結論
イルグルムは、広告効果測定の「アドエビス」と電子商取引基盤「EC-CUBE」を核に、ECサイトの構築・運営、物流、AIレコメンドまで事業を広げた会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。広告計測データには長く残る価値があるものの、買収で増えた売上を株主の利益に変える実績がまだ十分ではなく、現在の時価総額約35億円に明確な安全域は見いだしにくい。
評価すべきなのは、広告の成果を測るデータそのものだ。アドエビスは累計導入1万1,000件、月間16億リクエストという実績を持つ。2026年にはAIエージェントが計測データを直接参照できる仕組みの先行提供も始めた。分析画面や報告書の作成が自動化されても、測定結果の信頼性を維持する基盤には需要が残りうる。これは単なる操作型SaaSと分けて評価したい強みである。
ただし、会社全体が同じ強みを持つわけではない。新しいキャンペーン管理ソフト、広告運用支援、EC構築の受託業務は、AIエージェントによる自動化や顧客の内製化に直接さらされる。EC-CUBEには利用店舗と開発者の裾野があるが、ソフト自体は無料のオープンソースであり、店舗数の多さがそのまま料金決定力にはならない。シルバーエッグのAIレコメンドは既に収益を生む製品だが、買収後の収益回復はまだ検証途中だ。
2025年9月期は売上49.3億円、営業利益2.8億円に対し、買収子会社の減損などで最終赤字となった。2026年9月期の会社予想は売上59.5億円、営業利益3.8億円、純利益2.7億円である。しかし、2026年6月末には大型買収に伴って借入金が増え、自己資本比率は前年末の約52%から約33%へ下がった。売上の拡大だけで財務の安全性が高まったとは言えない。
10年後の中立では、広告計測の契約数が緩やかに減り、EC構築の工数も縮むと考える。一方、実際の商品の発送を担う物流や、EC-CUBEの決済連携などには需要が残る。中立の売上は約62億円、営業利益は約6.4億円であり、現在の会社予想からの利益改善は認める。それでも、買収失敗と技術代替の下振れを併せて考えると、確率加重の価値は現在の時価総額を下回る。長期保有に必要なのは、売上100億円への期待より、買収後の利益率と現金創出力が着実に改善する証拠である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に確かめるべきなのは、10年後も顧客がお金を払い続ける理由である。広告そのものは景気に左右されるが、広告費を使う限り成果を正しく測る必要がある。アドエビスが持つ計測履歴と顧客の長期利用は、簡単に複製できない価値だ。AIが分析画面の代わりに報告書を書いても、元となる測定データを取得して検証する役割は消えない。この部分だけを独立した事業として所有できるなら、一定の魅力がある。
問題は、その利益が買収や新事業へ繰り返し投じられることである。既存のソフトが稼いだお金を、低収益の受託開発や運営業務に移すと、連結売上は伸びても株主の富は増えない。2025年の減損は、買収先の将来利益を高く見積もりすぎた可能性を示した。2026年の大型買収は、同じ過ちを繰り返すのか、それとも顧客との接点を広げて利益を生むのかを試す新たな判断である。
本来、アドエビスのような継続課金型ソフトには、大きな工場や在庫を抱えずに現金を生む利点がある。しかし、連結には物流、制作、受託開発が加わり、必要な運転資金と人手が増えている。ソフト開発の人件費を削れるという理由だけでAIの利益改善を見込むことも危うい。顧客自身が同じ技術で業務を内製化し、発注量を減らす可能性があるからだ。
筆者は、現在の会社を強い堀のある単一ソフト企業ではなく、優れた計測製品を核にした再編途上の企業と見る。現在の株価は、計測基盤が一定の競争力を保ち、買収した事業も少しずつ収益を改善する将来を相応に織り込んでいる。資本コストを超える再投資利益率が確認できるまでは、将来売上の大きさより利益の質を重く見たい。中立の10年後時価総額は約51億円へ伸びても、その価値を現在に割り引き、失敗する筋書きも考えれば十分な安全域にはならない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、広告主が支払う継続利用料である。アドエビスは、どの広告が購入や問い合わせにつながったかを測定する。広告主にとって広告費の配分を決める基礎データであり、媒体をまたいで履歴を比較できることが価値になる。CAPiCOやアドレポは媒体へのデータ送信、集計、報告を支える。2026年に先行提供を始めたMCP対応は、AIエージェントがその計測データを利用するための接続口だ。
マーケティングAI事業の会社予想売上は2026年9月期に30.5億円である。2026年第3四半期末の関連サービス契約は1,237件、月間平均単価は16万1,958円だった。両者の年換算収入は約24.0億円になる。残りは広告運用支援、周辺サービス、買収事業などと考えられるが、製品ごとの売上と利益は会社が完全には開示していない。この分析では、データ計測基盤、画面操作型ソフト、人的運用支援を別々の経済性として扱う。
コマースAI事業には性質の異なる四つの収益源がある。EC-CUBEは推定稼働3万5,000店舗を抱える無料のオープンソースで、決済連携や周辺サービス、企業向け開発などから収益を得る。企業向け構築は案件の獲得数と単価が収入を決めるが、開発・テスト・保守の一部はAIで省力化される。ルビー・グループは高級ブランドなどのEC運営、撮影、物流、発送を支え、倉庫で実物を扱う工程にはソフトだけでは代替できない需要がある。
2026年1月に連結したシルバーエッグ・テクノロジーは、顧客の閲覧・購買履歴を使って商品を推薦する「アイジェント・レコメンダー」を提供する。500社以上という数字は累計導入実績であり、現在の課金顧客数とは異なる。同社の買収による2026年9月期の売上寄与は会社資料で約7.3億円とされるが、買収費用とのれん償却が利益を圧迫している。既に有料で販売されているAI製品であることは評価できるが、競合より長く高い料金を取れるかは別の問題だ。
2026年7月には、広告運用の内製化支援を手がけるアタラを取得し、10月1日付で親会社に吸収合併した。反対に、収益性の低い育成事業や一部子会社からは撤退している。現在の売上構成は、創業時の広告効果測定専業から大きく変わった。事業ごとに必要な人員、設備、顧客関係、投下資本が異なるため、全社売上だけを伸ばしても企業価値は測れない。
優良さと弱いところ
最も強い堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、アドエビスの計測データと顧客の運用履歴である。会社は解約率2.0%を開示し、月間16億リクエストを処理している。解約率は直近12か月の解約売上を使う会社独自の指標であり、一般的な年間顧客解約率と単純比較はできない。それでも継続的に計測基盤を使う顧客が多いことと、独自データの蓄積があることは確認できる。この部分に限れば、AIが画面操作を代替しても記録の正本として残る可能性がある。
一方、料金を自由に引き上げられる会社とまでは言えない。マーケティング関連の契約件数は2020年の1,666件から2026年第3四半期の1,237件へ減少した。平均単価は上がったが、会社は低価格契約の解約による顧客構成の変化を説明している。平均単価の上昇を、既存顧客に対する実質的な値上げの成功と同一視するべきではない。広告測定の競合にはGoogle Analytics 4やAdobe Analyticsがあり、媒体自身による計測の高度化も続く。
EC-CUBEは店舗、開発会社、決済会社が集まる生態系を持つ。店舗が独自の追加開発を重ねれば乗り換え費用も生じる。ただしShopify、GMOのmakeshop、futureshop、ecbeingなど選択肢は多い。AIで構築工数が減れば、既存システムにとどまる利点そのものが小さくなる場合もある。自由に改造できるオープンソースという魅力は、収益化の難しさと表裏一体だ。
資本効率には疑問が残る。2021~2022年には営業利益率が約12%に達したが、2024年は約4.5%まで低下した。2025年は営業黒字でも、ルビー・グループとトピカなどに関する減損で最終赤字になった。これは過去の買収に投じた資本の一部が期待した利益を生まなかった証拠である。買収の取得原価を回収する増分ROICは、現時点では資本コストを上回ると確認できない。アドエビスの事業単独には相応の魅力があるが、連結全体を強い堀のある企業として扱うのは早い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
広告主の測定需要を支える市場は大きい。電通によれば、2025年の国内インターネット広告費は4兆459億円で、広告費全体の過半を占めた。しかし、この金額は広告媒体、制作などを含み、アドエビスが直接獲得できるソフトウェア利用料の市場ではない。計測・分析ツールへの支出率が広告費の0.2~0.6%に相当すると仮定すれば、関連支出は年間約80~240億円となる。これは比較のための推定レンジであり、公表された独立市場規模ではない。
アドエビスは会社資料で国内広告効果測定市場のシェア首位とされる。ただし指定された調査領域での順位であり、Googleの無料分析基盤などを含む全市場の金額シェアは分からない。仮に広告計測基盤の売上約22億円を先ほどの推定市場と比較すると、相当する比率は約9~28%となる。この幅の大きさ自体が市場定義の不確かさを表している。10年先の数量を増やす根拠として首位の肩書だけを使うべきではない。
広告の計測技術には逆風と追い風が同時にある。Cookie制限やAppleのプライバシー保護は従来型の追跡を難しくし、独立した計測基盤の役割を変える。一方、サーバー間で成果情報を受け渡すCAPIや顧客が保有する一次データの活用は、信頼できる測定の必要性を残す。AIエージェントがレポート作成、予算調整、施策提案を担えば、人が使う分析画面の価値は低下する。計測結果そのものを持つ部分と、結果を画面に表示する部分の価値が分かれていく。
経済産業省による2024年の国内BtoC電子商取引市場は26.1兆円だった。EC-CUBEの推定流通総額2,500億円を単純比較すると約1%に相当するが、集計対象、時点、BtoB取引の混入可能性が異なるため厳密なシェアではない。店舗システムの競争ではShopifyやmakeshopが導入の容易さを武器にし、EC-CUBEは自由な開発と国内パートナー網で競う。今後はAIがECサイトを直接構築するようになり、従来のシステム開発単価には下落圧力がかかると考える。
AIレコメンドの競争も激しい。シルバーエッグは長い実績と既存の大手顧客を持つ一方、クラウド事業者やECプラットフォーム自身が推薦機能を標準提供できる。EC物流は人手不足と賃金上昇が価格転嫁の理由になるが、保管料や発送単価を上げても作業費が同時に増える。全社として市場規模の拡大が続いても、その果実が同社の営業利益に残るとは限らない。
資本政策と M&A
中期経営方針「VISION2027」は、マーケティングとコマースの二軸で売上100億円への道筋をつくることを掲げる。2027年9月期の数値目標として明確なのはROE10%超であり、売上100億円を同年度に達成するとの確定した数値約束ではない。具体的な株主還元方針は連結株主資本配当率、いわゆるDOE2.5%を目安とするものだ。自社株買いの実施額や総還元性向について、同計画に金額の約束はない。
2026年9月期は普通配当に記念配当を加えた増配を計画し、100株以上の株主には年2回、合計2,000円相当のデジタルギフトを予定する。2025年9月末の株主数は9,761人であり、保有条件を満たす人の割合を考慮すると、優待の額面費用は年間約0.15億円前後と推定する。これは会社負担であり、将来の株主還元額には配当だけでなく優待費用も含めた。中立ではDOEに沿った配当と優待を中心に、10年間の還元を約9億円と考える。自社株買いの恒常的な上乗せは見込まない。
資本配分で最も重い論点は買収だ。過去のルビー・グループとトピカでは減損が発生した。2026年にはシルバーエッグを約20億円で取得し、アタラも約1.3億円で買収した。一部事業を整理する規律は見られるが、買収による売上増加と、買収価格を上回る価値創出は区別する必要がある。2026年6月末の現金は約29.65億円ある一方、有利子負債は約24.55億円に達する。純現金は約5.10億円で、2025年9月期の約7.8億円から減少した。
大株主上位10人の2025年9月末保有比率は65.5%、創業経営者個人は42.6%だった。経営の継続性を支える半面、買収判断に対する少数株主の統制は強くない。もっとも、少額でも増配を継続してきたため、余剰資金の株主への戻り方を最も低い水準で評価する条件には当たらない。買収に費やす資本の収益率が改善しなければ、資金を再び買収に回すより、借入返済と還元を優先すべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アドエビスは、広告の成果を測る独自データを持つ希少な国内企業である。月間16億リクエストの処理実績、累計1万1,000件の導入、2.0%と開示された解約率は、簡単には失われない顧客基盤を示す。広告主がAIエージェントを使うほど、エージェントが参照する正確な計測データの価値は上がりうる。2026年のMCP対応は、その需要を既存の製品で受け止めるための具体的な一歩だ。人が画面を操作する回数が減っても、データの取得と監査可能な記録に対する課金は残る。
コマースにも複数の成長機会がある。EC-CUBEの3万5,000店舗には決済、保守、改修の需要が存在する。さらにEC構築から物流までを引き受けられれば、顧客一社から得る収入を増やせる。シルバーエッグのAIレコメンドは既に有料製品であり、単なるAI構想ではない。EC-CUBEとの販売連携が進めば、顧客獲得費用を抑えながら推薦機能の利用企業を増やせる可能性がある。
収益改善の余地も大きい。2025年には買収子会社の減損が最終利益を押し下げたが、2026年第3四半期累計の営業利益は前年同期から大幅に増えた。収益性の低い事業を閉じ、主力に人員を戻す方針が続けば、売上の伸び以上に利益が増える。会社が掲げるROE10%超を継続的に達成し、シルバーエッグの買収費用を吸収したうえで現金を生めるようになれば、現在の時価総額は長期の稼ぐ力を過小評価していることになる。
慎重な見方
計測データに価値があることと、その収益をイルグルムが長く独占できることは違う。アドエビスの契約件数は2020年のピークから減り続けている。平均単価の上昇も、低価格顧客の解約が一因だ。Google Analytics 4や広告媒体の自動計測が改善すれば、専用ツールを必要とする顧客はさらに減りうる。AIエージェントは、レポート作成と広告予算の調整を代行するだけでなく、複数の媒体を横断して自ら測定・分析する競合にもなれる。
買収の歴史には慎重な評価が必要だ。ルビー・グループとトピカなどで減損が発生した直後に、シルバーエッグの買収に約20億円を投じた。これは評価基準時点の時価総額約35億円と比べても重い投資である。買収先が持つ500社以上の導入実績は累計値であり、現在の課金顧客や継続率を保証しない。もし推薦機能がShopifyなどの標準機能になれば、買収で獲得した売上は早く縮み、再び減損が生じかねない。
財務にも余裕の後退がある。2026年6月末の現金残高は多く見えるが、借入金も大きく増えた。自己資本比率は約33%に低下し、無形固定資産は約9.82億円に上る。金利が3%台へ上がり、借り換え負担が増える世界では、売上の成長が止まるだけでも自由に使える現金は減る。事業の一部を閉じている事実は、経営が過去の投資判断を修正している証拠であると同時に、初めから収益性を見通すことが難しい会社だという証拠でもある。
どちらに重みを置いたか
アドエビスの計測基盤には長期の価値を認めるが、連結全体の買収実績と財務変化を考えると、慎重な見方をやや優勢とする。中立にはAIによる工数・席数の減少を既に含めており、その理由を確率に重ねてはいない。下側の確率を45%、上側を26%とした主な理由は、減損を経験した直後の大型買収、契約数の長期減少、買収後の借入増加という会社固有の事実である。計測データの堀がグループ全体の利益に変わるまでは、現在の時価総額に十分な安全域があるとは判断しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 911 円57 億円(+ 還元の換算額還元の合計 116 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 512 円32 億円、今との差 −1.9%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,286 円144 億円 | 179 円11 億円 | +372.3% | +17.8% | 247 円16 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,698 円107 億円 | 155 円10 億円 | +255.0% | +14.4% | 296 円19 億円 |
| 中立 | 29% | 1,028 円65 億円 | 143 円9 億円 | +124.3% | +9.1% | 340 円21 億円 |
| やや悲観 | 29% | 315 円20 億円 | 92 円6 億円 | −22.1% | −2.8% | 118 円7 億円 |
| 悲観 | 16% | 135 円9 億円 | 35 円2 億円 | −67.5% | −11.5% | 27 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 911 円57 億円 | 116 円7 億円 | +96.9% | +7.5% | 1,028 円65 億円 |
今の株価時価総額 522 円33 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 計測データの堀を守り、ECの利益率も改善する 利益 9 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,286 円144 億円
2036年も広告主は正確な成果データを必要とし、アドエビスは独立した計測基盤としての地位を保っている。AIエージェントが広告の分析と運用を担うようになっても、顧客は検証可能な測定記録のために利用料を払い続ける。会社はプライバシー規制への対応を継続し、Googleや広告媒体の無料分析では満たせない複数媒体の比較需要を取り込む。計測基盤の契約数はほぼ維持され、単価は物価上昇に近い水準まで改善する。
EC-CUBEでは決済事業者や開発パートナーとの連携が強まり、稼働店舗数が増える。シルバーエッグのAIレコメンドは既に販売実績のある製品として導入先を広げ、EC-CUBEと顧客を相互に紹介できる。物流運営では作業の標準化と契約単価の改善が進み、買収時に期待した利益がようやく実現する。
2025年の減損を教訓に、経営は追加買収より既存事業の統合と利益改善を優先する。売上は約84億円、営業利益は約14.7億円に達し、ROEは15%台となる。ただし広告運用受託や操作型ソフトの数量はAIの影響を受けるため、楽観でも際限なく拡大するとは考えない。
- アドエビス等の広告計測データ基盤:数量 1,080(広告計測基盤の年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.03(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 7 億円。記録基盤の契約維持、単価10年1.32倍。MCP接続の普及は想定するが、未開示のAI新規売上は加算しない。
- キャンペーンマネージャー等の操作型SaaS:数量 157(操作型ソフトの年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.01(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。新SaaSの利用維持が上限。数量1.0倍、単価1.15倍。
- 広告運用・内製化支援・周辺サービス:数量 59.8(年換算の大型支援案件相当数(推定、件))× 価格 0.13(1案件相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。運用支援数量0.92倍、単価1.31倍。人手を売る仕事は楽観でも増加しない。
- EC-CUBE基盤・決済連携収益:数量 44,800(EC-CUBE推定稼働店舗数(店舗))× 価格 0.00(1稼働店舗当たり年間プラットフォーム収入(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。稼働店舗4万4,800店、決済・連携収入の拡大。
- ECサイトの構築・開発・改修:数量 72.3(大型構築・改修案件の年換算相当数(推定、件))× 価格 0.14(1案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。受託数量は0.85倍でも高付加価値案件への集中で単価1.34倍。
- ルビー・グループのEC運営・撮影・物流:数量 58.5(通年稼働する大口顧客・運用契約相当数(推定、件))× 価格 0.31(1運用契約相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。物理的な物流需要1.30倍、価格1.40倍。
- シルバーエッグのAIレコメンド:数量 390(年換算の稼働課金顧客数(推定、社))× 価格 0.03(1社当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。既に販売実績のあるAIレコメンドが390社相当へ拡大。
倍率:2036年純利益9.383億円、自己資本59.5億円でROE約15.77%。資本コストk7.75%、堀は全社としてnormalなので超過収益の残る割合1/2、RONIC約11.76%。AIエージェント代替を織り込んだg_longは名目0.5%とし、正当化PER=(1−0.005÷0.1176)÷(0.0775−0.005)≒13.21倍。10年以降の高成長を倍率に重ねず、上限そのものを適用する。
確率:アドエビスの計測データがAI時代の信頼できる基盤として選ばれ続け、EC-CUBEの決済連携とシルバーエッグの既存有料AI製品が拡大する場合。ただし買収後の収益改善と顧客獲得が同時に成功する必要があり、10%にとどめる。
やや楽観 16% 計測基盤を維持し、買収事業が黒字定着 利益 7 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,698 円107 億円
広告主の計測需要は残り、アドエビスの契約基盤は大きく崩れない。競合の無料分析や広告媒体の計測機能が進歩するなかでも、広告主は媒体横断のデータを独立して検証する価値を認める。AIエージェントは報告書作成などを代行するため、キャンペーン管理ソフトの利用席数は減るが、計測の利用料は維持される。
EC-CUBEは国内で一定の店舗基盤を守る。企業向けの大型改修はAIによって件数が減るものの、難しい案件と外部連携では専門家の需要が残る。ルビー・グループの物流運営は稼働率と値上げが改善し、シルバーエッグも既存顧客からの売上を維持しながら黒字を定着させる。新たな大型買収は控え、借入返済と既存顧客への追加販売を優先する。
売上は約75億円、営業利益は約10.8億円になる。2026年時点の営業利益率からの改善幅は大きいが、過去に高い利益率を出した主力製品があり、買収初年度費用や低採算案件の整理が進めば不可能ではない。ただし連結全体の利益率改善が必要なので、中立より低い確率にする。
- アドエビス等の広告計測データ基盤:数量 1,080(広告計測基盤の年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.03(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 6 億円。計測契約維持、単価1.28倍。
- キャンペーンマネージャー等の操作型SaaS:数量 141(操作型ソフトの年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.01(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI代替で数量0.90倍、価格1.13倍。
- 広告運用・内製化支援・周辺サービス:数量 48.8(年換算の大型支援案件相当数(推定、件))× 価格 0.13(1案件相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。工数数量0.75倍、価格1.28倍。
- EC-CUBE基盤・決済連携収益:数量 39,200(EC-CUBE推定稼働店舗数(店舗))× 価格 0.00(1稼働店舗当たり年間プラットフォーム収入(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。店舗数1.12倍、単価1.30倍。
- ECサイトの構築・開発・改修:数量 64.6(大型構築・改修案件の年換算相当数(推定、件))× 価格 0.13(1案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。受託数量0.76倍、価格1.30倍。
- ルビー・グループのEC運営・撮影・物流:数量 52.7(通年稼働する大口顧客・運用契約相当数(推定、件))× 価格 0.30(1運用契約相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。物流運用数量1.17倍、価格1.35倍。
- シルバーエッグのAIレコメンド:数量 333(年換算の稼働課金顧客数(推定、社))× 価格 0.03(1社当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。AIレコメンドの稼働顧客1.11倍。
倍率:ROEは6.850÷51.0≒13.43%。k7.75%、moat normalによりRONIC=7.75%+0.5×(13.43%−7.75%)≒10.59%。長期gはAI代替を織り込んで0.5%とする。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)≒13.14倍の上限そのものを適用する。
確率:アドエビスの契約維持とEC側の収益改善は十分あり得るが、過去の減損実績から買収先の利益率改善を確実視しない。16%とする。
中立 29% 広告計測は残るが、工数と席数は縮む 利益 4 億円 · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,028 円65 億円
2036年のアドエビスは、今より契約数が少ないものの、広告主の計測データを取得・管理する基盤として残る。従来の操作画面を使う仕事はAIエージェントに移り、広告運用の専門家が費やす工数も減る。独自データと低い解約率を根拠に、データ計測部分では緩やかな単価上昇を認めるが、操作型ソフトと人的サービスの数量はそれぞれ縮む。広告市場が成長しても、同社のマーケティングAI事業が同じ速度で伸びるとは考えない。
EC-CUBEは推定稼働店舗がやや減るものの、決済連携と既存店舗の改修需要で収益を保つ。企業向け構築の件数はAIによるコード生成やテスト自動化のため減少する。ルビー・グループでは物流と撮影の実務が残り、名目単価を物価並みに引き上げられるが、人件費も上がるため利益率は限定的だ。シルバーエッグは有料AI製品として存続するものの、ECプラットフォームの標準推薦機能との競争によって顧客と単価の一部を失う。
経営は新しい大型買収を連発せず、既存事業の整理と借入返済を進める。売上は約62億円にとどまるが、低採算業務の見直しによって営業利益は約6.4億円となる。純利益は約4.0億円、ROEは約9%であり、10年後も質の高い単一SaaSほどの利益率は期待しない。
- アドエビス等の広告計測データ基盤:数量 972(広告計測基盤の年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.02(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。計測の記録基盤は数量0.90倍、価格1.20倍。AIの分析画面代替とは区別する。
- キャンペーンマネージャー等の操作型SaaS:数量 126(操作型ソフトの年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.01(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。操作型SaaSは数量0.80倍、単価1.08倍。
- 広告運用・内製化支援・周辺サービス:数量 42.3(年換算の大型支援案件相当数(推定、件))× 価格 0.12(1案件相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。広告運用・人月型支援は数量0.65倍、単価1.26倍。
- EC-CUBE基盤・決済連携収益:数量 31,500(EC-CUBE推定稼働店舗数(店舗))× 価格 0.00(1稼働店舗当たり年間プラットフォーム収入(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。稼働店舗3万1,500店、連携手数料単価1.25倍。
- ECサイトの構築・開発・改修:数量 55.3(大型構築・改修案件の年換算相当数(推定、件))× 価格 0.13(1案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。EC受託構築は数量0.65倍、単価1.22倍。
- ルビー・グループのEC運営・撮影・物流:数量 47.3(通年稼働する大口顧客・運用契約相当数(推定、件))× 価格 0.30(1運用契約相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。実物流の稼働量1.05倍、単価1.34倍。人件費増加で低い利益率。
- シルバーエッグのAIレコメンド:数量 255(年換算の稼働課金顧客数(推定、社))× 価格 0.03(1社当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。AI推薦機能の競争で課金顧客0.85倍、単価1.09倍。
倍率:2036年純利益3.962億円、自己資本42.3億円でROE9.37%。k7.75%を小幅に上回るだけなので、通常の堀が残る割合1/2を使うとRONIC約8.56%。AIエージェント代替後の長期名目g0.5%から、正当化PER=(1−0.005÷0.0856)÷(0.0775−0.005)≒12.99倍。事業の寿命を別途割り引かず、計算上限そのものを適用する。
確率:アドエビスの独自データは残る一方、AIによる操作型SaaSと受託工数の縮小が進み、EC側の利益改善で補うという中心的な経過である。減損後の財務と買収統合の不確実性を考え、29%とする。下に寄せる理由:過去のM&A減損、2026年の大型買収、借入増加、アドエビス関連契約数の長期減少が、成功側よりも失敗側を重くする固有の事実だからである。
やや悲観 29% 契約と受託仕事が減り、買収利益も伸び悩む 利益 1 億円 · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 315 円20 億円
広告主はGoogleや媒体側の計測サービスを使う割合を増やし、アドエビスは高単価の顧客を一定数保ちながら契約数をさらに減らす。独自の計測データは必要とされるが、AIエージェントが媒体データを統合することが一般化し、専用ツールが担っていた仕事の一部は標準機能へ移る。キャンペーン管理ソフトの利用者は減り、運用支援の工数も大きく縮む。
EC-CUBEではShopifyやmakeshopへの移行が進む。AIで小規模なサイトを容易に作れるようになり、外注開発の案件数と単価交渉力が弱まる。ルビー・グループの物流には需要が残るが、運賃と賃金の上昇を十分に転嫁できない。シルバーエッグは推薦機能の標準搭載との競争にさらされ、買収価格に見合う利益を生み出せない状態が続く。
経営は新規買収を抑制し、借入返済と採算改善を優先する。売上は約45億円、営業利益は約2.6億円となり、純利益は約1.4億円にとどまる。資本は積み上がってもROEは5%を下回り、留保した利益を高い利回りで再投資できない。配当は従来のDOEを継続する余裕が弱まり、株主還元も縮小する。
- アドエビス等の広告計測データ基盤:数量 810(広告計測基盤の年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.02(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。計測契約0.75倍、単価1.10倍。
- キャンペーンマネージャー等の操作型SaaS:数量 91.1(操作型ソフトの年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.01(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。操作型SaaS数量0.58倍。
- 広告運用・内製化支援・周辺サービス:数量 26.0(年換算の大型支援案件相当数(推定、件))× 価格 0.11(1案件相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。広告運用案件数量0.40倍。
- EC-CUBE基盤・決済連携収益:数量 25,200(EC-CUBE推定稼働店舗数(店舗))× 価格 0.00(1稼働店舗当たり年間プラットフォーム収入(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。EC-CUBE稼働店舗2万5,200店。
- ECサイトの構築・開発・改修:数量 38.3(大型構築・改修案件の年換算相当数(推定、件))× 価格 0.11(1案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。受託案件数量0.45倍。
- ルビー・グループのEC運営・撮影・物流:数量 41.4(通年稼働する大口顧客・運用契約相当数(推定、件))× 価格 0.28(1運用契約相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。物流数量0.92倍、価格1.25倍。
- シルバーエッグのAIレコメンド:数量 195(年換算の稼働課金顧客数(推定、社))× 価格 0.02(1社当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。レコメンド利用数量0.65倍、単価据え置き。
倍率:ROE1.436÷30.0≒4.79%は資本コスト7.75%に届かない。ROEがk以下の稼ぐ力の上限は1÷k≒12.90倍である。やや悲観では継続的な市場シェア低下、薄い利益、買収資産の毀損可能性を考え、上限より低い9.5倍を採用する。現在や過去の市場PERは根拠としない。
確率:アドエビスの長期契約数減少、EC構築業務へのAI浸透、買収先の低収益という既に確認できる問題が同時に長引く場合。完全な事業崩壊ではないため、悲観より高い29%とする。下に寄せる理由は大型買収後の財務余力の低下と2025年の減損実績であり、AIの影響は中立の数量にも織り込み済みである。
悲観 16% データ基盤の競争優位を失い、買収資産も減損 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 135 円9 億円
広告の効果計測がGoogleや広告媒体の標準サービスに集約され、アドエビスの契約基盤は現在の半分程度まで縮む。AIエージェントは外部の広告管理ソフトを経由せず、媒体と顧客のデータを直接扱う。計測技術そのものは残るが、顧客が独立した会社へ高い料金を払う理由が薄れ、競争力はかつての水準に戻らない。
EC-CUBEは店舗と開発者を失い、ECサイトの構築はAIにより少ない工数で済むようになる。物流には実物を扱う需要が残るものの、少ない顧客のために倉庫、人員、システムを維持する固定費が利益を圧迫する。シルバーエッグの推薦機能は大手ECプラットフォームに標準搭載され、買収時に期待した利益を生まない。過去の買収によって発生したのれんやソフト資産には追加減損が必要になる。
売上は約26億円、営業損失は約0.5億円となる。将来利益に恒常的な高倍率を与えず、残る純現金と換金可能な有形・流動資産を中心に価値を考える。株主への還元は縮小し、買収を続ける余力も乏しい。会社が必ず清算されるという想定ではなく、上場を維持していてもかつての優良さを失う10年である。
- アドエビス等の広告計測データ基盤:数量 518(広告計測基盤の年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.02(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。計測契約0.48倍、価格0.95倍。
- キャンペーンマネージャー等の操作型SaaS:数量 39.3(操作型ソフトの年換算有料契約数(推定、件))× 価格 0.01(1契約当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。操作型SaaSが代替され数量0.25倍。
- 広告運用・内製化支援・周辺サービス:数量 17.6(年換算の大型支援案件相当数(推定、件))× 価格 0.10(1案件相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人手による運用案件が0.27倍。
- EC-CUBE基盤・決済連携収益:数量 17,500(EC-CUBE推定稼働店舗数(店舗))× 価格 0.00(1稼働店舗当たり年間プラットフォーム収入(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。稼働店舗半減、実効手数料低下。
- ECサイトの構築・開発・改修:数量 21.3(大型構築・改修案件の年換算相当数(推定、件))× 価格 0.10(1案件当たり平均売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託案件0.25倍。
- ルビー・グループのEC運営・撮影・物流:数量 31.5(通年稼働する大口顧客・運用契約相当数(推定、件))× 価格 0.24(1運用契約相当の年間売上高(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。実物流は0.70倍残るが固定費負担で赤字。
- シルバーエッグのAIレコメンド:数量 120(年換算の稼働課金顧客数(推定、社))× 価格 0.02(1社当たり年間売上高(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIレコメンド顧客0.40倍、単価0.85倍。
倍率:営業・純損失が続く構造的敗北なのでPERを適用しない。2026年6月末の自己資本約18.67億円から、のれん・ソフトウェア等の無形固定資産約9.82億円を実体のない部分として控除すると、有形純資産は約8.85億円となる。換金費用や回収損をさらに約0.35億円見込み、残存の換金可能価値8.5億円を悲観の床とする。減損後の自己資本8.5億円に対するPBR1.0倍であり、過去の市場PBRから決めたものではない。
確率:広告計測の独立ツールが標準機能に代替され、ECの受託・推薦・運用も同時に競争力を失う構造的な失敗。倒産に直結するとは限らないが、過去の減損と買収負担から16%を無視できない確率とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アドエビス等の広告計測データ基盤
広告効果の計測、成果データの蓄積、サーバー間データ連携を提供する継続課金事業。AIが利用する測定結果そのものを価値の中心とする。
| 数量広告計測基盤の年換算有料契約数(推定、件) | 価格1契約当たり年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 1,080 | 0.02 | 22 | 5 |
| 10 年後 中立 | 972 | 0.02 | 24 | 4 |
取り方:会社開示のFY2026第3四半期末マーケティング関連契約1,237件、平均月額161,958円を出発点とした。全サービス合計の年換算利用料は約24.04億円となる。契約の重複やサービス別内訳は非開示のため、計測基盤に1,080件、年間205.5万円の平均単価を仮配分した。月間16億リクエストと累計1万1,000件の導入は別の開示指標であり、現在の課金契約数には使わない。営業利益4.50億円は会社の製品別開示値ではなく、連結のマーケティングAI事業利益2.30億円を関連サービスに按分する独自推定である。AIエージェント代替の型は、低い開示解約率と独自の計測履歴という二つの証拠を持つ部分に限って『記録の正本・独自データ』とする。中立の数量は10年で0.90倍、単価は1.20倍とした。
キャンペーンマネージャー等の操作型SaaS
広告施策の管理、レポート作成、分析画面と業務の進行管理を提供する。人が操作する画面や席数への依存が大きい。
| 数量操作型ソフトの年換算有料契約数(推定、件) | 価格1契約当たり年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 157 | 0.01 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 126 | 0.01 | 2 | 0 |
取り方:マーケティング関連の開示契約1,237件から、アドエビス等の推定1,080件を引いた便宜的な157件を年換算契約単位とした。製品を併用する契約には重複があるため、固有の企業数を示すものではない。キャンペーンマネージャーは月額2.5万円からの料金体系を会社が開示しているが、追加機能や既存ツールを含む平均年額118万円は分析上の推定である。赤字0.65億円は販売促進・開発費の仮配分で、会社による単独製品の損益開示ではない。AIエージェント代替の型は『席課金・操作画面中心のSaaS』であり、中立の数量0.80倍、価格1.08倍を用いる。
広告運用・内製化支援・周辺サービス
アタラを含むマーケティング支援、人手による分析・広告運用の伴走支援、周辺サービスを提供する。
| 数量年換算の大型支援案件相当数(推定、件) | 価格1案件相当の年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 65.0 | 0.10 | 6 | −2 |
| 10 年後 中立 | 42.3 | 0.12 | 5 | 0 |
取り方:会社のFY2026マーケティングAI売上予想30.50億円から、契約件数と月間平均単価に基づく継続課金の推定約24.05億円を差し引いた約6.45億円を周辺サービス等の売上とした。会社は案件数・単価を分離開示していないため、年間65件相当、単価990万円の概念的な仕事量に置き換えた。旧育成事業の整理とアタラ買収の初年度費用も含むため、営業損失1.55億円は会社開示ではなく利益配分の推定である。AIエージェント代替の型は『人月・工数販売、広告制作・運用』。中立の数量0.65倍、単価1.26倍で、受託工数が減る一方で人件費の名目上昇が一部価格に移る。
EC-CUBE基盤・決済連携収益
無料のEC-CUBEを起点に、決済サービス、プラグイン、周辺の事業者連携から手数料や利用料を得る。
| 数量EC-CUBE推定稼働店舗数(店舗) | 価格1稼働店舗当たり年間プラットフォーム収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 35,000 | 0.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 31,500 | 0.00 | 3 | 1 |
取り方:会社が開示するEC-CUBEの推定稼働店舗数3万5,000店以上と推定流通総額2,500億円以上を数量面の根拠とした。ソフト本体は無料であり、3万5,000店が一律に利用料を払うわけではない。関連する決済・プラグイン等の会社側手数料を全店舗で平均した年額約8,600円という分析上の実効単価を使い、約3.01億円を推定した。これは公表されたEC-CUBE単独売上ではない。市場は経産省の2024年BtoC-EC26.1兆円が上限的な参照値であり、EC-CUBE流通総額は単純比較で約1%に当たる。AI代替については操作画面の価値でなく、決済連携・店舗ネットワークの取引基盤部分として扱い、中立の数量0.90倍、価格1.25倍とした。
ECサイトの構築・開発・改修
企業向けのECシステム開発と改修、保守運用を案件単位で受注する。開発者の工数による収入が中心となる。
| 数量大型構築・改修案件の年換算相当数(推定、件) | 価格1案件当たり平均売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 85.0 | 0.10 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 55.3 | 0.13 | 7 | 0 |
取り方:企業向け構築案件の個別受注数と単価は連結セグメント別には開示されていない。2025年以降のEC構築・運用拡大とFY2026コマースAI売上29.00億円を参照し、実物流・EC-CUBE連携・シルバーエッグへの仮配分後に残る約8.7億円を、年間85件相当、平均約1,025万円の構築・改修案件としてモデル化した。利益0.70億円も推定である。AIエージェント代替の型は『SI受託・人月・工数』とし、中立の数量0.65倍、案件単価1.22倍を用いる。物価上昇より件数が減る理由は、生成AIによるコード生成・テスト・保守作業の省力化と顧客の内製化である。
ルビー・グループのEC運営・撮影・物流
ブランドECの運営支援、商品撮影、保管、梱包、発送などの実務を担う。物理的な作業が必要な部分を持つ。
| 数量通年稼働する大口顧客・運用契約相当数(推定、件) | 価格1運用契約相当の年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 45.0 | 0.22 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 47.3 | 0.30 | 14 | 1 |
取り方:ルビー・グループの顧客数や取扱発送個数、撮影件数ごとの平均単価は会社が通期のセグメント収益として独立開示していない。コマースAI事業のうちEC-CUBE関連約3.0億円、構築約8.7億円、シルバーエッグのFY2026取得寄与約7.3億円を除いた約10億円を、年間45件相当の運用契約と平均2,222万円に置き換えた。件数は発送件数ではなく大口運用契約の年換算相当であり、数量・単価とも推定値である。AI代替の型は『現場の体を伴う業務』を中心とするが、運用事務の一部にはAI代替を見込む。中立の数量1.05倍、名目単価1.34倍とした。
シルバーエッグのAIレコメンド
ECサイトやメディアの行動データを使い、商品・情報の推薦を行う有料AIサービス。顧客の購入成果への貢献が課金を支える。
| 数量年換算の稼働課金顧客数(推定、社) | 価格1社当たり年間売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 300 | 0.02 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 255 | 0.03 | 7 | 0 |
取り方:シルバーエッグは500社以上の累計導入実績を公表しているが、現在の課金顧客数は非開示である。FY2026のグループ売上寄与見込み約7.30億円を根拠とし、年換算で300社相当、平均年間243万円とする便宜的な分解を行った。買収後9か月連結による売上寄与を使っているため、買収先の12か月単独売上とは異なる。営業損失0.09億円は買収費用等を含む連結上の仮配分であり単独の営業利益を示さない。既に有料で提供されるAI製品なのでAI代替を一律の人月型にせず、推奨アルゴリズムと顧客データの競争を考慮する。中立は数量0.85倍、価格1.09倍とし、AI機能の標準搭載による値下げ圧力を織り込む。
リスクと懸念
AIエージェント代替
広告レポートの集計、施策管理、広告運用の補助、ECサイト構築、テストと保守は、AIエージェントが人間の作業を置き換えやすい分野である。アドエビスの独自計測データだけは別に評価するが、連結全体の仕事量は減りうる。2026年のMCP対応やAIエージェント機能には具体的な製品開発の進展があるものの、追加売上の開示がない部分について『AIで成長する』という数量増加は見込んでいない。
アドエビスの顧客減少と見かけの単価上昇
マーケティング関連の契約件数は2020年の1,666件から2026年第3四半期の1,237件へ減った。平均月額単価の上昇には低価格顧客の解約による構成変化が含まれるため、値上げ力が実証されたとは言い切れない。契約数が減り続ければ、計測データという堀の価値にも限界が生じる。
M&Aの再失敗と減損
2025年9月期はルビー・グループとトピカ等に関して約3.37億円の減損損失等を計上した。さらに2026年には約20億円規模でシルバーエッグを買収している。買収先の売上が伸びても営業利益、営業キャッシュフロー、増分ROICが資本コストに届かなければ、会計上の売上拡大は株主価値の増加にならない。
借入増加と金利上昇
2026年6月末の有利子負債は約24.55億円となり、前年末から大きく増加した。自己資本比率も約33%へ低下している。借り換え金利が3.5~4%程度へ向かう前提では、売上が停滞しても利払いは残る。現金残高だけを見て財務が強いと判断せず、買収後の純現金、返済期限、固定費を追う必要がある。
ECプラットフォームとAI推薦の競争
EC-CUBEには3万5,000店舗規模の推定稼働基盤があるが、Shopify、makeshop、futureshop、ecbeingなどが競合する。AIで店舗システムを構築・変更する費用が下がれば、既存ECシステムの乗り換え障壁も弱まる。シルバーエッグの推薦機能もプラットフォーム各社の標準機能と競合し、買収時の収益予想が外れる危険がある。
株主構成と資本配分
2025年9月末の上位10株主の持分は65.5%で、創業経営者の影響力が大きい。経営の一貫性には利点があるが、少数株主が大型買収を修正させる力は限られる。DOE2.5%の配当目安はあるものの、投資した現金を再び利益率の低い事業へ向ければ、株主の富は増えない。
今後の分かれ目
- アドエビス関連の契約件数が1,237件から反転し、契約単価も既存契約ベースで上昇したら
- 単なる顧客構成変化ではなく実際の値上げ力と顧客獲得力が回復した証拠になる。広告計測基盤の中立数量と価格を上方修正し、やや楽観の確率を引き上げる。
- AIエージェント向けMCP連携やキャンペーン管理機能について有料契約数・売上増加額が開示されたら
- AI対応を開発段階から収益化段階へ移した証拠として扱う。売上金額に対応する部分だけ数量減少を緩和し、まだ課金されていない機能を一律に成長事業とはみなさない。
- シルバーエッグの単独・実質的な営業利益と継続課金顧客数が改善し、買収費用を除いても増分ROICが資本コストを超えたら
- 2026年の大型M&Aが株主価値を増やした根拠となる。レコメンドの数量と利益率を引き上げ、追加減損を含む悲観側の確率を引き下げる。
- 2026年9月期の正式決算と翌期予想で営業利益率が改善し、借入残高も減少したら
- 買収後の統合が現金収支にも寄与したと評価する。金利負担と余剰現金の見方を見直し、純利益と資本配分の確度を上げる。
- EC-CUBEの稼働店舗数が減るのに決済連携収入も縮み、EC構築受注が連続減少したら
- 開発者と店舗の生態系が縮小している可能性が高い。EC基盤と構築事業を同時に下方修正し、やや悲観の確率を引き上げる。
- 新たな大型買収が行われ、取得価額に対する営業キャッシュフローと利益率の根拠が示されなかったら
- 過去の減損から学習した資本配分と認められない。売上成長だけでは評価を上げず、借入・減損・少数株主への還元減少を悲観側に追加する。
見ておくもの
- アドエビス・CAPiCO・キャンペーンマネージャー合計の契約件数と、低価格契約を除いた既存顧客単価の推移
- マーケティングAI事業の契約解約率2.0%の定義と継続的な変化
- MCP対応とAIエージェント機能の有料契約数、追加売上、単独採算の開示
- シルバーエッグの現在の課金顧客数、売上継続率、営業利益、のれん償却負担
- EC-CUBE推定稼働店舗数、決済連携手数料収入、開発案件の受注件数と平均単価
- ルビー・グループの物流稼働率、営業利益率、追加減損の有無
- 連結営業利益率と営業キャッシュフロー、有利子負債、純現金、借入金の返済期限
- VISION2027のROE10%超の達成状況、DOE2.5%の配当継続、買収に投じた資本の増分ROIC
- 2026年11月5日予定の2026年9月期正式決算と2027年9月期会社予想
倍率と資本コストの決め方
現在の株価552円と発行済株式から自己株式を除いた630万8,768株を使うと、基準時価総額は約34.82億円となる。ただし、この値を目標として将来利益や倍率を調整していない。まず会社開示のFY2026売上予想59.5億円を、契約数・店舗数・案件数・推定顧客数と単価に分けて、各事業のAI代替耐性を評価した。計測データ基盤は残り、操作型ソフトと受託工数は縮むという中立では、2036年の営業利益約6.39億円、純利益約3.96億円となる。倍率はk7.75%、長期g0.5%、ROEとRONICから正当化PER約12.99倍を導いた。買収後の純現金、DOE配当、優待、将来余剰現金の実質回収率0.75は別に点検する。現在や過去の市場PER・PBRを倍率の根拠にせず、悲観では2026年6月末の無形固定資産を除いた実質資産価値を床とした。日本基準の新リース会計適用後も、比較のため費用に賃料を含む現在と整合的な利益ベースで考える。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、利益変動と2025年時点の純現金による品質調整+0.25%を加える。買収の成否は割引率への個別上乗せではなく、筋書きと確率に反映する。