結論
構造計画研究所ホールディングスは、建築物の構造設計や地震・災害リスクの解析から、製造業向けシミュレーションソフト、クラウドサービスまで手掛ける工学系の専門企業である。筆者の結論は、おおむね適正圏にあるものの、10年保有する株主にとって十分な安全域はない、というものだ。2026年6月期の売上高は約224億円、営業利益は約35億円まで伸びたが、その成長が今後も同じ形で続くとは考えない。市場が広がることと、この会社が同じ方法で利益を得られることは別の問題だからだ。
最大の強みは、建物や社会基盤の安全に関わる仕事を、長年蓄えた工学知と品質管理の仕組みで引き受けられることにある。大型建築物の構造解析や地震動評価では、結果を現実の設計や防災判断に反映し、説明責任を負う専門家が必要だ。この部分は単純なソフトウェア受託や情報提供より長く残る可能性が高い。一方、エンジニアリングコンサルティングにはシステム開発や分析業務も含まれ、その工数はAIエージェントによって減りうる。
もう一つの成長源であるクラウドには、RemoteLOCK、Twilio SendGrid、NavVisという魅力的な商品がある。しかし、既存の製品を国内に広める販売力と、顧客が10年後も高い料金を払い続ける独占力は同じではない。開示されている解約率や顧客別の契約継続年数だけでは、AI時代にも価格決定力が守られると証明できない。米国RemoteLock社への追加資金拠出も、事業投資の回収がまだ確定していないことを示す。
中立では、安全性に関わる専門業務が全体を支えるものの、受託開発の数量とソフトウェアの単価が圧迫される。10年後の営業利益は足元とおおむね同水準となり、積み上がる自己資本に対してROEは低下する。配当と自社株買いを含めれば株主に戻る価値は小さくないが、悲観側の損失も無視できない。長期保有に値する専門性はあるが、事業のすべてに同じ堀があるかのような値段は払えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社で買いたいのは「工学の知識」という抽象的な言葉ではなく、顧客が10年後にも対価を払わざるを得ない能力である。建物の耐震性を評価し、設計の安全性に責任を持ち、複雑な現場条件を判断する仕事には、その資格と経験を備えた専門家が残るだろう。会社が品質保証の組織を置き、特殊な案件の経験を積み重ねていることは、長く持つ株主にとって評価できる。
ただし、専門家の仕事が存在し続けることと、今の人数と時間単価のまま売上が続くことは違う。AIが解析やコード作成を短縮すれば、顧客は同じ設計結果を少ない時間で得られる。経営が成果に応じた報酬へ切り替え、同じ契約額を保つ実績を作れなければ、生産性の上昇は顧客に移転する。この違いを見落とすと、過去の高いROEをそのまま10年後へ延ばしてしまう。
クラウドも同じ基準で評価したい。RemoteLOCKの実際の錠前や施設運用への組み込みは乗り換えの手間を生むが、解約率、顧客獲得費用、機器更新時の継続率が分からなければ、その手間を永続的な独占力と呼ぶのは早い。SendGridやNavVisでは、海外の開発企業が持つ技術と国内販売会社が受け取る利益を区別する必要もある。売上が成長していても、価格決定権が自社にないなら高い永続価値は付けられない。
オーナー利益については、軽い設備投資負担とDOE10%の還元方針を評価する一方、追加投資の規律を重視する。2026年6月期の営業キャッシュフローは約23億円で、会計利益がおおむね現金化されていることは心強い。しかし、海外投資先への資金拠出が増えれば、その現金は自由な株主利益ではなくなる。専門性のある事業を保有したい気持ちはあるが、まだ証明されていないクラウドの堀と将来の高成長に前払いする理由はない。
何で稼ぐ会社か
事業の柱はエンジニアリングコンサルティングとプロダクツサービスである。2026年6月期のエンジニアリングコンサルティング売上高は約133億円で、建築物の構造設計、地震動・風況評価、防災、通信ネットワーク解析、製造技術の最適化、CAD・BIMを含むシステム開発を請け負う。プロダクツサービスは約86億円で、製造業向けCAE、建築構造解析ソフト、通信解析製品、クラウドサービスを販売する。残り約5億円には人材派遣や業務受託などが含まれる。
前者は顧客ごとの問題を解き、設計や報告書、システムとして納める商売である。2026年6月期末の受注残高は約67億円あり、専門家への依頼が一度で消えるわけではないことを示す。ただし、請負契約では想定を超えた工数が利益を圧迫するため、受注額そのものより、技術的な難しさと品質管理によってどれだけ利益を残せるかが大切だ。会社は構造品質保証センターとプロジェクト管理の品質保証組織を置き、成果物の責任を組織として引き受けている。
後者には、自社の解析技術を製品化する仕事と、海外の優れた製品を日本に導入する仕事が混在する。2026年6月期のプロダクツサービス売上の約60%はクラウド関連であり、RemoteLOCKの施設入退室管理、SendGridのメール配信、NavVisの空間データサービスが含まれる。クラウド事業の年間経常収益を年末時点の契約から換算したARRは約42億円で、実際の年度売上とは異なる指標だ。伸びていることは確かだが、各製品の顧客数、解約率、ライセンス別売上は十分に開示されていない。
以下の数量モデルでは、会社の正式な報告区分を、経済性の異なる五つの仕事に分けた。構造・防災案件数、技術者月数、契約年換算数は非開示のため、実際の顧客件数ではなく売上高と代表単価から推定した数量である。各区分の現在の売上と利益は、開示済みの三つの報告区分の合計に一致させている。数量の推定誤差、とりわけクラウドの異種製品を共通単位に換算した誤差は、この分析の大きな限界である。
優良さと弱いところ
最も守りの強い事業は、建築物の構造安全性や災害リスクに関する専門業務だ。数値解析の操作自体は自動化できても、構造物の前提条件を決め、現場条件を理解し、設計の妥当性を検証する責任まで簡単に移せるとは限らない。大学・研究機関との共同研究や、特殊建築物への対応実績も、単に技術者の人数を増やすだけでは再現できない強みである。ただし、全ての案件に独占権があるわけではなく、競合する設計会社や建設コンサルタントも高度な人材を抱えている。
財務面でも実績は良い。過去10年のROE中央値は約19.6%で、2026年6月期の営業利益率は15.8%と長期の最高圏にある。2016年6月期の純有利子負債は約46億円だったが、2026年6月期には現預金が借入金を約10億円上回る状態まで改善した。大規模な設備に資本を固定せず、専門家とソフトウェアに投資することで利益を生んできた点は評価できる。
一方、堀を会社全体で強いと認定するには証拠が足りない。RemoteLOCKには機器の設置と業務連携による乗り換えの手間があるが、低い解約率、規制による利用義務、法改正に伴う値上げ実績などの定量的な証拠が二つ以上そろっているわけではない。SendGridやNavVisは海外の技術供給者にも依存しており、会社がサービスの仕様や価格を完全に支配していない。専門技術者への高い給与も品質維持には有効だが、稼いだ付加価値の相当部分を人材に再配分する必要がある。
資本効率の核心は、今後追加する人員や買収先が従来と同じ利回りを稼げるかにある。最近の増益実績だけを見れば追加投資の効率は高く見えるが、持株会社化、海外出資、借入金の圧縮が重なり、厳密な増分ROICを一つの数字で断定できない。特にAIが工数を短縮する場合、社員一人の生産性が上がっても、顧客が支払う総額は減りうる。売上総利益と社員への還元の両方を確かめなければ、見かけの生産性改善を株主利益の改善と取り違える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場は2025年におよそ7.5兆円の規模があり、従来の業界予測では2030年に向けた名目成長が見込まれている。金融、製造、通信、公共分野で既存システムを更新する需要があるためだ。しかし、その市場規模は構造計画研究所が独占できる市場を意味しない。野村総合研究所、TIS、NTTデータ系企業、外資系コンサルタント、多数の中小開発会社が競争し、同社の受託開発部分の広義の市場シェアはごく小さい。
構造設計と防災では、国土強靱化、建築物の老朽化、地震や風水害への備えが需要を支える。建設コンサルタンツ協会による2023年度の会員企業の部門売上高は約1兆1,309億円だが、道路・河川分野を多く含み、民間建築の構造設計を中心とする同社の事業とは市場の範囲が異なる。したがって、これを分母とした厳密なシェアは算出できない。競合には日建設計、日本設計などの設計会社や、パシフィックコンサルタンツ、建設技術研究所などの技術系コンサルタントがあるが、個別の構造解析業務のシェアは非開示である。
製造業向け解析ソフトの比較可能な市場として、矢野経済研究所は2024年の国内機械系CAE市場を約1,042億円と見積もっている。同社の2026年6月期プロダクツサービスにおける製造業関連売上は、部門売上構成比26%から約22億円となる。単純な売上規模の比は約2%だが、販売代理商品やCAE以外の製品を含み、調査年も異なるため、正式なCAE市場シェアではない。競争相手はAnsys、Dassault Systèmes、Siemensなどの世界的な解析ソフト企業であり、規模の点では同社が優位とは言えない。
クラウド型入退室管理では、RemoteLOCKが宿泊施設、公共施設、不動産管理などに使われている。2024年には導入自治体が100を超えたと会社は公表したが、自治体数は設置台数や市場シェアの代わりにならない。PhotosynthのAkerunやbitkeyのbitlockなどとの競争もあり、全体市場と各社の同一基準によるシェアは確認できなかった。価格の参考になるのはRemoteLOCKの公開料金で、クラウド利用料は機器1台につき月額1,650~2,750円のプランが示されている。
今後10年の大きな変化は、IT需要の総額が増えても、人が操作する画面や開発工数への支出が増えるとは限らないことだ。AIエージェントは設計補助、コード生成、解析条件の調整、保守運用を担い、顧客自身が成果物を作れる範囲を広げる。建築安全の最終的な判断や責任は残るとしても、そのために必要な作業時間は減るだろう。専門判断への報酬へ移行できるかどうかが、業界全体の成長より重要な分岐点になる。
資本政策と M&A
経営は利益だけでなく人件費と福利厚生費を加えた「総付加価値」を重視し、中長期で年8%程度の成長を目標としている。2026年6月期の同指標の計画は130億55百万円だった。株主還元では連結DOE10%程度という数値目標があり、2025年の説明資料では配当性向50%程度も目安として示された。一方、複数年にわたる売上高、営業利益、ROE、自社株買い総額を一組として約束する中期経営計画の数値目標は確認できないため、これらについては数字の約束なしと扱う。
2026年6月期には年間約11億円の配当を実施し、増配も続けている。2026年8月には上限19万株、5億円の自己株式取得方針を公表した。配当と自社株買いは評価できるが、DOEは自己資本が増えるほど将来の現金支出も増えるため、成長投資と同時に続けられるかを見る必要がある。2027年6月期の会社予想は売上高243億80百万円、営業利益38億50百万円、純利益25億50百万円だが、これは単年度の見通しであって10年間の成長保証ではない。
投資先で注意したいのは米国RemoteLock社である。同社の議決権保有割合は36.2%で、2026年には追加の転換社債型資金拠出に関係する約3億円規模の持分法投資損失が問題となった。海外の先端製品を早く取り込める仕組みは強みだが、事業化のための追加資金が際限なく必要なら、既存株主の利益を損なう。会社が掲げる知識への再投資と、株主に帰属する余剰現金の間には明確な境界が必要だ。
現預金は約34億円あるものの、借入金も約24億円あり、差し引き約10億円にとどまる。投資有価証券約47億円には換金しにくい事業投資が含まれ、顧客前受金や未払費用にも資金が必要だ。現預金をそのまま余剰資産として利益価値に上乗せしない。上位10株主の持株比率は約33%で、極端な支配構造ではないものの、過去5年の還元実績だけで将来の余剰資金が全額株主に返るとも決めつけられない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造計画研究所の真価は、顧客にとって失敗が許されない問題を解く技術を持っていることにある。特殊建築物の構造設計、地震動評価、風況解析、製造工程の最適化は、一般的なIT受託よりも専門的な知識と品質保証を要する。老朽インフラの更新や災害対策への投資が続けば、優秀な技術者と実績を持つ会社への依頼は増える。大手の総合設計会社やコンサルタントと競争する市場で、狭い技術領域に特化してシェアを広げる余地もある。
AIは必ずしも敵ではない。解析条件の作成や報告書の準備が自動化されれば、専門家は安全性の判断や顧客との設計協議に多くの時間を使える。成果物への責任を引き受ける契約を維持できれば、同じ人員でより多くの難しい案件を処理し、利益率を高められる。研究機関と共同で技術を育ててきた経験は、この転換に対応するうえで価値がある。
クラウドにも目に見える強みがある。RemoteLOCKは物理的な鍵の設置を伴い、施設予約や運営システムと連携するため、単なる画面操作ソフトではない。NavVisは現場の三次元データ化、SendGridは大量メール配信の基盤として使われる。会社が新規技術を選び、日本市場へ定着させる目利き力を保てれば、個別製品の寿命を超えて事業を更新できる。配当と自社株買いによって利益が株主に返る仕組みも整っており、長く保有する理由は十分にある。
慎重な見方
最大の問題は、高収益の源泉が専門知識であると同時に、人が時間をかけて提供するサービスでもあることだ。2026年6月期のエンジニアリングコンサルティングは全社売上の約6割を占め、その中にはシステム開発やシミュレーション、意思決定支援が含まれる。AIエージェントがコードを生成し、解析結果を整理し、顧客自身が設計案を比較できるようになれば、従来の工数を根拠とする請求は通りにくくなる。専門的な最終判断は残っても、その前工程に必要だった人月は大きく減りうる。
プロダクツサービスの成長も、必ずしも強い堀の証明ではない。CAEでは世界的大手が研究開発と顧客基盤を持ち、クラウドでは他社のサービスを国内に流通させる部分がある。顧客が画面ではなくAIエージェントを通じて業務を実行すれば、利用者IDや操作機能に付けていた価格は低下する。RemoteLOCKの物理的な機器は残っても、管理ソフトや流通手数料の競争は激しくなりうる。
さらに、米国RemoteLock社への出資は、利益を生む既存事業の現金が未成熟な海外事業へ流れる経路にもなる。会社が継続的な投資を求められる場合、DOE目標があっても配当を増やせる余力は限られる。高給の専門家を維持する固定費も、売上減少に即応して減らすのは難しい。過去最高圏の利益率とROEを見て安定企業と判断すると、収益モデルそのものが変わる局面を過小評価する。
どちらに重みを置いたか
専門性と財務規律については前向きに評価するが、全事業に強い価格決定力があるとは認めない。中立では建築・防災の需要が残るものの、受託開発と業務ソフトの数量が縮み、過去の高いROEは薄れる。確率は上側30%、下側38%とやや慎重側に寄せた。理由はAIリスクを確率で重複計上するためではなく、海外投資の回収とクラウドの契約継続率を十分に確認できないためである。現在の評価はおおむね適正圏だが、安全域を十分に備えた水準とは判断しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 3,507 円367 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1,268 円133 億円)。 今の値に割り戻すと 2,686 円281 億円、今との差 −4.3%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,213 円858 億円 | 2,105 円220 億円 | +267.4% | +16.3% | 1,032 円108 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,590 円584 億円 | 1,818 円190 億円 | +163.8% | +12.1% | 1,482 円155 億円 |
| 中立 | 32% | 3,594 円376 億円 | 1,483 円155 億円 | +80.8% | +7.4% | 1,625 円170 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,324 円138 億円 | 717 円75 億円 | −27.3% | −3.7% | 490 円51 億円 |
| 悲観 | 14% | 712 円74 億円 | 335 円35 億円 | −62.7% | −10.7% | 147 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,507 円367 億円 | 1,268 円133 億円 | +70.0% | +6.4% | 4,774 円499 億円 |
今の株価時価総額 2,808 円294 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 防災と構造安全の需要が広がり、専門性が利益率に転換される 利益 52 億円 · PER 15.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,213 円858 億円
巨大地震への備え、風力発電設備の設計、既存建築物の安全性評価が長期の仕事になる。構造計画研究所は複雑な案件を引き受ける実績を積み、総合設計会社や建設コンサルタントとの競争で専門領域の受注を増やす。大学との研究成果も実務に取り込まれ、工学上の判断と品質保証の対価が高く評価される。
AIは解析条件の下書きや報告書作成を短縮するが、会社は成果と責任に対して報酬を受け取る契約を定着させる。そのため人月型業務の量は増えないものの、熟練技術者が難しい案件に集中することで利益率は高まる。クラウドではRemoteLOCKの機器導入先が継続利用し、NavVisやSendGridも既存顧客を維持する。ただしクラウドの契約数量がAIによって伸び悩むことは避けられない。
海外投資先への追加支援は限定的となり、DOEを意識した配当と自社株買いが継続する。借金への依存を抑えながら、2036年には高い専門性と資本効率を併せ持つ企業としての地位を確立する。
- 構造設計・防災・現実の安全性に関わる工学業務:数量 574(年間専門案件数相当(件、非開示のため推定))× 価格 0.30(専門案件1件当たりの売上高(億円、推定))→ 売上 172 億円・営業利益 76 億円。案件数量は現在の1.35倍、平均単価は1.50倍。防災・構造安全分野で対象市場の拡大と専門領域のシェア獲得が続き、営業利益率44%。
- 受託システム開発・データ解析・一般コンサルティング:数量 1,800(年間請求技術者月数相当(人月、非開示のため推定))× 価格 0.03(技術者月当たりの実現売上高(億円、推定))→ 売上 58 億円・営業利益 23 億円。AIエージェント代替で工数数量0.90倍。成果責任を伴う高単価契約への移行により価格1.34倍、利益率40%。
- クラウドサービス・RemoteLOCK・SendGrid・NavVis:数量 25,343(年間契約換算数(年契約相当、複数サービスを統一した推定単位))× 価格 0.00(契約換算1件当たり年間売上高(億円、推定))→ 売上 58 億円・営業利益 14 億円。席・操作画面型の数量は0.98倍まで。機器連携の継続価値が残り、単価1.15倍、利益率24%。
- CAE・建築解析・通信解析などの製品ライセンス:数量 3,332(年間ライセンス・利用契約換算数(件、推定))× 価格 0.01(ライセンス契約換算1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 39 億円・営業利益 9 億円。AIで操作工数は減るためライセンス数量0.98倍。解析エンジンの価値を残し、単価1.15倍、利益率24%。
- 人材派遣・業務受託などのその他事業:数量 76.5(年間請求人員相当数(人年、推定))× 価格 0.08(人員1人年相当の売上高(億円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。人員数量0.90倍、単価1.34倍。高付加価値業務に集中することで利益率20%。
倍率:10年後ROEは51.68÷259で約19.95%。k7.0%、通常の堀として超過ROEの残る割合を2分の1とし、RONICは約13.98%。AI代替を織り込んだ全社のg_long1.2%を使い、正当化PER=(1−0.012÷RONIC)÷(0.07−0.012)で約15.71倍となる。過去や現在の市場PERから決めず、算式の上限を採用した。余剰現金の自動加算とは別に、この時価総額へ現預金や投資有価証券を追加していない。
確率:構造・防災の専門案件で大きなシェア上昇を続け、品質上の優位を維持したまま社員一人当たりの成果額を高める必要がある。さらに海外クラウド投資の追加損失が抑えられるという複数条件が必要であるため、10%にとどめる。AI関連の新規売上が金額で開示されていないので、人月・席課金部分の数量は楽観でも現在を超えさせない。
やや楽観 20% 専門的な設計が成長し、ソフトウェアの減速を吸収する 利益 35 億円 · PER 15.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,590 円584 億円
国土強靱化や老朽化した建築物の更新が続き、特殊な構造解析と災害評価の仕事が増える。構造計画研究所は過去の実績と大学・研究機関との連携を生かし、価格競争だけでは選ばれない案件を維持する。構造・防災分野の収益性は高まり、全社利益の中心として存在感を強める。
システム開発ではAIによる工数短縮が進むが、案件の難しさに応じた価格設定へ一部転換できる。クラウドはRemoteLOCKの機器設置と施設運用の連携が支えとなり、契約量の減少を比較的小さく抑える。製造業向けCAEでは世界的な大手との競争が続き、ライセンスの数量は伸びないものの、特定の物理解析分野に強みが残る。
米国事業への資本投入は節度ある水準で収まり、増配と自社株買いが継続する。10年後の利益は現在を明確に上回るが、その成長はクラウドの市場拡大よりも、守りの強い工学業務と資本配分の改善によって達成される。
- 構造設計・防災・現実の安全性に関わる工学業務:数量 502(年間専門案件数相当(件、非開示のため推定))× 価格 0.28(専門案件1件当たりの売上高(億円、推定))→ 売上 142 億円・営業利益 61 億円。専門案件数量1.18倍、価格1.42倍。防災・構造安全でシェアを小幅拡大。
- 受託システム開発・データ解析・一般コンサルティング:数量 1,500(年間請求技術者月数相当(人月、非開示のため推定))× 価格 0.03(技術者月当たりの実現売上高(億円、推定))→ 売上 48 億円・営業利益 17 億円。人月数量0.75倍、単価1.32倍。成果型の契約への転換が部分的に成功。
- クラウドサービス・RemoteLOCK・SendGrid・NavVis:数量 23,274(年間契約換算数(年契約相当、複数サービスを統一した推定単位))× 価格 0.00(契約換算1件当たり年間売上高(億円、推定))→ 売上 53 億円・営業利益 12 億円。クラウド契約年換算数量0.90倍、単価1.14倍。物理機器の設置基盤が維持に寄与。
- CAE・建築解析・通信解析などの製品ライセンス:数量 3,060(年間ライセンス・利用契約換算数(件、推定))× 価格 0.01(ライセンス契約換算1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 35 億円・営業利益 7 億円。ライセンス数量0.90倍、単価1.14倍。解析エンジンの差別化を維持。
- 人材派遣・業務受託などのその他事業:数量 63.8(年間請求人員相当数(人年、推定))× 価格 0.08(人員1人年相当の売上高(億円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。AI代替で数量0.75倍、単価1.30倍。残る高度な業務へ集中。
倍率:ROEは35.49÷208で約17.06%。k7.0%、通常の堀で残る割合2分の1、RONIC約12.03%。g_long1.2%による正当化PERは約15.52倍となる。事業の実力と資本コストから決めた値であり、現在のPERや同業の相場倍率は使用していない。
確率:特殊建築物の構造設計や防災評価は引き続き必要であり、既存の技術基盤を使って市場内の地位を改善する余地がある。ただしクラウドの高成長をそのまま延長せず、受託開発やライセンス数量にはAI代替による縮小を認めるため、20%とした。
中立 32% 安全性を担う事業は残るが、人月・席課金の成長が止まる 利益 23 億円 · PER 15.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,594 円376 億円
建物の耐震性評価や災害リスクの把握は2036年にも必要とされ、会社の技術と品質保証の仕組みは維持される。ただし国内の建築需要が一様に伸びるわけではなく、人口減少と競争の影響を受けるため、専門案件数の増加は小幅にとどまる。価格は物価の上昇に合わせて改定できるものの、技術者への給与支払いも増える。
受託システム開発や一般的なコンサルティングでは、AIエージェントがコード生成、解析準備、情報整理を担う。顧客は同じ成果を少ない工数で購入できるため、従来の人月売上は縮小する。RemoteLOCKの物理的な鍵は残るが、クラウドのID課金や管理画面の価値には競争と自動化の圧力がかかる。CAEソフトも解析自体は必要でありながら、利用者が購入する席数と実現単価は伸び悩む。
2027年6月期には会社予想に沿った成長を達成しても、その後は成長の中身が変わる。2036年の営業利益は足元とほぼ同水準となり、自己資本の積み上がりに対してROEは低下する。DOEを意識した配当は続くが、追加的な投資の収益率は過去より低くなる。
- 構造設計・防災・現実の安全性に関わる工学業務:数量 446(年間専門案件数相当(件、非開示のため推定))× 価格 0.27(専門案件1件当たりの売上高(億円、推定))→ 売上 120 億円・営業利益 50 億円。専門案件数量1.05倍、価格1.34倍。需要が安定する一方、競争で数量の大幅成長はない。
- 受託システム開発・データ解析・一般コンサルティング:数量 1,300(年間請求技術者月数相当(人月、非開示のため推定))× 価格 0.03(技術者月当たりの実現売上高(億円、推定))→ 売上 40 億円・営業利益 12 億円。AIエージェント代替の人月型として数量0.65倍、価格1.28倍。成果報酬への移行は限定的。
- クラウドサービス・RemoteLOCK・SendGrid・NavVis:数量 21,205(年間契約換算数(年契約相当、複数サービスを統一した推定単位))× 価格 0.00(契約換算1件当たり年間売上高(億円、推定))→ 売上 47 億円・営業利益 9 億円。操作画面・ID課金の代替により契約年換算数量0.82倍、価格1.10倍。
- CAE・建築解析・通信解析などの製品ライセンス:数量 2,822(年間ライセンス・利用契約換算数(件、推定))× 価格 0.01(ライセンス契約換算1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 32 億円・営業利益 6 億円。解析ソフトの席数や使用契約が減り、数量0.83倍、価格1.12倍。
- 人材派遣・業務受託などのその他事業:数量 55.3(年間請求人員相当数(人年、推定))× 価格 0.08(人員1人年相当の売上高(億円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。BPO・派遣の数量0.65倍、価格1.25倍。残存業務に集約する。
倍率:2036年ROEは22.84÷180で約12.69%。k7.0%、通常の堀として超過ROEの2分の1が新規投資に残り、RONICは約9.85%。長期gはAIエージェント代替を反映した名目1.2%であり、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)は約15.14倍となる。現在の株価やPERから逆算していない。報告利益は現金利息を含む全社利益であり、資産と利益の二重計上を避ける。
確率:構造設計・防災の需要は持続し、クラウド事業も短期的には会社予想どおり伸びる可能性がある。一方、10年間では人月と画面操作型ライセンスにAI代替が及ぶと考える。専門業務の伸びがその減少をおおむね補うが、全社ROEを過去の高水準に保つほどではないため、中心の確率を32%とした。
やや悲観 24% AI代替と海外事業の不振で、利益率の優位が薄れる 利益 8 億円 · PER 13.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,324 円138 億円
システム開発と一般的な技術コンサルティングでは、AIエージェントを利用する顧客の内製化が進み、必要工数が大幅に減る。会社は高難度案件を残すが、人月型の仕事を成果報酬へ十分に転換できない。建築・防災分野でも競合する設計会社が解析の自動化を進め、価格改定は物価に追いつかなくなる。
クラウドではRemoteLOCKの機器設置先が残るものの、施設運営ソフトとの機能競争が激しくなる。SendGridやNavVisの国内展開も海外供給元の価格政策に左右される。CAE製品では顧客がAI経由で解析エンジンを呼び出すようになり、従来の席数や操作画面を前提にした契約の価値が低下する。
米国投資先への支援で追加の現金が必要となり、経営は採用と管理費の削減を進める。しかし固定的な給与、品質保証、施設費用が残るため、売上の減少が利益へ大きく波及する。DOE10%を機械的に守ることは難しくなり、配当と自社株買いを減らして財務の維持を優先する。
- 構造設計・防災・現実の安全性に関わる工学業務:数量 395(年間専門案件数相当(件、非開示のため推定))× 価格 0.24(専門案件1件当たりの売上高(億円、推定))→ 売上 95 億円・営業利益 33 億円。専門案件数量0.93倍、価格1.20倍。競争により物価3%を全て転嫁できない。
- 受託システム開発・データ解析・一般コンサルティング:数量 1,100(年間請求技術者月数相当(人月、非開示のため推定))× 価格 0.03(技術者月当たりの実現売上高(億円、推定))→ 売上 32 億円・営業利益 9 億円。人月数量0.55倍、価格1.20倍。顧客内製化が強く進行。
- クラウドサービス・RemoteLOCK・SendGrid・NavVis:数量 18,102(年間契約換算数(年契約相当、複数サービスを統一した推定単位))× 価格 0.00(契約換算1件当たり年間売上高(億円、推定))→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。契約年換算数量0.70倍、名目単価は据え置き。
- CAE・建築解析・通信解析などの製品ライセンス:数量 2,380(年間ライセンス・利用契約換算数(件、推定))× 価格 0.01(ライセンス契約換算1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。ライセンス数量0.70倍、名目単価は据え置き。
- 人材派遣・業務受託などのその他事業:数量 46.8(年間請求人員相当数(人年、推定))× 価格 0.07(人員1人年相当の売上高(億円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。BPO・派遣数量0.55倍、価格1.10倍。
倍率:ROEは約4.28%と資本コスト7.0%を下回るため、高い成長価値を認めない。稼ぐ力の上限は1÷kで約14.29倍となる。13.9倍はこの範囲内であり、時価総額は7.88億円×13.9倍で約109.5億円。資産を清算する場合の保守的な床約70億円より大きく、現在の株価や過去の市場PBRを参照していない。
確率:システム開発の工数減少、クラウドの利用単価低下、海外投資先の追加資金需要が重なる場合である。専門性の高い構造設計事業が会社を支えるため、直ちに企業存続が危ぶまれるとは考えない。人件費と本社費が売上ほど早く減らない点を考慮し、24%とした。
悲観 14% 工数商売が崩れ、投資損失と固定費負担が残る 利益 −12 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 712 円74 億円
AIエージェントが解析、設計補助、コード作成、情報整理の大半を処理するようになり、従来の人月請求が成り立たなくなる。顧客は外部の専門会社へ最終確認を依頼しても、作業全体への支払額は大幅に減らす。構造・防災の仕事も残るが、競合する設計会社が自動化と低価格を武器に受注を奪い、会社は案件数と価格決定力を失う。
クラウドではRemoteLOCKの物理的な機器が一部残るものの、管理画面は他の施設運営ソフトに吸収される。SendGridやNavVisでも販売条件が不利になり、国内展開による利益が縮小する。CAEソフトの利用契約も世界的大手との競争とAIによる席数削減で半分以下となる。海外投資先では追加支援や評価損が発生し、新たな事業の柱を育てられない。
経営は人員と本社費を削減するが、専門性を維持するための人件費、品質保証、施設負担が残り、営業赤字に転落する。後半には配当を停止し、手元資産の換金と借入金の返済を優先する。企業が清算されるとは限らないため、残る稼ぐ力に高い倍率を付けず、換金可能な資産を保守的に評価する。
- 構造設計・防災・現実の安全性に関わる工学業務:数量 264(年間専門案件数相当(件、非開示のため推定))× 価格 0.22(専門案件1件当たりの売上高(億円、推定))→ 売上 57 億円・営業利益 16 億円。専門案件数量0.62倍、価格1.08倍。最終判断は残るが受注と価格決定力を失う。
- 受託システム開発・データ解析・一般コンサルティング:数量 700(年間請求技術者月数相当(人月、非開示のため推定))× 価格 0.03(技術者月当たりの実現売上高(億円、推定))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。人月数量0.35倍、価格1.05倍。工数に基づく契約の大半が消える。
- クラウドサービス・RemoteLOCK・SendGrid・NavVis:数量 10,344(年間契約換算数(年契約相当、複数サービスを統一した推定単位))× 価格 0.00(契約換算1件当たり年間売上高(億円、推定))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。契約年換算数量0.40倍、単価0.95倍。サービスの代替と値下げが重なる。
- CAE・建築解析・通信解析などの製品ライセンス:数量 1,360(年間ライセンス・利用契約換算数(件、推定))× 価格 0.01(ライセンス契約換算1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。ライセンス数量0.40倍、単価0.90倍。
- 人材派遣・業務受託などのその他事業:数量 34.0(年間請求人員相当数(人年、推定))× 価格 0.06(人員1人年相当の売上高(億円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。請求人員0.40倍。採用・雇用調整の遅れから赤字。
倍率:2036年の純利益が赤字のためPERを適用しない。過去の市場PBRではなく、現在の自己資本114.5億円を基礎とし、その65%を回収可能な価値とする。114.5億円×0.65は約74.4億円であり、保守的に試算した純現金と売却可能資産の床70億円を上回る。2036年の自己資本124億円へ0.65倍を掛けたものではない。10年間の純利益は当初の黒字から後半の赤字へ移行するため、期末赤字が続いても期間合計では一定の利益が残り、配当35億円を引いた後の自己資本と矛盾しない。
確率:AIによる受託開発・ソフトウェアの価格体系の変化に加え、構造設計の競争激化、海外出資の損失、固定費削減の遅れが重なる複合的な悪化を想定する。建築安全の専門性が全て消えるわけではないため、倒産を基本形にはしない。事業の一部が構造的に負ける可能性を14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
構造設計・防災・現実の安全性に関わる工学業務
建築物の構造設計、地震動・風況解析、災害リスク評価など、成果物の品質と現実の安全性に専門家が責任を負う案件。建設・防災の専門業務として扱い、AIが補助作業を代替しても最終判断の需要は残ると考える。
| 数量年間専門案件数相当(件、非開示のため推定) | 価格専門案件1件当たりの売上高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 425 | 0.20 | 85 | 34 |
| 10 年後 中立 | 446 | 0.27 | 120 | 50 |
取り方:会社の正式なエンジニアリングコンサルティング売上133.03775億円から、構造設計・地震・防災・風力関係を約64%の85億円と仮定した。会社はこの内訳も案件件数も公表していない。代表的な専門契約を平均2,000万円と推定し、年間425件相当に換算したもので、実際の受注件数ではない。残りは受託開発等に配分する。セグメント利益は報告区分の52.53814億円のうち34億円を推計配賦した。構造設計市場の厳密なシェアは非開示であり、建設コンサルタンツ協会の会員売上1兆1,309億円は対象業務が異なるため分母に使わない。会社の2026年6月期有報と決算補助資料、建設コンサルタンツ協会の統計を参照した。
受託システム開発・データ解析・一般コンサルティング
CAD・BIMを含む開発、社会シミュレーション、通信ネットワーク解析、意思決定支援など、技術者の人月と知的作業で売上を得る部分。AIエージェント代替の人月・工数型を適用する。
| 数量年間請求技術者月数相当(人月、非開示のため推定) | 価格技術者月当たりの実現売上高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2,000 | 0.02 | 48 | 19 |
| 10 年後 中立 | 1,300 | 0.03 | 40 | 12 |
取り方:公式のエンジニアリングコンサルティング133.03775億円から専門的な構造・防災案件の推定85億円を除いた48.03775億円を人月型とする。高難度の専門受託とシステム開発を混ぜた平均請求単価を1人月約240万円と仮定し、年間約2,000人月相当に換算した。会社は売上の細目別人月と単価を開示していないため、この人月数は実績ではない。営業利益18.53814億円は報告区分利益の残額であり、全社利益から恣意的に作った数字ではない。AIエージェント代替の人月型として、中立の2036年数量を現在の0.65倍、単価を1.28倍とする。国内ITサービス市場約7.5兆円に対する規模は0.1%未満だが、広義の市場との比較であって個別業務の正式なシェアではない。
クラウドサービス・RemoteLOCK・SendGrid・NavVis
施設入退室管理、メール配信、三次元空間データなど、クラウド契約と機器・導入支援を組み合わせて収益を得る部分。物理的な鍵の継続利用は認めるが、クラウドの操作画面とID課金にはAIエージェント代替を適用する。
| 数量年間契約換算数(年契約相当、複数サービスを統一した推定単位) | 価格契約換算1件当たり年間売上高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25,860 | 0.00 | 52 | 10 |
| 10 年後 中立 | 21,205 | 0.00 | 47 | 9 |
取り方:会社の2026年6月期決算補助資料で、プロダクツサービス売上86.19910億円の60%がクラウド関連と示されているため、約51.72億円を計上した。1年契約相当20万円という共通の換算単価を設け、約25,860契約年に換算した。RemoteLOCKの実際の機器数やSendGridのアカウント数を表す数字ではなく、異なる課金方式を集計するための推定である。RemoteLOCKの公式料金では機器1台当たり月額1,650~2,750円のプランがあり、別途機器代と施工費が必要である。クラウドARR約42.18億円は期末時点の年換算経常収益であり、年間売上51.72億円とは混同しない。個別サービスの市場シェア、解約率、契約当たりの実単価が非開示のため、AIリスク上は記録の正本型ではなく業務SaaS・操作画面型とし、中立数量0.82倍、単価1.10倍とする。
CAE・建築解析・通信解析などの製品ライセンス
製造業向けの熱流体・粒子・粉体解析、建築・地盤解析、電波伝搬解析、関連製品のライセンス販売と保守。物理法則に基づく解析エンジンの価値は残るが、席課金や操作画面を通じた利用にはAIエージェント代替が働く。
| 数量年間ライセンス・利用契約換算数(件、推定) | 価格ライセンス契約換算1件当たり売上高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 3,400 | 0.01 | 34 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,822 | 0.01 | 32 | 6 |
取り方:プロダクツサービス86.19910億円からクラウド構成比60%を控除した40%を製品ライセンス等とする。公式の売上構成図では製造業関連26%、通信関連5%などが示されるが、それぞれのライセンス本数と単価は非開示である。平均年間売上を約101万円と仮定して3,400契約相当に換算した。営業利益はプロダクツサービス全体15.88619億円からクラウド部分の推計9.8267億円を引いた額である。矢野経済研究所の2024年国内機械系CAE市場約1,042億円に対して、製造業関連売上約22億円は約2%に相当するが、対象商品と年度が一致しないため正式な市場シェアではない。中立の数量0.83倍、単価1.12倍は、競合製品とAIエージェントが操作画面や席課金を置き換える圧力を反映している。
人材派遣・業務受託などのその他事業
人材派遣、顧客向け作業支援、事務系BPOなど。人員配置や工数に収益が依存する部分が中心であり、AIエージェント代替の人月・BPO型を適用する。
| 数量年間請求人員相当数(人年、推定) | 価格人員1人年相当の売上高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 85.0 | 0.06 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 55.3 | 0.08 | 4 | 1 |
取り方:有価証券報告書のその他事業売上5.29552億円、セグメント利益1.24117億円を使用した。その他部門の従業員数は125名だが、全員が通年請求対象ではないため、稼働率や支援人員を考慮した年間85人年相当を仮定した。1人年当たり売上は約623万円となる。正式な請求人員数と契約単価は非開示である。AIエージェント代替に該当するBPO・人材派遣型として、中立数量を0.65倍、単価を1.25倍とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替
会社の売上の相当部分は、技術者が顧客ごとの問題を解析し、システムや報告書を作ることで得られる。AIエージェントが設計補助、コード作成、解析条件の整理、保守運用を担えば、顧客が購入する工数は減る。専門家の最終判断は残っても人月売上は維持されるとは限らず、クラウドのID課金や操作画面の価値にも同じ圧力がかかる。数量と単価の両方を確認する必要がある。
大型請負案件の品質事故と採算悪化
構造設計やシステム開発には複雑な請負契約があり、前提条件の誤り、設計変更、追加作業、納品物の品質問題が生じると利益を損ないうる。特に建築物の安全性に関する欠陥は損害賠償だけでなく、長期の信頼と受注能力を傷つける。品質保証センターを整えていることは強みだが、その存在自体が重大事故の可能性をゼロにするわけではない。
RemoteLOCKなど海外出資先への追加資本負担
米国RemoteLock社への出資は、国内で成長するクラウド製品の技術供給元との関係を深める効果を持つ一方、投資先の資金繰りを支える負担にもなる。2026年の追加資金拠出と投資損失は、その回収が確実ではないことを示した。海外事業への支援が続けば、設備投資の軽い本業が生んだ現金を株主に返す余力が失われる。
クラウドの顧客継続率と価格決定力の不透明さ
プロダクツサービスの約6割を占めるクラウドの売上が成長していることは確認できるが、RemoteLOCK、SendGrid、NavVisそれぞれの顧客数、解約率、契約単価、粗利益率は十分に開示されていない。物理的な機器や業務連携による乗り換えの手間はあるものの、長期の値上げ力を定量的に証明するには足りない。販売元と海外技術供給者の交渉力の違いも収益を左右する。
専門人材の固定費と給与上昇
工学知を競争力にするには、高度な技術者の採用、育成、維持が欠かせない。2026年6月期の連結社員平均給与は約1,066万円で、前年からも大きく上昇している。高度な専門家への還元は品質維持に必要だが、受託開発や解析の販売額がAIによって減れば、人件費の調整が遅れて利益率が急低下する。物価上昇だけで利益が拡大する事業ではない。
競合の規模と海外製品への依存
構造設計では総合設計会社や建設コンサルタント、CAEではAnsys、Dassault Systèmes、Siemensなどの大手、スマートロックではAkerunやbitlockなどが競争相手となる。会社が専門領域で優れた実績を持っていても、世界的な研究開発費や営業網では大手に劣る。海外製品の日本展開では、供給元が販売条件や製品戦略を変更するリスクもある。
今後の分かれ目
- 構造・防災案件の件数、受注額、粗利益率がそろって数年連続で伸びたら
- AIに代替されにくい専門判断の価値が高まっている証拠となる。構造・防災部分の数量と価格決定力を引き上げ、やや楽観以上の筋書きに重みを移す。単に受注額だけが増え、人件費の上昇で粗利益率が下がる場合は評価しない。
- 受託開発の技術者一人当たり売上が減り、成果報酬型の契約比率も増えなければ
- AIエージェント代替が顧客への値下げとして現れていると判断する。中立の人月数量と利益率を引き下げ、やや悲観側の比重を増やす。技術者の生産性だけが高まっても、顧客から受け取る金額が減るなら株主価値は上がらない。
- クラウドのARR成長に加えて低解約率と継続的な値上げの実績が開示されたら
- クラウドの堀を再評価する。特に解約率5%未満、複数年の切り替え期間、規制対応や独自データに基づく継続利用の証拠が二つ以上そろえば、該当する部分に限って記録の正本型への変更を検討できる。売上の成長率だけでは判定を変えない。
- 米国RemoteLock社で営業キャッシュフローの黒字化が定着し、追加資金支援が不要になったら
- 海外投資の回収可能性と資本配分の評価を引き上げる。継続的な赤字や転換社債の追加拠出が続く場合は、余剰現金の株主帰属価値を下げ、やや悲観・悲観側の確率を見直す。
- 連結DOE10%程度の方針に沿う増配と自社株買いが続き、株式数が5年間で5%以上減ったら
- 現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直す余地が生じる。ただし事業利益を犠牲にした還元や、高い値段での自社株買いは価値創造とは限らないため、事業投資後の自由現金との整合を確認する。
- 2027年以降の売上高は伸びても、営業利益率とROEが数期続けて低下したら
- AI代替による値下げ、人件費への付加価値の移転、海外出資の損失を切り分けて調べる。構造・防災の利益率まで低下する場合は、会社の主要な堀が弱くなった可能性を重く見る。単年度の会計上の損失だけなら継続性を確認してから反映する。
見ておくもの
- エンジニアリングコンサルティングの受注残高約67億円と、受注高・売上総利益率の推移
- 構造設計・防災とシステム開発の売上構成比、請求工数、成果報酬型契約の開示
- クラウドARR約42億円の成長率と、RemoteLOCK・SendGrid・NavVis別の契約継続率
- RemoteLOCKの累積設置台数、導入施設数、機器当たり単価と解約率
- 米国RemoteLock社およびKoreLock社の営業キャッシュフローと追加出資額
- 総付加価値の年8%程度の成長目標と、営業利益・人件費への配分
- DOE10%程度の維持、配当総額、自社株買い、期末の発行済株式数から自己株式を除いた株数
- プロダクツサービスのクラウド売上構成比と、CAE製品のライセンス契約数量
- 営業利益率、ROE、営業キャッシュフロー、借入金および投資有価証券の変化
倍率と資本コストの決め方
評価の出発点は2026年6月期の報告セグメント別売上133.04億円、86.20億円、5.30億円と、各セグメントの利益である。非開示の細目については、構造・防災の案件数、人月、クラウド契約年換算数、解析ソフトのライセンス数を推定し、数量と名目単価から2036年の売上を作った。物価3%は価格だけに反映し、AI代替は受託工数と席・操作画面型サービスの数量、価格、2036年以後のg_longに反映した。AIによる同じ先細りを資本コストの寿命項目へ重ねていない。
本社費は2026年の約34.26億円を起点とし、2036年の中立では人件費の物価上昇を考慮しながら業務効率化を織り込んだ43.5億円とした。既存設備の減価償却を一律に物価倍する扱いはせず、更新設備の取得価額上昇と固定費の残存を考慮した。PERは長期g1.2%、資本コスト7.0%、各筋書きのROEから計算したRONICで決めた。現在の約295億円という時価総額や、過去・同業の市場倍率は倍率の決定に使っていない。悲観では現在の自己資本と換金可能資産を別々に点検し、将来の蓄積自己資本へ床のPBRを掛けていない。2027年4月以降に始まる年度からの新リース会計による表示変更は、今と同じ賃料費用ベースにそろえて比較する。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の資本コスト7.5%に、営業利益の循環の小ささによるマイナス0.5%を加味した7.0%。海外投資の成否やAI代替の個別リスクを追加の上乗せ金利にせず、事業数量、利益率および筋書きの確率で扱う。