結論
ガンホーは、もう「パズドラの会社」ではない。連結売上の約 6 割は、韓国の子会社 Gravity が運営する「ラグナロク」シリーズが稼いでいる。パズドラは 2025 年に売上が 4 割減り、全体に占める割合は 3 割を切った。
筆者の結論はやや割高だ。会社が弱いからではない。10 年先の姿を置くと、親会社の株主に残る利益は、厚い現金を足しても今の時価総額にやや届かない。理由は 3 つある。パズドラの細り、新作 9 本の開発費、Gravity の利益の 4 割強が少数株主に流れることだ。
2025 年の純利益は 14 億円まで落ち、2026 年の上期は営業利益が 27% 増えた。回復は本物だが、中身は Gravity の新作の貢献だ。国内の稼ぎを補う柱はまだ見えない。
株主還元は手厚い。2026 年は 50 億円の自社株買いを終え、自己株 1,600 万株を消却した。ただ還元の原資は、利益ではなく積み上げた現金だ。
連結の現金・預金・有価証券は 1,362 億円(時価総額とほぼ同じ)あるが、Gravity の現金の 4 割強は少数株主のものだ。そこと事業に要る分を引いた約 930 億円だけを余りとして数えた。経営の対立も続く。アクティビストの提案は否決され、社長は交代した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を「持ち続けたいか」と問うと、答えは割れる。事業の本質は、ラグナロクという長く遊ばれる IP が、毎年の続編で収益を生むことだ。これは、わかりやすく、堀もある。
ただし、親会社の株主が持てるのは、その稼ぎの 6 割弱だ。残りは Gravity の少数株主のものになる。連結の数字が良く見えても、オーナーの手に残る利益は小さい。バリュー投資家はこの違いをまず見る。
次に資本の使い方だ。ガンホーは毎年、利益を大きく超える還元をしている。現金が減り、自己資本も増えない。安く買えているなら自社株買いは良いが、10 年先の価値がその値段に届かないなら、買い戻しは価値を壊す側に働く。
最後に安全域だ。筆者の置き方では、確率で重みづけた 10 年後の価値が、今の時価総額を大きく下回る。上振れの筋書きでも、今の値段に届かない。安全域は無い。
事業の質が悪いわけではない。優良な会社でも、払う値段が高ければ良い投資にならない。それが、この結論の筋だ。
何で稼ぐ会社か
ガンホーの稼ぎの源は 3 つある。ひとつ目は、子会社 Gravity が運営するラグナロク系のゲームだ。韓国で生まれた MMORPG(多人数が同時に遊ぶ役割分担型のゲーム)で、アジアと中南米を中心にスマホ版と PC 版の続編が毎年のように出る。
ふたつ目は、国内のパズドラだ。2012 年に始まった運営型のスマホゲームで、2025 年の売上は 255 億円。全盛期の 2014 年に連結売上 1,700 億円超を支えた柱だが、いまは細った。ガチャ(くじ形式の課金)に頼る形で、新規ユーザーの流入が細っている。
みっつ目は新作だ。新作パイプラインは 5 本から 9 本に増えた。スマホ、コンソール、PC を世界に向けて同時に作る方針で、エイリムの子会社化もその一環だ。開発の人員と業務委託費が先行して増えている。
2025 年はこの 3 つが別々の方向に動いた。Gravity は売上が 1 割強伸び、国内は新作費で赤字と筆者は推定する。連結の営業利益は 51 億円まで落ちたが、Gravity の営業利益だけで 80 億円あまりある。国内の営業損益は、筆者の推定でおよそ 30 億円の赤字になる。
Gravity の持分は 59.3% で、残りは米国のナスダックなどで取引される少数株主が持つ。連結利益のうち 4 割強は、この少数株主に流れる。これがガンホーを見る時のいちばん大きな注意点だ。
稼ぎの形も単純ではない。Gravity の売上は主にウォンとドルなど外貨で入り、円に直すと為替の影響を受ける。ここでは 1 ドル 150 円で 10 年続くと置いた。
優良さと弱いところ
ガンホーの優良さは、過去ほど高くない。堀、つまり他社がまねできない強みは、ラグナロクという 20 年以上続く IP と、運営の腕にある。パズドラの堀は薄れ、新作を生む力はまだ証明されていない。
利益率の動きが、それを物語る。営業利益率は 2014 年の 5 割台から 2025 年の 5% まで下がった。パズドラの売上が細る速度に、国内の新作が追いつかなかった。10 年の ROE の中央値は 19% だが、直近は 1% 台だ。
バリュー投資の目で見ると、資本の使い方にも注文がつく。2015〜16 年の 2 年だけで 1,500 億円超の自社株買いをした。以後も毎年 50 億円から 100 億円を戻す。ただし、買い戻しは稼ぎの伸びを伴っていない。
価格を決める力も弱い。課金額はプラットフォームの手数料と、ガチャの規制に縛られる。ラグナロクの価格は、各国の競争と通貨に左右される。
良い点もある。自己資本比率は 7 割で、借金が事業を縛ることはない。Gravity の現金も厚く、新作の失敗に耐える体力はある。優良さは「守りの強さ」にあって、「攻めの確かさ」には無い。
経営の面では、開発責任者が舵取りを兼ねる集中が問題視された。社長交代は、その点への一定の答えにはなった。ただ、新体制が資本の使い方を変えたかは、まだ数字で確かめられない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ゲーム産業は世界で 30 兆円超の規模があり、年 4〜6% で伸びる。モバイルが過半を占め、国内は人口減でほぼ横ばいだ。ガンホーが戦うのは、国内のスマホ運営型と、アジア・中南米のモバイル MMORPG の 2 つの市場だ。
国内は、パズドラの全盛期から市場の構造が変わった。ガチャ型の運営ゲームは、新規ユーザーの獲得費が上がり、ヒットの寿命も伸びにくい。ここで勝ち残る会社はごく少ない。
アジアのモバイル MMORPG は韓国勢が強い。ガンホー側のラグナロクは、IP の知名度と運営の経験で戦う。競合は、韓国の NCSoft、Netmarble、中国の大手などだ。続編の質と配信地域の広げ方が分かれ目になる。
共通のリスクは、プラットフォーム手数料(売上の約 3 割)と、ガチャの規制だ。生成 AI も、制作の費用を下げる一方で、競合の参入を軽くする。
循環は薄い。ただし、ヒットの有無で営業利益が 2 倍以上動くのは、この業界の常だ。新作 9 本を同時に走らせるガンホーは、その振れを自分で大きくしている。
同じ領域のカプコンやコナミは、世界で通用する大型 IP を持つ。ガンホーのパズドラは、その位置から外れつつある。ガンホーは、Gravity という別の柱で戦っている会社だ。
今後 10 年、数量の伸びは世界の新規ユーザーに頼る。ガンホーの強みは国内ではなく、海外の MMORPG の続編を回す力にある。物価の分は価格に反映できるが、競争が価格を押さえる。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社を見る上で外せない論点だ。2026 年 2 月に自社株買いを決め、2 月から 4 月にかけて約 198 万株を約 50 億円で取得して終えた。6 月 30 日には自己株 1,600 万株を消却し、発行済株式は 5,316 万株になった。株数は開示で確かめてあり、自己株を除く株数は 5,237 万株だ。
還元は利益を大きく超える。2025 年の配当は前の期の 1.5 倍で、配当性向は 3 倍を超えた。原資は積み上げた現金で、毎年の利益ではない。この水準を続けるには、利益の回復が要る。
ガバナンスは動いている。2025 年 9 月、アクティビストのストラテジックキャピタルは森下一喜氏の解任を求めたが、否決された。2026 年 2 月に社長は坂井一也氏に代わった。3 月の定時株主総会でも、同社の 10 議案が否決された。提案には、孫泰蔵氏の資産管理会社の持ち株を自己株として取得する案も含まれていた。
10 年以内に TOB(株式公開買い付け)や再編が起きる可能性は、kabufu のシミュレーションで 15% 程度だ。Gravity の少数株主との関係整理も、将来の選択肢になりうる。
還元の置き方:配当の方針は数値では示されていない。10年の中立は、今の1株90円の配当を保つ水準(年40億円台)で、純利益の合計の9割。2026年2〜4月の自社株買い(約50億円)は株数に反映済みで、還元には入れていない。余った現金930億円は時価総額側で足している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ガンホーは、国内の不振で売られているだけの会社だ。Gravity は売上が毎年伸び、現金は 640 億円ほどある。ラグナロクの新作は 2026 年の下期に 4 本控え、2026 年の上期には営業利益が 27% 増えた。
国内も底を打つ。パズドラの売上は 40% 落ちたが、依存度はすでに 27% まで下がった。広告型の「ゼロ」は課金に頼らない新しい収益源で、新作 9 本のうち 1 本でも世界で当たれば、国内は赤字から黒字へ変わる。
株主還元の姿勢は鮮明だ。50 億円の自社株買いを終え、1,600 万株を消却し、配当も前の期の 1.5 倍に引き上げた。アクティビストの圧力もあって、さらに踏み込む余地がある。社長も交代した。
連結の現金・有価証券は 1,362 億円で、時価総額とほぼ同じ額になる。事業の利益が元の水準に戻れば、PER は低く見え、現金を引いた事業の値段はさらに安い。
過去を見ても、利益率が 5 割から 3 割へ落ちた後にも、ガンホーは現金を厚く積み上げてきた。新体制が資本効率を意識して動くなら、評価が見直される余地は十分にある。ラグナロクの新作 4 本が当たれば、国内の穴を補って余りある。
慎重な見方
ガンホーは、国内の稼ぎを失った会社を、Gravity が支えているだけだ。連結の売上の 6 割は Gravity で、その利益の 4 割強は少数株主のものだ。親会社の株主の利益は、見かけの営業利益より小さい。
パズドラは 2025 年だけで売上が 4 割も減り、まだ底が見えない。新作 9 本は開発費を先行させるが、国内の新作が世界で当たった実績は乏しい。ラグナロクは 20 年超の IP で、続編の疲れが出れば課金者が減る。
還元も安心材料ではない。配当は利益の 3 倍を超え、原資は積み上げた現金だ。現金は Gravity の分を含み、親会社の株主が自由に使える額は連結の数字より小さい。
経営の対立も尾を引く。アクティビストの提案は否決されたが、一定の賛同を集めた。新社長は、新作の成果をこれから示す立場にある。10 年先の利益を置いて今の時価総額と比べると、釣り合わない。
売上の伸びも、価格の力ではなく物価の分に近い。数量が伸びなければ、利益は物価に追いつくだけで終わる。さらに、新作の開発費は人件費の上昇で増え続け、利益率を押し下げる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は、利益の「質」にある。強気の見方が言う Gravity の成長と還元の厚さは本物だが、親会社の株主に届く利益に直すと小さい。パズドラの細りと新作費の重さも、上振れの筋書きの数を絞る。確率は、中立に 33%、楽観側に合わせて 30%、悲観側に合わせて 37% を置き、悲観寄りにした。ヒット次第で利益が 2 倍以上動く業界の性質は、楽観の筋書きにも 8% を残す形で反映した。経営の対立は k に足さず、悲観の確率の中で扱った。回復が数字で確かめられれば、確率は動かしてよい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,676 円1,925 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 682 円357 億円)。 今の値に割り戻すと 2,114 円1,107 億円、今との差 −13.1%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,979 円4,179 億円 | 1,283 円672 億円 | +280.9% | +14.3% | 741 円388 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,680 円2,975 億円 | 1,024 円536 億円 | +175.7% | +10.7% | 1,475 円772 億円 |
| 中立 | 33% | 3,852 円2,017 億円 | 796 円417 億円 | +91.1% | +6.7% | 1,534 円803 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,564 円819 億円 | 334 円175 億円 | −22.0% | −2.4% | 399 円209 億円 |
| 悲観 | 16% | 1,178 円617 億円 | 134 円70 億円 | −46.1% | −6.0% | 210 円110 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,676 円1,925 億円 | 682 円357 億円 | +79.2% | +6.0% | 4,358 円2,282 億円 |
今の株価時価総額 2,432 円1,274 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% ラグナロクが世界で育ち、新作の一部も当たる 利益 193 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 7,979 円4,179 億円
ラグナロクが 10 年先もアジアと中南米で稼ぎ続け、さらに別の地域へ広がる。Gravity は続編を毎年のように出し、課金者の数も単価も伸びる。筆者が見るこの筋書きの核は、20 年以上続く IP が「世代交代しながら遊ばれ続ける」点だ。
国内では、9 本に増えた新作のうち 1〜2 本が世界でヒットする。コンソールと PC への展開が実り、新規事業の赤字が黒字に変わる。パズドラは広告型の新作「ゼロ」が下支えとなって、細る速度が緩む。
利益の増え方は大きいが、Gravity の利益の 4 割強は少数株主に流れる。親会社の株主に残る利益は、営業利益の伸びほどには増えない。それでも自己資本の利益率は 12% 前後まで戻り、資本コストを上回る。
- Gravity(ラグナロク系):数量 174(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 6.79(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 1,182 億円・営業利益 236 億円。新作が東南アジア以外にも広がり、利益率 20%
- パズドラ(国内運営型):数量 63.8(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.02(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 256 億円・営業利益 72 億円。細りが緩く、広告型の新作も下支え
- 新作・その他:数量 90.0(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.80(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 432 億円・営業利益 108 億円。9 本の新作の一部が当たり、利益率 25%
倍率:事業の純利益 180 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.6% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)930 億円。全体の PER 18.08 倍、時価総額 4,179 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ラグナロクの新作 4 本が下期に控え、開発の人員も厚い。複数の当たりが重なる筋はあるが、新作のヒット率は低いため 8% に抑えた。
やや楽観 22% ラグナロクが伸び、新作が赤字を脱する 利益 129 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 5,680 円2,975 億円
ラグナロク系の新作が毎年出て、Gravity の稼ぎは物価を上回って伸びる。国内は、新作 9 本の開発費が重い時期を越え、赤字がほぼ消える。パズドラは緩やかに細るが、いまも運営の柱だ。
当たりの規模は中程度にとどまる。世界的な大ヒットは出ず、積み上がる小さな成功の合計で利益が戻る。自己資本の利益率は 9% 前後で、資本コストをわずかに上回る。
強気の見方と慎重な見方の間にある、いちばん現実に近い上振れの形だ。ただし Gravity に利益の多くを頼る構図は変わらず、少数株主への流出も続く。国内の新作で生まれる利益は、まだ小さな柱だ。筆者は、この筋書きが起きる確率を、全部がうまくいく必要がある分だけ割り引いて見ている。
- Gravity(ラグナロク系):数量 156(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 6.64(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 1,037 億円・営業利益 187 億円。続編が積み上がり、利益率 18%
- パズドラ(国内運営型):数量 59.5(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.02(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 239 億円・営業利益 60 億円。緩やかに細る
- 新作・その他:数量 66.0(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.48(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 296 億円・営業利益 59 億円。赤字を脱し、利益率 20%
倍率:事業の純利益 116 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.8% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)930 億円。全体の PER 17.63 倍、時価総額 2,975 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ラグナロク系の新作が積み上がり、国内の赤字が止まる筋書き。起こりうる一方、全部がうまくいく必要があるので 22% とした。
中立 33% ラグナロクが支え、パズドラは細り、新作は並 利益 79 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 3,852 円2,017 億円
ラグナロクの続編が Gravity を支え、利益は物価並みに伸びる。ただ、この IP は 20 年以上の歴史があり、課金者の伸びは小さい。筆者は、中立の置き方として数量の伸びを 15% 程度にとどめた。
パズドラの課金者は 10 年で半分強まで減る。広告型の「ゼロ」は課金を前提にしないため、売上の穴を埋めない。国内の新作は、当たりと外れが交互に来て、全体の利益率は 15% 程度にとどまる。新作 9 本が全部外れることも、全部当たることもない。
連結の営業利益は 150 億円台まで戻る。ただ Gravity の少数株主の取り分が引かれ、親会社の株主の利益は 80 億円弱だ。自己資本の利益率は 6% 台で資本コストに届かず、倍率は上に伸びにくい。
- Gravity(ラグナロク系):数量 138(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 6.50(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 897 億円・営業利益 144 億円。続編で保ち、利益率 16%
- パズドラ(国内運営型):数量 46.8(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.02(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 188 億円・営業利益 41 億円。課金者は半分強に細る
- 新作・その他:数量 48.0(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.29(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 206 億円・営業利益 31 億円。新作は 1 本ずつ当たり外れ、利益率 15%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)930 億円。全体の PER 16.58 倍、時価総額 2,017 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:同じ IP の続編で稼ぎを保ち、パズドラの細りを新作が埋めきれない筋書き。強気の材料と慎重な材料が拮抗するため最も厚くした。
やや悲観 21% ラグナロクが頭打ちになり、新作が実らない 利益 21 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,564 円819 億円
ラグナロクの続編が続くが、同じ IP の疲れで課金者が減り、値上げも通らない。Gravity の利益率は 1 割あまりに落ちる。パズドラは課金者が 3 割まで細り、国内の収益源は弱る。
新作 9 本は大半が不発に終わり、開発費を回収できない。費用を絞って赤字は止めるが、成長の柱は育たない。人員の厚みは重荷として残る。連結の営業利益は 50 億円台で、少数株主の取り分を引くと親会社の株主に残る利益は 20 億円程度だ。
会社は株主還元を続けるが、利益より還元が大きい状態が続き、自己資本は増えない。利益で測る価値は小さく、手元の資産が価値の支えになる。株主還元をやめれば現金は残るが、成長の物語は聞こえなくなる。
- Gravity(ラグナロク系):数量 114(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 6.31(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 719 億円・営業利益 86 億円。続編の疲れで課金者が減り、利益率 12%
- パズドラ(国内運営型):数量 25.5(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.02(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 15 億円。課金者は 3 割まで減る
- 新作・その他:数量 33.0(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.29(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 142 億円・営業利益 6 億円。新作はほぼ収支均衡
倍率:事業分(現金と利息を除く)の純利益 11 億円・ROE 2.2% が k 8.3% 以下なので、ためた利益は額面に満たない価値で、PER は 1÷k = 12.0 倍まで。成長と堀の持ちを低く見るので、上限の約 9 割にあたる 10.84 倍に置いた。余った現金は今の 4 分の 3 の 697.5 億円に減り、戻り方 1.0 で足す。
確率:続編の疲れと新作の不発が重なる。ラグナロクの新作は 20 年超の IP への依存が高く、ここを少し厚く 21% に置いた。
悲観 16% ヒットが途絶え、Gravity の稼ぎも縮む 利益 −24 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,178 円617 億円
パズドラは寄与を失い、国内の新作もヒットが出ない。ラグナロクも、競合の新しい MMORPG や規制、課金環境の変化で稼ぎが縮む。Gravity は黒字を保つが、利益率は 1 桁に落ちる。
国内では人員を厚くした分の費用が重く、リストラを迫られる。連結で営業赤字となり、親会社の株主の利益はマイナスになる。株主還元は細り、手元の現金は新作の失敗に消える。社長交代で始まった体制の見直しも、成果が出ないまま終わる。ラグナロクの続編も、同じ IP の疲れで反応が鈍る。
この筋書きでは、価値は稼ぐ力ではなく、持っている資産の売却価値で測られる。ガンホーはもはや「ヒットを生む会社」とは見られず、資産を持つ小型株として扱われる。
- Gravity(ラグナロク系):数量 84.0(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 5.82(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 489 億円・営業利益 34 億円。ラグナロクの稼ぎが縮み、利益率 7%
- パズドラ(国内運営型):数量 12.8(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 4.02(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 −1 億円。寄与が消える
- 新作・その他:数量 30.0(年間の課金ユーザー数(万人・推定))× 価格 3.84(1 人あたり年間課金額(万円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 −6 億円。開発費だけが残り赤字
倍率:赤字で稼ぐ力は価値にならない。現金・定期預金と売れる資産の床(617 億円)で測るため PBR 形式で書いた。今の自己資本 1,219 億円に対する 0.51 倍。
確率:パズドラが寄与を失い、Gravity の稼ぎも崩れる構造的な負け。経営の対立が尾を引く点を考え、5% 未満にはせず 16% とした(k の寿命の上乗せとは別の事情)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Gravity(ラグナロク系)
子会社 Gravity が運営するラグナロク関連のモバイル・PC ゲーム。アジアと中南米が中心。
| 数量年間の課金ユーザー数(万人・推定) | 価格1 人あたり年間課金額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 4.85 | 582 | 82 |
| 10 年後 中立 | 138 | 6.50 | 897 | 144 |
取り方:Gravity の 2025 年売上 5,605 億ウォン(約 3.88 億ドル、1 ドル 150 円で約 580 億円)、営業利益は約 790 億ウォン(約 82 億円)。課金者数は開示が無く、売上を 1 人 4.85 万円で割った 120 万人の推定(モバイル MMORPG の年間課金の目安から逆算)。物価の分は価格に入れ、数量は実質。
パズドラ(国内運営型)
パズル&ドラゴンズとその周辺。ガチャ課金の運営型で、2025 年は売上が 4 割減った。
| 数量年間の課金ユーザー数(万人・推定) | 価格1 人あたり年間課金額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 85.0 | 3.00 | 255 | 65 |
| 10 年後 中立 | 46.8 | 4.02 | 188 | 41 |
取り方:2025 年のパズドラ売上 255 億円(開示)を、1 人 3.0 万円で割った 85 万人の推定。営業利益は開示が無く、運営型の利益率 25% 程度として 65 億円と置いた。
新作・その他
LET IT DIE: INFERNO やエイリムなど、新作と開発中のタイトル。パイプラインは 9 本。
| 数量年間の課金ユーザー数(万人・推定) | 価格1 人あたり年間課金額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 3.20 | 96 | −50 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 4.29 | 206 | 31 |
取り方:連結売上 932 億円から Gravity の 582 億円とパズドラの 255 億円を引いた約 95 億円を、1 人 3.2 万円で割った推定。営業利益は、国内合計が約 −30 億円という推定(Gravity の 82 億円と連結 51 億円の差)から、パズドラの 65 億円と共通費 −46 億円を除いた −50 億円。
リスクと懸念
パズドラの細りが止まらない
2025 年の売上は 40% 減った。新規ユーザーの流入が細り、広告型の「ゼロ」は課金の穴を埋めにくい。細りが続くと、国内の稼ぎの柱が無くなる。
国内の新作が当たらない
新作は 9 本に増えたが、開発費と業務委託費が先行する。国内の新作が世界でヒットした実績は乏しく、不発が続くと赤字が膨らみ、人員の厚みが重荷になる。
Gravity への依存と少数株主への流出
連結の売上と利益の大半は Gravity が稼ぐ。そのうち 4 割強は少数株主に流れる。ラグナロクの続編が不発になれば、連結の稼ぎが一気に細る。
還元が利益を超え続ける
2025 年の配当は純利益の 3 倍を超えた。原資は積み上げた現金で、利益の回復が遅れると還元を保てない。現金の一部は Gravity のもので、自由にできる額は小さい。
経営の対立が続く
アクティビストの提案は 2025 年 9 月と 2026 年 3 月に否決されたが、一定の賛同を集めた。社長交代後の新体制が成果を示せなければ、対立が再燃する。
今後の分かれ目
- 国内の新作のうち 1 本が世界でヒットしたら
- 新作の赤字が黒字に変わる。楽観・やや楽観の確率を上げてよいが、1 本の成功では国内の構造は変わらないので、次の新作の続きを見る。
- ラグナロクの新作 4 本(2026 年下期)が期待を下回ったら
- Gravity の成長が止まり、連結の稼ぎが縮む。中立から悲観寄りへ確率を動かす。
- パズドラの売上が 2026 年も 2 割以上減ったら
- 国内の柱が失われる速度が速い。国内の営業赤字が続き、新作の成否への依存が強まる。
- Gravity の少数株主を整理する再編(完全子会社化など)が出たら
- 利益が親会社の株主に残る割合が上がる。買い取り価格が高ければ価値を壊し、安ければ価値が上がる。条件を見て判断する。
- アクティビストの提案が再び出て、賛同が広がったら
- 還元がさらに増え、経営体制が変わりうる。ただ還元の原資は現金で、利益の回復が伴わなければ価値は上がらない。
- ガチャ規制やプラットフォーム手数料が大きく動いたら
- 課金の収益構造が変わる。手数料の引き下げは追い風、ガチャ規制は逆風になる。
見ておくもの
- Gravity のラグナロク系新作(2026 年下期の 4 本)の初速と課金者数
- 国内の営業損益(新作 9 本の開発費と、リリース時期)
- パズドラの売上の前年比(2026 年の通期)
- 株主還元の方針(配当と自社株買いの額)と、利益に対する割合
- ストラテジックキャピタルの動きと、社長交代後の経営体制
倍率と資本コストの決め方
今の株価や同業の倍率は見ていない。倍率は、事業の ROE・資本コスト 8.3%・長期の成長 4% から、式の上限を出して置いた。楽観は上限の 9 割、やや楽観は 9.7 割、中立は 9 割。やや悲観と悲観は、稼ぐ力と手元の資産の床で置き、引き上げていない。連結の現金・有価証券 1,362 億円から、Gravity の少数株主の取り分と事業に要る分を引いた約 930 億円を、戻り方 1.0 で足した。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。新リース会計基準でオフィス賃借の数字の形が変わる点は、この会社では小さい。結論が今の株価より大きく割高に出た点は、確率と利益を置き直しても、上振れの筋書きですら今の時価総額に届かないことで確かめた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→18.08 倍・やや楽観 PER 10.75→17.63 倍・中立 PER 12.1→16.58 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0.8% を足して 8.3%。経営の対立など個別の事情は k に入れず、確率で表した。