結論
Institution for a Global Societyは、人の能力を測り、企業の人材配置や学校の教育改善に役立てる会社である。筆者の結論は「割高」だ。独自の評価データと学校への導入実績には確かな価値があるが、会社全体で利益を残せる構造がまだ定着していない。10年先の価値を現在へ割り戻すと、今の時価総額を大きく下回る。
強みは、非認知能力の評価で約10年にわたり蓄積してきたデータだ。会社は評価データが2億件を超え、対象者が130万人を超えると説明している。企業向けのGROW360と学校向けのAi GROWは、その蓄積を生かす商品である。2026年3月期にはHR事業と教育事業がともにセグメント黒字となり、評価技術への需要自体は確認できる。
問題は、利益が株主まで届いていないことである。同年度の連結営業損失は約2.3億円で、グローバル関連事業の大幅な損失と約2.4億円の全社費用が重かった。2027年3月期第1四半期も約0.9億円の最終赤字となった。会社は2029年3月期に売上22億円、営業利益3.48億円を目指すが、その成長の多くは実績の乏しい新しい海外事業に依存する。
さらに、顧客が人手や操作画面に支払ってきた料金は、AIエージェントの普及によって削られる可能性がある。学校や企業による能力評価の必要性は残っても、その仕事を今の価格と契約数で売り続けられるとは限らない。10年後の中立では小幅な黒字化を認めるものの、大幅な全社費用削減が必要になる。期待を上回る成長を前提にせず、赤字の再発と将来の資金調達による希薄化を重く見た。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社は興味深い技術と、まだ証明されていない経済性が同居する投資対象である。人間の能力を公平に測る仕事は、10年後も必要とされるだろう。独自データが増えるほど精度が上がる仕組みも魅力的だ。ただし、その価値を独占的に売れることと、社会に役立つことは同じではない。
株主が受け取る経済的利益を考えると、主力2事業のセグメント利益をそのまま会社の価値にできない。全社費用、研究開発、顧客の開拓費用を支払わなければならないからだ。学校への販売には営業活動が必要で、契約単価は実際に下がっている。HRでは顧客当たり収益が増えたが、顧客数が増えなかったことも見逃せない。
再投資の利回りにも慎重でありたい。2022年3月期の自己資本は約11.4億円あったが、2026年3月期は約4.8億円となった。この間に株主資本を使って築いた事業は、まだ安定した全社利益を生んでいない。新規海外事業が将来大きくなるという構想だけでは、高い増分投下資本利益率を認められない。
価値の下支えとして純現金は重要だが、少数株主が自由に払い戻しを決められる現金ではない。実際には運転資金、開発費、赤字の補填に使われうる。したがって、現金を額面どおり企業価値に上乗せしない。
仮に評価技術の質が優れ、将来の需要が堅くても、安全域のない価格で保有すれば成果は乏しくなる。筆者が確認したいのは、売上の急増よりも、全社費用を払った後の黒字が数年続くこと、継続課金の解約率が低いこと、そして新株発行を伴わずに現金が増えることである。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱はHR事業と教育事業である。2026年3月期の売上構成は、HRが42.8%、教育が49.9%、プラットフォーム関連が7.3%だった。HRではGROW360などを使い、企業の採用、適性評価、組織開発、人材配置を支援する。教育ではAi GROWなどを学校に提供し、非認知能力の測定や教育効果の把握に使ってもらう。
HR事業は、評価ソフトだけを販売する純粋な定額課金事業ではない。人的資本についての助言や分析も含むため、顧客が新しい仕事を発注するかどうかで売上が変わる。2026年3月期の国内顧客数は67社で前期から横ばいだったが、顧客当たり年間収益は356万円から420万円へ増えた。これは上位案件の獲得を示す一方、同じサービスを一律に値上げできる証拠ではない。
教育事業では、顧客数が463校から523校へ増えた一方、顧客当たり年間収益は67万円から63万円へ低下した。学校数はサービス別の延べ導入数であり、独立した有料契約校が523校あるという意味ではない。学校予算や補助金の影響を受け、導入数と単価が必ずしも同じ方向に動かない事業である。
第3の事業は、従来のプラットフォーム・Web3からグローバルプラットフォームへ重点を移している。予測サービスのSignalsや、インドのグローバル・ケイパビリティ・センター、いわゆるGCCの設立支援を育てる構想だ。ただし、2026年3月期の関連売上は約0.5億円で、セグメント損失は約1.8億円だった。新事業の顧客単価や継続契約数はまだ十分開示されていないため、2036年までの収益を既成事実として扱うことはできない。
各事業の利益を合計しても、研究開発、管理部門、経営基盤などの全社費用が残る。2026年3月期の全社調整額は約マイナス2.4億円だった。この固定的な負担を既存事業の利益で賄えるかが、売上の伸び以上に重要な分かれ目になる。
優良さと弱いところ
最も評価したい資産は、長年の測定を通じて蓄積した独自データである。特許を取得した評価手法や、大学との共同研究による測定技術も差別化に役立つ。非認知能力は単純な学力試験とは異なり、測定の信頼性を確保するのが難しい。学校が継続して使い、過去の評価結果と比較できるほど、事業には一定の乗り換えにくさが生まれる。
ただし、これはまだ強固な堀、すなわち競争相手が容易に越えられない優位とは言い切れない。年間解約率が5%未満であることや、法令対応のために移行に年単位を要すること、継続的な値上げを顧客が受け入れてきたことは確認できない。独自データの蓄積は有力な証拠だが、業界共通の記録基盤として顧客業務を支配する段階にはない。
収益性の弱さは看過できない。HRと教育では2026年3月期にそれぞれ約26%、約38%のセグメント利益率を確保したが、全社では赤字だった。特に海外関連事業への投資や回収不能債権への対応が、主力事業の稼ぎを打ち消した。長く保有する株主が求めるのは部門ごとの高い利益率ではなく、研究開発と本社費用を負担した後に残る現金である。
財務には守りもある。2026年3月期の純現金は約3.9億円で、有利子負債が事業を直ちに圧迫する状態ではない。しかし、同年度の自己資本は約4.8億円まで減り、続く四半期にも赤字を計上した。現金の厚さは時間を買うが、長期の優良さを保証しない。新規投資の増分利益が資本コストを超え、しかもその利益が継続する実績は、まだ示されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
人材評価と教育の市場は、必要性がなくなる市場ではない。企業は採用や配置の判断を改善したいし、学校は学力だけでは捉えられない成長を測りたい。AIが定型的な知的作業を引き受けるほど、人間に残る能力を評価する需要はむしろ増える可能性がある。需要そのものと、評価サービスに支払われる単価は分けて考えたい。
会社資料は、企業向けの対象市場を約650億円と見積もる。従業員300人以上の国内企業約1万5,520社に、年間約420万円のサービスを提供できるという試算だ。2026年3月期の67社は、この想定対象企業数の約0.43%に相当する。教育では国内の対象校約3万3,000校、年間想定単価84万円から約280億円の市場を示している。延べ導入523校は対象校数の約1.6%だが、延べ数であるため厳密な学校シェアではない。
競争は広い。企業向けにはTalent Palette、カオナビ、HRBrainなどの人材情報サービスがあり、コンサルティング会社や自社開発の評価制度とも競合する。Talent Paletteは2026年3月時点で契約企業2,126社と公表しているが、扱う機能が広く、IGSの67社と同じ市場の直接シェアとして比較はできない。教育ではベネッセ系のClassiや学校向け学習・校務支援サービス、各種の能力検査が限られた予算を取り合う。
海外事業の市場はさらに大きい。会社はインドのGCC市場が2030年に約990億~1,050億ドルへ拡大する外部予測を引用する。しかし、その市場には大手ITサービス会社、人材紹介会社、現地の拠点運営会社がすでに参加している。世界市場の大きさを、そのままIGSの獲得可能な売上とみなすべきではない。
10年先には、学校や企業の評価ニーズは残っても、AIエージェントが評価設計、報告書作成、候補者の比較、教育改善案の作成を担うだろう。人が操作する画面や分析作業自体の値段は下がりやすい。IGSが競争に勝つには、測定データの独自性を、顧客が継続して対価を払う成果へ変え続ける必要がある。
資本政策と M&A
会社は2026年6月の事業計画で、2027年3月期に売上8.5億円、営業利益0.1億円、2028年3月期に売上13.8億円、営業利益1.5億円、2029年3月期に売上22億円、営業利益3.48億円を掲げた。最終年度の売上内訳はHR7億円、教育5億円、グローバルプラットフォーム10億円である。特に最後の事業は2026年3月期の約0.5億円から大幅に拡大する前提で、計画全体の実現性を左右する。
会社は時価総額100億円を長期的な目標像として示すが、これは事業の収益力を保証する数値ではない。ROEの明確な目標や、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束なしである。会社は配当より成長投資を優先すると説明しており、これまでの実績でも配当や自社株買いによる継続的な還元は確認できない。
資本配分の成績は厳しい。2025年にはプルータス・グループとの提携に際して新株25万株と転換社債0.8億円を発行した。既存株主には新規事業への資金を確保する利点がある反面、持分の希薄化がある。転換社債には最大20万4,081株の潜在株式があり、業績が回復して株価が上昇した場合の取り分を考慮しなければならない。
2026年には不採算の海外・Web3関連投資で多額の損失を認識し、9月には関連子会社の清算方針も示された。撤退の判断自体は必要だが、投じた資金が十分な利益を生まなかった事実は残る。向こう10年は大型買収による成長より、既存サービスの収益化と現金流出の抑制を優先すべき局面である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
評価データは短期間で複製できない。学校や企業で長年使われた測定結果が2億件を超えることは、後発企業にとって大きな参入障壁になる。AIが普及すれば、人間に求める能力は変わる。その変化を測る道具を既に持つIGSは、評価需要の再定義から恩恵を受けられる。学校に広がるAi GROWは、単年度の測定を重ねるほど比較できる過去データが増え、継続利用の理由が強くなる。
2026年3月期のHRと教育のセグメント利益率は高い。失敗した投資から撤退し、開発や管理の仕事を少人数で行えるようになれば、会社全体の営業利益率は見違える可能性がある。実際に営業キャッシュ・フローは同年度に4期ぶりのプラスとなり、構造改革に着手したことは事実だ。プルータス・グループとの提携も、人的資本評価を企業価値評価やM&Aの判断へ広げる機会になる。
強い上振れには、海外GCCでの契約獲得やSignalsの普及も期待できる。ただし、現時点ではそれらの収益実績が十分ではない。よって、海外市場が巨大であるという理由だけで顧客数を何倍にも増やさない。それでも主力商品が数量を保ち、価格と費用効率が改善するだけで、現在の赤字体質とは大きく異なる会社になれる。事業の質が認められれば、経営側が掲げる成長構想に近づく余地はある。
慎重な見方
過去の経営成績は、技術的な独自性が企業全体の利益につながっていないことを示している。2020年3月期以降、営業赤字の年度が多く、2025年3月期と2026年3月期には大きな最終損失を出した。2026年3月期に黒字だった2事業の利益を合計しても、全社費用を賄い切れていない。事業ごとの利益率が高いという説明だけでは、構造的な収益力の不足を覆せない。
AIエージェントの進歩は、IGSの機会であると同時に収益への脅威となる。能力の採点、報告、比較、教育計画の提案、コンサルティング資料の作成は自動化されやすい。独自の測定データに価値が残っても、顧客が従来の契約単価や人手による支援費用を払い続ける保証はない。既に教育事業の平均単価は低下しており、HR事業の顧客数も横ばいだ。
海外事業の中期計画は特に不確実だ。既存の小さな売上から数年で10億円へ伸ばすには、多くの大型契約を獲得し、現地の競合に勝つ必要がある。2027年3月期第1四半期の売上と損失を見る限り、計画達成を裏付ける段階には達していない。現金はあるが、追加の赤字や資金調達が起きれば、現在の株主の取り分は縮む。評価技術が生き残っても、株主の利益が残るとは限らない。
どちらに重みを置いたか
評価データと教育分野の導入実績には一定の堀がある。ただし、継続課金の解約率や値上げの成功を示す証拠が足りず、全社費用も重い。AI代替による数量の減少は既に中立の事業予測に反映したため、同じ理由で資本コストや悲観確率を重ねて引いていない。確率を下側に寄せたのは、過去の投資損失、連結赤字の継続、新しい海外事業の実績不足、希薄化の可能性という会社固有の事情による。中立でも費用削減の実行が必要なため、強い見方より慎重な見方を採る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 151 円7 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 62 円3 億円、今との差 −77.0%、 期待の年率 −5.7%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 433 円21 億円 | 0 円0 億円 | +59.6% | +4.8% | 43 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 299 円14 億円 | 0 円0 億円 | +10.5% | +1.0% | 54 円3 億円 |
| 中立 | 30% | 97 円5 億円 | 0 円0 億円 | −64.3% | −9.8% | 29 円1 億円 |
| やや悲観 | 26% | 82 円4 億円 | 0 円0 億円 | −69.9% | −11.3% | 21 円1 億円 |
| 悲観 | 16% | 21 円1 億円 | 0 円0 億円 | −92.1% | −22.4% | 3 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 151 円7 億円 | 0 円0 億円 | −44.3% | −5.7% | 151 円7 億円 |
今の株価時価総額 271 円13 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 独自データを守り、全社費用の改革に成功 利益 2 億円 · PER 10.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 433 円21 億円
企業と学校の双方で、測定データの継続性が評価される。AIによって評価作業の大半が自動化されても、過去の測定結果と比較できる独自データは簡単に置き換えられない。企業の人材配置や学校の教育改善に測定結果が深く組み込まれ、既存顧客の減少を新規導入で補えるようになる。HRでは付加価値の高い支援案件を確保し、教育でも価格の下落を食い止める。
海外事業は大きな失敗を繰り返さず、小規模ながら利益を残す。最大の変化は管理費である。AIによる業務の自動化と組織の簡素化により、全社費用は現在の水準から大幅に減少する。2025年の資本提携による転換社債は期限までに転換され、会社に新たな現金流出を強いない。売上の爆発的な伸びではなく、利益が株主のものになる仕組みが整う10年である。
- HR事業:数量 67.0(国内年間顧客企業数(社))× 価格 0.06(顧客企業当たり年間収益(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。国内顧客67社を維持。単価は10年間の物価上昇に相当する1.34倍。分析・助言を含むため数量は増やさない。
- 教育事業:数量 523(年間サービス別延べ導入学校数(校))× 価格 0.01(延べ導入学校当たり年間収益(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。延べ523校を維持。単価は1.15倍にとどめ、AIによる価格圧力を反映。
- グローバルプラットフォーム事業:数量 4.0(年間案件相当数(件、推定))× 価格 0.16(案件相当当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。既存の案件相当数量を維持し、単価1.34倍。大規模GCC案件の未実証の成長は加えない。
倍率:資本コストk9.25%、2036年ROE15.23%、弱い堀に対応する超過収益の残存率3分の1からRONIC11.24%。g_longマイナス0.5%を用いた正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)は約10.713倍。利益2.01億円との積は約21.532億円。2026年3月期自己資本4.8億円を起点に、10年間の純利益累計7.6億円と転換社債の株式転換0.8億円を加え、還元なしで2036年自己資本13.2億円とする。全社費用を0.6億円まで削減できるという、実績未確認の強い条件を伴う。
確率:学校と企業の継続利用を維持し、競争力のある平均単価も確保したうえで、本社・開発基盤の効率化を大きく進める必要がある。新しいAIエージェント製品の金額を伴う販売実績が確認できないため、強気でも数量の増加を当然とはしない。
やや楽観 18% 主力事業が粘り、海外の損失が収まる 利益 1 億円 · PER 10.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 299 円14 億円
主力2事業は成長市場の中心を独占するわけではないが、一定の顧客から長く選ばれる。人材評価は企業の重要な判断に使われ、学校の能力評価も継続される。AIで報告書の作成や評価の運用が安くなるため顧客数はやや減るが、蓄積データを生かした分析の品質が価格の下落を防ぐ。
海外事業はGCCで大きなシェアを獲得しないものの、既存顧客に限定して事業を継続し、小幅な黒字を確保する。大規模な買収は行わず、販売体制と本社機能を見直して全社費用を削る。過去のWeb3関連投資のような大きな損失を繰り返さないことが、株主価値の改善につながる。営業利益は安定するが、強い価格支配力を持つ大企業にはならない。
- HR事業:数量 61.0(国内年間顧客企業数(社))× 価格 0.05(顧客企業当たり年間収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。企業数は現状比0.91倍、単価1.28倍。人月・工数型として数量成長は想定しない。
- 教育事業:数量 480(年間サービス別延べ導入学校数(校))× 価格 0.01(延べ導入学校当たり年間収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。延べ校数0.92倍、単価1.15倍。
- グローバルプラットフォーム事業:数量 3.6(年間案件相当数(件、推定))× 価格 0.15(案件相当当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。等価案件数量0.90倍、単価1.28倍。大型GCC案件への依存を避ける。
倍率:ROE12.91%、k9.25%、弱い堀の残存率3分の1によりRONIC10.47%。g_longマイナス0.5%から正当化PER約10.746倍。2036年純利益1.33億円との積は約14.292億円。10年間の利益累計5.5億円が自己資本に留まり、配当・買い戻しは行われないとする。
確率:HRと教育の顧客基盤が大きく崩れず、グローバル関連事業の赤字を止められれば実現する。ただし、顧客単価を維持しながら全社費用を圧縮する二つの条件が必要なため、中心より低い確率とする。
中立 30% 評価の需要は残るが、顧客数と単価に圧力 利益 0 億円 · PER 10.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 97 円5 億円
学校と企業は、10年後も人の能力を評価する。ただし、報告書の作成、候補者の比較、改善計画の提案などはAIエージェントが担う割合が増える。顧客は評価データそのものには対価を払うが、画面の利用や人的支援を含めた従来の契約を維持する必要は薄れる。HRの契約企業数は現状のおよそ3分の2となり、教育の延べ導入数も緩やかに縮む。
海外事業では、SignalsやGCCの大型展開は実現せず、小規模なサービスとして残る。かつてのWeb3投資の失敗を繰り返さないことは前進だが、高収益事業には育たない。会社は管理業務の省力化や開発体制の統合を進め、本社費用を大幅に削減する。この削減が実際に達成できなければ、中立の小幅な黒字すら実現しない。優れた測定技術は残っても、株主資本に対する利益率は資本コストに届かない。
- HR事業:数量 44.0(国内年間顧客企業数(社))× 価格 0.05(顧客企業当たり年間収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。人月・工数型。企業数44社で現状の0.66倍、単価1.28倍。
- 教育事業:数量 420(年間サービス別延べ導入学校数(校))× 価格 0.01(延べ導入学校当たり年間収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。席・操作画面型。延べ導入420校で現状の0.80倍、単価1.12倍。
- グローバルプラットフォーム事業:数量 2.6(年間案件相当数(件、推定))× 価格 0.15(案件相当当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人材調達・情報サービス型。等価案件数量0.65倍、単価1.28倍。
倍率:2036年ROEは0.45÷5.4=8.33%で資本コスト9.25%を下回るため、長期成長による超過価値を加えない。g_longマイナス0.5%を反映した稼ぐ力の上限1÷(k-g)=10.256倍を使い、時価総額は0.45×10.256=約4.615億円。ROEが低いため余剰現金を別建てで上乗せしない。2036年自己資本5.4億円は、2026年3月期4.8億円に10年間の純利益累計0.6億円を加えた額であり、途中の損失や収益改善の遅れを含む。2026年3月期の全社費用約2.42億円から2036年に1.20億円まで削減できるという大きな条件を含み、未達なら評価額は下がる。
確率:AI代替を数量・単価に織り込んだ中心シナリオである。下に寄せる理由:同社は直近2期の連結赤字が大きく、2027年3月期第1四半期も損失を計上した。GCCの大型契約と経営管理費の削減がまだ実績で裏付けられていないため、下側の合計確率42%を上側28%より大きくする。AI代替の縮小を確率でさらに重ねるものではない。
やや悲観 26% 顧客の流出が続き、黒字化が定着しない 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 82 円4 億円
人材評価の技術は利用され続けるが、企業は既存の人事ソフトやAIエージェントへ評価業務をまとめる。HRの契約企業数は減り、値上げも限定的になる。学校では公的支援や予算の変動が続き、導入を維持するため単価を抑えざるを得ない。測定結果を蓄積する価値は残るものの、新しい顧客を獲得する力は弱まる。
グローバル関連事業では十分な継続案件を確保できず、開発と運営の費用が重く残る。会社は不採算事業を整理するが、管理費と研究開発費を売上減少に見合うほど速く削れない。結果として最終赤字が残り、配当もできない。資金調達に直ちに行き詰まるわけではないが、手元資金を守ることが経営の中心課題となる。企業価値は成長への期待より、残存する流動資産の処分可能額に近づく。
- HR事業:数量 40.0(国内年間顧客企業数(社))× 価格 0.05(顧客企業当たり年間収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。企業数0.60倍、単価1.12倍。低稼働で利益率も下がる。
- 教育事業:数量 390(年間サービス別延べ導入学校数(校))× 価格 0.01(延べ導入学校当たり年間収益(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。延べ校数0.75倍、単価1.02倍。学校予算の制約を反映。
- グローバルプラットフォーム事業:数量 2.2(年間案件相当数(件、推定))× 価格 0.13(案件相当当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件相当数量0.55倍、単価1.10倍。不採算な開発・運営費を負担する。
倍率:営業赤字が残るためPERは用いず、現時点の自己資本4.8億円に対する資産評価を採る。PBR0.8125倍×4.8億円=3.9億円。2036年の累積自己資本3.8億円に掛けた数字ではない。企業全体の稼ぐ力が赤字のため、2026年3月期の純現金約3.9億円を流動資産の守りの目安とする。途中の赤字が非資金性でなく現金流出を伴う場合、この床は維持できない点に注意する。
確率:既存顧客の更新停止と学校予算の制約が重なり、管理費の削減が十分進まない筋書き。2027年3月期第1四半期にはHRの大口顧客の更新停止による売上減が実際に生じているため、無視できない可能性とする。
悲観 16% 事業再建に失敗し、資金調達で持分が薄まる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 21 円1 億円
大手の人事ソフトやAIエージェントが評価と分析の業務を取り込み、IGSの企業向け契約数は半分以下となる。学校では評価サービスがより安い学習支援基盤に組み込まれ、独立した能力評価への支払いが減る。蓄積データを持っていても、顧客が離れれば新しい評価結果が集まりにくくなり、技術上の優位も弱まる。
インドGCCやSignalsは事業として定着せず、撤退費用が再び発生する。人員を削減しても固定費が残り、利益を黒字へ戻せない。会社は運転資金を確保するため増資を行い、既存株主の持分が薄まる。現金の多くは過去の赤字と再建費用に使われ、清算可能な資産も小さくなる。評価技術が一部残っても、株主の取り分まで十分残るとは限らない10年となる。
- HR事業:数量 30.0(国内年間顧客企業数(社))× 価格 0.04(顧客企業当たり年間収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。企業数0.45倍、単価1.05倍。継続顧客が大幅に減る。
- 教育事業:数量 340(年間サービス別延べ導入学校数(校))× 価格 0.01(延べ導入学校当たり年間収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。延べ校数0.65倍、単価0.92倍。顧客流出と値下げが同時に進む。
- グローバルプラットフォーム事業:数量 1.4(年間案件相当数(件、推定))× 価格 0.12(案件相当当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件相当数量0.35倍、単価据え置き。サービス縮小後も費用が残る。
倍率:再建失敗により赤字が続き、通常の利益倍率は意味を持たない。現時点の自己資本4.8億円にPBR0.25倍を掛け、会社全体の2036年時価総額を1.2億円とする。過去のPBRの谷を根拠にはしていない。2026年3月期の純現金3.9億円から、10年間の資金消費と撤退・再建費用として2.7億円が失われ、残存流動資産の価値を1.2億円と見込む。累計損失5.1億円と新規出資1.2億円により、2036年自己資本は4.8-5.1+1.2=0.9億円とする。
確率:既存顧客の流出、新規事業の不採算、継続的な赤字が重なり、資金調達が必要になる複合的な構造悪化を想定する。2026年時点ですでに複数年の赤字と海外投資の減損が確認されているため、単なる景気循環の谷ではない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
HR事業
GROW360などの能力評価、組織開発、人材配置、人的資本関連の分析・助言。ソフトウェア利用とコンサルティングが混在する。
| 数量国内年間顧客企業数(社) | 価格顧客企業当たり年間収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 67.0 | 0.04 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 0.05 | 2 | 1 |
取り方:2026年6月の事業計画35ページに国内顧客67社、顧客当たり収益420万円が明示されている。セグメント売上2.819億円を67社で除した421万円を計算上の単価とする。会社の顧客数は国内限定で、単価には海外等を含むセグメント売上が入るため、完全に一致した母集団ではない。前期も67社で、平均収益は356万円から増加したが、会社はコンサル案件の受注によるものと説明している。会社提示の対象市場は約650億円、対象企業1万5,520社であり、売上シェアと企業数シェアはいずれも約0.43%。競合にはTalent Palette、カオナビ、HRBrainなどがある。ソフトウェア分と人的助言分の売上内訳が非開示のため、AI代替の評価では保守的に全体を人月・工数型として扱う。中立の10年後は数量0.66倍、単価1.28倍。
教育事業
Ai GROWなどによる学校向け非認知能力評価、教育効果の測定、分析結果の提供と利用支援。
| 数量年間サービス別延べ導入学校数(校) | 価格延べ導入学校当たり年間収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 523 | 0.01 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.01 | 3 | 1 |
取り方:会社の事業計画35ページで教育の顧客数523校、顧客単価63万円と開示。3.28877億円÷523校=約62.9万円で整合する。校数はサービス別の延べ数であり、有料の独立した学校数ではない。前期463校から増えた一方、単価は67万円から63万円へ低下した。会社は国内約3万3,000校と想定単価84万円を用いて約280億円の対象市場を示す。延べ校数による参考浸透率は約1.6%、売上を対象市場で割った参考シェアは約1.2%で、双方の定義は完全には一致しない。競合はClassiなどの学校向けサービス、教育評価・検査・校務支援各社。操作画面と測定・報告を提供するSaaS型として扱い、中立の10年後は数量0.80倍、単価1.12倍。独自データはあるが記録の正本に必要な複数の堀の証拠は確認できない。
グローバルプラットフォーム事業
従来のWeb3・関連支援サービスから、SignalsとインドGCC設立・人材調達支援へ軸足を移す事業。
| 数量年間案件相当数(件、推定) | 価格案件相当当たり年間売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 0.12 | 0 | −2 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 0.15 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書の旧プラットフォーム・Web3事業売上0.48366億円、セグメント損失1.80713億円を正とする。年間案件数と単価の開示はないため、4件相当×約1,209万円という測定用の等価案件に分解した推定であり、実際に4件のGCC契約があるという意味ではない。2027年3月期第1四半期の新グローバルプラットフォーム事業売上は0.04436億円で、GCCの継続有料顧客数やSignalsの契約単価は確認できない。会社が示すインドGCC市場は2030年に約990億~1,050億ドルという業界予測だが、IGSの顧客シェアは未立証である。人材調達・拠点設立支援は人月・工数型、Signalsは情報・操作画面型として保守的に扱う。中立の10年後は等価案件数量0.65倍、価格1.28倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替
HRの分析・助言は人月や工数で売る部分があり、教育サービスは操作画面と評価レポートが商品価値の一部である。AIエージェントが報告書、評価、配置案、教育改善案を自律的に作れば、顧客は契約人数や利用サービスを減らせる。中立ではHRとグローバル関連を人月・工数型、教育を席・操作画面型として数量と価格を制約した。独自データは強みだが、価格を維持できるという証拠とは別である。
全社費用を賄えない収益構造
2026年3月期はHRと教育のセグメント利益を合計すると約2.0億円あったが、全社費用が約2.4億円かかり、海外関連の損失も加わった。中立の2036年黒字化でさえ、管理部門などの費用を大幅に圧縮する前提に立つ。2027年3月期第1四半期の全社費用は約0.63億円で、抜本的な減少が実証されたとは言えない。
海外GCCとSignalsの収益化
会社の中期計画は、グローバルプラットフォーム事業が2029年3月期に売上10億円となることを大きな前提としている。一方、2026年3月期の旧事業売上は約0.5億円であり、GCCの継続有料契約とSignalsの収益実績はまだ十分に確認できない。巨大な海外市場には既存のITサービス会社や人材企業が参入しており、計画だけからシェア獲得を見込むことは危険である。
現金流出と既存株主の希薄化
純現金は約3.9億円あるが、赤字が続けば開発、運転資金、撤退費用に使われる。2025年には第三者割当増資と転換社債による調達を実施しており、資金需要を株式発行で補う前例がある。転換社債だけでも最大約20万株の潜在株式を生じる。会社全体の事業価値が上がっても、既存株主の保有割合が下がればその恩恵は薄まる。
学校予算と顧客の継続率
教育事業では導入校の延べ数が増えても顧客単価が下がった。公的補助金の終了、教育予算の制約、複数サービスの統合が重なれば、利用者数と収益の伸びが乖離する。HRでは2026年3月期の顧客企業数が横ばいで、翌年度第1四半期には大口顧客の更新停止も影響した。低解約率が数字で立証されるまでは、継続課金の安定性を過大評価できない。
評価データの信頼性と個人情報
能力評価の根幹は、測定結果が公平で信頼できるという顧客の認識にある。測定の偏り、評価アルゴリズムの問題、個人情報の漏えいが起これば、長年蓄積したデータの優位が信用の低下に変わりかねない。学校と企業の双方を顧客に持つため、情報管理上の不備は契約解除や損害賠償だけでなく、導入検討そのものを停滞させる可能性がある。
今後の分かれ目
- HRの有料顧客が67社を安定して上回り、契約更新率と継続売上が複数年度にわたり開示されたら
- 人月型として評価した売上の一部を、継続性の高いデータ利用料として再評価する。解約率や値上げ実績も確認できれば、堀の強さと10年後の数量前提を上方修正する。
- 教育の延べ導入校数と顧客単価が2年以上同時に増加し、補助金なしでも継続したら
- 学校での定着と価格維持を確認できるため、中立の校数と単価を引き上げる。ただし延べ校数ではなく、有料の独立契約校数と更新率も確認する。
- インドGCCの有料継続契約数、年間契約額、粗利益が具体的に開示され、計画どおり積み上がったら
- 未実証の新規事業として抑えている数量前提を見直し、利益を上乗せする。構想上の受注可能企業数と実際に請求済みの契約を区別して検証する。
- 全社費用が継続的に減り、会社全体の営業利益と営業キャッシュ・フローが2期以上そろって黒字になったら
- 中立で必要としている費用改革の実現性が高まる。運転資金の一時的な改善によるキャッシュ・フローではないことも確認し、資本コストの事業再建上乗せを再検討する。
- 新たな大型の海外投資、貸倒損失、減損損失、追加増資が発表されたら
- 経営の資本配分能力に対する評価を引き下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。増資の場合は会社全体の調達額と既存株主の希薄化率を分けて計算する。
- AIエージェントが主力の評価・報告業務を代替し、顧客単価の引き下げや契約の統合が進んだら
- 該当セグメントの数量と価格を見直す。一方、IGS自身のAIエージェント製品について金額を伴う継続売上が確認できた場合に限り、その新しい収益源を別途評価する。
見ておくもの
- HR事業の年度末有料顧客企業数、顧客単価、契約更新率と大口顧客への依存度
- 教育事業の延べ校数と重複を除いた有料契約校数、単価、補助金に依存しない継続収益
- GCCのタイプ別実契約社数、年間契約額、粗利益、解約率
- Signalsの有料顧客数、実際の請求売上、継続率とAI機能の収益化
- 全社調整費用、研究開発費、売上総利益、営業利益と営業キャッシュ・フローの同時改善
- 現預金、借入金、転換社債の行使・償還、株式発行と既存株主の希薄化
- 継続企業の前提に関する注記の有無、不採算子会社の整理と新規投資の規模
- 2029年3月期の会社計画に対する実契約・売上・利益の進捗
倍率と資本コストの決め方
現在の株価251円や市場のPER・PBRを使って筋書きの利益と倍率を逆算していない。まず2026年3月期の実際の顧客67社、延べ導入523校、セグメント売上と費用から出発し、AI代替による10年後の数量減少と単価制約を別々に反映した。利益は各事業の限界利益と全社費用を足し合わせた。中立でも全社費用の大幅削減を必要とする点は、実績が不足した重要な前提である。倍率はk9.25%、g_longマイナス0.5%、事業ROE、堀の残存率から正当化した。悲観側のPBRは将来積み上がる自己資本ではなく、現在の自己資本4.8億円を基準に使った。最新四半期の損失、転換社債と想定増資による取り分の違いも確認した。新リース会計による表示変更が生じても、2036年の営業利益は賃借費用を従来どおり負担した形で比較する。結果を今の時価総額へ寄せる修正は行っていない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。基本7.5%に、業績変動と値決め力、純現金による品質調整0.75ポイントを加え、赤字が続く事業の存続・再建上の上乗せ1.0ポイントを加える。規模や株価のベータ、AI代替の寿命リスクは重複加算しない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- Institution for a Global Society「事業計画及び成長可能性に関する事項」(2026年6月26日)
- Institution for a Global Society「2026年3月期有価証券報告書」(2026年6月24日提出)
- Institution for a Global Society「2027年3月期第1四半期決算短信」(2026年8月13日)
- Institution for a Global Society「プルータス・グループとの資本業務提携及び第三者割当発行について」(2025年11月14日)
- Institution for a Global Society「連結子会社の清算について」(2026年9月18日)