結論
GVA TECHは、企業の法務案件を管理する「OLGA」と、法人登記の手続きを支援する「GVA法人登記」を運営するリーガルテック企業である。筆者の結論は「割高」だ。事業に存在意義がないからではない。10年後に利益が残るか、それが現在の株主のものになるかという二つの問いに、まだ十分な答えがないためである。
OLGAは法務案件の受付、契約審査、契約書管理、過去の判断の蓄積を一つの仕組みにまとめようとしている。2026年6月末の導入企業数は618社、年間経常収益は9.7億円に達した。顧客単価も上がっており、単なる契約書チェックから法務業務全体へ広がる方向性は評価できる。しかし会社自身が、汎用AIによって契約審査機能の必要性が低下し、実際に解約が起きたことを認めている。成長している製品と、陳腐化し始めた機能が同居する会社だ。
さらに厳しいのは財務である。2025年12月期は売上高約14.8億円に対して営業赤字約3.0億円だった。2026年6月末には自己資本が約1.25億円、自己資本比率が9.2%まで低下した。ソフトウェア開発への現金支出も大きい。黒字化しても、それが自由に使える現金になるとは限らない。
10年後の中立では、既存事業の利用量がAIによって減る一方、組織の大幅な合理化で小幅な黒字を残すと考えた。それでも追加資本が必要になり、既存株主の取り分は薄まる。現在の時価総額約14.5億円に対して、確率と資本コストを反映した本質価値は約2.0億円、差は約マイナス86%となる。これは予測の精度が高いという意味ではない。予測が難しい会社に、現在の値段では十分な安全域が見つからないという判断である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって大切なのは、便利なソフトウェアを作れるかではない。そのソフトウェアが十年後も必要で、必要な改良費を払った後に、株主の手元へ現金が残るかである。OLGAが法務判断の履歴を蓄積する基盤になるなら、企業にとって移行しにくい仕組みに育つ余地がある。日々の契約審査を処理する機能より、過去の判断と権限を記録する仕組みの方に長期の価値を感じる。
しかし投資判断は、可能性より証拠を重く見るべきだ。2025年の売上高は増えたが、営業損失が残った。償却されるソフトウェア資産の額も大きい。2026年上期には顧客単価が上がった一方、自己資本はさらに減少した。製品の販売が好調であることと、所有者に利益が積み上がることが一致していない。
値決め力にも慎重でありたい。顧客単価の上昇は確認できるが、その一部は複数機能の導入や大口顧客の構成比変化による。既存の同じ機能を値上げしても解約されないという証拠とは異なる。汎用AIが契約レビューの解約を引き起こしたという会社自身の説明は、技術による代替を仮説ではなく現実の問題として扱う理由になる。
資本配分を見ると、2024年の上場で調達した資金も、借入れで調達した資金も、主として成長投資へ向かっている。利益を生まない時期の投資が将来の大きな稼ぎにつながる可能性はあるが、追加の資本を求めるたびに既存株主の取り分は減る。高い成長率より、増分の投資が資本コストを超えて回収できる実績を確認したい。
筆者が十年間保有する前提で最も気にするのは、企業価値ではなく既存株主の持分価値である。大きな市場を前にしても、競合より優れた製品を作るために投資し続け、その成果を新たな株主と分け合うなら、現在の株主に残る価値は小さくなる。今は事業の将来性に対して資本の余裕が乏しく、安全域を持って長く保有できる条件が整っていない。
何で稼ぐ会社か
収入源は二つある。第一は、法務部門向けの業務ソフト「OLGA」だ。法務案件の受付、進捗管理、社内の法務相談、契約書レビュー、契約書管理を複数の機能として提供する。顧客企業から月額料金を受け取り、機能追加や利用範囲の拡大で顧客単価を高める。2025年のLegalTech SaaS事業の売上高は約8.16億円で、全社の約55%を占めた。
OLGAの特徴は、法務部門だけでなく、相談を持ち込む営業部門や管理部門とのやり取りまで扱うことにある。メールやチャットに散らばっていた相談内容を集約すれば、過去の判断を再利用できる。2025年末の契約企業数は572社、月額の顧客平均単価は約12万円だった。2026年6月末には618社、月額約13万円となった。複数機能を使う顧客ほど単価が高いことは、製品を深く使ってもらう余地を示している。
第二は「GVA法人登記」を中心とする登記事業である。中小企業が役員変更、商号変更などの登記申請書類を作る際に、必要な情報の入力や書類の準備を支援する。2025年の売上高は約6.67億円で、全社の約45%を占めた。同年のサービス利用数は15,301件だった。これを売上高で割ると1件当たり約4.36万円になるが、OEM販売や関連サービスを含むため、個別商品の表示価格とは異なる。
登記は法律上必要な手続きだが、書類作成の画面そのものに独占的な価値はない。利用者は司法書士に頼むことも、法務局の制度を使って自分で申請することもできる。さらにAIが利用者から事情を聞いて書類を整えれば、専用サイトを経由する理由は弱まる。会社は商標登録や労務関連書類にも範囲を広げているが、これらを独立した大きな収益源とみなせる開示はまだない。
会計上はリーガルテック事業という単一セグメントである。本分析では収益構造とAI代替の影響が異なるため、開示された二つのサービス群に分けた。営業利益についてはサービス別の正式な数字がなく、売上総利益に相当する貢献額を推計し、共通の販売管理費を別に引いている。
優良さと弱いところ
この会社の最も有望な資産は、法律を理解するAIモデルそのものではなく、顧客企業の法務案件と判断の履歴を蓄積する仕組みである。契約書の文面だけなら汎用AIでも扱いやすい。しかし、誰が何を相談し、どの部門と協議し、なぜその条件で承認したかという社内の経緯は、外部のAIが勝手に再現できない。OLGAがその情報の保管場所として定着すれば、乗り換える手間は大きくなる。
ただし、現時点でそれを強い堀、つまり競争相手が簡単には越えられない優位性と認定するのは早い。2026年上期に開示されたNet Revenue Churn Rateは月平均0.75%である。これは追加契約などの影響を含む売上ベースの純解約率であり、年率5%未満の顧客解約率を示す数字ではない。法改正のたびに値上げを通した実績も、移行に年単位を要することも確認できない。顧客ごとの法務データを管理していることと、会社が排他的なデータを所有することも違う。
資本効率にも問題がある。2019年から2025年まで純損失が続き、2025年の自己資本利益率も大幅なマイナスだった。2025年末には自己資本約2.6億円に対して、資産計上されたソフトウェアなどの無形固定資産が約8.2億円あった。2026年上期にはさらに開発投資が進んだ。これらの資産が将来の契約を生み続ければ価値はあるが、製品が代替されれば売却価値は乏しい。
経営陣は製品群の統合や大口顧客への販売に取り組み、顧客単価の改善という成果も出している。一方、増分の投資利益率が資本コストを上回った実績はまだない。資金を投じるたびに売上高が伸びても、開発費と顧客獲得費を回収できなければ株主価値は増えない。技術開発力と、長期にわたる株主の稼ぐ力は、分けて評価する必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
法務業務の電子化には、まだ大きな余地がある。企業の契約書、社内相談、承認履歴は、依然としてメール、表計算ソフト、電子契約サービスなどに分散している。GVA TECHが引用するITRの調査では、電子契約、契約管理、AI契約レビューなどを合わせた国内リーガルテック市場は2026年に731億円へ達する見込みとされた。ただしこれは2022年時点の予測であり、会社がすべてを獲得できる市場ではない。
2025年の同社SaaS売上高をこの市場規模と単純比較すると約1.1%になる。しかし対象製品の範囲も年度も異なるため、これは市場内での規模感を示す参考値にすぎず、確認されたシェアではない。競合のLegalOn Technologiesは2026年3月末に世界の有償導入企業数8,500社を発表した。国内の企業向け法務ソフトでは、MNTSQ、Hubble、ContractSなども契約管理や法務業務の効率化を狙う。各社の売上構成と対象市場が違うため、同一定義による正確な市場シェアは確認できない。
最大の構造変化は、法務担当者が専用画面を操作する時代から、AIエージェントが複数のシステムを横断して仕事を進める時代への移行である。Microsoft 365などに接続したAIが、契約案の作成、社内の照会、既存契約の検索まで引き受ければ、契約レビュー専用ソフトの料金は下がりやすい。反対に、社内の承認記録を正しく保存し、AIへ安全に渡す仕組みには需要が残る。今後の競争は画面の便利さではなく、信頼できるデータを誰が管理するかへ移る。
登記市場はさらに異なる。商業・法人登記の申請は国内で年間150万件前後という大きな母数があるが、人口減少下で申請件数そのものが長期に高成長する市場ではない。GVA法人登記の2025年利用数15,301件は母数の1%程度に当たるものの、同社の数にはOEM等が含まれ、厳密なシェアではない。競合には司法書士事務所、法務局の電子申請制度、freeeやマネーフォワードの会社設立関連サービスがある。
業界の名目売上高が増えても、GVA TECHの取り分が増えるとは限らない。法改正への対応やデータ管理への支払いは残る一方、単純な契約確認や申請書の作成はAIによって急速に安くなる。筆者は、法務DX市場の拡大をそのまま同社の数量成長に結び付けることはできないと見る。
資本政策と M&A
この会社の資本政策は、株主還元より事業の存続と開発資金の確保を優先する段階にある。2025年12月期まで配当実績はなく、2026年12月期も無配予想である。自己株式取得として確認できるのは単元未満株式の端数処理程度で、資本を株主に積極的に返してきた実績はない。有価証券報告書では、配当が可能な財務体質を整えた後に還元を検討するという方針が示されている。
2026年の会社予想は売上高20.96億円、営業利益0.31億円、純利益0.02億円である。しかし同年上期は営業赤字1.23億円だった。通期目標には下期だけで営業利益約1.54億円が必要となる。2026年3月公表の成長戦略にはOLGAの機能連携や登記関連サービスの拡張が記されているが、複数年度の売上高、ROE、配当性向、DOE、自社株買い額について確定的な数字の約束はない。
2025年末の現金及び預金は約4.90億円だったが、有利子負債の方が多い。2026年6月末には現金が約2.07億円まで減少し、借入金は約7.0億円となった。さらに9月には運転資金を目的とする2億円の借入れを公表した。継続企業の前提に関する注記は2026年上期の短信で「該当事項なし」とされているが、それは十分な投資余力の保証ではない。
2025年のソフトウェア等への投資支出は約4.30億円だった。2026年上期も約2.39億円を開発関連の無形固定資産に投じている。上期の営業キャッシュフローは約0.43億円のプラスでも、開発投資を差し引くと大幅なマイナスとなる。新規開発投資と既存ソフトウェアの償却を混同してはならない。減価償却・ソフトウェア償却は取得原価に従うが、新たな開発や更新にはその時点の人件費がかかり、会計利益以上に現金が必要になる場合がある。
大型買収による成長の実績は確認できない。逆に、事業会社による買収はあり得るが、発表済みのTOBやMBOを価値に織り込む根拠もない。将来の増資による希薄化は、既存株主が負うべき独立したリスクである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
OLGAは単なる契約書レビューソフトから、法務部門の業務をまとめる基盤へ変わりつつある。2026年6月末には導入企業が618社、年間経常収益が9.7億円となり、顧客単価も上がった。複数の機能を組み合わせる企業が増えるほど、顧客の業務と製品が深く結び付く。契約書の内容だけでなく、法務への相談、担当者の判断、承認の理由まで残せることは、一般的な生成AIとの違いになり得る。
企業の法務担当者が不足する中、事業部門が直接問い合わせられる仕組みには需要がある。会社が進めるAIとの接続も、専用画面を使わせることより、自社に集まった法務データを安全に取り出す方向へ進めば意味がある。司法書士に頼る登記手続きでも、利用経験のある企業の繰り返し利用を取り込む余地は残る。市場全体と比べれば、同社の売上高はまだ小さい。
費用面では、2025年に販売管理費が前年より減少し、営業赤字が縮小した実績がある。高単価の法人契約が増えれば、顧客獲得費の回収期間も短くなる可能性がある。開発が一巡し、保守・改良中心の体制に移れれば、売上高を急増させなくても利益が残る。借入れによって時間を確保し、その間に顧客単価を高められれば、株主にとって価値のある黒字企業へ転換できる。
会社が公表した2026年の黒字化計画も、完全に不可能とはいえない。下期の販売と費用管理が改善すれば、赤字からの転換点が見えてくる。法務部門が過去の判断の記録を重視し、OLGAを手放しにくい基盤として使う企業が増えるなら、十年後にも相応の利益を稼ぐ余地がある。
慎重な見方
会社は、汎用AIによる契約審査機能の解約と、AI検索による登記サービスへの検索流入減少を自ら認めている。これは遠い将来の脅威ではなく、すでに始まった顧客行動の変化だ。法務担当者が複数の画面を操作することを前提としたソフトウェアは、AIエージェントがメール、社内文書、契約書を横断して仕事を進めるようになると、料金を維持しにくくなる。
OLGAの法務データ基盤にも競合がいる。LegalOn Technologiesは導入規模で大きく先行し、MNTSQやHubbleなども契約管理の中核を狙っている。さらにMicrosoftの業務基盤にAIが組み込まれれば、顧客企業は既存の契約とデータ保存場所を使ったまま、法務の操作画面だけを減らす可能性がある。顧客単価の上昇を根拠に、十年後も同じ値決め力が続くと信じることはできない。
登記事業は2025年に利用件数が減少し、2026年第2四半期にも件数の前年割れが続いた。平均収入の上昇が売上高を支えても、申請件数が継続して減るなら伸びには限界がある。AIが書類作成を引き受ける時代には、利用者が専用サイトへ直接訪れる習慣そのものが失われる。司法書士や行政の電子申請制度との競争も残る。
最大の問題は、事業の転換を試す資金が潤沢ではないことだ。2026年上期末の自己資本は約1.25億円しかなく、ソフトウェアの資産計上額はその何倍もある。開発投資を続ければ現金が減り、止めれば製品の競争力を失う。借入れを増やせば返済と利払いの負担が増し、増資すれば既存株主の持分が薄まる。仮に会社が存続しても、十年後の利益を享受する株主が現在と同じとは限らない。
どちらに重みを置いたか
法務データを蓄積する製品の方向性には価値がある。しかし現時点では、解約率、移行コスト、独自データの排他性という堀の証拠が不足している。さらに、2026年上期の自己資本の減少と開発資金の流出は、将来の増資を無視できない理由になる。確率は上側28%、中立29%、下側43%とした。AIによる数量減少は中立の売上高と長期成長率に織り込んでおり、確率で同じ理由を重ねて引いていない。下側へ寄せた追加の理由は、資金不足と既存株主の希薄化である。中立の黒字化さえ大幅な費用構造の転換を要するため、現時点では慎重な見方を優先する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 108 円5 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 44 円2 億円、今との差 −85.0%、 期待の年率 −9.4%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 495 円23 億円 | 0 円0 億円 | +70.1% | +5.5% | 54 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 208 円10 億円 | 0 円0 億円 | −28.5% | −3.3% | 35 円2 億円 |
| 中立 | 29% | 60 円3 億円 | 0 円0 億円 | −79.4% | −14.6% | 17 円1 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.2% | −38.2% | 1 円0 億円 |
| 悲観 | 16% | 0 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.9% | −50.6% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 108 円5 億円 | 0 円0 億円 | −62.9% | −9.4% | 108 円5 億円 |
今の株価時価総額 291 円13 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 法務データ基盤として生き残り、費用構造の転換に成功 利益 2 億円 · PER 10.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 495 円23 億円
OLGAは契約書レビューだけに依存せず、法務案件の受付と記録管理を担う製品として定着する。顧客はAIを使って契約内容を確認するが、誰が何を承認したかという判断記録はOLGAに残す。競合するLegalOnやMNTSQとは正面からすべてを争わず、中堅企業の法務部門と社内の依頼部門を結ぶ用途で顧客を維持する。
登記事業でも、検索流入への依存を減らし、過去に利用した企業とOEM経由の案件を残す。AIによって申請書作成の価値は下がるため、利用件数を無理に増やすのではなく、関連手続きの追加で平均収入を維持する。新規事業が大幅に成長するという仮定は必要としない。
決定的なのは費用構造の転換である。開発と顧客獲得の体制を絞り、共通販管費を2025年の約12.16億円から約8.25億円へ下げる。物価上昇を考えると、実質的には非常に大きな合理化が必要だ。それでも既存製品を保守できる組織を残し、営業黒字が安定する。
十年間の純利益の累計を約5.6億円とし、追加の大規模増資なしで自己資本を積み上げる。高値の新株予約権による希薄化や買収による上乗せ利益は想定しない。製品の寿命と現金創出力の両方が改善する、実現条件の多い筋書きである。
- LegalTech SaaS事業・OLGA:数量 572(年間売上高を生む契約企業数に相当する件数(社))× 価格 0.02(契約企業1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 8 億円。契約企業数は2025年末と同程度の572社。単価は1.15倍。AI経由の収益を別途上乗せせず、粗利相当の貢献率84%とする。
- 登記事業・GVA法人登記など:数量 15,301(年間サービス利用数(件、GVA法人登記とOEM等を含む))× 価格 0.00(サービス利用1件当たり平均売上高(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。利用件数は1.0倍、平均収入は1.15倍。関連手続きの組み合わせが改善するが、AIによる数量増加は想定しない。
倍率:2035年のROEは2.25÷8.20で約27.4%。資本コストkは9.5%、堀はweakで超過ROEの残存割合を3分の1とするため、RONICは約15.5%。AIエージェント代替を反映した長期の名目成長率gはマイナス0.5%。正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)は約10.32倍となる。楽観でも式の上限をそのまま使い、上乗せしない。
確率:OLGAの既存顧客との結び付きが深まり、AIによる契約レビューの代替が進んでも法務案件の記録管理を残せる可能性がある。ただし新しいAIエージェント製品単体の売上高や受注高は確認できないため、楽観でも実質利用量は現在を超えない。黒字化と開発資金の確保を同時に実現する難しさから11%とした。
やや楽観 17% 顧客基盤をほぼ維持し、小規模ながら利益が残る 利益 1 億円 · PER 10.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 208 円10 億円
OLGAはAI契約レビューの単体機能では競争力を失うが、法務案件の管理や社内の承認記録を残す需要を確保する。競合への流出も起きるため契約企業数はやや減る。しかし複数の機能を利用する顧客が残り、平均単価は現在より高くなる。既存顧客への販売力はあるものの、法務業界の共通基盤になるまでの拡大は期待しない。
登記事業は、AI検索による流入減少とオンライン申請の一般化が重荷になる。会社は商標やその他の法的手続きを増やすが、既存の登記サービスを大きく上回る新たな柱は育たない。リピート顧客と提携先からの利用を中心に、緩やかな数量減少で持ちこたえる。
販管費は2025年の水準より名目で縮小する。開発対象を絞り、営業や広告の効率化も進めるが、営業黒字化のためには簡単ではない費用削減が必要だ。AIを使った内部効率化は費用削減の手段になるが、新しいAI事業の売上増加を仮定してはいない。
十年間でおよそ1.0億円の新たな株式資本を受け入れ、純利益の累計は約1.27億円になると考える。現在の株主は一部希薄化するが、会社は営業利益を生む状態で十年後を迎える。大きく成功したというより、製品と組織を小さく強く作り替えられた筋書きである。
- LegalTech SaaS事業・OLGA:数量 543(年間売上高を生む契約企業数に相当する件数(社))× 価格 0.02(契約企業1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 7 億円。契約企業数は2025年末の約95%、単価は1.15倍。高単価顧客への構成変化で売上を支える。
- 登記事業・GVA法人登記など:数量 13,771(年間サービス利用数(件、GVA法人登記とOEM等を含む))× 価格 0.00(サービス利用1件当たり平均売上高(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。利用件数は約90%、単価1.10倍。リピートとOEMが残る。
倍率:2035年のROEは1.00÷4.87で約20.5%。k9.5%、堀weakの残存割合3分の1でRONICは約13.2%。g_longをマイナス0.5%とし、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)から約10.38倍。現在の市場倍率や同業倍率による調整は行わない。
確率:高単価顧客と複数モジュール契約の増加という実績があり、利用企業数の大幅減少を回避する余地がある。ただしAIによる機能代替と開発費の負担があるため、利益率の改善には組織の大幅な合理化が必要と考える。
中立 29% 市場は残るが、AI代替で縮小し、大幅な合理化後に小幅黒字 利益 0 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 60 円3 億円
十年後も企業には法務部門があり、契約の判断履歴を管理する必要がある。しかし多くの契約確認や照会は、Microsoftなどの業務基盤に接続したAIエージェントが処理するようになる。OLGAは法務データの保存先として一部の顧客に残るが、専用画面を開いて仕事をする人数や企業数は減る。2025年末の契約企業数を基準に、残る利用量は約8割と考える。
登記事業も同様である。会社や役員に関する登記はなくならないが、書類の作り方は汎用AIや公的な電子申請サービスへ移る。既存の顧客から繰り返し利用される部分は残るものの、利用件数は7割程度になる。物価が十年間で約34%上がる前提でも、両事業の単価上昇はそれを下回る。
利益を残す条件は、会社の規模を需要に合わせることだ。売上総利益の貢献率を保ちつつ、共通販管費を名目で約7.2億円まで引き下げる。2025年と比較した名目費用の削減幅は約41%であり、物価上昇まで考えると実質の合理化はさらに大きい。これができなければ中立でも赤字のままである。
十年間の純利益累計は約1.23億円のマイナスとなり、別途約2.0億円の増資を受ける筋書きを想定する。配当も自社株買いも行わない。十年後には小幅な黒字企業として存続するが、収益の大きさも既存株主の取り分も現在の期待を下回る。
- LegalTech SaaS事業・OLGA:数量 458(年間売上高を生む契約企業数に相当する件数(社))× 価格 0.02(契約企業1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 6 億円。席課金・専用画面型のAIエージェント代替を適用。実質契約量は0.80倍、単価1.10倍。法務データを保存する顧客だけが比較的長く残る。
- 登記事業・GVA法人登記など:数量 10,711(年間サービス利用数(件、GVA法人登記とOEM等を含む))× 価格 0.00(サービス利用1件当たり平均売上高(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。AIによる書類作成の代替と検索経由の流入減少で件数0.70倍、単価1.05倍。市場全体の申請数より同社の販売シェアが低下する。
倍率:2035年のROEは0.33÷3.37で約9.8%。k9.5%をわずかに超えるが、強い超過収益力ではない。堀weakの残存割合3分の1でRONICは約9.6%。AIエージェント代替によるg_longマイナス0.5%を用いた正当化PERは約10.52倍となる。中立の利益は共通販管費を大幅に下げられた場合だけ発生するため、倍率に別の楽観的な成長を加えない。
確率:下に寄せる理由:AIによる数量減少そのものは売上前提に織り込んでいる。追加で問題になるのは、2026年上期の自己資本の薄さと開発投資による現金流出であり、黒字化までの間に資金調達と大幅な費用削減が必要なことだ。これらを踏まえて中立の実現確率を29%とした。
やや悲観 27% 製品は縮小均衡し、増資を重ねて存続 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2 円0 億円
OLGAは競合の業務基盤やAIエージェントに顧客を奪われ、法務部門の一部で案件管理用に使われる小規模な製品になる。複数機能を一体として使う顧客も残るが、企業の契約管理全体を押さえる立場にはなれない。利用企業数は2025年末の約7割になり、単価はほぼ横ばいとなる。
登記事業では、専用サイトに必要事項を入力する仕事の多くが汎用AIやほかのオンライン申請手段に代わる。司法書士への依頼も依然残り、GVA法人登記が利用者を囲い込む力は弱い。サービス利用件数は半減する。法務関連の新しい書類作成支援を追加しても、失った需要を十分には補えない。
会社は費用削減と資金調達を繰り返し、営業組織と開発組織を小さくする。共通販管費は約5.4億円まで下がるが、売上総利益も減るため利益はほとんど残らない。顧客を支える必要最低限の開発と法改正対応が続き、株主還元に回せる現金はない。
累積損失を補うため約4.63億円の新株資本を受け入れると考える。既存株主の持分は約6割まで減少する。帳簿上の自己資本は補充できても、収益力は弱い。十年後には会社として存続しているが、元の株主に残る価値は非常に小さい。
- LegalTech SaaS事業・OLGA:数量 400(年間売上高を生む契約企業数に相当する件数(社))× 価格 0.01(契約企業1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。契約企業数約0.70倍、単価1.02倍。AIで代替される契約レビューよりも、既存の法務案件管理を使い続ける顧客が残る。
- 登記事業・GVA法人登記など:数量 7,650(年間サービス利用数(件、GVA法人登記とOEM等を含む))× 価格 0.00(サービス利用1件当たり平均売上高(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。利用件数約0.50倍、平均単価横ばい。検索流入減少と代替サービスへの流出が長期化する。
倍率:悲観側のPBRは2035年までの利益留保で増やした純資産に掛けず、2025年末の自己資本約2.6億円を固定した基準とする。帳簿の大半をソフトウェア資産が占め、法務データと製品の市場価値も低下しているため、純資産の額面には値を付けない。PBR0.07倍による時価総額約0.18億円は、2035年の純利益0.04億円をk9.5%で資本還元した稼ぐ力約0.42億円を超えず、売却可能資産の床0億円も下回らない。
確率:登記利用件数の減少がすでに確認でき、OLGAも単体レビュー機能では解約が発生している。事業が小さくなっても固定費と開発費は直ちには消えないため、追加の資金調達を繰り返しながら小規模事業として残る可能性を比較的高く見た。
悲観 16% AIによる代替と資金繰り悪化で既存株主価値を失う 利益 0 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0 円0 億円
汎用AIによる契約審査の自動化がさらに進み、OLGAは主力のレビュー機能で競争力を失う。法務案件の記録管理も、顧客が既に利用するMicrosoftなどの基盤へ集約される。高単価の顧客ほど自社のシステムとAIを統合し、独立した法務ソフトに支払う金額を削る。契約企業数はほぼ半分となる。
登記事業でも書類作成はAIと公的な申請制度へ移り、利用件数は半分程度になる。単価を十分に引き上げることはできない。新しく追加した商標や労務書類のサービスも、AIが安く提供する類似機能との競争にさらされるため、失った収入を埋められない。
売上が減る中で開発費と人件費を削り続けるが、最低限の保守、法改正への対応、セキュリティ維持には費用がかかる。営業赤字から脱却できず、過去に資産計上したソフトウェアの減損も起こり得る。借入れの借り換え条件は厳しくなり、新規株式の発行を繰り返す。
十年間の累積損失約8億円を、ほぼ同額の新株資本で補うと仮定した。帳簿上の自己資本を維持できたとしても、それが換金可能な資産や将来の利益を意味するわけではない。既存株主の持分は大幅に希薄化し、営業赤字の会社の株主価値はほぼゼロとなる。法務市場そのものがなくなるのではなく、同社がその市場で利益を取れなくなる筋書きである。
- LegalTech SaaS事業・OLGA:数量 286(年間売上高を生む契約企業数に相当する件数(社))× 価格 0.01(契約企業1社当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。契約企業数は2025年末の0.50倍。高機能の法務AIが普及しても自社製品への支払いは伸びない。
- 登記事業・GVA法人登記など:数量 7,650(年間サービス利用数(件、GVA法人登記とOEM等を含む))× 価格 0.00(サービス利用1件当たり平均売上高(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。件数約0.50倍、平均単価横ばい。価格競争と法的手続きのデジタル化で採算が悪化する。
倍率:2035年も営業赤字が残り、継続利益を資本還元して得られる正の事業価値はない。純現金や確実に売れる資産の床も0億円であり、原則として既存株主に残余価値はない。もっとも、法務案件管理の一部顧客契約が残り、事業再編や再資本化によってわずかな持分が存続する可能性は完全には排除できないため、倒産に近い極端なケースの微小な残余オプションとして、2025年末の自己資本2.6億円にPBR0.01倍を掛けた0.026億円だけを計上する。累積損失を増資で補った将来の帳簿上の資本に倍率を掛けてはいない。これは換金可能な資産の床ではなく、稼ぐ力を認めた評価でもない。
確率:2025年末の自己資本に対して借入金とソフトウェア資産が大きく、2026年上期には財務余力がさらに減少した。事業縮小と開発投資が同時に続けば増資だけでは解決せず、既存株主の価値がほぼ失われる可能性を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
LegalTech SaaS事業・OLGA
法務案件の受付、過去の判断の蓄積、契約レビュー、契約書管理を月額料金で提供する。会計上は単一セグメントのうち会社が売上を区分開示するサービス群。
| 数量年間売上高を生む契約企業数に相当する件数(社) | 価格契約企業1社当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 572 | 0.01 | 8 | 6 |
| 10 年後 中立 | 458 | 0.02 | 7 | 6 |
取り方:2025年12月期のサービス群売上816,089千円を約8.16億円とし、期末OLGA導入企業数572社で割って1社当たり約142.7万円の年間収入とした。会社開示の期末月額平均単価12万円の年換算とほぼ整合する。ただし期末契約数を年間平均契約数の代わりに使う近似である。単一報告セグメントのためサービス群別営業利益は非開示。op_okuの6.36億円は売上高に仮定した粗利率78%を掛けた共通販管費控除前の営業貢献推計であり、開示されたセグメント営業利益ではない。2025年の全社売上総利益約9.14億円と合うよう登記事業側も組み立て、販管費約12.16億円は各筋書きのadjust_okuで別途控除する。AIエージェント代替の型は、席課金・専用画面中心の業務SaaS。法務データ基盤も強い堀の証拠が二つないため記録の正本の優遇型にはしない。
登記事業・GVA法人登記など
役員変更などの登記書類作成支援、関連する登記サービスやOEM提供、商標登録支援などを含む。利用件数と1件当たり収入により収益が変わる。
| 数量年間サービス利用数(件、GVA法人登記とOEM等を含む) | 価格サービス利用1件当たり平均売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15,301 | 0.00 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 10,711 | 0.00 | 5 | 2 |
取り方:2025年の登記事業売上667,724千円を約6.67億円、四半期利用数4,014件、4,333件、3,547件、3,407件の合計を15,301件とした。平均売上高は1件約4.36万円。OEMや付随する料金も含む加重平均であり、GVA法人登記の個別表示料金とは違う。op_okuの2.78億円は全社粗利益とSaaS側の推定粗利益の差額で求めた共通販管費控除前の営業貢献であり、正式な事業別営業利益ではない。AIエージェント代替の型は、専用の入力画面と書類作成手順を売る業務ソフト・操作画面型。人が申請を完成させる規制対応は残るが、法務局への申請手続きそのものの独占権は同社にはない。
リスクと懸念
AI エージェント代替による法務ソフトの価値低下
生成AIが契約書をチェックするだけでなく、社内の承認ルールや文書管理システムを横断して法務業務を処理するようになると、OLGAの専用操作画面や席課金の価値は低下する。会社自身が単体のAI契約レビュー機能の解約を説明しており、仮説ではなくすでに現れたリスクである。法務データ基盤として残る部分と、AIに置き換わる部分を分けて追う必要がある。
開発投資による現金流出と借り換え
2025年にはソフトウェア等の取得に約4.30億円を使い、2026年上期にも開発投資による現金支出が大きかった。償却費を足し戻した営業キャッシュフローが改善しても、製品を競争力ある状態に保つための開発費を払えば現金は減る。借入れの更新金利が高くなれば、その負担は一段と重くなる。
追加増資と既存株主の希薄化
2026年上期末の自己資本比率は9.2%で、借入れによる資金確保が続いている。開発資金の調達が必要になれば、事業が存続しても株式の追加発行で既存株主の割合が低下する。行使価格の低い新株予約権のほか、高値で設定された新株予約権の将来の行使条件も確認が必要だ。企業全体の価値と現在の株主の価値は同じではない。
登記事業への検索流入減少
AI検索が利用者の質問に直接答えるようになれば、従来の検索結果からGVA法人登記のサイトへ訪れる人は減る。2025年の年間利用件数は減少し、2026年第2四半期にも前年割れが続いた。司法書士への依頼や法務局の電子申請も代替手段として残るため、利用数を回復させるには顧客獲得経路を作り替える必要がある。
ソフトウェア資産の減損
開発費を資産計上しているため、製品の利用が予想より減った時には帳簿価額を回収できなくなる可能性がある。2025年末の無形固定資産は約8.2億円あり、同年末の自己資本約2.6億円を大きく上回った。減損は現金支出を直接伴わなくても、将来利益の見積もりが崩れたことと財務上の余裕の縮小を明らかにする。
大手競合と業務基盤への統合
LegalOn Technologies、MNTSQ、Hubbleなどの専門企業に加え、Microsoftなどの汎用業務基盤もAIを組み込んでいる。顧客企業が既存の文書保管場所をそのまま使い、AIで法務対応まで行うようになれば、独立した法務システムに新たな予算を割く理由が弱くなる。法務データの管理を顧客が自ら選べることは、同社の堀を狭める。
利益計画と資金繰りの時間差
2026年通期の会社予想は営業黒字だが、上期は営業赤字1.23億円だった。後半に収益と費用の両方を改善させる必要があり、計画の達成には実行リスクがある。たとえ通期の会計上の黒字を達成しても、ソフトウェア開発への投資支出と借入金の返済をまかなえるとは限らない。黒字化と現金創出の定着を別々に確認したい。
今後の分かれ目
- OLGAの月次純解約率が継続して改善し、総解約率も年5%未満と確認できたら
- 顧客の継続利用を示す証拠が増える。法務データの移行負担や値上げ実績と合わせて堀を再評価し、中立の契約数量と長期成長率を見直す。純解約率だけで強い堀とは認定しない。
- 2026年12月期に会社予想の営業黒字を達成し、開発投資控除後の現金収支もプラスになったら
- 資金調達の必要額を下げ、既存株主の取り分を上方修正する。単年度の黒字だけでなく翌年度も続くかを確認し、中立以上の筋書きの確率を高める。
- OLGAの顧客数が2四半期以上連続して減り、顧客単価の上昇も止まったら
- 契約レビューにとどまらず法務データ基盤の利用も縮小している可能性があるため、SaaSの数量と単価の前提をともに下げ、悲観側の確率を増やす。
- 登記事業の利用件数の前年割れが続き、平均売上高の上昇でも売上高を補えなくなったら
- 検索流入への依存を減らす取り組みが十分ではないと判断する。登記事業の中立数量をさらに引き下げ、共通費を削れるかも合わせて検証する。
- 大きな第三者割当増資や有利な条件でない資金調達が発表されたら
- 調達後の現金と自己資本を加える一方、新株発行による既存株主の持分低下を計算し直す。企業価値が変わらなくても既存株主の取り分が減るため、増資額だけを好材料としない。
- OLGAの法務データを外部AIへ接続する機能から独立した売上高や受注高が開示されたら
- AIエージェントを競争相手ではなく販売製品として収益化できた証拠になる。実際に得られる顧客数と単価を確認して、楽観の数量上限や事業の型を再検討する。
- ソフトウェア資産の大幅減損や継続企業の前提に関する注記が発生したら
- 過去の開発投資が回収できない可能性を重く見て、純資産の売却可能価値を再検証する。継続企業の前提の注記が付けば、今回の分析対象から外す条件にも該当する。
見ておくもの
- OLGAの導入企業数、月額顧客平均単価、20万円以上の高単価顧客数
- 月次Net Revenue Churn Rateと、別途確認できる総解約率
- 法務データ基盤モジュールの利用率、複数機能の契約割合、AI接続機能の有償売上
- 登記事業の四半期利用件数、リピート件数、1件当たり平均売上高
- 2026年下期の営業利益と通期黒字化計画の達成状況
- 営業キャッシュフローからソフトウェア開発投資を引いた現金収支
- 現預金、有利子負債、自己資本比率、借入金の返済予定
- 新株予約権の行使状況、増資の発行価格、新規発行株数
- ソフトウェア資産の減損兆候と償却額
- LegalOn、MNTSQ、Hubble、汎用AI業務基盤との競争状況
倍率と資本コストの決め方
2025年のOLGA契約企業572社と登記事業利用15,301件を数量の起点にした。中立の10年後数量は、AIエージェント代替の決まりに従いそれぞれ約0.80倍、0.70倍、単価は1.10倍、1.05倍とした。どちらも物価上昇率を下回る単価上昇であり、実質数量と名目価格の物価分を二重に数えていない。楽観もAIエージェント新製品の独立売上が確認できないため数量1.0倍を超えていない。
最大の不確実性は共通販管費の削減である。中立でも2025年の約12.16億円から約7.2億円まで下げないと小幅な黒字にならず、費用をそのままにすれば価値はさらに低くなる。倍率は現在や同業のPERを使わず、k9.5%、AI代替を反映したg_longマイナス0.5%、ROE、増分投資利益率から決めた。悲観側は売却可能資産の床と稼ぐ力を検算し、帳簿に載るソフトウェアを現金同等とは扱わない。
2025年12月末の自己資本2.6億円を基礎に、楽観は十年間の累積純利益5.6億円、やや楽観は累積純利益1.27億円と増資1.0億円、中立は累積純損失1.23億円と増資2.0億円を反映した。悲観側のPBRは将来の留保利益を積んだ純資産に掛けず、今の自己資本2.6億円を固定した基準にした。やや悲観では累積損失4.63億円を同額の増資で補い、悲観では累積損失8.0億円を同額の増資で補う仮定である。株主への還元は全筋書きでゼロとした。
2035年の時価総額は楽観23.22億円、やや楽観10.38億円、中立3.47億円、やや悲観0.182億円、悲観0.026億円で順序は守られている。やや悲観の価値は純利益0.04億円を資本コストで割った稼ぐ力を超えない。悲観は継続赤字と売却可能資産の床ゼロを前提とし、会社存続時にわずかに残る可能性のある持分のオプション価値だけを計上した。既存株主の取り分を各筋書きに反映し、9.5%で10年間割り引くと本質価値は約2.02億円となる。現在の時価総額14.52億円との差は約マイナス86.1%。この差を狙って数量や倍率を調整していない。新リース会計基準による貸借対照表の表示変更が起きても、ここでは家賃を営業費用に含む現行ベースで将来利益を比較する。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%。循環、値決め力、借金の合計2.0%を加えて9.5%とした。財務不安は借金の項目と悲観の事業・資金調達の筋書きに反映するため、追加の窮境上乗せは行わない。
同じ業種(情報・通信業)の AI 分析
読んだ資料
- GVA TECH 2025年12月期有価証券報告書:サービス別売上高、契約数、登記利用数、財務、開発投資、新株予約権、配当方針
- GVA TECH 2026年12月期第2四半期決算短信(2026年8月14日、東京証券取引所開示)
- GVA TECH 2026年12月期第2四半期決算説明会資料:OLGAのARR・顧客数・単価と登記利用数
- GVA TECH 事業計画及び成長可能性に関する事項(2026年3月31日):市場規模と中長期の成長戦略
- GVA TECH 資金の借入に関するお知らせ(2026年9月18日)
- LegalOn Technologies 有償導入企業数8,500社突破(2026年4月2日):競争環境の参考