結論
キットアライブは札幌から全国の企業へSalesforceの導入・開発・保守を提供する小さな技術会社である。筆者の結論は「割高」だ。利益を生み続けた実績と純現金約8.8億円は確かな支えだが、売上のほぼ全てを人の開発工数に依存する事業を、過去の高成長のまま10年延ばすわけにはいかない。AIエージェントが設計・設定・テストを直接こなすようになれば、顧客の業務改善需要が増えても有償人月は減りうる。
同社には競合と違う強みもある。Salesforceの認定資格を積み重ね、AppExchange向け製品開発から導入支援まで一気通貫で受けられる。2025年10月にテラスカイの子会社となり、NTTデータ北海道などとの協業が大型案件の紹介経路を広げた。2026年上期は増収を続けたものの、採用目標7人に対する8月時点の入社は2人であり、受注機会を収益化する人材面の制約は残る。
大きな論点は、会社に現金があることと、少数株主がそれを受け取れることは違うという点だ。設立以来の無配、自己株買いの乏しさ、親会社の議決権過半数、潜在株式23.9万株を併せて考える必要がある。中立では2035年の事業売上が今より少し小さくなり、利益の一部がやがて配当に回り始めると見る。それでも既存株主の希薄化と資本コストを反映した確率加重の現在価値は約8.9億円で、基準時価総額約12.8億円を約3割下回る。将来の買収期待は現時点で確定した権利ではなく、価値に上乗せしない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主として最初に問うのは、10年後も売上を作るたびに人を増やす必要があるのかということだ。キットアライブの社員は顧客の業務を理解し、作ったものの保守まで支える。企業のデータ移行や現場ごとの調整には人の責任が残るだろう。しかし、その責任と、作業の時間数を販売できることは同じではない。AIエージェントが日常の設計・実装・テストを引き受ける世界では、優秀な人材が顧客に選ばれても、請求できる工数が減る。
次に、再投資の利回りを見る。給与と研修に投じた資金が新しい顧客を生み、追加の利益を高い資本効率で回収できた歴史はある。ただし2024年の利益率低下、2026年の採用難、既存顧客への依存を考えれば、過去の高いROEを今後の増分投資にも約束された数字として使えない。人件費は物価とともに上がる。顧客が人月単価の値上げではなく成果物の値下げを求め始めた時、増分ROICが資本コストを割る可能性がある。
最後に、現金を誰が使えるのかを見る。無借金と厚い現金は破綻を遠ざけるが、利益を還元せず、保有過半数の親会社と役職員向けの新株予約権が存在する以上、少数株主は清算価値をすぐ手にできない。良い技術者会社であることと、良い価格の株式であることは別だ。業績が増えても配当を出さず、少数株主への取り分が薄まるなら安全域は小さい。AIによる省力化を顧客の利益ではなく同社の成果報酬として現金化できた時に、初めて評価を引き上げたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、顧客の営業・顧客管理業務をSalesforce上に作り直す受託サービスである。要件の整理から設定、個別開発、テスト、運用保守まで同じ技術者集団が担当する。もう一つの仕事は、独立系ソフト会社がSalesforceのAppExchangeで販売する製品の設計・開発を請け負うことである。製品の販売権や顧客データの正本を自社で持つのではなく、開発の対価を受ける仕組みだ。両者は会社開示上はクラウドソリューションという一つの収益区分にまとめられ、導入支援と製品開発支援の売上比率は公表されていない。
2025年のクラウドソリューション売上は約9.09億円で、全社の98.3%を占める。残る約0.16億円はSalesforce等のライセンス再販売だ。これは自社がSaaSを提供して得る利用料ではない。販売額を自社の恒久的な継続課金収入と見なすと、収益の質を大きく取り違える。収益は受託契約の作業進捗に応じて計上され、開発工程が短くなれば請求できる工数が縮む可能性がある。
取引の実態は親会社の存在と切り離せない。2025年はテラスカイ、NTTデータ北海道、NECソリューションイノベータ、電通総研の4社向け売上が合計で5割強を占めた。直接の利用企業と大手から再委託を受ける仕事が混在するため、Salesforce市場の成長率がそのまま同社の案件数量になるわけではない。北海道の人材を育成し、首都圏向けにも提供できる点には意味があるが、売れるのは結局、顧客が対価を認める高度な支援時間である。
優良さと弱いところ
事業の質で評価できるのは、創業以来ほぼ一貫して黒字を維持し、2022~2023年には高い営業利益率を実現したことだ。2025年末の自己資本比率は85%、純現金は約8.8億円で、有利子負債による経営危機の可能性は低い。設備投資も軽く、成長投資の主役は人材の採用と教育である。高いROEは重い固定資産を必要としない仕事の利点だが、留保した現金が増えれば将来のROEは薄くなる。
競争上の堀、つまり他社が簡単に奪えない利益の源泉は限定的だ。Salesforce MVPの人材、資格保有、上流から保守までの一体提供、顧客紹介の循環は受注に有利である。しかし、年間解約率が5%未満といった実測値、年単位の移行障壁、独自の法定記録・データベース、継続的な値上げ実績のうち、二つ以上を確認できない。Salesforceのプラットフォームを握るのは同社ではなく米Salesforceであり、顧客は別の認定パートナーにも発注できる。
競争力が弱いというより、優れた技術者集団であることと、値決め力の強い資産を所有することは違う。2026年の大型案件で一時的に利益率が低下した事実は、小規模組織での受注と人員配置の難しさを示す。AIエージェント代替は中立の工数と10年後以降の成長率に織り込み、資本コストの寿命項目で重ねて差し引かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス市場は2025年に約7.5兆円とされ、基幹系の更新、CRM、データ統合、生成AI導入が案件を生む。より狭い国内CRMアプリケーション市場について、会社が引用するIDC調査は2023年約2,498億円、2028年約3,951億円を予測している。ただし前者はシステム開発を含むサービス市場、後者はソフトウェア利用料の市場だ。同社の開発売上を後者で割って、Salesforce導入支援のシェアと呼ぶことはできない。広いITサービス市場に占める同社の売上は約0.012%で、特定Salesforceパートナー市場の信頼できるシェア開示は見当たらない。
Salesforceは国内CRMの主要な競争者で、Microsoft Dynamics、サイボウズ、ソフトブレーンなども顧客の予算を争う。導入・開発ではテラスカイ、サークレイス、フレクト、NTTデータ系、電通総研をはじめ多数のパートナーが競う。親会社テラスカイは販売窓口であると同時に、機能が重なる競争者でもある。大企業の案件を紹介してくれる利点と、価格や商流を左右される弱さが表裏になっている。
市場予測を10年間、工数需要に比例させるのは危険である。Agentforceなどの自動化技術はCRMへの投資を促すが、設定・テスト・移行の作業時間を同時に削る。中立では有償工数を2025年の約7割、単価を約1.28倍とし、市場全体の名目拡大と受託企業の取り分縮小を両立させる。ライセンスはAIによって利用IDの削減とプラン再構成が進むと見る。市場シェアは巨大市場の中で低いままとし、優位な競争者の顧客を大きく奪う筋書きは楽観にも織り込まない。
資本政策と M&A
経営者は配当よりも技術者の採用・育成を優先してきた。設立以来配当はなく、2025年決算と2026年会社予想でも無配であり、自社株買いの実行も確認できない。公開された資料では、売上・利益・ROEに関する数値付きの複数年中期経営計画、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束は見当たらない。2026年12月期の単年度会社予想は売上11.91億円、営業利益1.85億円、純利益1.25億円である。
2025年10月にテラスカイが市場買付けで保有比率を過半数に引き上げた。これは公開買付けによる完全子会社化や上場廃止の決定ではないが、関連当事者間の発注価格と少数株主利益の監視が必要になった。親会社とNTTデータの協業は事業を広げる一方、独立した販売力を弱める可能性もある。
2025年末の大株主上位10名で約85%が保有され、過去5年に増配も自社株買いもないため、溜まる余剰現金が少数株主に戻る価値は帳簿額の半分だけを認める。10年の蓄積は純利益の約8割が現金化するという粗い仮定から、還元と新株予約権の払込を調整して考える。中立で10年合計2.8億円の将来還元を想定するのは、現行方針の延長ではなく、2030年以降に方針変更するという条件付きの見込みだ。加えて最大23.9万株の新株予約権があり、行使払込金を会社側に加えても、既存株主の持分希薄化を免れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
Salesforceの導入とAgentforceの運用は、単純な画面設定から企業全体のデータ接続へと進み、顧客の業務理解がある開発会社への依存をかえって強めうる。札幌の人材を基盤に、北海道外の累計取引先を2020年の33社から2026年上期に92社へ増やした実績は、営業地域の制約を破った証拠だ。Salesforce MVPの在籍やAppExchange製品の開発経験を生かせば、大企業の複雑な案件にも進出できる。テラスカイによる子会社化とNTTデータ北海道との共同案件は紹介源を増やし、受注単価を維持できる。
純現金を抱えながら黒字を続けているため、新しい技術者の採用や研修を借金に頼らず進められる。今の時価総額に比べて、現金とその後の利益の蓄積は無視できない。親会社が株主との対話を重視し、成熟段階で配当を始めれば、持ち続けた株主の現金回収は大きく改善する。AIによる開発時間の短縮を社内の効率化に生かし、固定価格契約でも採算を維持できる可能性がある。ただしAIサービス単独の売上金額は確認できないので、強い筋書きでも人月相当数量を現在より多くしない。
慎重な見方
Salesforceの成長は、その導入パートナーの時間売りが伸びることを保証しない。AIエージェントが既存業務を読み、設定、コード、テストを生成すれば、顧客が買う成果は残っても、見積書から工数が消える。プラットフォームの機能追加はSalesforceが決め、パートナーが受け取る価格は親会社や大手元請けとの交渉で決まる。2025年売上の過半を四つの取引先に頼る規模の会社には、この変化を独力で止める力が乏しい。
収益の質も誤解されやすい。AppExchangeに載る製品を自社で保有してライセンスを反復販売するのではなく、製品を作る委託を受けるため、顧客の成功が自社の継続課金に直結するわけではない。ライセンス再販売は全社の2%未満である。親会社が発注を内製化したり、人員配置を変えたりすれば、少数株主には守れる権利が少ない。設立以来の無配と約19%の潜在株式が重なり、企業に利益と現金があっても株主一人ひとりへの価値は伸びにくい。悲観では人件費を削るより早く売上が縮み、数年間の赤字が過去の蓄積を相殺する。
どちらに重みを置いたか
生き残る企業としては前向きに見るが、10年後に今と同じ人月単価と稼働量を売れるという主張には乗れない。中立の工数減少にはAIの代替を既に反映し、悲観の確率に同じ理由をもう一度上乗せしていない。それでも上側27%に対して下側38%としたのは、親会社・大口取引先への依存、採用計画の遅れ、過半数支配下での無配という会社固有の不確実性があるためだ。純現金が悲観の下値を支えるが、希薄化した少数株主にとっては十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,223 円15 億円(+ 還元の換算額還元の合計 146 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 710 円9 億円、今との差 −30.6%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,221 円28 億円 | 322 円4 億円 | +148.3% | +10.4% | 229 円3 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,858 円23 億円 | 251 円3 億円 | +106.0% | +8.1% | 380 円5 億円 |
| 中立 | 35% | 1,206 円15 億円 | 196 円2 億円 | +36.9% | +3.5% | 491 円6 億円 |
| やや悲観 | 24% | 748 円9 億円 | 14 円0 億円 | −25.6% | −2.9% | 183 円2 億円 |
| 悲観 | 14% | 621 円8 億円 | 0 円0 億円 | −39.4% | −4.9% | 87 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,223 円15 億円 | 146 円2 億円 | +33.7% | +3.1% | 1,369 円17 億円 |
今の株価時価総額 1,024 円13 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 紹介経路を生かし高付加価値の受託を守る 利益 2 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,221 円28 億円
テラスカイとNTTデータ北海道を通じて全国から複雑なSalesforce案件が入り、同社の設計から保守までを担う能力が生きる。単純な設定やテストはAIエージェントに移るが、データ移行、権限管理、部門横断の業務設計は有償の仕事として残り、人月相当の年間請求量を2025年とほぼ同じに保つ。営業利益率は過去の最良期を超えない範囲で改善する。
単価は物価3%が10年続く世界で1.34倍に近づき、値上げというより複雑化した案件への仕事の移行で守られる。AppExchange製品の開発受託も紹介を増やすが、委託先の製品売上を自社の継続課金と取り違えない。経営が2030年頃に配当を開始し、10年累計で4.8億円を還元する。親会社による追加買付けは起こりうるものの、公開買付価格は分からず事業の価値には上乗せしない。新株予約権が全て行使されるため持分希薄化は大きいが、払込金は会社に残る。
- クラウドソリューション(Salesforce導入・製品開発支援):数量 630(顧客に請求できる開発・保守の有償エンジニア人月相当数(年))× 価格 0.02(有償人月相当当たりの売上高(億円/人月・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。工数は現在と同水準、単価1.338倍、AI単独の未開示売上は加えない。
- Salesforce等ライセンス販売(再販):数量 62.0(Salesforce Enterpriseプラン換算の年間ライセンス席数(実契約数ではない))× 価格 0.00(年間ライセンス席換算売上(億円/席・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。自社SaaSではなく再販、席数約0.99倍、価格1.15倍。
倍率:資本コストk7.25%、堀weakで増分RONICは資本コストと事業ROEの差の3分の1だけ上回る。AIエージェント代替による長期名目g_long0%を使うため正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(0.0725−0)=13.79倍が上限。2035年余剰現金16.3億円の税後利息0.2282億円を純利益から除き、現金は0.5だけ加算。現在の市場倍率は参照しない。
確率:テラスカイとNTTデータ経由の大型案件で安定した高単価を獲得する可能性はあるが、AIを自社製品の対価として計上した数字はなく、既存工数の維持自体が強い成果である。
やや楽観 18% 協業が定着し案件の質で工数減を補う 利益 2 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,858 円23 億円
Salesforceの導入拡大と、NTTデータ北海道やテラスカイからの継続的な紹介により、実装と保守の仕事が続く。上流工程の提案力を持った社員が育ち、単純な設定はAIに任せ、顧客の組織変更やシステム連携など高度な作業に人を集中させる。2025年より有償人月は減るが、開発会社としての価格交渉力は大きく損なわず、営業利益率を現在より少し高い水準に保つ。
ライセンス再販の席数はAIによってやや縮むものの、上位プランへの置き換えで売上減をほぼ埋める。親会社との資本関係は案件の取り込みに役立ち、無理な買収による希薄化も避ける。2030年以降は年間利益の一部を配当に振り向け、10年の累計還元を3.6億円と想定する。値上げの制度的な堀が成立するわけではなく、10年後以降も名目成長ゼロの成熟した技術者会社として見る。
- クラウドソリューション(Salesforce導入・製品開発支援):数量 565(顧客に請求できる開発・保守の有償エンジニア人月相当数(年))× 価格 0.02(有償人月相当当たりの売上高(億円/人月・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。有償工数は現在の約90%、名目単価は1.317倍。
- Salesforce等ライセンス販売(再販):数量 58.0(Salesforce Enterpriseプラン換算の年間ライセンス席数(実契約数ではない))× 価格 0.00(年間ライセンス席換算売上(億円/席・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。再販の年間席相当数と単価は独立に推計。
倍率:k7.25%、moat weak、AIエージェント代替後のg_long0%から正当化PER13.79倍。利息を含む純利益1.60億円から余剰現金14.8億円の税後利息0.2072億円を外し、営業事業の利益にPERを掛けた後に現金の回収見込み50%を足す。
確率:既存顧客の紹介と全国対応の実績は有力だが、工数を減らすAIの普及と人材採用の制約が同時にあるため、数量の維持までは見込まない。
中立 35% AIで有償工数が減り、現金が下値を支える 利益 1 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,206 円15 億円
顧客企業はCRMやデータ基盤への投資を続け、テラスカイとNTTデータの紹介経路も残る。しかしSalesforce上の設定、テスト、保守の一部はAIエージェントや顧客の内製チームで対応するようになる。業務変革の相談や責任ある移行支援は人が担うため受託が消えるわけではないが、2035年の有償人月相当は2025年の約7割になる。インフレと高難度案件への比重移動により単価は約1.28倍へ上昇し、クラウドソリューション売上は緩やかに減る。
人件費や外注費、本社の家賃は名目上昇するため、営業利益率は現在より低い水準に落ち着く。初期数年の受注成長とその後の工数圧縮が混在し、10年間の純利益合計は約9.08億円となる。経営が後半5年で還元方針を変更し、計2.8億円を配当すると仮定するが、現時点で会社の数字の約束はない。親会社によるTOBも計上しない。余剰現金の半分だけを株主価値として数え、役職員の新株予約権の希薄化を反映する。
- クラウドソリューション(Salesforce導入・製品開発支援):数量 445(顧客に請求できる開発・保守の有償エンジニア人月相当数(年))× 価格 0.02(有償人月相当当たりの売上高(億円/人月・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の人月型:数量445÷630=0.706倍、価格1.275倍。
- Salesforce等ライセンス販売(再販):数量 50.0(Salesforce Enterpriseプラン換算の年間ライセンス席数(実契約数ではない))× 価格 0.00(年間ライセンス席換算売上(億円/席・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。席型:席数50÷62.6=0.799倍、単価1.10倍。
倍率:AIエージェント代替でg_long0%、k7.25%なので正当化PERの上限は13.79倍。余剰現金11.8億円を事業に投じる資本から外し、税後利息0.1652億円を全社純利益0.99億円から外す。事業の利益0.8248億円×13.793倍に、返還見込み50%の現金5.90億円を足す。10年の純利益累計9.08億円の約8割を現金化し、配当2.8億円と新株予約権払込を調整した条件付きの資金計画である。
確率:2030年代にはCRMシステム自体の市場規模と有償の開発時間は分離するという中心予測。親会社の紹介を残しながらも、人月の減少が単価上昇を上回る。
やや悲観 24% 大口の案件縮小で工数単価ともに伸び悩む 利益 1 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 748 円9 億円
Salesforce自体は国内CRMに残るが、大手元請けが開発を内製化し、AIツールで運用とテストを自動化する。キットアライブは上流の設計と移行支援を残すものの、紹介案件の中でも単純工程を失う。名目単価は賃金と物価の上昇に追いつかず、案件数量も現在の6割弱まで低下する。顧客を失った部分を他のCRM製品で埋めることはできず、営業利益率は一桁へ下がる。
国内のCRMアプリケーションの利用料市場が大きくなっても、その増分はSalesforceや他の製品提供者に帰属し、同社の人月売上には残りにくい。親会社からの紹介は続くが配当は象徴的な額にとどまる。配当をほぼ止めるため累積利益が小さくても現金は中立より厚く残る。純現金がまだ多く、大型の借金や巨額ののれんがないため、事業は縮んでも金融危機には至らない。資本コスト以下のROEに対して成長のプレミアムは認めず、稼ぐ力と戻りにくい現金を分けて評価する。
- クラウドソリューション(Salesforce導入・製品開発支援):数量 365(顧客に請求できる開発・保守の有償エンジニア人月相当数(年))× 価格 0.02(有償人月相当当たりの売上高(億円/人月・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。AI代替と元請け内製化で有償工数0.579倍、価格は1.130倍。
- Salesforce等ライセンス販売(再販):数量 42.0(Salesforce Enterpriseプラン換算の年間ライセンス席数(実契約数ではない))× 価格 0.00(年間ライセンス席換算売上(億円/席・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。再販席数と受け取り単価がともに伸び悩む。
倍率:全社ROE約3.2%はk7.25%を下回るため、成長を評価せずPER上限1÷k=13.79倍。余剰現金12.6億円の税後利息0.1764億円を純利益から引いた事業利益0.3436億円に、競争激化を考慮した12.5倍を掛け、半分の現金6.3億円を加算。資産の床8.8億円以上、稼ぐ力上限約11.04億円以下の範囲に収まる。中立より儲けは少ないが、配当がほぼない分だけ現金が残る。
確率:NTTデータ北海道やテラスカイ経由の大口案件が縮めば少人数組織では代替受注に時間がかかる。事業の急消滅ではなく、資本効率の低下を中心に想定する。
悲観 14% 人月モデルが崩れ赤字と再編が続く 利益 0 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 621 円8 億円
顧客のCRM活用は続くが、実装の大半をSalesforceのAI機能と大手元請けが内製する。キットアライブは限られた移行・保守だけを請け負い、有償の工数は2025年の半分へ縮む。単価も名目で現在を下回り、物価上昇と賃上げに耐えられない。赤字に転じてから要員調整に時間がかかり、2028年以降の数年は不採算契約の終了や技術転換のための費用で過去の利益を食い潰す。
親会社テラスカイが業務をまとめるか売却を探る可能性はあるが、既に買付けが公表されたわけではなく、将来のTOB価格を当てにしない。巨額の借金がなく、余剰現金が残るため倒産には至らない。10年間の純損益は初期の黒字と中期の損失がほぼ相殺し、安価な新株予約権の払込が純資産の減少を補う。新規投資の利益率も低く、企業価値は現在の純現金の税後換金価値を超えない。配当はなく、少数株主の価値を支えるのは実際に売却可能な資産だけになる。
- クラウドソリューション(Salesforce導入・製品開発支援):数量 315(顧客に請求できる開発・保守の有償エンジニア人月相当数(年))× 価格 0.01(有償人月相当当たりの売上高(億円/人月・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。有償工数0.5倍、単価は現在以下。固定費・人員再配置の遅れを営業損失に反映。
- Salesforce等ライセンス販売(再販):数量 33.0(Salesforce Enterpriseプラン換算の年間ライセンス席数(実契約数ではない))× 価格 0.00(年間ライセンス席換算売上(億円/席・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。席数0.53倍、単価も下がる。
倍率:営業・純利益が赤字のためPERを使わず、将来利益を積み上げない現時点の自己資本9.41億円を分母とする。純現金8.8億円に債権と清算負担を相殺させた税後売却可能資産8.8億円が床となり、正当化PBRは8.8÷9.41=0.935倍。将来の巨大な自己資本に床倍率を掛けない。
確率:Salesforceエコシステムから排除される可能性は大きくないが、AIによる単純工程の消滅と、大口元請けの内製化が重なると小規模会社の固定費負担が急増する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クラウドソリューション(Salesforce導入・製品開発支援)
Salesforce導入、個別開発、保守とAppExchange向け製品開発の受託。両サービスの内訳は非開示であるため開示された一つの収益区分として扱う。AI代替類型は人月・工数売りであり、自社のSaaS継続課金ではない。
| 数量顧客に請求できる開発・保守の有償エンジニア人月相当数(年) | 価格有償人月相当当たりの売上高(億円/人月・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 630 | 0.01 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 445 | 0.02 | 8 | 1 |
取り方:2025年有報で開示されたクラウドソリューション売上908,858千円を使用。従業員63人と臨時雇用16人のうち、年間平均52.5人相当が顧客向け開発・保守に稼働すると仮定して630人月を推計し、実績9.08858億円÷630=約144.3万円/有償人月相当とする。52.5人も受託内訳も非開示なので実測人月ではなく規模を把握する代理指標であり、外部委託や固定価格契約も価格側に含む。国内ITサービス市場約7.5兆円に対する売上シェアは約0.012%である。利益1.59億円は全社営業利益約1.60億円から再販推定利益0.01億円を除いた配賦推計。AIエージェント代替の人月型を適用。
Salesforce等ライセンス販売(再販)
Salesforce等のソフトウェアライセンスを仕入れて顧客に販売する小規模な再販。自社が記録基盤を保有しているわけではない。AI代替類型は席数課金の業務SaaSへの間接的な露出である。
| 数量Salesforce Enterpriseプラン換算の年間ライセンス席数(実契約数ではない) | 価格年間ライセンス席換算売上(億円/席・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 62.6 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2025年有報の再販売15,774千円を使用。契約ID数と再販手数料率は非開示なので、Salesforce公式のEnterprise公表価格月2.1万円×12か月=年25.2万円を物差しとし、0.15774億円÷25.2万円=約62.6席相当とする。異なるプランの混合・総額計上のため、これは実際の利用ID数や市場占有率を示さない。価格参照 https://www.salesforce.com/jp/small-business/how-to-choose-plan/ 。再販事業営業利益は全社損益からの推定配賦0.01億円であり、発表セグメント利益ではない。中立の席数量0.8倍、売上単価1.1倍はAIエージェント代替の席型に従う。
リスクと懸念
AIエージェント代替
収益の98%超が人のコンサルティング、要件定義、設定、開発、保守に対する対価だ。SalesforceのAgentforceを含むAIエージェントは導入需要を刺激しても、有償人月を減らす可能性がある。中立で工数約0.71倍、長期名目成長率0%とした。AIを自社製品として販売した受注額が示されるまで、楽観でも工数増は見込まない。
親会社と大口顧客への依存
テラスカイは2025年末に議決権50.5%を保有し、同社の元請けとしても取引する。NTTデータ北海道、NECソリューションイノベータ、電通総研も主要な販売先で、2025年の上位4社で売上の5割超を占める。紹介の拡大は追い風だが、再委託条件の改定や内製化は利益率に直撃する。少数株主との利益相反にも目を配る必要がある。
新株予約権による希薄化
2025年末の潜在株式23.9万株は既存発行済株式の約19%に当たる。第1回の15万株は行使価格が低く、行使の可能性を無視できない。将来の事業価値が同じでも、既存株主の持分は基本筋で約88%、好調時には約84%まで減る。行使払込金が会社に入ることと、株主一人当たり価値が守られることを区別する。
無配と現金の滞留
利益を積み上げても設立以来配当を実施しておらず、過去5年に自己株買いも確認できない。大株主上位10名で保有が集中しているため、少数株主が余剰現金の使途を動かす力は小さい。買収や新規採用で現金が使われ、資本コストを下回る投資効率になれば、帳簿の現金1円が株主価値1円になるとは限らない。
採用と案件採算のばらつき
63人の正社員と臨時雇用16人という体制では大型案件の原価超過が全社に与える影響が大きい。2026年第1四半期に利益率が大きく下がり、8月時点の採用は目標7人に対して2人だった。人件費が物価以上に伸びても外注費・受注単価に転嫁できないと、クラウド市場全体が伸びている期間にも営業利益が減る。
競争・ライセンス価格・プラットフォーム政策
Salesforceは日本のCRM主要製品だが、Microsoft Dynamicsやサイボウズ製品などへの乗換えもありうる。導入支援の競争者は大手SIから専門パートナーまで幅広い。Salesforce本体がノーコード機能やAIの開発ツールを強化すれば、同社の差別化の源泉だった設定・開発ノウハウが標準機能に吸収され、値上げ余地を失う。
今後の分かれ目
- SalesforceのAgentforce案件の継続受注額と成果報酬比率が会社から金額で開示されたら
- 工数減だけでなく成果当たりの利益を測り直し、10年後の利益率とg_longが0%を上回りうるかを見直す。開示のない段階ではAI増収を織り込まない。
- 2026年通期売上11.91億円・営業利益1.85億円の計画を達成できなかったら
- 協業案件の成長率と原価・人員配置を切り分け、中立の営業利益率を引き下げる。単なる受注の期ずれか恒常的な単価下落かを確認する。
- 採用目標7人を達成し、年間請求人月が明確に増えたら
- 短期的な工数供給制約を緩める。ただしAI代替が成熟する2035年の数量見通しは別に検証し、採用人数だけで長期数量を増やさない。
- 配当性向・DOEの数値目標や定期的な自己株買いが公表・実行されたら
- 溜まる現金の株主還流係数を0.5から0.75、実績が十分なら1.0へ変更し、現在価値を引き上げる。親会社の意向だけで改善したと見なさない。
- テラスカイによる正式な公開買付け・完全子会社化・上場廃止方針が公表されたら
- 独立した10年評価を中止し、公表された買付条件・価格・実行確度・少数株主の選択肢を検討する。既存の確率評価には買付け期待をあらかじめ足さない。
- 営業利益率が10%を割り、親会社を含む大口4社向け売上も減り始めたら
- 顧客維持の堀が弱まり、やや悲観の工数・単価と固定費の残り方を再評価する。同時に余剰現金の毀損額を調べ、資産価値の床も更新する。
見ておくもの
- 2026年12月期の売上高11.91億円・営業利益1.85億円・純利益1.25億円の達成状況
- 四半期のSalesforce導入支援・製品開発支援の有償工数、案件単価、外注費と営業利益率
- テラスカイ・NTTデータ北海道等の大口顧客別販売額と親会社との取引条件
- 年間採用人数、技術者の稼働率、Salesforce上位認定資格と離職率
- Agentforce案件の実売上、成果報酬契約額、顧客の内製化・AI開発効率改善の開示
- 配当・自己株買いの新設、期末純現金、ストック・オプション行使株数と払込額
- 札証の適時開示におけるTOB・MBO・上場廃止予定と継続企業注記
倍率と資本コストの決め方
業績・株価・株数は添付のfactsとbriefを正とする。2025年有報の収益区分を起点に、従業員数から有償人月相当を、公式料金からライセンス席相当を推定した。数量に物価を混ぜず、人件費・外注費・家賃の上昇を利益率に反映した。AIエージェント代替は10年内の工数とその先のg_long0%に反映し、kや確率に重ねていない。PERは現在や同業の市場倍率ではなく、k7.25%とRONIC・gから導く上限13.79倍を楽観〜中立に使用した。2035年の余剰現金は純利益の約8割が現金化する仮定から還元と新株払込を調整し、税後利息を事業純利益から引き、支配・無配を踏まえ回収率50%で加えた。新リース会計基準で事務所の貸借対照表表示は変わっても経済的な家賃負担は残る。悲観PBRは将来の積上げ資本でなく2025年末の約9.41億円を分母にしている。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の計7.5%に、循環・値決め力・財務・寿命の品質調整−0.25%を加えた。