売上高とセグメント利益。旧広域ソリューションの移管分を補正して比較する。
- 全社および部門別の技術者数、協力会社の稼働人員、受注単価、稼働率、案件数の変化。
- AIを使った開発の実案件における工数削減率と、削減した工数に対応する売上減少・利益率改善の関係。
- 2029年3月期の売上高450億円、営業利益45億円、営業利益率10%、ROE16%以上の達成度。
- 3年間85億円の戦略投資の実行額、買収後の増分営業利益、投下資金回収年数。
- 配当性向40%以上の維持、自社株買い、投資有価証券の整理、現金残高と有利子負債の推移。
- 官公庁・金融の大型システム更改案件、既存契約の継続率、元請けと二次請けの受注構成。
- 情報セキュリティ・医療AIなど自社製品の独立売上、継続契約数、顧客解約率の開示。
倍率と資本コストの決め方
株価1,861円、株数14,665,380株、時価総額約273億円は最後の比較にのみ使用した。事業価値は2026年3月期の4セグメントの実績売上・利益と配属人員を基礎に、実質数量と名目価格を分けて推計した。2036年の実質数量は、AIエージェント代替の決まりに従い、中立で人月型の0.55~0.75倍の範囲に置いた。倍率は資本コスト7%、g_long=0%による利益の正当化PERから導き、現在や過去のPERを根拠にしていない。現金の余剰蓄積と株主還元は事業利益の倍率と区別し、悲観では売却可能資産による床を照合した。2027年3月期からの組織再編は旧区分を二重計上せず、2028年3月期からの新リース会計基準による表示変更も、10年後の利益の経済実態と混同しない。公開買付け・上場廃止予定・継続企業の前提に関する注記についても公表資料を確認し、分析対象から除外する事情は確認できなかった。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を基本に、過去の業績安定性によるquality-0.5%を反映する。AIエージェント代替は10年間の数量とg_longで表現し、資本コストに上乗せしない。