結論
ラキールは、企業向け業務ソフトとシステム開発・保守を組み合わせて提供するIT企業だ。筆者の結論は「割高」である。自社製品の継続課金は伸びているが、売上の約3分の2を占める人手による開発・コンサルティングの将来価値と、AI製品への再投資負担を慎重に評価すると、現在の時価総額には十分な安全域がない。
同社の魅力は、LaKeel DXというソフトウェア開発基盤と、人事・分析・教育などの業務アプリケーションを自社で持つことである。2025年のLaKeel製品サブスクリプション売上は前年比21.5%増加し、顧客解約率も四半期で概ね1%未満に収まった。顧客が使い続ける製品を作れていることは確かであり、単純な人材派遣型のシステム会社とは異なる価値がある。
しかし、製品が伸びても会社全体の利益は増えていない。2025年の営業利益は4.45億円まで縮小し、2026年上期は0.71億円の営業赤字となった。人事ソフトの価格競争でライセンス販売が落ち、AI関連の開発費と人材費が増加したためである。2026年通期の営業利益予想も従来の6億円からゼロに引き下げられた。最終赤字には本社移転に伴う特別損失5.2億円が含まれるため、すべてを恒常的な損失と見るべきではないが、基礎的な収益力の低下は無視できない。
会社は中期計画「LaKeel 2030」で売上200億円、営業利益30億円を目指している。AIによる開発・人事業務の自律化を売り物にする構想は興味深い。ただし、新しいAI製品が従来の人月売上を置き換えるほど収益化したという金額の証拠はまだ乏しい。自社の仕事をAIで効率化することと、その成果を顧客から継続的に高く買ってもらえることは別問題だ。
2035年の中立では売上約65億円、営業利益約4億円を見込む。AI代替を織り込んでも事業は残るが、株主資本コストを十分に上回る利益率への回復は難しい。5つの筋書きの確率加重価値を現在価値に直すと約20億円となり、基準時価総額53.6億円を約63%下回る。これは事業の消滅を予想する評価ではなく、収益を再投資する必要が大きい事業に対して、株主が慎重な値段を要求した結果である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に確かめたいのは、この会社が10年後も同じ顧客から、十分な利益を得続けられるかということである。ラキールの製品は顧客の日常業務に組み込まれ、一定の切り替え費用がある。解約率が低く、既存顧客への追加販売も増えているため、事業が突然なくなる可能性は高くない。だが、製品が残ることと、その製品から高い株主利益を得られることは別である。
同社の弱点は、稼いだ利益を次の技術へ投じ続けなければ競争力を失う点にある。従来のLaKeel DXと業務アプリだけでなく、AIエージェント、データ基盤、開発の自律化にも投資が必要になった。会計上の純利益からソフトウェア開発投資と運転資金を差し引いたオーナー利益は、純利益ほど安定していない。ソフトウェアの資産計上によって会計上の利益が保たれても、資金が事業外へ自由に戻るとは限らない。
増分資本利益率も重要である。過去にROE14%を達成したからといって、新たなAI開発投資50億円にも同じ収益率が期待できるわけではない。新しい製品を顧客が使う理由はあっても、既存の人的サービスの減収を上回る追加利益が生じることはまだ証明されていない。研究開発の生産性向上が顧客の支払額の減少につながれば、技術的な成功が必ずしも株主の成功にならない。
資本配分では、自社株買いを継続したことを評価する。ただし、会社が開発投資と買収に多額の資金を使う時期に、同じ利益を株主へ還元することはできない。純現金も、将来の事業資金を差し引いた残りだけが自由な資産である。経営陣が売上拡大そのものより、投下した資本から生まれる利益を優先できるかを見極める必要がある。
筆者がもっとも重視するのは予測可能性である。AI時代の業務基盤を握る企業になれれば大きな価値があるが、その可能性を実績利益より先に高く評価することは避けたい。現在の時価総額を正当化するには、少なくとも中立よりかなり良い収益改善が必要である。企業の技術や経営理念に魅力を感じても、支払う値段には独立した安全域が必要だ。
何で稼ぐ会社か
ラキールの事業は会計上は単一セグメントだが、経済的には性質の違う収益が混在している。大きく分けると、自社製品のライセンスと継続課金、製品導入に付随するコンサルティング、顧客のシステム開発・保守を請け負うプロフェッショナルサービスである。2025年の売上77.28億円のうち、自社製品販売などが約25億円、製品関連コンサルティングが約23億円、プロフェッショナルサービスが約29億円だった。
自社製品の中核はLaKeel DXとLaKeel Appsである。LaKeel DXは、ソフトウェアを再利用可能な部品として組み合わせ、企業ごとのシステムを構築・運用する基盤だ。その上でLaKeel HR、BI、Data Insight、Workflowなどの業務ソフトを提供する。企業は製品利用料に加えて導入・設定・機能追加の費用を支払い、ラキールは導入後の保守や追加開発でも収益を得る。
2025年の自社製品サブスクリプション売上は14.37億円であり、期末の利用契約数は370だった。契約は複数製品を含むため、一意の顧客企業数とは一致しない可能性がある。2026年上期も継続課金は増えた一方、ライセンス販売は前年同期比69.5%減少した。高収益の新規ライセンスを販売できるかどうかで、会社全体の利益が大きく変わる構造が残っている。
LaKeel Online Media Serviceは、安全衛生、食品衛生、ハラスメントなどの企業向け教育動画を配信するサービスである。法令対応や従業員教育の需要は継続しやすいが、動画制作そのものはAIによる低コスト化が進みやすい。教育履歴、教材更新、社内配信管理まで含めた運用基盤を提供できるかが、単純な教材販売との違いになる。
プロフェッショナルサービスは、基幹システムの開発、クラウド移行、既存システムの保守などを扱う。2025年の売上29.18億円のうち、継続的な保守・運用に関連する収益は24.50億円だった。長期顧客が多く、プロフェッショナルサービス売上の74%は取引期間5年以上の顧客から生じている。ただし、契約継続率の高さと工数課金の持続可能性は別である。AIが保守や開発を自律化するほど、同じ作業に必要な人員は減っていく。
企業としての課題は、継続課金型のソフトウェア企業へ移行したいにもかかわらず、その販売・導入を支える人手の仕事に依存していることだ。製品の標準化が進めば利益率は改善するが、顧客ごとの個別対応が増えれば再び労働集約型に戻る。今後の価値は、売上をどれほど増やすかより、製品収入と人的サービス収入の関係をどう変えるかで決まる。
優良さと弱いところ
ラキールには小さいながらも競争上の強みがある。LaKeel DXの部品再利用技術、自社製品を顧客システムと組み合わせる開発力、長年の取引で得た業務知識である。2025年のLaKeel製品の顧客解約率は四半期で概ね0.6〜0.8%という低水準だった。継続利用者の平均単価も上昇しており、既存顧客への追加販売には実績がある。
ただし、これを幅の広い堀、つまり競合が容易に奪えない強みと評価するには証拠が足りない。低解約率は確認できるが、乗り換えに年単位の法令対応が必要であることや、独占的なデータを保有していることは立証されていない。顧客の業務データは基本的には顧客自身のものであり、AIエージェントが既存ソフトの画面を経由せずに処理できるようになれば、利用画面そのものの差別化は弱くなる。
値決め力にも両面がある。既存契約のARPUは上昇したが、2026年にはLaKeel HRの価格競争激化で新規ライセンスの受注が減った。既存顧客との関係には強みがあっても、新規顧客が競合と比較する場面では自由に価格を決められない。高い契約継続率だけを根拠に、長期の高い利益率を保証することはできない。
資本効率は過去に優れていた。2022〜2023年には営業利益率が約10〜11%、ROEが14%前後に達した。しかし、2025年には営業利益率5.8%、ROE7.6%へ低下している。研究開発、営業、人材採用への投資が売上成長に十分結びつかなければ、増分の投下資本利益率は資本コストを下回る。
財務は2025年末時点では純現金14.4億円であり、借入への依存は比較的小さい。ただし、2026年6月末には純現金が約10億円へ減少した。継続的な自己株式取得と製品開発投資が資金を使っているため、帳簿上の現金すべてを余剰資産とは見ない。技術的な可能性は十分あるが、現時点での堀の評価は「普通」であり、強い独占的企業とは区別する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス市場は、企業のシステム更新、クラウド移行、データ活用によって拡大してきた。業界ノートでは2025年の国内ITサービス市場を約7.5兆円と整理している。一方、IDCが示す2026年の国内IT市場全体は約28.4兆円であり、こちらは機器なども含む広い定義である。ラキールのコンサルティングとプロフェッショナルサービスを合計しても約52億円で、7.5兆円の市場に対する規模は約0.07%にすぎない。
市場が大きいことは、同社が成長できる十分条件ではない。開発・保守の競合にはNTTデータ、富士通、TIS、SCSK、野村総合研究所などがいる。大手各社は顧客の基幹業務に深く入り込み、大規模案件や業界共通基盤を押さえている。ラキールが優位を築けるのは、自社製品と開発サービスを一体で提供できる中堅・大企業向けの比較的狭い領域である。各社の完全に比較可能な受託開発市場シェアは公表資料だけでは算定できない。
業務ソフト市場でも競争は厳しい。人事・労務ではSmartHR、Works Human IntelligenceのCOMPANY、SAP SuccessFactors、タレントパレットなどが競合する。SmartHRは2026年4月に登録社数8万社を超え、労務管理クラウドの出荷金額で首位と公表している。SmartHRの資料には労務管理クラウド市場で約54%というシェア表示もあるが、LaKeelの製品群全体とは対象市場が異なるため、直接のシェア比較には使えない。
富士キメラ総研は国内SaaS・PaaS市場が2029年度に約3.40兆円へ成長すると予測している。ラキールの2025年の一般業務ソフト継続課金約9.6億円は、2024年度の同市場約1.96兆円に対して約0.05%である。厳密な製品別シェアではないが、同社が市場全体から見ると極めて小さい存在であることは分かる。業界が成長しても、その伸びをラキールが取り込む保証はない。
法人向けeラーニング市場は、矢野経済研究所によれば2025年度に約1,294億円である。LaKeel Online Media Serviceの年間売上約4.7億円は、この広い市場の約0.37%に相当する。競合にはSchoo for Business、AirCourse、各種学習管理システムや企業独自の教育基盤がある。個別競合の同一定義によるシェアは確認できないため、順位を断定しない。
今後10年で最も大きい変化はAIエージェントによる業務代替である。開発者が書くコード、コンサルタントが作る資料、担当者が操作する画面の価値は、従来より低い単価で提供できるようになる可能性が高い。一方、業務ルール、権限管理、監査記録、信頼できるデータをつなぐ基盤は引き続き必要となる。ラキールが後者を押さえられるか、それとも既存の開発・操作業務が縮むだけに終わるかが、シェアと利益率の分岐点になる。
資本政策と M&A
ラキールは2026年4月に中期経営計画「LaKeel 2030」を公表した。2030年度の数値目標は売上高200億円、営業利益30億円、営業利益率15%、ROE21.2%である。途中目標には2027年度の売上100億円、営業利益10億円が含まれる。2026年度についても当初は売上80億円、営業利益6億円を予定していたが、8月に営業利益予想をゼロへ引き下げた。初年度から計画と実績の間に大きな差が生じている。
計画期間中の営業キャッシュフローは約100億円を想定し、成長・維持投資にも約100億円を予定する。製品開発への投資は約50億円とされる。これに加えて営業体制の強化、人材育成、開発拠点の拡充、M&Aを検討する。資金不足時には借入や外部資本調達も選択肢としているため、既存株主にとっては投資収益率だけでなく、将来の希薄化も監視対象となる。
株主還元では自己株式取得を重視している。2026年5月には買付枠を最大50万株、7億円へ拡大し、取得期間を2027年1月末まで延長した。2026年8月末の自己株式は112万株を超え、発行済み株式の約15%となった。2021年以降の実質発行済み株式数も大幅に減っており、株数を減らす実績は評価できる。一方、配当性向、DOE、総還元性向については中期計画に数値の約束がない。配当は検討事項にとどまっている。
過去には2017年のMBOを伴う再編や、2018年の子会社取得があり、現在も約3億円ののれんが残る。2025年にはラキール呉を設立し、AIの研究開発体制を強化した。大規模買収による成功実績はまだ十分ではない。今後のM&Aでは買収金額だけでなく、買収後の継続利益と開発人員の定着率を確認したい。なお、確認できた直近の開示では新たなTOB・MBO・上場廃止予定や継続企業の前提に関する注記はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ラキールは単なるシステム開発会社ではない。自社でLaKeel DXという再利用型の開発・運用基盤を持ち、その上に多様な業務アプリケーションを展開している。顧客は一度導入するとデータ連携や業務プロセスを組み込むため、簡単には乗り換えない。実際、2025年の継続課金は二桁成長し、解約率は低水準を維持した。既存顧客がより多くの製品を使うようになれば、顧客獲得費用を抑えながら収入を伸ばせる。
AIへの転換も、単なる脅威ではない。会社はLaKeel Bluを市場投入し、LaKeel AI Platformで要件定義から開発・運用までを自動化する構想を進めている。2026年の開示では、LaKeel Bluの引き合いが増えていることや、AIによるオーバーナイト開発機能の実装が説明された。これまで個別開発に必要だった人員を減らし、同じ人員でより多くの案件を処理できれば、売上が大きく増えなくても利益率を改善できる。
LaKeel HRも、人事データと業務ルールを結びつける基盤へ進化する余地がある。単なる人事画面ではなく、誰がどの権限で何を決めたかを記録し、AIエージェントの処理を統制する仕組みを提供できれば、顧客との関係はむしろ深まる。既存の大企業顧客から新製品の採用を獲得できれば、営業上の信用を活用してAI基盤事業へ転換する可能性がある。
財務面では、純現金を持ち、自己株式取得も続けている。2026年の利益減少には先行投資と本社移転の特殊要因が含まれるため、それだけで恒常的な稼ぐ力の消失とみなすのは早い。2027年以降にAI開発費の増加が落ち着き、再利用型の製品開発が広がれば、2022〜2023年に近い利益率を取り戻すことは不可能ではない。経営者が自社株買いを継続し、少数株主の取り分を増やしてきた実績も評価できる。
慎重な見方
最大の問題は、会社が目指しているAI化が既存事業を自ら置き換える可能性である。2025年の売上の約67%は、製品関連コンサルティングとプロフェッショナルサービスだった。要件定義、コード作成、テスト、資料作成、保守運用の工数が大幅に減れば、顧客は従来ほど多くの人月を買わなくなる。生産性が上がった分をラキールがすべて価格として回収できる保証はない。
人事ソフトにも明確な競争上の弱点が見え始めた。2026年上期には価格競争が激化し、新規ライセンス売上が前年同期比約7割減少した。SmartHRやCOMPANYのような既存大手は、すでに大きな顧客基盤と人事データの蓄積を持つ。MicrosoftやSAPなどの海外企業もAI機能を既存製品へ組み込んでおり、小規模な独立ベンダーが製品開発費で対抗し続ける負担は重い。
低解約率は強みだが、その数字だけで堀が十分だとは言えない。利用顧客が大幅に増えなくても、既存契約の単価上昇によって継続課金売上は伸びる。しかし、AIが顧客の作業画面を不要にすれば、更新時に契約の内容や料金が見直される。自社が記録の正本や規制対応の不可欠な基盤であるという証拠は、現状では十分に確認できない。
投資負担も大きい。2030年までの製品開発投資は約50億円であり、2025年末の純現金14億円を大幅に上回る。計画全体では営業キャッシュフロー約100億円のほぼ全額を投資に使う想定だ。投資が利益につながらなければ、借入増加、持ち株の希薄化、自己株式取得の停止のいずれかを迫られる。さらに、ソフトウェア資産やのれんの減損が生じれば、帳簿の自己資本も傷む。会社の示す2030年の売上200億円は、AIによる既存収益の代替と競争圧力を十分に反映した確実な数字ではない。
どちらに重みを置いたか
継続課金の成長と低解約率という実績では、強気の見方に根拠がある。しかし、会社全体の利益が減り、2026年には人事ソフトの競争激化とAI開発投資による収益悪化が表面化した点は重い。新しいAI製品が十分な売上を獲得したという金額の開示はまだなく、2030年の利益目標をそのまま10年後の価値に延長することはできない。
確率は楽観側26%、中立32%、悲観側42%とした。中立の数量には既にAI代替による縮小を反映しており、確率で同じリスクを重ねて引いてはいない。下方に寄せた追加の理由は、2026年のライセンス販売不振、値決め力の弱さ、製品開発投資の収益化が未確認であることだ。事業が存続する見込みは相応に高いものの、株主が高い資本利益率を得られるかについては慎重な見方が優勢である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 642 円42 億円(+ 還元の換算額還元の合計 82 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 361 円24 億円、今との差 −55.3%、 期待の年率 −1.2%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,350 円89 億円 | 182 円12 億円 | +89.6% | +7.1% | 153 円10 億円 |
| やや楽観 | 16% | 973 円64 億円 | 137 円9 億円 | +37.4% | +3.5% | 178 円12 億円 |
| 中立 | 32% | 696 円46 億円 | 91 円6 億円 | −2.5% | −0.3% | 252 円17 億円 |
| やや悲観 | 26% | 352 円23 億円 | 46 円3 億円 | −50.8% | −7.2% | 103 円7 億円 |
| 悲観 | 16% | 228 円15 億円 | 8 円1 億円 | −70.9% | −11.7% | 38 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 642 円42 億円 | 82 円5 億円 | −10.4% | −1.2% | 724 円48 億円 |
今の株価時価総額 808 円53 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 独自製品とAI開発基盤が定着し、利益率が回復 利益 6 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,350 円89 億円
ラキールは既存製品を維持しながら、LaKeel DXとLaKeel Bluを使った開発効率化を進める。人手による開発数量は減るが、自社の技術者がより複雑な案件を担当することで、高付加価値の仕事を選べるようになる。新しいAI製品が独立した巨大な収益源になることまでは想定しない。
LaKeel HRでは顧客の業務ルールとデータ連携を改善し、既存契約の単価を高める。大企業がMicrosoftやSAPの汎用基盤と組み合わせて使う補完製品として存在感を保つ。LaKeel Online Media Serviceも、安全衛生教育や教育履歴管理の需要を取り込み、企業向け教育の定番サービスとして残る。新規顧客数は大きく増えなくても、既存顧客の利用拡大が利益を支える。
人月型サービスではAIによる作業削減が進むが、生産性向上の一部を価格と粗利益として確保する。人員採用を急拡大せず、案件の採算を優先するため固定費の膨張が止まる。営業利益率は過去の高水準へ戻り、10年後のROEも資本コストを上回る。買収は小規模な技術・顧客基盤の補完にとどまり、大きな減損を伴う失敗を避ける。自己株式取得は継続されるが、製品開発へ再投資する必要は残る。
- LaKeel DX・業務アプリ継続課金(LOM除く):数量 207(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.05(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。既存契約数量を維持し、単価を約16%引き上げる。AI新製品の未確認売上は加えない。
- LaKeel Online Media Service:数量 154(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.04(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。利用契約数を維持し、教育管理機能を含む単価上昇で収益性を高める。
- LaKeel製品ライセンス販売:数量 17.0(年間新規ライセンス案件数(件、推定))× 価格 0.60(1案件当たり平均ライセンス売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。2025年並みの大型案件数を維持。製品構成の高度化で単価が上がる。
- その他の製品課金・付随収入:数量 30.0(年間契約・販売案件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たり平均売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。既存の小口契約を維持し、付随機能の追加で価格を改定する。
- 製品関連コンサルティングサービス:数量 126(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.21(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。人月数量は2025年の0.90倍。成果物の高度化と物価転嫁で単価は1.29倍。
- プロフェッショナルサービス:数量 175(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.19(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。人月数量は0.90倍。保守から高度な設計・統合支援への転換で単価が上がる。
倍率:資本コストk=7.75%、10年後以降の名目成長率g=-0.5%。余剰現金2億円の税後利息0.028億円を純利益から除き、事業ROEは約10.52%。堀はnormalなので残る割合を1/2とし、RONIC=7.75%+0.5×(10.52%-7.75%)=約9.14%。正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=12.78倍。成長の上乗せを二重に加えず、計算式の上限をそのまま採用する。時価総額は(5.9-0.028)×12.7845+2=約77.07億円。
確率:LaKeel製品の低解約率と既存顧客の追加購入が持続し、AIによる自社開発効率化が利益率改善に結びつく筋書き。ただし、新しいAI製品の金額を伴う販売実績はまだ不十分であり、AI関連の新規数量拡大を前提にしないため確率は10%にとどめる。
やや楽観 16% 製品の継続性が人的サービスの縮小を補う 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 973 円64 億円
LaKeel DXと業務アプリの契約は緩やかに減少するが、顧客企業との取引関係は維持される。既存顧客への追加機能販売や価格改定が続き、契約数の減少を概ね補う。LaKeel HRでは大手人事システムとの競争が続くものの、既存システムとの連携や個別業務の設計力で一定の案件を獲得する。
人月型の開発・コンサルティングはAIによる生産性向上で必要工数が減る。ラキールは開発者数を無理に増やさず、標準化できる部分を自社製品に置き換えるため、売上の伸びが小さくても粗利益の低下を抑えられる。既存の保守契約は残るが、契約更新時には単価や対象業務の見直しが進む。
中期計画の売上200億円には届かないものの、損失を伴う大型買収を避け、研究開発費を営業キャッシュフローの範囲内に抑える。2026年の利益悪化から数年かけて回復し、最終的に営業利益率8%台へ戻る。自己株式取得も利益の範囲で継続する。事業の生存力は確認できるが、競争上の地位が大幅に強くなるわけではない。
- LaKeel DX・業務アプリ継続課金(LOM除く):数量 197(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.05(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。契約数は0.95倍、価格は約1.12倍。既存顧客への追加販売が下支えする。
- LaKeel Online Media Service:数量 145(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.04(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量は0.94倍。教育履歴管理を維持しながら価格を約1.14倍にする。
- LaKeel製品ライセンス販売:数量 15.0(年間新規ライセンス案件数(件、推定))× 価格 0.57(1案件当たり平均ライセンス売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。大口ライセンス案件はやや減少するが、一定の受注を維持する。
- その他の製品課金・付随収入:数量 26.0(年間契約・販売案件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たり平均売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。小口契約は縮小するものの、追加機能の販売で単価を保つ。
- 製品関連コンサルティングサービス:数量 112(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.20(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。人月数量は0.80倍、単価は1.24倍。高度な導入支援へ移行する。
- プロフェッショナルサービス:数量 156(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.19(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。人月数量は0.80倍、単価は1.27倍。長期保守顧客を維持する。
倍率:事業ROEは余剰現金を除くと約7.52%で、資本コスト7.75%を下回る。資本コストを超えない再投資は価値を増やさないため、10年後以降の縮小率g=-0.5%を反映した稼ぐ力の上限1/(k-g)=12.12倍を採用。mcap=(4.0-0.028)×12.1212+2=約50.15億円。市場で付いているPERは倍率の根拠に使用しない。
確率:既存製品の解約率が低く、会社がAI開発投資を一定程度回収できる場合。ただし新しいAI製品の大規模販売は前提とせず、現在の継続課金と顧客基盤の維持を主な根拠とする。
中立 32% 継続課金は残るが、人的サービスと利益率が縮む 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 696 円46 億円
ラキールの既存製品は大企業顧客の業務システムとして使われ続ける。しかし、新規ライセンス販売では人事・データ分析などの大手ソフト会社との競争が激しく、受注案件数は2025年を下回る。既存のLaKeel DX・業務アプリの契約も一部がAIエージェントや競合の統合基盤に移り、契約数量は徐々に減少する。
コンサルティングでは要件定義、設計、資料作成、実装などの工数がAIによって削減される。保守では定型監視や障害対応が自動化され、従来の技術者数を前提とする契約は縮小する。単価は人件費の上昇を一部反映するものの、物価3%で10年間上昇する世界では十分な価格転嫁とは言えない。企業が支払う金額全体では、実質的に低価格化が進む。
会社はLaKeel AI Platformを開発し続けるが、それが独立した高収益事業へ飛躍するほどの金額の証拠は確認できない。製品開発と人材育成には継続して資金を使う必要があり、売上縮小に合わせて固定費を大幅に減らすことも難しい。経営は小規模な技術取得や採用投資を行うが、投資効率の改善は限定的となる。
2035年には売上が約65億円へ縮み、営業利益率は6%台にとどまる。営業利益率は2025年よりやや改善するが、自己資本の積み上がりに対して純利益が十分に増えず、ROEは資本コストを下回る。配当と自社株買いは利益の範囲で継続するものの、株主資本を高い利回りで増やす企業ではなくなる。
- LaKeel DX・業務アプリ継続課金(LOM除く):数量 171(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.05(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。業務SaaS型。数量は2025年の0.83倍、価格は約1.10倍。市場成長より競合へのシェア流出が大きい。
- LaKeel Online Media Service:数量 131(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.03(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。SaaS型。数量0.85倍、価格約1.08倍。教育動画の制作自動化による価格競争を反映。
- LaKeel製品ライセンス販売:数量 13.0(年間新規ライセンス案件数(件、推定))× 価格 0.55(1案件当たり平均ライセンス売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。新規ライセンス案件数は0.76倍。製品更新需要は残るが大型受注は減少する。
- その他の製品課金・付随収入:数量 24.0(年間契約・販売案件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たり平均売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約数量0.80倍、価格約1.10倍。小口契約の整理が進む。
- 製品関連コンサルティングサービス:数量 95.0(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.20(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。人月・工数型。数量95÷140=0.68倍、価格約1.24倍。AI代替後も高度な設計支援は残る。
- プロフェッショナルサービス:数量 125(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.19(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。人月・工数型。数量125÷195=0.64倍、価格約1.24倍。保守継続契約も工数削減の影響を受ける。
倍率:10年後の事業純利益は2.65-0.028=2.622億円、余剰現金を除く事業自己資本は52.05-2=50.05億円で、事業ROEは約5.24%。資本コスト7.75%を下回るため、成長による超過利益を評価せず、g_long=-0.5%を反映した稼ぐ力の上限1/(7.75%-(-0.5%))=12.1212倍をそのまま採用。時価総額は2.622×12.1212+2=約33.78億円。今の市場倍率や同業のPERには合わせていない。
確率:2025年の低解約率という既存製品の強みと、2026年に確認されたライセンス販売減少・コンサル不振を同時に反映した中心シナリオ。人月型の数量は約0.64〜0.68倍、業務SaaSは約0.8〜0.85倍とし、AI代替リスクを数量と価格に織り込む。
やや悲観 26% 新規製品販売が弱く、顧客基盤も緩やかに侵食される 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 352 円23 億円
LaKeel HRでは、SmartHR、COMPANY、SAPなどの既存製品に顧客が移る。LaKeel DXの既存利用者も一部が他の開発・データ基盤へ移行し、製品の契約数量が減る。低解約率という従来の強みは完全には失われないが、新規契約の減少を補えるほどの追加販売は実現しない。
教育動画もAI生成コンテンツとの競争によって単価が下がりやすくなる。安全衛生などの継続的な教育需要は残るが、顧客は既存の学習管理システムや社内のAI基盤へ教育を統合する。ライセンス販売では2025年のような大型案件を継続して獲得することが難しくなる。
人月型サービスは数量が2025年の5〜6割まで減る。価格改定はある程度進むものの、人件費とクラウド利用料の上昇を十分に吸収できない。会社は採用を抑え、収益性の悪い開発案件を整理するため、全面的な営業赤字は避けられる。それでも開発人材の維持と製品更新に費用が必要であり、利益の回復は弱い。
経営は大型M&Aを避け、現金の流出を抑えながら存続を優先する。自社株買いは規模を縮小し、利益の一部しか還元できなくなる。事業には一定の継続価値があるが、過去のような高い資本効率を取り戻すのは難しい。株主価値は残存する稼ぐ力と売却可能な資産を中心に評価される。
- LaKeel DX・業務アプリ継続課金(LOM除く):数量 145(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.05(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。契約数量は0.70倍。競争によって実質単価は低下する。
- LaKeel Online Media Service:数量 105(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.03(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。利用契約数が0.68倍へ減少。教育配信の需要は残る。
- LaKeel製品ライセンス販売:数量 10.0(年間新規ライセンス案件数(件、推定))× 価格 0.47(1案件当たり平均ライセンス売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。新規ライセンス案件数は0.59倍。競合による価格競争も強まる。
- その他の製品課金・付随収入:数量 20.0(年間契約・販売案件数(件、推定))× 価格 0.07(1案件当たり平均売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。小口契約の縮小と単価停滞。
- 製品関連コンサルティングサービス:数量 77.0(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.18(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。人月数量は0.55倍。新規案件が減り、AIの生産性向上を十分に収益化できない。
- プロフェッショナルサービス:数量 110(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.17(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。人月数量は0.56倍。既存保守が残ることで営業赤字は避ける。
倍率:事業ROEは資本コストを大きく下回る。純利益1.55億円の稼ぐ力をk=7.75%で見ると約20億円であり、保守的な余剰現金の評価を加えた価値の範囲内にある。資産面の床は約15億円と推定する。事業に一定の収益力が残るため床そのものより高い20.5億円とする。PBR表示は床の検証に使う現在の自己資本37.5億円を分母として20.5÷37.5=約0.5467倍。2035年の自己資本41.1億円に倍率を掛けて価値を水増ししない。
確率:2026年のHR領域における価格競争と新規ライセンス受注減少が長引く場合。AIによる人月数量の縮小は中立にも織り込んでおり、ここでは競合へのシェア流出と開発投資の採算悪化という会社固有の追加要因を重視する。
悲観 16% AI代替と競争で優良さを失い、資産を守る縮小経営へ 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 228 円15 億円
AIエージェントが開発、保守、業務ソフト操作の多くを直接処理するようになる。ラキールの既存製品は、顧客がAIを動かすための補助的な基盤として一部残るが、主力システムとしての地位を失う。LaKeel HRは大手人事ソフトや汎用AIプラットフォームに競り負け、新規ライセンス販売は少数の案件に限定される。
既存顧客も契約の更新時に利用範囲を縮小し、LaKeel DXや業務アプリの契約数量は大きく減る。オンライン教育では、AIが教材制作と個別教育を安価に提供するため、従来型の配信サービスに高い料金を支払う顧客は減少する。データ連携や監査の機能は残っても、その収益を独立したプラットフォーム企業のように高く評価することはできない。
コンサルティングとプロフェッショナルサービスの実質数量は2025年の半分以下となる。企業がシステム開発・運用を少人数とAIで行うため、従来の長期保守契約も縮小する。人件費削減が需要減少に追いつかず、営業赤字が継続する。追加のAI開発投資では競合に追いつけず、ソフトウェア資産やのれんの減損が発生する。
経営は大型の成長投資を停止し、不採算案件を整理して現金の流出を抑える。投資有価証券の売却や事業縮小によって資金を確保し、事業を存続させることを優先する。配当と自社株買いはほぼ停止する。株主が得られる価値は、残る収益ではなく、純現金と売却可能な資産の保全額に近づく。
- LaKeel DX・業務アプリ継続課金(LOM除く):数量 110(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.04(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量は0.53倍。AIや競合の統合基盤へ顧客が移る。
- LaKeel Online Media Service:数量 80.0(年間平均利用契約数(契約相当、実質))× 価格 0.03(1契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量は0.52倍。教育動画の低価格化で利益が縮小する。
- LaKeel製品ライセンス販売:数量 7.0(年間新規ライセンス案件数(件、推定))× 価格 0.40(1案件当たり平均ライセンス売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。新規ライセンス案件数は0.41倍。高収益の大型案件を失う。
- その他の製品課金・付随収入:数量 14.0(年間契約・販売案件数(件、推定))× 価格 0.07(1案件当たり平均売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。小口契約の解約が進み、維持費を回収できない。
- 製品関連コンサルティングサービス:数量 60.0(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.15(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。人月数量は0.43倍。価格も実質・名目ともに低下する。
- プロフェッショナルサービス:数量 92.0(年間稼働技術者数(人年換算、推定))× 価格 0.14(1人年当たり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。人月数量は0.47倍。縮小した長期保守案件だけが残る。
倍率:2035年も営業赤字であり、将来利益にPERを掛ける評価は適切ではない。2026年6月末の純現金約10億円と投資有価証券の保守的な税後回収価値約5億円を床とし、合計15億円を残す。2026年の移転特損や将来のソフトウェア・のれん減損は現金支出と必ずしも一致しないため、帳簿の自己資本減少をすべて現金消失とみなさない。一方、追加開発投資を停止し資産を保全することが床の成立条件である。床は現在の自己資本37.5億円に対してPBR0.40倍で表す。2035年の自己資本23.5億円へ倍率を掛けない。
確率:既存製品の置き換え、新規ライセンス不振、開発・保守の工数減少が重なり、製品開発投資も十分に回収できない複合シナリオ。純現金と売却可能な資産が残るため破綻を前提とはしないが、株主利益の大幅な縮小を想定する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
LaKeel DX・業務アプリ継続課金(LOM除く)
LaKeel DX、HR、BI、Data Insight、Workflowなどの継続利用料。契約数と契約当たり年間売上で収益が決まる。
| 数量年間平均利用契約数(契約相当、実質) | 価格1契約当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 207 | 0.05 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 171 | 0.05 | 9 | 2 |
取り方:会社の2025年決算説明資料と2026年上期資料に基づく。LaKeel製品サブスク14.37億円からLOM約4.73億円を除き、約9.64億円と推定。LOM除外の利用契約数は2025年の四半期末に概ね200〜210件で推移したため、年間平均207件を使用した。単価は9.64億円÷207件=年間約466万円。会社のユーザー数は契約・製品利用単位であり、一意の法人顧客数とは限らない。事業別営業利益は未開示のため、共通費配賦前の推計である。AIエージェント代替の型は『席課金・操作画面の業務SaaS』。中立の数量は2025年比0.83倍、価格は1.10倍程度とし、記録の正本としての追加成長は認めない。
LaKeel Online Media Service
安全衛生・食品衛生・ハラスメントなど、法人向け教育動画の継続課金サービス。配信・教育管理とコンテンツ利用料を得る。
| 数量年間平均利用契約数(契約相当、実質) | 価格1契約当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 154 | 0.03 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 131 | 0.03 | 4 | 1 |
取り方:2026年上期決算説明資料のLOM四半期売上と利用契約数から推定。2025年の四半期売上を合計して約4.73億円、年間平均利用契約数を約154件とし、1契約当たり年間約307万円とした。企業向けeラーニング市場1293.5億円に対する広義シェアは約0.37%。コンテンツ別契約数や平均受講人数は未開示。AI代替の型は『業務画面を伴うサブスクリプション』であり、教育動画制作の自動化も加味して中立数量0.85倍、価格約1.08倍とする。
LaKeel製品ライセンス販売
LaKeel HRなどの企業向けソフトウェアの新規ライセンス・初期導入に関連する販売収益。大口案件の有無によって年度間で大きく変動する。
| 数量年間新規ライセンス案件数(件、推定) | 価格1案件当たり平均ライセンス売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 17.0 | 0.51 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 0.55 | 7 | 2 |
取り方:2025年決算説明資料のライセンス売上8.59億円を使用。案件数と平均契約金額は未開示であり、主要顧客が大企業であることから1案件約0.5億円、年間約17件とした分析上の仮定である。開示された販売件数ではない。2026年上期はライセンス売上が前年同期比69.5%減少したため、2025年の件数を恒常的な実力とはみなさない。AI代替の型は『業務ソフト・操作画面』で、中立数量は0.76倍、単価は1.08倍程度。
その他の製品課金・付随収入
LaKeel製品以外のサブスクリプションや小規模な製品関連収入。主力製品や人的サービスに比べ収益規模は小さい。
| 数量年間契約・販売案件数(件、推定) | 価格1案件当たり平均売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 0.07 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 0.08 | 2 | 0 |
取り方:2025年のLaKeel製品以外のサブスク0.99億円と製品関連その他1.17億円の合計。契約数は公表されていないため、年間30件、平均720万円の仮定で数量と価格へ分解した。事業別営業利益は未開示であり推計。AI代替の型は『業務ソフト・画面型サブスクリプション』を基本とし、中立数量0.80倍、価格約1.10倍とする。
製品関連コンサルティングサービス
LaKeel製品の導入、業務要件の整理、データ連携、システム開発などの人的サービス。製品販売に付随する案件が多い。
| 数量年間稼働技術者数(人年換算、推定) | 価格1人年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 0.16 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.20 | 19 | 1 |
取り方:2025年決算説明資料で製品関連コンサルティング売上22.95億円を確認。担当人員数は開示されないため、連結490人のうち年間140人年が稼働したと仮定し、1人年当たり約1640万円とした。製品開発・営業・管理部門の人員と重複しない分析上の仮定である。事業別営業利益は未開示。AI代替の型は『人月・工数型』であり、中立数量は95÷140=0.68倍、価格は物価上昇を下回る1.24倍とする。
プロフェッショナルサービス
基幹システム開発、クラウド移行、既存システムの保守・運用。長期顧客向けの継続契約と新規開発案件で構成される。
| 数量年間稼働技術者数(人年換算、推定) | 価格1人年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 195 | 0.15 | 29 | 1 |
| 10 年後 中立 | 125 | 0.19 | 23 | 2 |
取り方:2025年決算説明資料のプロフェッショナルサービス売上29.18億円を使用。うちリカーリングレベニュー24.50億円、フロービジネス4.68億円。稼働人員は未開示なので195人年を仮定し、1人年当たり売上約1496万円とした。製品コンサル140人年と合わせ335人年であり、連結従業員490人に対して過大にならない範囲である。ただし外注を含む実際の工数とは一致しない可能性がある。AI代替の型は『人月・工数型』。保守の継続性を考慮しても中立数量0.64倍、価格1.24倍とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替
ラキールの売上の約67%は人手によるコンサルティング・開発・保守である。AIエージェントが要件定義、実装、テスト、保守を自律化すると、同じ顧客が購入する工数が減る。業務SaaSも操作画面を経由しないAI処理によって契約数や料金が減る可能性がある。中立の数量とg_longにはすでにこの構造的な縮小を織り込んでいる。
人事ソフトの競争とライセンス収益の不安定性
2026年上期のライセンス売上は前年同期比69.5%減少した。LaKeel HRでは価格競争の激化が会社自身から説明されている。新規ライセンスは大口案件の成否で変動しやすく、高粗利益の案件が減ると継続課金の伸びだけでは固定費を吸収できない。SmartHR、COMPANY、SAPなどとの競争上の地位を注視する必要がある。
AI製品への巨額投資と資本効率
中期計画の製品開発投資約50億円は、2025年の自己資本約37.5億円を上回る大きさである。投資が成功しても、競合も同様のAI機能を提供すれば価格競争が続く。投資利益率が資本コストを下回る状態で開発費が資産計上されると、帳簿上の利益とオーナー利益が乖離する。将来の減損・借入増加・増資にも注意が必要である。
顧客の内製化と大手クラウド企業への依存
Microsoft、AWS、Google、SAPなどがAIエージェントや業務アプリを一体化すると、顧客は既存のクラウド契約の中で必要な機能を利用できるようになる。ラキールの独自機能が差別化できなければ、顧客は追加のライセンスやコンサルティングを購入しない。企業の内製化が進む場合にも、開発・導入工数への需要は減る。
資本政策と支配株主の判断
代表者を中心とする株主構成には集中があり、資本配分の判断が少数株主の利益と必ず一致するとは限らない。自己株式取得の実績はあるが、配当性向やDOEの数値目標はない。AI投資やM&Aの資金需要が増えると、還元が縮小する可能性がある。自己株式取得の価格と、買収後の利益・キャッシュフローを継続して評価する必要がある。
現金・のれん・ソフトウェア資産の質
2026年6月末には現預金約18.5億円に対して有利子負債が約8.5億円あり、純現金は2025年末から減少した。さらに、のれん約3.15億円、ソフトウェアおよびソフトウェア仮勘定などが帳簿に残る。これら無形資産の独立した売却価値は不確実であり、純資産すべてを清算価値として評価できない。事業が縮小した場合の減損と実際の資金流出を区別して見る必要がある。
今後の分かれ目
- LaKeel製品の契約数が2年以上増加し、粗解約率が低水準を維持しながらARPUも上昇したら
- 既存顧客基盤の継続性が予想以上に強いと判断する。特にHRやDXで製品別の追加販売が確認できれば、やや楽観の確率を上げ、SaaS数量の縮小前提を見直す。
- LaKeel AI PlatformやLaKeel Bluの売上・受注が金額で継続開示され、既存サービスの減収を上回る増分粗利益が確認できたら
- AIを防御的な開発効率化手段ではなく、新しい収益源として評価する。実績のある製品部分だけ数量成長を認め、長期の成長率や再投資効率を引き上げる。
- 2027年以降も営業利益率が5%未満にとどまり、製品開発費が増加し続けたら
- 増分投下資本利益率が資本コストを下回っている可能性が高い。やや悲観・悲観の確率を引き上げ、ソフトウェア資産の減損と資金調達の必要性を再評価する。
- 2027年の売上100億円・営業利益10億円が達成され、営業キャッシュフローも増加したら
- 中期計画の実現可能性を再評価する。ただし一時的な大型ライセンス売上による達成ではなく、継続課金と持続的な利益率の改善によるものかを確認してから中立の価値を引き上げる。
- 純現金がゼロに近づき、研究開発費と自社株買いのために借入や増資を続けたら
- 現金の安全域を縮小し、既存株主の希薄化と将来の支払利息を反映する。悲観側の床も、残る純現金と売却可能資産の金額に合わせて引き下げる。
- 新規ライセンスの減収が続く一方、プロフェッショナルサービスの売上だけが増えたら
- 製品企業への転換ではなく、人月型サービスへの依存が再び高まっていると判断する。売上増加だけでは高い倍率を正当化せず、人月数量の持続性と利益率を中心に価値を見直す。
見ておくもの
- LaKeel製品の四半期MRR、契約数、ARPU、粗解約率とネット解約率
- LaKeel HRの新規ライセンス売上と競争による受注失注の状況
- 製品関連コンサルティングとプロフェッショナルサービスの売上・リカーリング構成
- LaKeel AI Platform、LaKeel Blu、LaKeel HR AIの金額を伴う売上・受注開示
- AI関連の研究開発費、ソフトウェア資産計上額、減価償却費、営業キャッシュフロー
- 中期計画の2027年売上100億円・営業利益10億円に対する進捗
- 自己株式取得額、自己株式数、発行済み株式数と新株予約権の行使
- 現預金、有利子負債、投資有価証券、のれんとソフトウェア資産の推移
- 競合SmartHR、COMPANY、SAPおよび大手クラウド企業のAI機能展開
- 顧客企業のAI内製化による開発・保守契約の数量と単価への影響
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額53.60億円と株価は、セグメント別の数量・単価・営業利益率と10年後の価値を決める前提には使っていない。2025年の会社開示からLaKeel製品の継続課金、LOM、ライセンス、その他製品、製品関連コンサルティング、プロフェッショナルサービスを分解した。会計上は単一セグメントであるため、サービスごとの営業利益は独自推計であり、全社営業利益4.45億円に調整した。
中立の人月型数量は0.64〜0.68倍、業務SaaS型数量は0.76〜0.85倍とした。価格は人月型で約1.24倍、SaaS型で約1.08〜1.10倍とし、AIエージェント代替と物価3%の前提を整合させた。AI代替をさらに資本コストの寿命項目や楽観〜中立の倍率割引に重ねていない。10年後以降のg_longは名目マイナス0.5%であり、普通のソフトウェア企業の名目3〜4%成長をそのまま適用しない。
中立PERは、事業ROEがkを下回るため1/(k-g)=12.12倍の上限そのものを採用した。市場のPER・PBRや同業比較の数字は倍率の根拠に使用していない。やや悲観・悲観は現在の純現金と売却可能な投資有価証券から床約15億円を評価し、将来積み上がる自己資本に床のPBRを掛けていない。悲観15億円、やや悲観20.5億円、中立33.78億円と順序は整合している。
10年のシナリオは2025年12月期から2035年12月期でそろえた。2027年4月以降に始まる年度からの新リース会計基準で使用権資産と負債が両建てになる可能性があるが、10年後の利益は家賃を営業費用に含む比較可能な形で考えた。余剰現金2億円の受取利息は利益倍率から外し、会社が成長投資に使う現金を株主への自由現金として二重に足していない。
確率は楽観10%、やや楽観16%、中立32%、やや悲観26%、悲観16%で合計100%。10年後の時価総額と期間中の還元をk=7.75%で現在価値へ割り引くと、確率加重の本質価値は約19.98億円となる。基準時価総額53.60億円との差は約マイナス62.7%であり、分類は「割高」。これは市場価格を目標に倍率を調整した結果ではなく、数量の縮小、投資負担、残存する稼ぐ力から独立して得た結果である。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、競争上の値決め力と純現金による品質調整+0.25%を加える。2026年の赤字予想には本社移転特損と先行投資が含まれ、現時点で継続的な財務危機とは断定できないため、経営困難企業向けの追加上乗せは設けない。
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読んだ資料
- ラキール 2025年12月期 決算説明資料(製品・コンサル・保守の売上内訳、サブスクリプション、財務)
- ラキール 2026年12月期 第2四半期決算説明資料(新規ライセンス不振、AI投資、契約数・解約率・財務)
- ラキール 中期経営計画 LaKeel 2030(売上・利益・ROE目標、製品開発投資、キャッシュ・アロケーション)
- 矢野経済研究所 2026年eラーニング市場調査(法人向け市場規模と生成AIによる変化)
- 富士キメラ総研 企業向けソフトウェア国内市場調査(SaaS・PaaS市場の規模と成長予測)
- SmartHR 2026年4月28日公表資料(登録社数8万社超と労務管理クラウドの競争環境)
- IDC Japan 国内IT市場におけるデュアルエンジンでの成長(2026年国内IT市場予測)