結論
ティアフォーは、自動運転用のオープンソースソフトウェア「Autoware」の開発を主導し、自動運転車両の実装、メーカー向けシステム開発、開発支援ツールの提供で稼ぐ企業である。筆者の結論は「割高」だ。自動運転の市場が大きく広がる見込みはあるが、それが同社の株主利益として残るかは、まだ十分に証明されていない。
同社の強みは、国内の実証・導入実績と、トヨタ、いすゞ、ヤマハ発動機などのメーカーとの協業にある。2025年9月期末の累計車両運用台数は114台で、会社は2030年9月期に1,800台超を目指す。2026年にはKDDIとの協業が具体化し、国内の自動運転サービスの普及に向けた実行体制も広がった。これらは単なる構想ではなく、商用化に向けた足場として評価できる。
ただし、実証実験を増やすことと、利益を生む車両を大量に運用することは別の仕事だ。2025年9月期の売上高64億円に対して営業損失は105億円だった。2026年9月期も会社は大幅な赤字を予想している。研究開発への公的補助金が損益を支えているため、経常損益の改善だけでは事業そのものの採算が改善したとは言えない。
10年後には、車両販売や開発受託より、車両ごとのソフトウェア使用料と運用保守が利益の中心になっていることが望ましい。反対に、AIによる開発工程の自動化、自動車メーカーの内製化、オープンソースの無償利用が進めば、台数が増えても一台当たりの取り分が縮む。筆者は技術の将来性を認めつつ、株主に帰属する利益の確度を厳しく見る。中立では商用化に成功しても現在の評価を十分に正当化できず、確率を加味した本質価値は現時点の基準時価総額を大幅に下回る。
なお、添付データの株数と会社の公式開示には重大な差がある。分析基準は指定どおり添付データを採用したが、公式発行済株式数で計算すると時価総額はさらに大きくなる。この差は投資判断前に必ず解消すべきである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ティアフォーは事業の将来を理解することと、その将来に高い値段を払うことを分けて考えたい企業である。自動運転の必要性は高い。地方のバス運転手が不足し、物流や工場でも人手の確保が難しくなるなら、安全で安価な自動運転は長く求められる。しかし、需要が長く続くことだけでは、ティアフォーの株主利益が長く続く証拠にならない。
長期株主が欲しいのは、追加の資本をほとんど必要とせず、顧客が増えるほど利益が増える事業だ。車両ごとの継続ライセンスや保守収入が大きくなれば、その条件に近づく。ところが現段階では、売上の大きな部分が導入支援や開発受託であり、売上を増やすために高度な技術者と研究開発資金を必要とする。これでは、売上の成長がそのままオーナー利益の成長にならない。
Autowareの共同開発体制には独自の魅力がある。外部の開発者が改良に参加し、メーカーが共通の技術基盤を利用すれば、一社では負担できない開発費を分散できる。ただし、オープンソースの普及によって増える価値を、どの企業が利益として受け取るかは別問題だ。無料の技術基盤が広がり、利益は車両メーカー、半導体メーカー、運行会社に残る可能性もある。
筆者が最も重く見るのは、同社の技術が欠かせない状態になったとき、顧客が十分な使用料を払い続けるかどうかである。安全認証、運行記録、車両への実装ノウハウが強い乗り換え障壁になり、台数の拡大とともに粗利益率が高まれば、本物の堀として再評価できる。反対に、メーカーの内製化と価格競争で使用料が縮めば、事業は必要とされても株主価値は伸びない。
今の段階では、将来の成長を相当程度織り込んだ評価に対して、安全域が足りない。技術開発の成果、量産への移行、研究開発費の抑制、株主への還元という順番で実績を確認していくべき企業である。
何で稼ぐ会社か
ティアフォーの事業は、自動運転の基盤ソフトウェアを開発し、それを実際の車両に載せ、安全に運行できる状態まで仕上げることで成り立つ。Autowareのソースコード自体は公開されている。しかし、ソフトウェアを入れただけでは、公共交通に使える自動運転車にはならない。車両の制御、センサーの調整、走行環境への適合、安全性の検証、認可取得、遠隔監視などの仕事が残る。同社はこの難しい部分を商品とサービスにしている。
モビリティサービスは、自治体や交通事業者向けに自動運転車両を供給し、導入時の開発や設定、運行後の保守まで提供する。2025年9月期の売上高は22.67億円だった。累計導入台数は25台、展開地域は50地域であり、まだ少量生産と地域ごとの調整が中心だ。今後は一つの地域に複数台を導入し、車両販売の一時的な収入に継続的な運用収入を加える必要がある。
デベロップメントサービスは、トヨタ、いすゞ、スズキ、ヤマハ発動機、コマツなどに向け、自動運転システムの共同開発や量産化支援を提供する。2025年9月期の売上高は13.30億円で、開発プロジェクトの顧客は9社だった。開発段階の設計・検証の対価は人手に依存するが、量産後にADKなどの製品販売やソフトウェアライセンスを得られれば、収益の性質は大きく変わる。ヤマハ発動機との関連事業では工場内搬送車両の商用運用が進んでいる。
ソリューションサービスは、ソフトウェアツール、センサーなどのハードウェア、技術コンサルティングを大学、研究機関、メーカー、政府機関へ提供する。2025年9月期の連結売上高は28.12億円だった。単体開示ではコンサルティングが売上の大部分を占めるため、現段階では開発者向けソフトウェアの継続課金企業というより、公共委託事業と技術支援の色が濃い。
3サービスは共通のAutowareを使い、相互に顧客と技術を供給し合う。事業としての本当の転換点は、受託開発費を受け取る段階から、メーカーが量産した多数の車両について継続的に使用料を受け取る段階への移行である。
優良さと弱いところ
ティアフォーには技術的な先行優位がある。しかし、長期にわたって値上げを通せる強い堀が完成したとは判断しない。Autowareには世界の外部開発者が参加し、会社開示によればコードへの貢献者の約68%は社外のエンジニアである。この共同開発体制は研究開発費を抑える可能性がある。国内の実証・実装実績は127地域に達し、メーカーとの開発実績も積み重なった。安全性を検証した実装資産と許認可対応の経験は、単なるソフトウェアの模倣より移転しにくい。
一方、公開されている基盤ソフトウェアそのものを独占することはできない。自動車メーカーがAutowareを利用しながら周辺機能を内製化すれば、ティアフォーへの支払額は減りうる。トヨタやいすゞとの協業は販路であると同時に、交渉力の強い顧客への依存でもある。低い解約率、値上げ成功率、ライセンスの継続率など、利益を守る強い証拠はまだ十分に開示されていない。
資本効率は現時点で悪い。2024年9月期と2025年9月期はともに営業赤字で、ROEも大幅なマイナスだった。先行投資の時期であることは理解できるが、研究開発費を投じた結果として、どれだけ継続的な粗利益を生めるかは未確定だ。今後の増分ROICが資本コストを超えるためには、同じ技術を多くの車両に展開し、追加開発を抑えながら使用料を得る必要がある。
財務面では新規上場による資金調達が研究開発の継続を支える。ただし、厚い現金は赤字が続けば減っていく。安全性に関する投資は削減しにくく、資本効率の改善が遅れれば追加増資で既存株主の取り分が薄まる。現段階では、広い堀を持つ成熟企業ではなく、有力な技術を持つ実証から商用化への移行企業と見るべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動運転は、日本の人口減少と運転手不足から強い需要を受ける市場である。政府は2030年度までに全国のバス、タクシー、幹線輸送トラックなどで自動運転サービス車両1万台を目指す。これは達成済みの需要ではなく政策目標だが、許認可、実証予算、運行インフラの整備を促す。運転手を確保できない地方路線にとって、自動運転は単なる便利な新技術ではなく、移動手段を残すための選択肢になっている。
ティアフォーは、この市場でバス・シャトルと工場内搬送車両を先行領域としている。KDDIおよびKDDIスマートモビリティとの協業では、2030年までに累計1,000台規模の商用導入を目指す。会社全体では1,800台超を掲げるが、工場などの閉鎖空間で使う車両も含まれるため、政府の公共交通向け1万台と単純に割って国内シェア18%と断定してはいけない。実際の市場占有率は、用途ごとに分けて追う必要がある。
国内の競争相手にはBOLDLY、アイサンテクノロジー、マクニカなどがあり、実装や運行の領域で競争と協業が入り交じる。海外ではWaymo、WeRide、Pony.aiなどが先行し、自動車メーカー各社やNVIDIA、Mobileyeも異なる階層で自動運転の技術基盤を提供している。同一条件で比較できる販売台数や有料ライセンスのシェアは公開情報だけでは十分に確認できず、特定企業の数値を推測で埋めるべきではない。
技術の競争軸は、事前に定めた規則で走る方式から、AIを利用して複雑な環境を認識・判断する方式へ広がっている。2026年10月にはミュンヘン工科大学との研究拠点を通じ、NVIDIA HyperionとAutowareを組み合わせる取り組みが発表された。これは技術開発の選択肢を増やす一方、より大きな半導体・自動車企業がシステム全体を標準化する可能性も示す。
10年間で市場の車両数は大きく増えると見る。ただし、量産によってセンサーと演算装置の価格は実質的に下がり、オープンソース化によるソフトウェアの値下げ圧力も続く。市場の売上が増えることと、個々のソフトウェア企業の利益率が上がることを分けて考える必要がある。
資本政策と M&A
資本配分の中心は、当面の株主還元ではなく研究開発と量産準備である。2026年7月の事業計画及び成長可能性に関する開示では、上場調達資金204.47億円を、研究開発費87.71億円、量産・事業拡張費82.72億円、組織拡張費34.04億円に充てる方針が示された。配分期間は主として2026年9月期から2028年9月期である。会社は売上高と経常利益を重要な経営指標としているが、複数年度にわたる売上高、営業利益、ROEの確定的な数値目標は示していない。
2026年9月期の会社予想は売上高約85億円、経常損失約66億円、純損失約67億円である。2025年9月期と2026年9月期の配当はゼロで、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束はない。収益基盤ができるまでは、配当より手元資金の確保が優先されると見る。
過去の資本政策は、事業会社との資本提携や研究開発投資を中心としてきた。SOMPOホールディングス、ヤマハ発動機、いすゞ、KDDIなどの保有は販路や技術協業につながるが、株式の持ち合いに近い安定株主構成が少数株主への還元を保証するわけではない。ヤマハ発動機との合弁事業などには事業上の合理性があるものの、持分法投資損失が生じた経緯も確認する必要がある。
買収や事業提携は新技術の取得と販路拡大に役立ちうるが、現状の赤字と開発負担を考えれば、大型M&Aには慎重であるべきだ。将来の株主利益を決めるのは、資金を使った研究成果そのものではなく、研究成果から得られる現金収入と再投資利回りである。公開買付けや上場廃止の決定は、確認した直近の開示からは認められず、継続企業の前提に関する注記についても確認できた中間期資料では該当事項がない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の自動運転市場は実証段階から量産段階へ移り始めており、ティアフォーはその移行で有利な位置にある。Autowareを軸にした共同開発体制は、個々の企業が自前で自動運転の全機能を開発する必要を減らす。国内で積み重ねた実装経験に加え、トヨタ、いすゞ、ヤマハ発動機などのメーカーとの共同開発がある。メーカーが量産する車両に同社のソフトウェアが採用されれば、ティアフォー自身が完成車の工場を持たなくても、車両数の増加に応じて収益を得られる。
2026年8月の会社説明では、2025年9月期末の累計114台から、2030年9月期に1,800台超を目指すと明らかにした。この数字は単なる市場規模の想像ではなく、受注済みまたは条件付き受注などの量産案件を積み上げた目標と説明されている。KDDIとの協業も地域交通への導入と遠隔監視を含むため、車両販売から運用までの仕組みが整いつつある。
公共交通だけでなく、工場内搬送、建設機械、物流、海外向け車両にも用途が広がる。ヤマハ発動機との取り組みでは実際の商用運用が進み、2026年10月にはミュンヘン工科大学との研究拠点でNVIDIAの技術基盤との統合も発表された。オープンソースによって研究開発費の負担を分散しながら、商用化に必要な安全性や運用ノウハウを蓄積できる可能性がある。
仮に2030年の導入計画が達成され、その後も国内外で車両数が増え続ければ、継続ライセンスと保守収入の比率が高まる。売上が拡大しても研究開発費を比例的に増やさずに済むなら、営業利益率は大幅に改善しうる。先行投資を終えた後に高い増分ROICが生まれる事業へ転換する可能性は、無視できない。
慎重な見方
最大の問題は、これまでの売上増加が収益性を証明していないことだ。2025年9月期には売上高64億円に対して営業損失105億円を計上した。研究開発費が極めて大きく、経常損益は公的補助金に支えられている。会社が示す800台という黒字化の目安も、車種別の単価、開発費、補助金収入の前提が変われば、そのまま使える保証はない。
もう一つの問題は、Autowareの普及がティアフォーの独占的な収益につながるとは限らないことだ。公開ソフトウェアである以上、メーカーは自社の製品に組み込んで改良できる。トヨタ、いすゞ、コマツなどは重要な顧客だが、長期的にはシステムの内製化を進める能力も持つ。半導体や車両制御の標準化が進むほど、外部ソフトウェア会社の取り分が小さくなる可能性がある。
さらに、生成AIとAIエージェントは同社の受託開発や技術コンサルティングの経済性を変える。自動運転車そのものの需要は増えても、ソフトウェアの設計、試験準備、コード作成、報告書作成などの工数は減らせる。顧客が成果に対して支払うようになれば、人月に近い対価を受け取る仕事の数量は縮み、値上げも難しくなる。
競争面ではWaymoやWeRideなどの海外勢が実運行から大規模なデータを集めている。国内でも複数の事業者が安全性と価格を競う。技術革新が速いほど、既存の実証実績は次世代の優位性を保証しない。事故が発生すれば許認可と顧客の信頼に影響する。研究開発への投資を続けても販売数量が増えなければ、追加増資と大幅な希薄化が避けられなくなる。
どちらに重みを置いたか
社会的な需要と具体的な量産案件では強い見方に根拠がある。一方、長期にわたる利益率と株主への取り分では慎重な見方が優勢だ。会社は累計1,800台超という目標を掲げたが、現時点では多額の研究開発費と補助金依存が残る。さらに、人月型の開発・コンサル収入がAIエージェントに代替されるリスクもある。
確率は楽観側28%、中立29%、悲観側43%とし、下側へ15ポイント寄せた。理由は事業の消滅を予想するからではなく、量産の成功と十分な株主利益の獲得を同時に達成する難しさにある。中立でも黒字化と大幅増収を認めており、同じ懸念を利益と確率で過度に重ねないようにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,212 円1,090 億円(+ 還元の換算額還元の合計 117 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 988 円487 億円、今との差 −58.9%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,576 円4,720 億円 | 555 円274 億円 | +321.1% | +16.1% | 1,013 円499 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,366 円2,152 億円 | 296 円146 億円 | +93.8% | +7.1% | 839 円414 億円 |
| 中立 | 29% | 1,481 円730 億円 | 28 円14 億円 | −37.3% | −4.6% | 438 円216 億円 |
| やや悲観 | 25% | 148 円73 億円 | 0 円0 億円 | −93.8% | −24.3% | 37 円18 億円 |
| 悲観 | 18% | 11 円6 億円 | 0 円0 億円 | −99.5% | −41.5% | 2 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,212 円1,090 億円 | 117 円58 億円 | −3.2% | −0.3% | 2,329 円1,148 億円 |
今の株価時価総額 2,406 円1,186 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 量産基盤の標準化と海外展開に成功 利益 452 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9,576 円4,720 億円
Autowareを基盤とする自動運転システムが国内のバス、シャトル、工場内搬送、建設機械で広く採用される。KDDIとの協業が地域交通の標準的な実装モデルになり、メーカー側でもティアフォーのソフトウェアライセンスが量産車に組み込まれる。2030年の累計1,800台超という目標を達成した後も、海外での販売と商用運用が拡大する。
トヨタ、いすゞ、ヤマハ発動機などとの協業が量産収入に変わり、車両の増加に対して研究開発費の増加が緩やかになる。ミュンヘン工科大学やNVIDIAとの協業も実際の海外導入につながる。大手メーカーの内製化が進んでも、安全性の検証と運用基盤の標準化で同社が不可欠な技術供給者として残る。
収入の中心は、受託開発から車両単位のライセンスと継続保守へ移る。低採算の実証委託に依存せずに粗利益を増やせるため、研究開発を続けながら高い営業利益を確保する。資本を追加投入したときの利益率も高く、株主還元を始められる。国内外で自動運転プラットフォームの主要な供給者になった姿である。
- モビリティサービス(車両販売・導入・運用):数量 2,300(累計導入・運用車両数(台))× 価格 0.66(累計運用車両1台に対応する年間売上換算額(億円。車両販売・初期開発・保守の合計))→ 売上 1,518 億円・営業利益 638 億円。累計運用2,300台。海外と国内の複数台導入が進む。初期導入費の低下を継続保守で補う。
- デベロップメントサービス(受託開発):数量 9.0(年間の開発プロジェクト顧客・案件相当数(件))× 価格 1.70(1案件当たり開発受託売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。AI代替で開発工数は増えず、高度な安全認証支援で案件単価を維持する。
- デベロップメントサービス(車両向けライセンス・ADK):数量 13,500(OEMが導入した累計運用車両数(台))× 価格 0.03(1台当たり年間ライセンス・機器売上換算額(億円))→ 売上 405 億円・営業利益 316 億円。海外・産業用途を含めOEM量産車両13,500台に展開。継続利用と製品収入が拡大。
- ソリューションサービス(技術支援・公共受託):数量 24.0(年間の技術支援・実証委託プロジェクト相当数(件、推定))× 価格 1.30(1案件当たり受託売上(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 10 億円。人月業務はAI代替を受けるが、安全認証など現場対応の高付加価値案件が残る。
- ソリューションサービス(ソフトウェア・ハードウェアツール):数量 260(年間のツール・機器販売先相当数(件、推定))× 価格 0.20(1販売先当たり年間ツール・機器売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 21 億円。世界の開発者・メーカー向けに検証機器と開発製品の販売が広がる。
倍率:資本コストk=9.25%、2036年のROE=452÷1686=26.81%。通常の堀として超過収益力の残存を1/2とし、RONIC=9.25%+0.5×(26.81%-9.25%)=18.03%。10年より先のg_long=1.0%。正当化PER=(1-1.0%÷18.03%)÷(9.25%-1.0%)=約11.449倍とし、楽観でも事業の寿命と価格競争を無視しない。市場で付いている倍率は使わない。
確率:2030年の導入目標を達成したうえ、海外と産業用途へ大きく拡張し、ライセンス収入と利益率の両方が伸びる筋書き。複数のメーカーが継続採用し、技術競争でも勝ち続ける必要があるため10%にとどめる。
やや楽観 18% 国内量産が定着しライセンス収入が伸びる 利益 208 億円 · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,366 円2,152 億円
国内の自動運転バスと産業車両の導入が進み、ティアフォーは先行領域で一定のシェアを確保する。2030年の累計導入計画は概ね実現し、その後も自治体と交通事業者による車両の追加導入が続く。KDDIスマートモビリティとの協業では、遠隔監視や運行管理を含むサービスが全国に広がる。
OEM向けでは、ヤマハ発動機との工場内搬送や、いすゞ、トヨタなどの開発案件の一部が継続的なライセンス収入に転じる。すべてのメーカーを獲得するわけではないが、複数の量産車種への採用が定着する。ソフトウェアの無償部分が広がっても、商用安全性の検証、車両適合、運用保守については有料のサービスが残る。
研究開発費は名目額で増えるものの、売上高の伸びより遅い。開発受託はAIエージェント代替のため大きく伸びず、利益率の改善を牽引するのは車両向けライセンスと量産後の保守収入だ。株主還元は黒字化と十分な資金余力を確認した後に始まり、資本効率は成熟した技術企業に近づく。
- モビリティサービス(車両販売・導入・運用):数量 1,200(累計導入・運用車両数(台))× 価格 0.61(累計運用車両1台に対応する年間売上換算額(億円。車両販売・初期開発・保守の合計))→ 売上 732 億円・営業利益 322 億円。国内の量産と追加導入で1,200台規模まで拡大し、継続保守の構成比が高まる。
- デベロップメントサービス(受託開発):数量 8.0(年間の開発プロジェクト顧客・案件相当数(件))× 価格 1.60(1案件当たり開発受託売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。人月型の案件は減るが、設計と安全性の高度化で付加価値が残る。
- デベロップメントサービス(車両向けライセンス・ADK):数量 7,000(OEMが導入した累計運用車両数(台))× 価格 0.03(1台当たり年間ライセンス・機器売上換算額(億円))→ 売上 224 億円・営業利益 170 億円。OEMの量産車に搭載され、累計7,000台相当の製品・ライセンス収益となる。
- ソリューションサービス(技術支援・公共受託):数量 20.0(年間の技術支援・実証委託プロジェクト相当数(件、推定))× 価格 1.28(1案件当たり受託売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 8 億円。AI代替が進むが、現場での安全検証を含む受託案件は残る。
- ソリューションサービス(ソフトウェア・ハードウェアツール):数量 170(年間のツール・機器販売先相当数(件、推定))× 価格 0.18(1販売先当たり年間ツール・機器売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 12 億円。安全検証・開発用の機器需要が増え、製品構成も改善する。
倍率:2036年のROE=208÷950=21.89%。k=9.25%、通常の堀の残存割合1/2からRONIC=15.57%、g_long=1.0%。正当化PER=(1-1.0%÷15.57%)÷(9.25%-1.0%)=約11.343倍。利益の質は資本コストとRONICで反映済みなので、さらに恣意的な割引は加えない。
確率:国内の量産案件とKDDIとの協業には具体性がある。2030年の目標を概ね達成し、その後にOEM向けライセンスが広がる可能性を評価するが、海外展開や利益率の改善には不確実性が残るため18%。
中立 29% 商用化は進むが利益率は限定的 利益 72 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,481 円730 億円
日本の自動運転市場は政府目標より緩やかな速度で普及するが、バス・シャトルと工場内搬送では着実な需要が生まれる。ティアフォーはKDDIとの協業や国内メーカーとの共同開発を足場に、2036年までに累計4,000台程度の車両運用へ関与する。2030年の会社目標は一部案件の遅延を伴いながらも、2030年代前半にはおおむね実現する。
量産が進むことで車両単位の売上が増え、継続ライセンスと保守収入の比率も高まる。ただし、顧客である自動車メーカーは量産による値下げを求め、自社で対応できるソフトウェア機能を内製化する。Autowareの無償部分が広がるため、車両台数の増加ほど一台当たり使用料は増えない。
技術支援と開発受託ではAIエージェントが設計・試験・資料作成の工程を自動化する。人月に近い仕事の数量は現在より減少するが、実車の安全検証や許認可対応が残るため消滅はしない。研究開発費は高い水準が続き、量産収益によってようやく十分に吸収される。最終的に営業黒字化と一定のROEを達成するが、ソフトウェアの独占企業のような高い利益率には届かない。
- モビリティサービス(車両販売・導入・運用):数量 800(累計導入・運用車両数(台))× 価格 0.58(累計運用車両1台に対応する年間売上換算額(億円。車両販売・初期開発・保守の合計))→ 売上 464 億円・営業利益 195 億円。800台に拡大。物価は上がるが量産で導入単価が下がり、運用保守が補う。
- デベロップメントサービス(受託開発):数量 6.0(年間の開発プロジェクト顧客・案件相当数(件))× 価格 1.56(1案件当たり開発受託売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替の人月型。数量6÷9=0.67倍、価格1.56÷1.20=1.30倍。
- デベロップメントサービス(車両向けライセンス・ADK):数量 3,300(OEMが導入した累計運用車両数(台))× 価格 0.03(1台当たり年間ライセンス・機器売上換算額(億円))→ 売上 99 億円・営業利益 76 億円。OEM運用車両が3,300台に拡大。一台当たり使用料は実質的には低下する。
- ソリューションサービス(技術支援・公共受託):数量 16.0(年間の技術支援・実証委託プロジェクト相当数(件、推定))× 価格 1.22(1案件当たり受託売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 6 億円。AIエージェント代替の人月型。数量16÷24=0.67倍、価格1.22÷0.9775=1.25倍。
- ソリューションサービス(ソフトウェア・ハードウェアツール):数量 115(年間のツール・機器販売先相当数(件、推定))× 価格 0.16(1販売先当たり年間ツール・機器売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 6 億円。開発機器とソフトウェア製品の販売先が増加。平均価格は物価並み。
倍率:2036年のROE=72÷483=14.91%。k=9.25%。通常の堀として超過収益力の残存割合1/2を適用し、RONIC=9.25%+0.5×(14.91%-9.25%)=12.08%。g_long=1.0%から正当化PER=(1-1.0%÷12.08%)÷(9.25%-1.0%)=約11.118倍。中立はこの上限をそのまま使用し、足元の赤字や現時点の株価倍率から値付けしない。
確率:実装案件と政府の普及目標は成長を支えるが、製品単価低下、OEM内製化、AIエージェント代替、研究開発の継続負担を同時に織り込む。黒字化を認めるものの、2030年以降の高収益化は限定的と見る中心シナリオ。
やや悲観 25% 量産が遅れ開発受託が縮小 利益 −9 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 148 円73 億円
自動運転の市場は拡大するが、ティアフォーが期待した量産案件の一部は予定どおりに進まない。自治体の導入予算が制約され、運行会社も保守と遠隔監視の費用を負担しきれず、実証から本格導入への移行が遅れる。KDDIとの協業は続くものの、計画した車両台数を実現できず、海外市場でも競争力を十分に確立できない。
OEM側では、共通の自動運転技術が普及するほど内製化が進み、ティアフォーのソフトウェア使用料が抑えられる。開発受託ではAIエージェントによる設計・試験支援の自動化が進み、従来必要だった工数が減る。公共実証の受注も縮小するため、継続ライセンスの伸びでは既存の収入減少を補えない。
経営は研究開発人員と対象技術を絞り、採算の取れない事業から撤退する。研究開発費と本社費を大幅に減らすことで資金流出は抑えるが、開発規模を縮小するため将来の競争力も弱まる。事業は存続するものの、商用化の主導権を失い、保守と限定的な導入支援を中心とする小さな企業へ後退する。
- モビリティサービス(車両販売・導入・運用):数量 250(累計導入・運用車両数(台))× 価格 0.45(累計運用車両1台に対応する年間売上換算額(億円。車両販売・初期開発・保守の合計))→ 売上 113 億円・営業利益 32 億円。地域導入が伸び悩み、車両の価格競争で利益率も低下する。
- デベロップメントサービス(受託開発):数量 6.0(年間の開発プロジェクト顧客・案件相当数(件))× 価格 1.47(1案件当たり開発受託売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。受託開発案件が減り、AI代替とメーカー内製化で採算が悪化する。
- デベロップメントサービス(車両向けライセンス・ADK):数量 1,100(OEMが導入した累計運用車両数(台))× 価格 0.02(1台当たり年間ライセンス・機器売上換算額(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 11 億円。量産車両の採用が限定的でライセンス単価も下落する。
- ソリューションサービス(技術支援・公共受託):数量 16.0(年間の技術支援・実証委託プロジェクト相当数(件、推定))× 価格 1.15(1案件当たり受託売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。公共委託と実証支援の縮小により、人月型収入が減る。
- ソリューションサービス(ソフトウェア・ハードウェアツール):数量 70.0(年間のツール・機器販売先相当数(件、推定))× 価格 0.14(1販売先当たり年間ツール・機器売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。開発ツールは競争力を失い、顧客数の伸びが鈍化する。
倍率:2036年も営業赤字であり、利益にPERを掛ける評価は適切でない。2026年の上場後に調整した自己資本約276億円から10年間の損失合計約190億円を控除し、2036年の自己資本を約86億円とする。資産が既に毀損した後の残余財産価値約80億円を評価し、2036年の減少後自己資本に対するPBR0.93倍で表現した。これは利益を積み上げた大きな自己資本に過去の市場PBRを掛けたものではない。
確率:現在の売上規模に対する研究開発費が大きく、導入案件の遅延だけで黒字化の時期が変わる。OEM内製化とAI代替で受託収入が減り、研究開発組織の縮小に追い込まれる可能性を重く見て25%。
悲観 18% 技術標準化で主導権を失い資本を毀損 利益 −33 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11 円6 億円
自動運転の普及自体は進むものの、技術の中核は大手自動車メーカーと海外のプラットフォーム企業に移る。Autowareは公開ソフトウェアとして残るが、ティアフォーが収益を得られる範囲は狭まる。AIによる自動運転システムの開発が進み、別の技術基盤が実車への採用で優位になる。既存の顧客も自社開発や他社の製品へ移行する。
国内では公共事業の優先順位が変わり、実証実験と研究開発委託が縮小する。事故や安全性の検証負担が重なれば、同社の量産開発が延期される可能性もある。車両の運用台数が十分に増えない一方、ソフトウェアの無償化や価格競争で使用料は下がる。AIエージェントは受託開発やコンサル業務の工数を削減し、残る案件も競争入札で採算が悪化する。
営業赤字が続くため、研究開発部門を大幅に縮小し、将来の技術優位を回復する余力も失う。現金は研究開発費、退職関連費用、運転資金に使われ、経営を維持するために大幅な第三者割当増資を行う。既存株主の持分は薄まり、2036年には一部の保守・技術支援を残すだけの小規模企業となる。自動運転市場が成長しても、当初の株主がその価値を十分に受け取れない筋書きである。
- モビリティサービス(車両販売・導入・運用):数量 80.0(累計導入・運用車両数(台))× 価格 0.30(累計運用車両1台に対応する年間売上換算額(億円。車両販売・初期開発・保守の合計))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。量産開発に失敗し、既存地域の保守と少量販売だけが残る。
- デベロップメントサービス(受託開発):数量 5.0(年間の開発プロジェクト顧客・案件相当数(件))× 価格 1.35(1案件当たり開発受託売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。OEM内製化とAI代替により、受託案件と付加価値が大きく縮小する。
- デベロップメントサービス(車両向けライセンス・ADK):数量 200(OEMが導入した累計運用車両数(台))× 価格 0.01(1台当たり年間ライセンス・機器売上換算額(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。OEM量産への採用が限定的になり、製品単価も下落する。
- ソリューションサービス(技術支援・公共受託):数量 8.0(年間の技術支援・実証委託プロジェクト相当数(件、推定))× 価格 1.05(1案件当たり受託売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。実証補助金と政府委託の縮小、AI代替で売上が大幅に減る。
- ソリューションサービス(ソフトウェア・ハードウェアツール):数量 30.0(年間のツール・機器販売先相当数(件、推定))× 価格 0.12(1販売先当たり年間ツール・機器売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。ツールの無償化と代替技術で販売数量が縮小する。
倍率:収益価値は赤字継続のため認めず、研究開発と資本毀損後の2036年自己資本16億円のみを評価する。救済増資180億円を受けても累積損失で自己資本がほぼ消失する姿であり、16億円×1.0倍=16億円。床とする回収可能資産10億円を下回らない。今の自己資本129.3億円や上場後の調整後自己資本276.4億円を増やしてからPBRを掛ける方法は採らない。
確率:自動運転システムの主導権が大手OEM・海外企業へ移り、国内の補助金と実証案件が縮小する複合シナリオ。赤字が長引くと資金調達と希薄化が連続する可能性があるため、構造的な負けとして18%を認める。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モビリティサービス(車両販売・導入・運用)
自治体や交通事業者に自動運転車両を提供し、導入開発、走行環境への適合、運用保守を行う。車両の物理的な供給と安全対応が中心であり、AIエージェント代替は事務・設計支援部分に限られる。
| 数量累計導入・運用車両数(台) | 価格累計運用車両1台に対応する年間売上換算額(億円。車両販売・初期開発・保守の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 25.0 | 0.91 | 23 | 5 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.58 | 464 | 195 |
取り方:会社の2026年7月22日事業計画p.7、p.9による売上22.67億円と累計車両運用台数25台を使用。22.67÷25=0.9068億円。これは車両そのものの販売価格ではない。50地域における初期開発、車両販売、保守を含む売上を累計車両数で割った代理単価であり、少数の車両に導入固定費が載っている。2036年は量産による初期費用の分散を価格低下として表す。事業別営業利益は未開示のため、op_okuは共通研究開発費を控除する前の推定貢献利益。https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS83940/f267d7b5/e176/4b7e/94e6/e3305d645a19/140120260721596913.pdf
デベロップメントサービス(受託開発)
自動車メーカーや産業車両メーカーの自動運転システムを共同開発する。設計・検証・実装の人月に近い収入であり、AIエージェント代替の『人月・工数型』に分類する。
| 数量年間の開発プロジェクト顧客・案件相当数(件) | 価格1案件当たり開発受託売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 9.0 | 1.20 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 1.56 | 9 | 3 |
取り方:デベロップメントサービスの開示売上13.30億円と開発プロジェクト顧客9社を利用。開示にはNREとADK・ライセンスの金額別内訳がないため、受託開発を10.80億円、製品・ライセンスを2.50億円と仮配分した。9社×1.20億円は顧客一社を一案件とみなした代理数量であり、実契約件数ではない。AIエージェント代替を考慮し、中立の数量は9件から6件、0.67倍に縮む。価格は物価3%の10年累積1.34倍を上限として開発工数の価値低下を反映する。
デベロップメントサービス(車両向けライセンス・ADK)
OEMが自動運転車を量産した際のソフトウェアライセンス、関連機器、運用に伴う継続的な使用料。車両と結び付く収益であり、人月型や席課金型とは区別する。
| 数量OEMが導入した累計運用車両数(台) | 価格1台当たり年間ライセンス・機器売上換算額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 89.0 | 0.03 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 0.03 | 99 | 76 |
取り方:会社事業計画p.10にあるOEM量産車両の累計運用89台を使用。デベロップメントサービス売上13.30億円から推定したライセンス・ADK分2.50億円を89台で割った。会社はNRE・機器販売・ライセンスの金額を分離開示していないため、2.50億円は分析上の仮配分であり実績確定値ではない。将来の数量は会社が示す2030年累計1,800台超の目標と量産案件を参考に置き、価格は量産時の機器単価低下とソフトウェア使用料の競争を反映する。座席課金のSaaSではなく実車対応の製品収入とする。
ソリューションサービス(技術支援・公共受託)
政府・自治体・研究機関・メーカー向けの実証支援、研究開発受託、コンサルティング。案件の設計や報告などの工数収入が中心で、AIエージェント代替の『人月・工数型』に分類する。
| 数量年間の技術支援・実証委託プロジェクト相当数(件、推定) | 価格1案件当たり受託売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 24.0 | 0.98 | 23 | 5 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 1.22 | 20 | 6 |
取り方:会社事業計画p.11では単体のソリューション売上24.89億円のうち、コンサルティング等が20.77億円を占める。連結ソリューション売上28.12億円に同じ構成比を適用して23.46億円と推定した。案件数は非開示なので、全国の実証・導入地域や政府委託実績を参考に年間24件相当とした仮定である。実績件数の主張ではない。AIエージェント代替の中立数量を24件から16件、0.67倍とし、単価上昇を物価累積1.34倍より低くする。
ソリューションサービス(ソフトウェア・ハードウェアツール)
Autoware利用者向けの開発用ソフトウェア、センサー、演算装置などの製品を供給する。物理機器を含む製品販売であり、操作画面の席課金部分は未確認のため独立したSaaS収入としては評価しない。
| 数量年間のツール・機器販売先相当数(件、推定) | 価格1販売先当たり年間ツール・機器売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 40.0 | 0.12 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 115 | 0.16 | 18 | 6 |
取り方:連結ソリューション売上28.12億円から推定コンサル収入23.46億円を引いて4.66億円とした。単体開示ではソフトウェアツール約2.11億円、ハードウェアツール約2.01億円であり、連結差額を同分野へ仮配分した。販売先数は未開示のため年40件相当の代理数量を用いる。ソフトウェアの席課金や解約率は開示されていないため、継続課金の強い堀は認定しない。中立単価の上昇は主に物価分とし、AIエージェントが開発ツールの操作を代替する値下げ圧力を考慮する。
リスクと懸念
AIエージェント代替とOEM内製化
現状の開発受託と技術コンサルティングは、設計、コーディング、試験、報告作成などの人月作業を含む。AIエージェントがこれらの工数を減らすと、従来と同じ金額を請求することは難しくなる。OEMがAutowareを直接利用して周辺機能を内製化する可能性もあり、数量の縮小と単価への圧力が同時に生じる。自動運転の実車システム全体はAIエージェント代替の対象ではないが、現在の売上の過半を占める可能性がある人月部分には重く適用した。
研究開発費と補助金への依存
研究開発費が売上高に比べて極めて大きく、2025年9月期の営業損失は105億円だった。2026年9月期第3四半期累計でも営業赤字が継続し、補助金収入が経常損益を支えている。政府の支援は技術開発を進めるうえで有利だが、永続的な顧客売上や営業利益ではない。補助率や採択条件が変われば、資金調達と開発計画に直接影響する。
安全性、事故、許認可
自動運転は一度の重大事故によって顧客の信頼と規制環境が変わりうる。2026年には石川県小松市の自動運転バスで縁石との接触事故が発生し、調査と運行対応が必要になった。人的被害のない事故であっても、装置の不具合と運転時の判断を切り分け、安全性を説明する責任が生じる。重大事故なら販売だけでなく既存車両の稼働率にも影響する。
オープンソースの普及と利益獲得の不一致
Autowareの普及は研究開発コストの分担と利用者の拡大に役立つが、公開ソフトウェアを独占的に販売することはできない。技術標準として普及するほど、利益が完成車メーカー、半導体メーカー、運行事業者に移る可能性がある。低い解約率や継続的な値上げが開示で確認できない限り、強い価格支配力を持つ企業とは評価しにくい。
量産移行の遅延と単価低下
会社の2030年累計1,800台超という目標は、受注済み・条件付き受注などの量産案件の積み上げに基づく。しかし、条件付き案件が最終的な大量販売に転じる保証はない。自治体の運用費、遠隔監視体制、運行ルートの安全認証などが導入の障害となる。さらに量産化の過程で車両や機器の価格低下が起き、台数の増加が売上と利益の増加に直結しない危険がある。
希薄化と基準株数の不整合
継続赤字の企業にとって増資は事業を守る手段だが、既存株主の取り分を小さくする。2026年の新規上場に加え、潜在株式の行使による希薄化にも注意が要る。添付factsの基準株数49,287,190株に対し、会社の公式IRでは発行済株式総数63,524,090株が示される。分析基準時価総額991億円は指定データに従った値であり、公式株数を同じ株価に掛けた約1,277億円とは大きく異なる。これは評価上の重要なデータ品質リスクである。
今後の分かれ目
- 2029年までに累計車両運用台数が800台へ到達し、補助金を除く営業損益も黒字へ転換したら
- 量産による利益改善が実証されるため、中立とやや楽観の確率を引き上げる。補助金を含む経常黒字だけでは十分な証拠としない。
- 2030年9月期に累計1,800台超を達成し、OEMごとのライセンス収入と継続保守収入が開示されたら
- 台数と単価の見積もりの不確実性が下がる。量産ライセンスの粗利益率と顧客の継続率を確認し、増分ROICと長期成長率を上方修正できるか検討する。
- 研究開発費に対する補助金依存が縮小しても、営業キャッシュフローが黒字を維持できたら
- 事業の自立性が高まったと判断し、財務困難に対する資本コストの上乗せを縮小する。自己資本を毀損せず成長できることを評価する。
- トヨタ、いすゞ、ヤマハ発動機など主要OEMが自動運転基盤を内製化し、同社のライセンスを使わなくなったら
- OEM量産車両に対応する収入数量と継続単価を引き下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。単なる共同開発終了と、量産時の技術採用喪失を区別する。
- 2027年以降も大幅な営業赤字が続き、上場資金の残高が急速に減少したら
- 将来の救済増資と希薄化を中心に評価する。現金を床とする前提を見直し、研究開発の現金支出と新たな資金調達条件を確認する。
- 有料ライセンスの解約率が低く、価格改定が継続的に通り、複数メーカーで安全認証を共有する仕組みが確立したら
- オープンソースそのものではなく、その周辺の商用化基盤に強い堀が生まれたと判断できる。堀の強さと10年より先の利益成長率を再評価する。
見ておくもの
- 累計車両運用台数:2025年9月期114台、2030年9月期目標1,800台超
- 会社が示す経常黒字化の目安である累計約800台への到達状況
- 補助金を除く営業損益と営業キャッシュフロー
- モビリティサービスの車両販売数量と継続保守売上の分離開示
- OEM量産車両ごとのライセンス収入と一台当たり使用料
- デベロップメントサービスにおけるNREと量産ライセンスの売上構成
- ソリューションサービスの公共委託・コンサル比率とAIエージェント代替の影響
- 研究開発費の絶対額、売上高比率、補助金収入の推移
- KDDIとの2030年累計1,000台規模の商用導入目標
- 自動運転レベル4の認可取得、事故件数、安全性検証費用
- 2026年の上場調達資金204.47億円の消費状況
- 新株予約権、追加増資、公式発行済株数と分析基準株数の照合
倍率と資本コストの決め方
分析は、2025年9月期の3サービス別売上64.09億円から始め、受託開発とライセンス収入を推定分離した。将来の数量は累計車両運用台数、OEM採用台数、開発顧客数、委託案件数で考え、物価による増加は価格の側に含めた。2026年10月23日の株価から将来売上を逆算していない。利益率は量産拡大に伴う粗利益と、研究開発・共通費用の負担を分けて評価した。
倍率は現在や同業の市場PERを使わず、資本コスト9.25%、事業ROE、RONIC、2036年以降の名目成長率1%から決めた。楽観から中立は正当化PERの上限を使用し、追加の手動割引はしていない。悲観では赤字企業に利益倍率を掛けず、現金の消費と資本毀損後の回収可能資産を使った。日本基準の新リース会計によって今後の貸借対照表の表示が変わる可能性があるが、将来損益は現在の費用計上の形と概ね整合させた。
指定されたfactsでは株価2,011円、株数49,287,190株で時価総額約991億円となる。しかし会社公式IRの発行済株式数は63,524,090株であり、同じ株価では約1,277億円になる。前者は後者より約22%小さく、公式株数基準の時価総額は指定基準より約29%大きい。今回のbasisは依頼どおり添付値を採用したが、この不整合を解消しないまま精密な一株価値を使うべきではない。評価の方向は、公式株数を採るほど割高側に強まる。
計算上は楽観10%、やや楽観18%、中立29%、やや悲観25%、悲観18%であり、下側43%を上側28%より厚くした。中立で大幅な黒字化を認めても、研究開発費、技術の陳腐化、AIエージェント代替、希薄化を考えると、安全域は十分でない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.5%。基本7.5%に事業品質+0.25%、継続赤字による財務・事業の傾きへの上乗せ1.5%を加え、資本コストを9.25%とする。βと時価総額の大きさは利用しない。