結論
スカラは、企業向けDXサービス、人材採用支援、トレーディングカードの売買、地方創生事業を営む会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。トレカ事業には成長の余地があるが、DXと人材支援がAIエージェントに置き換えられる影響を考えると、10年間の利益成長を素直には信じられない。5つの筋書きから求めた本質価値は約45億円で、現在の時価総額約57億円を約21%下回る。
この会社を普通のSaaS企業と捉えると、本質を見誤る。2026年6月期のDX事業売上は約44億円だが、トレカ事業も約28億円あり、全社売上の約3分の1を占める。トレカ通販の「遊々亭」は35万人を超える会員基盤を持ち、2026年7月には実店舗7店を運営するHATOを取得した。実物のカードを仕入れ、鑑定し、在庫を揃え、買い手へ届ける仕事は、業務画面を操作するAIによってそのまま消えるものではない。
反対に、DXの継続課金には、顧客が管理画面を使うことや人手で設定・運用することを前提とした収益が含まれる。2026年6月時点の月次継続売上は約2.34億円だが、契約数と単価が10年後も現在のまま守られる保証はない。2026年10月には「i-ask」への不正アクセスにより、最大約71万件の問い合わせ情報が影響を受けた可能性も公表された。情報漏えいの確定件数とは区別すべきだが、顧客が情報を預け続けるための信頼には傷がついた。
最大の懸念は資本配分である。過去には買収によって売上規模を拡大したが、その後の売却や減損を経て、2024年6月期には約29億円の純損失を計上した。2026年は黒字に戻ったものの、2026年夏にはHATOとTerraの取得で再び拡大へ舵を切った。買収が悪いのではない。買った事業が資本コストを超えて稼ぐと確認できるまで、将来の利益を株主の価値として高く評価できないのである。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主がまず問うべきなのは、この会社を10年間まるごと所有したとき、外へ配れる現金が増えるかどうかである。DXの継続課金は安定して見えるが、管理画面を使う人間の数や保守作業時間に依存するなら、AIの普及は売上に逆風となる。技術の進歩が顧客に与える利益と、スカラの株主が受け取る利益は別物だ。継続課金という契約形態だけを理由に、長く続く独占的な利益を期待すべきではない。
反対に、遊々亭のカード在庫と顧客基盤には実体がある。好きなカードを探す楽しさや、適切な査定を受けたい需要までAIが消すわけではない。多くのタイトルを揃え、価格を示し、素早く届ける仕組みが磨かれれば、繰り返し使われる店になる。ただし、トレカの相場が上がることで生まれた在庫利益と、相場に関係なく得られる流通利益は分けなければならない。株主のものになる利益は、値下がりした在庫の処分費用も負担した後の数字である。
筆者が特に重く見るのは、会社が得た利益を何に再投資するかだ。新しい買収が過去の損失を取り返すための規模拡大になってはいけない。投じた資金に対して資本コストを超える利益が持続的に生まれ、その結果として配当や自社株買いが無理なく増えるのであれば、評価は大きく変わる。しかし、現時点ではその実績を十分に確認できない。2024年の損失と再編は、経営者の資本配分に高い確信を置けない理由である。
現在の時価総額約57億円は、これから10年でトレカが着実に拡大し、DXの利益が大きく損なわれず、買収も成功することを相応に求めている。事業の一部に魅力があることと、その集合体を今の値段で所有したいことは違う。約45億円という本質価値の見立てに対して安全域が乏しく、長期株主としては、収益の再現性と資本配分の改善を確認する姿勢がふさわしい。
何で稼ぐ会社か
スカラの事業は性質の違う4領域から成る。2026年6月期のDX事業は約44.2億円を売り上げ、セグメント利益は約4.5億円だった。企業のWebサイト内検索を担う「i-search」、問い合わせ管理の「i-ask」、チャットや情報配信などを継続課金で提供するほか、システムの構築、運用、顧客支援も請け負う。期末のDX継続契約顧客数は1,311社で、月次継続売上は約2.34億円に達した。ただし、この継続売上を12倍した年額換算値と、決算上の年間売上は同じではない。
DXの中でも、顧客が同社のサービスを長期間使う部分と、案件ごとに技術者や担当者が働く部分は分けて考える必要がある。検索、問い合わせ管理、自治体のシステムなどには、既存データや接続設定を移す手間がある。もっとも、顧客が本当に必要としているのは管理画面ではなく、問い合わせへの回答や正しい情報の取得である。AIエージェントが直接その成果を届けるようになれば、画面の席数や人手の作業量は減りうる。
人材事業は、体育会学生や女子学生などに特化した就職支援を展開する。2026年6月期の売上は約11.3億円、セグメント利益は約1.7億円だった。企業が採用できた人材の紹介や採用活動の支援が収益の中心となる。学生の登録基盤と企業への営業網は資産だが、履歴書の整理、候補者検索、一次面談の調整といった部分は自動化が進みやすい。スポーツ経験の評価や企業との関係構築まで全て機械化されるわけではないものの、同じ人数の担当者に支払われる対価は下がる可能性がある。
トレーディングカード事業は「遊々亭」の通販を中心とし、2026年6月期に約28.0億円の売上と約3.5億円のセグメント利益を稼いだ。カードの買取、価格査定、在庫管理、販売、配送によって利益が生まれる。会員数は2026年6月末に約35.5万人となり、客単価も期中に上昇した。HATO取得によって実店舗と通販をつなぐ余地が広がったが、店舗取得後の利益率は既存通販と同じとは限らない。
インキュベーション事業は地方創生、官民共創、事業創出などを扱う。2026年6月期は売上約1.8億円に対してセグメント損失約0.6億円であり、現状では価値を支える柱ではない。さらに、本社費用などがセグメント利益の合計から差し引かれる。経営上の本当の課題は、各事業が個別に利益を出すだけでなく、全社の管理費と買収後の資本負担を上回る利益を残せるかどうかにある。
優良さと弱いところ
最も評価できるのは、トレカ事業に実物の商品、在庫、査定、会員との取引履歴があることだ。品揃えと買取価格が魅力的であれば、利用者は繰り返し訪れる。35万人を超える会員基盤と実店舗の組み合わせは、仕入れと販売の両面で規模の利点を生みうる。ただし、メルカリ、カードラッシュ、晴れる屋、ドラゴンスターなども取引を仲介・販売しており、利用者が他社へ移ることは難しくない。独占的な価格決定力を持つ事業ではない。
DXには継続課金という良さがある。会社の検索システムや問い合わせ履歴を移す作業には手間がかかり、自治体向けサービスには長年の運用経験が蓄積している。ふるさと納税関連システムについては累計860自治体以上への導入実績が示されている。しかし、累計導入数だけで低い解約率や値上げ能力が証明されたわけではない。年5%未満の解約率、法改正を伴う長期移行、繰り返し成功した値上げなど、独立した証拠が2つ以上確認できないため、DX全体を強い『記録の正本』とは評価しない。
情報を預かる事業にとって、セキュリティ事故は堀そのものを傷める。2026年10月の「i-ask」に関する公表では、最大713,126件の情報に影響が及んだ可能性が示された。現時点で、その全件が流出したと断定することはできない。一方、再発防止の費用、顧客への説明、契約更新時の比較検討は、事故の確定被害件数とは別に生じうる。安全性の回復を実績で確かめる必要がある。
財務面では、2026年6月期末の純有利子負債はマイナス約7.8億円で、表面上は純現金である。ただし、資金を買収に振り向ければ株主に返せる現金は減る。過去10年には高収益の時期と大幅赤字の時期が混在し、増分の投下資本利益率が安定して資本コストを超えたとは言えない。2024年の巨額損失と、その後の事業売却は、連続した買収による規模拡大を利益成長と取り違えてはいけないことを示している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
DX事業が向き合う国内IT市場は大きい。企業のクラウド移行や自治体のデジタル化には依然として需要があり、国内の業務SaaS市場も名目では成長が見込まれる。しかし、市場全体が伸びても、従来型の管理画面に対する課金や受託作業の量まで伸びるとは限らない。Microsoft、Salesforce、各種AIエージェント、国内の独立系開発会社が顧客の業務を取り合う。競争の単位は、ソフトを何席売ったかから、顧客の仕事をいくらで終わらせたかへ移るだろう。
スカラのDX継続課金は、国内SaaS市場全体から見れば小規模である。したがって、市場を広く取れる可能性はあるが、逆に大手プラットフォームから値段を守る力も限定的である。企業サイト内検索や問い合わせ管理は、AIが自然言語で情報を探し、回答まで完結させる用途と重なる。自治体向けの蓄積は比較的粘り強いが、すべての製品を同じ成長市場として扱うべきではない。10年後には、新規DX投資が増えても同社の契約数が減るという展開が十分ありうる。
トレカは異なる市場にいる。日本玩具協会の2025年度に相当するカードゲーム・トレーディングカードの新品市場は約3,384億円で、リユース業界の調査では玩具・模型を含む中古分野が約3,223億円と推計されている。後者はトレカ専業市場ではないため、その数字でスカラの厳密なシェアを計算することはできない。それでも、遊々亭の約28億円という事業規模は、中古ホビーの流通全体から見ればまだ小さい。中古カード専門店の売上比較では、晴れる屋やドラゴンスターなど、同社を上回る規模の競合がある。
トレカの長期需要を決めるのは人口だけではない。ポケモンカード、遊戯王、ワンピースカードなどの人気商品の継続、新作投入、大会文化、収集需要、海外人気が取引量を動かす。新品販売額と中古売買の回転数は一致せず、人気が落ちれば中古在庫の値崩れが利益を直撃する。一方、複数タイトルと通販・実店舗を組み合わせれば、単一作品への依存を和らげられる。スカラが市場の成長を超えて売上を伸ばせるかは、カード相場よりも、仕入れ量と販売回転率で他店を上回れるかにかかる。
人材紹介では、リクルート、マイナビ、スポーツフィールドなどが採用企業と学生の接点を競う。体育会学生への特化は大手総合媒体との差別化になるが、国内の若年人口は減少方向にある。AIによる候補者検索や企業への直接応募も紹介会社の手数料を圧迫する。地方創生では自治体予算や政策の継続が需要を左右するため、民間SaaS市場の成長率をそのまま当てはめない。5つの市場を混同せず、何件の取引が残り、1件からいくら稼げるかを見る必要がある。
資本政策と M&A
スカラの資本配分には、評価できる点と厳しく見るべき点がある。2016年にはソフトブレーンを買収して事業規模を拡大したが、その後はグループの組み替えと売却が続いた。2021年のソフトブレーン関連事業の売却によって大きな売却益が生じた一方、2024年6月期には減損などを背景に約29億円の純損失を計上した。規模が大きくなったことと、長期株主が得た価値が大きくなったことは同じではない。
2025年9月公表の中期経営計画は、2028年6月期の売上収益118億円、営業利益11億円、ROIC6.5%以上を掲げている。株主還元については一過性の損益を除いた利益を基準とする配当性向50%を基本とする。自社株買いは実施しており、2026年6月期の取得額は約0.9億円だったが、中期計画に総還元性向や自社株買い金額についての固定的な数字の約束は確認できない。なお、ROIC目標6.5%は、この分析で求める資本コスト8.25%を下回る。目標を達成しただけでは経済的な超過利益が生まれるとは言えない。
2026年7月にはトレカ店7店舗を運営するHATOを取得し、取得対価は約1.9億円、諸費用を含め約2.1億円だった。同年9月にはDX関連企業Terraの80%を約8.4億円で取得した。両案件は成長の種になりうるが、2026年6月末の純現金約7.8億円を超える取得負担でもある。取得後の現金・借入・のれんの姿が確定するまでは、決算日現在の純現金をそのまま余剰資産として株式価値に上乗せしない。
2026年10月22日時点で、同社に発表済みのTOB、MBO、上場廃止予定は確認されず、2026年6月期の継続企業の前提に関する注記も該当なしである。今後の再編や買収の可能性は株主にとって無視できないが、未発表の買付価格を本質価値に織り込まない。上位株主の持分が圧倒的に集中している会社でもないため、現金の株主への戻り方は、実際の配当と自社株買いで判断する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スカラを評価する最大の根拠は、主力事業の姿が変わりつつあることだ。遊々亭は2026年6月末に35万人を超える会員を抱え、通販の顧客接点と商品在庫を蓄積している。さらにHATOの7店舗を取得したことで、通販だけでは拾えなかった店頭買取、即日販売、イベント参加者との接点が加わった。カード取引は現物を動かす商売であり、AIエージェントが顧客の業務画面を代わりに操作するようになっても、カードを査定し、集め、届ける仕事は残る。オンラインと店舗の在庫を一体で管理できれば、同じ資金からより多くの売上を生み出せる。
DX事業にも価値がないわけではない。1,300社を超える継続契約顧客があり、毎月約2.34億円の継続売上が積み上がっている。自治体システムには長年の導入と運用の蓄積があり、顧客が突然すべてを切り替えることは簡単ではない。AIを使う顧客にとっても、社内の正しい情報を管理し、問い合わせの根拠を残す仕組みは必要だ。画面の使いやすさだけに頼る製品を整理し、データ連携や業務の中核を握るサービスへ移ることができれば、DXの利益率は維持できる。
資本政策も改善の余地がある。ソフトブレーン時代の大型化とその後の再編を経て、現在の事業構成は以前より理解しやすくなった。HATOは小規模な取得であり、Terraも既存顧客へ組み合わせて売れるなら相乗効果を得られる。2028年の中期計画を着実に達成し、その後は買収額を抑えて配当と自社株買いを増やせば、投下資本の効率は改善する。トレカの取引件数が伸び続け、企業価値の中心が実物取引へ移れば、10年後の時価総額は現在を大きく上回りうる。
慎重な見方
この会社の長期株主は、買収と減損を伴う利益の振れをすでに経験している。2019年には売上が170億円を超えていたが、2026年6月期は約85億円である。規模の縮小がすべて悪いわけではないものの、一度膨らんだ売上が恒久的な株主利益に結びつかなかった事実は重い。2024年6月期には約29億円の純損失が生じ、株主資本が大きく毀損した。2026年夏の新たな買収が成功すると、根拠なしに考えることはできない。
DX事業は、AIエージェントが最も強く侵食する領域を含む。Webサイト内検索、問い合わせ対応、画面を操作して情報を登録するソフトは、顧客が最終的に欲しい回答そのものではなく、その回答を得るための道具である。AIが顧客のシステムを横断して回答や手続きを完了すれば、画面を使う契約数も受託作業の工数も減る。自治体の導入実績は評価できるが、全社の料金を物価以上に引き上げられる証拠にはならない。2026年10月の不正アクセス事案は、まさに情報を預ける信頼が競争力の一部であることを示した。
トレカ事業にも守られた市場はない。カードの人気が続いても、メルカリや専門店との価格競争で仕入れ差益が縮む可能性がある。逆に人気が落ちれば在庫の評価損が生じる。実店舗の取得で賃料、人件費、在庫が増えれば、通販で実現してきた利益率は薄まる。店を増やすほど収益が増えるとは限らず、売上の伸びに必要な運転資金も大きくなる。人材紹介では若年人口とAI直接採用が逆風となり、地方創生も政策予算に依存する。
さらに、2028年の中期計画で掲げるROIC6.5%以上は、長期株主が求める資本コストを下回る。目標どおりに利益を回復したとしても、追加で使った資金が十分な利益を生むとは限らない。決算日現在の純現金を支えに見せながら、その後に買収へ投じた資金をもう一度株主価値に足すこともできない。資本効率を確かめるまでは、現在の株価に厚い安全域は認めにくい。
どちらに重みを置いたか
事業の上振れ余地は主にトレカにあり、DXと人材支援には構造的な縮小圧力がある。議論を分けるのは、HATOとTerraを含む買収資金が、過去と異なり継続的な株主利益を生むかどうかだ。2024年の大幅損失と2026年の情報セキュリティ事案を踏まえ、上側28%に対し下側40%とした。下に寄せる理由は会社固有の資本配分と信頼回復の不確実性であり、AI代替による数量減少を確率でも重ねて引いたものではない。約45億円の本質価値は現在の時価総額を約21%下回るため、結論はやや割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 336 円58 億円(+ 還元の換算額還元の合計 166 円28 億円)。 今の値に割り戻すと 264 円45 億円、今との差 −16.5%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,046 円179 億円 | 327 円56 億円 | +334.6% | +19.2% | 137 円24 億円 |
| やや楽観 | 18% | 636 円109 億円 | 245 円42 億円 | +179.0% | +13.2% | 159 円27 億円 |
| 中立 | 32% | 277 円47 億円 | 175 円30 億円 | +43.2% | +4.6% | 145 円25 億円 |
| やや悲観 | 26% | 83 円14 億円 | 105 円18 億円 | −40.4% | −6.7% | 49 円8 億円 |
| 悲観 | 14% | 47 円8 億円 | 41 円7 億円 | −72.1% | −14.5% | 12 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 336 円58 億円 | 166 円28 億円 | +58.9% | +5.8% | 502 円86 億円 |
今の株価時価総額 316 円54 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% トレカの全国展開と買収後の収益改善が両立 利益 14 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,046 円179 億円
遊々亭は通販と実店舗を一体運営し、査定価格と在庫情報を即座に共有する。HATOの店舗を足場に買取拠点を増やし、ポケモンカードや遊戯王など複数タイトルで利用者を広げる。日本のトレカ流通市場は中古取引の回数が増えることで実質的に拡大し、スカラは同業他社から取扱量を奪う。売上は大きく伸びるが、在庫の値上がり益を恒常的な利益とは数えず、販売回転と買取効率の改善によって高い利益率を保つ。
DXは、AIに不要になる画面機能を縮小しながら、既存顧客のデータ管理や連携に必要な部分を残す。契約社数そのものは現在を上回らないものの、顧客当たり単価は付加価値の高い契約への移行で維持する。Terraの取得によって機能が補完され、顧客離反を抑える。人材事業も担当者を減らしつつ、専門性の高い採用支援に集中する。
経営陣は大型の失敗買収を繰り返さず、トレカの在庫管理と顧客基盤に資金を集中する。2024年に見られたような減損は再発せず、全社の固定費も売上ほどには増えない。継続的な黒字化によって自社株買いと配当を厚くでき、10年後にはトレカが企業価値を支える圧倒的な柱となる。
- DX継続課金・業務ソフト:数量 1,180(年度末の継続契約顧客数(社、売上換算用))× 価格 0.02(1顧客当たり年額換算継続売上(億円/社))→ 売上 29 億円・営業利益 7 億円。契約数は現在の約0.90倍、単価は1.14倍。AI時代でもデータ連携の価値を守り、利益率23%。
- DX受託・運用・BPO:数量 75.0(比較可能な年間プロジェクト等価件数(件、推定))× 価格 0.21(1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。等価件数は0.75倍、単価は1.33倍。成果物の高付加価値化で工数縮小を補う。
- 人材・採用支援:数量 25,700(地域別・サービス別の登録学生数の合計(人、重複可能性あり))× 価格 0.00(登録学生1人当たりに換算した年間売上(億円/人))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。登録基盤は約0.75倍、換算単価は1.34倍。専門職紹介への集中で採算改善。
- トレーディングカード流通:数量 720,000(通販と店頭を共通客単価に換算した年間購買等価件数(件))× 価格 0.00(購買1件当たり売上(億円/件))→ 売上 107 億円・営業利益 17 億円。通販・店頭の購買等価件数72万件、平均単価1万4,800円、営業利益率16%。
- 地方創生・事業共創:数量 12.0(年間支援案件の等価件数(件、推定))× 価格 0.15(1案件当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件数は0.75倍、単価は物価上昇以内。採算の低い事業を撤退・整理。
倍率:資本コストk=8.25%、2036年ROE=14.02564÷75=18.70%。堀は普通とし、超過ROEの残存割合を1/2とするとRONIC=13.48%。長期gは1%なので正当化PER=(1−0.01÷0.1348)÷(0.0825−0.01)=12.77倍。現在の株価や過去の市場倍率ではなく式の上限そのものを用いた。純利益約14.03億円に適用し、資産の二重加算は行わない。
確率:遊々亭の会員基盤を実店舗の仕入れ・販売につなぎ、HATOとTerraの取得がともに成功する筋書きである。複数タイトルの人気継続、在庫回転の向上、買収事業の利益定着という条件が重なるため、十分な可能性はあるが中心にはしない。
やや楽観 18% トレカの拡大がDXの縮小を上回る 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 636 円109 億円
トレカの人気は作品によって入れ替わるが、市場全体では中古取引が定着する。遊々亭は会員基盤を生かして既存通販の利用頻度を高め、HATOの7店舗を取り込んだ後も無理な出店をせずに店舗網を拡張する。競合の晴れる屋やドラゴンスターほどの圧倒的な規模には至らないが、在庫回転を維持できる範囲で着実にシェアを伸ばす。店舗の賃料や人件費を考慮しても、流通事業の利益率は現在を少し上回る。
DXの管理画面型サービスはAIによって縮小するが、顧客のデータや既存システムへの接続を提供する仕事は残る。新規顧客を急増させるのではなく、既存の顧客との契約を保つ方向へ経営資源を集中する。Terraのサービスを販売網に組み合わせる一方、人手で行う開発・運用の等価案件数は減る。採用支援も学生会員の縮小を前提に、専門性のあるサービスの単価を維持する。
2024年の損失を教訓に、経営陣は大型買収を抑え、利益の一定割合を配当と自社株買いに戻す。全社売上の伸びは主にトレカによるものとなり、10年後にはDX中心のIT会社から、実物取引を柱とする複合企業へ移る。
- DX継続課金・業務ソフト:数量 1,170(年度末の継続契約顧客数(社、売上換算用))× 価格 0.02(1顧客当たり年額換算継続売上(億円/社))→ 売上 28 億円・営業利益 5 億円。契約数0.89倍、年額換算単価1.13倍。画面機能を減らしつつ主要顧客を維持。
- DX受託・運用・BPO:数量 74.0(比較可能な年間プロジェクト等価件数(件、推定))× 価格 0.22(1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。等価案件数0.74倍、単価1.34倍。工数は縮小するが原価改善で利益を確保。
- 人材・採用支援:数量 25,500(地域別・サービス別の登録学生数の合計(人、重複可能性あり))× 価格 0.00(登録学生1人当たりに換算した年間売上(億円/人))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。学生登録基盤は約0.74倍、単価1.34倍。既存の専門性を維持。
- トレーディングカード流通:数量 550,000(通販と店頭を共通客単価に換算した年間購買等価件数(件))× 価格 0.00(購買1件当たり売上(億円/件))→ 売上 73 億円・営業利益 11 億円。購買等価件数55万件、平均単価1万3,200円、営業利益率14.5%。
- 地方創生・事業共創:数量 12.0(年間支援案件の等価件数(件、推定))× 価格 0.15(1案件当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人月を減らしつつ選別受注を進め、わずかな黒字を維持。
倍率:k=8.25%、ROE=8.69554÷64=13.59%、残存割合1/2でRONIC=10.92%。長期g=1%を使うと正当化PER=(1−0.01÷0.1092)÷(0.0825−0.01)=12.53倍。式で正当化される上限そのものとし、過去の市場倍率を参照しない。
確率:既存の通販基盤に買収店舗を接続することは実行可能であり、DXの減速をトレカで補う余地はある。ただし、実店舗と通販の相乗効果が全社利益まで届くには在庫回転と本社費の管理が必要となる。
中立 32% トレカの成長が残り、DXは実質的に縮む 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 277 円47 億円
トレカ市場は流行の波を繰り返すが、複数のカード作品の中古流通が生活文化として残る。遊々亭は通販の会員基盤とHATOの店舗を使い、現在より多くの商品を買い取り、販売する。取引は拡大するものの、メルカリや専門店との競争で買取と販売の利ざやは大幅には広がらない。人気商品の在庫不足と不人気商品の評価損が交互に生じ、成長には仕入れ資金を継続的に必要とする。
DXの顧客はAIエージェントを採用し、管理画面を開いて検索や問い合わせを処理する回数を減らす。スカラの既存システムは一部がデータ保管や連携の役割を果たすが、継続契約社数は約1,100社へ減る。単価は名目でやや上がるにとどまり、物価上昇分を十分には顧客へ転嫁できない。開発・運用の等価案件数は現在の約3分の2へ減り、人材支援も登録基盤の縮小を受け入れる。インキュベーションは売上規模が縮み、損益均衡が精いっぱいとなる。
経営陣は過去ほど大きな減損を繰り返さないが、買収による成長を完全には株主利益へ転換できない。管理費は物価上昇で増え、増収の一部を吸収する。全社営業利益率は約6%となり、ROEも資本コストを下回る。10年後も会社は存続し、現物カード流通という強みを持つが、高い利益率で拡大する優良SaaS企業にはならない。
- DX継続課金・業務ソフト:数量 1,100(年度末の継続契約顧客数(社、売上換算用))× 価格 0.02(1顧客当たり年額換算継続売上(億円/社))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。契約顧客数は2026年比0.84倍、年額換算単価は1.09倍。AIエージェント代替により物価並みの値上げは困難。
- DX受託・運用・BPO:数量 66.0(比較可能な年間プロジェクト等価件数(件、推定))× 価格 0.21(1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。等価案件数0.66倍、単価1.30倍。人月・工数が縮小し、価格は物価上昇以内。
- 人材・採用支援:数量 23,100(地域別・サービス別の登録学生数の合計(人、重複可能性あり))× 価格 0.00(登録学生1人当たりに換算した年間売上(億円/人))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。登録基盤は0.67倍、代理単価1.30倍。人口減少とAIマッチングの双方が数量に影響。
- トレーディングカード流通:数量 430,000(通販と店頭を共通客単価に換算した年間購買等価件数(件))× 価格 0.00(購買1件当たり売上(億円/件))→ 売上 52 億円・営業利益 6 億円。通販・店舗を合わせた等価取引43万件、平均単価1万2,100円、営業利益率12%。
- 地方創生・事業共創:数量 11.0(年間支援案件の等価件数(件、推定))× 価格 0.15(1案件当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件等価件数0.69倍、単価1.27倍。案件を絞って損益均衡。
倍率:k=8.25%。2036年ROE=3.9155944÷62=6.32%となり、資本コストを下回る。ROEがk以下では再投資による価値創出を認めず、事業の稼ぐ力の上限1÷k=12.12倍を採用する。AI代替の影響は契約数・案件数とg_long=1%に織り込み、PERを恣意的にさらに削らない。
確率:既存トレカ事業と取得店舗には一定の拡大余地がある一方、DXの席・画面課金と受託工数には明確なAI代替圧力がある。両者が相殺され、全社利益が大きくは伸びない姿を中心とする。
やや悲観 26% DXの顧客離反が進み、トレカも利益率を落とす 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 83 円14 億円
DXでは大手プラットフォームが検索、問い合わせ対応、社内業務の自動化を一体で提供する。スカラは既存顧客の一部を守るものの、独立した管理画面に支払う費用が見直される。2026年の不正アクセス事案をきっかけに契約更新時のセキュリティ審査が厳しくなり、一部の顧客が他社へ移る。継続課金の契約顧客は1,000社を割り、平均単価も現在とほぼ同じになる。
トレカは市場そのものが消えないが、買収店舗の賃料と人件費が固定費として残る。人気カードの相場が落ちる時期に在庫を値下げする必要が生じ、仕入れ資金の回転が悪くなる。通販と店舗の統合効果は限定的で、取引等価件数は現在と同じ程度にとどまる。通販だけで得られた利益率が全社へ広がることはない。
人材紹介では採用企業がAIによる直接採用を進め、登録会員が減る。官民共創の仕事も予算削減に左右されるため、固定費を削減しても赤字になる。経営陣は大型投資を控えるが、事業を整理する費用がかかり、全社利益は小さくなる。会社は存続し配当も減額しながら続くものの、長期株主の資本が十分な利益を生まない状態となる。
- DX継続課金・業務ソフト:数量 950(年度末の継続契約顧客数(社、売上換算用))× 価格 0.02(1顧客当たり年額換算継続売上(億円/社))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。契約数0.72倍、単価はほぼ横ばい。AI対応の値下げと解約が同時進行。
- DX受託・運用・BPO:数量 55.0(比較可能な年間プロジェクト等価件数(件、推定))× 価格 0.19(1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。受託等価案件数0.55倍、単価1.20倍。人月需要の縮小を価格で補えない。
- 人材・採用支援:数量 19,600(地域別・サービス別の登録学生数の合計(人、重複可能性あり))× 価格 0.00(登録学生1人当たりに換算した年間売上(億円/人))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。登録基盤0.57倍、代理単価1.21倍。紹介会社を介さない採用が普及。
- トレーディングカード流通:数量 285,000(通販と店頭を共通客単価に換算した年間購買等価件数(件))× 価格 0.00(購買1件当たり売上(億円/件))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。購買等価件数28.5万件、平均単価1万500円、店舗費用で利益率低下。
- 地方創生・事業共創:数量 8.0(年間支援案件の等価件数(件、推定))× 価格 0.13(1案件当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件数が半減し、事業整理費用を負担。
倍率:10年後ROEは1.018÷55=1.85%とk=8.25%に届かないため、上限は1÷k=12.12倍である。顧客喪失と在庫リスクで稼ぐ力が持続しない筋書きなので、これをわずかに下回る11.8倍とする。事業の純利益1.018億円に対応する時価総額12.0124億円は、純利益÷kの上限12.34億円を下回る。さらに現在の純現金約7.8億円を基準とする税後換価可能資産の床8億円を上回っている。過去の市場のPBRには依拠しない。
確率:AI代替とは別に、会社固有の情報管理への信頼回復、買収後の統合、トレカ店舗の固定費が想定より重くなる可能性がある。2024年の損失経験を踏まえ、軽視できない下振れとした。
悲観 14% 買収と技術代替で収益力が崩れ、資産回収が中心となる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 47 円8 億円
DXでは顧客企業がAIエージェントを標準採用し、独立した検索・問い合わせ管理サービスの多くが使われなくなる。自治体向けの一部運用契約は残るが、他社の統合基盤に切り替える案件が増える。顧客は必要なデータを維持しながら契約先を変え、スカラの契約社数は現在の半分以下になる。人手による開発・運用も大きく縮小し、顧客に対する値決め力を失う。
トレカでは主力タイトルの相場が弱まり、メルカリや専門店との価格競争が激しくなる。HATOの実店舗を維持する固定費が利益を圧迫し、不人気在庫を処分する損失が生じる。買取の回転率が下がることで仕入れ資金が滞留し、既存通販の利益率まで下がる。人気作品が残っても、スカラだけが高い利益を維持できる理由はなくなる。
経営陣は不採算事業を売却・縮小し、過去の買収に伴うのれんや無形資産を減損する。インキュベーションと採用支援も固定費を回収できなくなる。配当は前半の残存利益から少額が支払われるが、後半には停止する。10年間の後半に営業赤字が続くため、将来の稼ぐ力だけでは企業価値を十分に説明できなくなる。しかし、事業縮小時には売掛金と在庫の現金化、不要資産の売却、運転資金の回収も進む。無形資産を減損しても現金が同額流出するわけではないため、残存する株式価値は実績純現金を基礎とした税後換価可能資産から評価する。
- DX継続課金・業務ソフト:数量 600(年度末の継続契約顧客数(社、売上換算用))× 価格 0.02(1顧客当たり年額換算継続売上(億円/社))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。契約数0.46倍、単価0.89倍。中立より深い構造的な顧客喪失。
- DX受託・運用・BPO:数量 35.0(比較可能な年間プロジェクト等価件数(件、推定))× 価格 0.16(1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。等価案件数0.35倍、単価横ばい。AI代替と競合への移管が重なる。
- 人材・採用支援:数量 16,000(地域別・サービス別の登録学生数の合計(人、重複可能性あり))× 価格 0.00(登録学生1人当たりに換算した年間売上(億円/人))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。登録基盤0.47倍、代理単価はほぼ横ばい。直接採用が広がる。
- トレーディングカード流通:数量 165,000(通販と店頭を共通客単価に換算した年間購買等価件数(件))× 価格 0.00(購買1件当たり売上(億円/件))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。購買等価件数16.5万件、平均単価7,700円。市場縮小と在庫処分損。
- 地方創生・事業共創:数量 4.0(年間支援案件の等価件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たり年間売上(億円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。主要案件を失い、撤退費用も負担。
倍率:2036年の純利益はマイナス2.783625億円であり、赤字事業に永続的なPERを適用しない。2026年6月期の親会社持分約47.56億円に対し、税後換価可能資産の床約8.0億円に近い0.17倍を適用する。47.56億円×0.17=8.0852億円であり、2036年の自己資本15.5億円には倍率を掛けない。現在の純現金約7.8億円を下回らず、売掛金・在庫等の税後売却価値とリースを含む債務、整理費用の相殺後の残存価値としても約8.0億円を確保する。過去のPBRの底や市場評価を根拠とせず、資産回収価値を基準に評価した。
確率:DX事業の競争力喪失、トレカの在庫評価損、買収後の減損が重なる複合的な構造敗北である。2024年の巨額損失という具体的な前例があるため、通常の不況より深い筋書きを無視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
DX継続課金・業務ソフト
i-search、i-ask、情報配信などの継続課金。管理画面や検索インターフェースを顧客が利用する部分を含み、自治体向けには業務データの蓄積もある。
| 数量年度末の継続契約顧客数(社、売上換算用) | 価格1顧客当たり年額換算継続売上(億円/社) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,311 | 0.02 | 28 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.02 | 26 | 4 |
取り方:2026年8月の会社決算説明資料では、2026年6月末のDX継続契約顧客数が1,311社、月次継続売上が約2.34億円と開示されている。月額×12か月=28.14億円を期末の年額換算収入とし、1,311社で割って年額約215万円/社を求めた。期末ARRは年度売上とは一致せず、DX売上44.19109億円を事業分析のために分割する近似である。セグメント内の営業利益の製品別開示はないため、継続課金側3.95億円、その他0.51737億円の配分は推定であり、合計が開示のDX利益4.46737億円に一致するよう区分した。AIエージェント代替の区分は『席課金・画面中心の業務ソフト』とする。
DX受託・運用・BPO
顧客企業や自治体向けの開発、導入、運用、人的な支援を含む。継続課金の年額換算売上を除いたDX売上を分析上の母数とする。
| 数量比較可能な年間プロジェクト等価件数(件、推定) | 価格1件当たり売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 100 | 0.16 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 0.21 | 14 | 1 |
取り方:DX事業の開示売上44.19109億円から、期末月次継続売上の年額換算28.14億円を差し引いた16.05109億円を、受託・運用等の分析上の残余売上とした。会社はこの内訳の案件件数と平均単価を開示していない。数量100件、単価1件当たり約1,605万円は実績件数ではなく、数量と価格を別々に変化させるための比較可能な等価件数の仮定である。国内IT市場は数十兆円規模だが、ハードウェア等も含むため、この残余売上を市場シェアへ直接換算しない。AI代替の型は『人月・工数で売る受託・運用・BPO』とする。
人材・採用支援
体育会学生や女子学生などに特化した新卒採用支援、企業への紹介・採用関連サービス。
| 数量地域別・サービス別の登録学生数の合計(人、重複可能性あり) | 価格登録学生1人当たりに換算した年間売上(億円/人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 34,350 | 0.00 | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 23,100 | 0.00 | 10 | 1 |
取り方:会社の2026年8月決算説明資料にある学生会員の東京12,135人、関西6,495人、東海2,370人、女子学生向け13,350人を合算した34,350人を使用した。年度やサービスの重複がありうるため、これは重複を除いた就職決定人数ではない。売上11.27487億円をこの数で割った約3.28万円は実際の紹介手数料ではなく、登録基盤1人当たり売上の代理単価である。会社は成功報酬対象の採用人数と成約単価を十分には開示していない。AI代替の型は人手を使う採用支援・紹介業務とする。
トレーディングカード流通
遊々亭の通販による中古カード等の買取・販売。2026年7月取得のHATOの実店舗展開は翌期以降の数量に反映する。
| 数量通販と店頭を共通客単価に換算した年間購買等価件数(件) | 価格購買1件当たり売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 293,000 | 0.00 | 28 | 4 |
| 10 年後 中立 | 430,000 | 0.00 | 52 | 6 |
取り方:会社資料で開示された2026年6月期のトレカ売上28.04459億円と、四半期の客単価約8,837円、9,152円、9,793円、10,476円を利用した。四半期の単純平均は約9,565円であり、売上をこの水準で割ると年間約29.3万件となる。会社が年間取引件数を直接開示したわけではないため、293,000件は取引等価件数という推計である。期末会員354,573人は累計・ストックの顧客基盤であって年間注文数ではない。今後の実店舗売上も通販客単価へ換算し、数量と価格を二重計上しない。新品カード市場約3,384億円や中古玩具・模型市場約3,223億円は市場規模の参考であり、トレカ中古市場の厳密な分母ではない。カードの査定・保管・現物配送はAIエージェントによる直接代替の対象外とする。
地方創生・事業共創
官民連携、地方創生、新事業創出などの案件型サービス。現在は赤字で、受託・助言に人の工数を必要とする。
| 数量年間支援案件の等価件数(件、推定) | 価格1案件当たり年間売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 16.0 | 0.11 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 0.15 | 2 | 0 |
取り方:2026年6月期のインキュベーション事業の開示売上1.82839億円、セグメント損失0.58042億円を起点とする。会社は案件数と案件別単価を公表していないため、16件という比較可能な等価件数を仮定し、1件当たり約1,143万円を推計した。実際の契約本数と断定しない。自治体の予算と個別案件の受注に左右され、AI代替の型は助言・事業支援という人月・工数の仕事とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替による契約数・工数の減少
Webサイト内検索、問い合わせ管理、業務画面を操作するソフトは、AIが顧客の望む回答や手続きを直接届けることで利用回数が減る可能性がある。受託開発、運用、人材採用支援、官民共創も、人が作業する時間に対する対価は縮小しやすい。中立では継続課金の顧客数を10年で0.84倍、受託等価件数を0.66倍とし、長期の成長率も抑えている。
i-askの不正アクセスと顧客の信頼
2026年10月に公表されたi-askへの不正アクセスでは、最大713,126件の問い合わせ情報が影響を受けた可能性がある。この数がすべて流出したと確定したわけではないが、顧客への説明、追加対策、契約更新時の審査には費用がかかる。被害の確定範囲、再発防止策、解約率や新規契約への影響が不明な間は、DXの強い堀を認めにくい。
トレカの人気変化と在庫評価損
ポケモンカードなど特定タイトルの人気が下がった場合、店頭と通販の在庫を値下げして処分する必要がある。会員数の増加と商品相場の上昇が同時に起きると、流通能力の向上による利益と値上がり益を混同しやすい。新品の供給量増加や競合店の買取価格引き上げも粗利を圧迫する。販売回転日数と在庫評価損を継続して確認する。
買収資金の回収と増分ROIC
2026年にはHATOとTerraを取得した。現金と借入によって取得できても、投じた資本に見合う利益が続かなければ株主価値は増えない。過去には大規模な買収、事業売却、2024年の巨額損失という経緯がある。中期計画のROIC目標6.5%は本分析の資本コスト8.25%より低く、買収後の利益を単なる売上増と区別して測る必要がある。
店舗の固定費と運転資金
HATOの実店舗7店を取り込むことで、賃料、人件費、棚卸資産が増える。通販の売上利益率をそのまま実店舗へ当てはめることはできない。売上が減っても店舗費用はすぐには下がらず、商品の買取価格は店頭競争に左右される。スカラはIFRSのリース会計をすでに採用しており、使用権資産とリース負債も財務の固定的な負担として扱う。
人材採用市場の人口減少と直接採用
採用支援の専門性は差別化要因だが、学生の人数そのものは人口減少に影響される。採用企業がAIを用いて候補者を直接探し、面談調整などを自動化すれば、紹介会社へ払う費用が圧縮される。体育会学生への特化で一定の需要を守れても、登録学生数と紹介手数料の両方が上がるとは考えにくい。採用決定人数と顧客企業の継続率が重要になる。
地方創生・自治体制度への依存
自治体向けシステムや官民共創には継続運用の蓄積があるが、自治体予算と制度変更の影響を受ける。累計導入実績は今後の全自治体への浸透率と同じではない。補助金や政策予算の縮小により新規案件が減る場合もある。安定した利用料を獲得できるサービスと、案件ごとの人手で収益を得る仕事を分けて利益を測る必要がある。
今後の分かれ目
- DXの継続契約社数が1,300社台から増加へ転じ、AI機能を含む契約単価も上昇したら
- AIによる数量減少の前提を見直す。ただし、AI関連機能の実際の売上や受注金額が開示されるまでは、単にAIを導入したことだけで強気の成長を認めない。
- i-askの不正アクセスについて調査結果と再発防止策が開示され、解約・損害賠償・契約更新への影響が限定的と確認されたら
- 顧客の信頼回復を評価し、やや悲観側の会社固有の不確実性を軽減する。流出の可能性がある件数と、実際に確認された被害件数は区別する。
- 遊々亭とHATOの統合後に、会員数、買取数量、在庫回転が同時に改善し、セグメント利益率が維持されたら
- トレカの数量と利益率の中立前提を上方修正する。新規出店の売上だけではなく、同一店舗の売上と在庫当たりの利益も確認する。
- トレカの人気商品価格が下落し、棚卸資産や評価損が売上に先行して増えたら
- トレカ事業の粗利率と資金回収の前提を下げ、やや悲観・悲観を重くする。短期の売上増加だけを成長の証拠とはしない。
- HATOとTerraの取得後の投下資本利益率が8.25%を安定して超え、買収後の借入も減ったら
- 経営の資本配分に対する評価を改善する。追加買収額より株主への還元が優先される場合、余剰現金の戻り方も再評価する。
- 2028年6月期の売上118億円・営業利益11億円の中期目標が未達となり、低採算のDXや店舗費用が原因と判明したら
- 一時的な計画遅延と構造的な収益低下を区別する。顧客数や取引量が伴わない未達なら、中立の利益率と事業価値を引き下げる。
- 継続的な自社株買い・増配が実現し、買収より株主還元への資金配分が優先されたら
- 留保現金の回収可能性を見直し、excess_cash_returnの0.75という前提を1.0に引き上げる余地を検討する。
見ておくもの
- DX継続契約顧客数と月次継続売上の四半期推移、および契約解約率
- i-ask不正アクセスの最終調査結果、顧客への影響、再発防止策
- AIエージェント対応製品の実際の受注額・売上額と既存製品の料金改定実績
- 遊々亭の会員数、客単価、年間取引件数、在庫回転日数
- HATOの店舗別売上・利益、店舗賃料と買取在庫の推移
- Terra取得後の利益、のれん、追加借入、増分ROIC
- 2028年中期計画の売上収益118億円、営業利益11億円、ROIC6.5%以上の進捗
- 営業キャッシュフローと純利益の差、配当総額、自社株買いの継続性
- 人材事業の登録学生数、採用決定人数、採用企業の継続率
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額は331円×17,119,445株で約56.67億円だが、数量・単価・営業利益・純利益の筋書きは現在の株価から逆算していない。DXは2026年の継続契約1,311社と月次継続売上を起点に、AIエージェント代替による数量・単価への影響を区別した。トレカは客単価と売上から推定した約29.3万件の取引等価件数を起点にし、2026年夏以降の店舗取得を将来の数量に反映した。資本コスト8.25%と10年より先の名目成長1%を用い、中立ROE6.32%は資本コスト以下なので、正当化PERの上限を1÷k=12.12倍とした。楽観・やや楽観もRONICから計算した上限を使い、現在や過去の市場PERには合わせていない。やや悲観は事業の稼ぐ力による時価総額約12.01億円が税後換価可能資産の床8.0億円を上回る。悲観は赤字のため2026年の親会社持分約47.56億円にPBR0.17倍を掛け、時価総額8.0852億円とした。これは実績純現金約7.8億円および税後換価可能資産の床8.0億円を下回らず、2036年の積み上げ自己資本には倍率を掛けていない。確率加重した2036年時価総額約56.96億円と10年間の還元約28.42億円を、それぞれ10年・平均5年の資本コストで現在価値に直すと約44.90億円となる。現在の時価総額との差は約マイナス20.8%で、判定はやや割高である。IFRSのリース負債はすでに認識されており、新しい日本基準の適用を理由に負債を二重計上しない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、利益変動の大きさ0.5%と弱めの値決め力0.25%を加える。β、時価総額の小ささ、個別買収リスクは別の上乗せに使わない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- スカラ 2026年6月期 決算説明資料(セグメント、継続課金、学生会員、遊々亭、業績見通し)
- スカラ 中期経営計画(2025年9月公表、2028年6月期の売上・利益・ROIC目標)
- スカラ 2026年9月 IR質疑応答要旨(HATO・Terraの買収内容)
- スカラコミュニケーションズ 2026年10月 i-askへの不正アクセスに関する公表
- スカラ 2026年6月期 決算短信・財務諸表(継続企業の前提、現金、借入、のれん、リース負債)
- スカラ 有価証券報告書等の開示本文(事業沿革、自治体サービス、資本構成)
- 日本玩具協会 玩具市場規模調査(カードゲーム・トレーディングカード市場)
- リサイクル通信 中古玩具・模型市場とリユース市場の推計
- リサイクル通信 中古カード関連事業者の売上比較