結論
アイリッジは、小売、鉄道、金融などの大企業にスマートフォンアプリの開発・運用基盤を提供する会社である。筆者の結論は「割高」だ。300を超える導入アプリと1億人を超える月間利用者という顧客接点は魅力的だが、その規模が高い利益率や株主への現金還元に結び付いていない。
同社の強みは、単にアプリを作る技術ではない。大企業の既存システム、店舗、会員情報、決済、販促施策をつなぎ、アプリの開発から運用まで引き受けてきた経験にある。APPBOXやFANSHIPは、その経験を共通の製品に変えていく試みだ。ディップとの共同事業や従業員向けDXの拡大も、従来の受託開発から収益分配型事業へ進む可能性を示している。
しかし、10年先を考えると最大の問題はAIエージェントによる代替である。アプリ開発、保守、広告制作、コンサルティングは、人の作業時間に対して顧客が払う金額を減らしやすい。企業の業務を自律的に実行するAIが普及すれば、人が画面を操作することを前提にしたアプリにも価格低下圧力が及ぶ。会社はAI運用基盤Flauroなどで対応を始めたが、新製品の十分な売上実績はまだ確認できない。
2026年3月期の純利益約6.4億円には関係会社株式の売却による一過性利益が含まれる。継続的な営業利益は約1.1億円にとどまり、過去10年のROE中央値も約0.8%である。純現金約14.5億円は財務上の支えだが、過去の買収関連損失や無配の継続を考えると、その全額が株主に還元されるとは限らない。
10年後の中立では、売上が現在より縮む一方、AIを利用した省力化で営業利益率は改善すると考える。それでも資本コストを十分に上回る利益を長く生む姿は描きにくい。楽観的な事業転換には価値があるが、その成功を既定路線として現在の株価を正当化することはできない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に確かめるべきことは10年後も顧客が必要とし、競争相手に奪われにくい利益がどれだけ残るかである。アイリッジの場合、大企業が消費者と直接つながる必要性は続くだろう。店舗、交通、会員、決済など現実の生活に関係する仕組みは、単なる情報検索の画面より寿命が長い。既存の顧客関係を維持できれば、10年後も一定の事業は残る。
しかし、それはアイリッジが現在の料金を受け取り続けられることを意味しない。顧客が保有するデータやブランドと、アイリッジが持つ技術・契約上の地位は別のものだ。APPBOXやFANSHIPを使い続ける理由はあるものの、顧客の業務全体を支配する記録の正本ではない。AIを利用する競争相手が同じ機能を安く提供すれば、継続契約にも価格交渉が及ぶ。
オーナー利益の観点では、営業利益から継続的な製品開発、設備更新、技術者の確保に必要な資金を考慮しなければならない。APPBOXは2026年に旧開発資産の除却を行っており、将来も技術更新投資が必要になる。会計上は資産計上される開発費も、株主が自由に使える現金ではない。見かけの純利益に高い倍率を付けるより、再投資後の現金創出力を確かめたい。
資本配分については、過去の買収と評価損を踏まえ、増分ROICが資本コストを超えた証拠を求める。純現金を持ちながら無配を続ける場合、経営陣はその現金を少数株主より有利に運用できる責任を負う。現時点では、その実績は十分ではない。
この会社を10年間保有する判断には、APPBOXの継続収益が人月売上に代わって利益の中心となることと、AIエージェント時代にも顧客が離れない理由を実証することが必要だ。現在の価格と推計した価値の間には十分な安全域がなく、単に株価が安く見えるという理由では長期保有の確信を持ちにくい。
何で稼ぐ会社か
収益の中心はアプリビジネス事業である。2026年3月期のセグメント売上は約53億円で、APPBOX、FANSHIPなどの製品と、大企業向けアプリの受託開発、保守、運用支援を組み合わせている。ファミリーマート、JR西日本、名古屋鉄道などに見られるように、店舗や交通の現場と消費者をつなぐアプリが主な仕事場だ。顧客にとってアプリは販促や会員管理の入口であり、アイリッジはその仕組みを作って維持することで報酬を受け取る。
APPBOXは、通知、顧客管理、認証、マーケティングなどの機能を部品として組み合わせる開発基盤である。個別にすべてを開発するより導入を速められ、既存アプリへの機能追加にも使える。ただし、300を超える導入アプリがすべてAPPBOXの有料契約であるわけではない。開示された導入アプリ数には従来製品も含まれるため、利用者数をそのまま課金数量とは見なせない。
売上の質を見極めるには、会社が公表するストック型収益の中身を分ける必要がある。2026年3月期には月額報酬・ライセンス・保守等が約18.6億円、3か月以上の準委任契約が約18.3億円あった。前者は製品・運用基盤に近いが、後者は継続契約であっても実態は技術者の稼働に依存する。さらに残る約16.1億円には個別の開発案件などが含まれ、受注の時期と開発人員の生産性に利益が左右される。
もう一つの柱はQoilを中心とするビジネスプロデュース事業である。顧客の事業企画、広告制作、販促、店舗イベント、マーケティング施策の実行を担い、2026年3月期のセグメント売上は約18.5億円だった。広告会社や顧客企業の内製部門との競争にさらされ、案件ごとの採算管理が欠かせない。
2025年7月には地域通貨などを扱ったフィノバレーを売却し、フィンテック事業を連結から外した。今後は二つの主要事業に経営資源を集中する構造となる。ディップ、博報堂、沖縄テレビとの共同事業やAI関連の新サービスは新たな収益源の候補だが、現段階では既存事業の縮小リスクを完全に相殺するものとは評価しない。
優良さと弱いところ
最大の強みは大企業との取引実績である。小売や鉄道のアプリは会員基盤、店舗情報、クーポン、決済、既存システムと結び付いており、運用中の仕組みを別会社に移すには時間と検証が必要になる。障害を起こせない大規模サービスを長年扱ってきた経験も、新規参入企業との違いになる。APPBOXの共通機能を広い顧客基盤へ展開できれば、個別開発に頼る経営から徐々に抜け出せる。
ただし、堀、つまり競争相手が簡単には奪えない収益上の強みは、現状ではそれほど深くない。1億MAUという利用者はアイリッジ自身が直接保有する会員ではなく、顧客企業のアプリを使う人々である。利用者数が多いことだけでネットワーク効果や価格決定力が生まれるわけではない。実際に大口顧客のサービス終了や内製化による解約が起きている点は重い。
APPBOXには顧客の切り替え費用があるものの、年5%未満の解約率、法制度に基づく独占的な記録基盤、値上げを繰り返し通してきた実績など、強い堀を認定するための複数の証拠は確認できない。したがって、APPBOXも長期価値の評価では操作画面・アプリ基盤型の事業として扱う。開発会社向けの共通基盤として広がる可能性はあるが、現時点で強い独占的地位にはない。
資本効率も弱点である。2022年から2023年には一定の営業利益を生んだが、2024年には減損や投資有価証券の評価損が重なり、大きな最終赤字を計上した。2026年の高いROEは株式売却益の影響が強く、通常の稼ぐ力を示していない。近年の売上拡大が持続的な高ROICにつながったとはまだ言えない。
一方、純現金を持ち、自己資本比率も5割を超えるため、短期の赤字で直ちに事業継続が難しくなる財務ではない。AIによる開発効率化を人員・外注費の削減に結び付け、共通製品の販売を増やせるかが、今後の企業としての質を決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス需要そのものは拡大している。IDCの調査では、2025年の国内ITサービス市場は約7兆5,663億円で、2030年まで成長が続く見通しだ。アイリッジの会社資料では、主な対象となるアプリビジネス・DX市場を2021年の4,737億円から2030年に1兆8,932億円へ、ビジネスプロデュース関連市場を1,668億円から4,330億円へ拡大する市場見通しが示されている。ただし、いずれも定義の広い市場であり、その全体を同社が獲得可能な売上と見なすべきではない。
会社の市場想定を2026年へ年率で補間すると、アプリ・DX関連市場は約1兆円、ビジネスプロデュース関連市場は約2,800億円になる。これと2026年3月期の売上を比較した参考シェアは、それぞれ約0.5%、約0.6%にすぎない。両市場には同社が実際には提供しないサービスも含まれるため、厳密な製品シェアではない。それでも、巨大な市場の中で同社が小規模な企業であることは明らかだ。
アプリ基盤ではヤプリが900以上のアプリ運用支援実績を公表しており、DearOneのModuleApps、Repro、プレイドのKARTE、Salesforceなども顧客接点やマーケティング予算を競う。アイリッジの導入実績300超と単純に比較できる統一定義の市場シェアは存在しないが、同社だけが大企業向けアプリの開発基盤を独占しているわけではない。
ビジネスプロデュース領域では、電通、博報堂、電通デジタル、サイバーエージェントなどの大手に加え、小規模な制作会社やコンサルティング会社とも競合する。電通の2025年調査では国内インターネット広告費は約4兆459億円に達したが、そのうち広告制作費は約4,922億円である。広告市場全体が伸びても、制作や運用に必要な人手が減れば、アイリッジの手数料が同じ割合で伸びるわけではない。
今後10年の大きな変化は、AIがソフトウェア開発だけでなく利用方法も変えることだ。企業の業務エージェントが情報取得や予約、問い合わせ、購買まで処理できれば、アプリ画面の価値は相対的に下がる。一方、店舗での本人確認、会員証、決済、交通サービスなどには画面や現実世界との接点が残る。アイリッジにとって必要な市場は消えないが、同じ作業に対して従来と同じ報酬を受け取れるとは限らない。
資本政策と M&A
資本配分には慎重な評価が必要である。アイリッジは2018年にQoilを傘下に収め、2022年にはプラグインを子会社化し、アプリ開発からマーケティングやDXへ事業領域を広げた。しかし、2024年3月期にはQoilに関するのれん減損約3.1億円や投資有価証券評価損約5.1億円が生じた。買収・出資した資本が、十分な利益を生む資産として残らなかった実績である。
2025年7月のフィノバレー売却は、収益化の難しい事業を切り離し、資金と経営資源を再配分した判断として評価できる。ただし、この売却益は2026年3月期の最終利益を大きく押し上げており、通常の営業利益と混同できない。APPBOXの旧開発資産についても約2.3億円の除却損を計上した。製品の刷新は前向きだが、ソフトウェア資産の陳腐化が早いことを示している。
中期経営計画2027では、2027年3月期の売上高82億円以上、調整後営業利益5億円以上、調整後営業利益率6.1%以上を目標とする。さらに2030年3月期の長期目標として売上高150億円、調整後営業利益15億円、利益率10%が示された。これらは成長目標であって、ROEやROICの具体的な達成数値は示されていない。
株主還元については、2027年3月期まで無配予想が続き、中期計画でも配当性向、DOE、総還元性向、年間自社株買い額の数字の約束は確認できない。成長投資を優先する方針だが、過去の増資・株式報酬による希薄化もあり、利益を蓄えるだけでは既存株主の価値が増えない。純現金の一部に価値を認めつつ、少数株主へ戻る確実性は控えめに評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アイリッジの強みは、大企業との長年の取引関係と、現実世界の店舗や交通を含むアプリ開発の経験にある。300を超える導入アプリと1億MAU以上という実績は、新規参入企業が短期間で築くことが難しい。アプリの通知、会員証、決済、店舗システム、既存データとの連携を一体で扱ってきたため、顧客は簡単には開発・運用会社を変更できない。APPBOXの機能共通化が進めば、従来の受託開発より少ない人員で複数の顧客へサービスを提供できる。
ディップとの従業員向けDXや集客支援、博報堂との共同事業も有望である。大企業の顧客接点は増え続けており、同社が個別開発会社から共同事業の運営者へ変われば、売上を人員数で制約されない部分が大きくなる。AIを社内開発に取り込めば、原価と外注費を圧縮し、顧客が支払う料金が下がっても利益率を高められる。
2026年に開始したAI関連事業とFlauroも注目に値する。複数のAIモデルを使い分け、企業のセキュリティや承認の手順を統合する仕組みは、企業がAIを本格導入する際の課題に対応している。今後、実際の有料契約が増えれば、既存アプリ事業と異なる継続収益源になる可能性がある。ただし、その売上実績はまだ評価の前提にできない。
現在の時価総額が約37億円と小さい一方、純現金が約14.5億円あることも魅力だ。中期計画の利益改善を実現し、その後も高い収益性を維持できれば、事業価値は現在の市場評価を大きく超える。実行に成功したときの上振れ余地は十分にある。
慎重な見方
過去10年の数字は、アイリッジが売上を増やしても株主の資本を高利回りで増やせなかったことを示している。売上は大きく成長したが、営業利益率は低く、減損や投資損失が繰り返し発生した。2026年3月期の高い純利益も大半が通常の営業活動以外によるものであり、安定した収益力の改善と考えることはできない。
アプリ開発会社にとってAIエージェントは、単なる便利な道具ではない。顧客がこれまで外部に委託してきた画面設計、プログラミング、テスト、保守、分析を自社のAIで実行できるようになれば、発注数量と支払単価の両方が圧迫される。APPBOXのような共通機能も、競争相手がAIを使って低コストで模倣しやすくなる。月額契約という形だけで、収益が守られるわけではない。
実際に大口顧客のサービス終了や内製化による解約が発生している。導入アプリの利用者数は多いが、利用者は顧客企業に属するため、アイリッジ自身が需要を独占する力にはならない。マーケティング事業も、大手広告代理店と小規模な制作会社の間で差別化が難しく、AIによる制作費の低下を受けやすい。
会社の中期目標は意欲的だが、2026年3月期には大型案件のずれ込みで計画未達となり、2027年3月期第1四半期も営業赤字が拡大した。新しい事業を育てながら既存事業の利益を守ることは容易ではない。純現金はあるものの、配当や自社株買いに使われてこなかった。再投資が資本コストを下回り続ければ、現金を持つ会社でも長期の株主価値は増えない。
どちらに重みを置いたか
事業が存続するという点では強気の見方に分があるが、現在の株価を支える継続利益については慎重な見方を重視する。AIによる開発需要の縮小は中立の数量に織り込んでおり、確率で同じ理由を重複して減点していない。それでも下側の確率を41%としたのは、大口顧客の解約、過去の減損、低いROE、無配という会社固有の実績があるからだ。純現金は悲観側の下支えになるが、長期保有の安全域としては不十分である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 554 円44 億円(+ 還元の換算額還元の合計 13 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 260 円20 億円、今との差 −45.6%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,365 円107 億円 | 76 円6 億円 | +202.1% | +12.1% | 159 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 898 円71 億円 | 25 円2 億円 | +93.6% | +6.9% | 185 円15 億円 |
| 中立 | 28% | 474 円37 億円 | 0 円0 億円 | −0.7% | −0.1% | 133 円10 億円 |
| やや悲観 | 25% | 247 円19 億円 | 0 円0 億円 | −48.2% | −6.4% | 62 円5 億円 |
| 悲観 | 16% | 184 円15 億円 | 0 円0 億円 | −61.3% | −9.1% | 30 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 554 円44 億円 | 13 円1 億円 | +18.9% | +1.8% | 567 円45 億円 |
今の株価時価総額 477 円38 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 共通基盤への転換と省力化が成功 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,365 円107 億円
APPBOXが大企業向けアプリの機能基盤として定着する。顧客企業の既存システムと深く結び付いたアプリの多くが継続し、開発時から保守・改善までを引き受ける関係が残る。ヤプリや海外ソフトウェア企業との競争は続くが、既存顧客での機能拡張と外部開発パートナーへの販売が成功し、ライセンス・保守の収益を維持する。
AIエージェントによって開発の工数は大幅に減るが、アイリッジも開発生産性を高め、外注費と本社費を抑える。ディップとの共同事業は安定した収益分配の仕組みになり、博報堂などとの提携も継続する。顧客企業に成果を提供する能力が人員数より重要になり、低収益だった開発・広告事業の採算が改善する。
新たなAI製品も企業向けの実績を積み上げるが、売上額が確認できない現在の段階では、その成功を既存事業の数量増加としては計算しない。楽観でも各事業の数量は現在の水準を大きく上回らない。利益改善の中心は共通製品化と費用削減である。
営業利益率は約15%まで上昇し、通常の純利益は7億円台に達する。経営陣は新しい大型買収を急がず、2030年代には小規模な株主還元も始める。顧客基盤が収益力のある事業に変わる、最も良い10年である。
- アプリビジネス:月額報酬・ライセンス・保守:数量 300(収益対象アプリの契約換算件数(件・年、推定))× 価格 0.07(契約換算アプリ1件当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 9 億円。300契約換算×年間約713万円。数量は現在並み、単価は1.15倍。共通化により高い利益率を実現する。
- アプリビジネス:継続準委任・DX開発支援:数量 112(顧客向け有償稼働の年間人年換算(人年、推定))× 価格 0.20(有償稼働1人年当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 7 億円。112人年×年間約2,045万円。数量は現在の0.93倍、単価は1.34倍。成果責任の高い案件が残る。
- アプリビジネス:個別受託開発・その他:数量 50.0(標準規模の開発案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.43(標準規模1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 5 億円。50案件×約4,303万円。数量は現在並み、単価は1.34倍。AI開発効率化による原価削減が進む。
- ビジネスプロデュース:広告・マーケティング・コンサルティング:数量 70.0(標準的なマーケティング案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.29(標準的な1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。70案件×約2,857万円。企画と成果責任の部分を維持し、制作原価を削減する。
- 売却済みフィンテック事業の残存実績:数量 0.0(売却前の残存事業換算(式))× 価格 0.92(残存期間に計上した売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。フィノバレー売却済みのため事業収益はゼロ。
倍率:資本コストk=8.25%、2036年ROE約9.93%、堀normalで超過ROEの残存割合1/2。RONICは約9.09%となる。AIエージェント代替の長期成長率g_long=0%なので、正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(0.0825−0)=12.12倍。中立以上は上限そのものとし、現金部分は事業純利益から利息を除いて別に評価する。既存余剰現金5億円、税後利息相当1.4%、戻り方0.75を使用。
確率:大企業との取引基盤を維持しながらAPPBOXの共通化とAIによるコスト削減が成功する筋書き。従来の開発型事業から高収益事業へ移る必要があるため11%とする。
やや楽観 20% 大型顧客を守り、製品と受託の収益性が改善 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 898 円71 億円
大企業のアプリ需要は残り、APPBOXとFANSHIPは既存顧客の継続利用を確保する。新規アプリの開発案件はAIによる内製化で減るが、顧客企業が運用の安定性や既存システムとの接続を重視するため、アイリッジは一定の受注を維持する。共通の機能を使った開発が進み、個別開発の割合は徐々に小さくなる。
ディップとのEX-DX事業では収益分配型の取引が続き、アプリ以外のサービスも一部で収益化する。広告・マーケティング事業は制作業務の自動化で案件数が減るものの、顧客の事業企画と統合的な運用支援を残す。業界全体の広告費は伸びても、同社が受け取る手数料の増加は限定的になる。
経営陣は過去の投資損失を踏まえて大型買収を控え、製品開発と既存顧客への販売に集中する。AIを導入した業務の標準化によって、現在の本社費と外注費を実質で削減できる。結果として売上は大きく伸びないが、営業利益率は現在より大幅に改善する。
2036年の純利益は4億円台になる。過去のように売上成長を優先するより、株主資本の稼ぐ力を改善する10年となり、後半には少額の還元も始められる。ただし収益性の改善が成功しても、AI導入が進んだ市場で長期の高成長を維持できるとは見ない。
- アプリビジネス:月額報酬・ライセンス・保守:数量 270(収益対象アプリの契約換算件数(件・年、推定))× 価格 0.07(契約換算アプリ1件当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 8 億円。270契約換算、単価は1.14倍。解約が起きても大部分の基盤を維持する。
- アプリビジネス:継続準委任・DX開発支援:数量 90.0(顧客向け有償稼働の年間人年換算(人年、推定))× 価格 0.20(有償稼働1人年当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。90人年、単価1.32倍。稼働の削減を生産性向上で補う。
- アプリビジネス:個別受託開発・その他:数量 38.0(標準規模の開発案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.42(標準規模1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 3 億円。38案件、単価1.30倍。案件数は減少するが高度な統合開発は残る。
- ビジネスプロデュース:広告・マーケティング・コンサルティング:数量 55.0(標準的なマーケティング案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.27(標準的な1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。55案件、単価1.12倍。制作の効率化と事業企画への集中が進む。
- 売却済みフィンテック事業の残存実績:数量 0.0(売却前の残存事業換算(式))× 価格 0.92(残存期間に計上した売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業のため計上なし。
倍率:ROEは約7.54%で資本コスト8.25%を下回る。再投資による超過収益を期待せず、正当化PERの上限1÷k=12.12倍を適用する。長期のg_longはAIエージェント代替により名目0%。既存余剰現金5億円の利息相当を純利益から除き、株主への戻り方0.75で別に加算する。
確率:共通基盤の競争力を維持し、AIによる省力化に成功するが、受託案件数は減る筋書き。顧客基盤には一定の強さがあるため20%を配分する。
中立 28% AIで開発需要が細るが、既存顧客と省力化で利益を守る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 474 円37 億円
大企業向けの会員証、クーポン、店舗連携、金融・交通サービスには引き続きアプリが必要となる。アイリッジはAPPBOXとFANSHIPを通じて多くの顧客との取引を維持するが、顧客企業による開発の内製化と競合への切り替えが進む。ソフトウェア基盤の契約換算件数は現在から減少し、単価も物価上昇には追い付かない。
準委任契約は、AIを使った開発・テスト・保守の自動化によって必要な人員が減る。高度なシステム接続や品質管理の案件は残るものの、現在と同じ人月を請求することは難しくなる。個別開発も同様に件数が減少し、顧客が自社で実行できない案件へと仕事の中心が移る。
ビジネスプロデュース事業は、広告制作と運用の自動化で数量が減る。企画や顧客との調整は残るが、広告代理店との競争は厳しい。ディップとの共同事業は既存の収益を一部補うものの、全社の売上減少を覆すほどには広がらない。新しいAI事業も、売上実績を確認できない段階では既存事業の縮小を相殺する収益とは見なさない。
会社は人員配置と外注費を見直し、APPBOXの共通基盤を利用して開発生産性を高める。売上は現在より縮むが、営業利益率は過去の比較的良好な水準まで回復する。2036年の純利益は約2.2億円で、利益を社内に残して自己資本は増えるものの、ROEは資本コストに届かない。事業は生き残るが、株主が高い値段を払うほどの経済的優位はない。
- アプリビジネス:月額報酬・ライセンス・保守:数量 245(収益対象アプリの契約換算件数(件・年、推定))× 価格 0.07(契約換算アプリ1件当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。契約換算245件、数量0.82倍、単価1.10倍。AIによる画面・アプリ基盤への価格圧力を反映。
- アプリビジネス:継続準委任・DX開発支援:数量 78.0(顧客向け有償稼働の年間人年換算(人年、推定))× 価格 0.19(有償稼働1人年当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。78人年、数量0.65倍、単価1.25倍。AIによる工数削減を中心に考える。
- アプリビジネス:個別受託開発・その他:数量 32.0(標準規模の開発案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.39(標準規模1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。32案件、数量0.64倍、単価1.23倍。内製化で標準案件が減る。
- ビジネスプロデュース:広告・マーケティング・コンサルティング:数量 46.0(標準的なマーケティング案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.27(標準的な1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。46案件、数量0.66倍、単価1.10倍。広告制作・運用の単価上昇は物価を下回る。
- 売却済みフィンテック事業の残存実績:数量 0.0(売却前の残存事業換算(式))× 価格 0.92(残存期間に計上した売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業のため計上なし。
倍率:2036年ROEは2.15÷54=約3.98%で、資本コストk=8.25%を下回る。ROEが資本コスト以下の会社の正当化PER上限は1÷k=12.12倍。AIエージェント代替を反映したg_long=0%を適用し、再投資による超過利益の成長価値を認めない。既存余剰現金5億円の税後利息相当0.07億円を純利益から控除した事業価値に、現金5億円×株主への戻り方0.75を加算する。今のPERや同業の倍率は使用していない。
確率:受託開発、長期準委任、広告制作の数量縮小を中心に据える。大企業向けの既存サービスは残るため全面崩壊は想定せず、28%を中立に配分する。
やや悲観 25% アプリの内製化と案件縮小が進み、低収益事業に戻る 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 247 円19 億円
大企業のアプリ開発で内製化とAI利用が急速に進み、外部の開発会社に委託する案件は大幅に減る。APPBOXは一部の大企業で継続利用されるが、競争相手の低価格サービスや顧客独自のAI開発基盤に契約を奪われる。従来の通知・アプリ管理機能は残るものの、システム全体の収益を独占する立場は得られない。
準委任契約では、顧客が同じシステムを維持するために必要な技術者を減らし、継続契約の金額が下がる。個別開発の数量も半分になる。アイリッジは開発部門の規模を縮小し、採用費と外注費を削るが、既存の製品保守や情報セキュリティに必要な費用をすべてなくすことはできない。
ビジネスプロデュース事業では広告制作・運用の自動化と大手広告代理店による競争が進み、収益性は低下する。過去の買収によって広げた顧客基盤を十分に活用できず、新しいAI事業も既存売上の減少を補うほどには育たない。
事業規模に合わせた人員整理と費用削減が進んだ結果、2036年には小幅な黒字を維持する。しかし営業利益は小さく、ROEは資本コストを大きく下回る。利益から価値を計算するだけでは純現金に近い水準まで落ち込むため、売却可能な資産が下支えとなる。無配が続き、少数株主には経営陣の現金の使い方を決められない不利が残る。
- アプリビジネス:月額報酬・ライセンス・保守:数量 216(収益対象アプリの契約換算件数(件・年、推定))× 価格 0.06(契約換算アプリ1件当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。数量0.72倍、単価1.02倍。競争と解約で継続収益が減る。
- アプリビジネス:継続準委任・DX開発支援:数量 66.0(顧客向け有償稼働の年間人年換算(人年、推定))× 価格 0.17(有償稼働1人年当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。数量0.55倍、単価1.13倍。人的稼働を中心に縮小。
- アプリビジネス:個別受託開発・その他:数量 25.0(標準規模の開発案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.36(標準規模1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量0.50倍、単価1.13倍。開発部門縮小後の採算改善を含む。
- ビジネスプロデュース:広告・マーケティング・コンサルティング:数量 39.0(標準的なマーケティング案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.25(標準的な1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量約0.56倍、単価1.05倍。マーケティング制作と運用の代替が進む。
- 売却済みフィンテック事業の残存実績:数量 0.0(売却前の残存事業換算(式))× 価格 0.92(残存期間に計上した売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業のため計上なし。
倍率:ROE約2.62%は資本コスト8.25%以下。稼ぐ力の上限である1÷k=12.12倍を使用する。余剰現金は事業縮小時の資金流出を考慮して基本額5億円の0.75倍とし、株主への戻り方0.75で評価する。営業利益率は小幅黒字だが、利益から算出した価値は現在の純現金に近い水準となる。
確率:大口顧客の解約実績と、受託開発・広告制作の価格競争を踏まえる。抜本的なコスト削減が必要になる可能性が相応にあるため25%とする。
悲観 16% 構造的に競争力を失い、純現金に近い価値だけが残る 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 184 円15 億円
顧客企業がAIを利用したアプリの内製化を進め、アイリッジの個別開発と保守契約が大きく失われる。APPBOXは一部で残るが、顧客にとって必須の共通基盤にはならない。会員情報や決済履歴を保有するのは顧客企業であり、アイリッジは独自のデータ支配力によって契約を守ることができない。
受託開発の標準的な作業は低価格のAI対応企業が引き受けるようになり、外部開発会社の人月需要が縮小する。広告制作やマーケティング運用でも同じ変化が進み、ビジネスプロデュース事業の案件数は現在の半分以下となる。売上全体は2026年3月期の半分前後まで減少する。
経営陣は事業整理、採用停止、外注縮小、人員削減を進めるが、顧客サポートとセキュリティ維持には一定の固定費が残る。AI関連の新規事業や買収による立て直しにも失敗し、既存株主に高い資本効率を還元できない。営業損益は2036年時点でも小幅赤字となり、持続的な利益による評価が困難になる。
この筋書きでは、事業利益ではなく純現金と回収可能資産を価値の床とする。早期の破産や多額の簿外債務は想定しないが、帳簿にあるソフトウェア、のれん、繰延税金資産は現金同等とは扱わない。事業が大きく縮小しても一定の資産が残る一方、投資家にとっての企業の優良さは失われる。
- アプリビジネス:月額報酬・ライセンス・保守:数量 180(収益対象アプリの契約換算件数(件・年、推定))× 価格 0.06(契約換算アプリ1件当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。数量0.60倍、単価据え置き。顧客離脱と競争激化。
- アプリビジネス:継続準委任・DX開発支援:数量 48.0(顧客向け有償稼働の年間人年換算(人年、推定))× 価格 0.17(有償稼働1人年当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。数量0.40倍、単価1.10倍。人月契約の大幅縮小。
- アプリビジネス:個別受託開発・その他:数量 19.0(標準規模の開発案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.34(標準規模1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量0.38倍、単価1.05倍。低採算案件中心となる。
- ビジネスプロデュース:広告・マーケティング・コンサルティング:数量 28.0(標準的なマーケティング案件換算件数(件・年、推定))× 価格 0.25(標準的な1案件当たり売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、単価1.05倍。広告制作と運用の競争力を失う。
- 売却済みフィンテック事業の残存実績:数量 0.0(売却前の残存事業換算(式))× 価格 0.92(残存期間に計上した売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売却済み事業のため計上なし。
倍率:継続利益が赤字であるためPERを適用せず、現時点の自己資本約30.1億円を基準に回収可能な資産価値を評価する。現在の純現金約14.5億円を資産の床とし、PBR=14.5÷30.1=約0.482倍とする。2036年の自己資本23億円に倍率を掛けて利益留保を二重に数えない。悲観では将来の余剰現金の自動積み上げを認めず、ソフトウェアやのれんの清算価値にも期待しない。
確率:AIによる開発・広告制作の代替に加え、主力顧客の離脱、事業再編費用、過去の買収関連の資本配分失敗が重なる場合。16%とし、資産の床を維持する前提にも不確実性がある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アプリビジネス:月額報酬・ライセンス・保守
APPBOX、FANSHIPなどのサービス利用料、アプリの保守・運用報酬。収益の一定部分が契約に基づき繰り返し発生するが、純粋なソフトウェアライセンスと人的保守は開示上完全には分離できない。
| 数量収益対象アプリの契約換算件数(件・年、推定) | 価格契約換算アプリ1件当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.06 | 19 | 7 |
| 10 年後 中立 | 245 | 0.07 | 17 | 6 |
取り方:2026年3月期決算説明資料のストック型収益グラフで、月額報酬・ライセンス等の四半期額401、438、492、530百万円を合計し18.61億円とした。会社は300を超える自社ソリューション導入アプリを公表しているが、全件が個別に課金されるわけではないため、300件を年間契約換算の仮数量とし、単価を逆算した。これは実際のAPPBOX契約社数や販売単価ではない。売上には保守報酬も含む。AIエージェント代替の分類は、操作画面・アプリ機能の価値に依存するソフトウェア型である。中立数量は10年で0.82倍、単価は1.10倍とする。
アプリビジネス:継続準委任・DX開発支援
大企業のアプリや従業員向けDXサービスにおける継続的な開発、運用、改善支援。ストック型に分類される長期契約でも、人的稼働に依存する収益である。
| 数量顧客向け有償稼働の年間人年換算(人年、推定) | 価格有償稼働1人年当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.15 | 18 | 3 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.19 | 15 | 3 |
取り方:2026年3月期決算説明資料のストック型収益グラフで、3か月以上の準委任契約の四半期額435、459、475、462百万円を合計し18.31億円とした。1人年当たり約1,526万円の請求売上を仮定して約120人年と推定する。実際の稼働人数と契約単価は未開示であり、外注や複数人のチーム契約を含む概算である。AIエージェント代替は人月・工数型で、中立数量は10年で0.65倍、価格は人件費上昇を一部転嫁して1.25倍とする。
アプリビジネス:個別受託開発・その他
顧客ごとに仕様を定める新規アプリ開発、機能拡張、短期のDX開発案件。案件受注の時期と外注費の管理に利益が左右される。
| 数量標準規模の開発案件換算件数(件・年、推定) | 価格標準規模1案件当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 0.32 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 0.39 | 13 | 2 |
取り方:アプリビジネス事業の公表売上52.976億円から、月額報酬等18.61億円と準委任18.31億円を控除した残余16.056億円を個別開発・その他の近似値とした。50案件、平均売上約3,211万円は案件単位の開示がないための推定である。残余にはその他の取引や集計上のずれも含みうる。AIエージェント代替は人月・工数型で、中立数量を10年で0.64倍、価格を1.23倍とする。
ビジネスプロデュース:広告・マーケティング・コンサルティング
Qoilを中心とした事業企画、マーケティング戦略、広告制作、イベント、店舗販促、実行支援。顧客企業や広告代理店から業務委託料を受け取る。
| 数量標準的なマーケティング案件換算件数(件・年、推定) | 価格標準的な1案件当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.24 | 17 | 1 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 0.27 | 12 | 1 |
取り方:2026年3月期の公表セグメント売上約18.45億円から、連結内部取引調整約1.50億円をこの区分に便宜的に集約して16.95億円とした。会計上すべての内部取引が当事業で発生したと主張するものではない。70案件、平均約2,421万円は広告制作、コンサル、イベントをまとめた推定で、実際の案件数・単価は未開示である。AIエージェント代替は広告制作・運用と人月型コンサルであり、中立数量は10年で0.66倍、単価は手数料率への圧力を反映して1.10倍にとどめる。
売却済みフィンテック事業の残存実績
フィノバレーによる地域通貨関連事業の2026年3月期第1四半期までの残存連結売上。2025年7月に全株式を譲渡し、将来の継続収益から除外する。
| 数量売却前の残存事業換算(式) | 価格残存期間に計上した売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.92 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.92 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書のフィンテック事業売上約0.918億円と営業損失約0.276億円を使用。2025年7月1日の株式譲渡により2027年3月期から報告セグメントから除外されている。将来の数量はゼロとする。一時的な売却済み事業であり、AIエージェント代替の継続事業には含めない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による数量と価格の同時低下
受託アプリ開発、準委任、広告制作・運用、コンサルティングは、AIが人の作業を置き換えることで発注量が減りやすい。さらにAPPBOXのようなアプリ基盤も、AIが操作画面を介さずに仕事を進める環境では価格交渉を受ける。過去の売上成長率を10年先に延長せず、各事業の中立数量と単価、2036年以降の成長率にこの構造変化を反映した。
大口顧客の解約とシェア喪失
小売、金融、交通の大企業を顧客に持つことは営業面の強みだが、売上の大きな契約を失うと影響が大きい。会社は大口顧客のサービス終了や内製化に伴う解約を開示しており、既存顧客が必ず残るわけではない。APPBOXを採用した企業が継続する理由はあっても、価格を上げて守れる独占的な地位とは異なる。
収益性改善の実行リスク
2026年3月期は売上が伸びても通常の営業利益は約1.1億円にとどまった。2027年3月期第1四半期には営業赤字が前年同期より拡大している。AIを使った省力化が進まなければ、将来の売上減少に対して人件費と本社費を十分に減らせない。中立でも営業利益率の改善を条件としているため、その達成状況が本質価値を大きく左右する。
買収・投資とソフトウェア資産の減損
Qoil関連ののれん減損、投資有価証券評価損、APPBOX旧資産の除却が発生している。技術が早く変わる業界では、開発費を資産計上しても将来の利益が計画どおり生まれなければ価値を失う。新規事業やM&Aへ再び大きく投資し、資本コストを下回る利益しか得られない場合、純現金があっても株主価値は減少する。
無配と現金の資本配分
純現金を持つことは倒産リスクを抑えるが、少数株主が現金の使い道を決められるわけではない。過去の増配や大規模な自社株買いの実績はなく、中期計画にも明確な数値の還元方針がない。内部留保が低ROICの投資に使われれば、帳簿上の現金や純資産をそのまま株主の回収可能価値と見なすことはできない。
大型広告案件と共同事業への依存
ビジネスプロデュース事業では大型案件の計上時期がずれるだけで四半期利益が変動する。ディップなどとの共同事業は成果報酬型への転換機会である一方、相手先の方針変更や収益分配条件にも左右される。売上の増加がそのまま自社に帰属する利益の増加になるとは限らず、共同事業の粗利益と継続性を別に確認する必要がある。
希薄化と小型株の資金調達
アイリッジは過去に株式発行による希薄化があり、2026年7月にも譲渡制限付株式報酬の払込が完了している。今回の株数には実行済みの新株発行を反映しているが、将来の新株予約権や株式報酬の増加は既存株主の持分を薄めうる。事業収益の改善が遅れた場合、成長投資を株式発行で賄う可能性もある。
今後の分かれ目
- APPBOX・FANSHIP等の月額報酬・ライセンス収益が3年間連続して増加し、大口顧客解約後も成長したら
- 顧客基盤の維持力を再評価し、ライセンス数量と価格の前提を引き上げる。実際の解約率と値上げ実績も確認できれば、堀の評価を見直す。
- AIによる開発効率化が定着し、外注費率と本社費が下がり、営業利益率が継続して10%を超えたら
- 中立の利益率を上方修正する。製品の共通化による増分ROICが資本コストを超えたかを確認し、再投資の価値を見直す。
- 継続準委任契約の稼働量が減少し、ストック型収益の伸びが止まったら
- ストック型という名称による安定性の評価を下げる。人月型収益の数量減少を強め、やや悲観側の事業構造へ近づいたと判断する。
- FlauroなどAI関連製品の年間売上・有料契約件数・継続率が具体的に開示され、複数期で成長したら
- 新しい事業セグメントとして数量と価格を独立して積み上げる。AIを単なるコスト削減手段ではなく、継続収益源として評価する根拠になる。
- ディップとの共同事業で収益分配収入と利益額が開示され、営業利益の大きな部分を占めるようになったら
- 人月による売上だけでない収益源として評価する。成果報酬型事業の利益率と顧客集中を検証し、数量減少の前提を部分的に見直す。
- 大型M&Aや新規出資が発表され、自己資本に対して大きな金額が投じられたら
- 取得価格、買収後の営業利益とキャッシュフロー、のれん、希薄化を確認する。過去の減損実績を踏まえ、期待成長だけでは買収価値を加えない。
- 配当性向、DOE、総還元性向や自社株買いの数値目標が公表され、実際に還元が始まったら
- 余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地がある。ただし現金還元のために必要な設備・開発投資を犠牲にしていないかも確認する。
見ておくもの
- 月額報酬・ライセンス等と3か月以上の準委任契約を分けた四半期ストック型収益の推移
- APPBOX・FANSHIP導入アプリ数、契約社数、MAU、および大口顧客の解約理由
- 2027年3月期の売上高82億円・調整後営業利益5億円と実際の営業利益の達成状況
- 外注費率、従業員数、ソフトウェア償却費、資産計上した開発費と営業キャッシュフロー
- EX-DX、ディップとの共同事業、広告制作の各収益と利益率
- FlauroなどAI事業の有料契約数、年間売上、解約率、粗利益額
- 純現金、投資有価証券、のれん・ソフトウェアの減損、配当・自社株買い・新株発行の推移
倍率と資本コストの決め方
売上は会社が開示したアプリビジネスとビジネスプロデュースの実績を、月額報酬・ライセンス、準委任、個別受託、広告・コンサルティングに分けて数量と価格から推定した。数量は実質の契約換算数、稼働人年、案件数であり、物価は価格側だけに反映した。AI代替を中立の数量と価格および2036年以降のg_long=0%に反映し、資本コストの寿命項目には重ねていない。
中立の数量はライセンス約0.82倍、準委任0.65倍、個別開発0.64倍、ビジネスプロデュース約0.66倍である。楽観でも、新しいAI事業の売上実績が確認できないため、既存事業の数量を現在の水準より大きく増やしていない。中立の本社費は物価だけで増やせば約13.5億円相当となるが、AIを使った生産性改善と事業縮小に伴う固定費整理で8.6億円まで抑えるという条件を置いた。これは実績ではなく価値を左右する重要な仮定である。
倍率は現在・過去・同業のPERから決めず、資本コスト8.25%、事業のROE、RONIC、長期成長率0%から計算した。利益が資本コストを下回る場合は1÷kを上限とした。既存の余剰現金5億円は事業利益から利息相当を控除して別に加え、戻り方は0.75とする。10年で蓄積する利益も、必要な事業資本と余剰現金を区分して扱い、同じ資産を利益倍率と現金価値の双方で二重に数えない。
悲観では現在の純現金約14.5億円を床とし、無形資産には追加の清算価値を認めない。ただし、赤字が長く続き現金が費消されれば床は成立しなくなる。実行済みの2026年7月の新株発行はbasisの株数に反映済みである。新リース基準による貸借対照表の表示変更は企業価値の増加として扱わない。以上の事業価値を決めてから現在の時価総額約37.2億円と比較した結果、長期の本質価値には相応の不足があり、結論を割高とした。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の7.5%に事業の循環、価格決定力、純現金の質を反映した0.75ポイントを加えた。個別の買収失敗やAI代替は追加的な資本コストではなく、数量・利益率・長期成長率と筋書きの確率で扱う。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- アイリッジ 2026年3月期通期決算説明資料・事業計画及び成長可能性に関する事項(2026年5月8日、セグメント実績・ストック型収益・導入アプリ数・市場規模・中期計画)
- アイリッジ 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日、最新四半期業績・財務・セグメント・継続企業の前提に関する注記)
- アイリッジ 2025年3月期通期決算説明資料(中期経営計画2027・2030年長期目標)
- アイリッジ 有価証券報告書・沿革および買収等の履歴
- アイリッジ 2026年8月26日 AI運用基盤Flauro正式リリース
- ヤプリ 2026年2月 LINEミニアプリ開発プラットフォーム発表・900以上のアプリ運用実績
- 電通 2025年 日本の広告費(2026年3月5日公表)
- IDC国内ITサービス市場予測に関する2026年3月の調査報道