結論
グローバルセキュリティエキスパートは、脆弱性診断・ソリューション・運用、セキュリティ教育、人材の3つを、人月・工数で売る会社である。セキュリティ人材の不足を追い風に、ROE が3割を超えて伸びてきた。
筆者の結論は、需要は強いが、値段は桁違いに割高である。セキュリティの診断や監視は、AI エージェントが自動化しやすい人月の仕事である。人手不足で単価は物価に近づくが、減る工数を単価では補いきれない。研修と人材も同じ型である。
売上の約65%を占める診断・運用は数量0.70倍・価格1.25倍、約14%の研修は0.70倍・1.0倍、約21%の人材は0.60倍・1.20倍に置いた。中立の売上は名目で2割弱減り、実質では4割減る。純現金は薄く、悲観の床は小さい。資本コストは基本7.5%に上乗せ1.25%を足した8.75%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて37%置いた総合の価値は、今の時価総額を9割近く下回る。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無いので、楽観でも数量は1.0倍以下である。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は売掛金と現預金から負債を除いた20億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、GSXは「良い事業だが、値段が良くない」会社である。
事業の中身は評価できる。需要は10年続く見込みで、資本効率も高い。軽い設備で稼ぎ、配当を出しながら自己資本を厚くできる。経営は資本を無駄に使わず、大きな買収で価値を壊した形跡もない。
ただ、堀は深くない。診断の技術はAIで安く複製されうる。主要顧客と筆頭株主の2社への依存も重い。10年先に今の高収益が続くと確信できる事業ではない。確信が持てない事業には、安全域を厚く取る必要がある。
安全域の目で見ると、今の値段は、売上が5倍近くになる強気の筋書きでも釣り合わない。利益が3倍に育っても、倍率が成長の落ち着いた水準に戻れば、株主の手元に残る価値は今の半分に満たない。オーナーとして持ち続けたい会社ではあるが、この値段では払えない。
何で稼ぐ会社か
GSXの商売は「中堅企業のセキュリティの何でも屋」である。従業員1万人以下の中堅・中小企業を主な相手に、脆弱性診断(システムの弱点を探す検査)、セキュリティ製品の導入と運用、攻撃を受けた時の緊急対応を、一社でまとめて受ける。会社は「サイバーセキュリティ教育カンパニー」を名乗り、診断で見つけた弱点を、教育で顧客の社員に残すところまで一貫して売る。
売上は3つに分かれる。サイバーセキュリティ事業が約72億円で、診断と運用が中心だ。教育事業は約15億円で、IT企業やSIer(システム構築会社)の技術者向けに資格講座を売る。人材事業は約23億円で、2024年4月に分社した子会社CyberSTARが、セキュリティ技術者を企業へ送る。
売り方にも特徴がある。大企業向けには高い値段で売る会社が多い一方、GSXは「中堅向けに競合はいない」という立場をとる。IT企業を販売パートナーにして全国に広げる計画で、人手を増やさずに売れる範囲を伸ばす狙いだ。兼松エレクトロニクスは長く付き合う販売の窓口で、単独で売上の16%を占める。
本社は東京・港区の賃借で、年間の家賃は約1億円と軽い。大きな設備は要らず、人と講座の中身が資産という身軽な事業である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、診断・教育・運用を束ねた「ワンストップ」と、そこから生まれる顧客との信頼である。診断で弱点を見つけたその先を、教育で人に残し、運用で守り続ける。一つ頼むと他も頼みやすく、顧客あたりの売上が積み上がる。ただし、これは切り替えを不可能にする堀ではない。診断だけを他社に頼み直すことはできる。
人の質も強みだ。ホワイトハッカー(攻撃者の目で弱点を探す技術者)を抱え、教育の講座もその人たちが開く。セキュリティ技術者は日本で足りず、育てる側と使う側を兼ねる同社は、人材の面で他社より有利だ。
資本の効率は高い。前期の自己資本利益率は34%で、軽い設備と講座の高い粗利が支える。借入は小さく、自己資本比率は44%だ。
弱みは3つある。第1に規模が小さい。社員は連結で221人で、成長のペースは人を採って育てる速さに縛られる。第2に取引の偏りで、兼松エレクトロニクスが売上の16%を占める。第3に診断の定型作業は生成AIで安くなりやすく、値段を守りにくい。
筆者が重く見るのは利益の質である。人に頼る事業のため利益率は上がっても3割に届かず、強い堀とまでは見ない。堀は普通と置く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のサイバーセキュリティ市場は2025年度に約2兆円、毎年9%前後の伸びが続く。ランサムウェア(身代金を要求する攻撃)の被害が相次ぎ、法規制も強まり、対策は「やるかどうか」から「どこまでやるか」に変わった。景気が悪くなってもIT予算の中で削りにくく、循環に強い市場である。
伸びを左右するのは人手だ。経済産業省の検討会は、国内で約11万人のセキュリティ人材が足りないと指摘している。大企業は自前の部隊を持てるが、中堅・中小は持てない。ここに外から診断と運用を売る余地が広がる。同社が狙うのはまさにこの層で、需要は今後も強い。
競争は2つの顔を持つ。大企業向けには大手のシステム会社が高い値段で売る。中堅向けは、診断に特化した専門会社や、通信会社・SIerの付け足しサービスが入り乱れる。同社の「競合はいない」という認識は、足元の勢いを語るにはよいが、10年は続かない。需要が見えれば、大手が降りてくるからだ。
構造を変えうる最大の要因は生成AIである。診断の発見作業や報告書づくりはAIが得意とする領域で、道具を使いこなす会社にとっては原価の低下になるが、値段が下がる圧力にもなる。人の判断が要る設計の助言や、事故時の対応は、むしろ価値が上がる。分かれ目は、同社の仕事の中で「人の判断」の比率が高まるかどうかにある。
資本政策と M&A
配当は累進、つまり減らさず増やす方針で、配当性向35%を目安とする。今期は大幅な増配を予想している。利益の伸びに合わせて増える形で、自社株買いの実績は見当たらない。借入には、純資産を前期末の75%以上に保つことや、損益の赤字を続けないことなどの条件が付く。
大きな買収はなく、提携と小さな出資が中心である。持分法で見る関連会社にはブロードバンドセキュリティとセキュアイノベーションがあり、網屋の株式も持つ。2024年6月に丸紅I-DIGIOホールディングスと資本・業務提携を結び、野村総合研究所との資本提携は解消した。
株主の構図は独特だ。筆頭株主のビジネスブレイン太田昭和が約40%、兼松エレクトロニクスが約20%を持つ。2023年にビジネスブレイン太田昭和が一部を売り、親会社の立場から外れたが、2社で6割が動かない。少数株主にとっては、市場に出回る株が少なく株価が動きやすい反面、両社が売却に動けば需給が崩れる。TOBは、両社が同意すれば一気に進みうるが、現時点で兆しは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要は構造的に伸びる。経済産業省が約11万人の人材不足を指摘する国で、人を抱えて診断も教育も運用も出せる会社は少ない。中堅企業は、自前の部隊を持てず、外に頼るしかない。
同社の足元の数字が、それを裏づけている。前期の増収率は25%、営業利益は4割近く増えた。受注残は42億円あり、教育は売上が1.5倍、人材は1.4倍に伸びた。中計は毎年25%の増収と、毎年1ポイントの利益率の改善を掲げる。
販売パートナーが全国のIT企業に広がれば、人を増やさなくても売れる範囲は広がる。「プラス・セキュリティ」の講座でIT人材をセキュリティ人材へ変える仕組みは、同社の教育事業を資格取得の入り口に育てる。AIは診断の原価を下げ、利益率を押し上げる。
10年続けば、売上は5倍近く、営業利益は6倍を超える。利益が伸びる速さを見れば、今の倍率は高くない。
しかも同社は、資本をほとんど使わずに伸びる。設備は軽く、講座の中身と人が資産で、稼いだ現金は配当に回せる。ROEが30%を超える会社が、成長の途中で市場から高く評価されるのは自然なことだ。
慎重な見方
競合が見えない今の状況は、長くは続かない。需要が見えれば、大手のSIerや通信会社が中堅向けの安い商品を出し、診断は値段の勝負になる。診断の発見作業は生成AIが最も得意とする領域だ。人の手で売ってきた診断は、数年で値崩れしうる。
依存の問題も残る。主要顧客の兼松エレクトロニクスが売上の16%を占め、筆頭株主のビジネスブレイン太田昭和は4割を握る。この2社の方針が変われば、販路も需給も動く。
教育と人材の伸びも長くは続かない。教育は競合の研修会社と値引きになりやすく、人材は景気の悪化で単価の見直しを迫られる。成長のために人を採る固定費は先に出ていく。
売上が年25%で伸びる会社の倍率は、成長が止まれば一気に縮む。10年後に利益が3倍になっても、成長が落ち着けば、今の値段で買った人は損をする。
さらに、足元の利益率の改善は、人を安く採れた間の果実かもしれない。技術者の給与は物価と人手不足で上がり続け、診断の値段はAIで下がる。この両側から挟まれると、利益率は今の水準を保つのも難しい。
AI エージェントが診断から運用まで丸ごとこなす世界では、人月で売る会社は技術者の固定費だけが残る。純現金が薄いので、床も低い。
AI エージェントが診断から運用まで丸ごとこなす世界では、人月で売る会社は技術者の固定費だけが残る。純現金が薄いので、床も低い。
AI エージェントが診断から運用まで丸ごとこなす世界では、人月で売る会社は技術者の固定費だけが残る。純現金が薄いので、床も低い。
どちらに重みを置いたか
人材不足による需要の強さでは強気の見方が優勢だが、診断や監視を AI エージェントが自動化し、人月で売る売り方が崩れる筋書きでは慎重な見方が重い。単価の上昇は、減る工数を埋めきれない。資本コストは基本7.5%に上乗せ1.25%を足して8.75%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて37%の重みを置いた総合は、今の時価総額を9割近く下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 988 円148 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 298 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 674 円101 億円、今との差 −91.5%、 期待の年率 −16.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,740 円261 億円 | 391 円59 億円 | −73.2% | −12.4% | 170 円26 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,436 円215 億円 | 352 円53 億円 | −77.5% | −13.9% | 340 円51 億円 |
| 中立 | 36% | 1,221 円183 億円 | 324 円49 億円 | −80.6% | −15.1% | 556 円83 億円 |
| やや悲観 | 24% | 498 円75 億円 | 251 円38 億円 | −90.6% | −21.1% | 180 円27 億円 |
| 悲観 | 13% | 133 円20 億円 | 178 円27 億円 | −96.1% | −27.7% | 40 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 988 円148 億円 | 298 円45 億円 | −83.8% | −16.7% | 1,286 円193 億円 |
今の株価時価総額 7,960 円1,194 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 人手不足で単価は上がり、AI は道具に収まる 利益 16 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,740 円261 億円
セキュリティ人材の不足は続き、診断・運用の単価は物価並みに近い1.3倍まで上がる。AI エージェントは診断の道具として使われ、人月の仕事を一部置き換えるが、顧客の監査対応や実地の運用は残る。診断・運用の数量は0.8倍。研修は0.8倍、人材は0.7倍。売上は今と同じ水準を保ち、営業利益は24億円ほどになる。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。 最も大きい「サイバーセキュリティ」は、数量が今の0.81倍、価格が1.33倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.00倍(実質0.74倍)、純利益は16億円になる。
- サイバーセキュリティ(診断・ソリューション・運用):数量 1,610(契約企業数(社・推定))× 価格 0.05(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 18 億円。数量0.80倍・価格1.33倍・営業利益率24%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ教育:数量 4,830(延べ受講者数(人・推定))× 価格 0.00(1人あたり受講料(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。数量0.80倍・価格1.06倍・営業利益率34%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ人材(CyberSTAR):数量 173(派遣技術者数(人・推定))× 価格 0.12(1人あたり年間売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。数量0.69倍・価格1.27倍・営業利益率12%(AI エージェント代替の型:人月・工数(人材))
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:セキュリティ人材の不足が続けば単価は上がる。ただし AI を自社の売り物にして売上を出している開示(金額)が無いので、楽観でも数量は1.0倍以下。
やや楽観 19% 需要は続くが、診断の工数が減る 利益 13 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,436 円215 億円
診断・運用は数量0.75倍、価格1.29倍。研修は0.75倍、人材は0.64倍。セキュリティ人材の不足で単価は上がるが、AI エージェントが診断の下準備を引き受けて工数が減る。売上は今より1割弱減り、営業利益は19億円ほど。筆者は、需要の強さは認めるが、人月で売る会社が縮む工数を単価だけで補うのは難しいとみる。今の値段を支える成長は、この筋書きでも出てこない。 最も大きい「サイバーセキュリティ」は、数量が今の0.75倍、価格が1.29倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.90倍(実質0.67倍)、純利益は13億円になる。 営業利益は19億円で、今の22億円の86%に当たる。
- サイバーセキュリティ(診断・ソリューション・運用):数量 1,498(契約企業数(社・推定))× 価格 0.05(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 15 億円。数量0.75倍・価格1.29倍・営業利益率22%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ教育:数量 4,494(延べ受講者数(人・推定))× 価格 0.00(1人あたり受講料(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。数量0.75倍・価格1.03倍・営業利益率32%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ人材(CyberSTAR):数量 161(派遣技術者数(人・推定))× 価格 0.12(1人あたり年間売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。数量0.64倍・価格1.24倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:人月・工数(人材))
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.2%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 166 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:診断・運用の需要が続き、工数の減りが小さい筋書き。数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 36% 中立:売上は名目で2割弱減り、利益は3割減 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,221 円183 億円
診断・運用は数量0.70倍、価格1.25倍。AI エージェントが脆弱性診断や監視を自動化し、工数が減る。研修は0.70倍、人材は0.60倍。売上は名目で2割弱減り、実質では4割減。営業利益は16億円ほどで、今の22億円の7割にとどまる。新しく投じるお金の稼ぎは名目の成長が小さいので先で薄れる。採用と教育の人件費が固定費として先に出る。 最も大きい「サイバーセキュリティ」は、数量が今の0.70倍、価格が1.25倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.82倍(実質0.61倍)、純利益は11億円になる。 営業利益は16億円で、今の22億円の71%に当たる。
- サイバーセキュリティ(診断・ソリューション・運用):数量 1,400(契約企業数(社・推定))× 価格 0.04(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 63 億円・営業利益 13 億円。数量0.70倍・価格1.25倍・営業利益率20%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ教育:数量 4,200(延べ受講者数(人・推定))× 価格 0.00(1人あたり受講料(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。数量0.70倍・価格1.00倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ人材(CyberSTAR):数量 150(派遣技術者数(人・推定))× 価格 0.11(1人あたり年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量0.60倍・価格1.20倍・営業利益率8%(AI エージェント代替の型:人月・工数(人材))
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.8%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:診断・運用・研修・人材の数量が緩やかに縮み、単価は人手不足で物価に近づくという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% AI エージェントが診断と監視を自動化し、工数が崩れる 利益 5 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 498 円75 億円
AI エージェントが診断と監視を自動で回し、人月で売る仕事の数量は診断・運用で0.57倍、研修で0.57倍まで落ちる。価格も大手の運用サービスに抑えられる。人材は0.49倍。売上は今より3割弱減り、営業利益は7億円ほど。採用した技術者の人件費が重く、営業利益率は1割に届かない。受注の回復には時間がかかる。 最も大きい「サイバーセキュリティ」は、数量が今の0.57倍、価格が1.19倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.64倍(実質0.48倍)、純利益は5億円になる。 営業利益は7億円で、今の22億円の33%に当たる。
- サイバーセキュリティ(診断・ソリューション・運用):数量 1,148(契約企業数(社・推定))× 価格 0.04(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 6 億円。数量0.57倍・価格1.19倍・営業利益率13%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ教育:数量 3,444(延べ受講者数(人・推定))× 価格 0.00(1人あたり受講料(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。数量0.57倍・価格0.95倍・営業利益率23%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ人材(CyberSTAR):数量 123(派遣技術者数(人・推定))× 価格 0.11(1人あたり年間売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量0.49倍・価格1.14倍・営業利益率1%(AI エージェント代替の型:人月・工数(人材))
倍率:事業の純利益 5 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 4.6%。AI エージェント代替で診断・運用・研修・人材の人月・工数が AI エージェントに置き換わり、数量が縮む(単価は人手不足で物価に近い)とみて。長期の成長率 g を名目 -1.0% と置き、RONIC = k 7.75% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.8%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.4 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 5 億円 × 9.7 倍 + 余った現金 0 億円(戻り方込み)で時価総額 47 億円、全体の PER に直して 9.7 倍。
確率:AI エージェントが脆弱性診断と監視を自動化し、人月の売上が崩れる。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 13% AI エージェントが診断も運用も肩代わりし、売上は3分の1 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 133 円20 億円
AI エージェントが診断から運用までこなし、人月で売る仕事が半分以下になる。売上は今の3分の1、営業利益は赤字に沈む。技術者を抱える固定費が重くのしかかる。純現金は薄く、株主の取り分の床は売掛金と現預金から負債を引いた20億円ほどにとどまる。稼ぐ力ではなく、この小さな資産が悲観の値段を決める。顧客の信頼を保てる人材の流出が、立て直しをさらに難しくする。 最も大きい「サイバーセキュリティ」は、数量が今の0.32倍、価格が1.06倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.31倍(実質0.23倍)、純利益は-1億円になる。
- サイバーセキュリティ(診断・ソリューション・運用):数量 630(契約企業数(社・推定))× 価格 0.04(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。数量0.32倍・価格1.06倍・営業利益率0%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ教育:数量 1,890(延べ受講者数(人・推定))× 価格 0.00(1人あたり受講料(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量0.32倍・価格0.85倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:人月・工数)
- セキュリティ人材(CyberSTAR):数量 67.5(派遣技術者数(人・推定))× 価格 0.10(1人あたり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量0.27倍・価格1.02倍・営業利益率-5%(AI エージェント代替の型:人月・工数(人材))
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 20 億円(今の純現金はほぼゼロで、売掛金と現預金から借入と前受金を引いた売れる資産の目安。)を床として、今の自己資本 44 億円に対する PBR 0.46 倍で時価総額 20 億円とした。AI エージェント代替で診断も運用も研修も人材も半分以下に縮み、技術者の固定費が残る。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。
確率:AI エージェントが診断から運用まで丸ごとこなし、人月の売上が半分以下になる筋書き。やや悲観と合わせて3割台半ばにとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サイバーセキュリティ(診断・ソリューション・運用)
脆弱性診断などのコンサルティングから、製品の導入・運用、緊急対応までを中堅企業にまとめて売る。会社の売上の約65%。
| 数量契約企業数(社・推定) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.04 | 72 | 16 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 0.04 | 63 | 13 |
取り方:有報の事業部門別売上71.8億円を契約企業数で割った。契約企業数は開示がなく、中堅・中小の取引を約2,000社とした推定(1社あたり約360万円)。利益はセグメント開示がないので営業利益率22%と推定した。 数量は実物(契約企業数が今の 2 倍)。単価は物価 1.34 倍をやや上回る 1.40 倍(中堅向けの上位案件の比重が上がる)。 型は人月・工数で売る診断・ソリューション・運用。AI エージェントが脆弱性診断や監視を自動化するので工数が減り、数量0.70倍・価格1.25倍(人手不足で単価は物価並みに近い)と置いた。売上の約65%がこの型。
セキュリティ教育
IT企業やSIer向けにセキュリティの資格講座や研修を売る。前期は売上が1.5倍に伸びた。
| 数量延べ受講者数(人・推定) | 価格1人あたり受講料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 0.00 | 15 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4,200 | 0.00 | 11 | 3 |
取り方:有報の教育事業の売上15.0億円を、1人25万円の受講料の目安で割って延べ約6,000人とした推定。利益は講座の粗利が高いので営業利益率35%と推定した。 数量は実物(延べ受講者数)。受講料は物価並みに近い。 型は人月・工数で売る研修。AI エージェントを使った実習型の教材が出て講師の工数が減るので、数量0.70倍・価格1.0倍と置いた。売上の約14%がこの型。
セキュリティ人材(CyberSTAR)
2024年4月に分社した子会社CyberSTARが、セキュリティ技術者を企業に提供する。売上の約2割。
| 数量派遣技術者数(人・推定) | 価格1人あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.09 | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.11 | 17 | 1 |
取り方:人材事業の売上23.5億円を、1人あたり年間約940万円の派遣単価で割って約250人とした推定。人を貸す事業は粗利が薄いので営業利益率12%と推定した。 数量は実物(派遣技術者数)。単価は物価並み。 型は人月で売る人材(CyberSTAR)。セキュリティ人材の不足は続くが、AI エージェントが一部の仕事を肩代わりするので数量0.60倍・価格1.20倍と置いた。売上の約21%がこの型。
リスクと懸念
AI エージェントによる診断・監視・運用の自動化
脆弱性診断や監視は、AI エージェントが自動で回しやすい人月の仕事である。人手不足で単価は物価に近づくが、減る工数を補いきれない。研修と人材も人月で売る型である。売上の約65%は診断・運用、約14%は研修、約21%は人材で、10年の売上は名目で2割弱減、実質で4割減とみた。技術者を抱える固定費の重さも利益を削る。
診断の自動化による値崩れ
脆弱性診断の発見作業と報告書づくりは、生成AIが最も得意とする領域に近い。道具を取り込めば原価は下がるが、同じ道具を他社も使う。値段が下がる速さが原価の下がる速さを上回れば、同社の主力の利益が先に削られる。
筆頭株主と主要顧客への依存
ビジネスブレイン太田昭和が議決権の約4割、兼松エレクトロニクスが約2割を持ち、後者は売上の16%を占める。両社の方針や持ち株が変われば、販路と株の需給が同時に動く。株の流通量が少ないことも、株価の振れを大きくする。
競合の参入と中堅市場の価格競争
同社は中堅向けに競合がいないという認識だが、需要が見えれば、大手のSIerや通信会社が参入する。診断は仕様が似やすく、値引きで競う場面が増えうる。
人の確保と固定費
成長は技術者の採用と育成の速さに縛られる。連結の社員は221人と少なく、人が抜ければ売上が止まる。人材事業は景気が悪くなると派遣単価の見直しを迫られる。
借入の財務制限条項
借入には純資産を前期末の75%以上に保つこと、損益を2期続けて赤字にしないことなどの条件が付く。今は余裕があるが、構造的な負けの筋書きでは、投資や配当を絞る足かせになる。
情報漏えいと製品の欠陥
顧客のシステムの中を見る仕事であるため、自社の情報漏えいや、導入した製品の欠陥が起きれば、信頼を一度で失う。事故は小さな会社ほど回復に時間がかかる。
今後の分かれ目
- 診断の単価が2期続けて下がり、増収が契約企業の数だけに頼る形になったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。診断のAI化が値段に出始めた合図と見る。
- 運用や緊急対応など、人の判断が要る仕事の売上比率が目に見えて上がったら
- 楽観寄りに確率を移す。AIに代替されにくい収益が育っている印だ。
- ビジネスブレイン太田昭和または兼松エレクトロニクスが持ち株を大きく売ったら
- 需給の悪化で株価が振れうる。売却先が事業会社なら、提携の広がりとして別に見直す。
- 販売パートナーを通じた売上が、全体の2割を超えて定着したら
- 人手に縛られない成長の形が整ったと見て、中立の契約企業数を引き上げて見直す。
- 営業利益率が20%を下回って2期続いたら
- やや悲観の筋書きに近づいているとみて、人材の稼働と値引きの状況を確認する。
- 大型の買収や、大株主による非公開化の提案が出たら
- 価格と条件を見て、資本政策の前提を作り直す。
- AI エージェント向けのセキュリティ診断サービスが、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- 診断・運用の1社あたり売上の推移
- 教育事業の受講者数と単価
- 営業利益率が20%を保てているか
- 兼松エレクトロニクス向けの売上比率
- ビジネスブレイン太田昭和・兼松エレクトロニクスの持株比率
- 借入の財務制限条項の余裕
倍率と資本コストの決め方
診断・運用、研修、人材に分け、AI エージェント代替の型(人月・工数)で数量・価格・利益率を置いた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.75%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく売れる資産の床。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.86→12.9 倍・やや楽観 PER 10.86→12.9 倍・中立 PER 10.86→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。