結論
ウイングアーク1stは、請求書や帳簿を設計して出力する帳票ソフトと、データを集めて見せる BI(Dr.Sum・MotionBoard)を持つ会社である。収益の6割強は保守とサブスクで、保守を続ける率は93%を超える。
筆者の結論は、顧客の固さは本物だが、値段は割高である。帳票は電子帳簿保存法の特需が一服し、AI エージェントが書類を直接作る世界では出力ソフトの役目が細る。BI は人が画面で数字を見る前提で、質問に直接答える AI エージェントに置き換わりやすい。
売上の約65%を占める帳票は数量0.85倍・価格1.12倍、約35%の BI は0.70倍・1.03倍に置いた。中立の売上は名目で13%減り、実質では35%減る。買収で積んだのれんが大きく、減損の怖さもある。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足した8.5%、長期の成長率は名目0〜−1%とした。
やや悲観・悲観の確率を合わせて38%置いた総合の価値は、今の時価総額を7割ほど下回る。悲観は売上が半分以下になる筋書きで、床は純現金のうち前受金などを除いた40億円とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の価値は「堅実な国内の定番ソフト」という言葉に尽きる。毎年の保守とサブスクリプションが収益の6割を超え、継続率も9割を超える。オーナー利益(株主の手元に残る利益)は営業利益の7割ほどあり、再投資が重くない。
堀については、書式を移す手間という実体のある切り替えの壁を評価する。ただし、AIが書式の作成を覚えれば、この壁は薄くなる。10年先も今の利益率を保てる確信は、オービックほど強くない。
資本配分は無難だ。借金より現金が多く、買収は小さく分散している。総還元性向5割の方針は、持ち続けるオーナーには心強い。一方、自社株買いを使わず、買収ののれんが積み上がる点は注意して見る。
安全域は、筆者の見立てでは足りない。10年後の姿を割り引いた本質価値は、今の時価総額を下回る。楽観の筋書きに偏った確率を置かない限り、この結論は動かない。良い会社を適正な値段より少し高く買う形になるので、慎重に構えたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は2つある。1つは帳票・文書の領域だ。請求書、納品書、帳簿のように、企業が毎日出す書類を設計し、出力し、配信するソフトで、売上の6割を占める。もう1つは、データを集めて分析し、見える形にする領域で、売上の3割強を占める。
帳票は電子帳簿保存法やインボイス制度への対応で需要が広がった。ただ、この特需は一服している。クラウド版への切り替えと、機能追加による単価の引き上げが、これからの成長の中身になる。
データ領域のDr.Sumは、大企業向けの大型案件を伸ばしている。地方銀行97行のうち45行が同社のデータ製品を使っているという。一方、MotionBoardのクラウド版は採算の悪いサービスをやめたため、伸びが鈍った。
収益の6割強は、毎年の保守費用とサブスクリプション(月額課金)という積み上げ型だ。保守を続ける率は93%を超える。顧客は大企業・製造業・金融・自治体が中心で、公共向けは買収したウイングアークNEXが担う。1,741の自治体のうち、約400団体に住民向けサービスが入っている。
ここ数年、会社は買収を重ねて事業を広げてきた。トライサーブ、ウイングアークNEXなど、中核の周辺や公共、AI人材に絞った方針だ。
優良さと弱いところ
堀の中心は、帳票の国内首位という立場と、基幹システムの裏に入り込む切り替えの難しさだ。顧客は帳票の書式を何千枚も持っている。これを他社製品へ移すのは、手間がかかる割に得るものが少ない。保守の継続率93.4%が、この粘り強さを裏づける。
収益の質も悪くない。営業利益率は直近で29%、次の期の予想は31%に上がる。ただ、オービックのように6割を超える水準ではない。人件費と開発費、買収の償却が利益を削る。過去には営業利益率が17.5%まで落ちた期もあった(2021年2月期)。
弱さは3つある。1つは、市場が国内の大企業に偏り、単価を上げる余地に限りがあること。もう1つは、AIが書式の作成や集計を肩代わりすると、専用ソフトを買う理由が薄れること。3つ目は、買収で規模を広げた分、のれんの重さが出ることだ。
筆者は、堀は「普通」と見ている。強いが、10年先まで利益率を守る独占ではない。資本の使い方は、総還元性向5割という方針が示され、悪くない。ただ、自社株買いの言及はなく、還元は配当が中心だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
帳票ソフトは、国内ではSVFが約7割を握るとされる。競合には日鉄日立システムソリューションズの「Paples」やオージス総研の「eCubenet」などがあるが、規模ははるかに小さい。ベンダーの自己申告の数字ではあるが、首位の座はおおむね確かだ。
需要の中身は変わりつつある。紙の書類を電子化する動きは、電子帳簿保存法の期限が過ぎ、勢いが落ち着いた。これからは、クラウドへの切り替えと、取引先へ配信する仕組みの追加が柱になる。国内のSaaS市場そのものは年10〜13%の成長が続く見通しだ。
データ領域は競争が激しい。BIツールには、マイクロソフトやタブローといった世界規模の製品がある。Dr.Sumは大量データを高速に処理できる点で差をつけているが、クラウド上の標準機能と競う場面が増える。
最大の変化は生成AIだ。会社は「代替される領域ではない」と説明し、AIとつなぐ仕組み(MCP)とデータの管理を差別化に挙げる。筆者もデータ管理の重要性は増すと見る。一方で、帳票の自動作成や自然な言葉での集計は、AIが最も得意とする仕事でもある。10年のうちに、専用ソフトの価値が基盤に吸収される筋書きは、無視できない。
景気への強さは高い。基幹システムの帳票とデータ基盤は、企業が削りにくい費用だからだ。
資本政策と M&A
還元は2023年10月に変わった。配当性向30%から、配当と自社株買いを合わせた総還元性向50%へ引き上げた。2026年2月期の配当は前の期の特別配当がなくなり、次の期は増配を予想する。自社株買いの実績や予告は、確認できなかった。
成長投資は4年で100億円以上を計画し、約40億円を使ったとされる。買収の方針は、基幹システム周辺のミドルウェア、公共、AI人材、帳票・データ関連のクラウドの4つだ。トライサーブとウイングアークNEXが最近の例にあたる。
主要株主は、伊藤忠商事と伊藤忠テクノソリューションズが出資するIW.DXパートナーズ(約22%)と、東芝デジタルソリューションズ(約13%)だ。2021年にカーライルが主要株主から外れ、事業会社2社が残った。
事業会社が3割台半ばを握るため、敵対的な買収は成立しにくい。ただ、友好的な再編や完全子会社化の可能性は残る。借金より現金が多く、買収の資金余力も保たれている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳票ソフトの首位という立場は、10年たっても簡単には動かない。基幹システムが新しい世代に移るたびに、帳票の書式を作り直す作業が生まれ、そこでSVFが選ばれる。クラウド版への切り替えは単価を押し上げ、2026年2月期にはクラウドの売上が3割以上伸びた。
データ領域も、AIの時代にデータを集めて整える需要が高まる。Dr.Sumは大型案件を伸ばし、地方銀行の半数近くに入っている。生成AIはむしろ、データの質を問う場面を増やし、同社の出番を増やす。会社が示す「AIとつなぐ仕組み」を整えれば、新しい収益源にもなる。
足元の成績も強い。2026年2月期は増収増益で過去最高を更新し、次の期は営業利益が18%伸びる予想だ。中計の目標だったEBITDA120億円は、1年を残して達成のめどが立った。買収した公共向けの事業は、自治体システムの標準化という国策の追い風を受ける。純現金を持ち、総還元性向5割を示している。株主には、伊藤忠と東芝という大企業が並び、顧客の紹介でも後ろ盾になる。
慎重な見方
クラウドの成長率は中計の目標40%に対し、見込みは26.8%にとどまった。リカーリング比率も、目標の75%に対して68%だ。計画の見直しを迫られた会社の説明は、強気の姿勢とは裏腹に、成長の鈍化を認めている。
帳票の特需だった電子帳簿保存法の追い風は一服した。invoiceAgentの伸びは鈍っている。MotionBoardは不採算を整理して伸びを落とした。事業の一部が、すでに頭打ちになっている。
生成AIは、帳票の設計や集計という作業を、最初から機能として組み込んでくる。会社は代替される領域ではないと言うが、専用ソフトを買う理由が薄れる動きは、10年のうちに起きうる。BIの領域では、世界規模のマイクロソフトのような製品が、標準機能として競ってくる。
買収を重ねた分、利益率は伸びにくい。営業利益率は3割前後で、同じソフト会社のオービックの半分だ。大株主が事業会社2社で、事業の独立性にも限りがある。純現金は62億円と、時価総額の5%にすぎず、大型の買収には力が足りない。
AI エージェントが書類づくりから分析までこなす世界では、出力ソフトにも BI にも払う理由が薄れる。買収で積んだのれんの減損が、利益をさらに削る。
AI エージェントが書類づくりから分析までこなす世界では、出力ソフトにも BI にも払う理由が薄れる。買収で積んだのれんの減損が、利益をさらに削る。
どちらに重みを置いたか
保守の継続率93%超と地方銀行などの顧客基盤では強気の見方が優勢だが、帳票出力と BI を AI エージェントが直接こなす筋書きでは慎重な見方が重い。買収で積んだのれんも、縮む売上の下では重荷になる。資本コストは基本7.5%に寿命の上乗せ1%を足して8.5%とし、長期の成長率は名目0〜−1%。やや悲観・悲観を合わせて38%の重みを置いた総合は、今の時価総額を7割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,728 円601 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 815 円283 億円)。 今の値に割り戻すと 1,406 円489 億円、今との差 −63.1%、 期待の年率 −4.0%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,966 円1,032 億円 | 996 円347 億円 | +3.9% | +0.4% | 277 円96 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,530 円880 億円 | 932 円324 億円 | −9.2% | −1.0% | 623 円217 億円 |
| 中立 | 37% | 2,142 円745 億円 | 871 円303 億円 | −21.0% | −2.3% | 1,115 円388 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,031 円359 億円 | 769 円268 億円 | −52.8% | −7.2% | 450 円157 億円 |
| 悲観 | 13% | 115 円40 億円 | 480 円167 億円 | −84.4% | −17.0% | 77 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,728 円601 億円 | 815 円283 億円 | −33.3% | −4.0% | 2,543 円885 億円 |
今の株価時価総額 3,815 円1,327 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 帳票の法対応が下支えし、BI も踏みとどまる 利益 66 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,966 円1,032 億円
電子帳簿保存法やインボイスへの対応で、請求書や帳簿を設計して出力する帳票ソフトは当面の需要が続く。AI エージェントが書類を作っても、法に沿った出力と保存を担う基盤は残る。帳票の数量は0.98倍、価格は1.19倍。Dr.Sum は地方銀行97行のうち45行という顧客基盤が効く。売上は今より6%ほど増え、営業利益は90億円を超える。ただし AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示は無く、楽観でも数量は1.0倍以下とみる。 最も大きい「帳票・文書」は、数量が今の0.98倍、価格が1.19倍になる。 10年後の売上は名目で今の1.06倍(実質0.79倍)、純利益は66億円になる。
- 帳票・文書(BDS):数量 8,798(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 234 億円・営業利益 80 億円。数量0.98倍・価格1.19倍・営業利益率34%(AI エージェント代替の型:席課金)
- データ活用(DE):数量 2,818(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 23 億円。数量0.80倍・価格1.09倍・営業利益率24%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 876 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観でも数量は1.0倍以下。AI エージェントを自社の売り物にして売上を出している開示(金額)が無いので、高成長が続く筋書きにはしない。
やや楽観 18% 帳票は残り、BI が縮む 利益 55 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,530 円880 億円
帳票は更新が続き、数量0.91倍、価格1.15倍。BI の MotionBoard は採算の悪い事業をやめた影響もあり、数量0.75倍に縮む。Dr.Sum の大型案件は続くが、クラウド化のための投資で利益率は伸びない。売上は今より4%ほど減り、営業利益は75億円前後。筆者は、保守を続ける率が93%を超える顧客の固さは認めるが、この筋書きでも、成長を織り込んだ今の値段は支えられないとみる。 最も大きい「帳票・文書」は、数量が今の0.91倍、価格が1.15倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.96倍(実質0.72倍)、純利益は54億円になる。 営業利益は76億円で、今の90億円の84%に当たる。
- 帳票・文書(BDS):数量 8,186(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 212 億円・営業利益 68 億円。数量0.91倍・価格1.15倍・営業利益率32%(AI エージェント代替の型:席課金)
- データ活用(DE):数量 2,622(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 85 億円・営業利益 19 億円。数量0.75倍・価格1.06倍・営業利益率22%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 726 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:帳票の更新が続き、Dr.Sum が地方銀行などで踏みとどまる筋書き。開示が無いので数量は1.0倍以下に抑えた。
中立 37% 中立:売上は名目で1割ほど減り、利益は3割減 利益 45 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,142 円745 億円
帳票は数量0.85倍、価格1.12倍に縮み、特需の一服後は更新の単価も物価に届かない。BI は人が画面で数字を見る前提なので、AI エージェントが質問に直接答えるようになると数量0.70倍まで縮む。売上は名目で13%減り、実質では35%減。営業利益率は2割強で、営業利益は63億円ほど。買収で積んだのれんの償却が重く、新しく投じるお金の稼ぎは先で薄れる。 最も大きい「帳票・文書」は、数量が今の0.85倍、価格が1.12倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.87倍(実質0.65倍)、純利益は45億円になる。 営業利益は63億円で、今の90億円の70%に当たる。
- 帳票・文書(BDS):数量 7,650(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 192 億円・営業利益 58 億円。数量0.85倍・価格1.12倍・営業利益率30%(AI エージェント代替の型:席課金)
- データ活用(DE):数量 2,450(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 15 億円。数量0.70倍・価格1.03倍・営業利益率20%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 605 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:帳票は法対応で残り、BI の席が縮むという、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 25% AI エージェントが書類と分析を直接こなし、席が減る 利益 25 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 1,031 円359 億円
帳票の出力を AI エージェント付きの会計・ERP が標準で担い、単独のソフトに払う理由が薄れる。帳票は数量0.70倍、BI は0.57倍に縮み、保守の継続率も下がる。営業利益率は1割台前半に落ちて、営業利益は35億円前後。買収を重ねて広げた事業のうち、AI 人材や自治体向けの採算が悪く、のれんの減損が利益をさらに削る。還元は利益に合わせて減る。 最も大きい「帳票・文書」は、数量が今の0.70倍、価格が1.06倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.68倍(実質0.51倍)、純利益は25億円になる。 営業利益は34億円で、今の90億円の38%に当たる。
- 帳票・文書(BDS):数量 6,273(契約社数(社))× 価格 0.02(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 150 億円・営業利益 35 億円。数量0.70倍・価格1.06倍・営業利益率23%(AI エージェント代替の型:席課金)
- データ活用(DE):数量 2,009(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 8 億円。数量0.57倍・価格0.98倍・営業利益率13%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:事業の純利益 25 億円(現金の税後利息を除く)・事業の ROE 3.8%。AI エージェント代替で帳票・BI の席(ライセンス)課金が AI エージェントに置き換わり、数量が縮み価格も物価に届かない(帳票は法対応の記録として一部が残る)とみて。長期の成長率 g を名目 -1.0% と置き、RONIC = k 7.5% + 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.5%、正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 11.8 倍。上限の 8.5 割に置き、事業 25 億円 × 11.33 倍 + 余った現金 0 億円(戻り方込み)で時価総額 279 億円、全体の PER に直して 11.33 倍。
確率:ダッシュボードを人が見る前提の BI は、AI エージェントが質問に直接答えるので置き換えられやすい。実現しやすいと見て2割台半ばに置いた。
悲観 13% AI エージェントが書類づくりと分析を置き換え、売上は3分の1 利益 2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 115 円40 億円
AI エージェントが書類づくりから分析までこなし、帳票も BI も席に払う理由がなくなる。売上は今の3分の1、営業利益はほぼゼロ。買収で積んだのれんは大きく減損される。純現金があるので、株主の取り分の床は前受の保守料と運転資金、買収資金の約束を除いた40億円ほど残る。稼ぐ力ではなく、この小さな資産が悲観の値段を決める。 最も大きい「帳票・文書」は、数量が今の0.38倍、価格が0.95倍になる。 10年後の売上は名目で今の0.33倍(実質0.25倍)、純利益は2億円になる。 営業利益は3億円で、今の90億円の3%に当たる。
- 帳票・文書(BDS):数量 3,442(契約社数(社))× 価格 0.02(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 7 億円。数量0.38倍・価格0.95倍・営業利益率10%(AI エージェント代替の型:席課金)
- データ活用(DE):数量 1,102(契約社数(社))× 価格 0.03(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。数量0.32倍・価格0.88倍・営業利益率0%(AI エージェント代替の型:席課金)
倍率:悲観は売上が 10 年で半分以下になる筋書き。純現金+売れる資産の税後 40 億円(純現金62億円のうち、顧客から受け取る保守費用の前受金と運転資金、買収資金に回る)を床として、今の自己資本 470 億円に対する PBR 0.09 倍で時価総額 40 億円とした。AI エージェント代替で帳票も BI も使われなくなり、売上が半分以下に縮む。稼ぐ力そのものが崩れる筋書きなので、事業の利益には値を付けない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.085 倍・時価総額 40 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:AI エージェントが書類づくりと分析を丸ごとこなし、席課金が半分以下になる筋書き。やや悲観と合わせて3割台後半にとどめた(中立の数量・価格に縮みを入れたので、確率では重ねない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
帳票・文書(BDS)
請求書・帳票の設計・出力・配信ソフト(SVF、invoiceAgent、デジタル文書基盤)。保守とクラウドの積み上げが中心。
| 数量契約社数(社) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 9,000 | 0.02 | 202 | 66 |
| 10 年後 中立 | 7,650 | 0.03 | 192 | 58 |
取り方:2025/02期のBDS売上187億円に、会社が示した2026/02期の伸び約8%を掛けて約202億円。SVFは累積38,000社超の導入だが、毎年売上が立つ契約社数は開示が無く、9,000社と置いて1社あたり約224万円を逆算した。営業利益はセグメント別の開示が無いため、全社利益率29%より少し高い3割台前半と推定。 型は席・ライセンス課金。帳票の設計と出力は電子帳簿保存法の特需が一服しており、AI エージェントが書類を直接作って配るので数量0.85倍・価格1.12倍(法対応の記録として一部は残る)と置いた。売上の約65%がこの型。
データ活用(DE)
データの集計・分析・可視化(Dr.Sum、MotionBoard)。大企業向けの大型案件が伸びている。
| 数量契約社数(社) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3,500 | 0.03 | 107 | 34 |
| 10 年後 中立 | 2,450 | 0.03 | 77 | 15 |
取り方:2025/02期のDE売上99億円に、2026/02期の伸び約7.5%を掛けて約107億円。契約社数は開示が無く3,500社と置いて、1社あたり約306万円を逆算した。営業利益は推定。BDS・DEの合計は全社売上309億円にほぼ一致する。 型は席課金の業務SaaS。ダッシュボードで人が数字を見る BI は、AI エージェントが質問に直接答えるので影響が大きい。数量0.70倍・価格1.03倍と置いた。売上の約35%がこの型。
リスクと懸念
AI エージェントによる帳票出力と BI の置き換え
AI エージェントが請求書などの書類を直接作って配れば、帳票ソフトの役目は細る。BI は人がダッシュボードを見る前提で、質問に直接答える AI エージェントに置き換わりやすい。売上の約65%は帳票、約35%は BI で、10年の売上は名目で13%減、実質で35%減とみた。買収で積んだのれんの減損も重なる。
クラウド成長の鈍化
中計が掲げたクラウド成長率40%は、見込みで26.8%にとどまった。リカーリング比率も目標75%に対し68%だ。電子帳簿保存法の特需が一服し、invoiceAgentの伸びも鈍っている。成長の穴を埋める次の柱が見えにくい。
買収による利益率の低下とのれん
トライサーブ、ウイングアークNEXなど、2期続けて買収した。会社は、買収で全社の利益率が一時的に下がったと説明する。期待ほど稼げなければ、のれんの減損が自己資本を削る。成長投資は4年で100億円超の計画だ。
大型案件の時期ずれ
2026年2月期は、大型案件の一部が次の期にずれ、売上が予想にわずかに届かなかった。大企業向けのオンプレミス案件は金額が大きく、決算の期をまたぐと数字が振れやすい。
大株主が事業会社2社に偏る
伊藤忠グループ(約22%)と東芝グループ(約13%)で、合計3割台半ばを握る。安定株主の面もあるが、将来の売却や再編があれば、需給や経営の方針が変わりうる。外部の目が届きにくい側面もある。
公共向け事業の採算
自治体の標準化需要は追い風だが、案件は入札や仕様に左右され、利益率は民間より低くなりやすい。1,741自治体のうち約400団体に入っているが、残りの市場を取りに行く費用が先に出る。
今後の分かれ目
- クラウドの成長率が3割を上回って続き、リカーリング比率が7割を超えたら
- やや楽観・楽観の筋書きの確率を上げ、価値を見直す。
- 営業利益率が3割台半ばへ上がり、買収の償却と開発費を吸収したら
- 中立の利益率の置き方が低すぎるので、上の筋書きへ重みを移す。
- 買収した事業の減損が出たら
- 資本の使い方への評価を下げ、買収の効率を疑って確率を悲観寄りにする。
- 伊藤忠グループ・東芝グループが株を売る、または完全子会社化の提案が出たら
- 価格の底が変わる。提案の条件を本質価値と比べて判断する。
- 自社株買いが始まり、総還元性向が5割を上回ったら
- 還元の厚みを楽観の筋書きで少し上げる。
- Dr.Sum や帳票に組み込んだ AI エージェント機能が、金額で開示できる売上や受注として積み上がったら
- 楽観・やや楽観の数量を1.0倍超に直し、確率を上げて見直す。開示が無い間は楽観も数量1.0倍以下にとどめる。
見ておくもの
- クラウド売上の伸びと、リカーリング比率(目標75%に対する推移)
- 保守の継続率(93%台を保てるか)
- SVF・Dr.Sumの1社あたり単価の伸び(物価の3%を上回るか)
- 営業利益率(3割台に乗るか)
- 買収事業ののれんの減損の有無
- 大株主の保有比率の変化
倍率と資本コストの決め方
帳票とデータ活用に分け、AI エージェント代替の型(席・ライセンス課金。帳票は法対応で一部が残る)で数量・価格・利益率を置いた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k7.5%、g名目0〜−1%)に対する位置で置き、楽観〜中立は上限の9.5割、やや悲観は8.5割。悲観は稼ぐ力ではなく純現金+売れる資産の床で、のれんは数えない。今の株価や過去・同業の倍率は見ていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.18→13.33 倍・やや楽観 PER 11.18→13.33 倍・中立 PER 11.18→13.33 倍・やや悲観 PER 10→11.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。