結論
イノベーションは法人向けIT製品の比較サイト「ITトレンド」を起点に、マーケティングソフトと金融仲介へ広がった企業である。筆者の判断は「割高」だ。サイト集客の減少と買収後の資本効率の低下が重く、長期のオーナー利益を慎重に見積もると、現在の時価総額には安全域が乏しい。
2026年3月期は売上約70億円に達したが、営業損失は約2.5億円だった。シャノンの連結が増収を生んだ反面、のれんや顧客関連資産の償却、金融仲介の赤字、投資ファンドの損失が利益を削った。ITトレンドの年間来訪は約1,301万人と前年から約34%減った。競争を勝ち抜いた製品を探す需要は続いても、その入口が検索サイトからAIエージェントに移れば、資料請求の仲介料を取り続けることは難しくなる。
財務には純現金約8.5億円があり、一定の下支えとなる。ただし有利子負債と契約上の支払義務があり、シャノンの利益には非支配株主の取り分もある。2036年の中立では連結売上約63億円、親会社株主に帰属する純利益約1.3億円が中心となる。五つの筋書きの現在価値は約15.0億円で、基準の時価総額約22.1億円を約32%下回る。配当の維持は魅力だが、事業を立て直した実績を確認する前に、その成果を株価へ先取りする理由は薄い。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、同社を理解する鍵は「顧客から必要とされる情報」と「顧客が毎日操作する道具」を区別することにある。IT製品の選定や見込み顧客の獲得は10年先にも残る。しかし、見込み顧客が比較ページを開き、営業担当者がMAの画面でボタンを押すという現在の工程まで残る保証はない。オーナー利益が続くには、検索や操作画面の変化を越えて、企業とITベンダーの双方に独自の価値を渡し続けなければならない。
低い資産倍率は出発点として気になるが、純資産の中にはのれんと顧客関連資産が多く、現金だけを取り出して即座に還元できる形ではない。金融子会社には資金と許認可が必要で、銀行借入にも財務条件がある。しかもシャノンの連結利益を全部親会社の株主のものとして数えることはできない。見かけの純資産をそのまま清算価値や上昇余地とするのは危険である。
事業を買った後に既存契約が残り、本社費を削り、ソフト開発の更新投資を賄っても利益が積み上がるなら、長期保有に値する会社へ変わりうる。特に、月次解約率の低さと既存データを使った販売連携には見るべきものがある。ただし現時点では、集客減が先に見え、利益率と再投資利回りの回復はこれから証明する段階だ。筆者なら成長目標そのものよりも、利益を現金として回収し、追加買収なしに株主へ戻せるかを優先して評価する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は「ITトレンド」である。法人が勤怠・会計・営業などのIT製品を比較して資料請求すると、掲載企業が見込み客の紹介料を支払う。掲載製品は8,377、掲載企業は4,501社に上り、2026年3月期の年間来訪者は約1,301万人だった。初期掲載料に加えて資料請求1件ごとの成果報酬が中心で、経営説明ではリード単価約1.2万円が示された。「ITトレンドEXPO」と動画媒体「bizplay」も同じオンラインメディア事業に含まれ、売上は約37億円、セグメント利益は約12億円だった。
第二の柱は「SHANON MARKETING PLATFORM」と「List Finder」である。見込み顧客の履歴管理、メール配信、商談への引き渡しを支える月額契約型ソフトに、導入支援、マーケティング運用、展示会運営が付く。2025年のシャノン買収によりITソリューションの売上は約29億円に増えた。シャノンのサブスクリプション比率は同社の2025年12月期で約64%だが、親会社の連結セグメントに相当する詳しい内訳は未開示である。契約アカウント数は両製品合わせて約900件とされ、売上がすべて席課金ではない点に注意が要る。
金融プラットフォームには独立系金融商品仲介のIFAと中小企業M&Aの仲介があり、売上は約3.3億円だが赤字だった。VCファンドは未上場株式を保有し、2026年3月期には投資評価損などで約2.9億円のセグメント損失を計上した。四つの会計セグメントの利益を合算しても、全社の開発・管理費約13.3億円が差し引かれる。この共通費とシャノンの償却負担こそ、売上拡大が株主の利益に結び付くかを決める分水嶺である。
優良さと弱いところ
いちばんの強みは、IT製品を探す企業と売り込みたい提供企業の両側に接点を持つことだ。比較記事、検索語、製品情報、展示会の出展企業を長年集めており、新しい媒体が一から同じ関係を築くのは容易ではない。製品掲載数が増えている事実も供給側の厚みを示す。ただし、情報が掲載されていることと、利用者がサイトに来ることは違う。2026年の来訪減は、ネットワーク効果だけで訪問を守れない現実を突きつけた。
価格決定力は限定的である。成果報酬は掲載企業が商談化率と顧客獲得費用を比較して支払い、検索経由の質が落ちれば値下げを迫られる。シャノンは月次解約率約0.1%という開示があり、既存顧客に一定の定着性はある。しかし年単位の移行義務、法律上の必須利用、規制対応の値上げ実績といった独立した堀の証拠は乏しい。AIエージェントが画面を操作せず顧客情報を直接扱う時代には、低い過去の解約率だけでは高い永続成長を正当化できない。
2017年から2022年には二桁のROEを達成した年もあったが、その後は低下し、2026年は赤字に転じた。事業買収で営業利益が増えても、のれんと無形資産の償却、非支配持分、追加投資を通った後の親会社純利益は小さい。買収で強くした製品群を再び高い増分投下資本利益率へ変えられるかは、まだ実績が足りない。現段階の堀は狭く、事業全体を長期独占に近い会社として扱うべきではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の法人向けIT製品比較市場では、ITトレンドはBOXIL、ITreview、PRONIなどと、掲載企業の予算と法人利用者の検索行動を奪い合う。会社の中期計画が示す法人向け見込み客獲得の対象市場は約600〜800億円で、オンラインメディア売上を単純に対比すると約5〜6%になる。ただし展示会・動画の売上も含むため、これは監査済みのシェアではない。Googleなどの検索エンジンだけでなく、製品比較と選定を直接代行する生成AIが、新しい競合となる。
MA・営業支援の領域は需要自体が増える。調査会社は国内のMA・CRM/SFA・顧客データ基盤を合わせた2026年市場を約4,789億円と予想しており、データ整備の必要性が追い風だ。しかし、シャノンとList Finderが争うMAの実際の対象はその一部で、会社計画の対象市場約700〜1,000億円に対する連結ITソリューション売上の比率は約3〜4%にすぎない。競合はSalesforce、HubSpot、Adobe Marketo、BowNowなどで、営業データを保有する大企業と価格競争で張り合う必要がある。製品が会社の記録の正本になりきれなければ、席数の削減と単価抑制が続く。
中小M&A市場は後継者不足で成約余地がある。国内公表M&A件数は2023年に約4,015件に達し、金融仲介には需要面の下支えがある。ただし日本M&AセンターやM&A総研などの既存勢に比べ、同社が独自の高い成約シェアを持つとの根拠は乏しい。手数料は案件ごとに大きく異なり、IFA残高連動収入も混じるため、金融セグメントの数量は厳しい推定となる。全体では広告・SaaS・金融のいずれもAIと情報流通の変化にさらされる。市場が成長しても同社の取り分が同じ率で伸びるとは限らない。
資本政策と M&A
資本配分の成績は、売上より利益で測るべきだ。2025年のシャノンTOBによって2026年3月期末の議決権保有比率は56.7%となった。2025年12月にはList Finderを同社グループへ移管し、SaaS事業の統合を進めた。一方、従来の中期計画が掲げた2026年3月期の売上83億円、営業利益18億円は大きく未達だった。金融プラットフォームの赤字とファンドの評価損を考えると、買収や新領域への投資が株主資本コストを超える利益を生んだとはまだ言えない。
2026年6月公表の新中期計画は、2029年3月期に売上100〜120億円、営業利益14〜21億円、ROE約24%、ROIC15%以上を目標とする。2027年3月期の営業利益は当初1.3億円だったが、同年8月開示では2.8億円の通期予想に改められた。計画は挑戦的であり、営業利益の回復だけでなく、持分43.3%が外部株主に帰属するシャノンの利益と、買収関連の償却も区別して追う必要がある。
配当は2026年3月期も年間約1.1億円を維持し、次期も同水準を予定する。安定配当と利益回復後の増配、DOEの検討は示したが、配当性向・DOEの数値や総還元・自社株買い額の確約はない。過去には増配実績があり、余剰現金を一律に半額評価する理由は薄いものの、赤字下での固定配当は持続可能性を監視したい。将来の買収が株主の取り分を薄めないかも、経営者の規律を測る重要な点だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ITトレンドは単なる比較記事の束ではない。四千社超の製品提供企業と接点を持ち、商談につながる見込み客を継続的に送れる国内有数の法人向け媒体である。訪問者数が減っても、成約確度の高い問い合わせが増えれば収益性は保てる。ITトレンドEXPOやbizplayは検索順位に頼り切らない顧客接点を持ち、媒体の構造転換を支える。シャノンの解約率も低く、導入企業が自前でデータ連携を作り直す負担は無視できない。
2025年の大型買収は、長期の目線では成長の種である。List FinderとSHANON MARKETING PLATFORMを組み合わせることで、中堅企業から大企業へ製品を広げ、見込み客の獲得から育成まで一気通貫で売れる。のれん償却の一部は時間とともに終わり、業務統合が進めば本社費の重複も削れる。国内のMA・CRM関連投資は拡大しており、成熟した媒体の現金創出と組み合わせれば買収の付加価値は高い。
株価の裏付けとなるのは短期の赤字でなく、長い取引関係と現金の蓄積だ。十分な純現金があり、赤字期にも配当を続けた。経営陣が新たな大型買収を抑え、2029年の営業利益目標に近づけば、今は失われた利益率が戻り、既存株主が得る10年の還元と事業価値は大きく増えるだろう。
慎重な見方
顧客がIT製品を比較する行為は残っても、比較サイトを経由する必要は薄れる。AIエージェントが予算や利用目的を聞いて製品を選び、メーカーと直接商談を組むなら、サイトの滞在時間と資料請求は減る。ITトレンドの年間来訪は既に前年から約34%減っている。掲載製品数の増加は、価格決定力の証拠ではない。案件単価が下がれば、高いセグメント利益率も固定費を吸収できなくなる。
シャノン買収も会社全体の質を一段上げたと断定できない。SaaSの顧客管理情報は価値があるが、Salesforce、HubSpot、AdobeなどはAIを既存顧客へ配備できる。画面を使う担当者が減れば席数と従量課金が圧迫され、導入支援やイベント運営の工数も自動化される。親会社の保有比率は約57%なので、事業が成功しても外部株主の利益を引いて考える必要がある。償却負担と新規開発費も残る。
金融仲介は赤字で、VCファンドは評価損が実現した。投資先の価値を確実に回収できるとは限らない。現金は有利子負債と子会社の資金需要を考慮すべきであり、純現金の全額が自由に配れるわけではない。かつて2026年に掲げた営業利益目標の大幅未達を踏まえれば、新たな2029年計画の上限を現在の株価へ織り込むことは危うい。
どちらに重みを置いたか
最も確かな事実は、掲載企業の蓄積や低解約率と並んで、媒体来訪の減少、2026年の連結赤字、投資評価損が実際に起きたことだ。成長余地は否定しないが、新中計の利益水準を中立に先取りするには実績が不足する。確率は上側28%、中立31%、下側41%と慎重側に寄せた。AIによる縮みは数量と長期成長率で表し、資本コストの寿命要因で重ねていない。中立までを比較的現実的と見ても、現価と時価総額の差は大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 766 円21 億円(+ 還元の換算額還元の合計 321 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 552 円15 億円、今との差 −29.1%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,105 円57 億円 | 538 円15 億円 | +239.3% | +15.2% | 264 円7 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,228 円33 億円 | 464 円13 億円 | +117.3% | +9.7% | 305 円8 億円 |
| 中立 | 31% | 665 円18 億円 | 405 円11 億円 | +37.4% | +4.1% | 332 円9 億円 |
| やや悲観 | 25% | 313 円9 億円 | 184 円5 億円 | −36.1% | −5.3% | 124 円3 億円 |
| 悲観 | 16% | 313 円9 億円 | 74 円2 億円 | −50.3% | −7.3% | 62 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 766 円21 億円 | 321 円9 億円 | +39.6% | +4.0% | 1,087 円29 億円 |
今の株価時価総額 779 円21 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 媒体の再構築と買収統合が実を結ぶ 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,105 円57 億円
売上の主役は依然ITトレンドであるが、Googleの検索結果だけに依存しない送客体制が整う。ITトレンドEXPOの参加企業との継続接点が増え、媒体の来訪者を2036年にも約1,300万人確保する。AI検索への引用や製品選定支援が収益につながり、成果につながった見込み客への報酬を維持できる。ただしAI製品の新規売上額は確認されていないため、AIそのものを新規の数量成長とは数えない。
シャノンの顧客基盤が競合を退け、MA契約アカウントは現在並みを保つ。List Finderとの製品連携が進み、価格と利益率の改善が実現する。展示会の運営とコンサルティングはAIによる自動化で案件数がやや減っても、高付加価値案件への集中で採算を確保する。金融仲介は不採算顧客の整理に成功し、VCの追加損失も限定的になる。償却負担と本社部門を抑えれば、買収した資産の稼ぐ力がようやく株主に届く。
この楽観の筋書きでも売上は約86億円で、会社が2029年に掲げる100〜120億円には届かない。AIによる代替を重視した前提では、同計画の達成には現状の開示で金額が確認できない新収益源が必要となる。積極的な大型買収や新株発行に頼らず、既存顧客から現金を生み、継続的に配当する会社へ転換する。
- オンラインメディア(ITトレンド・EXPO・bizplay):数量 13.0(ITトレンド年間来訪者数(百万人、延べ人数))× 価格 3.68(年間来訪者100万人当たりのメディア事業売上(億円、EXPO・動画も含む実効単価))→ 売上 48 億円・営業利益 17 億円。来訪は現状並み。EXPO・媒体側の実効単価は現状比約1.28倍で、物価10年1.34倍の範囲内。
- ITソリューション:MAソフト・席/契約課金:数量 901(SHANONとList Finder合算MA契約アカウント(件、期末))× 価格 0.03(1契約アカウント当たり年換算売上(億円、サブスク割当後))→ 売上 23 億円・営業利益 7 億円。契約901件を保つ。価格は現状約226万円/件から260万円へ上昇。AIに伴う席課金価格1.15倍以内。
- ITソリューション:導入支援・イベント運用・BPO:数量 200(導入・制作・展示会運用などの年換算案件(件、モデル推定))× 価格 0.05(1案件当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。工数案件は220件から200件へ。単価約397万円から520万円へ上昇するが、AI新収益の未開示を理由に案件数の増加は見込まない。
- 金融プラットフォーム:IFA・事業承継M&A仲介:数量 11.0(手数料27.7百万円相当の案件換算単位(実件数ではない))× 価格 0.33(案件換算1単位当たりの手数料収入(億円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。金融の仲介手数料案件換算は12から11へ。経営資源の集中で営業黒字化。
- VCファンド:未上場投資:数量 0.0(年内の投資先売却・上場による実現益案件(件))× 価格 0.00(1件当たり連結計上売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。未実現の上場・売却益を毎期稼ぐ利益に含めず、ファンド経費だけが残る。売上0のため利益率は定義不能。投資損失を営業損益として別計上。
倍率:k8.5%、弱い堀の残存割合1/3、10年後親会社ROE10.6%から増分再投資収益率RONIC9.19%を求め、g_long名目0.5%による正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)≈11.82倍の上限そのものを採用。シャノン非支配株主43.3%分を除く親会社純利益を使用。余剰現金4.0億円の税後利息0.056億円を除いた事業利益×PERに4.0億円を足す。
確率:上場会社の資料請求媒体がAIに適応し、買収したMA製品の契約数も維持し、本社の重複費も圧縮できる複数の成功が必要となるため10%。
やや楽観 18% 媒体の転換と契約維持に成功 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,228 円33 億円
検索サイトの構造は変わるが、ITトレンドは法人IT市場での認知と掲載企業との関係を活かし、約1,170万人の年間来訪を維持する。メーカーが資料請求だけでなく、展示会や動画を使った見込み客獲得を一括して発注するため、来訪当たりの実効収益が上がる。検索順位への依存が少し薄まり、BOXILやITreviewとの競争にも大きく負けない。
MAの契約社数は目減りするものの、シャノンとList Finderの棲み分けが定着する。顧客によるAIエージェント活用で画面の操作頻度は下がるが、契約維持、既存データの整理、顧客対応に役立つ部分が残る。導入・運用の人月は減る一方、少人数で支援できるようになり、サービス部門でも利益を維持する。金融仲介はまだ単独で大きな利益を稼がない。
親会社は追加買収を抑え、既存ののれんに伴う償却が時間とともに減る効果を享受する。本社の開発・管理組織を統合した結果、連結利益が安定し、配当原資を稼げるようになる。ただし外部株主が保有するシャノン持分があるため、営業利益すべてが3970の株主に帰るわけではない。
- オンラインメディア(ITトレンド・EXPO・bizplay):数量 11.7(ITトレンド年間来訪者数(百万人、延べ人数))× 価格 3.48(年間来訪者100万人当たりのメディア事業売上(億円、EXPO・動画も含む実効単価))→ 売上 41 億円・営業利益 14 億円。自社媒体来訪約1,170万人、実効単価の改善は物価を下回る範囲で維持。
- ITソリューション:MAソフト・席/契約課金:数量 840(SHANONとList Finder合算MA契約アカウント(件、期末))× 価格 0.02(1契約アカウント当たり年換算売上(億円、サブスク割当後))→ 売上 21 億円・営業利益 6 億円。MA契約840件、ID課金の価格改善は現状比1.09倍。
- ITソリューション:導入支援・イベント運用・BPO:数量 180(導入・制作・展示会運用などの年換算案件(件、モデル推定))× 価格 0.05(1案件当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。工数案件180件、報酬は約490万円/件。
- 金融プラットフォーム:IFA・事業承継M&A仲介:数量 9.0(手数料27.7百万円相当の案件換算単位(実件数ではない))× 価格 0.34(案件換算1単位当たりの手数料収入(億円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。仲介換算9単位、単価約3,400万円。
- VCファンド:未上場投資:数量 0.0(年内の投資先売却・上場による実現益案件(件))× 価格 0.00(1件当たり連結計上売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。VCの継続売上は見込まず、管理費0.2億円。売上0のため利益率は定義不能。投資損失を営業損益として別計上。
倍率:資本コストk8.5%と10年後の親会社ROE6.8%を比較し、ROEがkに達しないため正当化PERの上限は1/k=11.76倍。長期g_longはAIエージェント代替による名目0.5%だが低ROEの超過成長は加点しない。営業損益からシャノン非支配43.3%の利益と法人税を調整した親会社純利益で測る。余剰現金4.0億円の税後利息0.056億円を利益から控除し別に足す。
確率:EXPOと継続契約が底を支える見込みはあるが、来訪数減の逆転ではなく単価と採算改善で稼ぐため18%。
中立 31% 情報流通の変化で伸び悩む 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 665 円18 億円
法人による製品比較の必要性は残るが、情報を集める入口は生成AIに少しずつ移る。検索流入に依存したITトレンドの年間来訪者は約1,070万人に減り、掲載製品数の厚みだけでは利用者を取り戻せない。ITトレンドEXPOの参加企業や動画の広告主が残るため、媒体の稼ぐ力は急には消えない。10年後のオンラインメディアの売上は約35億円となり、利益率も現時点に近い水準を保つ。
契約社数が約780件になるMA事業では、画面中心の機能がAIエージェントに代替される一方、顧客データの保持と一部の自動処理が残る。広告制作や導入支援の工数は現状の約3分の2に減り、SaaSの単価上昇も物価に届かない。金融仲介は成功報酬の獲得競争が続き、なお小幅の赤字を生む。VCには繰り返し受け取れる利益を期待しない。
シャノン買収の事務統合と既存の償却負担の減少で本社費は圧縮されるが、研究開発やシステム更新は必要である。売上は現在をやや下回る約63億円にとどまり、ROEは資本コストに届かない。10年後も事業を続ける企業ではあるが、成長のための新しい資本投下に高い超過利益は認められない。
- オンラインメディア(ITトレンド・EXPO・bizplay):数量 10.7(ITトレンド年間来訪者数(百万人、延べ人数))× 価格 3.25(年間来訪者100万人当たりのメディア事業売上(億円、EXPO・動画も含む実効単価))→ 売上 35 億円・営業利益 12 億円。来訪1,070万人、実効単価は現状比1.13倍。AIの直接比較で訪問が減少。
- ITソリューション:MAソフト・席/契約課金:数量 780(SHANONとList Finder合算MA契約アカウント(件、期末))× 価格 0.02(1契約アカウント当たり年換算売上(億円、サブスク割当後))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。MA契約780件(現状の0.87倍)、契約単価は現状の1.06倍。席課金型の下限方向。
- ITソリューション:導入支援・イベント運用・BPO:数量 145(導入・制作・展示会運用などの年換算案件(件、モデル推定))× 価格 0.05(1案件当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。支援案件145件(0.66倍)、単価480万円(1.21倍)。AI工数代替の規則に沿う。
- 金融プラットフォーム:IFA・事業承継M&A仲介:数量 7.2(手数料27.7百万円相当の案件換算単位(実件数ではない))× 価格 0.32(案件換算1単位当たりの手数料収入(億円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。M&A・IFA手数料換算7.2単位(0.6倍)、単価3,200万円。
- VCファンド:未上場投資:数量 0.0(年内の投資先売却・上場による実現益案件(件))× 価格 0.00(1件当たり連結計上売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。継続売上ゼロ、年0.3億円の評価・管理費用。売上0のため利益率は定義不能。投資損失を営業損益として別計上。
倍率:資本コストk8.5%と10年後の親会社ROE3.8%を比較し、ROEがkに達しないため正当化PERの上限は1/k=11.76倍。長期g_longはAIエージェント代替による名目0.5%だが低ROEの超過成長は加点しない。営業損益からシャノン非支配43.3%の利益と法人税を調整した親会社純利益で測る。余剰現金4.0億円の税後利息0.056億円を利益から控除し別に足す。
確率:市場は伸びてもシェア・単価は取り合いとなり、旧中計の利益未達を考慮して中立31%。AI代替を既に数量・長期成長率に組み入れたため確率で二重には減額しない。
やや悲観 25% サイト集客とソフト契約が縮小 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 313 円9 億円
AIエージェントによるIT製品の直接比較が一般化し、従来の検索結果からITトレンドへ向かう経路が細る。年間来訪者は約840万人となり、掲載企業は見込み客の質を厳しく比べる。広告予算の一部がAIサービスとメーカー直販へ流れ、オンライン展示会や動画だけでは十分に埋められない。メディア売上は約26億円に縮む。
MA事業ではSalesforceやHubSpotとの連携が進むほど独自の操作画面への依存が減り、契約数は約650件となる。広告運用・導入支援の案件も半分程度に細り、値上げは限定的である。金融仲介は人件費を抑えてなお赤字が残り、VCから安定した運用収益も生じない。グループ内の共通開発や役員体制を抜本的に減らさなければ、黒字を維持できない。
買収による利益拡大の見込みが外れ、配当も利益の縮小に応じて減る。ただし大型の資金調達を避け、保有現金と換金可能な投資有価証券を損なわず、業務を大幅に縮小すれば事業を存続できる。競争力を弱めた会社として、10年後の稼ぐ力よりも売却できる資産が価値の下限に近づく。
- オンラインメディア(ITトレンド・EXPO・bizplay):数量 8.4(ITトレンド年間来訪者数(百万人、延べ人数))× 価格 3.12(年間来訪者100万人当たりのメディア事業売上(億円、EXPO・動画も含む実効単価))→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。来訪840万人、案件の質が落ち、サイト収益力が減退。
- ITソリューション:MAソフト・席/契約課金:数量 650(SHANONとList Finder合算MA契約アカウント(件、期末))× 価格 0.02(1契約アカウント当たり年換算売上(億円、サブスク割当後))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。MA契約650件。値上げはごく小幅、主要CRMとの併用が進む。
- ITソリューション:導入支援・イベント運用・BPO:数量 110(導入・制作・展示会運用などの年換算案件(件、モデル推定))× 価格 0.04(1案件当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。人手中心のイベント・広告運用は110案件へ半減。
- 金融プラットフォーム:IFA・事業承継M&A仲介:数量 6.0(手数料27.7百万円相当の案件換算単位(実件数ではない))× 価格 0.29(案件換算1単位当たりの手数料収入(億円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。仲介換算6単位、単価2900万円。
- VCファンド:未上場投資:数量 0.0(年内の投資先売却・上場による実現益案件(件))× 価格 0.00(1件当たり連結計上売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。投資出口は乏しく、継続損失0.3億円。売上0のため利益率は定義不能。投資損失を営業損益として別計上。
倍率:ROE約1.4%は資本コスト8.5%を下回る。純利益0.40億円から余剰現金3.0億円の税後利息0.042億円を除き、事業純利益に1÷kの11.76倍を掛け、余剰現金3.0億円を加えると稼ぐ力は約7.21億円。しかし現在の純現金と換金可能な有価証券に基づく床8.5億円の方が大きい。よって2036年の自己資本28.0億円ではなく、現在の自己資本28.9億円に掛ける床のPBR0.2941倍で8.5億円とする。市場の過去PBRには依拠しない。
確率:下に寄せる理由:実際に来訪数が約34%減り、金融仲介とVCの損失が発生し、営業利益18億円の旧計画を大幅に下回った。新体制の立て直し未証明のため25%。
悲観 16% AIに流通経路を奪われる 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 313 円9 億円
AIエージェントが企業のIT予算・要件を把握し、供給者との照合まで自動で済ませる。ITトレンドの比較ページは検索入口としての役割を失い、年間来訪者は約630万人へ半減する。掲載企業が見込み客へ支払う単価もほぼ伸びず、媒体売上は約18億円となる。EXPOなど人が集まる企画は残っても、かつての高収益サイトの代わりにはならない。
シャノンとList Finderは顧客の入力画面から、既存の大手CRMが呼び出す一機能へ押し下げられる。契約アカウントは約500件に縮み、導入・イベント運営は自動化で案件が大きく減る。M&A仲介でも既存大手との競争に負け、金融部門の赤字が続く。VCは出口を得られず、保有資産の評価も下がる。買収効果を損ない、連結売上は約33億円と現在の半分以下になる。
経営は人員と本社機能を大幅に削減し、損失を小さくして会社の存続を図る。それでも2026年時点の純資産をそのまま株主の床として扱えない。のれんや顧客関連資産は換金が難しく、シャノンの少数株主持分と顧客への未履行サービスも残る。価値は清算可能に近い金融資産を中心とした水準まで落ち込み、株主還元は前半に限られる。
- オンラインメディア(ITトレンド・EXPO・bizplay):数量 6.3(ITトレンド年間来訪者数(百万人、延べ人数))× 価格 2.88(年間来訪者100万人当たりのメディア事業売上(億円、EXPO・動画も含む実効単価))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。来訪約630万人、実効単価は横ばい。媒体への検索送客が構造的に失われる。
- ITソリューション:MAソフト・席/契約課金:数量 500(SHANONとList Finder合算MA契約アカウント(件、期末))× 価格 0.02(1契約アカウント当たり年換算売上(億円、サブスク割当後))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。MA契約500件。契約を更新してもID数と従量利用が削られる。
- ITソリューション:導入支援・イベント運用・BPO:数量 75.0(導入・制作・展示会運用などの年換算案件(件、モデル推定))× 価格 0.04(1案件当たり平均売上(億円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人手の導入・運用業務は75案件、単価400万円。
- 金融プラットフォーム:IFA・事業承継M&A仲介:数量 3.0(手数料27.7百万円相当の案件換算単位(実件数ではない))× 価格 0.28(案件換算1単位当たりの手数料収入(億円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。金融仲介は換算3単位と大幅縮小し、固定人件費が残る。
- VCファンド:未上場投資:数量 0.0(年内の投資先売却・上場による実現益案件(件))× 価格 0.00(1件当たり連結計上売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。投資先の評価損・管理費が続き、資産売却益は計上しない。売上0のため利益率は定義不能。投資損失を営業損益として別計上。
倍率:10年後も赤字が続く筋書きでは正当化PERによる稼ぐ力を正の価値として評価できない。2026年3月末の純現金8.5億円と換金可能な有価証券を現在の資産の床とし、非支配株主持分を調整した8.5億円を採用する。PBR0.2941倍は現在の親会社自己資本28.9億円に掛ける床の換算倍率であり、2036年の自己資本17.0億円には掛けない。のれん12.94億円、顧客関連無形資産8.36億円、ソフト等に換金価値は認めず、市場の過去PBRは参照しない。
確率:下に寄せる理由:媒体のネットワークがAI検索によって切断され、シャノンの買収価値も毀損される複合シナリオを16%。ただし今の純現金から換金可能資産の床を確保する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オンラインメディア(ITトレンド・EXPO・bizplay)
法人向けIT製品比較、資料請求の送客、オンライン展示会と動画で掲載企業から収益を得る自社媒体。情報検索はAI要約による中抜きの影響を受ける。
| 数量ITトレンド年間来訪者数(百万人、延べ人数) | 価格年間来訪者100万人当たりのメディア事業売上(億円、EXPO・動画も含む実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.0 | 2.87 | 37 | 12 |
| 10 年後 中立 | 10.7 | 3.25 | 35 | 12 |
取り方:2026年3月期有報のサイト年間来訪13,014,666人、掲載企業4,501社、掲載製品8,377と、決算のメディア売上37.29491億円を使用。実効単価は売上÷来訪百万人で算出し、EXPO・bizplayも含むため実際の1件当たり売価ではない。会社説明ではITトレンド1リード約1.2万円だが成約率が未開示のため売上をリード件数へ単純には割り振らない。競合BOXIL、ITreview、PRONIとのシェア競争とAI検索による訪問減を実質数量に入れる。
ITソリューション:MAソフト・席/契約課金
SHANON MARKETING PLATFORMとList Finderの年額・月額契約、従量課金による継続売上。AIが操作画面を省略すると契約IDと従量課金が減る。
| 数量SHANONとList Finder合算MA契約アカウント(件、期末) | 価格1契約アカウント当たり年換算売上(億円、サブスク割当後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 901 | 0.02 | 20 | 4 |
| 10 年後 中立 | 780 | 0.02 | 19 | 5 |
取り方:親会社ITソリューション売上29.14413億円を、シャノン2025年12月期のサブスク比率約64%とList Finderの月額型モデルを踏まえて契約ソフト70%=20.400891億円へ推定配分。901契約は2026年3月末の両製品合算公開KPI。シャノン期は14カ月決算で親会社期と異なるため、70%は開示された連結内訳ではなく分析上の配分。純粋な席数ではなく契約社数を近似値とし、AI代替の席課金型で中立10年数量は0.70〜0.90、価格1.00〜1.15の範囲。営業利益は子区分非開示ゆえ、法定セグメント利益3.78843億円を支援部分と分解した推計。
ITソリューション:導入支援・イベント運用・BPO
MA・CMSの導入設計、販促代行、広告運用、展示会のシステム設置と会期運営など工数型案件。AI代替はSaaSより深く見込む。
| 数量導入・制作・展示会運用などの年換算案件(件、モデル推定) | 価格1案件当たり平均売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 220 | 0.04 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 145 | 0.05 | 7 | 0 |
取り方:シャノン2025年12月期のフロー売上とイベント売上を根拠に、親会社ITソリューション売上29.14413億円の30%=8.743239億円を導入支援・イベント・BPO側へ分析上配分した。グループ合算の実際の施工・運営案件数は開示がないため年220件は概算であり、単価は年約397万円/件となる。イベント運営の台数・来場者数から収益への詳細な換算率も不明で、これは監査された受注件数ではない。工数・運用・制作が中心なのでAI代替の人月型として中立数量0.55〜0.75倍、価格上昇は物価1.34倍まで。
金融プラットフォーム:IFA・事業承継M&A仲介
金融商品仲介に伴う手数料と中小企業の譲渡・譲受の支援報酬。成功報酬と残高連動収入が混在する。
| 数量手数料27.7百万円相当の案件換算単位(実件数ではない) | 価格案件換算1単位当たりの手数料収入(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 0.28 | 3 | −2 |
| 10 年後 中立 | 7.2 | 0.32 | 2 | 0 |
取り方:連結金融セグメント売上3.32390億円を対象に、国内公表M&A成約約4,015件(2023年)と中小企業庁の手数料多様性を参照しつつ、実績非開示のM&A仲介とIFA残高報酬を合算した年12件相当・1単位約2,770万円の便宜的な案件換算とした。実際のM&A成約12件を意味しない。IFA預かり資産・M&A件数・手数料比率の会社開示がないため不確実性は大きい。営業と事務の工数部分はAI代替の人月型で中立数量0.55〜0.75倍、単価は物価1.34倍以内。
VCファンド:未上場投資
ファンドを通じた未上場株への投資。出口価値は市況に左右され、毎期の黒字を恒常収益として扱わない。
| 数量年内の投資先売却・上場による実現益案件(件) | 価格1件当たり連結計上売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.00 | 0 | −3 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期のVC売上は0、セグメント損失は2.86770億円。投資評価損などは売上高と別の費用で発生するため数量0×単価0と損益が一致しない。将来売却時期を合理的に予測する開示がないので、5筋書きで繰返し利益を付けず持続的な管理費・評価損を損益に残す。投資可能な未上場株の評価額をPERで資本化しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替と検索流入の中抜き
ITトレンドは検索エンジンを主要な集客経路と明示する。AIが比較・要件整理・販売会社への紹介を直接行えば、検索結果でサイトを訪れる人数と資料請求件数が減る。直近の来訪者減少約34%は警戒すべき事実だが、減少の全てをAIのせいと断定することもできない。数量と将来の名目成長率にリスクを織り込み、資本コストの寿命に再加算していない。
席課金SaaSと人的支援の異なる縮小速度
SHANON MARKETING PLATFORMとList FinderはCRMと見込み客管理データを顧客の業務に蓄積する。しかし人が画面で行う施策設定やレポート作成はAIが代行し、契約IDと従量利用が減る可能性がある。導入設計、広告運用、BPO、イベント現場事務はさらに工数が削られるため、連結のITソリューションをSaaS型と人月型に分けて評価した。
シャノン連結と少数株主・買収対価の取り扱い
シャノンの議決権保有は56.7%であり、同社の利益をそのまま3970既存株主の利益として資本化することはできない。買収に伴うのれん約12.9億円と顧客関連資産約8.4億円は会計上の資産であっても清算価値の裏付けは乏しい。システムの追加開発に再投資が必要となれば、買収時の売上拡大だけではオーナー利益を増やせない。
金融仲介赤字、VCの評価損と資本配分
金融プラットフォームは2026年3月期に売上約3.3億円に対し営業損失約2.0億円だった。VCファンドでも投資評価損など約2.9億円が発生した。M&A仲介やIFAの案件は受注単価のばらつきが大きく、経営者が利益を出すまでの追加投資額も不明確だ。新しい成長分野という説明をもって、継続損失の資本コストを帳消しにはできない。
銀行融資の財務制限条項と手元現金の制約
2026年3月期には現金約32.6億円があるが、借入金も約24億円存在する。融資契約は一定の連結純資産維持と経常黒字を要求しており、二年連続して条件に触れる場合の繰り上げ返済請求などが事業の自由度を下げ得る。次期の経常損益が赤字に戻った時は、帳簿上の純現金を全額余剰と見てよいかを改めて問う必要がある。
利益計画の再未達と希薄化・配当維持
2026年3月期の旧中期計画は営業利益18億円を目指したが、実績は赤字だった。新計画の2029年営業利益14〜21億円も、媒体減速と人件費上昇を超えて達成する必要がある。2026年には赤字でも年間40円の配当を続けたが、現金創出が続かなければ配当は減る。未行使の新株予約権や新たな資金調達による希薄化にも注意する。
今後の分かれ目
- ITトレンドの年間来訪が二期続けて減らず、資料請求単価と商談化率も維持できたら
- 媒体が検索結果の変化へ適応した証拠として、オンラインメディア数量の悲観を緩める。サイト来訪だけでなく有料リードと広告主の継続率まで確かめる。
- MA合算契約数が継続して900件を上回り、解約率も年5%未満を維持したら
- SaaSの数量低下幅を縮める。ただし規制上の正本性や値上げ実績が追加で示されるまでは、AI代替リスクを解消したと判断しない。
- ITソリューションのARR、開発更新費、営業利益が同時に改善したら
- シャノン買収の増分投下資本利益率の回復と捉え、やや楽観側へ評価を移す。少数株主に帰属する利益43.3%を引いた後の利益でも確認する。
- 2027年3月期に連結経常赤字が続き、銀行の財務制限条項への抵触が現実味を帯びたら
- 純現金の利用自由度を再評価し、余剰現金と資産床を保守的に見直す。増資や買収資金のための希薄化を別の筋書きに追加する。
- 金融プラットフォームの継続赤字が解消せず、VCで追加評価損が発生したら
- 資本配分が改善していないと判断し、金融・投資の保有継続より撤退と縮小に価値を認める。短期の売上拡大目標への評価は下げる。
- 新中計の2029年営業利益14億円以上に向け、売上増と本社費削減の両方が開示数字で進んだら
- 利益率が構造的に改善した可能性を再検討する。のれん償却や一時益だけの改善でなく、営業現金収支と設備・ソフト開発投資後の余剰を確認する。
見ておくもの
- ITトレンド年間来訪者・有料リード送客件数・1件当たり料金・掲載企業4,501社からの増減
- ITトレンドEXPOの出展社数・参加者数・開催費用と、検索以外の送客比率
- SHANONとList Finderの合算MA契約901件からの推移、月次解約率、ARR・MRRの推移
- シャノンのSaaS売上と導入支援・イベント売上の構成、非支配株主利益の帰属
- 四半期のセグメント利益合計と全社費・買収無形資産償却額の推移
- 金融仲介の案件・IFA預かり資産・セグメント損益、VCファンド投資有価証券評価損
- 借入金、手元現金、契約負債、財務制限条項への適合と安定配当の維持可否
- 2029年中計の売上100〜120億円・営業利益14〜21億円・ROIC15%目標の検証
倍率と資本コストの決め方
現在株価から必要な利益を逆算せず、2026年3月期の来訪者約1,301万人と四事業の売上・利益を出発点にした。ITソリューションは子会社開示のサブスク64%を手がかりに、契約型70%、人月型30%へ仮に分割し、それぞれAI代替の数量・単価の範囲を適用した。物価3%は単価にのみ含めた。10年先のgは0.5%、kは8.5%、堀は弱いとし、RONICとROEによる正当化PERを楽観から中立に用いた。悲観側は稼ぐ力と現在の換金可能資産の税後床を比較し、過去の市場PER・PBRは参照していない。本社費の2026年実績13.33億円を物価換算した17.9億円から、統合・人員削減の程度に応じて節減額を見た。既存の償却は取得原価、更新は投資支出も考慮した。新リース会計後も家賃費用を含む比較形を維持する。五筋書きの現在価値約15.0億円と時価総額約22.1億円を最後に比べ、約32%の割高と判定した。やや悲観と悲観は、将来の事業利益が乏しくても純現金から見た現在の換金可能資産の床8.5億円を割り込まないよう、今の自己資本28.9億円を基準とする床のPBRで時価総額を表示した。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に事業品質差1.0ポイントを加算。単年度の赤字と回復計画を踏まえ、慢性的な存続危機の特別上乗せは設けない。