結論
ROXXは、正社員経験の少ない若年層や現場で働く人々の転職を支える「Zキャリア」を運営する会社である。筆者の結論は割高だ。人手不足という社会課題は10年後も残るが、それを解決する事業が高い株主利益を生み続けるとは限らない。
同社の強みは、未経験者を大量採用する企業の求人と、小規模な人材紹介会社を結び付ける仕組みにある。2025年9月末には約400社のパートナー紹介会社が参加していた。求職者に寄り添う人間の支援と、採用実績に基づくデータには確かな価値がある。しかし、求人企業は成果報酬額を自ら設定できる。値決めの主導権は必ずしもROXXにない。
最大の問題は、成長に多額の資金を投じながら、継続的な黒字をまだ証明していないことだ。2025年9月期の純利益約10.5億円は、売却したback check事業の特別利益が主因である。営業損益は約7.2億円の赤字だった。さらに2026年6月末には、前年9月末に約21億円あった純現金が約1.6億円まで縮小した。
2026年9月期第3四半期単独では営業黒字を確保し、改善の芽も見えている。AI面接官の導入企業が増えたことも前向きだ。一方、2026年9月期第3四半期累計ではなお営業赤字であり、会社が掲げる2029年9月期の売上高100億円超を、既に実現した稼ぐ力として評価することはできない。
10年後の事業規模と利益率から評価すると、確率加重した現在の本質価値は約10.1億円となる。2026年10月23日の時価総額約31.0億円を約67%下回る。これは転職支援という仕事の価値を否定する結論ではない。株主が受け取れる利益と、事業を続けるために必要な再投資を分けた結果である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、ROXXで最初に問うべきなのは、10年後も転職支援が必要かではない。転職支援が必要であることはほぼ疑いない。問うべきは、ROXXを経由しなければ企業が採用できない理由が十分に強く、その理由が利益として残るかどうかだ。
求職者に対する人間の相談には価値がある。若く、職歴が少なく、自分に向く仕事が分からない人を支えるには、相手の不安や生活事情を理解する力が要る。しかし、相談の価値が大きいからといって、紹介会社が人件費を超える高い利益率を維持できるとは限らない。新しいAIが同じ成果を安く提供すれば、求人企業はその節約分を手数料の引き下げとして求める。
社外紹介の仕組みには、より好ましい経済性がある。一つの求人を多くの紹介会社が使い、紹介会社の数が増えるほど企業の採用機会も増える。これが本当にネットワーク効果になれば、追加取引に必要な資本は少なくなる。だが、参加企業数だけでは不十分だ。紹介会社の継続利用、採用決定率、実質手数料率が同時に改善して初めて、堀が広がったと言える。
資本配分も同じ物差しで評価する。成長投資を続ける会社なら、増分の利益が資本コストを超えて増えてほしい。ROXXには事業売却で財務を立て直す判断力があったが、その後の現金減少を見ると、再投資の成果はまだ確定していない。赤字を埋めるために新株を発行するなら、株主の取り分はさらに薄くなる。
現状で株主が買うのは、成熟した収益源ではなく、利益率を改善できるかという経営上の挑戦である。十分な安全域を求めるなら、売上目標よりも、継続的な営業黒字、資金収支の改善、手数料率と顧客維持率の安定を先に確かめたい。
何で稼ぐ会社か
ROXXの稼ぎ方は、求人企業、求職者、人材紹介会社の三者を結ぶことにある。会社が自らキャリアアドバイザーを雇い、求職者の相談から入社まで支援する直営紹介と、社外の紹介会社に求人データベースを提供するプラットフォーム型の紹介が収益の柱だ。求人企業は原則として掲載料を払わず、採用が成立したときに成功報酬を支払う。
直営紹介では、ROXX所属のアドバイザーが求職者を集め、適切な求人を提案する。2026年9月期第3四半期の開示では、社内アドバイザーは124人である。成約単価は約63万円という水準であり、若年層や未経験者が中心であることから、高年収の専門職紹介より採用企業に利用しやすい。もっとも、広告で集客し、人が面談するため、採用件数が増えるほど費用もかかる。
社外紹介では、パートナー紹介会社が求職者を送り込み、ROXXが大手求人企業の採用枠と選考管理の仕組みを提供する。ROXXが受け取るのは求人企業の採用成功報酬に対する事務手数料であり、会社資料では採用成果報酬の20%と説明されている。この部分は自社でアドバイザーを大量採用せずに取引量を増やせるため、直営紹介より規模の利益が働きやすい。ただし、契約先が増えても実際の採用成立が増えなければ手数料は得られない。
もう一つの収益源は、紹介会社から受け取るプラットフォーム利用料などの継続収入である。採用データの閲覧、求人への応募、選考管理が使われる。2025年9月期のZキャリア売上は約38.8億円で、社内紹介の成果報酬、社外紹介に関係する成果報酬、継続利用料に分けて考えられる。会計上はHR tech事業の単一セグメントであり、以下の区分は投資分析のための分解である。
2025年9月末には、リファレンスチェックを提供するback check事業をエンに約19.5億円で売却した。このため、2025年9月期の売上高約45.1億円を、そのまま現在の継続事業の規模と見なすことはできない。AI面接官は採用の面接工数を減らす商品であり、2026年には大手企業での導入が公表された。さらに人材・採用領域に特化したFDEサービスも始まった。ただし、AI製品とFDEの独立した売上高や利益は確認できず、将来の大型収益として先取りしない。
優良さと弱いところ
同社には堀、つまり競争相手が容易に奪えない強みの芽がある。大企業の大量採用枠を集め、小規模紹介会社に開放する仕組みは、求人企業と紹介会社の双方の手間を減らす。2018年以降に蓄積してきた選考データや採用決定実績も、どの求職者がどの求人に適するかを判断する材料となる。一般的な転職サイトで相手にされにくい未経験者を支援する点には、社会的な意義もある。
しかし、この堀はまだ広いとは言い切れない。求人データは他社にも掲載でき、紹介会社は複数のプラットフォームを使える。採用を行う企業も複数の紹介会社を競わせられる。公開資料からは、年5%未満の解約率や、年単位を要する乗り換え、継続的な値上げの成功といった証拠を確認できない。紹介実績が豊富であることと、顧客が高い利用料を払い続けることは別問題だ。
採用成果報酬は求人企業が設定する。これは利用しやすさを生む一方、値上げの力を制限する仕組みでもある。物価が上がれば給与水準と採用報酬にも上昇余地はあるが、広告費やアドバイザーの人件費も上昇する。増収しただけでは、投下した資本が株主の要求利回りを超えて働いた証拠にならない。
2025年9月期まで営業赤字が続き、2026年9月期第3四半期累計も約4億円の営業赤字である。成長投資による赤字には意味がある場合もある。しかし、売上の増加が営業キャッシュフローと自己資本利益率の改善につながる過程はまだ途中だ。2026年6月末の純現金が約1.6億円に細った事実は、以前ほど失敗を許容できないことを示す。
新株予約権による希薄化も無視できない。利益が急増すれば既存株主の取り分が薄まり、利益が増えなければそもそも株主へ分配できる現金が生まれない。価格決定力、顧客維持率、増分資本利益率の三つが公開数字で立証されるまでは、強い堀を持つ企業とは評価しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本では製造、建設、運輸、販売、介護などの現場で人手不足が慢性化している。ROXXの対象は、正社員経験が少なく、職種を決めずに転職先を探す人々だ。高年収の即戦力人材を中心とする紹介市場とは、候補者の探し方も企業が払える報酬も異なる。人口が減るから紹介市場が必ず縮むわけではないが、採用が難しくなることと採用成立件数が増えることも同義ではない。
厚生労働省の2024年度の集計では、有料職業紹介事業の手数料収入は約9,835億円、常用就職件数は約88.9万件だった。常用就職1件当たりの平均手数料は約103万円である。ROXXの公表する直営紹介の成約単価はこれより低いが、扱う求職者の所得や職種が違うため、差をそのまま値上げ余地と考えることはできない。
会社は、対象とするノンデスク領域の潜在的な紹介市場を約7,700億円と試算している。これは転職者数、低所得層の割合、想定採用報酬を掛け合わせた会社推計であり、現に紹介手数料が支払われている市場の統計ではない。2025年9月期のZキャリア売上約38.8億円をこの推計市場と比べると約0.5%となるが、会計上の収益区分と市場の総額は完全には一致しない。競争相手の同じ定義によるシェアも公表されておらず、厳密な順位は不明だ。
競争にはリクルート、Indeed、パーソルキャリア、ディップなど、求人広告から職業紹介までの大手がいる。未経験者の紹介を行う中小企業も全国に多数存在する。人材紹介会社の許可事業所は会社資料によれば3万件を大きく超える。ROXXの社外パートナーはその一部であり、全国の求人流通を支配する規模には達していない。
10年で最も大きく変わりうるのは、求職者と採用企業の間に入る作業の費用だ。AIエージェントは求人の収集、履歴書の整理、面談日程の調整、候補者の推薦、面接評価をまとめて処理できる方向に進む。ROXXがその仕組みを提供する側になれば収益機会だが、企業の人事部やIndeedなどが同じ機能を安価に提供すれば、中間手数料は圧縮される。中立では、直営紹介の取扱件数が細り、社外紹介の手数料収入だけが小幅に増える姿を想定する。
価格には共通前提の年3%の物価上昇を考慮する。しかし、紹介手数料の料率は競争を受け、業務ソフトの利用単価にはAIによる値下げ圧力がかかる。採用市場全体が名目で大きくなっても、ROXXがその伸びを丸ごと取り込めるとは考えない。
資本政策と M&A
経営陣の資本配分で評価できるのは、back check事業から撤退した判断だ。2025年9月に同事業をエンへ約19.5億円で譲渡し、Zキャリアへ経営資源を集中させた。back checkは全社費用配賦後で赤字だったと会社は説明している。複数事業を抱えて資金を消耗し続けるより、主力へ集中する方が合理的である。ただし、売却益は一度しか生まれず、その現金も継続事業の利益に読み替えられない。
2025年12月の事業計画資料は、2029年9月期までに売上高100億円超を目指すとしている。既存事業の売上成長率は年30%以上を目指し、新規事業とM&Aによる上積みも構想する。もともとの100億円目標は2027年9月期だったが、back checkの売却後に2029年9月期へ変更された。2026年9月期の会社予想は売上高50億円、営業利益0.45億円、純利益0.01億円である。ROEの数値目標は確認できない。
株主還元については、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額のいずれも数字の約束なしである。会社は成長投資を優先しており、創業以来の配当実績はない。したがって、将来の利益がすぐ配当されるとの前提は採らない。強い黒字が定着する二つの上振れ筋書きだけに、控えめな還元を見込む。
2026年6月末の現金約19.65億円に対し、有利子負債は約18.06億円ある。2025年9月末の純現金約21億円から状況は大きく変わった。採用拡大やAI関連投資、大型案件の資金繰りが先行する経営では、売上拡大と資金不足が同時に起こりうる。2025年には業績目標連動型の有償ストックオプションも発行した。M&Aを新株発行で行う場合の希薄化にも目を配る必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ROXXが扱う現場職の採用問題は、少子高齢化によってむしろ深刻になる。正社員になりたい若い人と、大量の採用枠を持つ企業の間には、情報と経験の大きな隔たりがある。求人を単純に並べただけでは埋まらず、相談と推薦を組み合わせるサービスへの需要は残る。大手企業の求人をまとめ、小さな紹介会社にも提供する構造は、十分な規模に達すれば強い競争力を持ちうる。
約400社の社外パートナーは出発点にすぎない。全国には多数の小規模紹介会社があり、自前では獲得できない大手企業の求人をROXX経由で扱える利点は大きい。採用成立時の事務手数料を得るモデルなら、自社で同じ人数のアドバイザーを増やさなくても収益を拡大できる。採用決定件数の増加に伴い取引データが蓄積されれば、求人との相性を見極める精度も上がる。
AI面接官は、ROXXを置き換えるだけの存在ではない。実際に企業への導入が公表されており、面接の日程調整や一次選考を省力化できる。人が行う相談を減らしながら、採用成立件数を増やせれば、従来の紹介会社では難しかった利益率を実現できる。直営紹介が急成長しなくても、社外紹介の取引量が増えれば全社利益は大きく伸びる。
2026年9月期第3四半期単独では営業黒字を確保した。これは固定費を吸収できる売上規模に近づいた兆しである。会社が掲げる2029年9月期の売上高100億円超は野心的だが、巨大な対象市場との比較では不可能な数字ではない。back check売却で集中する事業を明確にした今、資本を効率よく再投資できれば、社外紹介を中心に高い利益を生む企業へ変わる余地がある。
慎重な見方
人手不足は業界の追い風だが、紹介事業者の利益を守る堀ではない。企業は採用コストを下げたいと考え、求職者はできるだけ多くの求人を比較したい。両者とも一つの仲介会社に縛られにくい。特に未経験者の紹介では、求人企業が成功報酬額を設定するため、ROXXが自由に値上げできるわけではない。
直営紹介の成長には広告費とアドバイザーの採用費が必要になる。2025年9月期まで営業赤字が続いた事実は、これまでの事業拡大が十分な株主利益を生んでこなかったことを示す。2025年の最終黒字は事業売却益によるものだ。2026年の第3四半期が単独黒字になったとしても、最初の9か月を通算すれば営業赤字である。黒字化した時期だけを切り取って長期の収益力を評価してはいけない。
さらにAIエージェントは、人材紹介における面談準備、求人推薦、応募管理、書類整理、一次面接を代替しうる。ROXXが提供するAI面接官は有望だが、その機能が他社にも提供されれば競争力は薄れる。利用企業が増えたという発表と、長期間にわたり高い単価を維持できる証拠は違う。パートナーが他のプラットフォームへ移ることも難しくない。
財務面では、2025年9月末に約21億円あった純現金が、2026年6月末に約1.6億円まで減った。会社は依然として多額の借入金を抱え、営業黒字の定着を待つ余裕は以前より小さい。大型案件が遅れれば収益予想を外し、さらに資金を使う可能性がある。ストックオプションや将来の増資も既存株主の取り分を薄める。結果として、社会的に必要な事業が残っても、現在の株主にとっての価値は低いままになりうる。
どちらに重みを置いたか
市場の大きさと事業の社会的な役割では、成長を期待する見方に説得力がある。社外紹介の仕組みが規模の利益を生む可能性も認める。しかし、足元で繰り返した営業赤字、縮小した純現金、確立していない値上げ力は重い。中立の数量と長期成長率にはAI代替の影響を既に反映しており、資本コストへ同じ理由を上乗せしない。下振れ側を44%、上振れ側を28%としたのは、主として財務余力と黒字化の不確実性によるものだ。2029年の売上目標を達成する上振れ余地を認めても、現在の約31億円という時価総額に見合う安全域は確認できない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 329 円24 億円(+ 還元の換算額還元の合計 12 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 147 円11 億円、今との差 −64.2%、 期待の年率 −1.9%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,556 円113 億円 | 75 円5 億円 | +297.7% | +15.3% | 163 円12 億円 |
| やや楽観 | 18% | 574 円42 億円 | 23 円2 億円 | +45.4% | +3.9% | 107 円8 億円 |
| 中立 | 28% | 181 円13 億円 | 0 円0 億円 | −55.8% | −7.9% | 51 円4 億円 |
| やや悲観 | 26% | 53 円4 億円 | 0 円0 億円 | −87.0% | −18.4% | 14 円1 億円 |
| 悲観 | 18% | 34 円2 億円 | 0 円0 億円 | −91.8% | −22.2% | 6 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 329 円24 億円 | 12 円1 億円 | −16.8% | −1.9% | 341 円25 億円 |
今の株価時価総額 410 円30 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 社外紹介が全国規模の取引基盤に育つ 利益 10 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,556 円113 億円
大手の求人企業がZキャリアへ採用枠を継続的に開放し、社外紹介会社が利用を深める。年間の社外採用成立件数は約3.5万件に達し、2024年度の全国の有料職業紹介による常用就職件数と比べても無視できない規模になる。売上高は約87億円まで拡大し、会社が過去に示した100億円超の構想に近い水準となる。
直営紹介の人員増には依存せず、パートナー経由の取引が成長の中心となる。求人の蓄積と採用実績データが使われ続け、企業がROXX経由で採用する利点も明確になる。AIによって社内の作業は効率化するが、独立したAI製品売上の急増を仮定するわけではない。
back checkの売却後は新たな大型買収で現金を失わず、必要な採用・開発投資を営業利益で賄う。社外紹介の追加取引に対する資本負担が軽くなり、営業利益率は大きく改善する。利益が定着した後半には小規模な株主還元も始まる。新株予約権の行使による既存株主の取り分の希薄化は生じる。
- Zキャリア・社内アドバイザーによる直接紹介:数量 3,100(社内アドバイザー経由の年間採用成立件数(件、推定))× 価格 0.01(採用成立1件当たりROXX帰属売上高(億円、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 5 億円。数量は今と同水準。10年の成約単価は約1.30倍。人手型の事業拡大ではなく成約率と人員配置の改善で採算を向上させる。
- Zキャリア・パートナー紹介の成果手数料:数量 35,000(パートナー経由の年間採用成立件数相当(件、推定))× 価格 0.00(採用成立1件当たりプラットフォーム手数料相当(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 12 億円。社外紹介会社の参加と取引深度が高まり、採用成立件数が今の約4倍となる。取引額増加の根拠は求人流通のシェア拡大であり、AI製品の未開示売上を加算しない。
- 紹介会社向けプラットフォーム利用料・継続課金:数量 400(年間契約社数相当(社、実際の有料契約社数ではない))× 価格 0.03(年間契約1社相当当たり売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。契約数量は横ばい。年間単価は約1.08倍。AIの画面代替により物価上昇ほど値上げできない。
- 売却済みback check事業:数量 0.0(保有事業数(事業))× 価格 6.37(年間売上高(億円/事業))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2025年9月に譲渡済みのため2036年の収益はない。
倍率:資本コストk=9.0%、2036年のROEは10.2÷55.54=18.4%。moatはweakでRONIC=9.0%+1/3×(18.4%−9.0%)=約12.1%。長期名目成長率g_longは0%のため、正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(9.0%−0)=11.11倍。社外紹介が急成長する期間の利益は2036年純利益に反映済みであり、それ以後の高成長を倍率に重ねない。
確率:パートナー紹介の採用成立件数が約3.5万件まで増える強い成功例。国内の有料紹介市場には十分な規模があるが、求人の獲得、紹介会社の利用深度、採用企業の維持という複数条件が必要になるため10%とする。AIだけを理由に人手型の直営紹介の数量を増やさない。
やや楽観 18% 社外紹介が伸び、黒字経営が定着 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 574 円42 億円
未経験者の転職市場は底堅く、Zキャリアは大企業の求人を確保し続ける。社外紹介会社経由の採用成立件数は約1.8万件となり、現在より取引規模が大きくなる。直営紹介はAIによる業務代替を受けるものの、企業との関係や求職者への丁寧な支援を維持し、採用成立件数の大幅な減少は免れる。
求人企業が設定する成功報酬は物価上昇の一部を反映して増えるが、ROXXだけが値上げを主導できる状況にはならない。プラットフォームの月額利用料はAI機能による競争で伸び悩む。社外紹介の取引増加がこれを補い、全社売上は約56億円、営業利益は約6億円となる。
back checkの売却後、経営陣は大型M&Aを控え、採用と技術開発への投資を選別する。赤字の期間に使った資金を取り戻した後は小規模な還元も実施する。ただし、業務ソフト自体に高い値上げ力があるわけではなく、10年後は成熟した人材プラットフォームとして評価される。
- Zキャリア・社内アドバイザーによる直接紹介:数量 2,950(社内アドバイザー経由の年間採用成立件数(件、推定))× 価格 0.01(採用成立1件当たりROXX帰属売上高(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。直営紹介件数は現在の約95%。成約単価は約1.25倍にとどまり、コスト削減による利益改善が中心。
- Zキャリア・パートナー紹介の成果手数料:数量 18,000(パートナー経由の年間採用成立件数相当(件、推定))× 価格 0.00(採用成立1件当たりプラットフォーム手数料相当(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。求人企業の数と社外パートナーの利用頻度が改善し、紹介成果手数料が成長する。
- 紹介会社向けプラットフォーム利用料・継続課金:数量 360(年間契約社数相当(社、実際の有料契約社数ではない))× 価格 0.03(年間契約1社相当当たり売上高(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。ID・契約数量は現在の90%。単価は約1.05倍で、AIによる価格競争を織り込む。
- 売却済みback check事業:数量 0.0(保有事業数(事業))× 価格 6.37(年間売上高(億円/事業))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業の収益は加算しない。
倍率:ROE=3.9÷28.24=約13.8%でk9.0%を上回る。弱い堀の残存割合1/3からRONIC=約10.6%。ただしg_longは0%なので正当化PERは1÷9.0%=11.11倍となる。10年間の利益成長と2036年以降の成長を二重に計上しない。
確率:紹介会社の利用拡大と固定費効率の改善は実現可能だが、会社が想定する規模の経済を継続して得るには競合との争いがある。新規事業の未開示売上を先取りせず、既存プラットフォームの成長を中心に18%とする。
中立 28% 事業は存続するが、AI競争で利益の伸びは限られる 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 181 円13 億円
Zキャリアは現場職の転職支援プラットフォームとして生き残る。求人企業と紹介会社の間には依然として情報の差があり、大手企業の採用枠を小規模紹介会社へ流通させる役割は必要とされる。ただし、採用企業はAIによる求人推薦や面接支援を使うようになり、ROXXが受け取る仲介手数料の伸びは限られる。
直営紹介の採用成立件数は約2,200件となり、2025年の推計より約29%減少する。社外紹介は約9,000件に小幅増加するが、成約報酬に対する手数料率は大きく改善しない。プラットフォームの継続契約数量も約20%減り、AIエージェントが操作画面を使わず求人や応募情報を取り扱う。売上高は約36億円で落ち着く。
会社は過大な買収を避け、人員配置や広告費を抑えることで営業黒字を確保する。しかし、追加投資の利回りが資本コストを上回るほどの強い優位性は得られない。後半に大きな還元はなく、利益の多くは資金繰りと事業維持に充てられる。社会的な需要は残っても、株主が受け取れる価値は現在の時価総額に届かない。
- Zキャリア・社内アドバイザーによる直接紹介:数量 2,200(社内アドバイザー経由の年間採用成立件数(件、推定))× 価格 0.01(採用成立1件当たりROXX帰属売上高(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。人月・工数型に準じ、数量は現在の0.71倍。単価は1.20倍で物価上昇の1.34倍より低い。AIエージェント代替による相談・推薦業務の縮小を反映。
- Zキャリア・パートナー紹介の成果手数料:数量 9,000(パートナー経由の年間採用成立件数相当(件、推定))× 価格 0.00(採用成立1件当たりプラットフォーム手数料相当(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。取引基盤の採用成立件数は約1.03倍。求人流通の利便性は残るが、直接マッチングによる中抜きで手数料単価の上昇は約1.09倍にとどまる。
- 紹介会社向けプラットフォーム利用料・継続課金:数量 320(年間契約社数相当(社、実際の有料契約社数ではない))× 価格 0.03(年間契約1社相当当たり売上高(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。席・画面型SaaSとして数量0.80倍、単価1.10倍。いずれもAIエージェント代替の所定範囲内。
- 売却済みback check事業:数量 0.0(保有事業数(事業))× 価格 6.37(年間売上高(億円/事業))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。事業譲渡により収益ゼロ。
倍率:2036年ROE=1.3÷17.04=7.6%でk9.0%を下回る。資本コストに達しない企業の正当化PER上限は1÷k=11.11倍。AI代替を中立の数量・単価と長期名目成長率0%に反映済みなので、同じ理由を倍率からさらに手で引かない。余剰現金の独立加算はない。
確率:市場の人手不足は継続し、社外紹介の取引基盤は残る。一方、人が面談して推薦する直営紹介と画面型の利用料はAIエージェント代替を受ける。2026年の営業黒字の定着も未確定であり、高成長が続く筋書きを中心にしない。
やや悲観 26% 紹介手数料が細り、薄い黒字にとどまる 利益 0 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 53 円4 億円
求人企業は採用を続けるが、紹介会社に払う報酬を厳しく管理する。未経験者向け求人は競争が激しく、リクルートやIndeedなど大手の求人流通サービスもAI機能を強める。中小の紹介会社は複数の求人基盤を使い、ROXXに集中させる理由が弱くなる。社外紹介経由の採用成立は約6,000件まで減る。
直営紹介は求職者を集める広告費が重く、アドバイザーの採用と育成を抑える。採用成立件数は約1,800件となる。ソフトの継続契約もAIによる業務自動化と顧客の内製化に押され、利用会社数相当が減少する。売上高は約25億円となり、経費削減後も営業利益はわずかに残る程度だ。
経営陣は新しい大型買収を見送り、債務返済と既存サービスの維持を優先する。社員数や開発費を抑えることで赤字転落は免れるが、残った利益の再投資利回りは資本コストに届かない。配当も自社株買いも期待しにくい。事業は続くものの、ROXX独自の堀が強くなったとは認められない。
- Zキャリア・社内アドバイザーによる直接紹介:数量 1,800(社内アドバイザー経由の年間採用成立件数(件、推定))× 価格 0.01(採用成立1件当たりROXX帰属売上高(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。採用成立件数は現在の約58%。広告費の上昇と価格競争で単価は約1.10倍にとどまる。
- Zキャリア・パートナー紹介の成果手数料:数量 6,000(パートナー経由の年間採用成立件数相当(件、推定))× 価格 0.00(採用成立1件当たりプラットフォーム手数料相当(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。紹介会社の利用減少に加え、手数料単価も現在をやや下回る。
- 紹介会社向けプラットフォーム利用料・継続課金:数量 270(年間契約社数相当(社、実際の有料契約社数ではない))× 価格 0.02(年間契約1社相当当たり売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。画面型ソフトの数量は0.675倍となり、利用料にも値下げ圧力が及ぶ。
- 売却済みback check事業:数量 0.0(保有事業数(事業))× 価格 6.37(年間売上高(億円/事業))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業の収益はない。
倍率:営業利益0.60億円から金利費用・税負担を考慮した継続純利益0.35億円を評価する。ROE約2.8%はk9.0%を下回るため、稼ぐ力の上限は純利益÷k=3.89億円。財務資産の換金床約2.4億円より大きいため3.89億円を採用する。過去のPBRの谷は倍率の根拠にしない。
確率:黒字化が遅れ、社外紹介の取引量が減る現実的な下振れである。AI代替による直営紹介の数量減少は中立でも計上しているため、さらに強い損失を二重計上しない。最新の純現金が小さく、固定費と資金繰りへの対応が必要なため26%とする。
悲観 18% 仲介の競争力を失い、縮小均衡へ向かう 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 34 円2 億円
人材紹介の中間業務が自動化され、求人企業はAIを使って候補者の選定と一次面接を行う。リクルート、Indeed、パーソルキャリアなど大手の求人ネットワークに情報と利用者が集まり、ROXXは大企業の採用案件を維持しにくくなる。社外紹介会社は他の求人基盤や求人企業との直接契約を増やし、Zキャリアの取引量は縮む。
社内アドバイザー経由の採用成立は約1,450件、社外紹介は約3,700件に落ちる。継続利用する紹介会社も減り、売上高は約18億円まで縮小する。採用企業に対する価格交渉力を失い、サービスの改善に必要な開発費も回収しにくくなる。固定費を削っても営業損益は赤字のままだ。
会社は事業の一部売却、追加の人員削減、債務返済を迫られる。成長目的のM&Aはできず、残った求人データと取引関係を細く維持する経営になる。継続企業の前提が直ちに失われるとまでは仮定しないが、優良なプラットフォームとしての価値はなくなる。株主に対する配当と自社株買いはなく、資産の換金可能価値が評価の中心となる。
- Zキャリア・社内アドバイザーによる直接紹介:数量 1,450(社内アドバイザー経由の年間採用成立件数(件、推定))× 価格 0.01(採用成立1件当たりROXX帰属売上高(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。採用成立件数は現在の約47%。人間による面談と推薦の価値が低下し、単価上昇も限定的。
- Zキャリア・パートナー紹介の成果手数料:数量 3,700(パートナー経由の年間採用成立件数相当(件、推定))× 価格 0.00(採用成立1件当たりプラットフォーム手数料相当(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。社外紹介の取引基盤としての地位が弱まり、採用成立件数と取引単価の両方が低下する。
- 紹介会社向けプラットフォーム利用料・継続課金:数量 220(年間契約社数相当(社、実際の有料契約社数ではない))× 価格 0.02(年間契約1社相当当たり売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。契約社数相当は55%。AIエージェントが画面型ソフトを置き換え、名目単価も下落する。
- 売却済みback check事業:数量 0.0(保有事業数(事業))× 価格 6.37(年間売上高(億円/事業))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業の売上はゼロ。
倍率:継続純利益が−1.4億円であり、利益にPERを掛けて正の価値を求めることはできない。足元の換金床約2.40億円を中心に、2025年9月末の自己資本約19.54億円に対する床のPBR0.125倍を適用し約2.44億円とする。2036年に積み上がる自己資本3.54億円へ床の倍率を掛けた値ではない。営業赤字を継続するため営業上ののれん価値は認めない。
確率:AIによる直接マッチングや競合基盤への流出が重なり、2025年の継続事業売上が10年間で半分前後に減る構造的な敗北である。継続赤字と純現金の縮小で撤退余力も低下しているため18%とする。ただし、ただちに倒産すると決め付けず、換金可能な純資産の床を残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Zキャリア・社内アドバイザーによる直接紹介
ROXX所属のキャリアアドバイザーが求職者を支援し、採用が成立した企業から成果報酬を受け取る。人の面談・推薦工数に依存するためAIエージェント代替の人月・工数型に準じて評価する。
| 数量社内アドバイザー経由の年間採用成立件数(件、推定) | 価格採用成立1件当たりROXX帰属売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3,100 | 0.01 | 20 | −4 |
| 10 年後 中立 | 2,200 | 0.01 | 17 | 2 |
取り方:2025年9月期の決算説明資料に示された社内紹介の四半期売上、約4.87億円、3.54億円、5.26億円、5.88億円の合計は約19.55億円。2026年9月期第3四半期資料の平均成約単価約63.1万円を近似的な単価に使い、19.55億円÷約63万円≒約3,100件と推定した。これは公式の年間成約件数ではない。2025年9月期の営業損失7.2億円は収益源別に開示されないため、営業利益の配分は分析上の推定である。
Zキャリア・パートナー紹介の成果手数料
社外の紹介会社が求人企業へ採用を成立させた際、ROXXが採用事務手数料などを得る取引基盤。人材紹介会社の工数そのものを売る事業ではないが、採用の中抜きや直接マッチングの進展で手数料率が下がりうる。
| 数量パートナー経由の年間採用成立件数相当(件、推定) | 価格採用成立1件当たりプラットフォーム手数料相当(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 8,700 | 0.00 | 10 | −2 |
| 10 年後 中立 | 9,000 | 0.00 | 11 | 2 |
取り方:会社は、パートナー紹介で採用成果報酬の20%を採用事務手数料として受領すると説明している。2025年9月期の社外紹介に関係する四半期売上の合計は約9.53億円であり、AI関連商品の一時売上等も混じる可能性がある。採用報酬を約55万円、ROXXの手数料をその20%の約11万円と仮定すると約8,700件相当になる。会社が公表する実際の社外採用決定件数ではなく、売上を実取引単位へ変換した推計値である。四半期開示の丸めと他の収入の配賦差約0.06億円を含む。
紹介会社向けプラットフォーム利用料・継続課金
Zキャリアの求人データベース、応募・選考管理などの継続利用から得る収益。操作画面や利用IDの価値が大きいため、AIエージェント代替の席課金・画面型ソフトとして評価する。
| 数量年間契約社数相当(社、実際の有料契約社数ではない) | 価格年間契約1社相当当たり売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 400 | 0.02 | 10 | −1 |
| 10 年後 中立 | 320 | 0.03 | 8 | 1 |
取り方:2025年9月期のリカーリング収入の四半期売上約2.67億円、2.42億円、2.39億円、2.16億円を合計した約9.64億円を基準とした。会社の2025年9月末時点のパートナー紹介会社数は約400社なので、全収入をその社数で割った年間約241万円、月額約20.1万円を契約当たり単価の代理値とした。400社がすべて同額を払うという意味ではない。AI面接官などの商品別の独立収益は開示されていないため、売上を重複計上しない。
売却済みback check事業
オンラインのリファレンスチェック・コンプライアンスチェックの事業で、2025年9月末にエンへ売却済み。10年後のROXXの営業収益には含めない。
| 数量保有事業数(事業) | 価格年間売上高(億円/事業) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1.0 | 6.37 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 6.37 | 0 | 0 |
取り方:添付factsの2025年9月期全社売上45.13億円と、会社開示の継続Zキャリア売上約38.78億円の差額は約6.35億円。分析上の収益区分をすべて積み上げて45.13億円に一致させるため、他の区分の丸め差を含む売却事業相当額を約6.37億円とした。back checkは2025年9月30日に売却されたため、2036年の保有数量は0。帳簿上の売却益は繰り返さない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による紹介業務の中抜き
求人探索、応募書類の作成、候補者推薦、面接日時の調整、一次面接などをAIが処理するようになれば、人が介在する直営紹介の工数と成果報酬が縮小する可能性がある。求人企業が自社で候補者と直接つながれば、社外紹介の事務手数料にも圧力がかかる。AI面接官の導入は機会だが、導入件数の公表だけでは独立した売上高と利益率の持続性を証明できない。
営業赤字と純現金の急減
2025年9月末の純現金約21億円が、2026年6月末には約1.6億円に縮小した。直近の現金約19.65億円には借入金約18.06億円という返済義務が対応している。累計営業赤字の解消が遅れれば、新たな借入、資産売却、増資などが必要になりうる。事業売却益で生まれた一時的な資金を、恒常的な成長投資の原資と考えるべきではない。
採用成功報酬の価格決定力
Zキャリアでは求人企業が採用成功報酬額を設定できる。人材不足を背景に採用単価が上がる可能性はあるものの、採用企業の予算削減や競合との比較が進めば、ROXXが値上げを押し通せるとは限らない。平均成約単価が上がっても、職種構成や成約率の変化による影響が混在する。広告費と人件費を差し引いた1件当たり利益が改善しているかが重要となる。
パートナー紹介会社の離脱と取引集中
社外紹介の取引基盤は、多数の小規模紹介会社と大量採用を行う大企業との間を結ぶことで価値を生む。しかし紹介会社は他社の求人サイトや企業との直接契約を選べる。大企業の求人条件が変わったり、主要な掲載先が他の基盤へ移ったりすれば、取引件数は急速に減少しうる。会社数だけでなく、1社当たり成約件数、継続利用率、実質手数料率の推移を確認する必要がある。
2029年の成長目標と投資採算
会社は2029年9月期までに売上高100億円超を目指しているが、当初の達成予定年度から後ろ倒しとなっている。2026年9月期の第3四半期累計も営業赤字であり、目標達成には既存事業の成長、新規事業の収益化、場合によってはM&Aが必要だ。売上を買収で積み増しても、取得対価や統合費用を回収できなければ株主価値は増えない。目標金額より投下資本に対する利益を優先して評価する。
新株予約権と追加増資による希薄化
2025年9月期の有価証券報告書には、潜在株式約69.6万株に相当する新株予約権が記載されている。業績回復時には権利行使が既存株主の持分比率を低下させる。反対に業績が悪化すれば、運転資金確保を目的とする新株発行が必要になる可能性がある。企業全体の利益が増えても、1株に帰属する利益が同じ割合では増えない点に注意する。
採用規制、個人情報とAI選考の公正性
同社は職歴、応募履歴、面接内容など機微な個人情報を扱う。AIによる推薦や面接評価に不当な偏りがあれば、求人企業や求職者の信頼を損なう可能性がある。職業安定法や個人情報保護に関する規制への対応も継続的に必要となる。面接自動化を進めるほど、説明可能性、データの保護、顧客による監査への対応が事業上の費用と競争条件になる。
今後の分かれ目
- 2026年9月期の通期決算で営業黒字を確保し、その後も通期黒字が継続したら
- 正常化利益の起点を改善し、資金不足の確率を下げる。ただし事業売却益のない営業利益、営業キャッシュフロー、借入返済後の現金増減を併せて確認する。
- Zキャリアの社外紹介売上とパートナー1社当たり成約件数が複数年度にわたって増えたら
- 取引基盤のネットワーク効果を示す証拠として、やや楽観と楽観の確率を高める。単なるパートナー登録社数の増加だけでは判断しない。
- 2029年9月期の売上高100億円超に近づき、同時に営業利益とフリーキャッシュフローが改善したら
- 売上規模と投下資本利益率の両方を確認し、利益見通しを上方修正する。M&Aで売上だけを追加した場合は、取得費用と追加株式の希薄化を控除する。
- AI面接官やFDEサービスの売上、契約継続率、利益率が独立した金額で開示されたら
- 従来の人月型紹介と新たなAI製品収益を分けて再評価する。継続率と値上げ実績が確認されれば、事業の一部により強い堀を認める余地が生まれる。
- 純現金が再び大きく減り、営業赤字が継続したら
- 追加借入や増資による資本の毀損を検討し、下振れ側の確率と既存株主の取り分を見直す。継続企業の前提に関する注記が付いた場合には、通常の継続企業評価を停止する。
- 直営紹介の採用成立件数が減っても、1件当たり獲得費用と人件費がそれ以上に減ったら
- AIによる業務効率化がROXX自身の利益改善に働いていると評価する。数量の減少そのものではなく、採用成功1件当たりの限界利益と現金創出力を重視する。
- 配当や継続的な自社株買いが始まり、利益に対する還元率が明確になったら
- 余剰現金の株主帰属率を0.75から1.0へ引き上げることを検討する。ただし成長投資を削って事業の競争力が落ちていないかも併せて確かめる。
見ておくもの
- 2026年9月期通期の営業損益と、売上高50億円・営業利益0.45億円の会社予想の達成状況
- 2029年9月期の売上高100億円超の目標に対する進捗と利益率
- Zキャリア直営紹介のキャリアアドバイザー数、採用成立件数、平均成約単価
- 社外パートナー紹介会社数、1社当たり採用決定件数、採用成功時の実質手数料率
- プラットフォーム利用料の継続収入、課金契約数、解約率、単価
- AI面接官とFDEサービスの独立した契約件数、売上高、継続率、営業利益
- 四半期末の現金及び預金、有利子負債、純現金、営業キャッシュフロー
- 新株予約権の残数、権利行使、増資、M&A取得対価
- 厚生労働省の有料職業紹介の就職件数と手数料単価、競合の求人流通規模
- 継続企業の前提に関する注記と重要な後発事象
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約31億円から必要利益を逆算せず、採用成立件数、1件当たり手数料、契約社数と年額利用料を先に考えた。成長の大半を占める上振れ筋書きでも、AI製品の未開示売上を無制限に拡大していない。楽観から中立のPERは、資本コスト9%と長期成長率0%による正当化上限11.11倍で統一し、今の市場PERや同業PERは使わなかった。悲観は過去のPBRの底ではなく、最新の純現金と換金可能な投資資産を基礎にした。2025年9月期の一時的な売却益は正常化し、2026年6月末の財務悪化は別途反映した。事務所賃借に係る固定費を考慮し、新リース会計基準で将来の貸借対照表の表示が変わっても、価値評価では現在と同じ費用の考え方を維持する。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。基本7.5%+値決め力に関するquality0.5%+継続赤字と資金余力の低下に関するdistress1.0%=9.0%。AI代替、上場企業としての規模、株価の変動率を追加の上乗せ理由にはしない。