結論
キャピタル・アセット・プランニングは、生命保険会社の設計書・申込書システムを得意とする金融専門のシステム開発会社である。筆者の結論は「割高」だ。金融機関との長年の関係は評価するが、売上の94%を占める受託開発が、AIエージェントによって仕事の量と値段の両面から圧迫されると考えるためである。
強みは明確だ。国内の生命保険会社41社のうち約30社に導入実績があり、現在も23社と取引している。生命保険の契約手続きは商品設計、税制、法令、社内審査と深く結びついており、既存システムを簡単に交換できない。ソニー生命とは約30年の取引関係があり、新商品の企画段階から関わることもある。これは単なるプログラミング会社にはない強みだ。
2026年9月期第3四半期累計では、売上高が前年同期比13.7%増、営業利益は141.0%増となった。生成AIによる開発効率改善も進み、会社が掲げる2027年9月期の営業利益10億円という目標には現実味がある。しかし、現在の利益率改善を10年先まで直線的に延ばすのは危険である。会社自身がAIによる開発時間の大幅な短縮を実現しているからこそ、顧客も従来の人月単価と工数を払い続ける理由を失っていく。
2025年9月期の売上高は約97億円だが、その大半は人月で請求する仕事である。自社ソフトの使用許諾・保守は約5億円にとどまる。統合資産管理システムWMW、計算ライブラリ、Trust Engineの新プラットフォームには可能性があるものの、現在の収益構造を逆転させた証拠はまだない。
10年後の中立では売上高約86億円、営業利益約5.3億円、純利益約3.2億円を見込む。配当を含む5つの筋書きの現在価値は約31.9億円となり、基準時価総額約48.8億円を約35%下回る。短期の好業績より、AI導入後に金融機関が外注先へ何を対価として支払うのかが長期株主にとっての核心である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方でまず評価したいのは、会社が顧客の業務にどこまで入り込んでいるかである。生命保険会社は商品を販売するために設計書や申込書を正確に作り、厳しい法令に従って処理しなければならない。この仕事は10年後も消えない。既存システムを熟知する企業が更新案件を獲得しやすい構造も、すぐには崩れないだろう。
問題は、仕事が必要であることと、その仕事から同じ利益を得られることが別だという点だ。契約手続きや計算の正確性は不可欠でも、従来100人月を要した開発が30人月で済むなら、顧客が以前と同じ金額を支払う理由は弱くなる。技術者の生産性が上がるほど利益が増える時期はあり得る。しかし、その改善分を長期にわたって顧客から守り切れるかは不明である。
CAPライブラリには、税務・相続・保険の計算を正しく実行するという価値がある。金融機関がこの計算エンジンを継続利用し、法令改正への対応料やAPI使用料を支払い続けるなら、受託開発より強い事業になり得る。ただし、現在の使用許諾・保守収入は全社売上の5%台である。全体を高収益なソフトウェア企業として評価するには、まだ割合が小さい。
オーナー利益についても、会計上の純利益をそのまま自由な現金とみなさない。開発者の教育、金融制度への継続対応、ソフトウェアの更新、セキュリティ投資は欠かせない。人件費は物価とともに上がり、成長投資の回収には時間がかかる。資本が積み上がっても、それが高い利回りで再投資される保証はない。
2026年の好業績と財務の余力は評価する。それでも、10年後の売上の大半が人月課金のままなら、資本利益率は低下する可能性が高い。筆者が長期保有に求めるのは、顧客数の多さだけではなく、仕事を自動化しても価格を維持できる仕組みである。今の時価総額には、その仕組みが確立されたと判断するだけの安全域がない。
何で稼ぐ会社か
同社の事業は会計上、システム開発事業という単一セグメントである。ただし、長期の稼ぐ力は生命保険向け受託開発、銀行・証券向け受託開発、使用許諾・保守、その他の金融コンサルティングに分けて考える必要がある。それぞれ顧客の発注理由も、AIに置き換えられる速さも異なるからだ。
中心は生命保険会社向けの開発である。2025年9月期の生命保険向け売上は81.1億円で、全体の83.7%を占めた。保険商品を販売する際のライフプランニング、保険料の設計、申込書の作成、ペーパーレス手続きなどを支える。保険会社が数年ごとに基盤を更新する案件に加え、新商品投入や制度変更への改修が継続的な仕事になる。顧客の業務を理解し、既存システムに安全に変更を加えられることが受注の源泉である。
銀行向けには資産管理、相続税評価、ゴールベースプランニング、確定拠出年金関連のシステムを提供する。三菱UFJフィナンシャル・グループなどの大手金融機関向け案件や、地方銀行の営業支援システムがある。証券会社向けにはIFAの顧客管理、投資商品発注、ポートフォリオ管理といった業務を支援している。銀行・証券分野の売上は伸びているものの、生命保険への依存を解消するほどの規模にはまだ達していない。
収益構造の弱点は、受託開発が2025年9月期に91.2億円、売上の94.1%を占めたことだ。経営者自身も人月で売上が決まる仕組みだと説明している。顧客が開発工数を買う限り、生成AIによって必要工数が減ることは長期的に請求数量の減少につながる。効率化で一時的に利益率が上がっても、それをすべて開発会社が保持できるとは限らない。
もう一つの柱がWMWと独自の計算エンジンCAPライブラリである。資産形成、相続、税務、保険の複雑な計算を金融機関へ提供し、定額・使用者数・管理口座数・API利用量などに応じて収入を得る。税制対応や計算の正確性には価値があるが、使用許諾・保守の売上は2025年9月期で5.17億円にすぎない。
新事業では、台湾SoftBIと51対49で設立したTrust EngineがIFA向け基盤を開発し、完全子会社Wealth Engineが富裕層への資産管理・投資助言を担う。Wealth Engineは2026年6月に必要な金融商品取引業の登録を完了した。受託から使用料課金へ移る構想は合理的だが、新規事業の収益規模はまだ検証段階にある。
優良さと弱いところ
最大の強みは、金融業務を深く理解した技術者と、生命保険会社との長い取引関係である。会社開示によれば国内41社中約30社に導入実績があり、約23社が継続取引先だ。取引社数による浸透率は約56%になる。ただし、これは顧客企業数の割合であって、保険会社のIT予算に対する売上シェアではない。
システムの入れ替えにも相応の障壁がある。保険商品の料率、税務、販売管理、本人確認、申込手続きなどを新システムへ移すには、長い設計と検証が要る。大規模なプラットフォーム構築には約2年を要するという業界分析もある。会社は元請け案件が約9割、自社内開発が約8割と説明しており、顧客との距離が近い点は評価できる。
しかし、その強みを強い経済的な堀と呼ぶには証拠が足りない。低い解約率の数値、法令改正のたびに値上げを通した実績、競合が利用できない独自顧客データの蓄積は確認できない。CAPライブラリの税制更新は差別化要因だが、それだけで会社全体を規制対応型の独占的プラットフォームと評価することはできない。
資本効率にも課題が残る。過去10年のROE中央値は8.6%で、2022年9月期には赤字を計上した。2019年の営業利益率8.6%に対して、2020年から2024年は低収益の期間が長かった。2025年に利益が回復したことは好材料だが、10年間を通して高い資本利益率を維持した企業とは言いにくい。
一方、財務の存続リスクは比較的小さい。2025年9月期の自己資本は37.2億円、純有利子負債はマイナス3.4億円である。ただし、投資有価証券の評価変動が大きく、金融機関向けの大型案件では売掛金・契約資産も増減する。自己資本比率だけで、すべての資本が自由に使える現金だと考えるべきではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の金融IT市場には需要の追い風がある。IDC Japanが2025年1月に公表した予測では、2025年の金融IT市場は約3兆3,290億円で、2028年には約3兆8,956億円に拡大する見込みだった。金融機関のクラウド移行、古い基幹システムの更新、資産形成サービスの拡充が投資を支えている。同社の売上はこの広い市場の約0.3%に相当するが、主力の保険営業システムという狭い市場とは母数が違う。
生命保険市場は、会社数が41社程度で成熟している。2025年度の個人保険・個人年金保険の新契約年換算保険料は増加したが、人口減少と保険契約者の高齢化は続く。今後10年間、保険会社の数や営業人員が大きく増えるとは考えにくい。その一方で、変額保険、外貨建て商品、資産形成型商品、相続対策の複雑化はシステム改修の需要を生む。
同社が強い保険会社向けシステムでは、約41社という顧客母数と、数年ごとの大型更新、新商品ごとの改修が需要数量を決める。現在取引する約23社を守れるかが基本となる。競合にはNTTデータ、富士通、SCSK、TISなど大手金融システム会社や金融機関の内製開発部門がある。ただし、各社が同じ範囲で売上や顧客数を開示しておらず、保険営業システムの比較可能な金額シェアは確認できない。
銀行・証券・IFA向けには別の成長余地がある。厚生労働省の職業情報によれば、2025年時点でIFAの登録外務員は約1万人、法人の金融商品仲介業者は約665社とされる。投資助言や資産管理の専門化が進めば、WMWやTrust Engineの市場は広がる。ただし、同社の実際の契約ID数や当該市場での課金シェアは開示されていない。既存の証券会社システム、大手SI企業、海外の資産管理プラットフォームも競争相手となる。
最大の変化はAIエージェントである。設計書の生成、顧客情報の入力、プログラム作成、テスト、商品説明、提案書作成は自動化が進みやすい。金融機関が同じ仕事を少ない人月で発注できるなら、IT投資総額が拡大しても、受託企業の売上が同じ速度で伸びるとは限らない。
今後は金融機関のIT支出全体が増えることと、人月受託が増えることを分けて考える必要がある。筆者は、2030年代には開発工数の販売から業務結果・正確な計算・継続的なデータ接続に対する課金へ収益源が移るとみる。その転換を自社で実現できるかによって、同じ金融IT企業でも10年後の価値は大きく分かれる。
資本政策と M&A
会社は2024年9月期から2027年9月期を対象とする中期経営計画を進めている。最終年度の目標は売上高110億円、営業利益10億円、営業利益率9%、ROE13%である。2024年から2027年までの売上高の年平均成長率目標は10%とされている。2025年9月期には売上高96.9億円、営業利益率5.5%となり、初年度の主な目標を上回った。
株主還元については中期経営計画期間中の累進配当を掲げ、配当性向20〜50%を目標としている。2025年9月期の配当性向は約25.7%で、2026年9月期は増配予想となった。一方、DOEや総還元性向の数値目標、大規模な自社株買いの金額について明確な約束は確認できない。中期計画が終了した後も累進配当を無条件に続けるとは考えない。
過去の資本配分には事業提携を通じた拡張が目立つ。マネーフォワードとの業務提携、青山財産ネットワークスとの資本業務提携、キヤノンマーケティングジャパンとの提携などがある。近年はTrust EngineとWealth Engineを通じて金融プラットフォームから投資助言まで事業を広げようとしている。大きな買収で急拡大してきた会社ではない点は評価できる。
注意したいのは政策・戦略保有株式である。青山財産ネットワークス株式を保有し、2026年9月期には投資有価証券の評価額が大きく下落した。事業上の提携価値と少数株主に帰属する投資価値を分けて確認する必要がある。含み益を当然のように利益の倍率へ上乗せすることはしない。
2025年9月末の大株主上位10名の保有比率は約51%である。経営者と関係する保有が一定の影響力を持つが、上位10名で65%を超える強い集中支配という条件には当たらない。自社株買いによる株数の大幅な減少も確認できず、余剰資金が株主に戻る割合は慎重に見る。今後の再投資は、新事業の実際の収益性が資本コストを上回るかで評価すべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社は単純な人材派遣型のSI企業とは異なる。国内41社の生命保険会社のうち約30社にシステム導入実績があり、23社と継続的に取引している。約30年に及ぶソニー生命との関係に象徴されるように、金融商品の企画、税制、申込手続きまで理解した上でシステムを設計できる会社は限られる。保険会社にとって、システムの不具合は販売停止や法令違反につながる。多少安い競合が現れても、既存システムの更新を安心して任せられる企業を選ぶ動機は強い。
生成AIも必ずしも脅威だけではない。2026年9月期上期には、コード生成や検証などで最大約60%の時間短縮を実現したと経営者が説明している。これにより開発能力を大幅に増やし、新しい案件を追加人員なしで受注できれば、営業利益率は従来より高くなる。2026年9月期第3四半期累計の営業利益率は9%台に達しており、改善はすでに業績に現れている。
さらに、金融機関のIT投資はクラウド移行や資産形成支援で拡大している。生命保険だけでなく、メガバンク、地方銀行、証券会社、IFAへ顧客を広げる機会がある。Trust EngineのプラットフォームとWMWが広く利用され、Wealth Engineで管理資産に応じた手数料収入まで生まれれば、人月依存を減らしながら利益率を上げられる。金融専門の技術者と投資助言機能を同時に持つことが競争上の強みになる可能性がある。
財務も比較的健全で、無理な大型買収を重ねていない。配当を続けながら新しい収益源を育てる余地がある。AIによる生産性改善を利益として保持し、既存金融機関との関係を基盤に新しい使用料課金を広げられるなら、10年後の収益力は現在より高まる。
慎重な見方
現在の収益構造を重視すべきである。2025年9月期の売上高96.9億円のうち、受託開発は91.2億円に達した。会社自身が人月単価と工数で売上が決まると説明している。生成AIによって開発時間が大幅に短縮されるなら、顧客企業はその節約分の一部を発注価格へ反映するよう求めるはずだ。短期的に生産性改善で利益が伸びても、長期的には同じ成果をより少ない金額で納入する競争に変わり得る。
強い顧客基盤も、売上を守るとは限らない。23社と取引を続けても、1社当たりの開発工数が半減すれば全体の請求数量は減る。保険会社の数は増えにくく、人口減少で従来型の保険販売は成熟している。金融機関の内製開発能力もAIによって高まるため、外部へ発注する範囲自体が小さくなるかもしれない。金融IT市場全体の拡大を同社の売上拡大へ結びつけるのは早計だ。
成長戦略にも時間が必要だ。WMWやCAPライブラリには独自性があるものの、使用許諾・保守の収入は売上の5%程度である。海外ソフトウェア企業や金融機関がAIエージェントを標準機能として提供すれば、ユーザーが画面を操作するためのライセンスは価格競争に陥る。Trust EngineもSoftBIの技術を使うため、製品の差別化と利益の取り分は共同事業の設計に左右される。
長期の資本効率も高くない。2022年9月期には営業赤字となり、2020年から2024年にかけて収益が不安定だった。利益を社内に積み上げても、受託案件が縮小すれば自己資本に見合う利益を稼げなくなる。政策保有株の価格変動も資本を揺らす。短期の最高益だけを根拠に、高い将来利益と長い成長を同時に期待するのは危険である。
どちらに重みを置いたか
顧客基盤の強さについては肯定的に評価する。約23社の生命保険会社と継続的な取引を持つことには明確な価値があり、金融業務の専門性も競合が短期に再現しにくい。ただし、会社全体の94%が受託開発であるため、AIによる工数縮小の影響を避けることは難しい。中立にはすでに受託数量の減少を織り込んでおり、確率で過度に重ね引きはしない。上側32%、下側40%、中立28%としたのは、長期の既存顧客維持には自信がある一方、新しい収益モデルへの転換にはまだ実証が足りないためである。結論として、事業は存続しても投下資本に対する稼ぐ力が弱くなる可能性を重く見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 918 円53 億円(+ 還元の換算額還元の合計 293 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 625 円36 億円、今との差 −26.9%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 2,081 円120 億円 | 434 円25 億円 | +194.2% | +12.9% | 302 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,450 円83 億円 | 365 円21 億円 | +112.2% | +8.9% | 363 円21 億円 |
| 中立 | 28% | 884 円51 億円 | 295 円17 億円 | +37.9% | +3.8% | 330 円19 億円 |
| やや悲観 | 26% | 393 円23 億円 | 243 円14 億円 | −25.6% | −3.6% | 165 円10 億円 |
| 悲観 | 14% | 208 円12 億円 | 156 円9 億円 | −57.3% | −9.9% | 51 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 918 円53 億円 | 293 円17 億円 | +41.7% | +4.1% | 1,211 円70 億円 |
今の株価時価総額 855 円49 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 専門性を守りながらAIで高収益化 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,081 円120 億円
生命保険会社は既存システムの安全な運用と更新を重視し、同社が長年積み上げた顧客との信頼関係を維持する。変額保険、資産形成、相続に関する商品が複雑化して、正確な金融計算と申込手続きへの需要が続く。銀行・証券領域でも大手金融機関からの受注を守り、既存の営業支援システムに新しい機能を提供し続ける。
生成AIによる開発時間の短縮が進んでも、同社は業務設計や品質保証、金融計算の正確性によって付加価値を保持する。人月の請求数量は現在並みにとどまるが、物価に沿った単価上昇と生産性改善が収益性を押し上げる。Trust EngineとWMWも一定の利用を維持し、使用料課金の採算が改善する。ただし、未確認のAIエージェント売上を突然大きな利益源として数えない。
大型買収に依存せず、既存の金融業務に集中して研究開発と株主還元を続ける。2035年には売上高約129億円、営業利益約13.8億円となり、事業としての専門性を維持できる。配当を増やしつつ自己資本も積み上がるが、10年後以降の高成長を当然とはしない。
- 生命保険会社向け受託システム開発:数量 4,500(年間請求人月相当(自社技術者・外注先の工数を含む推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、人件費・外注費の転嫁を含む))→ 売上 102 億円・営業利益 11 億円。受託工数1.00倍、単価1.34倍。既存顧客を維持しAI効率化の利益を守る。
- 銀行・証券・IFA向け受託システム開発:数量 900(年間請求人月相当(推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。受託工数1.00倍、単価1.34倍。銀行・証券の直接受注を維持。
- WMW・CAPライブラリ等の使用許諾・保守:数量 2,000(年間課金ID換算数(企業契約・API利用料・保守料をID相当に換算した推定))× 価格 0.00(1換算ID当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。換算ID1.00倍、単価1.15倍。AI新事業の未確認収入は追加しない。
- その他金融コンサルティング・資産管理関連:数量 50.0(年間顧問・案件換算契約数(推定))× 価格 0.01(1換算契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約換算数量は横ばい。新しい運用資産課金の未確認収益は加えない。
倍率:k=8.0%、10年後ROE約10.3%、普通の堀による超過利益の残存割合1/2からRONICは約9.1%。ただし全社の人月依存とAIエージェント代替により、10年後以降の名目成長率g_long=0%とする。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.5倍。楽観でも市場の過去倍率やAI新事業の未実証成長を上乗せしない。
確率:既存23社前後の生保顧客を守り、開発生産性向上の成果を顧客との価格交渉で失わず、銀行・証券領域も拡大する強い組み合わせである。現在のAIサービスについて売上・受注金額の明確な開示がないため、AI新事業の未実証成長は数量に加算せず、受託数量の上限は現状維持とした。
やや楽観 20% 工数縮小を単価と効率化で補う 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,450 円83 億円
生命保険会社の設計書・申込書システムと商品改定対応は継続する。大手の保険会社や銀行との関係は維持され、新商品の複雑化や金融規制への対応が一定の受注を支える。銀行・証券会社向けでは資産形成支援システムの機能改善が続き、顧客基盤の分散もゆっくり進む。
一方で、AIエージェントは設計、コード作成、テストなどの工数を減らす。顧客の要求する成果は増えても、それに必要な人月は減少する。単価の上昇と開発効率の改善により売上の減少を抑え、受託事業の利益率は比較的良好に保たれる。WMWやCAPライブラリは金融機関の既存業務に残り、使用料課金を維持する。
Trust Engineの新プラットフォームは既存事業を補完するものの、売上構成を大きく変えるほどには拡大しない。大型買収をせず内部投資を続け、配当も利益の範囲で維持する。10年後の利益は直近の改善局面より低くなるが、金融専門ソフトウェア会社として安定的な黒字を確保する。
- 生命保険会社向け受託システム開発:数量 4,050(年間請求人月相当(自社技術者・外注先の工数を含む推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、人件費・外注費の転嫁を含む))→ 売上 91 億円・営業利益 8 億円。請求人月0.90倍、単価1.32倍。高い顧客維持率と効率化が両立。
- 銀行・証券・IFA向け受託システム開発:数量 783(年間請求人月相当(推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。請求人月0.87倍、単価1.30倍。金融機関向けの付加価値案件を維持。
- WMW・CAPライブラリ等の使用許諾・保守:数量 1,900(年間課金ID換算数(企業契約・API利用料・保守料をID相当に換算した推定))× 価格 0.00(1換算ID当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。換算ID0.95倍、単価1.14倍。既存ライセンスが粘る。
- その他金融コンサルティング・資産管理関連:数量 45.0(年間顧問・案件換算契約数(推定))× 価格 0.01(1換算契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。換算数量0.90倍、価格1.30倍。
倍率:ROEは約7.6%でk=8.0%をわずかに下回る。10年後以降のg_long=0%により、正当化PERは1/k=12.5倍を上限とする。受託収益の縮小は10年間の数量に入れており、倍率をさらに恣意的に減らさない。
確率:金融機関のIT需要が底堅く、顧客維持と開発効率化が成果を上げる可能性は相応にある。ただし人月請求は削減されるため、受託数量は現状より減らした。
中立 28% 金融業務は残るが請求人月は減少 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 884 円51 億円
2035年になっても生命保険会社は保険商品を設計し、申込みを受け付け、税制や法令に沿って正しく処理しなければならない。同社の金融業務に関する専門知識は必要とされる。しかし、その実現方法は変わる。設計書、提案書、顧客データの照合、プログラムの変更などは、AIエージェントが多くの作業を実行するようになる。
既存の生命保険会社との取引数が大きく減らなくても、保守・改修案件で請求できる人月は減少する。銀行・証券分野も金融IT市場全体は成長するが、個別の画面改修やアプリ開発への工数発注が減るため、売上の伸びは抑えられる。単価は名目で上がるものの、物価上昇をすべて転嫁できるわけではない。
WMWやCAPライブラリは一定の利用を維持するが、操作画面の席課金には価格圧力がかかる。Trust EngineとWealth Engineは顧客獲得を進めるものの、売上全体を置き換えるほどの規模には至らない。経営は人員配置や外注費を調整して黒字を維持するが、積み上がった自己資本に対する利益率は低下する。金融業務の専門会社として存続するものの、長期の超過利益は小さくなる。
- 生命保険会社向け受託システム開発:数量 3,240(年間請求人月相当(自社技術者・外注先の工数を含む推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、人件費・外注費の転嫁を含む))→ 売上 69 億円・営業利益 5 億円。請求人月0.72倍、単価1.26倍。顧客維持とAIによる工数減少を両立させる。
- 銀行・証券・IFA向け受託システム開発:数量 558(年間請求人月相当(推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。請求人月0.62倍、単価1.28倍。新規需要があっても従来型の工数請求は減る。
- WMW・CAPライブラリ等の使用許諾・保守:数量 1,640(年間課金ID換算数(企業契約・API利用料・保守料をID相当に換算した推定))× 価格 0.00(1換算ID当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。換算ID0.82倍、単価1.10倍。API・保守は残るが画面・席課金は縮小。
- その他金融コンサルティング・資産管理関連:数量 32.5(年間顧問・案件換算契約数(推定))× 価格 0.01(1換算契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。換算数量0.65倍、価格1.25倍。人が行う資料作成などをAIが代替。
倍率:10年後売上高約86.1億円、営業利益率約6.2%、純利益約3.20億円。ROEは約4.6%で資本コスト8.0%を下回る。g_long=0%のため、利益の正当化PERの上限は1/k=12.5倍となる。現状の市場PER、過去のPBR、同業倍率を根拠にせず、事業が生む利益だけから評価する。
確率:金融システムの継続利用という強みと、人月・ID課金に対するAI代替の影響を同時に認めた中心シナリオ。受託開発の数量はAI代替基準の0.55〜0.75倍の範囲内とし、保険向けは0.72倍、銀行・証券向けは0.62倍にした。
やや悲観 26% AIに開発工数を奪われ収益性が低下 利益 1 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 393 円23 億円
金融機関は既存システムの保守を続けるが、生成AIとAIエージェントを標準的な開発手段として採用する。コードの変更、テスト、画面作成、仕様書作成などの工程が自動化され、金融機関が外部へ発注する工数が大きく減る。会社は長年の顧客関係を維持するものの、同じ金融機関から得られる収入は減少する。
銀行・証券向けでは、新しいシステムの導入が進んでも、外部の大手SI会社や金融機関自身の開発部門との競争が激しくなる。WMWも画面操作中心の機能が他社サービスに取り込まれ、ライセンス数量が減る。CAPライブラリの計算機能は一定の価値を保つが、収益全体を支えるほど大きくない。
経営は外注費の削減と人員の再配置で黒字を確保するが、研究開発や金融規制対応の固定費は残る。新規事業への投資は続いても、十分な売上を生まない。2035年には営業利益約2.4億円まで低下し、株主還元も利益に合わせて縮小する。財務の存続は可能だが、自己資本に対する利益は資本コストを大きく下回る。
- 生命保険会社向け受託システム開発:数量 2,385(年間請求人月相当(自社技術者・外注先の工数を含む推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、人件費・外注費の転嫁を含む))→ 売上 47 億円・営業利益 3 億円。請求人月0.53倍、単価1.17倍。中立よりAIによる工数削減が進む。
- 銀行・証券・IFA向け受託システム開発:数量 432(年間請求人月相当(推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。請求人月0.48倍、単価1.15倍。競合と金融機関の内製化が進む。
- WMW・CAPライブラリ等の使用許諾・保守:数量 1,360(年間課金ID換算数(企業契約・API利用料・保守料をID相当に換算した推定))× 価格 0.00(1換算ID当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。換算ID0.68倍、単価横ばい。
- その他金融コンサルティング・資産管理関連:数量 20.0(年間顧問・案件換算契約数(推定))× 価格 0.01(1換算契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。換算数量0.40倍。固定費により小幅赤字。
倍率:ROEは約2.2%でk=8.0%を下回り、稼ぐ力からの上限は純利益÷k=約18.2億円。AI代替で受託案件の収益性が低下した筋書きとして、純利益1.456億円にPER11.5倍を適用し約16.7億円とする。資産床12億円も上回り、歴史的な谷のPBRは用いない。
確率:顧客との長期取引は残っても、AIエージェントの利用が進み受託工数の削減を強く要求される可能性がある。2025年時点の人月依存度が高く、製品課金への転換は未完成であることが、この筋書きの主要な理由。
悲観 14% 人月モデルが構造的に敗れる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 208 円12 億円
金融機関が生成AIによる内製開発を本格化させ、従来の外部受託システム開発を大幅に減らす。生命保険会社は契約手続きや法令対応を続けるが、必要なシステム改修の多くをAIエージェントが実行する。顧客との契約自体は一部残っても、請求可能な人月は現在の半分以下になる。
銀行・証券会社は大型システム会社が提供する共通基盤やAI開発環境を採用し、同社の個別開発案件を削減する。WMWの操作画面や提案書作成機能は他社のAIエージェントに組み込まれ、課金IDも価格も低下する。CAPライブラリの正確な計算ロジックには一定の需要が残るものの、会社の規模を支えるには足りない。
Trust EngineやWealth Engineは期待された収益規模に育たず、経営は人員整理、開発拠点の縮小、外注契約の削減を進める。それでも固定費と維持開発費を十分に吸収できず、2035年には営業赤字となる。自己資本の帳簿額が残っても、高い利益を生まない資産には額面どおりの価値を認められない。株主への還元は大幅に縮小し、最終的な価値は売れる資産の回収価値に近づく。
- 生命保険会社向け受託システム開発:数量 2,025(年間請求人月相当(自社技術者・外注先の工数を含む推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、人件費・外注費の転嫁を含む))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。請求人月0.45倍、単価1.08倍。システム更新業務が大幅に自動化される。
- 銀行・証券・IFA向け受託システム開発:数量 360(年間請求人月相当(推定))× 価格 0.02(1請求人月当たり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。請求人月0.40倍、単価1.05倍。金融機関内製化により採算が消える。
- WMW・CAPライブラリ等の使用許諾・保守:数量 900(年間課金ID換算数(企業契約・API利用料・保守料をID相当に換算した推定))× 価格 0.00(1換算ID当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。換算ID0.45倍、単価0.90倍。AIが操作画面を代替する。
- その他金融コンサルティング・資産管理関連:数量 10.0(年間顧問・案件換算契約数(推定))× 価格 0.01(1換算契約当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。換算数量0.20倍、価格1.05倍。人が作る提案資料への支払いが減る。
倍率:2035年には営業・最終損益が赤字となるため利益倍率を使わず、現在の自己資本37.2億円に約0.323倍を掛けた約12億円を清算可能資産の床として採用する。2035年時点の自己資本61.26億円は長年の利益留保を含む会計上の額であり、それに床のPBRを掛けていない。のれん・将来の取引関係には売却価値を認めず、現在の純現金と売れる資産から算出した床を優先する。
確率:開発工数と操作画面の両方がAIエージェントに代替され、既存顧客との関係が売上維持につながらなくなる構造的敗北を想定する。長年の取引実績から倒産そのものは中心的な結末としないが、仕事の価値と請求方法が変わるリスクは無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
生命保険会社向け受託システム開発
生命保険の設計書・申込書、営業支援、ライフプランニング、保険商品改定に対応するシステムの受託開発。人月・工数型でありAIエージェント代替の影響を受ける。
| 数量年間請求人月相当(自社技術者・外注先の工数を含む推定) | 価格1請求人月当たり売上(億円、人件費・外注費の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 4,500 | 0.02 | 76 | 5 |
| 10 年後 中立 | 3,240 | 0.02 | 69 | 5 |
取り方:2025年9月期の全社受託開発売上91.218億円と、顧客別の生命保険売上比率83.7%から、生命保険向け受託開発を76.35億円と推定した。会計上は単一セグメントであり、顧客別とサービス別を掛け合わせた内訳は開示されていない。2025年9月期の連結従業員387人、外注利用、金融専門開発の年間稼働を踏まえ、年間約4,500請求人月、平均約170万円/人月とする推計であり、実際の開示工数や契約単価ではない。会社は約23社の生命保険会社と継続取引している。営業利益は本社費配賦前の推定貢献利益。AIエージェント代替の型は人月・工数型で、中立数量は現状の0.72倍、価格は1.26倍とする。
銀行・証券・IFA向け受託システム開発
銀行の資産管理・相続・ゴールベースシステム、ネット銀行の業務改善、証券会社やIFAの投資商品発注支援などを受託する。金融システムの専門性はあるが、人月・工数での受注が中心。
| 数量年間請求人月相当(推定) | 価格1請求人月当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 900 | 0.02 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 558 | 0.02 | 12 | 1 |
取り方:2025年9月期の受託開発売上91.218億円から、生命保険向け推定76.35億円を控除した14.87億円。銀行9.88億円、証券3.98億円、その他顧客1.91億円という開示と整合させた概算で、その他顧客向け受託も含む。請求人月は約900、平均約165万円/人月と推定したが、会社から業態別人月は開示されていない。営業利益は本社費配賦前の推定貢献利益。AIエージェント代替の型は人月・工数型であり、中立数量は0.62倍、価格は1.28倍とする。銀行・証券向けの市場は拡大しても、受託工数は同じ割合では増えない。
WMW・CAPライブラリ等の使用許諾・保守
統合資産管理システムWMW、CAPライブラリ、関連シミュレーション機能などの使用許諾、保守、API利用料。ID課金・定額課金・従量課金を含む。
| 数量年間課金ID換算数(企業契約・API利用料・保守料をID相当に換算した推定) | 価格1換算ID当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,000 | 0.00 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,640 | 0.00 | 5 | 1 |
取り方:2025年9月期決算説明資料の使用許諾・保守売上516百万円を基礎とする。実際のライセンス数、WMWの契約ID数、CAPライブラリの従量課金回数は開示されていないため、分析上の換算単位として2,000ID相当、年間25.85万円/IDと仮定した。実契約IDが2,000であることを示すものではない。金融商品仲介業者の外務員約1万人は対象市場の規模を考える参考であり、ここから同社のシェアを直接算出しない。営業利益は本社費配賦前の推定貢献利益。CAPライブラリの法令対応には価値があるが、低解約率や値上げ実績など強い堀の証拠が2件以上確認できないため、AIエージェント代替では席課金・操作画面型として扱う。中立数量は0.82倍、価格は1.10倍とする。
その他金融コンサルティング・資産管理関連
富裕層の相続・事業承継・資産管理コンサルティング等を含む小規模収益。Wealth Engineの投資助言やファミリーオフィス構想は将来の選択肢だが、未実証収益は現在の実績に含めない。
| 数量年間顧問・案件換算契約数(推定) | 価格1換算契約当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 50.0 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 32.5 | 0.01 | 0 | 0 |
取り方:2025年9月期のその他売上約50百万円を基準とした。契約件数や報酬体系は非開示のため、50契約換算、年100万円/件という分析上の便宜的な単位であり、実契約件数を意味しない。Wealth Engineが金融商品取引業の登録を完了したのは2026年6月で、管理資産残高に対する課金収入の実績額は確認できない。成果が確認できるまではAIエージェント代替の人月・コンサル型とし、中立数量0.65倍、価格1.25倍を採用する。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月請求数量の減少
最も大きなリスクである。2025年9月期の売上の94.1%は受託開発であり、会社自身が人月で請求するビジネスモデルだと説明している。設計、コード生成、テスト、ドキュメント作成などが自動化されると、金融機関が購入する請求人月は減る。顧客との関係が長く続いても、1社当たり売上の減少は防げない可能性がある。
使用許諾・保守のAI代替と価格下落
WMWや資産形成支援システムは、顧客管理や提案資料作成など利用者の画面操作を前提とする機能を含む。AIエージェントが画面を介さず銀行・証券会社のシステムへ接続すれば、従来の席課金やライセンス単価は低下し得る。CAPライブラリの法令対応や計算の正確性には価値があるが、その部分だけで全社の受託売上を代替できる証拠はない。
生命保険会社への顧客集中
2025年9月期の生命保険向け売上比率は83.7%に達する。ソニー生命など長期の関係先が強みである反面、大型案件の終了や顧客のシステム内製化、保険会社の統合・再編によって売上が大きく変動する。取引する保険会社の数が多いことと、開発予算が十分に分散されていることは同義ではない。
新規プラットフォームの採算と合弁事業
Trust Engineは台湾SoftBIとの合弁で、同社の出資比率は51%である。技術を活用できる反面、製品開発や機能改善、利益の取り分は共同事業に依存する。日本のIFA市場は米国より小さく、競合も増え得る。Wealth Engineも投資助言業の登録は完了したが、管理資産課金による収入が相応の規模に育つとはまだ確認できない。
金融規制・情報管理とシステム障害
保険、証券、相続、税制に関するソフトウェアは正確性が要求され、法改正や監督当局の方針変更への対応が欠かせない。個人資産、保険契約、顧客情報を扱うため、情報漏洩や重大な計算誤りが発生すれば、金融機関との信頼関係と受注競争力を傷つける。AIを利用した自動開発では、生成されたコードや提案内容の検証責任も残る。
政策保有株と資本効率の低下
同社は青山財産ネットワークスなど事業提携先の株式を保有している。2026年9月期には投資有価証券の評価額が大きく下落し、純資産にも影響した。事業上の提携を守るために株式を売却しにくい場合、少数株主が現金化の時期を選べない。また、利益を長く内部留保しても新しい投資案件の収益率が低ければ、ROEが低下し企業価値を押し下げる。
短期の高利益率を長期へ延長する誤り
2026年9月期第3四半期累計の営業利益率は9%台となり、AI活用による効率化が成果を上げている。しかし、過去には営業利益率が2%前後に低下し、2022年9月期には赤字を計上した。大型案件の採算、外注費、開発案件の検収時期によって利益が変動する。短期の改善を永続的な価格決定力と混同しない必要がある。
今後の分かれ目
- 使用許諾・保守売上の全社比率が15%を超え、契約ID数と継続率が定量開示されたら
- 人月依存の低下を確認し、中立の売上構成と営業利益率を見直す。低解約率、規制対応に伴う値上げ、独自データの蓄積が複数確認できれば、該当する事業部分の堀とg_longも再評価する。
- 受託開発売上が伸びても請求人月の減少と単価の上昇が確認できたら
- 受託工数を成果報酬へ転換できているか調べる。工数を減らしても売上と粗利益を維持できる契約実績があれば、中立の数量と価格を引き上げる根拠になる。
- 2027年9月期の営業利益10億円とROE13%の中期目標を達成したら
- 近い将来の収益力について上方修正を検討する。ただし、受託開発の比率が高いままなら、10年後以降の成長率を機械的には引き上げない。
- 生保向け売上が2期連続で減少し、主因が顧客のAI内製化や工数削減だったら
- AIエージェント代替が想定より速いと判断し、やや悲観・悲観の数量前提を厳しくする。顧客数の減少か、顧客当たりの開発発注額の減少かを分けて確認する。
- Trust EngineまたはWealth Engineが年間5億円以上の継続課金収入を開示したら
- 既存の人月収入と分けて新しい収益源を評価する。管理資産残高やライセンス数、手数料率と解約率を確認し、新事業が資本コストを上回る利益を生むなら中立以上の価値を引き上げる。
- 配当性向50%超の継続、または発行株式数の5%以上の純減少が確認されたら
- 余剰資金が少数株主に戻る実績を評価し、excess_cash_returnを1.0へ見直す。買収や金融資産保有よりも、資本効率の改善につながる還元を重視する。
- 政策保有株を売却し、売却代金を配当・自社株買いに充てたら
- 資産の換金可能性と経営の資本配分を再評価する。売却益を営業利益に混ぜず、税引き後の実際の株主還元と残存資産の価値をそれぞれ計算する。
見ておくもの
- 受託開発売上比率と使用許諾・保守売上比率の四半期・通期推移
- 生命保険会社向け売上と銀行・証券会社向け売上の構成比
- 2027年9月期の売上高110億円、営業利益10億円、ROE13%の中期経営計画達成状況
- 技術者1人当たり売上、受託開発の外注費率、AI活用による工数削減と顧客への価格転嫁
- WMWとTrust Engineの有料契約ID数、使用料課金売上、継続率
- Wealth Engineの顧客数、管理資産残高、投資助言報酬の実績
- 生命保険会社の継続取引社数と大口顧客の案件更新状況
- CAPライブラリのAPI使用料、税制対応に伴う料金改定実績
- 純有利子負債と投資有価証券の時価、政策保有株の売却状況
- 累進配当の継続状況と自己株式取得による実質的な株数減少
倍率と資本コストの決め方
基準時価総額約48.8億円を将来の売上・利益・倍率の設定には使っていない。2025年9月期の開示されたサービス別売上と顧客別売上から受託開発を分け、連結従業員数と外注利用を踏まえて請求人月を推定した。請求人月とライセンス換算IDは開示された実数ではなく、数量・価格を区別するための仮定である。物価3%は価格にのみ入れ、数量には混ぜていない。
2025年の推定セグメント貢献利益合計約6.6億円から本社共通費約1.3億円を差し引くと、実績営業利益約5.3億円となる。2035年の本社共通費は物価上昇による人件費負担を考えておおむね1.75億円とし、やや悲観のみ縮小対応により1.6億円とした。ソフトウェア償却は既存資産の簿価のまま減少する一方、新しい開発投資の償却が加わるため、全費用を単純に1.34倍していない。利益から現金への転換では更新開発と運転資金を無視しない。
10年後の倍率は資本コスト8.0%とg_long=0%から決めた。楽観から中立まで正当化PERの上限12.5倍をそのまま使い、現在や過去の株価倍率には寄せていない。悲観は過去のPBRの谷ではなく、現在の純現金、換金可能な投資有価証券、営業債権の回収価値を基準にした。自己資本は各筋書きで今の37.2億円に10年間の利益を加え、還元を差し引いている。新リース会計基準による使用権資産と負債の表示変更は、家賃負担そのものが消えることを意味しないため、10年の利益を現在と比較できる賃借費用負担の形で評価した。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、営業利益の変動に対応したquality+0.5%を加えて8.0%とした。規模や株価βは使わず、特定顧客への依存と新事業の成否は数量・利益率・確率で扱う。