結論
勤次郎は、企業の勤怠管理を起点に、人事、給与、健康管理まで扱う業務ソフト会社である。筆者の結論は「割高」だ。記録を長く預かる事業の強さは認めるが、現在の時価総額約155億円に見合う利益が10年先まで続くかには、慎重でありたい。
強みは、単に勤怠画面を提供することではない。労働時間の記録、法改正への対応、給与計算との連携を一度組み込むと、顧客は簡単には移れない。2025年末のクラウド契約ライセンス数は約80万、年間の売上解約率は月次換算で約0.22%だった。利用が積み上がる事実と解約率の低さには、事業の堀、つまり他社が容易に奪えない強みが表れている。
ただし、画面操作や給与事務を人が担う現在の仕組みは、AIエージェントによって根本から変わりうる。勤怠の原記録は残っても、個別の操作画面や導入支援に対して現在と同じ料金を払い続けるとは限らない。低価格のKING OF TIMEが大きなシェアを握り、大塚商会向け販売が全社売上の38.3%を占めることも、自社だけで価格を決められない理由である。
2025年には営業利益率が28.3%まで上がったが、2026年上期は増収減益だった。過去数年の改善をそのまま10年間延長するのは危うい。中立では、法令対応と記録管理が収益を支える一方、操作型ソフトや導入支援は縮み、営業利益は現在より低い水準に落ち着くと考える。現預金に加えて定期預金と保有不動産があるため極端な下値は抑えられるが、その資産価値と長く稼ぐ力を合わせても、今の価格との差は小さくない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場で最初に確かめたいのは、10年後にも顧客が喜んで料金を支払う理由が残っているかだ。勤次郎には、その答えが半分ある。企業が労働時間を正しく記録し、法改正に対応し、給与や健康管理につなげる需要はなくならない。解約率の低さは、その仕組みが顧客の日常に根付いている証拠である。記録基盤としての事業は、これからも必要とされる可能性が高い。
しかし、残る半分には確信が持てない。現在のクラウド料金には、記録の保管だけでなく、人間が画面を操作するための機能や導入支援の価値も含まれている。AIエージェントがそれを代行する時代には、顧客が支払う対価の内訳が変わる。競合が安い料金で同じ結果を提供すれば、長年の利用履歴があるだけでは値上げを通し続けられない。販売パートナーへの依存も、会社が単独で顧客との関係を握っていないことを示している。
オーナー利益の評価では、純利益から事業維持に必要な開発費と設備更新を意識して差し引くべきだ。ソフトウェアの償却は過去の開発投資が費用になるもので、次の製品を作らなければ将来の収入は守れない。利益を再投資して資本コストを超える利回りを得られるかは、2025年の好業績だけでは証明されない。むしろ次の数年に投じる開発資金が、AI時代の競争力を決める。
現預金と不動産は株主にとって大切な安全網だが、事業に使う建物まで直ちに現金化できると考えてはならない。筆者なら、低解約率が続き、値上げが定着し、再投資による利益成長が確認できて初めて、より高い価値を認める。現時点では良い事業の一部分を持ちながら、会社全体の将来を高い精度で読める段階にはない。長く持つための安全域が不足しているというのが結論である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、勤怠管理ソフトの継続課金である。主力の「Universal 勤次郎」は、社員の出退勤、残業、休暇を記録するだけでなく、人事、給与、健康管理を結び付ける。顧客にとっての価値は、人が画面を開く回数ではなく、正しい労務情報を蓄積し、必要な時に取り出せることにある。工場や病院、流通企業など、勤務形態が複雑な組織では、この正確さが日々の業務を支える。
2025年のクラウドライセンス売上は約31.19億円で、全社売上の約58%を占めた。これに導入時の設定や支援、専用端末などの売上が加わる。従来型のオンプレミス製品では、ソフトの販売と保守が続くが、会社は顧客をクラウドへ移している。2025年のクラウド契約企業は2,599社、契約ライセンスは803,020人分だった。前年から約17万人分増えたことは、販売網と製品移行が機能している証拠である。
一方、同じ従業員が勤怠、人事、給与を使っても、会社が公表する契約ライセンス数では一人と数える。したがって、契約人数と売上を独立に考えなければならない。大口顧客が増えれば人数は伸びても割引によって単価が下がる。実際、2025年末の月額単価は400円だったが、2026年6月末は391円となり、人数の増加ほど単価は伸びていない。
販売先は企業だが、その手前には大きな販売パートナーがいる。2025年の大塚商会向け売上は約20.57億円だった。直販で顧客との関係を握るソフト会社とは異なり、販売網の支援が成長を速める反面、顧客の選択や値引き交渉に販売店の力が働く。加えて、不動産賃貸事業を持ち、2025年には外部顧客向けに約1.54億円の賃料収入を得ている。業務ソフトとは性質の違う資産事業として切り分けて考える必要がある。
優良さと弱いところ
最も評価できるのは、記録を長期にわたり預かり続ける仕組みである。企業が蓄積した勤務履歴は、給与の確認、労務監査、労働時間の是正に使われる。労働基準法などの改正に合わせて仕組みを更新しなければならず、導入済みの顧客が別の製品へ移るには、過去データと社内ルールの移行が伴う。クラウドの低解約率と、履歴を継続管理する製品構造の二つは、記録基盤の部分に一定の堀があることを示す。
ただし、その堀を会社全体に広げてはいけない。人が入力画面を操作する機能、定型の帳票作成、導入時の設定作業はAIに代替されやすい。独自データといっても、勤務履歴は本来顧客の情報であり、顧客が他社へ移せない所有物ではない。解約率の低さには製品の満足度だけでなく、現在進行中のクラウド移行という特殊な時期の影響もあるだろう。
資本効率の評価も慎重にしたい。2025年のROEは約9.9%に改善したが、その前の数年は低水準だった。長期の中央値は約3.8%であり、2025年を通常の稼ぐ力と決めつけられない。増収に伴う利益の増え方は大きい半面、開発人員、クラウド設備、ソフトウェア償却といった固定費を抱えるため、成長が止まれば逆の作用が生じる。
財務は比較的健全だが、資産の質にも差がある。現金同等物だけでなく定期預金を加えれば資金の余裕は厚い。一方、保有不動産には事業で使用する部分があり、簡単に全額を株主へ配れるわけではない。大塚商会など販売パートナー経由が売上の約6割を占めるため、低解約率がそのまま強い値上げ力を意味するとも限らない。筆者は、記録基盤には中程度の堀を認めるが、会社全体を強い堀の企業とは評価しない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の勤怠管理ソフト市場は、労働時間の記録義務とクラウド化を背景に拡大してきた。企業が人数を把握し、労務規則を守り、給与へ正しく反映する必要は10年後もなくならない。むしろ人手不足が進むほど、管理部門の省力化は重要になる。しかし、仕事の必要性が続くことと、現在のソフト会社が同じ料金を取り続けられることは別である。
富士キメラ総研の調査を引用した競合資料では、2024年度の勤怠管理SaaS・PaaS市場は約1,365万の課金IDで構成される。KING OF TIMEの数量シェアは28.2%で、次の企業が18.3%、その後に11.0%、8.1%などが続く。勤次郎の2024年末の契約ライセンス約63万を単純に割ると4.6%程度に相当する。ただし調査の課金IDと勤次郎の集計基準は完全には一致せず、この値は比較用の概算にすぎない。2026年7月にはKING OF TIMEの利用IDが455万を超え、規模の差は大きい。
価格競争も現実的だ。KING OF TIMEは勤怠だけでなく人事労務や給与機能を含め、全機能一律の月額料金を前面に出している。勤次郎は複雑な勤務体系への対応、健康情報との連携、大規模顧客への導入支援によって差別化する必要がある。市場の実質的な利用人数が増えても、低価格製品の普及と大口割引が続けば、顧客一人当たりの売上は物価ほど上がらない。
さらに10年先には、AIエージェントが勤怠の確認、申請、給与処理、異常値の抽出を代行する可能性が高い。従業員の勤務事実や法定記録は残るものの、人が操作する画面の数や導入時の作業工数は減りうる。これをすべて成長機会と見るのは早い。既存製品をAIから呼び出せる記録基盤へ変え、その対価を実際に回収できるかが勝負になる。国内の労働人口減少を踏まえると、10年後の市場全体の実質利用人数が今と同じ勢いで増え続ける想定にも慎重である。
資本政策と M&A
経営陣の資本配分には、評価できる点と気になる点がある。2024年の営業利益約7.3億円を2025年には約15.2億円まで伸ばし、クラウド化と開発投資が利益率の改善につながったことは確かだ。ただし、短期間の増分利益率が高かったからといって、今後も再投資利回りが高いとは限らない。次の開発投資では、既存機能をAIへ対応させる費用が先に生じ、追加売上が後から付いてこない可能性もある。
中期経営計画は2024年から2026年の3年間を対象とし、2026年の当初目標は売上57億円、営業利益12.15億円だった。2025年の進捗を受け、2026年の修正計画は売上60億円、営業利益16.01億円、営業利益率26.7%となった。2026年末のクラウド契約ライセンスは約100万を目指している。一方、2026年上期の営業利益は前年同期を下回っており、修正計画の達成には下期の回復が必要だ。
株主還元では2025年に増配しているが、確認した計画には配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額、目標ROEについて明確な数値の約束はない。配当は行っていても、利益の大半を定期的に株主へ返す方針とまでは言えない。創業者と資産管理会社などが議決権の約51.3%を持つため、少数株主は余剰資金の用途を直接決められない。この事情と還元実績を合わせ、余剰現金が株主価値に戻る割合は75%と評価する。
2025年の営業キャッシュフローは約22億円だったが、無形固定資産の取得には約9.3億円を使った。定期預金への振替を事業投資による現金流出と取り違えてはいけない。不動産についても、賃料収入があるというだけで土地建物の全額をソフト事業の価値に上乗せしない。大型M&Aによる明確な価値創造の実績は確認できず、将来の買収効果も中立の利益には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
勤次郎の価値は、単なる勤怠管理ソフトという分類では測れない。顧客は従業員の勤務履歴を長期に蓄積し、給与、健康管理、人的資本の情報と連携させている。過去の記録や社内規則をすべて移すのは手間がかかるため、低解約率は今後も続きやすい。2025年末には約80万のクラウド契約ライセンスがあり、企業数も増えている。複数サービスをまとめることで、既存顧客の一人当たり収入を上げる余地が残る。
大口企業への販売では、大塚商会などの販路が強みになる。自前で全国の営業拠点を広げる必要がなく、製造業や医療機関などの複雑な勤務形態を持つ顧客へ製品を届けられる。給与管理や人材管理の新機能が定着すれば、競合の低価格サービスと単純な料金比較をされにくくなる。小規模企業向け製品の展開も、これまで届きにくかった市場への入口となる。
AIも必ずしも敵ではない。画面操作を減らしても、正しい勤怠記録を保管し、法令に沿って判断する基盤は必要だ。顧客の利用履歴を引き継いだまま外部のAIから安全に呼び出せる仕組みを提供できれば、既存契約を守れる。固定費の多いソフト事業では収益が増えた時の増分利益率が高く、費用管理が成功すれば2025年の高い営業利益率を維持できる。
財務にも耐久力がある。現金同等物に長めの定期預金を加えれば実質的な純現金は約31億円となり、保有不動産には約49億円の開示時価がある。これらはソフト開発の失敗をすべて補うものではないが、資金調達の困難に陥る可能性を小さくする。経営が不採算開発を抑え、株主への還元を増やせば、長期の取り分は大きく改善しうる。
慎重な見方
最大の問題は、顧客が離れないことと、現在の料金体系が守られることを混同している点である。従業員が毎日勤怠画面を操作するという前提は、AIエージェントが業務をまとめて処理するようになれば崩れる。法定の記録は必要でも、その保存機能だけで従来の総合ソフト料金を受け取れるとは限らない。導入設定や帳票作成にも自動化の余地が大きく、顧客企業の人数以上に、収益を生む作業そのものが減りうる。
競争相手は小さくない。KING OF TIMEは2024年度の勤怠管理SaaS市場で数量シェア28.2%を占め、2026年には利用IDが455万に達した。一律料金で人事や給与の機能も提供するため、勤次郎が幅広い機能を付けるだけでは値上げの理由にならない。大口顧客への割引が広がれば契約人数の増加と売上単価の低下が同時に起こる。2026年上期に見られた単価の弱さは、その初期症状かもしれない。
販売網も弱点となる。大塚商会向けが売上の38.3%、販売パートナー全体では約6割を占める。販路を共有する競合が有利な条件を提示すれば、顧客が解約する前に新規受注や更新条件が悪化する可能性がある。さらに給与や人事を扱うシステムで大きな障害や情報漏えいが起きれば、信頼の回復には長い時間がかかる。
2025年の高い利益率にも注意したい。2026年上期にはすでに増収減益へ転じ、ソフトウェア償却費や人件費の増加が表面化した。今後の技術変化への対応を怠れば製品は陳腐化し、対応を急げば開発費が利益を圧迫する。不動産は売却すれば現金になるが、事業用の部分まで売れば移転や賃借の費用が生じる。帳簿の自己資本をそのまま最低価値とみなすのは危険であり、10年後に残る稼ぐ力と処分可能な資産を分けなければならない。
どちらに重みを置いたか
記録基盤には低解約率と履歴蓄積という二つの根拠があり、事業が消滅するとは考えない。ただし、会社全体の利益を左右するのは、価格競争と販売パートナーの力、開発投資の成果である。確率は楽観側28%、中立33%、悲観側39%とした。下側を厚くした理由は、大塚商会への販売集中と、2026年上期に人数増加と利益改善が一致しなかった事実である。AI代替による縮小はすでに中立の数量と長期成長率に含め、確率や資本コストで重ねて差し引いていない。資産の裏付けは評価するものの、現時価総額には依然として十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 723 円144 億円(+ 還元の換算額還元の合計 100 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 420 円84 億円、今との差 −45.8%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,101 円219 億円 | 191 円38 億円 | +66.6% | +5.7% | 116 円23 億円 |
| やや楽観 | 19% | 968 円193 億円 | 146 円29 億円 | +43.7% | +4.0% | 212 円42 億円 |
| 中立 | 33% | 811 円161 億円 | 111 円22 億円 | +18.9% | +1.9% | 304 円61 億円 |
| やや悲観 | 25% | 505 円101 億円 | 60 円12 億円 | −27.0% | −3.3% | 141 円28 億円 |
| 悲観 | 14% | 327 円65 億円 | 25 円5 億円 | −54.6% | −7.8% | 49 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 723 円144 億円 | 100 円20 億円 | +6.1% | +0.6% | 823 円164 億円 |
今の株価時価総額 775 円154 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 記録基盤が残り、総合HRMの採算も改善 利益 14 億円 · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,101 円219 億円
2035年には、顧客企業の労務記録の正本を保持する役割が確立している。勤怠管理の画面操作は簡素化されても、長年の履歴と給与情報を結び付ける基盤として製品が使われ続ける。労働基準法の改正や複雑な勤務体系への対応で、既存顧客が離れる理由は少ない。
大塚商会などの販売パートナーとの協業は維持され、競合の低価格サービスに対しても、複雑な組織への適合力で区別できる。クラウド契約人数そのものは大きく増やさなくても、人事・給与・健康管理を含む単価の上昇が売上を支える。開発を共通化し、導入支援の生産性を高めた結果、営業利益率は2025年を上回る水準へ改善する。
経営は大型買収に頼らず、既存製品の更新に必要な資金を優先する。不動産事業は安定した収入を保ち、純現金の一部は株主への還元に回る。AIを自社の新たな売上源として過大に見込まなくても、記録の正確さに対する支払いが続くことで、現在より強い稼ぐ力を維持できる筋書きである。
- クラウドの勤怠・労務記録基盤:数量 718,000(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 291(記録基盤部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 25 億円・営業利益 11 億円。記録基盤数量1.00倍、単価1.34倍。法令対応と総合利用で価格を守る。
- クラウドの操作画面・周辺機能:数量 718,000(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 167(操作・周辺機能部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 14 億円・営業利益 6 億円。操作型の数量は1.00倍まで、単価1.15倍。AIによる有料数量増は数えない。
- クラウド導入・設定支援:数量 375(年間の導入・追加設定案件数(件、推定))× 価格 0.02(一案件当たりの平均売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。工数型の数量0.75倍。複雑な導入案件への特化で単価1.34倍。
- オンプレミス製品・保守・導入支援:数量 2,250(年間の実効稼働顧客数(社、推定))× 価格 0.01(一社当たり年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。クラウド移行後も大型顧客の保守需要が残る。
- 就業情報端末:数量 2,140(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.00(一台当たり平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。専用機器数量は横ばい、名目単価1.34倍。
- 不動産賃貸:数量 2,150(外部貸付面積(平方メートル、推定))× 価格 0.00(平方メートル当たり年間賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。貸付面積は維持、賃料は物価に沿って上昇。
倍率:10年後の全社純利益14.358億円から余剰現金15億円の税後利息相当0.21億円を除く。k=7.5%、長期g=0.5%、moat=normalで超過ROEが将来半分薄まるとしたRONICから、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)を計算。営業資産以外の余剰現金は戻り方0.75で別に評価する。現在または同業の市場PERは参照しない。
確率:長年蓄積した勤怠・人事情報を維持したまま給与や健康管理の利用が深まり、低解約率と販売網を守れる場合である。AIを新たな有料製品として販売した金額の開示は確認できないため、AIによる数量増は仮定せず、クラウド各領域の数量は現状以下に抑えた。
やや楽観 19% クラウドの粘着性が競争を上回る 利益 12 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 968 円193 億円
勤怠記録を保持する基盤は、企業の労務管理に不可欠なものとして残る。既存の大口顧客は勤務履歴や給与との接続を維持するため、更新時に急いで競合へ切り替えることは少ない。クラウドライセンス数は現在から小幅な減少にとどまり、記録の正確さに対する料金は物価に近い伸びを確保する。
一方、申請画面や帳票作成はAIエージェントに処理を任せる企業が増える。利用人数は記録基盤よりも早く縮み、導入支援の作業量も減少する。KING OF TIMEをはじめとした低価格競合との比較は続くが、複雑な勤務体系を持つ顧客向けの機能とサポートが下支えになる。
経営は大型買収よりも既存製品の更新を優先し、無理な拡大による損失を避ける。費用は物価上昇とシステム更新のため増えるものの、共通基盤化によって一部を吸収できる。利益率は2025年に近い水準を保ち、現金の積み上がりと適度な配当が既存株主に帰属する。
- クラウドの勤怠・労務記録基盤:数量 689,280(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 276(記録基盤部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 23 億円・営業利益 9 億円。数量0.96倍、単価1.27倍。規制対応の基盤を維持。
- クラウドの操作画面・周辺機能:数量 674,920(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 165(操作・周辺機能部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。数量0.94倍、単価1.14倍。AIで操作が減る。
- クラウド導入・設定支援:数量 350(年間の導入・追加設定案件数(件、推定))× 価格 0.02(一案件当たりの平均売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。設定作業の自動化で案件数量0.70倍。
- オンプレミス製品・保守・導入支援:数量 2,050(年間の実効稼働顧客数(社、推定))× 価格 0.01(一社当たり年間売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。大型顧客の旧製品保守が一定量残る。
- 就業情報端末:数量 2,033(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.00(一台当たり平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量0.95倍、価格1.32倍。
- 不動産賃貸:数量 1,935(外部貸付面積(平方メートル、推定))× 価格 0.00(平方メートル当たり年間賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。一部空室を考慮し、賃料は物価並み。
倍率:k=7.5%、g_long=0.5%、moat=normal。純利益11.655億円から余剰現金15億円に対応する税後利息0.21億円を分け、10年後の事業ROEと資本コストの超過分が半分残るRONICを使う。正当化PERは約13.28倍で、上限から恣意的に割り引かない。別に現金15億円の75%を足す。
確率:低解約率と大口販売網が続き、人事給与との連携も一定程度浸透するが、専用画面や人手による設定作業の縮小は免れない筋書き。現在の契約維持実績から十分考えられるものの、価格競争の制約があるため楽観より高い確率とした。
中立 33% 記録は残るが、操作と導入工数は縮む 利益 9 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 811 円161 億円
2035年にも企業は勤怠を記録し、法令改正に対応し続ける。勤次郎の製品は大手・中堅企業の複雑な勤務規則に対応し、過去の勤務履歴を保管する仕組みとして一定の地位を保っている。ただし契約人数は現在より少なくなり、料金の値上がりもインフレには届かない。
AIエージェントが申請、照合、集計、給与処理を代行するようになり、人が触る画面に対して払う料金は伸びにくい。導入時に人手で行っていた設定作業も省力化され、案件数が減る。従来型ソフトの顧客はクラウドへ移行する一方、一部は安価な競合へ移る。販売パートナーは維持されるが、価格交渉の力は強くなる。
2025年の高い営業利益率は、規模の拡大と費用効率化が重なった結果だった。10年後には更新投資と競争による負担が増え、利益率はやや低くなる。不動産収入は継続するものの、空室と維持費を考慮する。営業利益は約13.2億円、純利益は約8.7億円となり、事業は十分に存続しても、足元の最高益をさらに伸ばし続ける会社とはならない。
- クラウドの勤怠・労務記録基盤:数量 646,200(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 269(記録基盤部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 21 億円・営業利益 8 億円。記録基盤の数量0.90倍、単価1.24倍。AI代替規則の『記録の正本』型に収まる。
- クラウドの操作画面・周辺機能:数量 588,760(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 159(操作・周辺機能部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。操作型の数量0.82倍、単価1.10倍。自動化で画面の価値が低下。
- クラウド導入・設定支援:数量 325(年間の導入・追加設定案件数(件、推定))× 価格 0.01(一案件当たりの平均売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。工数型の数量0.65倍、単価1.20倍。自動化による案件減少。
- オンプレミス製品・保守・導入支援:数量 1,750(年間の実効稼働顧客数(社、推定))× 価格 0.01(一社当たり年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。旧製品の数量0.70倍、単価1.10倍。クラウド移行と競争を反映。
- 就業情報端末:数量 1,819(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.00(一台当たり平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。専用端末は数量0.85倍、価格1.30倍。
- 不動産賃貸:数量 1,612(外部貸付面積(平方メートル、推定))× 価格 0.00(平方メートル当たり年間賃料(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。貸付面積0.75倍、賃料1.34倍。空室と維持費を考慮。
倍率:10年後純利益8.697億円から余剰現金15億円の税後利息0.21億円を除き、事業のROEとk=7.5%、名目g=0.5%を用いる。moat=normalで将来の超過ROEの残存率は1/2。RONIC=k+0.5×(事業ROE-k)を用いた正当化PERの上限が約13.15倍となる。10年後の利益に縮小を反映済みであり、倍率を今の市場価格に合わせていない。
確率:法令対応と過去履歴の保管は残る一方、クラウドの操作画面、人手による導入支援、従来製品の収入には構造的な縮小が起きる。2025年の高利益率を永続化せず、現在の低解約率も過大評価しない中心筋書きとした。下に寄せる理由は大塚商会向け売上38.3%という販路集中と、2026年上期の増収減益であり、AIの減点を確率で重ねてはいない。
やや悲観 25% 低価格競争と販路の交渉力が強まる 利益 5 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 505 円101 億円
勤次郎の記録基盤は消えないが、競争上の立場は弱くなる。KING OF TIMEや別の低価格製品が、大企業の一部にも入り込み、顧客は更新時に勤次郎へ値引きを求める。販売パートナーも利益率や導入のしやすさを重視し、複数製品を顧客に提案するようになる。
新規契約が減るだけでなく、古い製品からクラウドへ移る際に、すべての顧客が勤次郎を選ぶとは限らない。記録基盤の人数は現在の4分の3程度になり、操作画面型の人数はさらに減る。導入支援案件の単価は上がっても件数が減るため、売上を十分には守れない。
開発投資は止められないが、顧客が増えないため費用を回収しにくい。保有不動産も空室と維持費の負担が増える。会社は存続し、顧客の過去の記録も引き続き保管するものの、長く続く超過利益は乏しい。営業利益は約8.2億円、純利益は約5.4億円となる。株主還元は縮小し、利益の一部を維持投資に回し続ける10年になる。
- クラウドの勤怠・労務記録基盤:数量 538,500(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 250(記録基盤部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 16 億円・営業利益 6 億円。数量0.75倍、価格1.15倍。記録基盤にも乗換え圧力が及ぶ。
- クラウドの操作画面・周辺機能:数量 502,600(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 145(操作・周辺機能部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。数量0.70倍、価格横ばい。人による画面操作の価値が低下。
- クラウド導入・設定支援:数量 275(年間の導入・追加設定案件数(件、推定))× 価格 0.01(一案件当たりの平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。案件数0.55倍、単価1.12倍。
- オンプレミス製品・保守・導入支援:数量 1,500(年間の実効稼働顧客数(社、推定))× 価格 0.00(一社当たり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。契約数0.60倍、単価1.05倍。
- 就業情報端末:数量 1,498(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.00(一台当たり平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。打刻のスマートフォン化などにより数量0.70倍。
- 不動産賃貸:数量 1,290(外部貸付面積(平方メートル、推定))× 価格 0.00(平方メートル当たり年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。貸付面積0.60倍、賃料1.20倍。
倍率:ROEが資本コストを十分に上回らない構造的な競争劣位を評価する。今の自己資本102.5億円を基準としたPBR0.69倍による約70.7億円を用いる。過去の市場のPBRではなく、維持される利益の稼ぐ力と広義純現金・処分可能不動産の床を照合した値であり、将来の自己資本155.5億円に倍率を掛けて過大に評価しない。
確率:KING OF TIMEなどの規模と料金が競争条件を厳しくし、販売パートナー経由の新規導入も伸びにくくなる。契約基盤が残っても、利用者数と利益率がともに縮む事態は十分にありうる。AIによる数量縮小はセグメントで表現し、この確率は販路・競争・資本配分の不確実性を反映する。
悲観 14% 記録以外の価値を失い、資産の処分が下支えになる 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 327 円65 億円
2035年の勤次郎は、かつての主力製品で競争上の優位を失っている。企業の労働時間の記録は続くものの、顧客はAIから直接操作できる安価な業務基盤へ移り、勤次郎には古い履歴を管理する役割だけが残る。人が操作する画面の価値は大きく下がり、クラウドライセンス数も縮小する。
大塚商会などの販路では、販売しやすく低価格の競合製品が優先される。新規導入の案件数が減り、従来製品の保守収入も縮む。開発費、システム維持費、専門人材の人件費は急には減らせないため、会社の営業利益はほぼ消える。ソフトウェアへの追加投資が十分な収益を生まず、一部に減損も生じる。
経営は規模を縮め、事業用不動産の一部を売却する選択を迫られる。物件には社内利用部分があるため、開示時価の全額が手元に残るとは考えない。長期の借入金を差し引いた実質的な純現金と、移転費用や換金の難しさを控除した不動産価値が下値を支える。株主還元は最小限となり、営業事業にはほとんど超過利益が残らないが、今ある資産をすべて失うような破綻までは想定しない。
- クラウドの勤怠・労務記録基盤:数量 359,000(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 217(記録基盤部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。記録基盤の数量0.50倍、単価横ばい。
- クラウドの操作画面・周辺機能:数量 287,200(年間平均の課金対象従業員数(人))× 価格 123(操作・周辺機能部分の実効月額単価(円/人))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、単価0.85倍。AI操作への移行で赤字化。
- クラウド導入・設定支援:数量 175(年間の導入・追加設定案件数(件、推定))× 価格 0.01(一案件当たりの平均売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。導入工数の需要が大きく減る。
- オンプレミス製品・保守・導入支援:数量 1,250(年間の実効稼働顧客数(社、推定))× 価格 0.00(一社当たり年間売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。旧製品の契約半減と保守費負担。
- 就業情報端末:数量 1,391(年間の端末販売台数(台、推定))× 価格 0.00(一台当たり平均売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。専用端末の需要後退で採算がほぼ消える。
- 不動産賃貸:数量 1,075(外部貸付面積(平方メートル、推定))× 価格 0.00(平方メートル当たり年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。入居率低下と固定維持費による営業赤字。
倍率:営業事業の稼ぐ力は純利益約0.08億円とほぼ消失しており、PERによる永続価値より実際に換金できる資産の床が大きい。今の自己資本102.5億円にPBR0.635倍を適用した約65.1億円を用いるが、市場の底値倍率に由来する数字ではない。現金同等物ベースの純現金約11.2億円、別にある3か月超定期預金20億円、保有不動産の売却後回収額を組み合わせた床65億円を基準にしている。ソフト資産の価値は床に入れない。
確率:AIを使う低価格システムへの切替え、販売パートナー経由の受注減少、開発投資の回収失敗が同時に起きる厳しい筋書き。企業が勤怠記録を残す必要はあるため倒産を前提にせず、純現金と処分可能な不動産を価値の床とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クラウドの勤怠・労務記録基盤
勤怠、労働時間の履歴、給与につながる基礎データと法令対応の継続課金。顧客の業務記録の正本として残りやすい部分。
| 数量年間平均の課金対象従業員数(人) | 価格記録基盤部分の実効月額単価(円/人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 718,000 | 217 | 19 | 7 |
| 10 年後 中立 | 646,200 | 269 | 21 | 8 |
取り方:有報の2025年クラウドライセンス売上31.18675億円を起点とする。契約ライセンス数は2024年末633,248人、2025年末803,020人なので、年間平均を約718,000人と推定した。売上を平均人数と12か月で割る実効月額単価は約362円であり、期末開示ARPU400円とは対象期間が違う。この単価の60%に当たる217.2円を、法定記録・過去履歴・人事給与データの保存基盤の対価と仮置きした。60%は会社の開示内訳ではなく分析上の配分である。AI代替区分は『記録の正本』型。根拠は2025年末の月次解約率約0.22%と、長期の勤務履歴を管理し法令対応を継続する製品構造である。値上げ成功を示す長期の実績が十分とは言えないため、強い堀を持つ全社事業には分類しない。
クラウドの操作画面・周辺機能
勤怠申請、管理画面、集計帳票、人事や健康管理など、人がシステムを操作することで価値が生まれる機能。
| 数量年間平均の課金対象従業員数(人) | 価格操作・周辺機能部分の実効月額単価(円/人) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 718,000 | 145 | 12 | 5 |
| 10 年後 中立 | 588,760 | 159 | 11 | 3 |
取り方:クラウドライセンス31.18675億円のうち、記録基盤以外の40%を操作画面・周辺機能の収入として便宜的に配分した。同一従業員を二つの製品の売上要素に分けたものであり、顧客人数や売上を二重計上していない。区分別の実際の単価は非開示。AI代替区分は『席課金の業務SaaS・操作画面』型であり、中立の2035年数量は現在の0.82倍、単価は1.10倍とした。法令記録が残っても、人による申請・確認・集計の回数が減るためである。
クラウド導入・設定支援
企業ごとの就業規則や勤務体系に合わせる導入作業、設定、移行、保守支援。
| 数量年間の導入・追加設定案件数(件、推定) | 価格一案件当たりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 0.01 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 325 | 0.01 | 5 | 0 |
取り方:有報のクラウドコンサルサポート売上5.96503億円に合わせ、年間約500案件、単価約119万円を仮定した。2025年のクラウド契約企業純増は244社であり、残りは既存顧客への追加導入や設定変更を含むと推定する。案件数と単価は会社の開示数値ではない。AI代替区分は『人月・工数』型で、中立の2035年案件数量0.65倍、単価1.20倍とする。設定やデータ移行をAIが自動化し、従来の作業量に料金を請求しにくくなる。
オンプレミス製品・保守・導入支援
従来型の勤次郎製品のライセンス、保守、企業別の改修・導入支援。クラウドへの移行で縮小する領域。
| 数量年間の実効稼働顧客数(社、推定) | 価格一社当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 0.00 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,750 | 0.01 | 9 | 1 |
取り方:2025年のオンプレミス売上12.72364億円から端末売上0.93166億円を除いた約11.79億円を対象とした。ソフト販売約5.07億円、保守約5.32億円、コンサルサポート約1.40億円で構成される。実稼働顧客数は非開示のため2,500社、年額約47万円と仮定した。クラウドへの移行に伴い契約数は実質で減る。AI代替は主に操作型ソフトに準じ、導入支援部分は人月型とする。中立の数量0.70倍、価格1.10倍には旧製品の陳腐化と保守料金の制約を織り込む。
就業情報端末
打刻機器などの就業情報端末。実際の機器の販売数量と一台当たり価格で測る。
| 数量年間の端末販売台数(台、推定) | 価格一台当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,140 | 0.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,819 | 0.00 | 4 | 0 |
取り方:2025年のクラウド向け端末約2.054億円、オンプレミス向け約0.932億円、クラウドその他売上の一部を合わせて約3.21億円と推定した。会社は台数と平均単価を開示していないため、一台15万円、約2,140台という構成にした。現物機器そのものはAIエージェント代替の対象外だが、スマートフォン認証や非接触打刻の普及によって専用端末の数量が減る可能性がある。
不動産賃貸
保有する事務所等の賃貸による外部顧客向けの賃料収入。
| 数量外部貸付面積(平方メートル、推定) | 価格平方メートル当たり年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,150 | 0.00 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,612 | 0.00 | 2 | 0 |
取り方:有報の2025年不動産賃貸事業の外部売上約1.544億円を用いた。外部貸付面積は開示資料から特定できないため2,150平方メートル、年間賃料約7.18万円/平方メートルを仮定した。これは賃料から逆算した仮の面積と単価であり、不動産鑑定の実測値ではない。営業利益は報告セグメントの約0.698億円。物価3%の10年累積に相当する1.34倍を価格の中立に反映し、入居率は0.75倍と慎重に見積もる。AIエージェントによる直接代替は該当しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
人が勤怠画面を操作し、申請や帳票処理をすることを前提にした機能は、AIエージェントに置き換わりうる。法令対応と履歴の保存は残っても、利用者数に比例した現在の料金体系が維持される保証はない。導入時の設定作業も自動化されれば、クラウドライセンスと導入支援の両方に縮小圧力がかかる。記録の正本に当たる部分と、操作画面・人月で売る部分を明確に分けて監視する必要がある。
販売パートナーへの集中
2025年の大塚商会向け売上は約20.57億円で、全社の38.3%を占める。販売パートナー全体の比率も約6割と高く、競合製品を勧める方針の変更や価格交渉の強まりが業績に及びやすい。解約率が低くても、新規導入の減少や既存顧客の更新条件の悪化が先に起こりうる。自社が顧客との関係をどこまで直接握っているかが重要になる。
低価格競合との価格差
KING OF TIMEは勤怠管理SaaS市場で高い数量シェアを持ち、人事や給与の機能も含めた一律料金を訴求している。勤次郎は複雑な勤務体系への対応を差別化要因にできるが、顧客が価格と機能の差を小さいと判断すれば、値引き要求に直面する。大口顧客の増加によって契約人数が増えても、一人当たりの単価が下がる可能性がある。
高利益率の持続性
2025年の営業利益率28.3%は過去の水準から大きく改善した結果であり、それを10年先の通常水準と決めつけることはできない。2026年上期には売上が増えても営業利益は前年同期を下回った。ソフトウェア償却費や開発人員、クラウド基盤費用は固定的に残りやすく、成長鈍化時には営業利益率が急低下するおそれがある。
情報漏えいと法改正対応
勤怠、人事、給与、健康に関する情報は機微性が高い。情報漏えいや長時間の停止が起きれば、単なる障害対応費用だけでなく顧客の信用を失う可能性がある。また、労働基準法や労働安全衛生法などの改正に合わせて製品を直し続けなければならない。対応が遅れる場合も、対応費用が大幅に増える場合も、収益の質を傷つける。
不動産と資本配分
保有不動産は資産価値の下支えになるが、賃貸用と自社利用の部分が混在し、売却時には移転や賃借の費用が生じうる。ソフト開発と不動産の両方へ資本を投じる経営では、見かけの自己資本が大きくても再投資利回りが低くなる可能性がある。現金を長期間留保するだけでなく、増配や自社株買いとして少数株主に戻す実績を確認する必要がある。
今後の分かれ目
- クラウドの解約率が月次0.3%未満で安定し、ARPUが2年以上継続して上昇したら
- 記録基盤の乗換え障壁と値上げ力を再評価する。中立の記録基盤単価を引き上げ、十分な実績があれば記録の正本の比率も見直す。ただし操作画面へのAI代替は別に残す。
- 契約ライセンス数が100万を超えても、ARPUが下落し営業利益が増えなかったら
- 人数増加が株主利益に変わっていないと判断する。大口割引と開発費増加を優先して確認し、中立の営業利益率と単価を下方修正する。
- 大塚商会向け売上比率が急低下し、直接販売などの代替販路も育っていなかったら
- 販売網の競争力低下を疑い、やや悲観と悲観の確率を高める。既存顧客の解約率が上がる前に、新規販売が減る可能性を重視する。
- AIエージェントから直接呼び出せる記録基盤の売上や受注額が会社から開示されたら
- AIを単なる既存ソフトの代替要因だけでなく、収益化された製品として改めて評価する。開示された契約数と単価に限って、数量の減少前提を緩和する。
- 営業キャッシュフローが伸びても開発投資が増え、自由現金が数年続けて減少したら
- 増分投下資本の利回りが悪化した可能性を検討する。中立の利益率と余剰現金の積み上がりを減らし、還元より買収や開発を優先する経営なら株主帰属の評価も下げる。
- 不動産の売却または大規模な株主還元が正式に発表されたら
- 処分価格、税金、移転費用、既存事業への影響を確認する。資産を売って実際に株主へ戻せる場合に限り、現金の戻り方を75%から引き上げる。
見ておくもの
- 四半期末のクラウド契約ライセンス数、契約企業数、Enterprise ARPU
- クラウドライセンスの月次解約率と年間の継続売上
- 大塚商会向け販売額と全販売パートナー経由の売上構成比
- 2026年12月期計画の売上60億円、営業利益16.01億円に対する進捗
- クラウド開発費、ソフトウェア償却費、営業キャッシュフローと無形固定資産取得額
- KING OF TIMEの課金ID数と料金体系、勤怠管理市場のベンダー別数量シェア
- AI対応製品の有料契約実績、法令対応・記録保存機能の契約更新率
- 定期預金、有利子負債、保有不動産の賃貸収益と実際の株主還元額
倍率と資本コストの決め方
数量は2025年の会社開示を出発点とし、平均クラウド利用人数を推計して実効月額単価を逆算した。単価の内訳が非開示のため、クラウドライセンスを記録基盤60%と操作機能40%に分けた点が最も大きな推定である。中立では記録基盤の数量0.90倍、価格1.24倍、操作画面の数量0.82倍、価格1.10倍、導入支援の数量0.65倍、価格1.20倍とし、AI代替の影響を10年の売上へ反映した。さらに10年より先の名目gは0.5%とし、資本コストの寿命項目では同じリスクを再計上していない。
倍率はk=7.5%、長期g=0.5%、RONICと堀の残存率から計算した。今の株価や同業のPERを参考にせず、中立のPERは約13.15倍となる。余剰現金15億円は事業利益の倍率から分け、株主へ戻る割合75%で評価した。今後積み上がる現金は重複して手加算しない。悲観では今の自己資本に基づくPBRと、現金・定期預金・換金可能な不動産を用いて床を検算した。中立の10年後時価総額は約123億円、悲観でも約65億円となる。これらに確率、10年の還元、資本コストによる割引を適用すると、現時価総額約155億円を大きく下回る。
2025年末の純現金は、現金同等物ベース約11.2億円に3か月超の定期預金20億円を加える必要がある。現金を二重に数えていない。賃貸等不動産の時価約48.6億円は自社利用部分と処分制約があるため、通常のPER価値に全額を上乗せせず、悲観の処分価値の検証に利用した。日本基準の新リース会計基準によって将来の負債表示が変わっても、事業の家賃負担を重複して引かない。基準株数は指定されたfactsの19,901,300株を使用しており、公開された中間決算の自己株式数とは再突合の余地がある。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。