結論
バルテス・ホールディングスは、ソフトウェアの品質保証を専門とする企業である。筆者の結論は「割高」だ。第三者テストの需要は10年後も残るが、その仕事に人が費やす時間は大幅に減る可能性が高い。現状の収益構造では、この変化から利益を守り切れるという確信を持ちにくい。
主力のソフトウェアテスト事業は、2026年3月期の外部売上が約102億円で、連結売上の85%を占める。専門教育を受けた技術者、標準化されたテスト手法、過去20年以上の案件経験が強みだ。企業の基幹システムは複雑になり、第三者が品質を検証する意義もなくならない。ただし、主力事業の売上の約85%は派遣または準委任契約である。顧客が購入しているものの大部分は、依然として人の作業時間だ。
経営陣もこの弱点を理解している。生成AIテスト設計ツールのTestScape、仕様書解析ツールのQuintSpectなどに投資し、人員増加に依存しない事業へ転換しようとしている。2028年3月期には売上170億円、営業利益18.8億円を目指す。成功すれば大きな利益改善につながるが、開発済みのツールが競争相手から守られる製品になることと、社内の省力化に役立つことは別問題である。
筆者が最も重視するのは、顧客がAIによる時間短縮をどこまで価格引き下げとして要求するかだ。AIを使ったテスト品質に対して対価を得られれば、技術者数が減っても利益は残る。しかし顧客自身がAIエージェントでテストを実施するようになれば、品質保証会社に発注する業務そのものが細る。
10年後の中立では、会社は存続し、一定の利益を維持するものの、株主資本に対する利益率は大幅に低下すると見込む。現在の時価総額約108億円に対し、確率を考慮して資本コストで割り引いた本質価値は約52億円となる。約51%の隔たりは、単に株価の変動を嫌った結果ではない。将来の稼ぐ力と、そこへ至るまでの資本配分を評価した結果である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に問うべきことは、10年後も顧客がこの会社にお金を払う理由があるかどうかだ。ソフトウェアの品質確認は必要なくならない。金融取引や企業の基幹システムで障害が起きれば、損害は検証費用を大きく上回る。責任の所在を明確にするため、独立した第三者による検証を求める企業も残るだろう。
しかし、必要な仕事が残ることと、今の会社が同じ売上を得られることは別である。従来は技術者が何か月働いたかが売上の土台だった。AIエージェントが短時間で同じ検証を実行すれば、顧客には工数を削減する強い理由が生まれる。発注単価を下げても利益が残るだけの生産性改善を実現できるかが、事業の価値を分ける。
TestScapeやQuintSpectの開発は、その変化への正しい対応だと評価する。独自のテスト基準と蓄積した知見をAIに組み込めれば、汎用ツールを使うだけの競合との差を作れる。ただし、競争上の堀と呼ぶには、顧客の高い継続率、値上げの実績、他社へ乗り換えにくい仕組み、独自データの経済的な効果を確認したい。現状では、その証拠が十分に揃っていない。
資本の使い方にも注意が必要だ。これまでの高いROEは魅力的だが、今後の投資額は会社規模に比べて大きい。生成AI製品への投資が成功しても、競争によって顧客単価が下がれば、得られる利益の一部は顧客に移転する。買収についても、増分の利益が資本コストを上回らなければ、売上を増やしただけでは株主の価値は増えない。
株主のものになる利益、つまり事業維持と競争力確保に必要な支出を差し引いた利益を重視したい。今の純利益には、将来のツール更新費用や買収の失敗に備える負担が十分表れていない可能性がある。その一方で、効率化が定着すれば、従来より少ない技術者で同じ品質を提供する高収益企業に変わる余地もある。
長く保有する条件は、AI時代にも維持できる顧客との関係を持ち、資本コストを上回る再投資先を見つけられることだ。現在はその転換が進行中で、結果がまだ不確かである。利益の成長可能性は評価するが、支払う価格には厚い安全域が必要だと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、顧客が開発したソフトウェアを第三者の立場で検証する仕事だ。顧客はシステム開発会社、ソフトウェアメーカー、金融機関を含む一般企業などである。会社はテスト計画の立案から設計、実行、不具合報告までを受け持ち、必要に応じて品質管理体制の改善も支援する。開発者自身による検査では発見しにくい問題を洗い出し、手戻りや障害の発生を防ぐことが顧客に提供する価値である。
ソフトウェアテスト事業の2026年3月期売上は約101.7億円、セグメント利益は約8.6億円だった。契約形態別では準委任が約79.3億円、派遣が約7.1億円、請負が約14.1億円を占める。準委任と派遣の合計は売上の約85%に達する。顧客が業務時間を削減したとき、従来の単価で同じ売上を維持するのは難しい。請負契約についても、成果物に対する価格を維持できるかが問われる。
会社が公表するソフトウェアテストの月間単価は85.2万円で、前年から上昇した。全セグメントの年間案件数は7,489件、期末稼働エンジニア数は1,342名だった。案件数は会社全体の数字であるため、テスト事業の数量とは混同しない。本分析ではテスト事業の売上を月間単価で換算した約1万1,940人月を現在の数量基準とする。これは実際に請求した人月数の開示値ではなく、請負案件も含めた売上換算量である。
開発事業は、Webシステムやモバイルアプリの開発請負、技術者による開発支援を行う。外部売上は約14.8億円、セグメント利益は約0.9億円だった。準委任と派遣が売上の約64%を占め、AIによるプログラム生成の影響を直接受ける。2024年に買収したタビュラの寄与などで採算は改善したが、将来も同じ利益率を維持できるかは別の検証が必要だ。
セキュリティ事業は、Webアプリやモバイルアプリの脆弱性診断を提供する。外部売上約2.9億円に対してセグメント利益は約0.4億円である。ほぼ全額が請負契約であり、診断結果の正確さと説明責任が価値になる。攻撃手法が高度化するほど専門家による確認は必要になるが、一般的な診断項目は自動化されやすい。売上規模が小さいため、成長余地はあっても現時点で連結全体を支える柱にはなっていない。
新たな収益源として、TestScape、QuintSpect、T-DASH、QualityTrackerなどの自社開発ツールがある。QuintSpectには有料プランが設定され、製品としての外部提供も始まっている。ただし、独立した製品売上高や継続課金額、解約率は十分に開示されていない。現段階では、人月事業とは別に大きなソフトウェア収益を加算する根拠がない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、ソフトウェアテストという仕事を専門事業として組織化し、技術者教育と品質管理を標準化してきたことだ。QUINTEEという独自のテスト進行基準があり、JSTQBなどの資格を持つ技術者も育成している。金融や企業の基幹システムでは、仕様の理解と業務知識が必要であり、単にテストを実行するだけの企業より参入障壁が高い。取引経験の蓄積は、新規顧客の獲得や上流工程への進出にも役立つ。
値決め力には一定の証拠がある。2026年3月期のソフトウェアテスト月間単価は前年より約5%上昇した。採用難の環境で、専門技術者の価値を価格に反映できている。ただし、単価上昇には人件費の増加分も含まれ、値上げがそのまま利益率改善になるわけではない。実際、同年度のテスト事業は増収だったものの、ツール開発費や償却費などの増加でセグメント利益が減少した。
過去のROEは高い。2019年3月期からの実績中央値は約18.2%で、2023年3月期には27%を超えた。しかし、事業を大きくするために必要な資本は増えている。買収に伴うのれんは2026年3月末に約11.7億円あり、自己資本の相当部分を占める。今後の増分利益が資本コストを上回るかどうかは、買収した人材や技術をどれほど長く生かせるかに左右される。
独自データも強みだ。過去のテスト案件から得た知見を利用し、生成AIにテスト観点を整理させる取り組みは、汎用AIをそのまま使う競合との差別化になりうる。だが、蓄積されたデータが継続的な有料契約や高い切り替え費用につながっているかは確認できない。顧客の業務記録を独占的に管理する基盤でもないため、記録の正本としての強い堀は認めない。
10年後も残る堀は、製品そのものより、品質に関する判断力、複雑な業務システムへの理解、企業からの信頼だと考える。これらは価値がある一方で、人材の移動や顧客の内製化によって徐々に削られうる。現時点では普通程度の堀と評価し、将来の超過利益が永続するとまでは見込まない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ソフトウェアテストは潜在市場が大きく、専門企業への外注比率がまだ低い。会社資料は国内のソフトウェアテスト工程に相当する市場を約6.2兆円と推定している。ただし、この数字は専門会社に実際に発注された売上の合計ではない。システム開発会社や顧客企業が社内で実施する検証作業も含む潜在市場であり、そのまま外注会社の獲得可能売上と考えるべきではない。
同じ品質保証市場ではSHIFTが主要な競合となる。SHIFTは国内のテスト関連潜在市場を約5.5兆円と推定しており、近接するコンサルティングや開発も含めて事業を広げている。バルテスの主力テスト売上約102億円は、同社が使う6.2兆円の潜在市場に対して約0.16%に相当する。SHIFTの2025年8月期におけるテスト関連サービスのエンドユーザー向け売上約711億円を同じ6.2兆円で比較すると約1.15%となる。ただし、SHIFTの数字には隣接サービスが含まれるため、厳密な同一市場シェアではない。
開発事業が属する国内ITサービス市場は、添付の業種資料では2025年に約7.5兆円とされる。バルテスの外部開発売上は、その約0.02%にすぎない。TISや日鉄ソリューションズ、システナなどの大手・中堅企業が競合し、システム刷新やクラウド移行の需要を取り合う。ただし、これらの企業も生成AIによる開発工数削減に直面する。市場全体のIT支出が拡大しても、人月単価と人数の掛け算で稼ぐ会社の売上が同じように増えるとは限らない。
セキュリティでは、JNSAが2025年度の国内コンサルティング・診断サービス市場を約3,300億円と予測している。バルテスのセキュリティ売上は、その約0.09%に相当する。ラックは2024年3月期にセキュリティ診断サービスだけで約30億円の売上を公表しており、バルテスより一桁大きい。ラックの2024年診断売上を同年度のJNSAの広い市場区分と比較すると約1%になるが、診断専業市場だけのシェアではない。グローバルセキュリティエキスパートも診断、教育、コンサルティングを組み合わせる競合である。
10年間で最大の構造変化は、生成AIがソフトウェアの開発だけでなく、仕様解析、テストケース生成、テスト実行、結果分析まで担うことだ。AIエージェントがこれらの工程を連続して実行すれば、従来の人月市場は縮小する。バルテスが市場全体より高いシェアを確保するには、ツールを使った成果物への対価と、第三者として品質を保証する責任を顧客に認めてもらう必要がある。
国内の人口減少とIT人材不足は、短期的には専門会社への発注を増やす。しかし長期的には自動化の経済的な動機にもなる。中立では人が担う作業量が減少し、名目単価の上昇がその一部を補うと考える。10年より先は、テスト人月や受託開発人月そのものが持続的な実質成長を続けるとは見込まない。
資本政策と M&A
資本配分の中心は、自社開発ツールへの投資と企業買収である。2026年3月期から2028年3月期の中期経営計画では、生成AIテストツールに12億円、M&Aや事業所拡張などに25億円を投じる予定だ。合計37億円は2026年3月期末の自己資本約36億円に匹敵する。投資額の約70%を借入で賄う方針も示されており、成功時の資本効率改善と、失敗時の返済負担が同時に大きくなる。
計画最終年度の目標は売上170億円、営業利益18.8億円、営業利益率11.1%、純利益12億円、ROE26.5%である。加えて、人に依存しないビジネスの売上構成比を26%超にする目標を掲げる。さらに2033年度には同構成比80%超を目指す。しかし、これらは事業転換の目標であり、現時点の製品売上や契約更新率で達成が裏付けられた数字ではない。
買収では、2024年にタビュラを取得した。取得価額は約8億円で、取得時に多額ののれんが発生した。開発事業の赤字が解消したことは評価できるが、買収による追加利益が継続的に取得価額と資本コストを上回ったかは、今後数年の業績を見る必要がある。既存事業との顧客共有やAIツール開発の相乗効果が弱ければ、買収は利益ではなくのれんと借入を増やすだけになりかねない。
株主還元については、年間4円の配当を基本とし、中期計画の3年間で配当2.4億円、AI開発応援・株主優待2.4億円を予定する。配当性向、DOE、総還元性向についての数値目標はない。2025年には自社株買いも実施したが、還元より成長投資を優先する方針が明確だ。2026年3月期には株主優待関連の費用が約0.8億円発生しており、これは経済的には株主への還元として扱う。
筆者は、投資の方向自体は合理的だと考える。従来型の人月商売が先細る可能性を前に、何もしない方が危険だからだ。ただし、製品開発と買収への投資回収を厳しく検証し、低採算の拡大より配当や自己株買いを優先する局面を見極める必要がある。創業者側の持株が大きい会社だけに、少数株主への現金の戻し方も長期の価値を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ソフトウェアの品質を第三者が検証する仕事は、生成AIが普及するほど重要になる可能性がある。AIが大量のプログラムを生成すれば、開発速度は高まるが、仕様の誤解や検証不足が新しい障害の原因になる。金融、公共、製造業の基幹システムでは、テスト結果について人が説明責任を負う場面が残る。バルテスは20年以上の専門知識と、企業向けの複雑なテスト経験を持つため、この分野で選ばれる余地がある。
生成AIを自社ツールへ組み込む戦略にも意味がある。TestScapeはテストの設計過程を中間生成物として示すため、単純に回答を出す汎用AIより検証過程を説明しやすい。QuintSpectも有料サービスとして提供されており、製品化への道筋が見え始めている。将来、顧客が作業時間ではなく検証結果に料金を払う形に移れれば、必要な技術者数を抑えながら高い利益率を実現できる。
会社は2028年3月期に営業利益18.8億円を目標としている。初年度にはAI投資の負担を吸収しながら過去最高の売上を記録した。今後の投資回収が順調なら、専門技術者の採用費や教育費の負担を軽減し、利益の伸びが売上を上回る可能性がある。開発子会社やセキュリティ事業との連携も進めば、品質保証を起点として顧客の開発・運用まで支援できる。
財務面でも、2026年3月末時点では純現金があり、すぐに資金繰りが問題となる状態ではない。買収した会社の採算改善も進んでいる。生成AIへの投資で人月依存から脱却できれば、現在のようなソフトウェアテスト専門会社ではなく、品質を保証する技術と製品を提供する会社として、高い収益性を長期間保つ可能性がある。
慎重な見方
売上の大部分が作業時間に結びついているという事実は重い。ソフトウェアテスト事業では準委任と派遣が約85%を占め、開発事業でも同様の契約が約64%ある。これは顧客がAIを利用して開発・検証の工数を削減した場合、受注量と価格の両方が圧迫されやすいことを意味する。過去の成長率が高くても、10年先まで同じ稼ぎ方が通用する保証にはならない。
自社ツールの開発が成功しても、収益化まで成功するとは限らない。顧客がTestScapeの成果に追加料金を払わず、人件費削減分を値引きとして要求する可能性がある。より強い資金力や顧客基盤を持つSHIFT、SI大手、海外のAI開発企業が同種の製品を提供すれば、ツールそのものも価格競争に巻き込まれる。大手クラウド企業が開発からテストまでを一体化する場合、外部の検証会社が担当できる工程はさらに減る。
経営計画の投資負担も軽くない。AI投資とM&Aを合わせた37億円は直近の自己資本に匹敵する。予定どおり借入を増やせば、金利上昇下で利払いが増える。2026年3月期末には約11.7億円ののれんが残っており、買収先の業績悪化で減損が生じる可能性もある。事業転換が遅れれば、既存の利益が縮む時期に借入返済とツール更新費用が重なる。
さらに、2027年3月期第1四半期には営業赤字を計上した。通期計画は維持されているが、投資が先行すると四半期利益が不安定になることが示された。現在のROEが高いことだけで、将来の増分投資も高収益だとは判断できない。利益が減っても配当を大幅に増やす方針ではなく、少数株主が現金の使い道を直接決めることも難しい。長期の価値には慎重であるべきだ。
どちらに重みを置いたか
第三者による品質保証の必要性と、自社ツールの技術的な蓄積は評価できる。ただし、主力事業が人月契約に強く依存していること、AI製品の独立した収益実績がまだ十分に確認できないこと、大規模な投資計画が進行中であることから、慎重な見方がやや優勢だ。下側の筋書きに43%、上側に25%を配分した。これはAIの工数削減を中立の数量に反映したうえで、さらに同じ理由を重ねて悲観するものではない。投資回収と顧客の価格受容に固有の不確実性が残るためである。確率加重後の価値は現在の時価総額を約51%下回り、長期の評価は割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 439 円87 億円(+ 還元の換算額還元の合計 73 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 264 円52 億円、今との差 −40.0%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,215 円241 億円 | 121 円24 億円 | +203.7% | +12.5% | 107 円21 億円 |
| やや楽観 | 17% | 883 円175 億円 | 96 円19 億円 | +122.5% | +8.9% | 166 円33 億円 |
| 中立 | 32% | 467 円93 億円 | 80 円16 億円 | +24.3% | +2.4% | 175 円35 億円 |
| やや悲観 | 27% | 126 円25 億円 | 60 円12 億円 | −57.7% | −9.5% | 50 円10 億円 |
| 悲観 | 16% | 51 円10 億円 | 35 円7 億円 | −80.6% | −17.6% | 14 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 439 円87 億円 | 73 円15 億円 | +16.4% | +1.7% | 512 円101 億円 |
今の株価時価総額 440 円87 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 独自AIが定着し、少ない工数で高い品質を提供 利益 15 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,215 円241 億円
2036年には、バルテスは品質保証の専門知識と独自AIツールを組み合わせた高収益企業に変わっている。TestScapeはテスト設計の自動化だけでなく、顧客の仕様変更に応じた検証計画の更新まで担う。QuintSpectやQualityTrackerとの連携も進み、顧客は一連のテスト結果と判断根拠を受け取れるようになる。人が行う作業量は過去より少ないが、品質保証に対する予算が維持され、効率化の成果の多くを会社が利益として確保する。
市場ではSHIFTや大手SI企業も自動化を進めるが、バルテスは金融機関などの複雑な基幹システムで蓄積した経験を武器に、外部専門家としての地位を守る。潜在市場が広がるなか、既存顧客との取引は継続し、高難度案件の受注比率が高まる。品質への信頼が価格競争を和らげ、月間単価の名目上昇も続く。
開発事業では不採算案件の管理が改善し、AI開発ツールの活用が定着する。セキュリティ事業は顧客の複雑なシステムに対する診断を中心に採算を高める。M&Aでも買収先の技術者と顧客を取り込み、既存のテストサービスとの相互販売を実現する。
それでも人月換算数量の継続的な増加は前提にしない。競争力の改善は主として作業の自動化による営業利益率の上昇に表れ、連結営業利益は約25億円に達する。十分な資本を残しながら配当と自社株買いを実施し、2036年には収益性の高い企業へ転換している。
- ソフトウェアテスト事業:数量 11,940(売上換算の稼働エンジニア月数(人月・年)。請負契約を含む売上をテスト月間単価で換算した数量)× 価格 0.01(売上換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 136 億円・営業利益 23 億円。売上換算人月は現在と同じ。AIによる大幅な省力化を利益率17%へ反映し、単価は現在の約1.34倍。独立したAI製品売上の追加はしない。
- 開発事業:数量 1,554(売上換算の開発エンジニア月数(人月・年、推定))× 価格 0.01(開発契約換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。人月換算数量はほぼ横ばい。AI開発支援と高難度案件への集中で採算を改善する。
- セキュリティ事業:数量 264(脆弱性診断の標準案件換算数(件・年、推定))× 価格 0.01(標準診断1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。標準案件換算件数を維持し、複雑な診断と報告業務の価値を保つ。
倍率:k7.5%、2036年の全社ROEは15.3÷136.0=11.25%。普通の堀として超過ROEの残存率1/2を用いるとRONIC=7.5%+0.5×(11.25%−7.5%)=9.38%。AIエージェント代替の型からg_long=0%とし、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.33倍。事業利益は余剰現金65億円の税後利息0.91億円を控除した14.39億円。余剰現金の戻り方75%を加算し、時価総額は約240.6億円。現在または過去の市場PERは倍率の根拠に使っていない。
確率:TestScapeとQuintSpectの利用が広がり、顧客が工数ではなく成果に対して支払う形へ移行する最良の筋書き。ただし、現時点で独立したAI製品売上や継続率の十分な開示がなく、競合も同じ技術を導入するため実現確率は8%にとどめる。
やや楽観 17% テスト自動化の利益改善が定着 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 883 円175 億円
2036年には、ソフトウェアテストの多くの工程が自動化され、人が行う作業量は減っている。しかし、顧客はテスト結果の品質を重視し、専門会社による独立した確認を一定程度求め続ける。バルテスはTestScapeを社内業務に定着させ、従来より少ない人員で同じ案件を担当できるようになる。標準的な検証業務は値下げされるが、金融や基幹系の複雑な検証で付加価値を保つ。
SHIFTなどの競合もAIを活用するため、バルテスが市場を独占することはない。自社の教育制度とテスト手法を生かし、顧客が安心して外注できる品質を維持することで、価格だけの競争は避ける。テスト業務の人月換算数量は現在より減るが、名目単価の上昇と生産性改善で売上と利益を支える。
開発事業ではAIによる人月需要の減少を受けつつ、保守性や品質が重視される開発案件に集中する。セキュリティ事業では自動診断を活用し、専門家による判断を付加価値として提供する。買収先との連携はおおむね成功し、のれんの大規模減損は避けられる。
経営計画で目指す人に依存しない事業への移行は部分的に実現する。独立したAI製品の売上が連結利益を大きく押し上げるほどではないものの、作業時間の削減効果を会社が一定程度取り込む。連結営業利益は約18億円となり、長期的にも利益を生み出す企業として存続する。
- ソフトウェアテスト事業:数量 10,448(売上換算の稼働エンジニア月数(人月・年)。請負契約を含む売上をテスト月間単価で換算した数量)× 価格 0.01(売上換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 118 億円・営業利益 17 億円。人月換算数量は現在の約0.88倍。単価は約1.33倍となり、省力化で営業利益率14.5%を確保する。
- 開発事業:数量 1,400(売上換算の開発エンジニア月数(人月・年、推定))× 価格 0.01(開発契約換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。開発人月は約0.90倍、単価は約1.31倍。AI利用で不採算案件を減らす。
- セキュリティ事業:数量 238(脆弱性診断の標準案件換算数(件・年、推定))× 価格 0.01(標準診断1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。案件換算数量は約0.90倍。専門家による高度な診断の付加価値を維持する。
倍率:k7.5%、2036年ROEは11.0÷123.0=8.94%。普通の堀の残存率1/2によるRONICは約8.22%。長期の名目成長率g_longを0%とするため正当化PERは13.33倍となる。余剰現金50億円の税後利息0.70億円を純利益から除き、事業利益10.30億円に倍率を適用する。余剰現金の75%を加算した時価総額は約174.8億円。
確率:独自ツールによる省力化と高難度テストへの集中が一定程度成功する筋書き。会社がすでにAI投資を実施し、社内運用を始めているため実現の根拠はあるが、顧客が省力化の利益をすべて会社に残すとは考えない。
中立 32% 第三者テストは残るが人月需要が縮む 利益 5 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 467 円93 億円
2036年には、ソフトウェアの開発からテストまで、AIエージェントを使うことが一般的になっている。従来は担当者が仕様を読んでテスト項目を作成していたが、多くの標準的な作業は自動化される。バルテスは第三者としての品質検証や複雑な基幹系のテストを担い続けるものの、顧客が購入する作業時間は減少する。主力テスト事業の売上換算人月は現在の約3分の2になる。
顧客は省力化の成果を発注単価の引き下げとして求めるが、専門性が高い案件では一定の単価を維持できる。物価上昇と技術者の高付加価値化によって名目単価は上昇する。ただし、数量減少を完全には補えず、テスト事業の売上は現在より小さくなる。TestScapeは主に社内の生産性向上に利用され、独立した有料製品として巨大な売上を生むまでには至らない。
開発事業もAIによる工数削減の影響を受け、顧客の内製化が進む。セキュリティ事業は診断需要が残るが、自動化により標準案件の必要工数が減り、売上拡大は限定的になる。経営は買収と事業の再編を続けるものの、獲得した利益を高い利回りで再投資できる案件は徐々に少なくなる。
会社は黒字を維持し、配当と株主優待も基本的に続ける。ただし利益に対する自己資本の厚みが増し、かつての高ROE企業という特徴は薄れる。連結営業利益は約8.4億円、純利益は約5.3億円に落ち着く。事業は必要とされ続けるが、労働集約型から完全な製品型企業への転換には至らない。
- ソフトウェアテスト事業:数量 8,000(売上換算の稼働エンジニア月数(人月・年)。請負契約を含む売上をテスト月間単価で換算した数量)× 価格 0.01(売上換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 89 億円・営業利益 8 億円。売上換算人月は現在の0.67倍でAI人月型の中立範囲0.55〜0.75倍に入る。価格は1.30倍。自動化による費用削減を織り込み利益率は9.5%。
- 開発事業:数量 980(売上換算の開発エンジニア月数(人月・年、推定))× 価格 0.01(開発契約換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。開発人月は現在の0.63倍、単価は1.30倍。AIによる工数減少と既存顧客の需要を両方反映する。
- セキュリティ事業:数量 198(脆弱性診断の標準案件換算数(件・年、推定))× 価格 0.01(標準診断1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。診断件数換算は現在の0.75倍、単価は1.30倍。自動化による競争圧力で利益率は12%。
倍率:k7.5%、2036年のROEは5.25÷95.0=5.53%で資本コストを下回る。AIエージェント代替による10年以降の名目成長率g_longは0%。ROEがk以下のとき、利益を再投資しても超過価値を作れないため、PERの上限は1÷k=13.33倍となる。2036年の余剰現金40億円に対応する税後利息0.56億円を純利益から除き、事業利益4.69億円に13.33倍を適用する。余剰現金の75%を加えて時価総額約92.5億円。過去のPERや現在の株価は根拠にしていない。
確率:第三者検証への需要とAIによる工数削減が並行する中心的な筋書き。会社の実績と中期計画を評価しつつ、既存売上の大半が人月に結びつくという構造を重視する。
やや悲観 27% AIによる値下げが先行して採算が低下 利益 1 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 126 円25 億円
2036年には、AIエージェントが多くのテスト工程を標準機能として提供している。クラウド基盤や開発環境にはテスト自動生成、実行、結果分析が組み込まれ、顧客は外部テスト会社に発注する仕事を絞る。バルテスは高度な業務知識が必要な案件を残すが、従来の準委任契約を維持することは難しくなる。主力テスト事業の売上換算人月は現在の約半分に減少する。
競合のSHIFTや大手SI企業は、開発工程とテスト工程をまとめて提供する。バルテスの独自ツールも一定の技術的な価値を持つが、顧客から独立した製品として十分な料金を得ることができない。作業量の減少に加え、案件を確保するための値引きが必要になる。高い技術力を持つ社員を維持する費用が残り、営業利益率が低下する。
開発事業では顧客のAI内製化が進み、請負案件も価格競争が激しくなる。セキュリティ事業は生き残るものの、標準診断の単価に競争圧力がかかる。買収によって獲得した人材や技術は一部で役立つが、投資資金を十分回収するには至らない。
経営は不採算案件の整理と採用抑制を進め、黒字を維持する。配当は規模を縮小し、株主優待も一部見直す。営業利益は約2億円、純利益は約1億円に落ち込む。事業の継続価値はあるものの、株主資本に対する利益率は極めて低く、投下した資本を十分に働かせられない企業になっている。
- ソフトウェアテスト事業:数量 6,500(売上換算の稼働エンジニア月数(人月・年)。請負契約を含む売上をテスト月間単価で換算した数量)× 価格 0.01(売上換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 68 億円・営業利益 3 億円。売上換算人月は現在の約0.54倍、単価は1.22倍。自動化による価格競争で営業利益率4%。
- 開発事業:数量 850(売上換算の開発エンジニア月数(人月・年、推定))× 価格 0.01(開発契約換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。開発人月は約0.55倍。顧客の内製化で利益率は1%まで低下する。
- セキュリティ事業:数量 168(脆弱性診断の標準案件換算数(件・年、推定))× 価格 0.01(標準診断1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。標準診断件数換算は約0.64倍。競争激化で営業利益率は7%。
倍率:2036年ROEは1.15÷67.0=1.72%でk7.5%を大幅に下回る。したがってPERの上限は1÷k=13.33倍だが、事業縮小が続き追加投資の収益性も低いため11.5倍で評価する。余剰現金20億円の税後利息0.28億円を除いた事業純利益0.87億円に倍率を適用し、余剰現金の75%を加えると時価総額約25億円となる。資産床10億円より高いが、中立のPBRは下回る。
確率:独自ツールは利用されるものの、AIによる生産性向上の利益を顧客が価格交渉で獲得する筋書き。主力の準委任・派遣契約が約85%という固有の構造から、標準業務の受注減少が採算低下に直結する可能性を重視する。
悲観 16% 第三者テストの人月市場が構造的に崩れる 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 51 円10 億円
2036年には、ソフトウェアの開発から品質確認までをAIエージェントがほぼ一貫して実行する。企業の開発担当者は仕様と承認基準を与えるだけで、多くの標準的な検証を内製できる。従来のテスト専門会社は人手による作業量を売ることができず、顧客は外注契約を大幅に縮小する。バルテスの主力テスト事業は、難度の高い一部案件を残すものの、現在の半分以下の売上規模に縮む。
TestScapeなどの自社ツールは、既にクラウド基盤や大手開発企業が提供する汎用機能との差別化が難しくなる。製品販売だけでは従来の人月収益を補えず、追加の研究開発費用が利益を圧迫する。顧客の求める単価も低下し、採用・教育に投じた資金の回収が難しくなる。
開発事業ではAIによる内製化が進み、外部技術者への発注が大幅に減少する。セキュリティ事業でも、一般的な脆弱性診断は自動化された安価なサービスへ移る。買収した会社との連携効果は十分に出ず、のれんの減損が発生する。人材の再配置や事業所縮小を進めても、残った固定費を賄えない。
会社は赤字となり、配当を大幅に縮小する。前半の数年間に得た利益と手元資産があるため直ちに倒産する筋書きではないが、事業の将来収益から高い価値を認めることはできない。2036年の連結営業損失は約2.5億円となり、時価総額は現時点の純現金と回収可能な資産を中心とした価値に近づく。かつての高ROE企業としての優良さは失われている。
- ソフトウェアテスト事業:数量 5,150(売上換算の稼働エンジニア月数(人月・年)。請負契約を含む売上をテスト月間単価で換算した数量)× 価格 0.01(売上換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 −1 億円。人月換算数量は現在の0.43倍、単価は1.10倍。需要半減と固定費負担で営業赤字。
- 開発事業:数量 620(売上換算の開発エンジニア月数(人月・年、推定))× 価格 0.01(開発契約換算1人月当たり売上(億円/人月、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。開発人月は0.40倍、単価は1.10倍。案件不足と固定費負担で営業赤字。
- セキュリティ事業:数量 130(脆弱性診断の標準案件換算数(件・年、推定))× 価格 0.01(標準診断1案件当たり売上(億円/件、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。標準診断件数換算は現在の0.49倍。簡易診断の自動化で利益はほぼ消失する。
倍率:2036年は営業赤字であり、純利益にPERを掛ける方法では事業価値を評価できない。床は2026年3月末時点の純現金約8.2億円、定期預金約0.2億円、売却可能な上場株式の税後約1.1億円、回収率を割り引いた売掛金・契約資産・保証金・その他流動資産約16.3億円から、有利子負債以外の負債約15.8億円を差し引いた約10億円とする。のれん11.7億円、ソフトウェア等約2億円、事業所の設備などは処分価値が乏しいため床に算入しない。床のPBR0.2755倍を2036年の自己資本42億円に掛けず、現在の自己資本36.3億円に掛けると時価総額約10億円となる。過去の谷のPBRを根拠にはしていない。
確率:AIエージェントがテストと開発を一体で担い、主要顧客が外注を大幅に削減する複合的な失敗の筋書き。顧客基盤や専門性が完全に失われるとまでは考えないが、M&Aの減損と収益悪化が重なる危険を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ソフトウェアテスト事業
第三者の立場でソフトウェアのテスト計画、設計、実行、品質管理を請け負う主力事業。準委任・派遣が売上の約85%で、独自AIツールによる工数削減と契約形態の転換が長期価値を左右する。
| 数量売上換算の稼働エンジニア月数(人月・年)。請負契約を含む売上をテスト月間単価で換算した数量 | 価格売上換算1人月当たり売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11,940 | 0.01 | 102 | 9 |
| 10 年後 中立 | 8,000 | 0.01 | 89 | 8 |
取り方:2026年3月期有報のソフトウェアテスト外部売上10,172,739千円を使用。会社公表の国内ソフトウェアテスト月間単価852千円を1人月当たり0.00852億円に換算すると、売上換算数量は約11,940人月となる。期末稼働エンジニア1,342名は全セグメントの人数であり、この数量とは異なる。実契約の延べ人月がすべて開示されているわけではないため、請負売上も単価換算した推計値である。契約形態別では派遣7.08億円、準委任79.27億円、請負14.15億円、その他1.24億円。AIエージェント代替は時間・工数型として評価する。6.2兆円の潜在テスト市場に対する売上比率は約0.16%であるが、実際の外注市場シェアとは異なる。
開発事業
Web・モバイルアプリ開発、システム開発請負、技術者による開発支援。タビュラなどの子会社が担い、AIによるプログラム生成が人月単価と作業量に影響する。
| 数量売上換算の開発エンジニア月数(人月・年、推定) | 価格開発契約換算1人月当たり売上(億円/人月、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,554 | 0.01 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 980 | 0.01 | 12 | 1 |
取り方:2026年3月期有報の開発事業外部売上1,476,699千円を使用。準委任契約8.39億円、派遣1.10億円、請負4.99億円、その他0.29億円の内訳を確認した。開発事業の実際の平均人月単価と延べ人月数は非開示であるため、ソフトウェアテストの開示単価85.2万円に開発業務の専門性を考慮し、1人月95万円を推定単価とする。これにより年間約1,554人月相当となる。請負契約を含むため実稼働人月ではない。国内ITサービス市場7.5兆円に対する外部売上比率は約0.02%。AIエージェント代替は受託開発・人月型に分類する。
セキュリティ事業
Web・モバイルアプリの脆弱性診断を提供する。自動診断と専門家による手動診断を組み合わせ、発見した問題の説明と改善支援まで行う。
| 数量脆弱性診断の標準案件換算数(件・年、推定) | 価格標準診断1案件当たり売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 264 | 0.01 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 198 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:2026年3月期有報のセキュリティ外部売上290,514千円を使用。うち請負売上288,394千円で、ほぼ全額が成果物型契約である。案件数と平均単価は非開示のため、専門家の手動診断を含む標準案件の単価を110万円と仮定し、年間約264件に換算した。実際の診断件数を示すものではない。JNSAの2025年度コンサルティング・診断サービス市場予測約3,300億円に対する売上比率は約0.09%。独立した法定記録基盤ではなく、診断作業の自動化が進むためAIエージェント代替の工数型を適用する。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月需要の縮小
主力テスト事業の売上の約85%は派遣・準委任契約であり、開発事業も工数に依存する割合が高い。AIが仕様解析、テスト設計、実行、報告まで担うと、顧客が購入する作業時間は減少する。開発市場やテスト市場そのものが大きくても、会社が請求できる人月は縮む可能性がある。単価の上昇だけで数量減少を補えるとは限らない。
独自AIツールの収益化と競争優位の不確実性
TestScapeやQuintSpectには技術的な価値があるものの、独立した製品売上、継続課金、解約率に関する十分な数字がない。顧客が省力化分を値引きとして要求すれば、技術の効果は会社の利益ではなく顧客の費用削減になる。大手SI企業やクラウド企業による同種ツールの提供も、独自性を弱める可能性がある。
大型投資とM&Aの資本効率
中期計画の投資37億円は直近の自己資本に匹敵し、その約70%を借入で賄う方針である。買収先の利益が資本コストを下回れば、売上高が増えても株主価値は増えない。2026年3月末には約11.7億円ののれんがあり、事業環境の悪化で減損が発生する可能性がある。買収額と回収した利益の継続的な検証が必要だ。
人件費と外注費の固定化
専門技術者の確保と教育には時間がかかり、人員を増やした直後に需要が落ちれば稼働率が低下する。AIを利用する技術者の育成にも追加費用が発生する。ビジネスパートナーを活用して変動費化できる部分はあるが、社員給与や拠点費用はすぐには減らせない。売上の減少幅より利益の減少幅が大きくなる危険がある。
株主還元より投資を優先する資本政策
会社は年間4円の配当と株主優待を実施しているが、配当性向や総還元性向の明確な数値目標はない。創業者と資産管理会社の保有比率が高く、少数株主が余剰現金の配分を決定する力は限定的だ。利益が積み上がっても収益性の低いM&Aや新規事業へ再投資されれば、その金額をそのまま株主価値として評価することはできない。
セキュリティと品質保証の競争構造
ソフトウェアテストではSHIFTや大手SI企業が、セキュリティ診断ではラックや専門会社が競合する。AIによる自動診断が普及すると、標準的なテストや脆弱性診断は価格で比較されやすくなる。バルテスが高難度案件や品質改善の上流工程に進出できなければ、市場が拡大しても利益率が低下する可能性がある。
今後の分かれ目
- TestScapeやQuintSpectの外部顧客向け売上、継続課金額、解約率が継続的に開示され、独立した製品収益が大きく増加したら
- 人月型と製品型を分けて再評価する。独立した製品売上と低解約率が十分に確認できれば、その部分の数量と長期成長率を引き上げ、強い堀の有無を改めて検証する。
- 2028年3月期の営業利益18.8億円と、人に依存しない売上構成比26%超を実際に達成したら
- 中立の営業利益率を上方修正する。ただし売上構成比の定義が実際の製品課金なのか、AIを利用した人月契約を含むのかを確認してから長期の数量を見直す。
- ソフトウェアテストの月間単価が上昇を続け、稼働人月の減少にもかかわらず粗利益額が増加したら
- 生産性改善の利益を会社が維持できている証拠とみなし、やや楽観の確率を高める。単価だけではなく、顧客当たり粗利益と案件ごとの採算を見る。
- 準委任・派遣契約の売上比率が低下し、成果物型契約の利益率が改善したら
- AI時代に契約形態の転換が進んだと判断する。成果物への支払意思が確認できれば、数量減少の影響を緩和し、長期の利益見通しを見直す。
- 追加M&A後にのれんが増加する一方、買収事業の利益やキャッシュフローが伸びなかったら
- 増分ROICが資本コストを下回ると判断し、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。純負債の増加と将来の減損リスクも再評価する。
- 国内の企業がAIエージェントでテストを内製し、バルテスの案件数や人月換算数量が継続的に減少したら
- AIエージェント代替が実際の受注へ波及しているとみなし、価格と数量の前提を下方修正する。特にテスト事業の粗利益率が同時に低下する場合は悲観側の重みを増す。
見ておくもの
- ソフトウェアテスト事業の月間単価、稼働エンジニア数、案件数、売上総利益率
- テスト事業の準委任・派遣と請負の売上構成比
- TestScape・QuintSpectの外部売上高、利用企業数、継続率、粗利益率
- 2028年3月期の売上170億円・営業利益18.8億円・ROE26.5%への進捗
- 人に依存しないビジネスの売上構成比26%超と2033年度80%超の定義および進捗
- 買収先の営業利益、のれん残高、減損の有無、投資後の増分ROIC
- 純有利子負債、借入金利、営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー
- 配当・自社株買い・株主優待に充てる年間総額と利益に対する還元率
倍率と資本コストの決め方
価値の計算は現在の株価を起点とせず、2026年3月期のセグメント別売上と利益、契約形態、単価を起点とした。主力テスト事業は月間単価85.2万円を用いた売上換算人月、開発事業は推定開発人月、セキュリティ事業は標準診断案件数で数量を表した。物価3%に相当する名目価格上昇は価格の側にのみ反映し、数量には加えていない。
中立の数量はAIエージェント代替の人月型に従い、テスト0.67倍、開発0.63倍、セキュリティ0.75倍とした。2028年の会社目標を2036年まで延長せず、投資の成果は各筋書きの利益率に反映した。営業利益から純利益への変換は過去の比率を基礎とし、借入金利の変化も考慮した。
PERは現在や過去の市場倍率を用いず、k7.5%、g_long0%、2036年のROEと再投資利回りから算出した。楽観から中立は正当化PERの上限そのものとし、やや悲観は利益の縮小、悲観は現時点の回収可能資産による床で評価した。悲観では2036年の積み上がった自己資本に床のPBRを掛けていない。
株主優待の経済的な価値を10年間の還元に含めた。優待費用は会計上すでに純利益を減らすため、自己資本を考える際には会計上の利益から同じ優待費用を二重に控除しない。2036年の余剰現金は筋書きごとに分け、税後利息を利益から除いたうえで戻り方75%を適用した。
新リース会計基準によって賃借事務所の使用権資産と負債が貸借対照表へ計上される可能性があるが、10年の営業利益は現在と同じく賃借費用を事業費用として扱う形に統一する。分析の比較基準日は2026年10月22日であり、それ以降の株価変動を価値の算定に取り込んでいない。試算の確率加重現在価値は約52.3億円、基準時価総額107.7億円との差は約マイナス51.5%である。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を基本とする。過去の利益変動、値決め力、純負債、寿命による調整の合計は0%。βや時価総額による上乗せは使わない。2027年3月期第1四半期は赤字だが、過年度に継続的な営業赤字が発生しているわけではないため、distressの上乗せも行わない。