結論
NSDは、銀行・保険・証券の基幹に近いシステムを作る独立系の受託開発会社だ。筆者の結論は割高で、稼ぎの源が約4,500人のエンジニアの時間で、共同利用の仕組みのような堀が無いことが理由だ。
売上の85%を占める受託開発は、金融ITの営業利益率が19%と高い。ただ大手SIerの下請けに近い仕事も多く、値段は市場が決める面がある。AIエージェントの値下げ圧力を受けやすく、数量は今の0.70倍、利益率は18%から17%へ下げた。人材・医療・地域のシステム会社を集めたソリューションは、数量0.80倍・価格1.10倍とした。
中立の売上は今の0.89倍の1,046億円、純利益は108億円。余った現金200億円は別に足した。資本コストは8.75%、本質価値は2,347億円に対して1,066億円で、差は-55%。やや悲観と悲観の確率は40%。中期計画の営業利益目標は、人月の数量が減る前提では届かないとみた。
バリュー投資の観点から
オーナーとして持ち続けたいか。筆者の答えは、事業としては、はい、値段次第、である。金融と社会基盤の顧客に長く入り込んだ仕事で、利益率が高く、借金がない。稼いだ利益の多くを配当と自社株買いで戻す。資本の使い方は誠実だ。
気がかりは堀だ。NSDの強みは、人の質と顧客との関係にある。特許も独占もなく、共同利用の仕組みもない。生成AIが人の仕事を省けば、強みが削られる。10年先に、今より強いとは言い切れない。
見えている利益は、ほぼそのままオーナーのものだ。再投資は、人を増やすための採用費と少額の買収だけで済む。この点は好ましい。余った現金は、約200億円と見る。
安全域は薄い。利益の質は高いが、10年先を確信できる事業ではない。そのため、払ってよい値段には余裕を求める。今の値段は、順調な成長の道筋を織り込んでいて、その余裕がない。
何で稼ぐ会社か
NSDは1967年創業の独立系システム会社で、売上の中心は受託開発だ。セグメントは5つある。金融ITは銀行・保険・証券向けのソフト開発とシステムコンサルティングで、売上は350億円と最大だ。産業ITは製造業などの基幹システム、社会基盤ITは官公庁や電力・通信などインフラ企業向けを担う。ITインフラは、サーバーやネットワークの設計・構築・運用だ。
ここまでの4つは、顧客の業務を理解した人が長く張り付く仕事だ。一度入ると、改修と保守が続く。受注残は金融ITだけで140億円ある。
残る一つがソリューションだ。人材管理・医療・地域のシステム会社など、買収で取り込んだ小さな事業の集まりで、利益率は8%台にとどまる。2022年にITコンサルのTrigger、2023年にアートホールディングスとノーザを傘下に入れた。
顧客に特定の巨大企業はなく、金融・製造・公共に広がる。従業員は約4,550人、平均年齢は39歳、勤続は15年と長い。会社は、自社の商品を売る事業を伸ばす方針で、DAS(データ・AI・システムの組み合わせ)という名の事業を2029年3月期に売上800億円にする計画だ。
優良さと弱いところ
NSDの強みは、利益率の高さと財務の厚さだ。営業利益率は10年で12%から16%へ上がった。金融ITと社会基盤ITは19〜20%を稼ぐ。ROEも18%前後だ。顧客の業務を長く担当するので、人が替わりにくく、保守の収入が続く。
借金はない。純現金325億円は時価総額の1割を超える。政策保有株は小さい。創業者一族の資産管理会社が株主に並ぶが、社外役員は6人いて、女性取締役の比率も高い。ガバナンスに大きな傷は見えない。
一方、堀は深くない。野村総合研究所のように、複数の金融機関が同じシステムを共同で使う仕組みは持たない。顧客は、仕事の質に不満があれば、他社に替えられる。大手システム会社の下で働く場面も多く、値段は市場の相場に引かれる。
人材の確保が最大の経営課題だ。平均年収は約750万円で、人手不足のなか採用と定着にお金がかかる。ソリューションの利益率が低いのも課題だ。買収で取り込んだ事業の利益を、どこまで引き上げられるかで、全社の質が決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のITサービス市場は7.5兆円規模で、年6%前後の成長が続くと見られる。レガシーシステムの刷新、データ活用、AIの実装が需要を引っ張る。エンジニアは不足し、人月単価は物価を上回って上がりやすい。
競合は多い。同じ金融向けにはNRI、TIS、BIPROGY、シンプレクスが並ぶ。製造・公共向けにはSCSK、日鉄ソリューションズ、電通総研がいる。NSDより小さい中堅も、システナ、DTS、フューチャーなど数多い。業界は、大手数社と多数の中堅に分かれる分散した形だ。
最大の論点は生成AIだ。コードを書く工程はAIで大きく省ける。工数が減れば、人月で売る商売は単価の下落か、受注量の減少に向かう。逆に、AIを使いこなす案件は高度になり、単価が上がるという見方もある。まだ、どちらに転ぶかわからない。
NSDのような中堅は、大手より変化を受けやすい。大手は、共同利用型のシステムやコンサルで付加価値を出せる。中堅は、技術者の稼働率と単価に業績が直結する。景気の悪化で新規開発が止まれば、稼働率が落ちる。2008年前後のIT業界では、営業利益が3〜5割減った例がある。
【AIエージェント代替】金融システムの開発需要は続くが、人月で売る数量は減る。NSDは中立で売上が今の0.89倍とみた。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当性向は50%以上、自社株買いを含む総還元性向は70%以上を掲げる。配当は増やし続けている。2026年の夏にも自社株買いを実施した。
M&Aには、3年で100億円を使う計画だ。過去の買収は、2022年のTrigger、2023年のアートホールディングスとノーザなど、規模が小さい。大きな失敗は見当たらないが、ソリューションの利益率が低く、買収の成果はまだ見えにくい。
純現金は325億円ある。事業に要る分を引いても、200億円ほどは余ると筆者は見る。戻す実績は十分で、この余りは株主に帰ってくるとみてよい。
買われる側の可能性も無視できない。創業者一族の資産管理会社と信託銀行が大株主に並び、浮動株は多い。キャッシュが厚く利益率も高いので、同業や投資会社が目をつけうる。
還元の置き方:配当性向50%以上・総還元性向70%以上の方針に対し、10年の中立は純利益の合計の75%。余った現金200億円は時価総額側で足している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
NSDは、国内の人手不足という追い風の中心にいる。エンジニアが足りないほど、経験を積んだ人を抱える会社の単価は上がる。金融ITと社会基盤ITは営業利益率が20%近く、受注残も厚い。顧客の業務に入り込んだ仕事は、替えにくい。
中期計画は2029年3月期に営業利益234億円、ROE18.5%を掲げる。直近の4年は、毎年増収増益を続けてきた。足元の営業利益191億円から、計画までは必要な伸びが年6%で、人員の増加と単価の上昇だけで届く。
そのうえ、会社は100億円をM&Aに使う。ソリューションの利益率が8%から12%に上がるだけでも、全社の利益は大きく動く。生成AIは、むしろ追い風になりうる。AIを使いこなす中堅エンジニアを増やす教育に力を入れ、開発の自動化で生まれた余力を、より高度な案件に向ければ、単価はむしろ上がる。
借金がなく、現金は厚い。還元性向は70%以上。景気が悪化しても、配当を守る力がある。10年で、営業利益が今の2倍に届く道筋は十分に描ける。
慎重な見方
NSDの堀は浅い。金融ITに強いといっても、顧客が替えられないのは、NRIのような共同利用のシステムを持つ会社だ。NSDの仕事は、顧客の業務に人を送り込んで作る受託開発で、人の質と単価で競う。大手システム会社が同じ案件に入れば、値段で負ける。
利益の源は技術者の数と稼働率だ。景気が悪化し、新規開発が止まれば、稼働率が落ち、利益率の高さは一気に薄れる。2008年前後には、業界の営業利益が3〜5割減った。
生成AIは脅威だ。コードを書く工程が自動化されれば、同じ仕事に要る人数が減る。顧客は、人月ではなく成果で払うことを求める。単価が下がる局面では、人を抱えること自体が重荷になる。中堅は、大手より対応が遅れやすい。
買収で取り込んだソリューションの利益率は8%だ。100億円を使って買う会社が、この水準に近ければ、全社の質を下げる。
今の時価総額は、営業利益が今後も年6%で伸びる前提に近い。その前提が崩れれば、利益の伸びと倍率の両方が下がる。
どちらに重みを置いたか
強気は金融ITの高い利益率と純現金、還元の厚さを言い、慎重は堀の浅さとAIエージェントによる人月の置き換えを言う。財務は強いが、稼ぎの源が人月であることは変わらないので、数量の縮みを素直に置いた。やや悲観と悲観の確率は40%、差は-55%。強気が当たるのは、AI関連の売上が金額で開示された時だけだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,161 円1,630 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,107 円835 億円)。 今の値に割り戻すと 1,887 円1,424 億円、今との差 −41.5%、 期待の年率 +0.1%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,552 円2,680 億円 | 1,461 円1,102 億円 | +55.3% | +4.5% | 301 円227 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,972 円2,242 億円 | 1,288 円972 億円 | +32.0% | +2.8% | 809 円611 億円 |
| 中立 | 35% | 2,562 円1,933 億円 | 1,185 円894 億円 | +16.1% | +1.5% | 1,311 円990 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,556 円1,174 億円 | 966 円729 億円 | −21.8% | −2.4% | 656 円495 億円 |
| 悲観 | 14% | 583 円440 億円 | 774 円584 億円 | −57.9% | −8.3% | 190 円143 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,161 円1,630 億円 | 1,107 円835 億円 | +1.3% | +0.1% | 3,267 円2,465 億円 |
今の株価時価総額 3,227 円2,435 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 金融システムの開発が堅く、減りが小さい 利益 163 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,552 円2,680 億円
銀行・保険・証券のシステム更新が続き、AIエージェントを使った開発を成果報酬で受ける筋書き。受託開発は数量が今の0.91倍、価格が1.36倍、利益率18%。AIを自社の売り物にして金額が出ている開示は確かめられないので、数量は今以上には置かない。純現金が厚く、買収の余力もある。 内訳は受託開発=数量0.91倍・価格1.36倍・利益率18.3%、ソリューション=数量1.00倍・価格1.18倍・利益率8.0%。 この筋書きの確率は6%。結果は、売上が今の1.23倍の1,446億円、営業利益235億円、純利益163億円、自己資本1,101億円、10年の還元1,102億円、時価総額2,488億円(PER14.29倍)。
- 受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ):数量 3,549(開発・運用の人員(人))× 価格 3,488(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 1,238 億円・営業利益 227 億円。数量0.91倍・価格1.36倍・営業利益率18.3%(人月型)
- ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社):数量 650(人員(人))× 価格 3,206(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 208 億円・営業利益 17 億円。数量1.00倍・価格1.18倍・営業利益率8.0%(席課金・製品販売型)
倍率:事業の純利益 160 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 2,488 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIを自社の売り物にした金額の開示は無く、楽観でも数量は今以下。6%。
やや楽観 19% 銀行・保険の更新が続き、一部が成果報酬へ 利益 129 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,972 円2,242 億円
金融システムの更新が続き、一部が成果報酬へ移る。受託開発は数量0.78倍・価格1.31倍、ソリューションは数量0.90倍。エンジニアの数は緩やかに減り、残る仕事の単価は物価並みに上がる。還元を厚くする方針も保たれる。 内訳は受託開発=数量0.78倍・価格1.31倍・利益率17.5%、ソリューション=数量0.90倍・価格1.13倍・利益率7.6%。 この筋書きの確率は19%。結果は、売上が今の1.02倍の1,206億円、営業利益185億円、純利益128億円、自己資本1,058億円、10年の還元972億円、時価総額1,996億円(PER14.29倍)。
- 受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ):数量 3,058(開発・運用の人員(人))× 価格 3,358(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 1,027 億円・営業利益 179 億円。数量0.78倍・価格1.31倍・営業利益率17.5%(人月型)
- ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社):数量 582(人員(人))× 価格 3,086(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 180 億円・営業利益 14 億円。数量0.90倍・価格1.13倍・営業利益率7.6%(席課金・製品販売型)
倍率:事業の純利益 126 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 1,996 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金融システムが堅く一部が成果報酬へ移る筋書き。19%。
中立 35% 受託の一部をAIエージェントが肩代わりする 利益 108 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,562 円1,933 億円
受託開発の一部をAIエージェントが肩代わりし、エンジニアの数が減る。受託開発は数量0.70倍・価格1.27倍、利益率は17.0%。下請けに近い仕事は値下げ圧力を受け、ソリューションの買収事業も伸びない。 内訳は受託開発=数量0.70倍・価格1.27倍・利益率17.0%、ソリューション=数量0.80倍・価格1.10倍・利益率7.4%。 この筋書きの確率は35%。結果は、売上が今の0.89倍の1,046億円、営業利益155億円、純利益108億円、自己資本1,032億円、10年の還元894億円、時価総額1,698億円(PER14.29倍)。
- 受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ):数量 2,730(開発・運用の人員(人))× 価格 3,260(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 890 億円・営業利益 151 億円。数量0.70倍・価格1.27倍・営業利益率17.0%(人月型)
- ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社):数量 520(人員(人))× 価格 2,996(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 156 億円・営業利益 12 億円。数量0.80倍・価格1.10倍・営業利益率7.4%(席課金・製品販売型)
倍率:事業の純利益 105 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 1,698 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託の一部が置き換わる中心の筋書き。35%。
やや悲観 26% 大手SIerと顧客の内製で、下請けが先に削られる 利益 64 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,556 円1,174 億円
大手SIerや顧客がAIエージェントで内製し、受託の数量と単価が同時に下がる。大手の下請けに近い仕事ほど先に削られる。受託開発の数量は0.59倍、価格は1.21倍、利益率は12.7%に落ちる。 内訳は受託開発=数量0.59倍・価格1.21倍・利益率12.7%、ソリューション=数量0.68倍・価格1.04倍・利益率5.6%。 この筋書きの確率は26%。結果は、売上が今の0.72倍の844億円、営業利益92億円、純利益64億円、自己資本978億円、10年の還元729億円、時価総額1,030億円(PER14.29倍)。
- 受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ):数量 2,321(開発・運用の人員(人))× 価格 3,097(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 719 億円・営業利益 91 億円。数量0.59倍・価格1.21倍・営業利益率12.7%(人月型)
- ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社):数量 442(人員(人))× 価格 2,847(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 126 億円・営業利益 7 億円。数量0.68倍・価格1.04倍・営業利益率5.6%(席課金・製品販売型)
倍率:10年より先の名目の伸びg0.00%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.8%+-0.00%)=14.29倍(事業のROE7.4%、RONICは使わない)。余った現金は(純利益−帳簿額×1.4%)×PERに、戻り方1.0掛けの現金を足す。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:大手と顧客の内製で下請けが削られる筋書き。26%。
悲観 14% AIエージェントが開発の大半を置き換える 利益 25 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 583 円440 億円
AIエージェントが開発の大半を置き換え、売上は今の半分前後に縮む。堀の浅さが響いて利益率は7.6%と一桁になる。自己資本比率は75%を超える高さで倒産はしないが、稼ぐ力は小さく、還元も大きく減る。 内訳は受託開発=数量0.46倍・価格1.12倍・利益率7.6%、ソリューション=数量0.52倍・価格0.97倍・利益率3.4%。 この筋書きの確率は14%。結果は、売上が今の0.51倍の598億円、営業利益36億円、純利益25億円、自己資本930億円、10年の還元584億円、時価総額440億円(PER14.29倍)。
- 受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ):数量 1,775(開発・運用の人員(人))× 価格 2,869(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 509 億円・営業利益 39 億円。数量0.45倍・価格1.12倍・営業利益率7.6%(人月型)
- ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社):数量 338(人員(人))× 価格 2,637(1人当たり年間売上(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 3 億円。数量0.52倍・価格0.97倍・営業利益率3.3%(席課金・製品販売型)
倍率:10年より先の名目の伸びg0.00%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.8%+-0.00%)=14.29倍(事業のROE2.9%、RONICは使わない)。余った現金は(純利益−帳簿額×1.4%)×PERに、戻り方1.0掛けの現金を足す。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:開発の大半が置き換わる筋書き。14%、合わせて40%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ)
銀行・保険・証券、製造業、官公庁・インフラ企業向けの受託システム開発と、サーバーなどのIT基盤の構築・運用。
| 数量開発・運用の人員(人) | 価格1人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,900 | 2,567 | 1,001 | 183 |
| 10 年後 中立 | 2,730 | 3,260 | 890 | 151 |
取り方:2026年3月期の4セグメント売上を合計した1,008億円から社内取引の調整分を引いた約1,001億円を、従業員4,555人のうち開発側とみる約3,900人で割った。人員の按分は開示がないため推定。営業利益は4セグメントの合計。 【AIエージェント代替の見直し】受託開発(金融IT・産業IT・社会基盤IT・ITインフラ。売上1,001億円、85%)は人月型。大手の下請けに近く堀が浅いので、中立で数量0.70倍・価格1.27倍、利益率は18%から17%へ。
ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社)
HR向け、医療向け、地域のシステム会社など、買収で取り込んだ事業の集まり。利益率は開発より低い。
| 数量人員(人) | 価格1人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 2,724 | 177 | 15 |
| 10 年後 中立 | 520 | 2,996 | 156 | 12 |
取り方:2026年3月期のソリューション売上177億円を、従業員のうち約650人と推定して割った。営業利益は14.9億円(利益率8.4%)。 【AIエージェント代替の見直し】ソリューション(人材・医療・地域のシステム会社。売上177億円、15%)は買収で取り込んだ事業の集まりで、席・製品販売型。中立で数量0.80倍・価格1.10倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替(人月の受託開発)
NSDの売上の85%はエンジニアの時間で売る受託開発で、共同利用のような堀は無い。大手SIerの下請けに近い仕事は値下げ圧力を受けやすく、AIエージェントが開発を肩代わりすると数量が減る。中立の売上は今の0.89倍、悲観では0.51倍とした。
技術者の確保と人件費
人手不足で採用と定着の費用が上がる。単価に転嫁できなければ、利益率の高さを保てない。従業員は約4,550人で、一人当たりの稼ぎが利益の源だ。
景気後退での稼働率の低下
新規開発が止まると、技術者の稼働率が下がる。2008年前後のIT業界では、営業利益が3〜5割減った。ストック型の保守が厚いほど浅くなるが、NSDは受託の比率が高い。
買収の成果が出にくいリスク
ソリューションは買収で取り込んだ事業の集まりで、利益率が8%台と低い。3年で100億円を使う方針で、利益率が上がらなければ、全社の質を下げる。
大手システム会社への依存
大手システム会社から下請けで受ける案件では、値段は相手の事情に引かれる。顧客の内製化や、他社への切り替えで案件が減る可能性もある。
株主構成と買収される可能性
創業者一族の資産管理会社が大株主に並ぶ一方、信託口や外資の持ち分も大きい。現金が厚く利益率が高いので、買収の対象になりうる。条件次第では、利益以外の値が動く。
今後の分かれ目
- 2029年3月期の営業利益234億円に向けて、年6%の増益が続いたら
- やや楽観・楽観側の重みを増やす。金融ITと社会基盤ITの高い利益率が保たれているかも併せて確かめる。
- ソリューションの利益率が10%を超えて安定したら
- 買収の成果が出ているとみて、全社の利益率の前提を引き上げる。
- 人月単価の上昇が止まり、生成AIで受注量が減る兆しが出たら
- やや悲観・悲観側の確率を上げる。中堅の受託は、構造の変化を早く受ける。
- 景気悪化で技術者の稼働率が下がり、利益率が落ちたら
- 谷の一時的な悪化か、構造の悪化かを見分ける。後者なら悲観側へ寄せる。
- 自社株買いや配当の方針が緩んだら
- 余った現金が戻るという前提が崩れる。戻り方の見方を下げる。
- 同業や投資会社による買収提案が出たら
- 買収価格が、10年先の本質価値の水準に近いかを見る。
- 成果報酬型の受注とAI活用の売上が金額つきで開示されたら
- 楽観の数量を今より上で見直す。
- 大手SIerからの再委託の単価が下がり始めたら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 金融IT・社会基盤ITの営業利益率(19〜20%の維持)
- ソリューションの利益率(8%台からの改善)
- 従業員数と一人当たり売上(人月単価の動き)
- 自社株買いの実施額と総還元性向(70%以上の維持)
- エンジニア数と人月単価、大手SIer向けの比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は10年先の名目の伸びg=0%の式 1÷(k−g) で出し、過去のPERや同業の値付けは使っていない。kは基本7.5%に値決め力+0.25%・寿命+1.0%(人月の下限)を足した8.75%。AI代替は数量に主に入れ、確率とgで重ねなかった。余った現金200億円は戻り方1.0で足した。今の株価との差は狙っていない。リース会計の形は今と同じ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.43→14.29 倍・やや楽観 PER 11.43→14.29 倍・中立 PER 11.43→14.29 倍・やや悲観 PER 11.43→14.29 倍・悲観 PER 11.43→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。