結論
NCS&Aは、大阪を本拠とする独立系ITサービス会社である。古い基幹システムを新しい環境へ移す技術と、自治体や特定業種向けの自社製品に強みを持つ。筆者の結論は「適正」だ。自己株式の消却を正しく反映した現在の時価総額は約187億円で、10年先の利益と株主還元から見た本質価値は約197億円となる。約5.5%の上値余地はあるが、長期保有に十分な安全域があるとまでは言いにくい。
この会社は、単なる技術者派遣会社ではない。AirsNeoによる大型汎用機の移行、REVERSE PLANETによる既存システムの解析、自治体の給付金業務を支えるThe給付など、顧客の具体的な困り事を解決する製品を持っている。2026年3月期には自社製品によるソリューション売上が68億円を超え、全体の約3割になった。営業利益率も12.1%まで上がり、かつて薄利だった会社の収益構造は明らかに改善している。
ただし、この改善をそのまま10年先へ延ばすことには反対だ。AIエージェントが設計、プログラミング、テスト、運用を担えば、人月で請求できる作業量は減る。自社製品も、利用者が操作画面を使わずに仕事を終える時代には、価格体系の変更を迫られる。強い顧客関係はあるが、解約率や値上げ実績の数値から独占的な堀が証明されているわけではない。
その一方、純現金約110億円という財務の厚さは見逃せない。自社株買いと増配の実行にも株主を意識した姿勢が表れている。悲観的な事業環境になっても、資産と還元が価値を支える余地は大きい。今後の焦点は、開発工数が減る時代に、自社製品を成果や業務基盤の価値で売れる会社へ変われるかである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、NCS&Aは数字の見た目より興味深い会社である。まず、非常に大きい純現金を持ち、その現金を背景に大規模な自社株買いを実行した。株主が会社の資金配分から利益を受け取れることが、言葉だけではなく実績で確認できる。単なる安い資産株より一歩進んでいる。
次に、本業で何を守れるかを考える。古い金融システムを移行する仕事は、間違えば顧客の営業そのものを止めてしまう。顧客は安さだけで発注先を替えにくい。長年の移行経験、変換部品、業務理解には価値がある。しかし、この仕事の価値が高いことと、同じ作業量に10年後も同じ金額を請求できることは違う。AIが工数を劇的に減らすなら、顧客が受け取る成果の価値を守れても、売上の取り方を変えなければならない。
自社製品の売上構成比が高まっている点は評価する。The給付やGurasのような製品を顧客の基幹業務に深く組み込み、継続的に料金を得られれば、利益は技術者の人数から離れていく。さらに移行後の保守を積み上げれば、一度きりの大型案件から継続収益へ変わる。ただし、低解約率や継続的な値上げの定量証拠はまだ足りず、独占的なソフトウェア企業として高い成長倍率を付ける段階ではない。
オーナー利益を見るうえでは、給与の上昇、ソフトウェア開発への再投資、案件の失敗に備える現金を差し引く必要がある。2018年3月期には開発案件の損失や資産の評価見直しで大きな最終赤字を経験した。現在の高い利益率だけで過去の脆さが消えたと決めつけるのは危険だ。
結局、財務の強さと経営の還元姿勢には好感を持てるが、10年先の売上モデルには不確実性がある。現在の時価総額は本質価値に近く、強い安全域を確保できる水準とは言えない。今後、工数に依存しない自社製品収益と高い還元がさらに積み上がれば、長期保有にふさわしい価値は大きくなる。
何で稼ぐ会社か
NCS&Aの事業は、会計上はITサービスの単一セグメントだが、会社は売上を四つに分類している。2026年3月期の構成は、自社製品によるソリューションが約30%、システムインテグレーションが約36%、機器・パッケージ販売が約11%、受託開発が約23%である。この四分類には稼ぎ方の違いがあるため、10年先も分けて考える必要がある。
最も注目したいのは自社製品によるソリューションだ。AirsNeoは古い大型コンピューターのプログラムを新しい環境へ移すための技術群である。REVERSE PLANETやReverseNeoは複雑な既存プログラムを解析し、構造を見えるようにする。金融機関の大型移行では数千万行のプログラムを扱い、40か月を超える事例もある。案件の難しさと積み上げた変換技術が、単純な技術者派遣より高い付加価値を生んでいる。
自治体向けのThe給付も独自性がある。セブン・ペイメントサービスのATM受取と連携し、給付金の申請、承認、通知、受取りを支援する。2025年度末の導入実績は124団体で、全国1,724団体に対する普及率は約7.2%だ。家賃債務保証向けGuras、介護福祉レンタル向けThe SWAT、ホテル・外食向けシステムなども、特定業務への理解を収益につなげている。
システムインテグレーションでは、顧客の業務に合わせたシステム構築と機器導入を一括して請け負う。受託開発は大手SI企業からソフトウェア開発を請け負う仕事が中心となる。これらは顧客関係の維持には役立つが、工数を売る性質が強い。機器・パッケージ販売はサーバーや周辺機器などを仕入れて販売する事業で、差別化と利益率に限界がある。
顧客は金融、製造・流通、公共・医療、ホテル・飲食などに分散し、会社説明資料では約1,700社の顧客と約200社の協力会社を挙げている。この分散は一社依存を減らす一方、顧客ごとの固有業務に合わせる手間も残る。上海の開発子会社を含むグループ約1,200人の技術力を、自社製品の競争力へどれだけ転換できるかが利益の分かれ目になる。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、長年蓄積した顧客業務の知識と、古いプログラムを安全に移す技術である。AirsNeoでは大規模移行の実績が20社を超える。金融機関の基幹システムは障害が許されず、開発会社を途中で替える負担も大きい。案件を獲得した後の乗り換え費用は高く、技術者を集めるだけの新規参入企業には簡単にまねできない部分がある。
だが、長期の競争優位は案件ごとに評価すべきだ。移行作業には数年かかっても、完了すれば仕事そのものがなくなる。The給付も自治体業務に深く入る可能性はあるが、解約率、契約継続年数、法改正時の値上げ実績は定量的に確認できない。独自の変換部品や業務知識は評価するものの、会社全体を永続的な独占事業とはみなさない。
収益性の改善には実績がある。2019年3月期に3%台だった営業利益率は、2026年3月期に12.1%となった。売上構成を自社製品へ移し、採算の悪い案件を選別してきた成果だ。営業利益が伸びる一方、2025年度の人件費は増加し、2026年度も平均5%の給与引き上げを実施した。値上げを十分に通せなければ、改善した利益率を維持するのは難しい。
財務面は非常に強い。2026年3月期の純現金は約110億円で、自己資本約139億円の大部分に相当する。営業を継続しながら自社株を取得できる余力があり、資金繰りの理由で不利な契約を受ける必要は小さい。ただし、現金の厚さは事業の高収益性とは別の価値であり、利益と資産の両方に重複して計上してはならない。
経営が今後証明すべきなのは、増分投資の利回りである。自社製品の売上は伸びているが、製品開発への投資額と製品別利益の対応までは開示されていない。資本コストを超える増分利益が続くなら評価を高められるが、現状では会社全体の強い堀を前提にしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス市場は、企業の基幹システム刷新、クラウド移行、セキュリティ投資によって当面は需要が強い。業界資料では2025年の国内ITサービス市場を約7.5兆円とし、今後も名目成長を見込んでいる。IDC Japanが2026年に示した国内ITモダナイゼーションサービス市場は、2025年に約1兆3,044億円、2030年には約2兆1,234億円という規模である。古い仕組みを残した企業が多く、数年間は大きな仕事が存在する。
NCS&Aにとっての追い風は、古い大型コンピューターの保守終了が迫っていることだ。富士通はメインフレームの製造終了を2030年、サポート終了を2035年としている。移行には業務調査、データ整合性の確認、稼働後の検証が必要であるため、簡単なプログラム変換では終わらない。この難しい仕事で同社の経験が生きる。
一方、10年先の市場は今日とは違う。AIエージェントがプログラムの理解、設計書の作成、テスト、変換を自動化すれば、移行すべきシステムが残っていても、請求できる人月は減る。顧客自身がAIを利用して改修する範囲も広がる。ITサービス市場全体が名目で成長することと、従来型の受託企業が同じ速度で成長することは別問題だ。
競合にはNTTデータ、富士通、NEC、日立系企業、BIPROGY、SCSK、TISなどがある。大手は金融や公共の大規模契約、運用基盤、販売網で優位に立つ。NCS&Aの2026年3月期売上を国内ITサービス市場と比較すると約0.3%にすぎないが、機器売上を含むため厳密な市場占有率ではない。自社製品売上をモダナイゼーション市場だけで割った約0.52%も、対象外の製品を含むのでシェアの上限参考値にすぎない。競合各社の同一定義でのシェアは確認できず、根拠のない市場順位は付けない。
自治体給付という狭い市場では、The給付の124団体という実数が判断材料になる。ただし、導入団体の比率と売上シェアは異なり、競合サービスの利用団体数も十分に比較できない。2036年に勝ち残るのは、安いプログラムを大量に書く会社ではなく、顧客の業務結果とデータの正しさに責任を持てる会社だと考える。
資本政策と M&A
資本政策は以前より株主重視になった。2024年度から2026年度までの中期経営計画では、当初、売上高230億円、営業利益28億円、営業利益率12%、配当性向を35%から45%へ高める方針を掲げた。その後、機器販売の減速などを踏まえ、2027年3月期の目標を売上高205億円、営業利益率12.8%へ見直している。中長期の経営指標として営業利益率12%以上、ROE10%以上も掲げる。
株主還元については、連結配当性向45%以上という数字の約束がある。2026年3月期には中間配当を開始し、増配も続けた。さらに2025年8月から2026年7月までに137万6,400株を約18億95百万円で取得し、2026年8月には300万株を消却した。これは現金を抱え込むだけでなく株主へ戻した明確な実績である。DOEの数値目標や毎年一定額の自社株買いを保証する方針は確認できない。
M&Aの歴史では2014年のアクセスとの合併が大きな転機だった。近年は大型買収で規模を追うより、自社ソリューションの開発、技術者育成、小規模な協業に重点を置いている。2026年3月期には研究開発費約3億円を支出した。将来の買収が価値を生むかは未知数であり、確約された収益には含めない。
現金は豊富だが、2026年3月期の営業キャッシュフローは約7.6億円で、会計上の純利益より少なかった。毎年の大型自社株買いを無条件には延長できない。10年間の還元は利益に連動させ、中立では累計純利益の約56%を配当と自社株買いで戻す。余った現金の株主への戻り方は、近年の大幅な自己株取得と増配実績から1.0と評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
NCS&Aの価値を最も高く評価できる理由は、独自製品への転換がすでに実績を伴って進んでいることだ。2024年3月期に44億円だった自社製品によるソリューション売上は、2026年3月期に68億円へ増えた。システムインテグレーションの売上が減る中でも営業利益率は改善しており、従来の人月商売から少しずつ離れていることが読み取れる。
AirsNeoの大型移行実績は20社を超え、金融機関では40か月前後の移行案件もこなしてきた。プログラムの変換だけでなく、業務を止めずに移行し、検証を終える経験は簡単には買えない。富士通のメインフレーム保守終了が近づく今後数年間は、顧客が移行を先延ばししにくい事情もある。大規模案件が複数重なれば、独自ツールの再利用によって利益率をさらに高める余地が生まれる。
自治体向けThe給付は124団体の導入実績を持ち、全国の自治体という分かりやすい販売先がある。GurasやThe SWATも特定業界の商習慣に合った製品である。すべての製品が大きな成功を収める必要はなく、いくつかが継続的な業務基盤として定着すれば、利益の質は改善する。
AIも防御だけの話ではない。ReverseNeoへの生成AI機能の組み込みやDocHelperの製品化は、顧客へ自動化機能を提供する具体的な動きだ。売上金額が独立して開示されていないため、AI製品による数量拡大を前提にはできないものの、既存顧客の維持や業務単位での価格維持には役立ちうる。純現金と継続的な自社株買いを合わせれば、工数の縮小が進んでも株主価値が増える筋書きは十分に成立する。
慎重な見方
最も厳しく見るべきなのは、現在の利益率改善がAIエージェント普及前の需要と価格環境で実現したものだという点である。システムインテグレーションと受託開発は売上の約6割を占める。技術者が設計、開発、テスト、保守に費やした時間のかなりの部分をAIが代替すれば、従来の単価を維持したまま稼働人月を減らすことになる。技術者不足による単価上昇が将来も続くとは限らない。
独自製品にも安心はできない。AirsNeoが提供する変換技術は高度だが、移行業務そのものがAIの得意分野へ近づいている。既存システムの解析、ドキュメント作成、コード変換が汎用AIの標準機能になれば、専用製品の差別化が難しくなる。移行案件は長期間続いても、完了後に同じ金額の案件が繰り返される保証はない。顧客が自前で移行できるようになれば、専門事業者の取引量は急減する。
The給付、Guras、The SWATは特定業務に入り込んでいるが、利用者が画面を操作することに価値が集中する部分はAIエージェントに置き換えられる。契約件数や継続率の詳細が開示されていないため、これらを規制で守られた独占基盤と考える根拠は足りない。現状の収益改善が永続するという確信は持てない。
加えて、2026年3月期の純利益に対して営業キャッシュフローは小さく、再投資と株主還元の両立には限界がある。開発案件の損失が再発すれば利益率は急速に悪化する。保有現金は価値を支えるが、事業が縮んでも自動的に清算されるわけではない。経営が不採算事業の維持に現金を使えば、少数株主が受け取れる額は帳簿の現金より小さくなる。
どちらに重みを置いたか
独自製品の伸びと大規模な自社株買いは、事業の弱点をある程度補っている。しかし、売上の約6割がシステムインテグレーションと受託開発であり、人月の縮小から自由ではない。中立ですでにAIによる数量縮小を織り込む一方、固有の製品が十分な防御力を持つかは未証明と判断した。上側30%に対して下側38%と、やや慎重に確率を配分する。厚い現金が下値を支えるため、期待価値は現在の時価総額を約5.5%上回るが、結論は適正である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,079 円307 億円(+ 還元の換算額還元の合計 675 円100 億円)。 今の値に割り戻すと 1,508 円223 億円、今との差 +27.4%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,724 円551 億円 | 1,123 円166 億円 | +309.4% | +18.2% | 436 円65 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,109 円460 億円 | 926 円137 億円 | +240.8% | +15.5% | 847 円125 億円 |
| 中立 | 32% | 2,405 円356 億円 | 724 円107 億円 | +164.2% | +12.0% | 1,001 円148 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,022 円151 億円 | 460 円68 億円 | +25.2% | +2.7% | 356 円53 億円 |
| 悲観 | 14% | 541 円80 億円 | 270 円40 億円 | −31.5% | −4.4% | 114 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,079 円307 億円 | 675 円100 億円 | +132.6% | +10.4% | 2,754 円407 億円 |
今の株価時価総額 1,184 円175 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 独自製品と大型移行で高収益を維持 利益 32 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,724 円551 億円
大型汎用機の移行需要が2030年代にも残り、AirsNeoとREVERSE PLANETの採用が続く。金融機関の複雑な基幹システムでは、安全性と業務の整合性が重視される。NCS&Aは独自の変換部品を再利用し、難しい仕事を競争力のある費用で提供することに成功する。
The給付は自治体への導入が広がり、GurasやThe SWATも業種特有の業務を支える製品として残る。自社製品は保守、改修、追加機能の継続契約を増やし、業務単位で料金を得る割合が高まる。一方、汎用的な開発業務はAIが担うため、従来の技術者人月が大幅に増えることはない。
競合大手との提携や小規模な技術買収はあり得るが、大型M&Aの利益を前提にはしない。給与上昇と研究開発費の増加を吸収しながら、2026年3月期を上回る営業利益率を維持する。高い利益と厚い現金から増配と自社株買いを続け、10年間の還元は166億円に達する。AI関連製品の独立した売上金額は確認できないため、楽観でも人月・自社製品の数量を現在より大きく増やしていない。
- 自社製品によるソリューション:数量 635(年間の自社製品導入・改修・継続契約換算件数(件、推定))× 価格 0.12(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 18 億円。自社製品の契約換算数量は現在の約0.98倍。単価1.15倍。大型移行の高度化と業種特化製品の定着で利益率23%。
- システムインテグレーション:数量 5,200(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定。機器一体案件を含む))× 価格 0.02(技術者人月換算の平均売上(億円、付随機器を含む))→ 売上 103 億円・営業利益 14 億円。人月数量は約0.96倍、単価1.34倍。工数縮小を高付加価値な案件と物価転嫁で補う。
- 機器・パッケージ:数量 3,250(年間の機器・パッケージ販売明細換算件数(台・本、推定))× 価格 0.01(販売明細1件当たり平均売上(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。更新需要を取り込み、数量約1.08倍、単価1.30倍。利益率6%。
- 受託開発:数量 4,600(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定))× 価格 0.01(技術者人月換算の平均売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 9 億円。人月数量約0.96倍、単価1.34倍。専門領域へ集中して利益率14%。
倍率:資本コストk7.25%、長期名目成長率g_long0%。余剰現金の税後利息0.84億円を除く事業純利益31.06億円、事業自己資本176億円から事業ROEは約17.6%。普通の堀で超過収益の残存割合を1/2とするが、gが0%であるため正当化PERの上限は1÷0.0725=13.793倍。上限を裁量で割り引かず、31.06億円×13.793倍+余剰現金60億円で評価する。AIによる長期の数量縮小はgと売上の筋書きに反映済みである。
確率:AirsNeoの技術優位が続き、The給付など複数の自社製品が定着する筋書き。大型移行の成功実績はあるが、AIによる工数減少を補うほどの成果報酬化と高い利益率を同時に実現する確度は限定的であり9%とする。
やや楽観 21% 自社製品の競争力が利益を支える 利益 25 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,109 円460 億円
古い基幹システムの移行需要は続くが、プログラム変換やテストの多くはAIで自動化される。NCS&AはAirsNeoの変換技術を改良し、顧客の移行案件を従来より短い工期で完成させる。請求できる人月は減っても、高度な案件を選び、付加価値を料金に反映できるようになる。
自社製品ではThe給付、Guras、The SWATが既存顧客を中心に広がる。製品の機能拡張と保守が継続収益を生み、売上構成の中で自社製品が重要な位置を保つ。ただし、新しい競合製品が現れ、値上げは限定的になる。
システムインテグレーションと受託開発は人月数量が減るものの、物価上昇と案件の高付加価値化によって減収を抑える。機器販売も更新需要が残る。大型買収に頼らず内部投資で事業を維持し、営業利益率は現状を上回る。自社株買いの規模は好調な年に増やす形となり、10年間で137億円を株主へ還元する。
- 自社製品によるソリューション:数量 585(年間の自社製品導入・改修・継続契約換算件数(件、推定))× 価格 0.12(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 15 億円。数量は0.90倍、単価1.15倍。独自製品の保守と大型移行を維持。
- システムインテグレーション:数量 4,300(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定。機器一体案件を含む))× 価格 0.02(技術者人月換算の平均売上(億円、付随機器を含む))→ 売上 83 億円・営業利益 11 億円。人月数量約0.80倍、単価1.31倍。高度案件への集中で利益率13%。
- 機器・パッケージ:数量 3,100(年間の機器・パッケージ販売明細換算件数(台・本、推定))× 価格 0.01(販売明細1件当たり平均売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。更新需要を維持。数量約1.03倍、単価1.23倍。
- 受託開発:数量 3,700(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定))× 価格 0.01(技術者人月換算の平均売上(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。人月数量約0.77倍、単価1.31倍。
倍率:k7.25%、g_long0%。余剰現金利息0.84億円を除く事業純利益23.96億円、事業自己資本169億円から事業ROEは約14.2%でkを超える。長期成長率0%を適用した正当化PER上限13.793倍をそのまま使用する。事業純利益23.96億円×13.793倍に余剰現金60億円を加える。
確率:独自製品の実績と既存顧客基盤を評価する一方、AI代替が進むため、工数売上の数量拡大までは期待しない。会社が自社製品へ転換してきた実績を根拠に、楽観より実現性が高い21%を配分する。
中立 32% AIで工数は縮むが、独自製品と現金が残る 利益 17 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,405 円356 億円
国内企業の基幹システム刷新は2030年代も続く。しかし、AIエージェントによって既存プログラムの調査、設計書の作成、コード変換、テスト、保守の工数が大幅に減る。大きな案件が存在しても、従来ほど多くの技術者人月を請求することはできない。NCS&Aは高度な移行案件を残すが、受託開発の数量を減らすことになる。
自社製品も安泰ではない。The給付やGurasは特定業務を支えるが、利用者が画面操作をAIに任せるようになり、ライセンスや改修の価格に圧力がかかる。一方で、金融システムの安全な移行、自治体給付の正確な処理、既存業務の保守には引き続き専門性が必要だ。独自製品が残ることで、全社の収益性が昔の低水準へ逆戻りすることは避けられる。
機器販売はクラウド化で数量が減り、単価の上昇も物価を下回る。人件費と開発投資は続くため、営業利益率は2026年3月期の水準から低下する。大型M&Aによる上振れは見込まず、経営は採算の悪い領域を縮小しながら配当と機動的な自社株買いを続ける。10年間の還元は107億円となり、事業の利益減少を資産と還元が補う。
- 自社製品によるソリューション:数量 520(年間の自社製品導入・改修・継続契約換算件数(件、推定))× 価格 0.12(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 12 億円。契約換算数量0.80倍、価格1.12倍。自社製品の画面操作型と移行工数型を混合したAI代替前提。
- システムインテグレーション:数量 3,550(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定。機器一体案件を含む))× 価格 0.02(技術者人月換算の平均売上(億円、付随機器を含む))→ 売上 68 億円・営業利益 8 億円。人月数量約0.66倍、価格1.30倍。AIによる工数削減が中心前提。
- 機器・パッケージ:数量 2,640(年間の機器・パッケージ販売明細換算件数(台・本、推定))× 価格 0.01(販売明細1件当たり平均売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。販売明細数量0.88倍、平均価格1.17倍。クラウド移行と機器競争を反映。
- 受託開発:数量 3,000(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定))× 価格 0.01(技術者人月換算の平均売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。人月数量0.625倍、単価1.29倍。工数減少が物価転嫁を上回る。
倍率:k7.25%、g_long0%。余剰現金利息0.84億円を除く事業純利益16.56億円と事業自己資本162億円から、事業ROEは約10.2%でkを上回る。RONICはk+1/2×(事業ROE−k)とするが、gが0%のため正当化PERは1÷k=13.793倍になる。利益の質は資本コストと長期成長率に反映済みであり、上限から恣意的に割り引かない。事業純利益16.56億円×13.793倍+余剰現金60億円で10年後の価値を求める。
確率:人月型事業の数量縮小を中心前提としつつ、AirsNeoの大型移行実績、特定業務向け製品、既存顧客基盤によって利益率の崩壊までは想定しない。強気と弱気の双方に根拠があるため、単一の予想に確信を集中させず32%とする。
やや悲観 24% AIへの移行が遅れ、工数売上の縮小が進む 利益 6 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,022 円151 億円
生成AIの進化によって顧客はプログラムの調査、保守、テストを内製化し、従来の外注工数を大幅に削減する。NCS&Aの技術力は残るが、従来と同じ人月契約では仕事量の減少が売上へ直接響く。大手SI企業もAIによる効率化を顧客へ還元するため、下請け企業の単価交渉は厳しくなる。
AirsNeoの大型移行は続いても、汎用AIを組み合わせた競合の移行サービスが増える。移行後の保守収入も十分には積み上がらない。The給付などは一定の顧客を維持するものの、自治体の共同利用システムや低価格製品との競争にさらされる。
会社は技術者の配置転換、不採算分野の縮小、開発投資の絞り込みを行う。売上の減少に合わせて給与以外の費用を削るが、固定費はすぐには減らないため営業利益率は低下する。配当は利益に合わせて減り、自社株買いも限られた年にとどまる。現金の一部は事業維持に使われるが、財務危機には至らない。利益の縮小と資産の厚さが併存する10年となる。
- 自社製品によるソリューション:数量 450(年間の自社製品導入・改修・継続契約換算件数(件、推定))× 価格 0.11(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。数量約0.69倍、価格1.05倍。専門ツールの競争激化と価格体系の弱さを反映。
- システムインテグレーション:数量 3,000(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定。機器一体案件を含む))× 価格 0.02(技術者人月換算の平均売上(億円、付随機器を含む))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。人月数量約0.56倍、価格1.15倍。顧客内製化が進む。
- 機器・パッケージ:数量 2,200(年間の機器・パッケージ販売明細換算件数(台・本、推定))× 価格 0.01(販売明細1件当たり平均売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量約0.73倍、価格1.08倍。競争により利益率1%。
- 受託開発:数量 2,640(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定))× 価格 0.01(技術者人月換算の平均売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。人月数量0.55倍、単価1.16倍。案件選別でも利益率は5%へ低下。
倍率:事業純利益は、余剰現金を弱い筋書きで45億円相当と扱い、その税後利息0.63億円を除いた5.77億円。事業ROEは約3.6%でk7.25%を下回るため、正当化PERの上限は1÷k=13.793倍。顧客基盤と収益の縮小を受け、やや悲観では稼ぐ力の保全に慎重な11倍を適用する。5.77億円×11倍+余剰現金45億円=約108.47億円となる。売れる資産の床80億円も下回らない。
確率:AIによって受託開発やSIの作業量が大幅に減る一方、独自製品の価格体系変更が遅れる筋書き。受託開発の縮小がすでに会社の事業選別として進んでいることと、製品別継続率の開示不足から24%を配分する。
悲観 14% 従来のSIモデルが構造的に通用しなくなる 利益 −1 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 541 円80 億円
AIエージェントがシステム開発の設計、実装、テスト、運用を広範囲に担うようになり、従来の工数請求型契約が急速に縮小する。大手SI企業は自社のAI開発基盤へ仕事を集約し、従来の下請け企業への発注を減らす。顧客企業も小規模な改修や保守を内製化し、NCS&Aの受託開発数量は現在の4割程度まで落ち込む。
AirsNeoの技術は一部の難案件で残るが、専用変換ツールの優位は汎用AIとの競争で弱まる。The給付などの業務ソフトも、低価格の共同利用サービスやAIによる直接処理に置き換えられる。会社は製品開発費を回収できず、ソフトウェア資産の減損や契約関連資産の損失を計上する。
事業規模の縮小に合わせた人員再配置と撤退が進み、営業利益は赤字となる。純利益も赤字で、配当と自社株買いは前半の比較的良好な時期に集中し、後半は大幅に縮む。過去に積み上げた自己資本も資産の評価損で減る。買収による救済は確率に織り込まず、清算も自動的には起こらないものの、現金と売れる資産が残るため事業価値がゼロになるとは考えない。悲観の時価総額は稼ぐ力ではなく処分可能資産を中心に評価する。
- 自社製品によるソリューション:数量 360(年間の自社製品導入・改修・継続契約換算件数(件、推定))× 価格 0.11(契約換算1件当たり年間売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。数量約0.55倍、価格1.04倍。主力製品の優位が崩れる。
- システムインテグレーション:数量 2,160(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定。機器一体案件を含む))× 価格 0.02(技術者人月換算の平均売上(億円、付随機器を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。人月数量0.40倍、価格1.10倍。従来の工数契約が縮小。
- 機器・パッケージ:数量 1,800(年間の機器・パッケージ販売明細換算件数(台・本、推定))× 価格 0.01(販売明細1件当たり平均売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。数量0.60倍、価格1.02倍。機器販売の採算が悪化。
- 受託開発:数量 1,920(年間の技術者稼働人月換算(人月、推定))× 価格 0.01(技術者人月換算の平均売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。人月数量0.40倍、価格1.10倍。稼働率低下で利益率1.5%。
倍率:本業は営業赤字となり、永続的な利益にPERを掛ける評価は適切でない。悲観の床は現金、回収可能な契約債権、売却できる投資有価証券などの税後処分可能額から、全負債と撤退費用を控除した約80億円である。過去の市場PBRの底は使っていない。将来自己資本142億円に対する倍率は約0.56338倍で、時価総額約80億円と一致する。今の自己資本約139億円と比べても大きな乖離はない。
確率:工数削減だけでなく、顧客内製化、低価格AIサービスへの移行、主力製品の差別化喪失が重なる場合を想定する。純現金と既存顧客基盤があるため破綻確率を高くは見ないが、売上半減は排除できず14%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自社製品によるソリューション
AirsNeo、REVERSE PLANET、ReverseNeo、The給付、Guras、The SWATなどの独自製品と導入・移行サービス。画面操作型ソフトと工数型移行業務の混合。
| 数量年間の自社製品導入・改修・継続契約換算件数(件、推定) | 価格契約換算1件当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 0.11 | 68 | 14 |
| 10 年後 中立 | 520 | 0.12 | 61 | 12 |
取り方:売上68.35億円は2026年3月期決算説明資料の売上分類別実績。契約数と平均単価は非開示。全社顧客約1,700社、The給付導入124団体、大規模移行20社以上という開示を手掛かりに、複数契約を持つ顧客もあるとして年間650件相当を仮定した。単価は68.35億円を650件で割った推定値であり、実際の販売単価ではない。The給付の124団体を68.35億円すべての売上に対応させる誤りは避けた。AIエージェント代替では、業務ソフト・画面中心の部分は席課金型、移行作業部分は人月型と判断する。両者の内訳は非開示のため、数量と価格は混合型として慎重に扱う。営業利益13.67億円は全社利益からの分析上の配賦で、会社開示の製品別利益ではない。国内モダナイゼーション市場1兆3,044億円に対する自社製品売上の比率約0.52%は、対象外製品も含むため厳密な市場シェアではなく上限参考値である。
システムインテグレーション
金融、製造・流通、ホテル・外食などの顧客向けに、業務システムの設計・構築と機器導入を一括して提供する。
| 数量年間の技術者稼働人月換算(人月、推定。機器一体案件を含む) | 価格技術者人月換算の平均売上(億円、付随機器を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,400 | 0.01 | 80 | 9 |
| 10 年後 中立 | 3,550 | 0.02 | 68 | 8 |
取り方:売上79.96億円は会社開示のシステムインテグレーション分類。会社は案件数と技術者稼働人月を開示していない。連結技術職1,052人のうち約450人相当が通年でこの分類に従事すると仮定し、450人×12か月で5,400人月とした。平均売上約148万円は機器を含む案件売上を人月へ換算した値であり、純粋な労務単価ではない。受託開発などの人員と重複させないよう、四分類の推定人数を合計して技術職数と照合した。国内ITサービス市場約7.5兆円と比較した売上比率は約0.11%であるが、市場定義の差があるため参考値にとどめる。AIエージェント代替の人月・工数型に分類する。利益8.80億円は推定配賦である。
機器・パッケージ
サーバー、パソコン、周辺機器、他社製パッケージソフトなど、開発やサービスを伴わない販売。
| 数量年間の機器・パッケージ販売明細換算件数(台・本、推定) | 価格販売明細1件当たり平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.01 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,640 | 0.01 | 25 | 1 |
取り方:会社開示の売上24.39億円を起点に、サーバー、端末、ライセンスなどの混合販売を年間3,000明細相当、平均約81万円と推定した。販売台数と実際の単価は非開示であり、端末だけの台数ではない。国内IT市場全体の統計とは製品範囲が一致しないため、根拠のない機器専業市場シェアを作らない。物価上昇に加えて製品性能向上と仕入先の価格競争が作用する。独立した機器販売そのものは人月・席課金のAI代替型に直接は当たらないが、顧客の調達自動化やクラウド移行による数量変化は考慮する。利益0.98億円は推定配賦である。
受託開発
大手SI企業などから受注するソフトウェア開発。技術者の稼働と請負案件の工数が主要な収益の源泉。
| 数量年間の技術者稼働人月換算(人月、推定) | 価格技術者人月換算の平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,800 | 0.01 | 52 | 6 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 0.01 | 42 | 4 |
取り方:売上52.14億円は会社開示。受託開発担当者約400人相当が年間12か月稼働すると仮定し、4,800人月、平均約109万円と推定した。案件の外注比率、実稼働人数、人月単価は非開示である。システムインテグレーションの450人と合わせて850人相当とし、残りの技術職約200人相当を自社製品、保守、共通業務に充てる概算で整合性を確認した。大手SI企業からの受託開発は工数削減が発注額の減少につながるため、AIエージェント代替の人月・工数型に分類する。利益5.73億円は推定配賦である。
リスクと懸念
AI エージェント代替
最大の長期リスクは、システム設計、プログラミング、テスト、運用保守の人月が減ることである。NCS&Aの売上は自社製品へ移っているが、システムインテグレーションと受託開発がなお約6割を占める。自社製品にも画面操作型の業務ソフトと移行工数の部分が含まれる。AIによる効率化の利益を自社が保持できず、顧客の支払額が下がれば、需要が旺盛でも収益が縮む。中立数量と長期成長率に反映し、資本コストの寿命項目には重ねていない。
独自製品の堀が十分に証明されていない
AirsNeoの大型移行実績は評価できるが、移行は完了すれば終わる仕事でもある。The給付の124団体という導入実績はあるものの、解約率、契約期間、製品別利益率、値上げ率が開示されていない。独自製品の売上比率だけで、規制に守られた記録の正本や独占的なソフトウェア基盤になったと判断するのは危険である。
給与上昇と案件採算
会社は複数年にわたり給与水準を引き上げ、2026年度にも平均5%の引き上げを実施した。優秀な技術者を維持するうえでは必要な支出だが、顧客へ単価転嫁できなければ利益率が下がる。2018年3月期には開発案件の遅延と資産評価見直しなどで最終赤字を経験した。大型受託開発が少数重なるだけでも、固定的な人件費と追加工数が利益を圧迫する。
現金の配分と流動性
純現金約110億円は強みだが、事業用資金や退職給付などの約束があるため、全額を今すぐ株主へ配れるわけではない。2026年3月期には営業キャッシュフローが純利益を大きく下回った。今後も大型自社株買いを続けるには、実際の現金創出が必要である。不採算事業の維持や割高な買収に資金を使う場合には、帳簿上の現金が株主価値にならない。
レガシー刷新の需要終了と競争
大型汎用機のサポート終了は当面の受注を促すが、2035年以降には移行済み企業が増える可能性がある。富士通、NEC、NTTデータ、BIPROGYなどの大手は顧客接点と運用基盤を持ち、クラウドベンダーやAI関連企業も移行サービスへ参入できる。市場全体の需要が残っても、同社の案件数と取り分が増え続けるとは限らない。
中期計画の修正と売上構成の変化
中期経営計画の当初売上目標230億円に対し、最終年度の見通しは205億円となっている。機器販売の供給制約という短期要因に加え、自社製品の伸びが他の売上減少をどれだけ補えるかが課題だ。売上を縮めても利益率が上がるなら悪い変化ではないが、製品別の利益開示が少ないため、構造的な改善と一時的な案件構成の違いを見分ける必要がある。
今後の分かれ目
- 自社製品によるソリューション売上が複数年増え、全社売上の40%を超えたら
- 受託工数への依存が薄れている可能性が高い。製品別粗利益、継続契約、契約単価も改善するなら、中立の利益率と数量前提を上方修正する。
- AirsNeoの移行後保守契約が増え、保守収入の継続率や解約率が公表されたら
- 一度きりの移行案件が継続収益へ変わる根拠になる。独自データと年単位の乗り換え費用も確認できれば、その部分について記録の正本に近い強い堀を再評価する。
- システムインテグレーションと受託開発の人月当たり受注単価が物価上昇に追いつかなくなったら
- AI代替と顧客の値下げ要求が現実化したと判断する。単価と数量の両方を下げ、やや悲観側の筋書きに重みを移す。
- The給付の自治体導入数が200団体を超え、継続契約額も伸びたら
- 特定業務向け自社製品の販売力が実証される。導入数だけでなく実際の契約単価と契約継続を確認し、自社製品の市場シェア前提を引き上げる。
- 営業利益率12%以上を維持しながら、営業キャッシュフローも純利益に近づいたら
- 会計上の利益が株主へ還元できる現金へ変わっていると判断できる。長期の還元額と余剰現金の信頼性を高める。
- 自社株買いが止まり、現金が大型買収や不採算事業の維持に使われ始めたら
- 余剰現金の株主への戻り方を1.0から見直す。資産が厚いだけでは少数株主の安全域にならないため、資本配分の結果を検証する。
見ておくもの
- 自社製品によるソリューション売上高と全社売上に占める割合
- AirsNeoの新規大型移行案件、稼働案件数、移行後保守契約の増加
- The給付の自治体導入数と全国1,724団体に対する普及率
- Guras、The SWAT、ReverseNeo、DocHelperの販売実績と継続収益
- システムインテグレーションと受託開発の売上、技術者稼働率、案件採算
- 営業利益率、営業キャッシュフロー、給与水準と顧客への単価転嫁
- 自己株式の取得額、消却株式数、連結配当性向、純現金の推移
- 2027年3月期の中期計画達成状況と次期中期計画の製品別目標
- 生成AIを組み込んだ自社製品の有償契約額、AIによる開発工数削減率
倍率と資本コストの決め方
今の株価や同業のPERから逆算せず、会社開示の四つの売上分類を数量と単価に分けた。会社が契約数や人月単価を開示していない部分は、技術職1,052人、顧客約1,700社、The給付124団体などと照合した推定であることを明記した。2026年3月期の高い利益率をそのまま延長せず、AIエージェント代替による中立の工数数量縮小と、10年より先の名目成長率0%を反映した。楽観から中立のPERは資本コスト7.25%と事業ROEから求めた正当化上限を使用し、現金の利息と余剰現金を二重計上していない。悲観のPBRは過去の株価の底ではなく、売れる資産の税後価値から求めた。2028年3月期からの新リース会計基準による表示変更は、本質的な現金支出を増減させないため、10年後の利益を現在と比較可能な形にそろえた。
株数は添付台帳の11,787,567株に誤りがあると判断して修正した。2026年7月30日の会社開示では、300万株消却後の発行済株式総数は1,500万株と明記されており、1,200万株ではない。2026年8月31日の自己株212,433株から、9月9日に処分した150株を差し引くと、自己株控除後は14,787,717株になる。株価1,264円に対する現在の時価総額は約186.92億円である。10年先の5筋書きの時価総額と還元を資本コストで現在価値に直した確率加重平均は約197.26億円、差は約プラス5.5%となる。結論を現値に合わせて調整していない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%から、厚い純現金に対応する0.25ポイントを差し引いた。