結論
テクマトリックスは、海外メーカーのネットワーク・セキュリティ製品を売る代理店で、売上の7割強を占める。ここに医療画像システムとCRM・教育のソフトが加わる。筆者の結論は割高で、代理店の取り分は仕入先が決めること、24時間の運用がAIエージェントで自動化されることが理由だ。
一方、セキュリティの需要自体はAIエージェントの普及でむしろ増える。そのため情報基盤の数量は今の0.86倍と、人月型より軽く置いた。価格は仕入先の直販化で1.15倍。医療画像のPACSは病院の記録に近く、数量0.95倍・価格1.28倍と最も軽くした。CRM・教育のアプリは席課金型で0.80倍。
中立の売上は今の1.01倍の722億円、純利益は50億円。純現金は前受けの保守契約が裏にあり、余った現金には分けていない。資本コストは7.25%、本質価値は1,374億円に対して444億円で、差は-68%。やや悲観と悲観の確率は36%。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業かどうかが最初の問いになる。この会社は、保守とサービスの契約が積み上がる点が魅力だ。再投資は軽く、稼いだ利益の多くを株主へ戻せる。経営は小粒な提携にとどまり、資本の使い方は堅い。
気になるのは堀の浅さだ。仕入先が代理店を絞れば、利益の源泉が細る。この点は、10年先を見通せる確度を下げる。
純現金340億円は、見かけより小さく見るのが筋だ。保守の前受けなど、近い将来に役務で返す資金が多いと推定する。したがって純現金を理由に割安とは言わない。
安全域の面では、確率で重ねた価値は今の値段を2割ほど下回る。強気の筋書きでようやく4割上回る程度で、払う値段に余裕がない。事業の質は認めるが、値段が追いついた状態だと筆者は見る。
配当と自社株買いを続ける姿勢も、オーナーとして歓迎できる。
何で稼ぐ会社か
テクマトリックスの稼ぎは3つの事業から出る。柱は情報基盤事業で、売上の7割強、利益の大半を占める。パロアルトネットワークスなど海外メーカーの1次代理店として、ファイアウォールや通信監視の製品を企業に売る。売って終わりにせず、保守契約と24時間の監視・運用サービスで毎年の収入にする。
アプリケーション・サービス事業は、コンタクトセンター向けのCRMと、学校向けの教育ソフト、ソフト開発の品質を測る基盤を扱う。2026年3月期は営業損益が小さな赤字で、投資の段階にある。
医療システム事業は、病院で使う画像管理システム(PACS)が中心だ。クラウド化と、個人の健康記録を扱うPHR、病理診断のデジタル化へ広げている。利益率は13%台で安定している。
顧客は企業と病院で、ひとつの会社に頼る形ではない。ただ仕入先は少数の大手メーカーに集まる。ここが事業の強みであり弱みでもある。2026年3月期は、過去2年分の売上の計上漏れを一括で訂正した分(売上2.6億円)が情報基盤の増収に含まれる。
人材は、運用サービスの技術者と営業が中心で、社員数は連結で2千人弱と見られる。顧客層が広く、1社の失注で業績が揺れる形ではない。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、売り切りで終わらない商売の組み立てにある。製品を売ると、保守とサービスの契約が数年にわたって積み上がる。顧客が契約を更新するかぎり収入は続き、不況でも崩れにくい。保守料は先に受け取るため、資金も手元に残りやすい。ROEが20%前後と高いのは、この前受けの構造による面が大きい。
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、普通の水準だ。ネットワーク機器は一度入れると入れ替えに手間がかかる。しかし代理店の地位そのものは、仕入先との契約で決まる。ネットワールドのような大手ディストリビューターや、同業のSIerも同じ製品を扱える。利益率が10%台にとどまるのは、この構造を映している。
弱みは3つある。仕入先の方針に左右されること、アプリ事業がまだ黒字化していないこと、売上の計上漏れが過去に見つかり、社内の統制が問われうることだ。
経営は小粒の提携にとどめ、買収で価値を壊した形跡は見えない。ここは評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のIT投資は、人手不足とサイバー攻撃への備えを背景に伸びている。国内ITサービス市場は2025年に7.5兆円規模で、年6%前後の成長が見込まれる。セキュリティは中でも優先順位が高く、予算が削られにくい分野だ。
代理店の競争は2層になっている。上にはネットワールドやSB C&Sのような大手ディストリビューターがあり、同じ仕入先の製品をさばく。横にはNTTデータ、NEC、富士通などのSIerが、運用まで含めて顧客を囲い込む。テクマトリックスは運用サービスで差をつけ、仕入先の製品を売るだけの立場から抜けようとしている。
変化の芽は2つある。1つは、メーカーがクラウド経由で直接売る動きだ。もう1つは生成AIで、監視拠点(SOC)の業務を自動化する。会社自身がAIで運用を省力化できれば利益は増える。ただ顧客から見れば、運用の値段が下がる圧力にもなる。
医療は、病院の経営が厳しく、IT予算は診療報酬に縛られる。成長は国の医療DXの方針に支えられるが、値上げの力は弱い。
筆者は、セキュリティ需要の伸びそのものは疑っていない。問題は、その伸びのうち何割が代理店の手元に残るかだ。
【AIエージェント代替】セキュリティの需要は増えるが、代理店の取り分と運用の手作業は削られる。テクマトリックスは中立で売上が今の1.01倍と、縮みが小さい。
資本政策と M&A
還元は2026年7月に方針が変わった。従来は配当性向40%とDOE7%の高い方を目安にしていた。2027年3月期は総還元性向100%を掲げ、最大32億円(発行済株式の5.7%)の自社株買いを行い、取得した株は期末に消却する。
純現金が厚い会社が、利益より多い還元に動いた点は評価できる。ただし次の中期計画の終わりに見直すとされ、100%が続く保証はない。
M&Aは小粒だ。2024年にモビルスと資本業務提携を結んだ程度で、大型買収はない。中期計画は、アライアンスとM&Aを基本戦略に掲げるが、これまでは買収で拡大してきた会社ではない。
大株主は信託銀行名義の保有が多く、特定の支配株主はいない。かつて筆頭株主だった楽天は2015年に外れた。親子上場の歪みも、持ち合いの厚みもなく、資本政策は素直に株主を向いている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サイバー攻撃は止まらず、企業のセキュリティ予算は景気に左右されにくい。テクマトリックスは仕入先の製品を売るだけでなく、24時間の監視・運用サービスを自前の稼ぎにしつつある。増収増益が続き、2027年3月期は売上818億円・営業利益82億円の予想だ。保守契約の前受けで資金が回るため、成長に投じる資金は少なくて済み、ROEは20%を超えている。
アプリ事業は赤字を抜ければ利益が上乗せになる。医療は国の医療DXの方針に乗り、クラウド化で単価を上げられる。総還元性向100%を掲げた会社が、さらに増配や自社株買いを重ねる余地もある。
10年で技術者の不足がさらに厳しくなれば、自動化と運用サービスを持つ会社の価値は上がる。株式市場が運用サービスを正しく評価すれば、利益率は12%台から13%台へ上がる。
国内で人手不足が深まるほど、自動化とサービスの組み合わせを持つ会社は選ばれやすい。仕入先の側も、日本で自前の販売網を一から作るより、実績ある代理店を頼る方が安上がりだ。
慎重な見方
代理店は仕入先の取り分に縛られる商売だ。2026年3月期の営業利益率は10.8%と、過去10年は10〜12%の狭い幅で動いてきた。ここから大きく上がった実績はない。仕入先がクラウド経由の直販に寄り、代理店を絞れば、取り分はさらに薄くなる。
生成AIは、運用サービスの人手を減らす。会社の省力化にはなるが、顧客に値下げを迫られる力にもなる。会社が差別化の柱にしている監視・運用サービスこそ、AIの標的だ。
アプリ事業は黒字化の見通しが立たず、医療は病院の予算制約で値上げが効かない。さらに過去2年分の売上の計上漏れが見つかった点は、社内の管理に弱さがあることを示す。
純現金340億円に見える数字は、前受けの返済が先にある資金だ。総還元性向100%も1年限りで、次の中期計画では見直される。
株価の評価には、すでに増収増益の継続が入っている。利益率が動かないなら、増える利益の分しか価値は増えない。
加えて、国内の同業が運用サービスに力を入れており、差別化の幅は縮みやすい。
どちらに重みを置いたか
強気はセキュリティ需要の拡大と医療の堅さ、手厚い還元を言い、慎重は仕入先の直販化と運用の自動化を言う。需要が増える分野なので数量の縮みは軽く置き、価格の取り分の低下と運用の置き換えを主に反映した。やや悲観と悲観の確率は36%、差は-68%。強気が当たるのは、AI付き製品の取り分が金額で保たれた時だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,689 円675 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 771 円308 億円)。 今の値に割り戻すと 1,382 円553 億円、今との差 −59.4%、 期待の年率 −3.2%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,442 円977 億円 | 950 円380 億円 | −0.2% | 0.0% | 204 円81 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,242 円896 億円 | 898 円359 億円 | −7.7% | −0.8% | 628 円251 億円 |
| 中立 | 38% | 1,958 円783 億円 | 823 円329 億円 | −18.2% | −2.0% | 1,057 円422 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,160 円464 億円 | 663 円265 億円 | −46.4% | −6.0% | 438 円175 億円 |
| 悲観 | 12% | 595 円238 億円 | 523 円209 億円 | −67.1% | −10.5% | 134 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,689 円675 億円 | 771 円308 億円 | −27.7% | −3.2% | 2,460 円984 億円 |
今の株価時価総額 3,400 円1,360 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% セキュリティ需要と医療が伸び、代理店の取り分も保たれる 利益 66 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,442 円977 億円
AIエージェントの普及でセキュリティ需要が強まり、代理店の取り分が保たれる筋書き。情報基盤は数量が今の1.00倍、医療が1.00倍。AIを自社の売り物にして金額が出ている開示は確かめられないので、数量は今以上には置かない。2027年3月期の総還元性向100%も続く。 内訳は情報基盤事業=数量1.00倍・価格1.23倍・利益率12.8%、アプリケーション・サービス事業=数量1.00倍・価格1.18倍・利益率-1.6%、医療システム事業=数量1.00倍・価格1.37倍・利益率13.3%。 この筋書きの確率は6%。結果は、売上が今の1.24倍の892億円、営業利益98億円、純利益66億円、自己資本473億円、10年の還元380億円、時価総額895億円(PER13.54倍)。
- 情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ製品の販売と運用):数量 3,000(取引顧客企業数(社・推定))× 価格 2,116(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 635 億円・営業利益 81 億円。数量1.00倍・価格1.23倍・営業利益率12.8%(席課金・製品販売型)
- アプリケーション・サービス事業(CRM・教育・開発基盤):数量 600(従業員数(人・推定))× 価格 1,939(従業員1人当たり売上(万円))→ 売上 116 億円・営業利益 −2 億円。数量1.00倍・価格1.18倍・営業利益率-1.6%(席課金・製品販売型)
- 医療システム事業(PACS・電子カルテ関連・PHR):数量 5,000(導入医療機関数(施設・推定))× 価格 281(1施設当たり年間売上(万円))→ 売上 140 億円・営業利益 19 億円。数量1.00倍・価格1.37倍・営業利益率13.3%(記録の正本型)
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g -0.3% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.54 倍、時価総額 895 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIを自社の売り物にした金額の開示は無く、楽観でも数量は今以下。セキュリティ需要を映して6%。
やや楽観 20% セキュリティ需要が続き、医療が支える 利益 60 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 2,242 円896 億円
セキュリティ需要が続き、運用サービスの一部が定額で残る。情報基盤は数量0.96倍・価格1.18倍、医療は数量1.06倍・価格1.32倍。病院のクラウド化が全体を支える。 内訳は情報基盤事業=数量0.96倍・価格1.18倍・利益率12.2%、アプリケーション・サービス事業=数量0.90倍・価格1.13倍・利益率-1.6%、医療システム事業=数量1.06倍・価格1.32倍・利益率12.7%。 この筋書きの確率は20%。結果は、売上が今の1.16倍の833億円、営業利益89億円、純利益60億円、自己資本462億円、10年の還元359億円、時価総額809億円(PER13.55倍)。
- 情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ製品の販売と運用):数量 2,890(取引顧客企業数(社・推定))× 価格 2,037(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 589 億円・営業利益 72 億円。数量0.96倍・価格1.18倍・営業利益率12.2%(席課金・製品販売型)
- アプリケーション・サービス事業(CRM・教育・開発基盤):数量 538(従業員数(人・推定))× 価格 1,866(従業員1人当たり売上(万円))→ 売上 100 億円・営業利益 −2 億円。数量0.90倍・価格1.13倍・営業利益率-1.6%(席課金・製品販売型)
- 医療システム事業(PACS・電子カルテ関連・PHR):数量 5,320(導入医療機関数(施設・推定))× 価格 270(1施設当たり年間売上(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 18 億円。数量1.06倍・価格1.32倍・営業利益率12.7%(記録の正本型)
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g -0.3% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.55 倍、時価総額 809 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:セキュリティ需要が続き医療が支える筋書き。20%。
中立 38% 代理店の取り分と運用が削られ、医療が残る 利益 50 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 1,958 円783 億円
仕入先の直販化とAIエージェントによる運用の自動化で、情報基盤の数量と取り分が細る。情報基盤は数量0.86倍・価格1.15倍、利益率は11.9%。医療は数量0.95倍・価格1.28倍と残り、全体を支える。アプリ事業の赤字も続く。 内訳は情報基盤事業=数量0.86倍・価格1.15倍・利益率11.9%、アプリケーション・サービス事業=数量0.80倍・価格1.10倍・利益率-1.5%、医療システム事業=数量0.95倍・価格1.28倍・利益率12.4%。 この筋書きの確率は38%。結果は、売上が今の1.01倍の722億円、営業利益75億円、純利益50億円、自己資本445億円、10年の還元329億円、時価総額682億円(PER13.56倍)。
- 情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ製品の販売と運用):数量 2,580(取引顧客企業数(社・推定))× 価格 1,978(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 510 億円・営業利益 61 億円。数量0.86倍・価格1.15倍・営業利益率11.9%(席課金・製品販売型)
- アプリケーション・サービス事業(CRM・教育・開発基盤):数量 480(従業員数(人・推定))× 価格 1,812(従業員1人当たり売上(万円))→ 売上 87 億円・営業利益 −1 億円。数量0.80倍・価格1.10倍・営業利益率-1.5%(席課金・製品販売型)
- 医療システム事業(PACS・電子カルテ関連・PHR):数量 4,750(導入医療機関数(施設・推定))× 価格 262(1施設当たり年間売上(万円))→ 売上 125 億円・営業利益 15 億円。数量0.95倍・価格1.28倍・営業利益率12.4%(記録の正本型)
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g -0.3% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.56 倍、時価総額 682 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:代理店の取り分が削られ医療が残る中心の筋書き。38%。
やや悲観 24% 仕入先が直販へ寄り、運用も内製される 利益 30 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,160 円464 億円
仕入先が代理店を絞り、AIエージェント付きの製品を直販する。運用の監視も顧客が内製し、情報基盤の数量は0.73倍、価格は1.09倍に下がる。利益率は8.9%に落ち、アプリ事業の赤字も重い。 内訳は情報基盤事業=数量0.73倍・価格1.09倍・利益率8.9%、アプリケーション・サービス事業=数量0.68倍・価格1.04倍・利益率-1.1%、医療システム事業=数量0.81倍・価格1.22倍・利益率9.2%。 この筋書きの確率は24%。結果は、売上が今の0.81倍の583億円、営業利益45億円、純利益30億円、自己資本410億円、10年の還元265億円、時価総額402億円(PER13.23倍)。
- 情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ製品の販売と運用):数量 2,193(取引顧客企業数(社・推定))× 価格 1,879(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 412 億円・営業利益 37 億円。数量0.73倍・価格1.09倍・営業利益率8.9%(席課金・製品販売型)
- アプリケーション・サービス事業(CRM・教育・開発基盤):数量 408(従業員数(人・推定))× 価格 1,721(従業員1人当たり売上(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 −1 億円。数量0.68倍・価格1.04倍・営業利益率-1.1%(席課金・製品販売型)
- 医療システム事業(PACS・電子カルテ関連・PHR):数量 4,038(導入医療機関数(施設・推定))× 価格 249(1施設当たり年間売上(万円))→ 売上 101 億円・営業利益 9 億円。数量0.81倍・価格1.22倍・営業利益率9.3%(記録の正本型)
倍率:10年より先の名目の伸びg-0.30%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.2%+0.30%)=13.23倍(事業のROE7.4%、RONICは使わない)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:直販化と運用の内製の筋書き。24%。
悲観 12% 直販化と自動化が一気に進む 利益 13 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 595 円238 億円
直販化と運用の自動化が一気に進み、情報基盤の売上が大きく縮む。アプリ事業の赤字も続き、全体の売上は今の半分前後になる。医療の記録の正本としての力は残るが、全体の稼ぎを支えるには小さい。 内訳は情報基盤事業=数量0.56倍・価格1.01倍・利益率5.3%、アプリケーション・サービス事業=数量0.52倍・価格0.97倍・利益率-0.6%、医療システム事業=数量0.62倍・価格1.13倍・利益率5.6%。 この筋書きの確率は12%。結果は、売上が今の0.58倍の413億円、営業利益19億円、純利益13億円、自己資本378億円、10年の還元209億円、時価総額238億円(PBR0.9倍)。
- 情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ製品の販売と運用):数量 1,677(取引顧客企業数(社・推定))× 価格 1,741(1社当たり年間売上(万円))→ 売上 292 億円・営業利益 16 億円。数量0.56倍・価格1.01倍・営業利益率5.3%(席課金・製品販売型)
- アプリケーション・サービス事業(CRM・教育・開発基盤):数量 312(従業員数(人・推定))× 価格 1,594(従業員1人当たり売上(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 0 億円。数量0.52倍・価格0.97倍・営業利益率-0.7%(席課金・製品販売型)
- 医療システム事業(PACS・電子カルテ関連・PHR):数量 3,088(導入医療機関数(施設・推定))× 価格 231(1施設当たり年間売上(万円))→ 売上 71 億円・営業利益 4 億円。数量0.62倍・価格1.13倍・営業利益率5.6%(記録の正本型)
倍率:この筋書きの稼ぐ力は小さく、床は今の純現金340億円×0.7(運転資金・税を引く)=238億円。床の価値を今の自己資本に掛けた倍率にした。
確率:直販化と自動化が一気に進む筋書き。医療が残るので12%、合わせて36%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
情報基盤事業(ネットワーク・セキュリティ製品の販売と運用)
海外メーカーの1次代理店として、ネットワーク・セキュリティ製品を販売し、保守と24時間の監視・運用サービスで稼ぐ。全社の売上の7割強、利益の大半を占める。
| 数量取引顧客企業数(社・推定) | 価格1社当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 1,720 | 516 | 66 |
| 10 年後 中立 | 2,580 | 1,978 | 510 | 61 |
取り方:国内の取引顧客を約3,000社と置く(開示なし・推定)。売上516億円をその数で割ると1社1,720万円。仕入先の製品ライセンスと保守、監視・運用サービスの合計。数量は実物(取引顧客企業数)で、運用サービスの上乗せを足がかりに顧客を増やす事業の事実による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 社当たり売上の 1.34 倍だけで見ている。 【AIエージェント代替の見直し】情報基盤(売上516億円、72%)は海外メーカーの製品の代理店で、保守と24時間運用が付く。セキュリティ需要が強く、人月型より軽く、中立で数量0.86倍。価格は仕入先の直販化で1.15倍、利益率は12.8%から11.9%へ。
アプリケーション・サービス事業(CRM・教育・開発基盤)
CRM(コンタクトセンター向け)、教育(ツムギノ)、ソフト開発の品質管理基盤など、自社と他社製のアプリケーションを提供する。
| 数量従業員数(人・推定) | 価格従業員1人当たり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 1,647 | 99 | −2 |
| 10 年後 中立 | 480 | 1,812 | 87 | −1 |
取り方:CRM・教育・開発基盤を担う人員を約600人と置く(推定)。売上99億円を割ると1人1,650万円。セグメント損益は2026年3月期に1.5億円の赤字。 【AIエージェント代替の見直し】アプリケーション・サービス(売上99億円、14%)はCRM・教育・開発基盤の席課金型。中立で数量0.80倍・価格1.10倍。
医療システム事業(PACS・電子カルテ関連・PHR)
医療画像を扱うPACSと関連システムを病院へ提供し、クラウド化とPHR(個人の健康記録)サービスへ広げている。
| 数量導入医療機関数(施設・推定) | 価格1施設当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 205 | 102 | 13 |
| 10 年後 中立 | 4,750 | 262 | 125 | 15 |
取り方:PACS・電子カルテ関連などの導入先を約5,000施設と置く(推定)。売上102億円を割ると1施設約205万円。病院のIT予算は診療報酬に縛られるため、10年の価格は物価並みの1.34倍に届かない前提とする。 【AIエージェント代替の見直し】医療システム(売上102億円、14%)はPACS・電子カルテ関連で病院の記録に近い記録の正本型。中立で数量0.95倍・価格1.28倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替(代理店の取り分と運用の自動化)
テクマトリックスの売上の7割強は、海外メーカーの製品を売る代理店と24時間の運用だ。仕入先がAI付きの製品を直販すれば取り分が減り、運用の監視はAIエージェントが自動化する。セキュリティ需要が増えるぶん縮みは軽く置いたが、中立の売上は今の1.01倍、悲観では0.58倍とした。
仕入先の直販化・代理店の絞り込み
情報基盤の売上は少数の海外メーカーの製品に頼る。メーカーがクラウド経由の直販に寄り、代理店の数を絞れば、取扱高も取り分も同時に落ちる。契約は仕入先が決めるため、会社には止める手段が少ない。
売上の計上漏れと社内統制
2026年3月期に、40期と41期の売上計上漏れを一括で訂正した(売上2.6億円・営業利益1億円)。額は小さいが、同様の漏れが他にもないかという疑念は残る。決算の信頼性に関わるので、再発の有無を注視したい。
アプリ・サービス事業の黒字化の遅れ
2026年3月期は営業損益が1.5億円の赤字だった。CRMのASEAN展開や教育事業の公立校向け拡大が投資先行になり、中期計画が期待する利益貢献が遅れる可能性がある。
医療の予算制約
病院の経営は厳しく、IT投資は診療報酬の改定に左右される。クラウド型PACSへの移行が進んでも、値上げは物価に届かない。医療システム事業は、2027年3月期に投資フェーズにあるとされる。
高いROEの持続性
ROE20%前後は前受けの資金に支えられた面が大きい。契約が短期化したり、前受けの条件が変わったりすれば、資金の回り方が変わる。自己資本比率22%の低さも、この構造と表裏一体だ。
今後の分かれ目
- 主要な仕入先が日本で直販や代理店の絞り込みを発表したら
- 悲観側の筋書きへ確率を大きく移し、情報基盤の利益率前提を引き下げる。
- 監視・運用サービスの売上比率が上がり、情報基盤の利益率が13%を超えて定着したら
- やや楽観の筋書きに重みを移す。仕入先に頼らない稼ぎが育った証拠になる。
- 売上の計上漏れや決算の訂正が再び出たら
- 社内統制への疑念が強まるので、慎重な見方の確率を上げる。
- アプリ・サービス事業が2027年3月期に黒字へ転じたら
- 全社の利益率の下支えになるので、中立の前提を少し上げてよい。
- 総還元性向100%が次の中期計画でも維持されたら
- 純現金が実質的に株主へ戻る証拠になる。余剰現金の戻り方の評価を見直す。
- 生成AIで運用の人手が減り、顧客への値下げ要求が強まったら
- 運用サービスの単価前提を下げ、悲観側の確率を上げる。
- 仕入先が国内の直販を拡大し、代理店の契約を絞り始めたら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 医療画像のクラウド契約が増え、売上比率が2割を超えたら
- 医療の数量前提を上げ、全体の見立てを見直す。
見ておくもの
- 情報基盤の営業利益率と、監視・運用サービスの売上比率
- 主要仕入先の日本での販売方針(直販・代理店政策)
- アプリ・サービス事業の黒字化と、医療のクラウドPACSの伸び
- 自社株買いの進捗と、次の中期計画の還元方針
- 仕入先ごとの契約更新と、運用サービスの単価
倍率と資本コストの決め方
倍率は10年先の名目の伸びg=−0.3%(席・製品型を加味)の式 1÷(k−g) で出し、過去のPERや同業の値付けは使っていない。kは基本7.5%に寿命+0.75%(席の下限寄りと記録の正本の間)を足した8.25%。AI代替は数量・価格に主に入れ、確率とgで重ねなかった。純現金は前受けの裏付けがあるので余った現金には分けていない。今の株価との差は狙っていない。リース会計の形は今と同じ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→13.54 倍・やや楽観 PER 11.7→13.55 倍・中立 PER 11.7→13.56 倍・やや悲観 PER 11.7→13.23 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。