結論
テラスカイは、Salesforceの導入開発を軸に、AWSなどのクラウド利用権の再販と自社製品mitocoを手掛ける会社だ。筆者の結論は「割高」である。国内屈指の導入実績、NTTデータとの協業、厚い現金は確かな強みだが、主力の受託開発を人月で売る構造と、その仕事をAIエージェントが代替する危険を考えると、今の時価総額には長期株主の安全域が足りない。
2026年2月期の売上高は約281億円、営業利益は約16億円だった。2027年2月期上期には営業利益が前年同期の2倍超に伸び、通期25億円の計画にも順調に進んでいる。大型案件と人員再配置による利益改善を否定する必要はない。ただし、2026年2月期の純利益には有価証券売却などの一時的な押し上げもあり、足元の利益だけを将来に延長してはならない。
2036年には、クラウドの利用権再販が膨らむ一方で、人の工数と業務ソフトの席数に対する対価が細り、売上高は中立で約307億円、営業利益は約19億円にとどまるとみる。AIの脅威は十年間の数量とその先の成長率で数え、資本コストに重ねていない。五つの筋書きに重みを付けた現在価値は約118億円となり、基準時価総額約311億円を6割強下回る。技術の先駆者であることと、株主が払ってよい価格とは別の問題である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主は、十年先も顧客が何にお金を払うかを最初に考えるだろう。企業の顧客情報を整理し、規制や社内権限に合わせて動かす仕事は残る。ただし、その仕事を人が何か月かけたかに対して払い続ける理由は薄くなる。テラスカイの導入実績は強い営業資産だが、工数を請求する力そのものを永久の堀と呼んではならない。
所有者の稼ぎは、連結の売上高でも見た目の純利益でもない。外部エンジニアへの支払い、製品開発費、将来のシステム更新、子会社の少数株主に帰属する利益を引いた後に残る現金こそが株主のものになる。mitocoのユーザーは蓄積しているが、同社の本業利益を守るだけの規模と値上げ力はまだない。BeeXの利用権再販も、契約数が増えやすい反面、基盤提供者が価格を決める弱さを持つ。
それでも財務の余裕は貴重だ。純現金があるため、AI転換の最中に突然資金繰りに窮する会社ではない。NTTデータとの提携は大規模案件と導入技術の補完をもたらし、BLADEの開発資産が外販収入へ変われば評価を見直せる。しかし、有償の成果が見える前に高度成長の価値まで支払うのは、事業を所有する姿勢とは違う。
筆者が気にするのは、収益が一時的に伸びることより、次の一円の再投資が資本コストを超えるかだ。今後のキャッシュを配当や自社株買いに移せば価値は上がるが、現状の配当額は小さく、残す現金は株主への戻りを割り引いて見る。したがって事業の進歩を認めても、今の価格には十分な安全域がないと結論づける。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はクラウド導入の請負だ。ソリューション事業ではSalesforceを使う営業・顧客管理システムを設計、開発、運用し、金融機関や大企業の案件を受ける。グループ全体のクラウド導入累計は2万3,000件を超え、NTTデータとの共同部隊は銀行の大型案件にも踏み込んだ。顧客が求める成果は業務改善でも、請求額を支える根本は技術者の稼働と外部委託の工数であり、AIによって一案件に必要な時間が減れば収益の前提も変わる。
同じソリューションでもBeeXは性格が違う。AWS、Azure、Google Cloudの利用権を仕入れて請求する仕事と、クラウド環境を構築・監視する仕事を抱える。BeeXの2026年2月期の再販売上は約68億円、期末の契約アカウントは892件である。利用権の再販は開発工数の削減に直撃されにくいが、世界的なクラウド事業者に仕入価格と制度を握られ、売上が増えても高い利益率になりにくい。スカイ365の監視運用、リベルスカイのデータ活用、Quemixの量子関連も同じ報告セグメントに含まれる。
製品事業はmitoco、mitoco X、データ連携製品などを売る。mitocoシリーズの公表利用ユーザーは約19万人で、前期の製品売上高は約23億円、サブスク比率は約9割に達する。2027年2月期上期には製品事業が黒字化したが、開発費と償却費を伴う小さな事業で、連結売上高に占める割合はまだ1割未満だ。席数に依存する画面中心の製品はAIによる利用形態の変化を受けやすく、記録の正本として生き残れるかは未証明である。
分析上は報告上の二事業を、Salesforce開発、クラウド利用権再販、その他の構築・運用、製品の四つにほどいた。Salesforce案件は年間の有償人月、再販はBeeXのアカウント数、製品は利用ユーザー数で数量を測る。区分別の工数と利益は非開示のため推計を含み、各区分の根拠と連結消去は数値欄に明記した。
優良さと弱いところ
最大の強みは人の経験が組織にたまっていることだ。Salesforce導入の認定資格と案件経験は国内でも屈指であり、顧客の既存データ、権限、業務手順を知ることで追加案件を取りやすい。2026年2月期に始まった単体Salesforce案件のリピート率は83.1%と公表され、NTTデータ経由の大型案件が新しい販路になっている。ただし、これは既存契約の年間解約率ではなく、価格を上げても顧客が残る証明でもない。
堀、つまり競争相手が簡単に越えられない壁は狭くはないが、永続的ともいえない。Salesforceという他社の基盤が仕様とライセンスを決め、アクセンチュア、国内大手SI、他の認定パートナーも同じ市場を狙う。独自ソフトのmitocoには利用者の蓄積と他業務との連携があるものの、解約率5%未満、法令改正に伴う値上げ実績、移行に年単位を要する実証など、記録の正本に求める強い堀の証拠は二つそろわない。
財務は好対照である。2026年2月期末は純現金約81億円で、自己資本比率は5割を超える。直近の半期でも現金が積み上がり、製品投資や不採算子会社の整理を吸収した。一方、営業利益率は好調な直近でも5〜8%台で推移し、成長期の増員と買収に対し、増分の利益が十分伴ったと断定しにくい。連結子会社BeeXの利益には少数株主の取り分もあるため、連結営業利益を丸ごと親会社株主のものと見ない。
AI駆動開発のBLADEは同社自身が将来の請負モデルを変えようとしている証拠だ。会社は設計からテストまでの期間を短縮できた事例を示しているが、BLADE SAYAの継続的な有償売上や販売額はまだ開示されていない。工数削減を顧客と会社のどちらが得るかが、これからの資本効率を決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要自体は伸びている。業界資料にある国内ITサービス市場は2025年に約7.5兆円で、企業の基幹システム刷新とデータ統合が当面の仕事を生む。国内パブリッククラウド市場は2024年約4.1兆円、2029年約8.8兆円という予測が示されている。CRMソフトの国内市場にも成長余地があり、Salesforceは主要分野で首位を保つ。ただし、ソフトの利用料、導入役務、クラウド再販は異なる市場であり、それらを足して同社の市場占有率を作ることはできない。
Salesforce導入・運用ではアクセンチュア、NTTデータ、富士通、IBMなどが相手だ。NTTデータと組んだ技術者・ライセンス再販規模は国内首位級とされるが、テラスカイ単独の正確な受託売上シェアは公表されていない。2026年2月期のSalesforce関連売上を推計約156億円とすると、国内ITサービス市場全体の約0.2%に当たる。ただし分母が広すぎるため、これは業界全体に対する規模感であって、Salesforce導入市場の正式なシェアではない。
クラウド利用権の再販ではBeeXの68億円は国内パブリッククラウド支出の0.2%弱に相当する。再販額とクラウド事業者の最終売上は集計が違い、やはり厳密なシェアではない。AWS、Microsoft Azure、Google Cloudが顧客との直接取引を強めたり、クラスメソッドなどの再販パートナーが競争を仕掛ければ手数料が薄くなる。他方、顧客の計算資源利用そのものはAIの普及で増えうるので、再販の契約数には受託開発とは違う成長余地がある。
mitocoが属する国内グループウェア市場は、富士キメラ総研の推計を引用する同業rakumoの開示で2025年度に約6,365億円とされ、GoogleとMicrosoftが合計約93%を占める。テラスカイの製品事業売上約23億円は、この市場全体の0.4%未満に相当するが、製品事業にはグループウェア以外も含むためmitoco単独の厳密なシェアはさらに小さいとみる。Salesforce基盤の連携を差別化に使うとしても、巨大な標準製品との競争で値上げの自由度は限られる。
十年先で最大の変化は、技術者不足よりも開発の自動化が速く進みかねないことだ。従来の市場予測が売上の伸びを示しても、人月単価の上昇と案件工数の削減を打ち消し合わせて考えなければならない。会社はBLADE、mitoco Buddy、クラウドデータ整備で先手を打つ。しかしエージェントが画面を飛ばす業務では、座席数課金と作業時間課金の双方が圧迫される。AIを提供する側に回った実績は評価しても、額の開示がない新商品の十年先売上を先取りはしない。
資本政策と M&A
資本配分は成長投資優先から、ようやく還元を始める段階に移った。2026年2月期に初めて年間約2億円の配当を実施し、翌期は増配を予定する。経営は累進配当を志向すると説明するが、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの額について数字の約束はない。2027年2月期末に向けた数値目標は営業利益25億円、ROE10%であり、直近の営業利益計画はこれを少し上回る。
買収と子会社の上場を組み合わせた事業拡大は、成果と複雑さの両方を生んだ。BeeXは上場子会社で持分約63%、キットアライブは2025年に過半数を取得した。量子やAI関連への投資も進めるが、少数株主や持ち合いの構造がある以上、連結売上が伸びた分だけ親会社のオーナー利益が増えるわけではない。タイ法人や製品事業の赤字を縮め、2027年2月期上期の収益を改善したことは、過去の投資の回収を見極める重要な変化だ。
NTTデータは約16%の大株主で、さらに67万株の新株予約権を持つ。2027年2月期までに営業利益25億円を超えれば行使可能となるため、現行計画が達成されれば既存株主に約5%の希薄化が起こりうる。行使代金は会社に入るが、将来利益を分ける株主も増える。創業者側の持分も大きく、持ち合い先への迎合より、買収投資の利回りと配当の実行を継続して見るべきである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内企業には古い基幹システムと分断された顧客データが大量に残る。データを正しい形に整え、Salesforceと社内システムを接続する需要は、AIが普及するほどむしろ増える。テラスカイは二万件超の導入経験、資格者の層、金融機関での厳しい品質管理を持つ。NTTデータとの共同部隊は既に大口案件を生み、前年度約6億円だった関連売上を今期約20億円へ広げる計画が進んでいる。十年かけて同グループ向け売上が100億円を超える道も否定できない。
工数の削減も必ずしも悪い話ではない。BLADEの開発自動化により、顧客への納期を縮めながら一定の成果報酬を維持できれば、開発者一人当たりの粗利益は上がる。自社製品mitoco BuddyはAIとの接続を前提に作られ、製品事業は足元で黒字化した。技術の変化を見逃す老舗SIとは違い、顧客を自らAI移行へ導くことができる。
さらにBeeXのクラウド再販はAIが普及するほど使われる計算資源を扱う。ライセンス契約数の増勢が続き、運用の自動化で費用を抑えられれば、低い単位粗利でも利益総額は大きくなる。現預金と上場子会社への持分が資金繰りを支え、創業者も大きな株主として利益を共有する。長期で全社の利益率が持続的に改善する筋書きなら、今より大きい企業価値は十分考えられる。もっとも、まだ金額で確認できないAI商品の販売成功を無条件に織り込むべきではない。
慎重な見方
案件が多いことと、同じ工数を将来も請求できることは違う。Salesforce自体が設定、画面作成、データ更新をAIに委ねれば、認定技術者が何人いるかは値決めの根拠になりにくい。NTTデータにとってテラスカイは重要な協業先でも、親会社ではない。案件の配分や単価は発注側の都合に左右され、大規模パートナーほど交渉力は強い。リピート率83.1%も年間継続売上を保証する数字ではない。
mitocoが提供する画面中心の業務機能は、MicrosoftやSalesforceの標準機能とAIエージェントが直接代替しうる。独自の法定記録や他社が入手できないデータを押さえる構造はまだ見えない。仮に製品が増収でも、開発投資と償却が先行すれば親会社の利益は伸びない。AIにより作業時間が半減しても、顧客が支払う金額が同じならよいが、競合や顧客内製化が差額を奪えば、成果報酬への移行は難しい。
BeeXの伸びを本業の優良さと取り違える危険もある。AWSなどの利用料は大きな仕入れを伴う再販収入で、取扱高の増加が付加価値の増加とは限らない。クラウド事業者が直接契約を推進すれば再販率は縮む。投資先の評価益や売却益も営業上の永続利益ではなく、子会社利益には少数株主の取り分がある。経営は新技術と買収に資金を使い続け、配当性向の最低保証はない。十年先に残る資産の床があっても、その価値が少数株主へ迅速に戻るとは限らない。
どちらに重みを置いたか
国内クラウド移行、NTTデータとの共同受注、BLADEによる工程短縮は現に進んでいる。したがって高成長の上振れを切り捨てない。ただし、AIで工数が減ることは中立の数量と十年後以降の成長率に既に反映したうえで、製品の赤字履歴、再販事業の薄い利幅、少数株主持分、株式希薄化という会社固有の不確実性が残る。確率は上側31%に対し下側37%と少し下へ寄せた。中立の収益では市場時価総額に届かず、資産の床がある悲観でも現在価値の損失が大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,580 円204 億円(+ 還元の換算額還元の合計 185 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 915 円118 億円、今との差 −57.7%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,518 円454 億円 | 331 円43 億円 | +78.0% | +6.3% | 346 円45 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,471 円319 億円 | 265 円34 億円 | +26.6% | +2.5% | 602 円78 億円 |
| 中立 | 32% | 1,495 円193 億円 | 199 円26 億円 | −21.6% | −2.5% | 542 円70 億円 |
| やや悲観 | 25% | 663 円86 億円 | 110 円14 億円 | −64.2% | −10.3% | 193 円25 億円 |
| 悲観 | 12% | 627 円81 億円 | 46 円6 億円 | −68.8% | −11.3% | 81 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,580 円204 億円 | 185 円24 億円 | −18.4% | −2.1% | 1,765 円228 億円 |
今の株価時価総額 2,162 円279 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% BLADEを収益に転換し、クラウド契約を広げる 利益 31 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,518 円454 億円
AIで開発工程が短くなっても、テラスカイは顧客の業務設計やセキュリティの責任を引き受け、成果の一部を対価として守る。NTTデータ経由の金融案件と大企業の基幹システム刷新は、単純な人月請求から案件成果を売る契約へゆっくり変わる。Salesforceの有償工数は十年後も現在を超えないが、案件単価と実行利益率を維持し、認定技術者とBLADEの両方を生かす。
BeeXのAWS・Azure再販契約が現在の二倍超に育つ。AIの計算需要でクラウド利用量は増えても、仕入条件が薄利を強いるので利益率には天井がある。mitocoは既存顧客への追加機能販売で利用者を守り、画面を使う人が増えない中でも黒字事業へ変わる。製品の席数が急増する前提は採らない。
この筋書きでは、収益改善を再投資と累進配当に振り分ける。上場子会社の少数株主の取り分、AIへの追加投資、NTTデータの新株予約権行使も織り込む。十年後の営業利益は約48億円となり、技術の変化を自らの利益に取り込めた形だ。それでも強い独占企業の永続成長率を仮定しない。
- Salesforce導入・開発(ソリューション事業内訳):数量 6,000(年間の有償エンジニア稼働人月(人月、推計))× 価格 0.03(有償1人月当たり顧客請求単価(億円/人月、再販等を含む実効額))→ 売上 205 億円・営業利益 45 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.98倍、価格1.34倍。
- クラウド利用権の再販(ソリューション事業内訳):数量 2,100(BeeXのクラウドライセンス再販アカウント数(期末契約数))× 価格 0.09(1アカウント当たり年間再販売上(億円/契約年の近似値))→ 売上 192 億円・営業利益 13 億円。実利用に比例するクラウド再販型。現時点から数量2.35倍、価格1.20倍。
- AWS構築・MSP・データ整備ほか(ソリューション事業内訳):数量 425(年間の構築案件・MSP契約の当量(件/年、推計))× 価格 0.10(1案件・運用契約当量の年間実効単価(億円/件))→ 売上 43 億円・営業利益 7 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.94倍、価格1.34倍。
- mitoco・mitoco Xほか自社製品(製品事業):数量 190,000(mitocoシリーズの公表利用ユーザー数(人))× 価格 0.00(公表利用者1人当たり年間認識売上(億円/利用者年、導入費を含む))→ 売上 26 億円・営業利益 6 億円。AIエージェント代替の席課金型。現時点から数量1.00倍、価格1.15倍。
倍率:AIエージェント代替を受託の数量減・席数減とg_long名目0%に入れ、k=7.25%、g=0%だから正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1/k=13.7931倍。十年後のROEは10.9%。余剰現金80億円は営業上不要な部分として、(純利益31.4−現金利息0.014×80)×13.7931+80×戻り方0.75=時価総額約477.66億円。市場PERから倍率を採っていない。
確率:2027年上期の大型案件とBLADE試用実績が全社の標準方式へ普及する場合。ただし新AI製品の金額は未開示であり、人月と席数は現在水準を超えない。
やや楽観 22% 大型案件と再販が補い、利益体質が改善 利益 22 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,471 円319 億円
顧客はSalesforceを基幹の顧客データ基盤として使い続ける。NTTデータとの共同案件の裾野が広がり、AI駆動開発で案件納期は短くなるが、顧客の検収と統合設計は人間の責任として残る。現在より有償人月は減る一方、設計や業務改善の付加価値を売れるため、売上の落ち込みは穏やかだ。
BeeXはクラウド利用権の契約を拡大する。AWSなどの直接販売や値下げとの競争は強いが、請求代行や運用までまとめる顧客が一定数残る。製品はmitoco Xの定着で黒字を確保するものの、AIが画面操作を肩代わりするため有償席数は現在より少ない。子会社統合の費用節減効果は維持できる。
経営は新技術への投資を続けつつ、配当を段階的に増やす。NTTデータは利益目標を満たした後に新株予約権を行使し、共同営業を深める。十年後の利益水準は足元の計画を上回るが、過去の売上成長率をそのまま延長した会社にはならない。
- Salesforce導入・開発(ソリューション事業内訳):数量 5,100(年間の有償エンジニア稼働人月(人月、推計))× 価格 0.03(有償1人月当たり顧客請求単価(億円/人月、再販等を含む実効額))→ 売上 172 億円・営業利益 35 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.84倍、価格1.32倍。
- クラウド利用権の再販(ソリューション事業内訳):数量 1,700(BeeXのクラウドライセンス再販アカウント数(期末契約数))× 価格 0.09(1アカウント当たり年間再販売上(億円/契約年の近似値))→ 売上 153 億円・営業利益 9 億円。実利用に比例するクラウド再販型。現時点から数量1.91倍、価格1.18倍。
- AWS構築・MSP・データ整備ほか(ソリューション事業内訳):数量 370(年間の構築案件・MSP契約の当量(件/年、推計))× 価格 0.10(1案件・運用契約当量の年間実効単価(億円/件))→ 売上 37 億円・営業利益 5 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.82倍、価格1.32倍。
- mitoco・mitoco Xほか自社製品(製品事業):数量 171,000(mitocoシリーズの公表利用ユーザー数(人))× 価格 0.00(公表利用者1人当たり年間認識売上(億円/利用者年、導入費を含む))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替の席課金型。現時点から数量0.90倍、価格1.13倍。
倍率:AIエージェント代替を受託の数量減・席数減とg_long名目0%に入れ、k=7.25%、g=0%だから正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1/k=13.7931倍。十年後のROEは8.6%。余剰現金70億円は営業上不要な部分として、(純利益21.5−現金利息0.014×70)×13.7931+70×戻り方0.75=時価総額約335.53億円。市場PERから倍率を採っていない。
確率:NTTデータとの大型案件、内製化したBLADE、BeeXのライセンス契約が成果につながるが、工数削減分の全額は取り切れない場合。
中立 32% クラウド再販は伸びるが、人月と席が細る 利益 12 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,495 円193 億円
企業のデータ整備とクラウド移行は続くので、テラスカイは消えない。NTTデータとの協業で複雑な案件を獲得し、クラウド業務の知識も守る。ただし要件定義、画面作成、テストの大部分はAIで省力化され、Salesforce受託の年間有償人月は約3割減る。単価は品質管理の対価で上がっても、物価上昇分に届かない領域が残る。
BeeXの再販アカウントは増えるが、AWSなどの利用権は自前の製品ではない。売上は数量の増加で伸びても、仕入価格と競合の安売りに縛られ、利益率は薄いままだ。mitocoの利用者は人が画面を使わずに仕事を終えるAIエージェントに置き換わり、既存利用者の約8割が有償席として残る。サブスクの黒字化は連結を支える程度にとどまる。
再編で不採算子会社の赤字は縮む一方、東京本社や開発管理部門の費用は物価で増える。営業利益は約19億円で、2027年2月期の会社計画から長期的には下回る。継続利益と資産の価値は残るが、再投資で高いROEを維持する局面ではなくなる。
- Salesforce導入・開発(ソリューション事業内訳):数量 4,270(年間の有償エンジニア稼働人月(人月、推計))× 価格 0.03(有償1人月当たり顧客請求単価(億円/人月、再販等を含む実効額))→ 売上 142 億円・営業利益 27 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.70倍、価格1.30倍。
- クラウド利用権の再販(ソリューション事業内訳):数量 1,350(BeeXのクラウドライセンス再販アカウント数(期末契約数))× 価格 0.09(1アカウント当たり年間再販売上(億円/契約年の近似値))→ 売上 116 億円・営業利益 6 億円。実利用に比例するクラウド再販型。現時点から数量1.51倍、価格1.13倍。
- AWS構築・MSP・データ整備ほか(ソリューション事業内訳):数量 292(年間の構築案件・MSP契約の当量(件/年、推計))× 価格 0.10(1案件・運用契約当量の年間実効単価(億円/件))→ 売上 29 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.65倍、価格1.30倍。
- mitoco・mitoco Xほか自社製品(製品事業):数量 152,000(mitocoシリーズの公表利用ユーザー数(人))× 価格 0.00(公表利用者1人当たり年間認識売上(億円/利用者年、導入費を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替の席課金型。現時点から数量0.80倍、価格1.10倍。
倍率:AIエージェント代替を受託の数量減・席数減とg_long名目0%に入れ、k=7.25%、g=0%だから正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1/k=13.7931倍。十年後のROEは5.7%。余剰現金60億円は営業上不要な部分として、(純利益12.3−現金利息0.014×60)×13.7931+60×戻り方0.75=時価総額約203.07億円。市場PERから倍率を採っていない。
確率:ソリューションの契約更新と基幹系の需要は残る一方、AIが定型開発と運用の時間を減らし、再販の伸びでは全社利益が大きく増えない中心的な筋書き。
やや悲観 25% 開発の自動化と値下げが同時に進む 利益 −1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 663 円86 億円
Salesforceの標準AI機能と顧客内製化が普及し、これまで外注した画面開発や保守を企業が自分で済ませる。テラスカイは高度な移行案件を維持するが、価格競争が激しくなり有償人月は現在の55%まで落ちる。NTTデータとの案件も大きいものほど厳しく値切られ、継続率の高さが利益の防波堤にならない。
BeeXのクラウド利用権再販は契約を守るが、仕入先の直接契約と競争で実効単価がほとんど上がらない。mitocoは利用者が減り、AIとの接続機能の開発費を回収しきれず赤字に戻る。海外・量子投資も一部は売上化に失敗する。管理部門の削減は進めても固定費は残り、連結営業損益は小幅赤字となる。
初期には配当が出るが、後半は減配・無配を含めて資金流出を抑える。利益目標を早期に達成した場合はNTTデータの新株予約権が行使されるが、投じた資金も将来の赤字補填や買収に使われる。十年後は強い成長企業ではなく、現在の換金可能な資産と残存顧客の価値で測る会社になる。
- Salesforce導入・開発(ソリューション事業内訳):数量 3,355(年間の有償エンジニア稼働人月(人月、推計))× 価格 0.03(有償1人月当たり顧客請求単価(億円/人月、再販等を含む実効額))→ 売上 96 億円・営業利益 14 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.55倍、価格1.12倍。
- クラウド利用権の再販(ソリューション事業内訳):数量 1,000(BeeXのクラウドライセンス再販アカウント数(期末契約数))× 価格 0.08(1アカウント当たり年間再販売上(億円/契約年の近似値))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。実利用に比例するクラウド再販型。現時点から数量1.12倍、価格1.02倍。
- AWS構築・MSP・データ整備ほか(ソリューション事業内訳):数量 248(年間の構築案件・MSP契約の当量(件/年、推計))× 価格 0.09(1案件・運用契約当量の年間実効単価(億円/件))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.55倍、価格1.15倍。
- mitoco・mitoco Xほか自社製品(製品事業):数量 142,500(mitocoシリーズの公表利用ユーザー数(人))× 価格 0.00(公表利用者1人当たり年間認識売上(億円/利用者年、導入費を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。AIエージェント代替の席課金型。現時点から数量0.75倍、価格1.00倍。
倍率:10年後の営業利益と純利益が赤字で稼ぐ力に正の値を付けにくいため、2026年8月末の現預金と税後換金可能な投資有価証券から負債・資金拘束を引いた90億円を資産の床とする。床のPBRは今の自己資本125.6億円を分母にした0.7166倍で、10年後の自己資本170億円には掛けない。過去の市場PBRは用いず、純現金約81億円を割り込ませない。
確率:Salesforce依存、製品の赤字履歴、仕入先との交渉力の弱さから、自社独自の製品価値が十分立たない場合に起きる後退。
悲観 12% 受託商売が崩れ、製品も代替される 利益 −11 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 627 円81 億円
SalesforceがAIによる設計・開発・運用の一体サービスを普及させ、顧客は従来の外部委託先を大幅に減らす。NTTデータとの協業も発注額を守る契約ではなく、自社技術者や別のAIパートナーへの切替えで案件が失われる。Salesforceの有償工数は現在の4割未満となり、残る案件も値上げができない。
AWSなどの利用権はクラウド本体との直接契約へ流れ、BeeXの再販契約数と実効単価がともに下がる。mitocoの画面操作は汎用AIと基盤の標準機能に置き換わり、サブスク料金の値下げも迫られる。新しいAI・量子関連の買収投資を減損し、国内外の固定費削減が売上減に追いつかない。連結営業赤字は十億円台に達する。
経営は配当を止め、資金と有価証券を事業維持に使う。早期に営業利益目標を逃すためNTTデータの追加新株予約権は行使されず、既存株主の希薄化だけは避けられる。十年後の価値は利益倍率ではなく、足元の純現金と税後に売れる金融資産を、顧客前受や少数株主の権利で控除した下限に近づく。
- Salesforce導入・開発(ソリューション事業内訳):数量 2,200(年間の有償エンジニア稼働人月(人月、推計))× 価格 0.03(有償1人月当たり顧客請求単価(億円/人月、再販等を含む実効額))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.36倍、価格1.00倍。
- クラウド利用権の再販(ソリューション事業内訳):数量 650(BeeXのクラウドライセンス再販アカウント数(期末契約数))× 価格 0.07(1アカウント当たり年間再販売上(億円/契約年の近似値))→ 売上 45 億円・営業利益 0 億円。実利用に比例するクラウド再販型。現時点から数量0.73倍、価格0.90倍。
- AWS構築・MSP・データ整備ほか(ソリューション事業内訳):数量 180(年間の構築案件・MSP契約の当量(件/年、推計))× 価格 0.07(1案件・運用契約当量の年間実効単価(億円/件))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。AIエージェント代替の人月型。現時点から数量0.40倍、価格0.90倍。
- mitoco・mitoco Xほか自社製品(製品事業):数量 100,000(mitocoシリーズの公表利用ユーザー数(人))× 価格 0.00(公表利用者1人当たり年間認識売上(億円/利用者年、導入費を含む))→ 売上 10 億円・営業利益 −2 億円。AIエージェント代替の席課金型。現時点から数量0.53倍、価格0.85倍。
倍率:10年後の純損失11億円には正の利益価値を付けない。現在の現預金と税後換金可能な投資有価証券から負債・拘束資金を除いた81億円を悲観の資産の床とし、2026年2月期末の純現金約80.7億円も下回らない。今の自己資本125.6億円に対するPBRは0.6449倍で、減損後の将来自己資本75億円に倍率を掛けていない。過去の市場PBRは使わない。
確率:AIの工程代替だけでなくNTTデータとの案件喪失、再販の直販化、製品投資失敗が重なり、初期から連続赤字へ落ちる厳しい筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
Salesforce導入・開発(ソリューション事業内訳)
顧客のSalesforceを設計・導入・カスタマイズする工数請求型。NTTデータとの共同案件と保守を含み、AIエージェント代替の人月型に分類する。
| 数量年間の有償エンジニア稼働人月(人月、推計) | 価格有償1人月当たり顧客請求単価(億円/人月、再販等を含む実効額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 6,100 | 0.03 | 156 | 25 |
| 10 年後 中立 | 4,270 | 0.03 | 142 | 27 |
取り方:FY2026の報告上のソリューション売上260.20億円から内部取引約2.18億円を除き、会社開示のSalesforce関連構成比約6割を参考に、その約60.3%を導入開発関連と暫定配分した約155.58億円。公表のSalesforce構成比には製品等との区分差があり、実測の部門売上ではない。ソリューション従業員1,408人×全社技術者比率74.8%×Salesforce比率約60%×稼働率約80%×12か月≒6,100人月。請求単価は155.58億÷6,100=255万円/人月。実測請負単価ではなく、外部委託・ライセンスを含む実効単価であり、部署別人数と稼働率は非開示。業界の人月市場が名目拡大しても、AI代替の中立数量0.55〜0.75倍・価格上限1.34倍を守る。
クラウド利用権の再販(ソリューション事業内訳)
BeeXを通じてAWS・Azure・Google Cloudの利用料を仕入れ、顧客に再販・請求代行する。稼働人月ではなくクラウド利用契約が数量に近い。
| 数量BeeXのクラウドライセンス再販アカウント数(期末契約数) | 価格1アカウント当たり年間再販売上(億円/契約年の近似値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 892 | 0.08 | 68 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 0.09 | 116 | 6 |
取り方:BeeX 2026年2月期有報に実数があり、期末ライセンス再販契約892件×年間売上68.11億÷892=年約764万円/契約。期末残高を年間平均契約数の代理としているため契約単価は概算。ソリューションのうち受託工数から区別した。再販には工数課金でないクラウド消費量の成長がありAIの人月0.55〜0.75倍を機械適用しないが、AWS等の値下げと直販が価格・利幅を抑える。
AWS構築・MSP・データ整備ほか(ソリューション事業内訳)
BeeXのクラウド環境構築、スカイ365の運用監視、AI・データ整備・量子関連のコンサルなど。再販分を除き主として役務の工数課金型とみる。
| 数量年間の構築案件・MSP契約の当量(件/年、推計) | 価格1案件・運用契約当量の年間実効単価(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 450 | 0.08 | 34 | 5 |
| 10 年後 中立 | 292 | 0.10 | 29 | 4 |
取り方:連結外部売上280.56億円からSalesforce推計155.58億円・BeeX再販68.11億円・製品22.54億円を引いた34.33億円。BeeXのクラウド構築プロジェクトとMSP顧客数(2027年2月期上期にそれぞれ206件・119社)から、重複を調整した年間450契約当量を仮定し、約763万円/件と逆算。量子の収入と内部取引消去を含むため暫定値。AI代替の人月型として中立数量0.65倍、単価1.30倍とする。
mitoco・mitoco Xほか自社製品(製品事業)
Salesforce基盤のグループウェア、ERP周辺・データ連携ソフトを主に席数とサブスクリプションで販売する。AIエージェント代替の席課金型とみる。
| 数量mitocoシリーズの公表利用ユーザー数(人) | 価格公表利用者1人当たり年間認識売上(億円/利用者年、導入費を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 190,000 | 0.00 | 23 | −1 |
| 10 年後 中立 | 152,000 | 0.00 | 20 | 2 |
取り方:mitoco公式サイトが2025年12月時点の利用ユーザー19万人超を公表、FY2026製品事業売上22.54億円を19万人で除し年約11,863円/ユーザーと推計。サブスク比率89.6%で、初期導入支援やデータ連携製品も含まれるため厳密なライセンス単価ではない。年間解約率、値上げ実績、規制対応の移行年数、独自DBの証拠二つがそろわず、記録の正本型でなく席課金型として中立利用者0.80倍・単価1.10倍・g_long0%以下を採用。
リスクと懸念
AI エージェント代替
Salesforceの要件定義、画面開発、テストと保守監視は、AIが工数を直接減らす領域だ。BLADEの実証は技術対応の速さを示すが、請求方法が人月のままでは顧客が工数短縮の利益を奪う。mitocoの席数課金も画面を操作しないエージェントに圧迫される。事業の約9割がソリューションという集中度を考慮する。
Salesforce・NTTデータへの依存
他社の基盤の仕様変更やライセンス制度改定は、認定技術者の価値と開発方式を大きく変える。NTTデータとの提携は大型顧客への販路を開いたが、同社自身も受託先選定と単価の交渉力を持つ。共同案件の受注額と利益率が同時に悪化すれば、リピート率の高さは防波堤にならない。
クラウド利用権再販の薄い付加価値
BeeXのAWS等のライセンス再販はアカウント増で売上が伸びる。しかしクラウド事業者の仕入単価、直販優遇、割引条件が変われば再販の粗利は減り、顧客のクラウド支出が伸びても利益が残らない。クラウド消費額を高付加価値の自社製品売上と同じ倍率で評価しない。
製品投資・量子投資の回収
mitoco XやBLADE SAYAは継続課金の売上が将来拡大する可能性がある半面、開発費の支出と償却が先に立つ。Quemixなどの新技術事業は研究開発の成果が顧客への有償販売につながるか未確定である。会計上の営業利益率だけでなく、ソフトウエア取得支出を差し引いた現金創出を見る必要がある。
上場子会社・金融資産と非支配持分
BeeXやキットアライブの業績は連結売上に入るが、親会社以外の株主にも利益が帰属する。投資有価証券の値上がりは財務的余裕を作る反面、価格下落と減損の原因にもなる。含み益や売却益を永続利益に混ぜると、本業のROEと資本配分の評価を誤る。
希薄化と還元の約束の弱さ
NTTデータ向け67万株の新株予約権が行使されれば既存株主の利益配分は約5%薄まる。初配と増配方針は進歩だが、最低配当性向や買戻し額の数字の約束はない。買収や研究開発に資金を先行させ続ける場合、保有する余剰現金が帳簿の価値どおり株主に届かないおそれがある。
今後の分かれ目
- 2027年2月期に営業利益25億円超を達成し、NTTデータが67万株の新株予約権を行使したら
- 払込約9.38億円の現金増と、既存株主の取り分約95.1%を同時に確定させる。財務だけを評価して株数増加を忘れない。
- BLADE SAYAやmitoco Buddyの外販受注・年間継続売上が金額と顧客維持率で開示されたら
- AI対応が自社の請求収入になった事実として、人月型から製品・成果課金型へ移る比率を見直す。新商品名の発表だけでは数量を増やさない。
- Salesforce導入案件のリピート率が低下し、工数単価や稼働率も下がったら
- 中立の人月数量0.70倍より下振れする速度が速いと考え、やや悲観の重みを増す。顧客の内製化とAI標準機能の影響を確認する。
- BeeXの再販アカウント数の増加に対し、再販粗利益額も継続して増えたら
- 単なるクラウド利用料の通過だけでなく販売付加価値が残ると判断し、再販の粗利率と十年後のアカウント数を上方に見直す。
- 自社製品の年間解約率5%未満、年単位の移行障壁、法対応の値上げなど強い堀の証拠が二つ以上示されたら
- 該当する製品だけを記録の正本型として再評価し、席数の減少率と長期成長率の上限を再検討する。受託部門まで一律に強い堀とはみなさない。
- 純現金・投資有価証券が大きく減ったのに配当・自社株買いが増えなかったら
- M&Aや先行投資が株主価値を損ねた疑いとして、余剰現金の実現率と資産の床を下げ、資本配分の再投資利回りを点検する。
見ておくもの
- 受託案件の有償人月・技術者稼働率・平均請求単価とSalesforce関連のリピート率83.1%の推移
- NTTデータ共同案件の年度売上20億円目標と、その後の有償受注額・粗利益
- BeeXのクラウドライセンス再販アカウント892件→直近1,238件と、アカウント当たり粗利益
- mitoco利用ユーザー約19万人と製品事業のサブスク売上・解約率・営業利益
- BLADE SAYA・mitoco Buddyの金額開示を伴う有償導入件数と、工数削減分の契約価値配分
- 2027年2月期営業利益25億円超とNTTデータ第5回新株予約権の行使状況
- 営業CFからソフトウエア開発支出・買収を控除した現金創出、投資有価証券、非支配株主持分
- 累進配当の実行額、配当性向、自己株式取得の有無と投資案件の事後利益率
倍率と資本コストの決め方
数量を人月、クラウド契約アカウント、構築・運用契約当量、mitoco利用者数に分け、2026年2月期の連結外部売上280.56億円へつなげた。中立で人月数量は0.70倍と0.65倍、席数は0.80倍とし、価格は各型の上限内で扱った。BLADEの商品化を理由とした数量の上乗せはしていない。十年後のPERは現在や過去の株価・他社のPERで決めず、k7.25%、g_long名目0%からの正当化上限13.79倍とした。悲観は今の自己資本125.6億円に床のPBRを適用し、積み上がった未来の自己資本に掛けていない。税後換金可能な投資有価証券を含め、やや悲観90億円・悲観81億円を資産回収額として検算し、後者が直近の純現金約81億円を下回らないことを確認した。現金の戻り方0.75、子会社少数株主の取り分、NTTデータ新株予約権の希薄化を別々に反映した。2027年4月以後に始まる期の新リース基準によるBSの形の変化は、同じ家賃費用ベースに直して比較する必要がある。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3.0%と株式リスクプレミアム4.5%に、借金の評価−0.25%を反映。AI代替をkに二重に加算しない。