結論
ジョルダンは「乗換案内」を核に、交通情報を法人へ供給し、広告、アプリ課金、モバイル乗車券で稼ぐ会社である。長期保有の観点では、現在の時価総額約34.4億円は割高と考える。交通情報そのものの需要は10年先もなくならないが、人がアプリを開いて検索する行動や、有料会員に直接課金する仕組みは今の形では残らない可能性が高い。確率を織り込んだ現在価値は時価総額を大幅に下回り、株主が払う値段に十分な安全域はない。
強みは、一月に約2.4億回使われる経路検索と、多数のバス事業者・交通機関の運行情報を結び付けてきた実務の蓄積である。法人の運賃計算や経路案内、地域交通のデジタル乗車券は、単なる消費者アプリよりも息が長い。2026年3月にはモバイルチケットの参加事業者が104に達し、交通機関との接点も増えた。ただし、利用規模と収益化は別物だ。長年の有料会員の減少が、利用者数を値上げ力と取り違えてはいけないことを示す。
財務には確かな守りがある。2025年9月期の純現金は約32億円、自己資本は約46億円で、借金による存続の心配は小さい。しかし、売上高は2014年の約43億円から直近約28億円へ縮み、2025年の営業利益は約0.5億円にすぎない。同年の純利益には営業外・特別利益が含まれ、2026年の増益にも多額の助成金がある。価値の中心は現金ではなく、その現金を株主に戻しながら稼ぐ力を再建できるかにある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって魅力的なのは、資産ではなく毎年のオーナー利益が繰り返し生まれる会社である。ジョルダンは交通情報の事業基盤と多額の現金を持つが、その両方を十分な収益率で結び付けられていない。営業利益の減少が10年規模で続き、最近の最終利益は助成金、為替差益、子会社清算益など本業以外に支えられる。これらを来年も得られる稼ぎと見なすと、事業を実力以上に高く買ってしまう。
本当に残る価値は、運行事業者との情報更新の関係、法人に組み込まれた検索と運賃計算、モバイル乗車券の運用ノウハウである。経路を自分で調べる画面はAIに奪われても、運賃や運行情報を正しく供給する手間は残る。ただし、その収益の継続率と値上げ力が開示されていない以上、永久に高い利益率で成長する堀とは認定できない。法人のデータ連携が残ることと、既存のソフト開発費用が残ることも別問題だ。
資本配分はさらに重要になる。過去10年で事業の利益は減ったのに現金は積み上がった。新しいソフト開発と旅行事業に投じた資金が資本コストを上回るという実証がなければ、追加投資は株主にとって見返りが乏しい。大株主の意向が還元方針を左右するため、現金の額面をすべて少数株主の取り分と考えるのも危うい。配当の増加が続き、余剰現金が実際に減るなら評価を改めたい。
最大の問題は株価ではなく、10年先の稼ぐ力を読み切る難しさだ。今の時価総額は帳簿上の自己資本より低いが、低ROEの会社では純資産の割安さだけで安全域は生まれない。資産の支えは評価する一方、AIによる商流の変化を補うだけの利益回復が見えていないため、支払う価値は保守的になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの本体は「乗換案内事業」で、2025年9月期の外部売上高は約23.43億円、全社の八割強を占める。法人向けの経路・運賃検索、時刻表データ提供や業務システムが柱となり、自社のウェブサイトとアプリで広告枠を売り、課金利用者から利用料を受け取る。さらに観光予約と地域交通のモバイルチケットを扱う。四つの稼ぎ口を同じ検索アプリ事業と見ると、AIによる代替の強さを見誤る。
法人向けでは鉄道・バスの経路と運賃の情報を、人事の通勤費計算、旅行、他社アプリ、自治体の移動支援へ組み込む。接続先の業務が止まらない信頼性と時刻表改定への対応には継続価値がある。他方、案件ごとの構築や画面操作の部分には人月型の受託開発が混じり、将来はAIエージェントが代行しうる。2026年の説明資料には法人向け売上の伸びが見えるものの、通期契約件数や契約単価は未開示である。
消費者向けには無料の経路検索と広告、付加機能の有料会員がある。会社が示した月間検索は約2.4億回であるのに、2026年3月時点の有料会員と取り放題サービス利用者を合わせた規模は約10万人にとどまる。かつて約60万人に達した有料会員の減少と、検索回数の底堅さが対照的である。モバイルチケットは104交通事業者が参加し、月間使用は約2万枚だが、取扱高をそのまま売上と見なすことはできない。
ほかにソフトウエア事業の外部売上約3.01億円、ハードウエア事業約1.77億円、出版・賃貸など約0.13億円がある。ソフトウエアは開発受託が主で、年度末の従業員34人を能力の物差しにできる。ハードウエアは改札連携用の端末など実物を伴うが、機器販売だけでは規模の堀を作りにくい。事業部利益を足すと黒字でも、本社共通費約2.96億円を引くと全社営業利益は薄い。
優良さと弱いところ
この会社の堀、すなわち他社が容易に奪えない強みは、時刻表と運賃の更新、路線の接続関係、バスの細かな運行データを長く扱ってきたことだ。会社資料では路線バス421事業者・約2.3万路線に加え、コミュニティバス895事業者・約7,400路線を扱う。データの正確さが通勤費精算や乗車券販売を支える点は評価できる。鉄道や地域交通の現場の調整を、単純な生成AIだけで置き換えられるわけではない。
しかし、保有するデータと独占するデータは違う。時刻表の原データは運行事業者にあり、Googleマップ、Yahoo!乗換案内、NAVITIMEも利用者を囲い込んでいる。法人の年次解約率が5%未満という開示も、法規制に基づく乗り換え不能の証拠も確認できない。運行情報の蓄積を評価しつつも、価格決定力が強い「記録の正本」の事業と同一視できない。
経済的な成績には厳しい。2014年の営業利益約6億円が2025年には約0.5億円となり、2017年以降は収益力が落ちている。2022年と2024年には営業赤字になった。財務体質は抜群でも、過去10年のROE中央値は約2%で資本コストを下回る。利益を積み上げるだけなら、株主の資本を増やしても価値を十分に増やせない。
2025年の研究開発費は約1.28億円で、交通チケットや旅費精算の開発を続けている。新しい需要への適応力はあるが、AI旅費精算の事業化に対応する確定的な売上金額は見当たらない。技術の新しさだけで超過利益が戻るとは考えない。収益力の改善を評価する条件は、助成金を除いた営業利益の持続と、法人契約の継続率・単価の実証である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
旅行や通勤のための経路検索そのものは生活インフラに近い。しかし利用者の接点は変わる。Googleマップ、Yahoo!乗換案内、NAVITIMEに加えて、今後は携帯端末のAIエージェントが「最適な行き方を教えて券を買う」まで代行しうる。独立した検索画面への訪問が減れば、検索回数を基にした広告収益も、アプリ内の課金機能も弱くなる。実際に同社の会員課金は検索の普及ほど伸びていない。
大きな市場にいることは大きな取り分を保証しない。電通によれば2025年の国内インターネット広告媒体費は3兆3,093億円だが、同社の交通検索広告はそのごく一部であり、ここを経路検索広告の直接市場規模と見ることはできない。推計した同社広告収入約4.32億円は市場全体の約0.013%にすぎない。専用の経路検索広告市場と競合各社の売上別シェアは非開示で、月間利用や累計ダウンロード数だけから正確な収益シェアは算出できない。
地域交通の電子乗車券は別の成長機会だ。政府や自治体が交通空白地の対策を進め、観光需要や複数交通手段の連携を後押ししている。同社はゆりかもめなど交通事業者と組み、QR乗車券、顔認証、訪日客向け多言語案内を広げている。ただし、交通運賃の総額が増えてもジョルダンに残るのは手数料とシステム収入だけだ。MaaSの市場予測に含まれる交通運賃や決済流通額を自社の売上市場と混同してはいけない。
法人市場では、JR関連システム、NTT系、NAVITIMEの法人API、Googleの地図基盤、各自治体の競争入札が相手となる。交通事業者数では路線の網羅が競争材料になるが、価格や契約件数の比較可能な統計は乏しい。10年後は、交通データの更新と乗車・精算の接続を担う収益は残る一方、受託開発の工数や検索画面に付随する収益は細ると見る。競争はネット検索の利用者争奪から、AIが呼び出す基盤APIと決済・改札の取り分争奪へ移る。
資本政策と M&A
現金を持つことと、現金を株主のために使うことは別である。2025年9月期の自己資本は約45.8億円、純現金は約32.2億円で、手元流動性には十分な余裕がある。しかし長期間にわたり売上と利益が縮み、少額の事業投資が高い増分ROICを生んだ証拠は乏しい。投下資本を増やすよりも、採算の低い子会社を整理し、余剰現金を配当や自社株買いで返す合理性が高い。
有価証券報告書の連結配当性向の目標は20%で、2025年実績は11.7%だった。2026年8月に増配予想を公表し、年間配当予定総額は約0.51億円となった。一方、DOEや総還元性向、自社株買い額の数値約束はなく、確認できた公開中期経営方針にも売上・営業利益・ROEの具体的な到達目標額はない。「数字の約束なし」という評価が妥当である。
代表者が議決権の53.28%を直接・間接に保有し、少数株主は現金の使い道を決めにくい。過去には旅行関連子会社の清算や事業整理を実施したが、事業売却・買収後の増分利益率の検証は必要だ。保守的な配当と増配の事実を考慮し、余剰現金の価値には75%の株主還元可能性を反映する。0.5倍への一律減額は、過去5年に増配がないという条件に当てはまらない。TOB・MBOや上場廃止予定、継続企業の前提の注記は確認できず、通常の独立上場企業として評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
乗換案内は、単なる地図アプリではない。鉄道と地域バスの運行変更、複雑な運賃、観光チケットを実用に耐える形で毎日つなぐ交通情報会社である。月間検索が約2.4億回あることは社会に使われ続ける製品である証拠だ。有料会員の減少ばかり見ると、法人向けの経路APIや交通機関向けのシステム連携が積み上がる実態を見落とす。2026年上半期には法人向けと広告が増収となり、乗換案内セグメントの利益も改善している。
交通事業者とのモバイルチケット連携は104に増えた。毎月約2万枚の利用規模はまだ小さいが、地域交通のデジタル化が進めば地方鉄道、バス、観光施設の発券と乗換検索を接続する場が広がる。利用者の端末にAIが搭載されても、そのAIが呼び出す正確な交通情報と乗車券を供給する会社は必要だ。法人APIをより使いやすくし、AIが交通データを利用する際の接続料金を取る商流に転じれば、画面への依存から脱せる。
財務の耐久力も小型IT企業として際立つ。借金をほぼ持たず、純現金が現在の時価総額に近い。赤字事業を整理して利益率を戻し、現金を還元すれば、10年間で株主に帰る額は増える。新しいAI旅費精算などが実際の有料受注につながる場合、数量の上振れを現在の見込みに加える余地がある。ただし、その売上実績は現時点で確認できず、成功を既定路線にはしない。
慎重な見方
利用者が多いことと、利用者から十分な利益を取れることは違う。ジョルダンは2014年以降、約43億円あった売上が約28億円に縮み、営業利益も大幅に落とした。月間の検索回数が残る一方、有料会員はかつての約60万人から、有料と取り放題を合わせて約10万人まで減った。高い利用率が利用料の値上げ力に結び付かなかった実績は重い。競合のYahoo!乗換案内、NAVITIME、Googleマップと無料で競う限り、独立アプリの課金は再成長しにくい。
生成AIは競争の形を変える。利用者は画面を開かず、端末に行き先を話しかけてルートを受け取る。企業は人が業務ソフトを操作せず、エージェントに経費精算と交通経路の選定を任せる。ジョルダンの情報が使われ続けても、販売価格を決めるのは多数の顧客を握るAI基盤の側になる可能性がある。人月で売る開発工数は減り、広告への表示回数も減る。運行データを持っているだけでは、自動的に「不可欠な記録の正本」にはならない。
財務の守りにも限界がある。現金には前受の契約負債や固定費への備えが必要で、土地・ソフト・投資の帳簿額がそのまま売却代金になる保証はない。2025年の純利益は子会社清算益などを含み、2026年の最終利益も助成金や為替に左右される。支配株主が過半の議決権を握るため、少数株主は多額の現金を自由に配分できない。業績悪化が長引いて還元せずに資金を費消すれば、株価純資産倍率が低く見えても価値の罠となりうる。
どちらに重みを置いたか
交通データと資金力を評価する見方には実物の根拠がある。しかし、会員課金の長期減少と営業利益の衰えは実績であり、AIが画面と受託工数を置き換える危険も大きい。上振れはモバイル乗車券の拡大、法人APIへの移行、配当の持続が同時に進む必要がある。下に寄せる理由は、2014年以降の売上と会員数の低下が長く続き、利益の回復を助成金が強く見せていることだ。AI代替は数量と長期成長率で一度だけ扱い、確率でさらに重ねていない。そのため上側25%に対して下側44%とし、現金を過大な防波堤と見なさず、価値を時価総額より低く評価する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 839 円43 億円(+ 還元の換算額還元の合計 52 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 415 円21 億円、今との差 −39.4%、 期待の年率 +2.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,570 円80 億円 | 118 円6 億円 | +146.7% | +9.9% | 135 円7 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,084 円55 億円 | 82 円4 億円 | +70.6% | +5.7% | 198 円10 億円 |
| 中立 | 31% | 809 円41 億円 | 59 円3 億円 | +26.9% | +2.5% | 269 円14 億円 |
| やや悲観 | 26% | 663 円34 億円 | 27 円1 億円 | +1.0% | +0.1% | 180 円9 億円 |
| 悲観 | 18% | 590 円30 億円 | 16 円1 億円 | −11.4% | −1.2% | 109 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 839 円43 億円 | 52 円3 億円 | +30.3% | +2.8% | 891 円45 億円 |
今の株価時価総額 684 円35 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 法人APIとモバイル券が成長へ転換 利益 5 億円 · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,570 円80 億円
乗換案内は独立した検索アプリから、自治体と交通機関が共用する経路・発券基盤へ転換する。既存の法人向けAPIが堅調に残り、モバイルチケットの参加事業者が全国へ広がる。連携先の鉄道会社や旅行販売会社が増え、乗車券・観光の課金取引相当数は現在の約1.65倍となる。改札用の読取機器も普及し、運用・保守と組み合わせて採算が上がる。
GoogleやYahoo!との画面競争は続くが、交通情報を裏側で供給する収益がそれを補う。AIエージェントも同社の交通データを外部接続で使うものの、現時点で販売実績が確認できないAI旅費精算の新収益は先取りしない。ソフト開発も案件の質が改善し、固定費増を賄えるようになる。経営は低採算事業を撤収して開発を交通の強みに集中させ、現金の還元も続ける。かつての利用者課金モデルに戻るのでなく、現場で実際に発券される取引を増やす転換に成功した姿である。
- 法人向け交通情報・業務システム:数量 400(年換算の法人契約相当件数(件、未開示の推計))× 価格 0.04(1契約相当の年間認識売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。APIの保持と保守で年契約相当400件
- 乗換検索の自社広告枠:数量 2.4(月間経路検索回数(億回、2026年3月の代理指標))× 価格 0.20(検索1回当たりの広告収入(円、実現単価の推定))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。無料検索は現在の利用量を維持、広告単価は物価に追随
- 個人向け有料・取り放題サービス:数量 10.0(月次有料・取り放題利用者相当(万人))× 価格 0.40(利用者1人当たり年間認識売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。有料機能は機能改善で利用者を維持
- モバイル乗車券・観光・予約:数量 36.3(年間の課金取引相当数(万件、推定))× 価格 0.13(課金取引1件当たり認識売上(万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。交通機関の採用と観光券販売で課金取引が約1.65倍
- ソフトウエア受託開発:数量 34.0(連結ソフト事業の年度末従業員(人、売上能力の代理))× 価格 0.12(1従業員・年当たり外部売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。AI受託代替下でも付加価値案件は維持
- 交通・情報システム機器:数量 930(機器・付随サービスの年間納入相当台数(台、推計))× 価格 0.00(納入相当1台当たりの平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。改札用端末需要が約1.55倍
- 出版・マルチメディア・その他:数量 1,600(出版物・小口契約の年間等価取引数(件、推計))× 価格 0.00(1取引相当の年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。残余事業の撤退が進む
倍率:税後の事業純利益は約4.43億円、事業自己資本は約46億円でROE約9.6%。k8.25%、堀普通で増分収益率の上振れは半分残りRONIC約8.94%。g_long0.5%から(1−g/RONIC)/(k−g)=12.18倍。余剰現金25億円の税後利息0.35億円を純利益から外し、戻り方75%の18.75億円を加算。市場の過去PERに依存しない。
確率:電子チケット事業者の実績拡大が10年続き、広告単価も物価に沿って改善する複合条件を要求するため8%。未計上のAI旅費精算収益を理由にした数量上積みは含めない。
やや楽観 17% 法人収益の維持と交通電子化が進む 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,084 円55 億円
法人向けの経路・運賃データは、多くの企業の出張精算や公共交通案内に埋め込まれ、顧客が契約を維持する。受託工数の削減は避けられないものの、交通データの使用契約と保守の比率が上がり、単価はおおむね物価並みに伸びる。アプリ広告は来訪の減少を単価改善で一部吸収し、検索の無料利用を堅持する。有料会員の利用者相当数はなお減るが、利便性の高い機能に課金が残る。
モバイル乗車券は地域バス、観光鉄道、旅行会社との提携で現在より広い市場に達する。ハードの端末需要も続き、需要が本格化した際の赤字を避けられる規模を得る。赤字子会社の整理と販管費の抑制は進むが、大手地図プラットフォームに対する価格交渉力は強くない。営業利益は持ち直す一方、事業のROEは資本コストに届きにくく、利益が成長するだけで高い超過価値を生む企業にはならない。
- 法人向け交通情報・業務システム:数量 352(年換算の法人契約相当件数(件、未開示の推計))× 価格 0.04(1契約相当の年間認識売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。法人契約相当352件、工数の減少をデータ収入が補う
- 乗換検索の自社広告枠:数量 2.2(月間経路検索回数(億回、2026年3月の代理指標))× 価格 0.20(検索1回当たりの広告収入(円、実現単価の推定))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。検索0.93倍、広告単価はやや上がる
- 個人向け有料・取り放題サービス:数量 8.5(月次有料・取り放題利用者相当(万人))× 価格 0.39(利用者1人当たり年間認識売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。課金利用0.85倍で持続
- モバイル乗車券・観光・予約:数量 29.7(年間の課金取引相当数(万件、推定))× 価格 0.13(課金取引1件当たり認識売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。券売・観光の課金取引相当1.35倍
- ソフトウエア受託開発:数量 25.5(連結ソフト事業の年度末従業員(人、売上能力の代理))× 価格 0.12(1従業員・年当たり外部売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人月型の実質数量0.75倍
- 交通・情報システム機器:数量 750(機器・付随サービスの年間納入相当台数(台、推計))× 価格 0.00(納入相当1台当たりの平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。端末は導入地域拡大で数量1.25倍
- 出版・マルチメディア・その他:数量 1,400(出版物・小口契約の年間等価取引数(件、推計))× 価格 0.00(1取引相当の年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。出版等は縮小
倍率:事業純利益約2.55億円と事業自己資本約39億円のROEは約6.5%でk8.25%に届かない。長期gは0.5%、資本を追加投入しても超過価値を生まない上限1/k=12.12倍をそのまま使う。純利益から余剰現金25億円の税後利息0.35億円を引き、戻り方75%の18.75億円を別途加える。
確率:2026年の法人・広告の成長が数年持続し、券売の取扱が拡大するのは現実的だが、AIが利用画面を中抜きするため上振れには上限を設ける。
中立 31% 検索画面は縮むが交通データは残る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 809 円41 億円
10年後も鉄道やバスには正確な経路、運賃、乗車券が必要である。ジョルダンは法人への接続と地方交通事業者との関係を守り、その収益が会社の土台として残る。ただし、法人向け売上のうち人月受託と画面型のソフトはAIエージェントに置き換わる。経路検索の表示回数は現在の約78%、有料・取り放題の利用者相当数は約72%まで減る。料金も広告も物価ほど自由に上げられない。
一方、モバイル乗車券の取引数は現物の移動需要とともに緩やかに増え、交通機関向け端末も一定数残る。新しい航空・観光連携は補完収益だが、運賃総額をそのまま同社の収益とは見込まない。受託開発に要する人員と工数は約65%に縮み、効率化で部門赤字を解消するものの、高い粗利は得られない。子会社整理の効果で営業利益は回復するが、自己資本を大幅に増やすほどの資本効率には至らない。これが多数の利用者と弱い収益化が共存する同社の普通の将来だ。
- 法人向け交通情報・業務システム:数量 328(年換算の法人契約相当件数(件、未開示の推計))× 価格 0.04(1契約相当の年間認識売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。AI代替で工数は0.65倍、基盤需要との混合で法人0.82倍
- 乗換検索の自社広告枠:数量 1.9(月間経路検索回数(億回、2026年3月の代理指標))× 価格 0.19(検索1回当たりの広告収入(円、実現単価の推定))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。検索数0.78倍、広告実現単価1.25倍
- 個人向け有料・取り放題サービス:数量 7.2(月次有料・取り放題利用者相当(万人))× 価格 0.39(利用者1人当たり年間認識売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。アプリ会員相当0.72倍、値上げ力弱い
- モバイル乗車券・観光・予約:数量 24.2(年間の課金取引相当数(万件、推定))× 価格 0.13(課金取引1件当たり認識売上(万円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。地域交通の電子券利用件数は1.10倍
- ソフトウエア受託開発:数量 22.1(連結ソフト事業の年度末従業員(人、売上能力の代理))× 価格 0.12(1従業員・年当たり外部売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。人月・工数数量0.65倍、価格1.30倍
- 交通・情報システム機器:数量 558(機器・付随サービスの年間納入相当台数(台、推計))× 価格 0.00(納入相当1台当たりの平均売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。改札端末更新はほぼ横ばい
- 出版・マルチメディア・その他:数量 1,000(出版物・小口契約の年間等価取引数(件、推計))× 価格 0.00(1取引相当の年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小口出版・賃貸を段階整理
倍率:税後の事業純利益は約1.42億円、事業自己資本は約31.5億円でROE約4.5%とk8.25%以下。正当化PERの上限1/k=12.12倍を適用する。g_long0.5%はAIによる10年超の先細りを反映し、時価総額は(純利益1.775億円−現金利息0.35億円)×12.12+25億円×0.75。過去や同業のPERで値付けしない。
確率:移動需要と交通データ需要は続くがアプリ課金と受託開発は侵食される、という実績と技術変化に最も整合する中心経路として31%。
やや悲観 26% 検索の中抜きと法人案件の縮小 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 663 円34 億円
AIエージェントがスマートフォン上の経路検索を代行し、独立した乗換アプリへの訪問が減る。Yahoo!乗換案内とGoogleマップは交通情報を自社サービスに統合し、無料で提供する。広告の表示機会が縮小し、競合の無料機能との比較で課金会員も減る。法人のシステムは使われるが、企業の経費精算をAIが直接処理し、個別開発の契約件数が減る。値上げも競争のため物価に追い付かない。
モバイルチケットでは一部自治体の入札を落とし、採用先が増えても手数料率が低下する。交通事業者にとって必要な改札機器は残るが、大きな導入ブームは起きない。会社は採算の低いサービスと拠点を畳み、本社共通費を削って利益をかろうじて残す。現金はリストラ費用と維持投資に一部使われ、配当は細る。清算ではなく縮小均衡で10年を終えるため、株主に戻る事業利益は限定的となる。
- 法人向け交通情報・業務システム:数量 256(年換算の法人契約相当件数(件、未開示の推計))× 価格 0.04(1契約相当の年間認識売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。法人契約相当256件、仕様簡素化で単価低迷
- 乗換検索の自社広告枠:数量 1.4(月間経路検索回数(億回、2026年3月の代理指標))× 価格 0.17(検索1回当たりの広告収入(円、実現単価の推定))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。検索0.58倍、広告単価も競争
- 個人向け有料・取り放題サービス:数量 5.0(月次有料・取り放題利用者相当(万人))× 価格 0.36(利用者1人当たり年間認識売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。会員相当0.50倍、画面代替
- モバイル乗車券・観光・予約:数量 17.6(年間の課金取引相当数(万件、推定))× 価格 0.12(課金取引1件当たり認識売上(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。地域券の入札競争で縮小
- ソフトウエア受託開発:数量 17.0(連結ソフト事業の年度末従業員(人、売上能力の代理))× 価格 0.10(1従業員・年当たり外部売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託工数0.5倍、営業採算ゼロ
- 交通・情報システム機器:数量 420(機器・付随サービスの年間納入相当台数(台、推計))× 価格 0.00(納入相当1台当たりの平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。機器更新0.70倍
- 出版・マルチメディア・その他:数量 700(出版物・小口契約の年間等価取引数(件、推計))× 価格 0.00(1取引相当の年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。不採算事業を縮退
倍率:構造的縮小で営業利益はほぼ均衡し、ROEは資本コスト8.25%を下回る。悲観側の床のPBRは10年後の自己資本50.3億円ではなく、2025年9月期末の現在自己資本45.8億円に適用する。PBR0.683406倍により時価総額31.3億円とし、純現金と換金可能資産の保守的な税後床30.0億円を上回る。過去の株価純資産倍率からは決めていない。
確率:有料会員が長く減り続けた事実に加え、法人契約の更新率が開示されず、営業利益が薄い状態が続いたことから26%。AI代替は数量とg_longに織り込み、この確率では重ねて引かない。
悲観 18% AIに販路を奪われ縮小事業として存続 利益 0 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 590 円30 億円
AI端末と大手地図アプリが経路提示から乗車券の購入までを一体化し、ジョルダンへの直接訪問が現在の3分の1程度になる。法人の通勤費・旅費計算もAI内製化され、人月型開発の需要は大きく減る。交通情報の原データを持つ運行会社はGoogleなどの大規模な集約基盤にも直接供給するようになり、ジョルダン独自のAPI利用料は下押しされる。技術が消えるのではなく、流通経路の主導権を失う。
地方交通のモバイルチケットは残るが、決済会社と交通事業者が条件を決め、ジョルダンは低い手数料のシステム供給者になる。ハードウエアは更新需要のみとなり、ソフト開発は過剰な人員と採算悪化に直面する。会社は撤退と事務所縮小によって本社費を大きく削減し、費用をかけて残った運行情報契約の維持に徹する。株主には小額の配当しか残らず、売却可能な現金・資産を支えに会社の形だけは保つ。簿価すべての回収を見込まないことが、この厳しい将来の核心である。
- 法人向け交通情報・業務システム:数量 172(年換算の法人契約相当件数(件、未開示の推計))× 価格 0.03(1契約相当の年間認識売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。法人契約相当172件、交通情報の卸値低下
- 乗換検索の自社広告枠:数量 0.8(月間経路検索回数(億回、2026年3月の代理指標))× 価格 0.14(検索1回当たりの広告収入(円、実現単価の推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。検索0.35倍、広告実現単価も低下
- 個人向け有料・取り放題サービス:数量 3.0(月次有料・取り放題利用者相当(万人))× 価格 0.35(利用者1人当たり年間認識売上(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。会員相当0.30倍、UI自体が陳腐化
- モバイル乗車券・観光・予約:数量 12.1(年間の課金取引相当数(万件、推定))× 価格 0.11(課金取引1件当たり認識売上(万円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。券売は現場で残るが手数料低下
- ソフトウエア受託開発:数量 11.9(連結ソフト事業の年度末従業員(人、売上能力の代理))× 価格 0.09(1従業員・年当たり外部売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託工数0.35倍、損失
- 交通・情報システム機器:数量 270(機器・付随サービスの年間納入相当台数(台、推計))× 価格 0.00(納入相当1台当たりの平均売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。端末取引0.45倍
- 出版・マルチメディア・その他:数量 400(出版物・小口契約の年間等価取引数(件、推計))× 価格 0.00(1取引相当の年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。最小限だけ存続
倍率:全社営業利益がほぼゼロで、純利益の大半が受取利息であるため、事業利益に高い倍率を掛けない。2025年9月期末の現在自己資本45.8億円を分母に、回収可能資産を基にしたPBR0.657205倍を適用して時価総額30.1億円とする。10年後の自己資本48.8億円をPBRの分母には使わない。保守的な税後換金価値30.0億円を床とし、過去の谷のPBRには依存しない。
確率:需要消滅よりは取引先への価格交渉力喪失を懸念する。アプリ課金の減衰、法人開発の縮小、事業整理費用が重なる可能性を18%とし、純現金の額だけで確率を小さくしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人向け交通情報・業務システム
経路・運賃API、企業の通勤費・旅費精算への接続、法人システムの保守。交通データ提供と受託工数を半分ずつ含む概算。
| 数量年換算の法人契約相当件数(件、未開示の推計) | 価格1契約相当の年間認識売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 400 | 0.03 | 13 | 2 |
| 10 年後 中立 | 328 | 0.04 | 14 | 3 |
取り方:乗換案内事業の外部売上23.43077億円を、2026/09期中間決算説明の法人向け売上8.58億円、広告2.44億円、アプリ1.62億円等を参照して分解。法人のFY2025売上を13.40億円と仮定し、年間400件相当×335万円で表現した。実際の法人契約数・単価の開示はなく、実契約数ではない。乗換案内事業のセグメント利益3.57719億円は法人1.80、広告1.20、個人課金0.75、観光券−0.17281億円へ推計配賦したもので、内訳の開示はない。中立の契約相当件数0.82倍は、工数・UI型半分が0.65倍、APIデータ型半分が0.99倍という内訳。独自データはあるが堀2条件未確認ゆえ「記録の正本」の高成長は与えない。
乗換検索の自社広告枠
検索サイト・アプリの無料利用者に表示する広告を販売する。広告制作・運用の人月報酬ではなく、自社媒体の広告枠である。
| 数量月間経路検索回数(億回、2026年3月の代理指標) | 価格検索1回当たりの広告収入(円、実現単価の推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2.4 | 0.15 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 0.19 | 4 | 1 |
取り方:会社の2026年5月15日説明会資料で月間検索2億4,000万回。2026/09期上期の広告売上2.44億円に整合する水準として、2025/09期は年間4.32億円を推定。月2.4億回×12か月×0.15円=4.32億円。2025/09期当時の検索回数や広告の実単価は未開示。全国インターネット広告媒体費3兆3,093億円は広義市場であり、検索経路広告だけの同一市場シェアは計測不可。AI要約により画面表示が減るため数量は縮める。
個人向け有料・取り放題サービス
スマホ等の乗換案内有料会員、各種取り放題課金。手元の画面・操作に依存するためAIエージェント代替型。
| 数量月次有料・取り放題利用者相当(万人) | 価格利用者1人当たり年間認識売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 10.0 | 0.35 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.2 | 0.39 | 3 | 1 |
取り方:会社の説明資料2026年3月の有料会員数と取り放題サービス等の月間利用者数の合計は約10万人。2009~11年頃の有料会員数は約60万人。2026/09上期モバイル約1.62億円・PC約0.11億円を参考に通期の関連課金売上を3.50億円と仮定し、合計利用者相当10万人×年間3,500円とする。合計人数は純粋な有料契約件数でない可能性がある。定価とは異なる実現単価の推計で、正確なARPUは未開示。
モバイル乗車券・観光・予約
地域交通の電子乗車券システムと観光の予約連携等。乗車券総取扱額でなく手数料・システム売上だけを認識。
| 数量年間の課金取引相当数(万件、推定) | 価格課金取引1件当たり認識売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 22.0 | 0.10 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 24.2 | 0.13 | 3 | 0 |
取り方:2026年3月にモバイルチケット104事業者、毎月約2万枚の使用実績がある。2025年8月の取扱高は3,200万円だが、運賃全額は会社の売上ではない。乗換案内事業のFY2025外部売上残額2.21077億円を、観光・チケットその他の推計認識売上とし、年22万課金取引相当×約1,005円で表現。チケット使用枚数と旅行予約は性質が異なり厳密な実取引数ではない。独立した事業売上や手数料率の正式開示がないため仮定の幅が大きい。
ソフトウエア受託開発
連結子会社などによるソフトウエア開発・保守。人月・工数型でAIエージェント代替を最も直接受ける。
| 数量連結ソフト事業の年度末従業員(人、売上能力の代理) | 価格1従業員・年当たり外部売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 34.0 | 0.09 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22.1 | 0.12 | 3 | 0 |
取り方:FY2025有報のソフトウエア事業の就業者34人を直接使用し、連結外部売上3.01119億円から年間1人約886万円を逆算。内部売上を含むセグメント売上は4.30951億円、セグメント損失0.26873億円であり、売上側は外部のみ、利益はセグメント情報の全体額を使う。従業員数は稼働率・外注人月を反映しない代理指標。AI規則の人月型として中立は数量0.65倍、単価物価未満の1.30倍。
交通・情報システム機器
運賃・改札・交通連携に関する端末とハードウエア販売。現物納入はAIだけでは代替しにくい。
| 数量機器・付随サービスの年間納入相当台数(台、推計) | 価格納入相当1台当たりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 600 | 0.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 558 | 0.00 | 2 | 0 |
取り方:FY2025のハードウエア事業の外部売上1.76668億円、セグメント利益0.21452億円を採用。端末の種類別の台数・単価は未開示なので、運行現場の改札読取端末や保守を含む600台相当×約29.4万円という等価換算にした。実出荷台数と誤読しない。2026年5月説明会に顔認証と改札連携の事例があるが大量導入は未立証。現場の機器数量は独立に見積もり、端末価格にはインフレ分を含める。
出版・マルチメディア・その他
出版、賃貸、情報関連機器リース等の少額事業をまとめた残額。
| 数量出版物・小口契約の年間等価取引数(件、推計) | 価格1取引相当の年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,000 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:FY2025のマルチメディア外部売上0.02073億円とその他外部売上0.11317億円を合算。利益はマルチメディア損失0.10409億円、その他損失0.00659億円を合算。開示された数量がないため2,000件相当と平均約6,695円で表現した残額推計であり、実発行部数や契約数を示さない。出版・小規模賃貸の数量は成熟市場として縮小を想定する。
リスクと懸念
AIエージェント代替と検索画面の中抜き
利用者が端末のAIに経路検索、予約、運賃計算を任せるようになると、ジョルダンの画面が表示される機会は減る。乗換情報の需要は残っても、広告表示と個人課金の契約が消える。法人APIも大規模AI企業が販売窓口を握れば交渉力が下がる。単なるサイト訪問者数を堀と見なせない。
人月型受託開発の陳腐化
ソフトウエア事業はFY2025に外部売上約3億円、セグメント損失約0.27億円を計上した。自動コード生成と業務エージェントが一般化すれば、外注開発の工数自体が減る。中立で人月の数量を10年0.65倍、単価を1.30倍とし、売上と利幅の双方を慎重に見る。
利用者の多さと課金力の乖離
月間検索は約2.4億回でも、会社資料の有料会員数は長期間にわたり減少し、有料と取り放題の合計でも2026年3月は約10万人である。無料競合が豊富な市場で検索が生活習慣化しても、値上げができる証拠にはならない。広告も入札単価の変化と表示回数の減少に敏感である。
助成金・為替差益に偏る純利益
2025年の営業利益は約0.5億円にとどまるが、純利益は約2.6億円であった。子会社清算益や助成金、為替差益が利益に混ざる。2026年9月期第3四半期にも助成金約2.7億円が計上され、本業回復を強く見せる。継続的な利益の評価では助成金・一過性収益を除き、為替150円一定の前提で考える。
交通機関の入札・手数料競争
モバイルチケット事業者数と券の使用が増えても、鉄道・バス各社が持つ運賃の大半はジョルダンの売上ではない。決済会社、旅行予約サイト、自治体の入札が中間手数料を下げうる。参加事業者104社という実績を高く評価しても、手数料率と純収益が伸びるかは別に監視する必要がある。
余剰現金の資本配分と大株主の統制
純現金32億円は防御力を与えるが、代表者の議決権53.28%の下で少数株主は還元を強制できない。配当性向の数値目標は20%で、DOEや自社株買いの額の確約はない。追加投資が資本コスト未満の収益に終われば、簿価が厚くても株主の価値は減る。現金の評価には戻り方75%を適用した。
システム安全性と固定費
公共交通の経路、運賃、乗車券は止まれば利用者の移動に直結する。サイバー攻撃や委託先障害、時刻表更新の誤りは取引先との信頼を損ないうる。2026年10月にはクラウド関連の障害を公表している。賃借本社の家賃は年約0.92億円で、売上が落ちても固定費が残る。新リース会計に伴う貸借対照表の変化にも注意する。
今後の分かれ目
- 助成金を除く本業営業利益が2期続けて3億円以上となり、法人顧客数または契約単価の伸びを開示したら
- 業務APIと運行データの継続課金の利益率を引き上げ、やや楽観・楽観の確率を増やす。助成金と為替による経常利益の増加だけでは評価を変えない。
- 月間乗換検索が2億回を大幅に割り込み、広告売上も前年割れを続けたら
- AI検索・大手地図サービスへの送客移転が進んだと判断し、広告数量と個人向け利用者の中立を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- モバイルチケットの月間使用枚数が5万枚を超え、会社が手数料収入と営業利益を別々に開示したら
- 取扱高ではなく純収益の増加を確認し、券売の取引数量と利益率を上方修正する。実証実験件数や参加事業者数だけでは改定しない。
- AI旅費精算の有料契約額・受注額が公表され、既存受託の減少を埋めていると確認できたら
- AIを自社が売る製品に変えた証拠として、法人部分の数量・単価を見直す。製品完成間近という説明だけで楽観のAI売上を足さない。
- 年間配当総額が1億円規模へ増え、同時に株数が減る自社株買いが実行されたら
- 支配株主下でも余剰現金が少数株主へ戻る実績となる。excess_cash_returnを0.75から1.0へ再評価し、資本配分の改善を価値へ反映する。
- 純現金が25億円を割り込んでも、営業利益や法人契約に改善がない状態が続いたら
- 財務の床が事業投資や損失で侵食されていると見て、余剰現金と悲観時の換金価値を減額し、安全域を一段厚く要求する。
- 上場廃止予定を伴うTOB・MBO、継続企業の前提に関する注記が新たに公表されたら
- 通常の10年保有価値による評価を止め、取引条件や法的に残る株主の権利、財務の存続可能性を先に確認する。
見ておくもの
- 月間検索回数2.4億回の推移と有料会員・取り放題利用者合計約10万人の変化
- 法人向け経路API・通勤費計算・運賃データ提供の契約件数、更新率、単価の開示
- モバイルチケット参加104事業者と月間約2万枚の利用、取扱高から実際の手数料収入への転換
- 営業利益と経常利益の差額、助成金・為替差益・子会社売却益の内訳
- ソフトウエア受託の従業員数、外部売上、セグメント損益の推移
- 手元現金・契約負債・配当総額・自己株式数と支配株主の議決権比率
- Googleマップ、Yahoo!乗換案内、NAVITIMEの競争動向とAI経路案内の接続料金
- AI旅費精算の実際の受注額と交通機関向けのシステム運用益
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や過去のPER・PBRから将来価値を逆算していない。乗換案内の公開売上約23.43億円を2026年上期の開示された法人・広告・モバイル等の構成と利用指標で分解し、ソフトとハードの外部売上を加えて2025年の約28.34億円へ突き合わせた。数量と価格の仮定を5つの筋書きで変え、全社共通費と税後利益を別に積んだ。楽観から中立のPERは資本コスト8.25%、増分投資収益率、長期g0.5%の式で決め、余剰現金の利息の二重計上を避けた。やや悲観・悲観は低収益でPERを高くせず、換金可能資産と現在自己資本45.8億円を基準とするPBRで評価する。10年後の積み上がった自己資本には床のPBRを掛けず、両筋書きの時価総額は保守的な税後換金価値30.0億円を下回らない。投資用の市場比較倍率を用いず、価格が倍または半分でもこの価値を変えない。日本基準の新リース会計導入後も10年の利益は家賃費用を含む現行表示にそろえ、使用権資産とリース負債の両建てにより価値が増えたと誤認しない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。