結論
チャットプラスは、企業の問い合わせ対応を自動化するチャットボットとAIエージェントを提供するSaaS企業である。筆者の結論は「割高」だ。すでにAI製品で実際の売上を生み、高い利益率も実現しているが、10年後までその利益率と顧客単価を守れるかは別の問題である。
同社の強みは、小さな組織で高い収益を上げながら、新技術へ素早く移行してきたことだ。2026年6月期の営業利益率は43.3%に達した。従来のChatPlusの契約が減少する一方、AI AgentPlusの年間経常収益は前年比54.2%増加した。顧客の求めるものが変わっても、自社製品を変化させて収益を維持できる能力は評価に値する。
しかし、競争上の堀、つまり他社に顧客を奪われにくくする仕組みは十分に深くない。2026年6月末の月次解約率はChatPlusで2.1%、AI AgentPlusでも1.7%である。さらにAI AgentPlusは外部の生成AIを利用しており、基盤モデルの進歩が差別化を助けると同時に、競合の参入障壁も引き下げる。
2036年の中立では、AI AgentPlusの契約拡大が旧来製品の縮小を補うものの、営業利益は現在と大きく変わらないと考える。現金の蓄積と株主還元を含めても、希薄化を考慮した現在の本質価値は約29億円で、提供された基準時価総額約50億円を約41%下回る。強気の成長が実現する余地は十分あるが、今の株主が払う価格には、その成功を待つための安全域が乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、チャットプラスは小さくても興味深い会社である。営業利益率が高く、借入依存は小さく、開発した製品を多数の顧客へ繰り返し提供できる。工場や大量の在庫を必要としないため、追加の契約を獲得したときの利益率は高くなりやすい。こうした性質は、長く利益を積み重ねる会社に求めたい条件に合う。
それでも、今の高いROEを10年後の保証とは考えない。企業が毎月利用料を払うことと、その契約を10年後も同じ会社へ払い続けることは違う。チャットボットは顧客情報を持つ基幹データベースそのものではない。大手の業務ソフトへ機能が吸収されれば、独立した契約を更新する理由は薄れる。毎年開発を続けないと競争力が保てない企業では、研究開発費も事実上の維持投資に近い。
注目したいのは、AI AgentPlusが単なる構想ではなく、年間5億円を超える継続収益を持つ点だ。市場が変わるときに自社製品を作り替える能力は、同社の価値を支える。ただし、生成AIモデルの所有者ではなく、その上にサービスを構築しているため、超過利益を長く独占できる証拠はまだ弱い。
オーナー利益を見る際には、必要な開発費と顧客維持費を引き、自由に使える現金が残るかを確かめる。増資後の資金と将来の留保利益が新しい収益源を生めば、現在の評価を覆す余地はある。しかし、現段階で10年先を高い確信で読めるほど、顧客の定着や価格支配力の証拠は揃っていない。事業の将来性を評価することと、安全域を持った価格を認めることは分けて考えたい。
何で稼ぐ会社か
同社は2016年設立のチャットボット開発会社である。報告上はSaaSソリューション事業の単一セグメントだが、経済性の異なるChatPlus、AI AgentPlus、FAQPlus、個別開発・導入支援、コンテンツ配信に分けて考える必要がある。2026年6月期の売上高は12.2億円で、ストック型収益が95.9%を占める。
ChatPlusは、企業サイトやECサイトに設置する有人チャット・シナリオ型チャットボットである。顧客企業は月額・年額の利用料を払い、問い合わせ対応の省人化や購入率の改善を図る。2026年6月末の契約アカウントは1,991件、年間収益は約6.37億円だった。幅広い価格帯を持つ反面、安価なプランの解約が増えている。
AI AgentPlusは、生成AIを使って質問を理解し、回答を作る高単価製品である。期末211アカウントで年間経常収益は5.34億円に達し、1アカウント当たり年間約253万円を稼ぐ。従来型ChatPlusの約32万円と大きな差がある。2026年8月に提供を始めたAI AgentPlus Proは、Salesforceやkintoneなどとの連携によって、回答後の顧客情報更新や通知まで自動化する。単なるチャット画面の提供から、業務を実際に処理するサービスへの移行が狙いである。
FAQPlusは、企業のよくある質問を管理し、記事作成や更新をAIで支援する製品である。期末18アカウントと規模は小さいが、AI AgentPlusとの情報連携による追加契約を狙う。もっとも、クロスセル実績は同時点で14件にとどまり、広い顧客基盤へ定着したとはまだ言えない。
残る収益には、顧客別の設定・開発を請け負うフロー型収益と、2021年に取得したコンテンツ配信事業がある。前者は人の作業に依存し、後者はWeb媒体向けに占いなどを供給する。全体として、営業・開発・顧客支援を少人数で担い、AWSとOpenAIの技術を組み合わせて製品を運営する構造だ。設備が軽いことは高い資本効率の源泉だが、主要な技術基盤を自社で支配しているわけではない。
優良さと弱いところ
収益の質は、売上構成だけを見れば優れている。毎月の契約から売上が積み上がり、2026年6月期には売上総利益率75.1%、営業利益率43.3%を実現した。営業キャッシュフローも約4.15億円あり、会計利益だけでなく現金を稼いでいる。従業員22人でこの規模の収益を生み出していることは、軽い事業構造の証拠である。
ただし、利益率の改善をすべて永続的な競争力と考えるのは危険だ。2026年6月期には、過去の事業譲受に伴うのれん償却の終了が販管費の減少に寄与した。研究開発費、営業人員、顧客対応、外部AI利用料が今後も現在の売上比率に収まるとは限らない。増分の投資が高い利益を生むかどうかは、AI AgentPlusの導入拡大後に検証する必要がある。
製品には使いやすさ、幅広い料金体系、国内企業に適したサポートという強みがある。BOXILの導入関与者調査でもChatPlusの回答比率は13.53%で首位だった。ただし、これは売上高シェアではなく、調査対象者の導入経験に基づく数字である。企業内の重要な記録を独占的に保管する仕組みでも、法規制によって長期間の利用を義務付けられる仕組みでもない。
月次解約率1.7%のAI AgentPlusでさえ、単純に年間換算すると顧客の約19%が入れ替わり得る。解約率が年5%未満という強い堀の証拠には届かない。ISO27001認証やOpenAIとのゼロデータ保持契約は信用を支えるが、競合に模倣できない独占的な資産とは異なる。現時点では、製品開発力を評価しつつも、堀は弱いと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の大きな背景は、日本企業の人手不足と問い合わせ業務の自動化である。デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査を引用した会社資料では、国内のテキスト型自動対話システム市場は2024年度182億円から2030年度508億円へ拡大する見通しだ。別のITR調査は定義の違いから2028年度230億円としており、市場規模には調査対象の差がある。将来の数量を考える際に、異なる市場予測を無条件に合算してはならない。
同社の期末ARR12.14億円は、2024年度の182億円という市場規模の約6.7%に相当する。ただし両者は年度と集計範囲が異なるため、これは厳密な売上シェアではなく規模感の比較である。2025年4月のBOXIL調査ではChatPlus13.53%、OfficeBot11.00%、IZANAI8.39%、Agentforce Service7.61%、Zendesk7.35%という導入経験に基づく構成だった。高い認知度は確認できるが、AIエージェント市場で同じ地位を確保できるとは限らない。
競争相手にはPKSHA、KARAKURI、Zendesk、Salesforce、Microsoft、Intercomなどがいる。とくにSalesforceやMicrosoftは、チャットを単独製品として売るだけでなく、CRMや業務ソフトの内部機能としてAIエージェントを組み込める。顧客にとって、追加のチャットボット契約を結ぶ必要性そのものが薄れる可能性がある。
会社が引用する国内AIエージェント市場予測は、2026年度1,850億円から2030年度9,950億円への成長を見込む。しかし、この数字には顧客対応以外の業務自動化も含まれる。同社が狙える市場をそのまま9,950億円と考えるのは過大だ。成長機会の大きさと競争の激しさは表裏一体である。
2036年の中立では、問い合わせの自動化需要は残る一方、独立した操作画面や従来型チャットボットの価値は下がると考える。生成AIによる自然な対話が標準機能になれば、顧客はチャットの件数ではなく、解決率、成約率、処理の正確さに対して支払う。チャットプラスが業務処理まで担う製品への転換を成功させるかどうかが、シェアの行方を決める。
資本政策と M&A
経営はこれまで大きな設備を持たず、製品開発と顧客獲得を優先してきた。2021年にはネットシーズからコンテンツ配信事業を譲り受けた。この会社は前代表取締役が設立した会社であり、関連当事者に近い取引については価格の妥当性と将来の資本配分を丁寧に点検したい。足元ではのれん償却が終了しているが、買収の成否を長い実績から判断するには資料が不足している。
2026年の新規上場では、公募と第三者割当によって合計約8.17億円を調達した。2026年9月の成長可能性資料は、資金使途として開発・研究3.30億円、人材2.25億円、販売促進2.50億円、合計8.05億円を示した。2036年の価値において、この現金を無条件に余剰資金とは見なさない。今後の利益率と顧客獲得費用から投資の成果を判断する。
会社の2027年6月期予想は売上高13.69億円、営業利益5.56億円、純利益3.59億円である。一方、2028年以降の売上高・営業利益・ROEを拘束する数値目標については、2026年9月の成長資料に数字の約束なし。営業支援と顧客対応の周辺領域を広げる構想はあるが、将来の大型買収を成長の前提にはしない。
株主還元については2026年6月期の配当性向3.5%から、2027年6月期には12.1%へ高める予定だ。ただし、長期の配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束なし。大株主の影響力も大きく、増配方針だけで余剰現金がすべて株主に戻ると考えるのは早い。成長投資と株主還元の双方について、支出額よりも投資後の収益と現金還元の実績を追うべきである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI AgentPlusの成長は、単なる将来の期待ではなく、すでに実現した製品の移行である。2025年6月末の136アカウントが2026年6月末には211へ増え、ARRは3.46億円から5.34億円へ伸びた。従来型ChatPlusの減少分を高単価製品が補い、全社の売上と利益が増加している。業務の自動化がさらに進めば、1社当たりの利用金額も高まる余地がある。
AI AgentPlus Proは、回答した後のCRM更新や通知、メール送信まで処理する。これは単なる画面の置き換えではなく、人間が行っていた作業を製品へ取り込む取り組みだ。すでに販売実績のあるAI AgentPlusを起点として、少人数の開発組織でも契約件数を大きく増やすことは考えられる。顧客が労働時間の削減という効果を確認できれば、月額料金以外の成果に応じた料金体系へ移る余地もある。
2026年時点でAI AgentPlusの契約は211件しかない。会社資料で引用される国内市場規模と比べれば、開拓できる企業はなお多い。ChatPlusの知名度や既存顧客との関係は、新しいAI製品の販売にも活用できる。FAQPlusと連携することで、導入後の運用負担を減らし、解約を抑えられる可能性もある。
さらに、現在の少人数体制は固定費が軽い。新規契約が増えれば利益が急増する構造をすでに示している。上場時の資金を開発と販売にうまく投じ、外部AIの単価低下を利益として取り込めれば、2036年には現在を大きく上回るオーナー利益を生む企業になるだろう。
慎重な見方
チャットボットは、生成AIによる代替が最も速く進む業務ソフトの一つかもしれない。従来型ChatPlusの期末アカウントは2025年の2,182から2026年の1,991へ減った。AI AgentPlusへの移行も一因だが、顧客が追加の製品を必要としなくなる可能性を軽視できない。AI機能を自社のCRMへ直接組み込めるようになれば、単独契約の必要性はさらに減る。
MicrosoftのCopilot StudioやSalesforceのAgentforceは、顧客の既存システムと一体で提供できる。ZendeskやIntercomも問い合わせ対応を基盤製品の中で自動化している。チャットプラスの価格や機能が優れていても、顧客がすでに使っているシステムの付属機能との比較では、独立製品としての販売費用と解約リスクが重い。
月次解約率はAI AgentPlusでも1.7%ある。新規契約の獲得を止めれば、契約基盤は速やかに縮む水準だ。顧客の重要な記録を独占しているわけではなく、導入から解除までの手間も基幹システムほど大きくない。顧客企業がデータを移せば、次のシステムを選ぶことができる。
利益率にも懸念がある。外部の生成AIを使う以上、AIの利用量が増えたときの原価や、基盤モデル提供企業の料金改定を完全には支配できない。競争が激しくなれば、値下げと開発費増加が同時に進み得る。2026年の利益率改善にはのれん償却終了の影響もあり、現在の高さを長期の基準にするのは危険である。
資本面では未行使のストックオプションがあり、上場後の株主は希薄化も考慮しなければならない。成長投資に資金を使っても競争力が強まらなければ、利益は減り、蓄積した資本の利回りも低下する。高成長の会社が10年後には普通の小規模ソフト会社になる可能性は十分にある。
どちらに重みを置いたか
高単価のAI AgentPlusで実際に年間5億円超の継続収益を得ているため、将来の成長余地は認める。ただし、月次1.7%の解約率と大手業務ソフトへの機能統合を考えると、長期の独占的な利益を認めるには証拠が足りない。確率は楽観側32%、中立30%、悲観側38%とし、やや下側へ寄せた。これはAIリスクを確率でもう一度大きく控除したものではない。中立の数量と価格にすでに置換圧力を反映し、確率の差は製品移行や販売拡大が成功するかという会社固有の実行不確実性を表している。現状では慎重な見方が優勢である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,278 円53 億円(+ 還元の換算額還元の合計 144 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 705 円29 億円、今との差 −35.1%、 期待の年率 +2.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,254 円136 億円 | 317 円13 億円 | +228.8% | +13.5% | 428 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,898 円79 億円 | 211 円9 億円 | +94.3% | +7.3% | 422 円18 億円 |
| 中立 | 30% | 1,174 円49 億円 | 137 円6 億円 | +20.7% | +2.0% | 393 円16 億円 |
| やや悲観 | 25% | 510 円21 億円 | 74 円3 億円 | −46.2% | −6.3% | 146 円6 億円 |
| 悲観 | 13% | 216 円9 億円 | 32 円1 億円 | −77.2% | −14.4% | 32 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,278 円53 億円 | 144 円6 億円 | +30.9% | +2.9% | 1,422 円59 億円 |
今の株価時価総額 1,086 円45 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% AIエージェントへの転換が成功する 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,254 円136 億円
AI AgentPlus Proの業務処理機能が顧客企業に定着し、問い合わせからCRM更新までを一括して担う製品へ発展する。単独のチャット画面よりも、担当者の作業時間を削減する効果が評価されるようになる。生成AIモデルの性能向上を迅速に製品へ取り込み、導入企業の成功事例が新規契約の獲得につながる。
AI AgentPlusの年間平均契約は1,000件へ拡大し、年間単価も上がる。これは現在の有料契約とARRが確認できる製品の拡大であり、販売実績のない将来の架空製品に売上を割り振るものではない。従来型ChatPlusの件数はわずかに減るが、上位プランへの移行で収入を維持する。FAQPlusと個別開発もAI製品の導入を支える。
Microsoft、Salesforce、Zendeskとの競争は続くが、国内企業向けの運用支援と外部システム連携が差別化に役立つ。営業利益率は約40%を保ち、資本効率の高い事業となる。小規模な技術企業の買収はあり得るが、大型買収による売上を前提にしない。上場で調達した資金の投資効果が高く、成長と株主還元の両立が進む10年間である。
- ChatPlus・従来型チャットボット:数量 1,850(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.00(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。契約件数は現在の期中平均の0.89倍。上位プランの比率上昇で単価1.13倍。従来型だけを成長源にしない。
- AI AgentPlus・AIエージェント:数量 1,000(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.03(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 31 億円・営業利益 13 億円。自社AI製品のARRと有料契約の実績を起点に、業務処理を伴う高単価契約へ移行。今の期中平均の契約約5.4倍。
- FAQPlus・FAQ管理:数量 30.0(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.03(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI AgentPlusとの連携によるクロスセルで契約を獲得。独立した巨大市場としては扱わない。
- 個別開発・導入支援・AXソリューション:数量 25.0(年間の個別開発・導入案件数・推定件)× 価格 0.05(1案件当たり平均売上・億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。個別導入支援は増えるが、人月型の収益性を高く評価せず、製品収益とは分ける。
- コンテンツ配信サービス:数量 9.0(年間の媒体向け契約・提供単位数・推定件)× 価格 0.03(1契約単位当たり年間売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約数は緩やかに減り、名目単価上昇で収入を維持する。
倍率:資本コストk7.75%、2036年以降の名目g0%。事業のROEは高いが、弱い堀のため新規投資の超過利回りの残存割合は1/3。gが0%なので、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=12.90倍となる。AIエージェント代替をg_longに反映済みであり、寿命による追加割引はしない。2036年の余剰現金28億円には戻り方0.75を適用し、利息相当0.392億円を純利益から外す。時価総額は(10.70-0.392)×12.9+28×0.75=約154億円。
確率:AI AgentPlusに既にARR5.34億円の販売実績があり、顧客数と単価の拡大余地はある。ただし2036年までに現在の約5倍のアカウントを確保し、MicrosoftやSalesforceとの競争でも利益率を守る必要があるため、低めの確率とする。
やや楽観 20% AI製品が成長し高収益が続く 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,898 円79 億円
AI AgentPlusが問い合わせ対応の標準的な選択肢の一つとして認知される。ChatPlusの安価なプランからの移行が進み、既存顧客への上位製品販売と新規のAI契約によって年間経常収益が増える。業務処理の自動化は一定程度成功するが、顧客企業のすべてのシステムを統合するほどの独占的な立場にはならない。
契約企業は徐々に高単価の製品へ移る。AI AgentPlusの期中平均アカウントは550件となり、現在より増える。FAQPlusも追加契約を獲得する。ただし、AIモデル自体のコスト低下は競争相手にも利益をもたらすため、製品価格が物価上昇率どおりに上がり続けるとは考えない。
営業利益率は約39%で安定する。研究開発と営業人員への投資は続くが、既存製品の収益が固定費を支える。M&Aは周辺技術や人材の獲得に限定され、大きなのれんを抱える事態は避けられる。増資後の自己資本には利益が積み上がり、余剰現金の一部が配当や自社株買いで戻る。AIへの適応能力が株主の利益につながる筋書きである。
- ChatPlus・従来型チャットボット:数量 1,780(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.00(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。契約件数は0.85倍。低価格契約が減る一方、上位契約の比率上昇で価格1.12倍。
- AI AgentPlus・AIエージェント:数量 550(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.03(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 15 億円・営業利益 7 億円。既に販売実績のあるAI AgentPlusが拡大し、業務連携を伴う高単価契約も増える。
- FAQPlus・FAQ管理:数量 30.0(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.03(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。既存顧客への追加販売が進むが、単独の大きな収益源にはならない。
- 個別開発・導入支援・AXソリューション:数量 12.0(年間の個別開発・導入案件数・推定件)× 価格 0.05(1案件当たり平均売上・億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。個別支援の増加を見込むが、工数型であり利益率は製品事業より低い。
- コンテンツ配信サービス:数量 8.0(年間の媒体向け契約・提供単位数・推定件)× 価格 0.02(1契約単位当たり年間売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。配信契約の減少と名目単価上昇がほぼ相殺する。
倍率:k7.75%、g_long0%。ROEは約11%で資本コストを上回るが、10年より先の実質成長は認めず、正当化PERは1/k=12.90倍。弱い堀の残存割合1/3とAIエージェント代替を反映済みである。余剰現金23億円から税後利息相当0.322億円を利益から外し、現金の戻り方0.75を適用する。時価総額=(5.95-0.322)×12.9+23×0.75=約89.85億円。
確率:AI AgentPlusは既に売上の大きな柱となり、新機能を売る営業基盤がある。一方、大手の既存業務ソフトとの競争と開発人員の制約を考え、楽観より低い普及水準にとどめる。
中立 30% AI移行は進むが大手との競争で利益が伸び悩む 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,174 円49 億円
問い合わせの自動化は10年後も企業に必要とされる。しかし、顧客はチャットボットという単体製品より、既存のCRMや社内システムの中で使えるAI機能を重視するようになる。ChatPlusは使いやすさと国内向けサポートを保つが、低価格プランを中心に契約数が減る。高価格帯への移行で単価は維持できても、物価に比例する値上げは難しい。
AI AgentPlusは2036年までに年間平均360アカウントへ拡大する。現在の期中平均186件に対して約1.94倍である。これはAI AgentPlusが既に年間5億円超のARRを持つことを根拠とした、新製品への移行による数量増加であり、従来型の操作画面SaaSと同じ契約数成長を認めたものではない。FAQPlusは競争と機能統合によって伸び悩み、個別開発は人手による作業の一部がAIに置き換わる。
Microsoft、Salesforce、Zendeskとの競争によって営業と研究開発の負担が増える。外部AIの利用料は技術進歩で下がる可能性があるが、その利益の一部は顧客への値下げに使われる。営業利益率は約35%へ下がり、当期純利益は2026年から大きく増えない。
買収による大きな上振れは見込まず、自己資本には留保利益が積み上がる。事業は生き残るが、資本効率は上場前ほど高くない。継続的に稼ぐ小規模SaaS企業として存続するものの、独占的な価格支配力を持つ企業にはならない。
- ChatPlus・従来型チャットボット:数量 1,680(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.00(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替の操作画面型SaaS。実質数量0.81倍、名目単価1.10倍で、10年の物価1.34倍を下回る。
- AI AgentPlus・AIエージェント:数量 360(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.03(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。販売済みAI製品の移行・新規導入が続く一方、大手との競争で平均単価は現在並みにとどまる。
- FAQPlus・FAQ管理:数量 12.0(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.03(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。編集画面型SaaSとして数量0.84倍、価格1.09倍。CRM内蔵機能への代替を考慮する。
- 個別開発・導入支援・AXソリューション:数量 5.0(年間の個別開発・導入案件数・推定件)× 価格 0.05(1案件当たり平均売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月・工数型。数量0.71倍、価格1.13倍。
- コンテンツ配信サービス:数量 6.0(年間の媒体向け契約・提供単位数・推定件)× 価格 0.02(1契約単位当たり年間売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。生成AIで代替しやすい情報・コンテンツ供給。契約数量0.55倍、単価1.20倍。
倍率:中立のROEは3.6÷45.1=約8.0%、kは7.75%。弱い堀の残存割合1/3を用いるとRONICは約7.83%。しかし、10年より先の名目成長率はAIエージェント代替と価格競争を反映して0%であり、正当化PER=(1-0/RONIC)/(0.0775-0)=12.90倍となる。現金の蓄積16億円の税後利息0.224億円を純利益から外し、戻り方0.75を適用する。時価総額=(3.60-0.224)×12.9+16×0.75=約55.55億円。
確率:AI AgentPlusの成長実績は評価する一方、従来型ChatPlusの期末契約が減っている。大手CRM・業務ソフトのAI機能統合による価格圧力と、自社エージェント販売の継続を同時に織り込んだ中心シナリオとする。
やや悲観 25% AI製品も値下げ競争に巻き込まれる 利益 2 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 510 円21 億円
MicrosoftやSalesforceが、顧客の既存システムから直接AIエージェントを利用できる環境を整える。企業は複数のチャット製品を契約する必要がなくなり、ChatPlusの既存契約が減る。AI AgentPlusも競合する機能が標準搭載されるため、新しい顧客の獲得が難しくなる。
ChatPlusの契約は期中平均1,500件まで減る。AI AgentPlusの契約も200件にとどまり、現在より大きく増えない。高単価契約の解約を補うために新規顧客向けの料金を引き下げ、価格競争が利益率を圧迫する。FAQPlusの独立した需要は弱まり、個別開発ではAIによる工数削減の利益が顧客へ移る。
会社は研究開発と営業支援を続けるが、売上高が減るため固定費の負担が重くなる。営業利益率は約23%へ低下する。過去に持っていた高収益性は残らないものの、継続顧客と一定の現金収入があるため赤字にまでは転じない。
大規模なM&Aは行わず、余剰資金を事業維持と開発に充てる。配当は利益の減少に合わせて縮小する。事業を失うわけではないが、高いROEと大きな成長余地を持つ会社としての地位を失う。
- ChatPlus・従来型チャットボット:数量 1,500(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.00(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。顧客企業の統合・解約が進み、数量0.72倍。価格も10年で1.03倍にとどまる。
- AI AgentPlus・AIエージェント:数量 200(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.02(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。大手AIエージェントが普及し、契約獲得は停滞。単価も現在から下がる。
- FAQPlus・FAQ管理:数量 10.0(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.02(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。他社の業務ソフト内蔵機能に代替される。
- 個別開発・導入支援・AXソリューション:数量 4.0(年間の個別開発・導入案件数・推定件)× 価格 0.05(1案件当たり平均売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。受託件数は減り、専門人材を維持するための費用で利益が消える。
- コンテンツ配信サービス:数量 6.0(年間の媒体向け契約・提供単位数・推定件)× 価格 0.02(1契約単位当たり年間売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。他社の生成AIコンテンツが競争相手となる。
倍率:事業のROEは約4.1%でk7.75%を下回るため、2036年以降の成長による超過価値を認めない。長期g0%の稼ぐ力の上限は1/k=12.90倍。現金8億円の税後利息相当0.112億円を利益から控除し、戻り方0.75を適用する。時価総額=(1.52-0.112)×12.9+8×0.75=約24.16億円。過去のPBRの底は使っていない。
確率:大手業務ソフトへのAI統合が速く進み、AI AgentPlusも独立した顧客契約を増やせない筋書き。製品の技術優位が限定的で、月次解約率が低くないため、相応の確率を認める。
悲観 13% 独立チャットボットが構造的に不要になる 利益 0 億円 · PBR 1.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 216 円9 億円
2036年には顧客企業の主要な業務システムそのものがAIエージェントを備え、単独でチャットボットを導入する理由が薄れる。Microsoft、Salesforce、Zendeskなどが会話、顧客情報の更新、問い合わせ履歴の管理を一体で提供し、チャットプラスの追加的な価値を小さくする。
ChatPlusの契約は900件まで減り、AI AgentPlusも100件に縮小する。AIエージェントの機能自体は普及しているが、その利益を同社が獲得できなくなる。FAQPlusは他社の知識管理システムへ統合され、個別開発にも価格競争が波及する。全社売上は現在の半分を下回る。
研究開発費と顧客サポート費を十分に削れず、営業利益は小幅赤字になる。高単価顧客が離れ、顧客基盤を守るための値引きも必要になる。成長投資の一部は回収できず、ソフトウエアなどの減損が発生する。自己資本には期間前半の利益が残るが、投資の損失によって大きく削られる。
大型買収による救済や高い株価での売却は期待しない。現金と換金可能資産から負債、顧客への契約履行、運転資金を控除した部分が最後の下支えとなる。事業の永久的な成長価値ではなく、残存資産を中心に測る筋書きである。
- ChatPlus・従来型チャットボット:数量 900(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.00(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。従来型契約の数量は0.43倍。AI内蔵業務ソフトへの代替によって価格もわずかに下がる。
- AI AgentPlus・AIエージェント:数量 100(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.02(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI AgentPlusの契約も大幅減。技術が普及しても、収益の大半が大手プラットフォームへ移る。
- FAQPlus・FAQ管理:数量 7.0(期中平均の有料契約アカウント数・件)× 価格 0.02(1アカウント当たり年間認識売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。独立FAQシステムの需要が縮小する。
- 個別開発・導入支援・AXソリューション:数量 3.0(年間の個別開発・導入案件数・推定件)× 価格 0.04(1案件当たり平均売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件が減少し、維持した人員の費用を回収できない。
- コンテンツ配信サービス:数量 5.0(年間の媒体向け契約・提供単位数・推定件)× 価格 0.02(1契約単位当たり年間売上・億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。生成AIによるコンテンツ自動生成で顧客契約が減少する。
倍率:赤字のため永久利益のPERを適用せず、純現金と換金可能資産の税後・負債控除後の床10.2億円を用いる。PBR1.36倍は過去の谷の倍率ではなく、今の自己資本約7.5億円に対して資産の床10.2億円を表す換算値である。2036年の自己資本22.4億円に1.36倍を掛けたものではない。7.5×1.36=10.2億円。業績が構造的に崩れた際に留保利益を追加的な市場価値として評価しない。
確率:Microsoft、Salesforceなどの業務システム統合型AIエージェントが顧客対応を標準機能にし、独立チャットボット契約が大幅に縮小する場合。AI AgentPlusの既存実績があるため必然とは考えないが、製品技術の変化が速く、構造的な敗北の可能性を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ChatPlus・従来型チャットボット
企業のWebサイトやECサイトに設置する有人チャット、シナリオ型チャットボット及び関連する管理機能。主に顧客企業の年間利用アカウントから収益を得る。
| 数量期中平均の有料契約アカウント数・件 | 価格1アカウント当たり年間認識売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2,082 | 0.00 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,680 | 0.00 | 6 | 2 |
取り方:会社の2026年6月期4四半期のアカウント数2,172、2,128、2,037、1,991の平均は2,082件。各期ARPAは約32万円で、期末ARRは6.37億円。年間認識売上は四半期ARRの平均6.74億円を基礎に、全社開示のストック型売上比率95.9%との整合を取って約6.65億円と推定した。利益は製品別に非開示であり、全社営業利益5.3億円をサービスの収益性に応じて暫定配分した。AIエージェント代替の分類は『席・操作画面が価値の中心のSaaS』である。
AI AgentPlus・AIエージェント
生成AIを利用して自然言語の問い合わせに対応する高単価SaaS。AI AgentPlus ProではCRM更新や通知など業務処理の実行まで自動化する。
| 数量期中平均の有料契約アカウント数・件 | 価格1アカウント当たり年間認識売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 186 | 0.03 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 360 | 0.03 | 9 | 4 |
取り方:会社開示の四半期アカウント数161、175、197、211の平均を186件とした。期末ARPAは年間253.3万円、ARRは5.34億円で、四半期ARRの平均は約4.78億円。年間認識売上は全社ストック型売上との整合から4.72億円と推定した。AI AgentPlusは既に有料契約と年間5億円超のARRが確認できるため、AIを自社の商品として売れている製品と分類する。ただし記録の正本ではなく、外部AIモデルを利用した顧客対応基盤である。製品別営業利益は非開示のため推定配分した。
FAQPlus・FAQ管理
企業のFAQ記事の作成・更新・管理を行うSaaS。AI AgentPlusとの連携により問い合わせ内容とFAQの整備を支援する。
| 数量期中平均の有料契約アカウント数・件 | 価格1アカウント当たり年間認識売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 14.3 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 0.03 | 0 | 0 |
取り方:2026年6月期の四半期アカウント数12、12、15、18の平均14.25件を使う。期末ARRは4,200万円、期末ARPAは年間236万円。期中平均アカウント数と売上構成比から年間認識売上約3,400万円と推定する。利益は製品別非開示のため推定配分。AIエージェント代替では、FAQ編集画面・運用機能が価値の中心のSaaS型とする。
個別開発・導入支援・AXソリューション
顧客固有の設定、追加機能の開発、AIエージェントの導入や業務フローへの接続を支援する。人の作業を伴う受託型の収益。
| 数量年間の個別開発・導入案件数・推定件 | 価格1案件当たり平均売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 7.0 | 0.04 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 0.05 | 0 | 0 |
取り方:2026年6月期の決算資料でフロー型収益は約2,800万円、売上構成比2.3%。案件数と単価の直接開示は見つからないため、年7件、1件400万円という再現可能な仮定で表示する。会社は2026年8月にAXソリューションを開始しており、現時点の受託案件数を実績として主張するものではない。AIエージェント代替では人月・工数型とする。
コンテンツ配信サービス
Web媒体向けに占いなどのコンテンツを継続配信する小規模事業。2021年に事業譲受で取得した。
| 数量年間の媒体向け契約・提供単位数・推定件 | 価格1契約単位当たり年間売上・億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 11.0 | 0.02 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.02 | 0 | 0 |
取り方:2026年有報ではコンテンツ配信サービスが全社売上の1.8%と開示されており、約2,200万円に相当する。顧客契約数や単価の開示はないため、年11契約単位、各200万円と仮定した。独自媒体の広告枠販売ではなく、他社媒体への情報・コンテンツ供給に近い。AIによるコンテンツ生成と検索結果の要約による価格・数量圧力を見込む。
リスクと懸念
AIエージェント代替
従来型ChatPlus、FAQPlus、個別開発はAIエージェントによる代替の影響を受ける。ChatPlusの中立数量は現在の0.81倍、価格は1.10倍に抑え、人月型の開発案件も0.71倍とした。一方、AI AgentPlusは既に実際のARRがあるため別扱いで成長を認める。ただし、MicrosoftやSalesforceが自社の業務基盤にAIを標準搭載すれば、同社の製品も不要になり得る。2036年以降のg_longは0%とし、同じ理由を資本コストの寿命に重ねていない。
月次解約率と単価競争
2026年6月末の月次解約率はChatPlus2.1%、AI AgentPlus1.7%である。小さな新規獲得の遅れでも、数年後の契約基盤に大きく影響し得る。AI AgentPlusのARPAは高いが、顧客が継続利用するか、上位プランの価格を守れるかについての長期実績は短い。大手業務ソフトのAI機能との価格競争が始まれば、契約数と価格の両方が下がるおそれがある。
外部AIモデルとAWSへの依存
同社のサービスはAWSを基盤とし、AI AgentPlusはOpenAIの生成AIを利用している。生成AIの料金、利用規約、モデルの性能、障害対応を完全には支配できない。ゼロデータ保持契約やセキュリティ認証はリスクを減らすが、提供元の技術や価格変更の影響は残る。さらにクラウド利用料はドル建てであり、150円固定の評価前提から為替が外れれば実際の利益も変化する。
上場資金の投資回収と資本配分
2026年の上場で約8.17億円を調達し、研究開発、人材、販売促進への投資を計画している。投資額が増えても契約数や単価が十分に伸びなければ、ROEは低下する。2021年のコンテンツ配信事業の取得は、今後の周辺領域買収を評価する際の参考となるが、利益への寄与は小さい。生成AI分野の買収では技術の陳腐化が速いため、のれんや無形資産の減損にも注意したい。
大株主の影響力とストックオプション
上場前の大株主には資産管理会社と経営者個人の持分が集中し、一般株主の意見が資本政策に反映されるかは継続的に検証する必要がある。また、有報には560,400株の潜在株式が開示されており、既存株主の将来の取り分を薄め得る。新規の付与や資本調達が追加される場合には、売上・利益の伸びを株主1人当たりの価値へ結びつける力が弱まる。
グロース市場の上場維持基準
同社は有価証券報告書で、2030年以降に重要となる時価総額100億円の上場維持基準を経営課題として挙げている。2026年10月時点の提供基準時価総額は約50億円であり、基準達成には大きな価値向上が必要だ。上場廃止が決定しているという意味ではないが、成長が遅れた場合は市場変更や資本政策の選択を迫られる可能性がある。市場での評価額を目標とすることと、株主の本質価値を高めることは区別する必要がある。
今後の分かれ目
- AI AgentPlusのARRが数年間にわたり年率20%以上で成長し、月次解約率も1%前後へ下がったら
- 顧客定着の改善と製品競争力の強化が確認できるため、楽観・やや楽観の確率を高める。特に値引きなしで高単価契約が維持できているかを確認する。
- AI AgentPlus Proの業務処理機能が売上の大きな部分を占め、導入効果と継続率が開示されたら
- 単なる画面型SaaSから業務成果を売る製品への移行として評価を上げる。数量の長期見通しと製品の利益率を見直す。
- ChatPlusの減少が続き、AI AgentPlusの増収額でも補えなくなったら
- 顧客移行がうまく機能していないと判断する。中立の売上と利益を引き下げ、やや悲観の確率を高める。
- Microsoft、Salesforce、Zendeskの標準機能への置き換えで平均単価と契約数が同時に減ったら
- AIエージェント代替が現実化したと判断し、やや悲観から悲観の筋書きへ近づける。市場成長率だけを理由に価値を維持しない。
- 営業利益率が30%を割り込んだうえ、研究開発費と顧客獲得費用の増加が長期化したら
- 2026年の高い限界利益率を維持できないことを示すため、中立の営業利益率とオーナー利益を引き下げる。売上の成長が鈍い場合には一段と慎重に評価する。
- 2027年以降、配当性向20%以上が定着するか、余剰現金を使った実質的な自社株買いが続いたら
- 蓄積した現金が少数株主へ戻る証拠となる。還元実績の継続性を確認したうえで、excess_cash_returnを0.75から1.0へ見直す余地がある。
- 新株予約権の行使や追加増資が発生したら
- 新株数と払込資金を同時に更新し、既存株主の取り分を再計算する。利益総額が増えても希薄化によって株主価値が十分に伸びない可能性を点検する。
見ておくもの
- 四半期のChatPlus、AI AgentPlus、FAQPlus別の契約アカウント数とARR
- AI AgentPlusのARPAと月次解約率の推移。全社Churnとは分けて追跡する
- ChatPlusからAI AgentPlusへの移行件数と、新規企業からの契約獲得
- AI AgentPlus Proの契約数、受注金額、業務処理機能の実利用状況
- 全社の営業利益率、売上総利益率、AWSと生成AIのシステム利用料
- 2026年の上場資金の使用実績と、研究開発・人材・広告投資から生じたARR
- 配当性向、実際の配当総額、自社株買い、自己株式数の変化
- 未行使ストックオプションの残高と発行済株式総数の更新
- Microsoft、Salesforce、Zendesk、PKSHA、KARAKURIなどのAIエージェント製品の価格と機能
- 2030年以降に向けた東証グロース市場の上場維持基準への対応方針
倍率と資本コストの決め方
現在のPERやPBR、同業他社の市場倍率から2036年の倍率を決めていない。ChatPlusとFAQPlusはAIエージェント代替により数量0.70〜0.90倍を中心とし、価格の上昇も物価を下回る。AI AgentPlusは既に有料契約とARR5.34億円の実績があるため、別の成長曲線で評価した。2036年以降のg_longは0%、資本コストは7.75%で、正当化PERは12.9倍となる。悲観は過去のPBRの谷を用いず、現時点の売却可能資産を床とした。2036年に蓄積する余剰現金は各筋書きに明示し、自動で蓄積額を重ねていない。日本基準の新リース会計基準は2027年4月以後開始年度に強制適用となるため、将来の使用権資産とリース負債の表示変更に注意し、利益は家賃を費用とする同じ形で比較する。
株数には重要な照合事項がある。提供されたfactsの4,172,500株をbasisとして採用したが、2026年9月提出の有報は上場時の公募650,000株と第三者割当172,500株を記載している。決算末4,000,000株から両者を加えると4,822,500株となり、提供基準との差が650,000株ある。したがって、約50億円という比較対象の時価総額は実際の上場株数に対して過小となっている可能性があり、本分析の割高判断はその分だけ穏当になり得る。提供数値を無断変更せず、数値の不一致を明示した。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、事業の値決め力と財務の質による+0.25%を加えた。規模や株価のβによる上乗せはしない。事業は継続黒字で財務の存続に疑いがないため、distressの追加上乗せは不要である。