結論
メディカルネットは、歯科医院向けの情報サイトを出発点に、歯科器材の卸売、経営支援、医薬品販売、タイでの歯科医院運営まで広げた会社である。筆者の結論は「割高」だ。歯科医院との接点には価値があるが、売上の拡大に利益が追いついておらず、現在の約23億円の時価総額には十分な安全域がない。
この会社を単なるインターネット広告会社と見るのは間違いだ。2026年5月期には売上の約77%が医療機関経営支援事業となり、その中心を歯科商社が担うようになった。オカムラ、吉見歯科器械店、タイのNU-DENTなどが築く納品網は、検索結果や生成AIの回答だけでは代替できない。国内の取引先は約3,000クリニックであり、全国約6万5,000施設に対して拡大余地もある。
問題は、何の売上を増やすかで利益の質がまるで違うことだ。2026年5月期のメディア事業は売上約9.7億円ながらセグメント利益約4.6億円を稼いだ。一方、売上約52億円の医療機関経営支援事業のセグメント利益は約1.2億円にとどまる。高利益率の広告がAI検索によって傷み、低利益率の卸売が増えるなら、全社の増収だけを喜ぶことはできない。
2028~2029年5月期に売上120億円、営業利益15億円という中期目標がある。しかし直近実績は売上67.3億円、営業利益1.9億円であり、2027年5月期第1四半期は営業赤字だった。目標達成には単なる買収による増収ではなく、大幅な利益率改善が必要である。10年後の中立では売上約107億円、営業利益約2.9億円を見込み、確率加重した将来の時価総額と株主還元を資本コストで現在価値に直すと約14.1億円になる。現在の時価総額を約38%下回る評価である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず10年後に何を売っているかを確かめたい。歯科診療はなくならず、器材や医薬品の納品も必要だ。地域の歯科医院との関係を持ち、納品と経営相談を一緒に引き受けられる事業には持続性がある。一方、検索サイトで上位に表示されることや、人が操作するソフトの画面に価値があることは、10年先まで続く強みとは言い切れない。
次に見るのは、増やした資本がどれだけの利益を生むかだ。メディカルネットは売上を4倍以上へ拡大してきたが、営業利益は長期で横ばいに近い。買収によって競合から売上を取得しても、利益率の低い卸売を積み上げるだけなら、投資した資本の利回りは資本コストを下回りうる。これは売上高の成長率からは見えない問題である。買収後に共同仕入れ、配送、在庫、営業拠点を統合し、増分利益を生む実績が必要になる。
経営陣が資本を再投資する以上、少数株主にとっては還元と企業価値の両方を見なくてはならない。現金を持つこと自体は安全性を高めるが、将来の低採算買収に使われるなら、額面どおりすべてを株主価値に足せない。2025年の自社株買いは好材料だが、その後の自己株式処分やM&Aの継続を考えると、余剰現金をすべて還元する会社とも評価できない。
投資対象として魅力が増す条件は明快である。広告の減収を止めることよりも、卸売の営業利益率を持続的に引き上げ、買収に使った資本から安定した現金を生むことだ。現状はその証拠が弱く、本質価値と現在の時価総額には十分な安全域がない。売上規模や歯科医療というテーマではなく、株主に帰属する利益を物差しにすべき会社である。
何で稼ぐ会社か
収益の源は大きく四つある。第一は「矯正歯科ネット」「インプラントネット」など11サイトを運営するメディア・プラットフォーム事業だ。自費診療の患者を獲得したい歯科医院から広告料を受け取る。2026年5月期の売上は約9.7億円で、全社売上の14.5%だが、セグメント利益では約68%を占めた。既存サイトの減収に対し、新しい「プラス」シリーズの販売で補おうとしている。
第二は医療機関経営支援事業で、売上約52億円と最大である。中身は一様ではない。オカムラと吉見歯科器械店による国内卸売、NU-DENTなどによるタイの卸売、ノーエチ薬品による一般用医薬品販売、タイの歯科医院3院の運営、国内のホームページ制作・広告運用・経営支援が混在する。卸売は器材の仕入れと配送という現物を扱うが、広告運用や経営コンサルティングは人的作業が中心だ。両者を同じ成長率で扱うと事業の実像を見失う。
第三は歯科医療従事者向け「Dentwave」を中心とする医療BtoB事業だ。2026年5月時点の登録者は57,535人で、前年から1,434人増えた。歯科関連メーカーや製薬会社に対し、専門職へ届く情報発信、販促、調査などを提供する。属性データと利用行動の蓄積は強みだが、登録人数そのものが売上を保証するわけではない。会員からの収入だけでなく、企業向けマーケティング収入を含む事業である。
第四はタイのAVisionによるクラウドインテグレーション事業で、POSやERPの開発・導入を行う。会社資料には約100社の稼働顧客が示されている。既存システムとの連携や現地対応には一定の手間がある一方、受託開発と操作画面を使う業務ソフトにはAIエージェント代替が及ぶ。さらにタイ事業の一部は議決権保有割合49%でも実質支配によって連結されており、連結売上の全額がそのまま親会社株主の利益になるわけではない。
優良さと弱いところ
最大の強みは歯科業界との接点がオンラインと現物の両方にあることだ。ポータルサイトから歯科医院へ接近し、器材の納品、開業支援、経営相談へと関係を広げられる。実際にオカムラの2026年5月期売上は約27.6億円に達した。地域の歯科医院へ継続して納品する営業担当者、物流、仕入先との関係は、AIが情報を生成するだけでは置き換わらない。新規参入者が一から築くには時間がかかる。
ただし、それは独占的な堀ではない。歯科器材にはモリタ、ヨシダ、ササキ、ケーオーデンタルなど多数の有力企業がおり、商品の多くは競合も調達できる。卸売価格を自社だけで大幅に引き上げる力は弱い。タイではNU-DENTの販路が重要だが、物流網の広さと価格決定力は別物である。顧客の切り替え費用が高い独自規格や、解約率5%未満の契約基盤も確認できない。
メディアとDentwaveには歯科領域に特化した認知度とデータがある。しかし、AI検索が利用者の疑問に直接回答すれば、比較サイトへの流入は減る。会員の属性・行動データは価値があるものの、規制上の記録の正本、年単位の移行負担、法改正ごとの値上げ実績など、代替困難性を裏付ける複数の証拠はそろっていない。現時点で強い堀を全社に認めることは難しい。
資本効率にも注意が要る。2016年5月期から2026年5月期までに売上は約15億円から約67億円へ増えたが、営業利益はともに約2億円である。買収で売上が大きくなるほど利益も増える、という関係は実績に表れていない。2026年5月期は営業キャッシュフローが約1億円であり、親会社株主利益と比べても自由に使える現金は厚くない。良質な媒体事業の縮小と薄利の卸売拡大を同時に抱えることが、現在の企業の質を決めている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内歯科医療は必要性の高い市場だが、歯科医院の数そのものは拡大産業ではない。会社資料によれば2026年5月の歯科診療所数は65,057施設で、2018年頃の約6万9,000施設から減少している。一方、歯科機器・用品の二次卸市場は約4,155億円と推計され、前年からほぼ横ばいだった。高齢化による治療需要や機器の更新は残るが、需要数量を人口減少から切り離して大きく伸ばすのは難しい。
同社の国内取引先約3,000施設は歯科診療所の約4.6%に相当する。国内歯科卸売の売上を約31.5億円と推定すれば、市場規模4,155億円に対する金額シェアは約0.76%である。オカムラ単独の売上約27.6億円なら約0.66%となる。モリタ、ヨシダなど競合各社の同一定義でのシェアは確認できず、数値を断定できない。ただし、この市場で同社がまだ小さなプレーヤーであることは明らかだ。シェア拡大には地域の歯科商社を買収する余地がある。
広告市場は別の景色だ。国内インターネット広告市場は2025年に約4兆459億円まで伸びたが、広告費が増えても歯科ポータルへ流れるとは限らない。会社は歯科関連のインターネット広告市場を約1,431億円と試算している。しかし、これは歯科医院の売上と想定広告予算から組み立てた市場であり、同社のサイト掲載料だけの市場ではない。メディア売上をこの市場で割った約0.68%は参考上の比率であって、狭義のポータル市場シェアではない。Google、Meta、EPARK歯科などとの顧客獲得競争に、AIによる検索行動の変化が加わる。
国内のWebマーケティング関連市場についても、会社は広告運用約460億円、ホームページ制作の年間需要約119億円を推計している。ただし、広告予算の集中度やサイト更新周期に仮定が含まれる。AIエージェントが広告制作、運用調整、検索順位の監視、顧客対応を自動化すれば、市場の仕事量が減らなくても受託会社が得る単価と工数は減りうる。タイのPOS・ERPも同様である。反対に、歯科器材の配送、医薬品の現物販売、歯科診療そのものは物理的なサービスとして残る。10年先の同社は広告会社より歯科流通企業としての性格が強まると考える。
資本政策と M&A
経営はM&Aを成長の中心に据えてきた。オカムラ、吉見歯科器械店、ノーエチ薬品、タイのNU-DENT、AVisionなどを傘下に収め、会社資料では2026年8月時点で15件のM&A経験を挙げている。2025年には収益化の遅れたミルテルを売却し、2026年10月16日には沖縄の板倉歯科器材店の子会社化が完了した。同社の直前期売上は約2.7億円、営業利益は約0.03億円であり、買収直後の利益貢献は小さい。
2025年8月の中期経営計画では、2028~2029年5月期に売上120億円、営業利益15億円を目指す。目標の内訳はメディア22億円、医療機関経営支援90億円、医療BtoB4億円、クラウド4億円である。ROE、DOE、総還元性向、自社株買い額については同計画に数字の約束がない。別途、公表された配当方針は配当性向10%を目安とする安定配当で、2026年5月期の実績は19.1%だった。
2025年には自己株式を取得した一方、2026年には提携先への自己株式処分を実施した。2026年9月の処分は現在の発行済み・自己株控除後株数に反映済みである。2026年9月には監理銘柄の指定が解除され、スタンダード市場への移行によって上場を継続した。株主への還元は配当に加えて保有期間・株数に応じたデジタルギフトがある。中立の10年間では配当約3億円と優待費用約1億円を見込み、総還元約4億円とする。優待費用は対象株主数の実績が未開示のため、対象約8,000人に平均年間約1,300円を交付する推定である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
歯科医療という専門市場にオンライン媒体、卸売、経営支援、海外事業を同時に持つ企業は多くない。国内約3,000クリニックとの取引を全国約6万5,000施設へ広げる余地は大きい。オカムラを中心に吉見歯科器械店、板倉歯科器材店など地域商社を買い集めれば、共同仕入れと物流統合による利益率改善が期待できる。ヨシダとの提携を通じて扱える商品や提案内容が増えることも有利だ。
Dentwaveの57,535人という歯科医療従事者の登録基盤は、歯科関連メーカーにとって一定の価値を持つ。消費者向け検索広告だけに依存せず、専門職向けの販促、商品紹介、購買データ活用へ収益源を移せれば、歯科業界内の取引を集める立場に近づける。新しい受発注プラットフォームが実際に普及すれば、在庫と発注の情報を共有する仕組みを通じて取引関係を深めることもできる。ただし、現時点では導入数や解約率が開示されていないため、この潜在力を既存の強い堀と同一視することはできない。
海外ではタイの歯科商社、歯科医院、POS会社を組み合わせる余地がある。現在の3院を増やし、器材調達とソフト販売を同じ顧客に展開すれば事業間の連携が進む。さらに資本効率の低い事業を売却し、本社費用を抑え、調達と物流の生産性が高まれば、増収に利益が追いつく可能性がある。中期目標ほどの利益率には届かなくても、10年先に現在を大きく超えるオーナー利益を残す道はある。
慎重な見方
最大の弱点は、これまでの増収が利益成長を保証してこなかったことだ。2026年5月期は売上67.3億円に対し、営業利益1.9億円だった。売上の大半を占める医療機関経営支援事業は、セグメント利益率が約2.3%しかない。ここに企業買収を繰り返しても、買収先の薄利を引き継ぎ、管理費、在庫、運転資金、のれんを増やすだけなら、株主の手元に残る価値は伸びない。
もっと深刻なのは収益構成の変化である。歯科ポータルは2026年5月期に減収となり、会社自身がAIの浸透による影響を認めている。検索エンジンやAIエージェントが患者と歯科医院を直接結べば、高利益率の広告掲載サービスは縮小する。受託するホームページ制作、検索対策、広告運用、経営資料作成も自動化の対象だ。Dentwaveの登録会員数は一定の強みだが、会員名簿だけで高額な販促料金を維持できるとは限らない。
卸売にも逆風がある。歯科医院数は減少傾向で、販売先の統廃合が進む。モリタやヨシダなどの有力企業に対して価格を引き上げる力が弱く、仕入原価と物流費が上がれば利益を圧迫する。タイの歯科事業は現地通貨、現地人材、少数株主持分などの問題を持つ。2027年5月期第1四半期には全社が営業赤字となり、総利益率も低下した。中期経営計画の営業利益15億円との距離は大きく、達成時の利益率を当然の将来像として評価するのは危険だ。
どちらに重みを置いたか
歯科商社の現物納品網が残るという主張は強い。しかし、長期の価値を左右するのは売上高よりも利益率であり、過去10年間の資本効率を考えると慎重な見方に分がある。中立でも卸売の顧客数を拡大させ、共同仕入れや管理費削減の成果を認めた。それでも高利益率の媒体事業がAIに侵食され、全社のROEは資本コストに届かない。確率は楽観側26%、中立32%、悲観側42%と下方に寄せた。下に寄せる理由は、2026年の媒体減収と2027年5月期第1四半期の営業赤字、そして買収による増収が利益に結びついていない会社固有の実績である。AIの悪影響は中立の数量と長期成長率に織り込んでおり、資本コストの寿命補正には重ねていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 271 円26 億円(+ 還元の換算額還元の合計 33 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 148 円14 億円、今との差 −35.6%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 902 円87 億円 | 72 円7 億円 | +323.5% | +16.5% | 88 円8 億円 |
| やや楽観 | 17% | 414 円40 億円 | 50 円5 億円 | +101.8% | +7.8% | 79 円8 億円 |
| 中立 | 32% | 230 円22 億円 | 41 円4 億円 | +18.2% | +1.8% | 87 円8 億円 |
| やや悲観 | 27% | 124 円12 億円 | 17 円2 億円 | −39.0% | −5.1% | 38 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 82 円8 億円 | 4 円0 億円 | −62.4% | −9.5% | 13 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 271 円26 億円 | 33 円3 億円 | +32.3% | +3.0% | 304 円29 億円 |
今の株価時価総額 230 円22 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 卸売の全国展開と収益性改善が進む 利益 6 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 902 円87 億円
地域歯科商社の統合が進み、国内の取引医院は約7,200施設に広がる。全国の歯科医院に対してなお約1割の浸透率であり、数量として不可能な水準ではない。オカムラ、吉見歯科器械店、板倉歯科器材店などの買収先を一体運営し、仕入条件と物流の効率を引き上げることで、国内卸売の利益率が大きく改善する。
歯科ポータルではAI検索による流入減少を新しい広告商品と専門領域の信頼性で補い、有料掲載口数は現在程度を維持する。AI広告運用支援の新サービスは存在するが、金額を伴う販売実績が確認できないため、広告制作・受託の数量増加は見込まない。Dentwaveは会員基盤を維持し、歯科関連企業への販促価値を高める。タイの歯科医院は6院へ増え、卸売とPOSとの連携も進む。
本社費用は物価上昇の影響を受けるが、共同管理と業務標準化によって売上に対する負担は下がる。買収による増収だけでなく、既存の取引先から稼ぐ利益も増える。資本配分の成果がようやく数字で見え、親会社株主にとって長期保有の魅力が大きく改善する筋書きである。
- 歯科ポータル・自社メディア広告:数量 2,700(年間有料掲載契約口数(推定))× 価格 469,254(1掲載契約当たり年額広告収入(円))→ 売上 13 億円・営業利益 7 億円。AIの来訪減を専門広告の商品力で相殺。数量は現在以下、単価は1.30倍
- 国内歯科器材卸売:数量 7,200(年間取引歯科医院数(施設))× 価格 1,470,000(1取引医院当たり年間売上(円))→ 売上 106 億円・営業利益 6 億円。国内取引医院が2.4倍、単価1.40倍。買収後の共同仕入れが成功
- タイ歯科器材卸売:数量 7,400(年間取引歯科医院相当数(推定施設))× 価格 176,128(1医院相当当たり年間卸売収入(円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。現地販路の拡大と物流改善。単価1.40倍
- 一般用医薬品・医薬部外品:数量 1,800,000(年間製品販売箱数(推定箱))× 価格 469(1箱当たり平均卸売単価(円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。独自商品が育ち販売箱数1.50倍
- タイ歯科医院運営:数量 6.0(運営歯科医院数(院))× 価格 183,133,333(1院当たり年間診療収入(円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。タイの医院数が6院に増え、稼働率も改善
- 歯科医院向けWeb制作・広告運用・経営支援:数量 400(年間受託案件・契約数(推定件))× 価格 1,404,692(1契約当たり年間平均収入(円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。AI受託代替を受けても現在の契約数量を維持する上限の楽観
- Dentwave・医療BtoB:数量 57,535(登録歯科医療従事者数(人))× 価格 4,157(登録者1人当たり年間事業収入(円、企業向け売上を会員数で除算))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。登録会員数は現在と同じ。企業向け収益単価が1.34倍
- タイAVision・POS・ERP:数量 100(稼働顧客企業数(社))× 価格 4,362,606(稼働顧客1社当たり年間事業収入(円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。AI代替下でも約100社を維持。単価1.15倍
倍率:資本コストk=8.0%、親会社純利益6.30億円、10年後ROE=6.30÷51.4=12.26%。堀は普通で超過ROEの残存率は2分の1、RONIC=10.13%。g_long=1.5%から正当化PER=(1−0.015÷0.1013)÷(0.08−0.015)=13.11倍。利益の質について上限からの追加割引はしない。時価総額は現金利息0.028億円を純利益から除き、余剰現金2.0億円の75%を足して約83.70億円。
確率:国内の歯科商社買収、共同仕入れ、物流統合、タイ事業改善、広告の収益維持を同時に実現する必要がある。医療の現物需要は残るが、長期の増分利益率を高めた実績が十分でないため、最上位の確率は9%にとどめる。
やや楽観 17% 歯科商社の買収が利益にも結びつく 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 414 円40 億円
国内の歯科商社を継続して買収し、取引医院数は約6,000施設になる。歯科器材市場そのものは成熟しているため、売上数量の増加は主として競合からの取引移転と買収によるものだ。共同仕入れが進み、国内卸売の営業利益率も現在から改善するが、大手競合との価格競争は残る。
既存の歯科ポータルでは、AI検索が患者の検索行動を変える。掲載契約は減るものの、新しい媒体商品への移行と広告単価の引き上げで減少を一部補う。Dentwaveでは専門職向けの販促サービスが定着し、タイのPOS事業も主要顧客をおおむね維持する。広告制作や受託開発についてはAIエージェントの工数削減圧力が続き、数量を現在以上には伸ばさない。
タイの歯科医院は5院へ増え、現地商社との協業にも一定の成果が出る。のれん償却や本社管理費は残るが、取得した会社の重複業務を減らすことで利益が拡大する。中期計画が想定するほどの急激な利益率上昇は起こらなくても、買収資本に対する利回りが改善し、株主に還元できる現金が今より厚くなる。
- 歯科ポータル・自社メディア広告:数量 2,500(年間有料掲載契約口数(推定))× 価格 458,425(1掲載契約当たり年額広告収入(円))→ 売上 11 億円・営業利益 6 億円。掲載口数は7%減、単価は1.27倍
- 国内歯科器材卸売:数量 6,000(年間取引歯科医院数(施設))× 価格 1,407,000(1取引医院当たり年間売上(円))→ 売上 84 億円・営業利益 4 億円。取引医院数が倍増、卸売利益率4.4%
- タイ歯科器材卸売:数量 7,000(年間取引歯科医院相当数(推定施設))× 価格 168,580(1医院相当当たり年間卸売収入(円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。現地販路を維持拡大、単価1.34倍
- 一般用医薬品・医薬部外品:数量 1,500,000(年間製品販売箱数(推定箱))× 価格 469(1箱当たり平均卸売単価(円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。販売箱数が25%増える
- タイ歯科医院運営:数量 5.0(運営歯科医院数(院))× 価格 183,133,333(1院当たり年間診療収入(円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。タイの医院数5院、診療利益率11%
- 歯科医院向けWeb制作・広告運用・経営支援:数量 340(年間受託案件・契約数(推定件))× 価格 1,362,761(1契約当たり年間平均収入(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。受託数量0.85倍、単価1.30倍
- Dentwave・医療BtoB:数量 52,000(登録歯科医療従事者数(人))× 価格 3,909(登録者1人当たり年間事業収入(円、企業向け売上を会員数で除算))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。登録者相当数量0.90倍、単価1.26倍
- タイAVision・POS・ERP:数量 90.0(稼働顧客企業数(社))× 価格 4,248,798(稼働顧客1社当たり年間事業収入(円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。稼働顧客相当数量0.90倍、単価1.12倍
倍率:k=8.0%、ROE=3.10÷37.6=8.24%。残存率2分の1でRONIC=8.12%、10年以降の名目成長g=1.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.54倍であり、上限から恣意的な追加割引をしない。余剰現金の税後利息0.028億円を除いた事業利益に倍率を掛け、現金価値1.5億円を加える。
確率:歯科商社の地域統合という実績のある成長手段を評価する。ただし利益率改善には仕入先との交渉力と管理統合の成功が必要であり、現在の収益構造からの改善幅が大きいため17%とする。
中立 32% 卸売は増えるが高利益率の広告を補い切れない 利益 2 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 230 円22 億円
国内の歯科商社は地域の買収や提携によって取引医院数を約4,600施設へ増やす。2026年10月に取得した板倉歯科器材店などの事業も、その後の取引増加に寄与する。市場自体は大きく伸びず、顧客数の増加は競合からのシェア獲得が中心だ。単価は物価におおむね沿って上がるが、歯科医院が経営コストを抑えるため、実質的な値上げは難しい。
ポータルサイトではAI検索によってサイトへの来訪と有料掲載契約相当数量が減り、単価上昇で一部を補うにとどまる。広告制作・運用と経営支援の受託数量はAIエージェント代替により約65%へ縮む。Dentwaveは会員基盤を持ち続けるが、企業向け販促の契約相当数量は約70%になる。タイのPOS・ERPも人が画面を操作する前提の機能が減り、顧客相当数量は80%に低下する。
タイの歯科医院は4院へ増え、国内卸売の仕入れ条件も改善する。本社費用は物価上昇を受けながら、事業統合と業務の標準化で一部を抑える。ただし現物卸売の薄利は変わらず、全社営業利益率は約2.8%となる。売上は約107億円まで大きくなっても、純利益とROEは低く、株主資本を十分に稼がせる会社にはならない。
- 歯科ポータル・自社メディア広告:数量 2,160(年間有料掲載契約口数(推定))× 価格 433,158(1掲載契約当たり年額広告収入(円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。AI検索による掲載・送客数量0.80倍、価格1.20倍
- 国内歯科器材卸売:数量 4,600(年間取引歯科医院数(施設))× 価格 1,407,000(1取引医院当たり年間売上(円))→ 売上 65 億円・営業利益 3 億円。取引医院数1.53倍。市場全体ではなくシェアを増やす
- タイ歯科器材卸売:数量 6,700(年間取引歯科医院相当数(推定施設))× 価格 168,580(1医院相当当たり年間卸売収入(円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。販路数量1.05倍、単価は物価並み
- 一般用医薬品・医薬部外品:数量 1,200,000(年間製品販売箱数(推定箱))× 価格 469(1箱当たり平均卸売単価(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。箱数横ばい、単価1.34倍
- タイ歯科医院運営:数量 4.0(運営歯科医院数(院))× 価格 183,133,333(1院当たり年間診療収入(円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。タイの医院数4院、利益率8%
- 歯科医院向けWeb制作・広告運用・経営支援:数量 260(年間受託案件・契約数(推定件))× 価格 1,310,347(1契約当たり年間平均収入(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人月・広告運用型のAI代替で数量0.65倍、単価1.25倍
- Dentwave・医療BtoB:数量 40,275(登録歯科医療従事者数(人))× 価格 3,630(登録者1人当たり年間事業収入(円、企業向け売上を会員数で除算))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。情報・調査サービス代替で数量0.70倍、単価1.17倍
- タイAVision・POS・ERP:数量 80.0(稼働顧客企業数(社))× 価格 4,172,927(稼働顧客1社当たり年間事業収入(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。操作画面・人月型の代替で数量0.80倍、単価1.10倍
倍率:中立のROEは1.65÷31.2=5.29%で資本コスト8.0%を下回る。超過利益を稼がない事業の将来成長を評価に積み増さず、正当化PERの上限1÷k=12.5倍をそのまま採用する。全社純利益1.65億円から余剰現金2億円の税後利息約0.028億円を除き、事業利益に12.5倍を掛ける。さらに余剰現金2億円の株主への戻り方75%に相当する1.5億円を加え、時価総額約21.78億円となる。
確率:会社に残る最大の事業は現物の歯科卸売であり、取引医院数の拡大は可能と考える。一方、実績の利益率とAI代替を考慮して、中期目標の営業利益率12.5%を中立には採らない。中立を32%として経営改善と競争の両面を反映する。下に寄せる理由:2026年の媒体減収と2027年5月期第1四半期の営業赤字が確認でき、買収による増収に対して利益が伸びてこなかったため。
やや悲観 27% 媒体の収益悪化と薄利の卸売が重なる 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 124 円12 億円
歯科ポータルからの送客が減少し、掲載契約相当数量は約56%まで縮む。広告制作・運用や経営相談の受託数量も大きく減り、AIエージェントが担える仕事に人手を使う余地が少なくなる。Dentwaveの会員基盤は残るものの、企業向け広告・調査の単価は十分に上げられず、セグメント利益は縮小する。
国内の卸売では歯科医院の統廃合と競争激化により取引先が減り、買収で取得した顧客を長期に維持できない。仕入価格と物流費が上がる一方で、販売価格への転嫁は遅れる。タイの卸売とPOSにも競争が及ぶ。経営は不採算の拠点と受託業務を整理し、本社費用を縮小するが、それでも最終年度の全社営業利益は小幅な赤字となる。
期間の前半には黒字の年が残り、配当も段階的に減らしながら続ける。ただし後半にはのれんなどの減損が生じ、積み上げた帳簿上の自己資本をそのまま回収できなくなる。評価の支えは収益力ではなく、運転資金を清算した後に残る現金と売却可能資産である。歯科という市場は存在しても、同社がそこから十分な利益を得られなくなる筋書きだ。
- 歯科ポータル・自社メディア広告:数量 1,500(年間有料掲載契約口数(推定))× 価格 404,281(1掲載契約当たり年額広告収入(円))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。AIによる流入と広告契約の減少が深刻化
- 国内歯科器材卸売:数量 2,800(年間取引歯科医院数(施設))× 価格 1,323,000(1取引医院当たり年間売上(円))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。取引先が減り、仕入・物流費を転嫁できない
- タイ歯科器材卸売:数量 5,500(年間取引歯科医院相当数(推定施設))× 価格 157,257(1医院相当当たり年間卸売収入(円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。現地の取引数量が縮む
- 一般用医薬品・医薬部外品:数量 900,000(年間製品販売箱数(推定箱))× 価格 420(1箱当たり平均卸売単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。商品の販売数量は25%減少
- タイ歯科医院運営:数量 3.0(運営歯科医院数(院))× 価格 170,833,333(1院当たり年間診療収入(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。3院を維持するが稼働率低下
- 歯科医院向けWeb制作・広告運用・経営支援:数量 170(年間受託案件・契約数(推定件))× 価格 1,174,071(1契約当たり年間平均収入(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託工数が大きく減り、採算ぎりぎり
- Dentwave・医療BtoB:数量 33,000(登録歯科医療従事者数(人))× 価格 3,412(登録者1人当たり年間事業収入(円、企業向け売上を会員数で除算))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。企業向け販促が縮小
- タイAVision・POS・ERP:数量 65.0(稼働顧客企業数(社))× 価格 3,983,248(稼働顧客1社当たり年間事業収入(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。画面中心のPOS・ERP需要が縮小
倍率:赤字が残る筋書きであり、将来利益に恒久的な正のPERを掛けない。2026年5月期の自己資本約19.9億円を基準に、換金不能な無形固定資産約4.18億円と売掛金・在庫・退出費用の保守的な調整約3.82億円を控除した約11.9億円を資産の床とする。PBR0.60は10年後の積み上がった自己資本ではなく現在の自己資本19.9億円に掛ける。過去の市場PBRは根拠にしていない。
確率:会社が既に媒体へのAI影響を開示し、低利益率の卸売が全社売上の中心になっている。買収先の統合作業が予定より遅れ、本社費用の吸収も進まない可能性は高い。一方、歯科器材の現物需要が消えないため、事業を全面喪失する筋書きとは区別する。
悲観 15% 広告基盤を失い、買収先の収益も崩れる 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 82 円8 億円
AI検索とAIエージェントが歯科医院探し、医院の広告制作、運用、問い合わせ対応を大幅に自動化する。従来型のポータルは送客力を失い、有料掲載契約相当数量は現在の3分の1程度となる。Dentwaveも歯科関連企業への情報発信の独占的な窓口にはなれず、調査・広告の収益を失う。タイのPOS・ERPは画面操作の価値が薄れ、導入顧客相当数量は大きく減る。
国内の歯科医院では統廃合と大手卸売への集中が進む。買収した地域商社の顧客をつなぎ止められず、国内の取引医院数は約1,600施設へ減少する。タイの卸売も競争で売上を失い、歯科医院運営では固定的な家賃と人件費が残る。卸売の粗利減少を本社費用の削減で補えず、営業赤字が拡大する。
経営は一部子会社の売却、撤退、減損を余儀なくされ、配当と優待も縮小する。過去に積み上げた帳簿上の自己資本は、無形資産の減損と運転資金の回収不足で大きく目減りする。事業は存続しても、株主にとっての収益事業としての優良さは失われる。10年後の価値は将来利益ではなく、現時点で確認できる資産を厳しく換金評価したものに限られる。
- 歯科ポータル・自社メディア広告:数量 900(年間有料掲載契約口数(推定))× 価格 379,013(1掲載契約当たり年額広告収入(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。契約相当数量は3分の1、価格はほぼ据え置き
- 国内歯科器材卸売:数量 1,600(年間取引歯科医院数(施設))× 価格 1,239,000(1取引医院当たり年間売上(円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。顧客流出により国内卸売の利益率は1%未満
- タイ歯科器材卸売:数量 3,500(年間取引歯科医院相当数(推定施設))× 価格 145,935(1医院相当当たり年間卸売収入(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。販路を大きく失う
- 一般用医薬品・医薬部外品:数量 600,000(年間製品販売箱数(推定箱))× 価格 392(1箱当たり平均卸売単価(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。販売箱数半減と商品競争で赤字
- タイ歯科医院運営:数量 2.0(運営歯科医院数(院))× 価格 161,266,667(1院当たり年間診療収入(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2院に縮小しても固定費が残る
- 歯科医院向けWeb制作・広告運用・経営支援:数量 100(年間受託案件・契約数(推定件))× 価格 1,048,278(1契約当たり年間平均収入(円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託工数が4分の1になり固定費を吸収できない
- Dentwave・医療BtoB:数量 22,000(登録歯科医療従事者数(人))× 価格 3,102(登録者1人当たり年間事業収入(円、企業向け売上を会員数で除算))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。販促情報の独自性が失われる
- タイAVision・POS・ERP:数量 40.0(稼働顧客企業数(社))× 価格 3,793,570(稼働顧客1社当たり年間事業収入(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントが操作画面と開発工数を代替
倍率:最終年度の純利益が大幅な赤字であり、稼ぐ力による正のPER評価を行わない。現時点の自己資本約19.9億円から無形固定資産約4.18億円を除き、売掛金・在庫の回収損、子会社撤退費用、海外資産の処分損などを合計約7.82億円見込む。売れる資産の税後相当の推定床は約7.9億円。今の自己資本19.9億円にPBR0.40を掛けた約7.96億円とし、10年後の積み上がった自己資本に底値PBRを掛けていない。
確率:AIによる広告・情報提供の代替に、国内歯科医院の統廃合、買収先の減損、タイ事業の不採算が重なる複合的な構造敗北である。現物の歯科医療需要は残るため、全事業の消失ではないが、利益が大幅な赤字となる尾部リスクを15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
歯科ポータル・自社メディア広告
矯正歯科ネット、インプラントネットなど11サイトにおける歯科医院向け広告。自社媒体の広告枠であり、受託制作とは区別する。
| 数量年間有料掲載契約口数(推定) | 価格1掲載契約当たり年額広告収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,700 | 360,965 | 10 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,160 | 433,158 | 9 | 4 |
取り方:2026年5月期の正式なセグメント売上9億7,460.5万円とセグメント利益4億6,320.2万円を使用。掲載契約口数と実単価は非開示のため、国内歯科医院約65,057施設の約4.1%に相当する有料広告口数2,700件、平均年額約36.1万円と仮定して逆算した。これは推定の契約単位であり、実契約数ではない。AIエージェント代替の分類は自社媒体型とし、中立で契約・送客数量0.80倍、単価1.20倍。実際の2026年5月期売上は前年から10.0%減少した。
国内歯科器材卸売
オカムラ、吉見歯科器械店などが国内歯科医院に器材、材料、医薬品を販売し、継続的に納品する。
| 数量年間取引歯科医院数(施設) | 価格1取引医院当たり年間売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 3,000 | 1,050,000 | 32 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,600 | 1,407,000 | 65 | 3 |
取り方:会社の2026年8月資料にある国内取引先約3,000クリニックを数量の基準にした。有価証券報告書に記載されたオカムラ単体売上約27.56億円に、吉見歯科器械店などの売上約3.94億円を推定加算し、計31.5億円とした。推定国内卸売シェアは4,155億円の二次卸市場に対して約0.76%。競合別の同一定義での売上シェアは未確認。利益0.95億円は医療機関経営支援セグメントの利益を事業特性に基づき推定配分したもので、独立開示値ではない。2026年10月に取得した板倉歯科器材店はこの期の売上に含めない。現物納品型なのでAI代替の人月・席課金制約は直接適用しない。
タイ歯科器材卸売
NU-DENTとD.D.DENTによる歯科器材・用品の仕入れと販売。現地の歯科医療機関との販路を担う。
| 数量年間取引歯科医院相当数(推定施設) | 価格1医院相当当たり年間卸売収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 6,359 | 125,806 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,700 | 168,580 | 11 | 0 |
取り方:会社が示すタイ歯科医院への広い販路に関する約6,359施設という参考値を数量の代理変数として使用。正式な継続取引医院数ではないため、売上8億円、利益0.20億円は医療機関経営支援事業からの推定内訳であり、単価も売上を販路相当数で割ったもの。タイ国内の全歯科医院に対する商品接触の広さを、総合卸売市場の売上シェアと混同しない。現物卸売の型であり、価格上昇は物価と製品構成で考える。
一般用医薬品・医薬部外品
ノーエチ薬品による一般用医薬品、医薬部外品、プライベートブランド商品の企画と卸販売。
| 数量年間製品販売箱数(推定箱) | 価格1箱当たり平均卸売単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,200,000 | 350 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,200,000 | 469 | 6 | 0 |
取り方:医療機関経営支援事業内の薬品売上と販売箱数は個別に開示されていない。販売箱数120万箱、平均卸売価格350円で売上4.2億円を仮定した概算である。会社資料にある2025年の国内OTC市場予測約1兆2,780億円に対する金額シェアは約0.033%。市場規模は全社の販売可能範囲を上回るため、数量の成長根拠として過大に使わない。利益0.10億円も事業セグメントからの推定配分。現物の商品販売として評価する。
タイ歯科医院運営
タイの歯科医院を実際に運営し、歯科診療の提供によって診療収入を得る。
| 数量運営歯科医院数(院) | 価格1院当たり年間診療収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 3.0 | 136,666,667 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 183,133,333 | 7 | 1 |
取り方:2026年8月の会社資料に記載されたタイの運営歯科医院3院を実数量に使用。診療部門だけの売上と損益は非開示のため、1院約1.37億円、計4.1億円の年間診療収入を推定した。損失0.15億円は現地の人件費、稼働率、為替影響を考えたセグメント内の推定配分。実際の診療行為はAIエージェントが代替する人月業務ソフトとは異なる。
歯科医院向けWeb制作・広告運用・経営支援
ホームページ制作、SEO・広告運用、経営相談、事務支援、不動産・事業承継関連の仲介など。
| 数量年間受託案件・契約数(推定件) | 価格1契約当たり年間平均収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 400 | 1,049,008 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 260 | 1,310,347 | 3 | 0 |
取り方:会社推計の歯科向けWebマーケティング市場約460億円とHP制作需要約119億円を市場の参考値に使用。会社の契約件数と個別売上は非開示のため、残余の推定支援事業売上約4.19億円を年400契約、1契約約105万円に換算した。医療機関経営支援事業以外のごく小さなその他売上0.0029億円もこの近似に含める。営業利益は残余推定配分。AIエージェント代替では人月・工数、広告制作・運用型に該当し、中立数量0.65倍、単価1.25倍、長期成長率0%を想定する。
Dentwave・医療BtoB
歯科医師・歯科衛生士の会員基盤を使い、歯科関連メーカーや製薬会社に情報発信・販促支援・調査等を提供する。
| 数量登録歯科医療従事者数(人) | 価格登録者1人当たり年間事業収入(円、企業向け売上を会員数で除算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 57,535 | 3,102 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 40,275 | 3,630 | 1 | 0 |
取り方:2026年5月期有価証券報告書の医療BtoB事業の外部売上1億7,848.2万円を、会社開示のDentwave登録会員57,535人で除した。単価約3,102円は企業から得た売上を会員数で割った代理指標であり、会員が払う課金単価ではない。登録者数の前年増加は1,434人。属性・行動データの蓄積は強みだが、低解約率や法定記録基盤など二つ以上の代替困難性の証拠がない。情報・調査・広告運用の混合型としてAIエージェント代替を適用し、中立数量を0.70倍、価格を1.17倍とする。
タイAVision・POS・ERP
タイ企業向けPOS、ERPの開発、導入、保守、クラウド統合を行う。
| 数量稼働顧客企業数(社) | 価格稼働顧客1社当たり年間事業収入(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 100 | 3,793,570 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 4,172,927 | 3 | 0 |
取り方:2026年8月資料でAVisionのタイ国内稼働顧客がおよそ100社と開示されたため、2026年5月期のクラウドインテグレーション売上3億7,935.7万円を割り、1社約379万円とした。ライセンス、開発、導入、保守が混在するため純粋な席課金単価ではない。AIエージェント代替では画面中心の業務ソフトと人月型の開発を併せ持ち、中立顧客相当数量0.80倍、単価1.10倍とする。独自データ、規制対応、低解約率による強い堀は未確認。
リスクと懸念
AIエージェント代替による高利益率事業の縮小
歯科ポータルではAI検索が患者の疑問に直接答え、サイトへの訪問と広告掲載の必要性を減らす。Web制作、SEO、広告運用、経営資料作成、Dentwaveの情報提供、タイのPOS・ERPの操作画面にも代替が及ぶ。会社自身が2026年の媒体事業の計画未達についてAIの影響を認めており、将来の仮説だけではない。高利益率の媒体売上が減り、薄利の卸売売上が増える収益構成の変化が最も重要なリスクである。
買収の増収が株主利益に変わらない
地域歯科商社の買収で市場シェアは伸ばせるが、買収先が低利益率なら、売上の増加が企業価値の増加を意味しない。板倉歯科器材店の直前期営業利益は売上約2.7億円に対して約0.03億円だった。共同仕入れや拠点統合による増分利益が実現しなければ、管理費、のれん、在庫、借入が増え、ROICが資本コストを下回る。買収先の売上よりも、取得に要した資本と買収後の営業利益を追う必要がある。
現物卸売の価格決定力と歯科医院数の減少
国内の歯科診療所数は長期的に減少傾向にある。器材や医薬品は継続して必要だが、モリタ、ヨシダなど既存大手の販売網が広く、同社が独自に価格を引き上げることは難しい。物流費や人件費が上がっても歯科医院への転嫁が遅れれば、利益率は容易に縮む。商品粗利のわずかな変動が全社利益を左右する構造であり、単なる取引医院数の増加だけでは十分ではない。
タイ事業の連結と親会社株主への帰属の違い
タイの歯科医院と卸売では、一部子会社の保有割合が49%でも実質支配によって連結されている。したがって連結売上の増加を親会社株主の利益とそのまま結びつけることはできない。為替、現地人件費、病院の固定費、現地パートナーとの関係も収益を左右する。2027年5月期第1四半期には為替差損も計上されており、海外での規模拡大が必ずしも利益の安定化につながらない。
のれん、運転資金、現金化の難しさ
2026年5月期末には約4.18億円の無形固定資産があり、買収先の経済価値が低下すると減損の対象になる。さらに売掛金は約10.5億円、商品は約3.6億円であり、売上拡大には運転資金が必要である。純現金約5億円は財務の支えだが、全額が直ちに株主に戻るわけではない。営業キャッシュフローも利益や売上の伸びに比べて弱く、棚卸資産と債権の回収が悪化すれば資金余力は急速に減る。
中期計画の達成難度と資本政策
2028~2029年5月期の営業利益15億円という目標に対し、2026年5月期の実績は約1.9億円だった。さらに2027年5月期第1四半期は営業赤字である。媒体の回復、卸売の利益率改善、買収先の統合が同時に進まなければ、この差は埋まらない。2026年には自己株式を提携先へ処分しており、今後も買収資金の調達や株式を使った提携が続く可能性がある。株主還元より規模の拡大を優先し続ける場合、既存株主に帰属する価値の成長は鈍る。
今後の分かれ目
- 国内卸売の取引医院数が4,600施設以上へ増え、営業利益率も4%超で複数期定着したら
- 中立の国内卸売数量と増分利益率を上方修正する。買収に使った資本に対する利益率が8%の資本コストを超えていれば、やや楽観以上の確率も引き上げる。
- メディア売上が前年比減少を止め、掲載契約数と広告単価の双方で改善が確認できたら
- AIによる送客減少を新商品で補えていると評価し、媒体の中立数量を見直す。ただし一時的な広告出稿増だけなら10年より先の成長率は引き上げない。
- Dentwaveの有料顧客継続率、解約率、購買データ連携件数が開示され、複数の代替困難性を示したら
- 情報サービスだけでなく業界の共同利用基盤に近づいた可能性を検証する。低解約率や移行負担を数字で確認できれば、当該事業だけAI代替の型と長期成長率を見直す。
- 買収後も営業キャッシュフローが純利益を継続して下回り、売掛金・在庫が売上以上に増えたら
- 買収の成長効果を割り引き、余剰現金の額と中立の利益率を引き下げる。配当の継続可能性も再点検し、やや悲観の確率を高める。
- 2028~2029年5月期の営業利益15億円が実績として達成され、ROEも資本コストを上回ったら
- 収益構造が変わった明確な事実となる。単年度の特殊利益ではなく本業の利益で達成したかを確認し、10年後の中立利益と正当化倍率を根本から見直す。
- タイのPOS顧客が減り、卸売・歯科医院運営にも赤字や減損が広がったら
- 海外の事業価値と回収可能資産を下方修正する。現地の少数株主持分を控除した親会社帰属利益を重視し、悲観の床に含める海外資産も厳しく見積もる。
見ておくもの
- メディア事業の四半期売上・セグメント利益・前年比増減
- 有料掲載契約数、解約率、AI検索経由の流入数と広告単価の開示
- 国内歯科商社の取引医院数と同一店舗・同一顧客ベースの売上成長
- オカムラ、吉見歯科器械店、板倉歯科器材店の買収後の営業利益率
- 医療機関経営支援事業の粗利益率と全社の本社管理費
- Dentwaveの会員数、法人有料契約数、継続率、購買データ連携の実績
- タイAVisionの稼働顧客数、受託開発比率、少数株主損益
- 営業キャッシュフロー、売掛金、棚卸資産、純現金、のれん残高
- 中期経営計画の営業利益15億円に対する実績の進捗
- 自己株式の取得・処分、配当性向、株主優待費用
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や過去のPER・PBRから倍率を逆算していない。歯科卸売は国内取引医院数と年間取引額、タイ卸売は販路相当数、ポータルは推定掲載契約数と広告単価、医療BtoBは登録会員数と企業向け収入、POSは稼働顧客数から数量と価格を分けた。未開示の内訳は推定と明記し、2026年5月期の正式な4事業の合計売上と利益に合わせ、本社費用を別に控除した。
資本コストは8.0%、中立ROEは5.29%であり、将来の超過利益を認めずPER上限12.5倍を適用した。悲観のPBRは10年後に積み上がった自己資本ではなく、現在の自己資本19.9億円に掛ける。床の計算では無形固定資産4.18億円を換金価値ゼロとし、売掛金・在庫・撤退費用に別の掛け目を与えた。現在の純現金5億円は必要運転資金と分けて扱い、現金利息と現金価値を二重計上しない。2027年以降の新リース会計基準による負債表示の変化は、賃料を営業費用に含む現在と同じ収益基準にそろえて評価する。確率加重の現在価値約14.1億円は時価総額約22.8億円を約38%下回り、結論は割高である。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%の基準7.5%に、値決め力の弱さ0.5ポイントを加えた8.0%を使用する。βと時価総額による上乗せは使わず、買収失敗やAI代替の個別事情は数量・利益率・確率で扱う。