結論
CIJは、公共、金融、エネルギー、情報通信分野のシステム開発を得意とする独立系ITサービス会社である。筆者の結論は「割高」だ。10年後も重要なシステムを支える会社として残る可能性は高いが、現在の売上の大部分を生む開発工数そのものの価値が変わり始めている。
2026年6月期の売上高は294億円、営業利益は26億円まで拡大した。過去10年間で売上高は約1.6倍となり、営業利益率も改善した。自己資本150億円に対し、現金同等物から有利子負債を引いた純現金は約79億円あり、定期預金や有価証券も保有する。財務的な存続リスクは低く、配当と自社株買いにも実績がある。ここまでは長く保有する株主にとって好ましい特徴だ。
しかし、売上の82.6%が大手SIer経由であり、顧客と直接契約するプライム比率は17.4%にとどまる。独自のマイグレーション技術「LeGrad」は評価できるが、全社を支えるほどの独占的な製品収益や、AIエージェント時代にも顧客が同じ開発工数を購入し続ける証拠はない。中立では2036年6月期の売上高を約251億円、純利益を約15億円と見込む。
5つの筋書きの現在価値を加重すると約202億円となり、基準時点の時価総額約323億円を約38%下回る。強固な財務と株主還元が下値を支える一方、長期の事業価値には構造的な不確実性が残る。事業が良い会社であることと、現在の株価が十分に安いことは別の問題である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、CIJは「危機に強い財務」と「競争から完全には守られていない収益」を併せ持つ会社だ。日本の公共、金融、エネルギーの重要なシステムは10年後にも残る。その維持や更新に精通した会社が必要とされることも、おそらく変わらない。しかし、必要とされるサービスと、そこから株主が得る利益が同じ形で続くとは限らない。
筆者が重視するのは値上げしても顧客が離れない力である。LeGradによるプログラム変換は専門性が高く、顧客にとって失敗が許されない仕事を担っている。だが、その強みが全社売上の何割を占めるのか、一般的な受託開発よりどれほど高い利益率を得ているのかは十分に開示されていない。優れた技術の存在を、会社全体の独占的な利益と取り違えてはならない。
再投資の観点では、今までの成長に一定の成果がある。営業利益率は長い時間をかけて改善し、2026年6月期のROEは12%だった。事業を大きくするために膨大な設備を抱える必要もなく、キャッシュフローは比較的良い。だが、再投資先が人員中心の同業買収である以上、今後の増分利益率は過去の実績より低く見積もるべきだ。AIが同じ仕事を少人数で終わらせるなら、買収して獲得した人員の稼ぐ力も変わる。
経営に対しては、買収を急がず、プライム案件と独自技術から得られるオーナー利益を明確にすることを期待する。余った資金を配当や自社株買いに回すなら、低い利回りの再投資より合理的である。財務が健全だからといって、利益の見通しが難しい事業に高い価格を払う理由にはならない。
現時点で最も大切なのは安全域だ。2036年に事業が残ることには比較的自信があるが、売上規模と利益率が現在以上になることには確信を持てない。株主還元と資産価値を含めても、基準時点の時価総額は期待できる価値を相当に上回る。長期の株主として評価する会社ではあるが、現在の値段で十分な安全域を確認できる会社ではない。
何で稼ぐ会社か
CIJの本業は、企業や官公庁が使用する情報システムを設計、開発、更新し、その後の運用まで支えることである。連結会計上はシステム開発等の単一セグメントだが、売上品目ではシステム開発、コンサルテーション及び調査研究、システム/パッケージ・インテグレーション、その他の4つに分かれる。2026年6月期にはシステム開発だけで約249億円を売り上げ、全体の約85%を占めた。
最大の顧客群はNTTデータやSCSKなどの大手システムインテグレーターである。大手が顧客から受注した大規模案件に対し、CIJが技術者や開発体制を提供する。こうした長期の取引は受注の安定につながる半面、契約の主導権と最終顧客との接点は元請け側に残りやすい。2026年6月期のSIer経由売上は約243億円で、プライム売上は約51億円だった。
技術面の特色は、創業以来培ってきたOS、コンパイラ、構文解析の知識にある。LeGradでは旧来のプログラムを解析し、業務ロジックを残しながら新しい言語やシステム基盤へ移す。金融や公共の古いシステムでは、単にコードを変換するだけでなく、長年の例外処理を正確に引き継ぐことが求められる。この技術と実務経験の組み合わせは、一般的な技術者派遣よりも高い価値を持ちうる。
コンサルテーション及び調査研究は約11億円で、公共やエネルギー分野の技術調査や上流支援を担う。SI/PIも約11億円で、福祉総合システムなどの導入支援が含まれる。その他の約22億円は運用保守などが中心だ。福祉分野の製品や自社AIサービスもあるが、継続契約数、解約率、製品別の売上と利益は十分に開示されておらず、全社を高収益の業務SaaS企業として扱うことはできない。
近年は買収によって技術者と顧客基盤を増やしている。2019年の日本ファイナンシャル・エンジニアリング、2023年の日伸ソフトウエア、2024年のアドバンスソフト、2025年のインフォテックソリューションがその例だ。事業モデルの中心はなお、人が専門知識と工数を提供し、顧客がその対価を払う構造にある。
優良さと弱いところ
CIJの優良さは、突出した市場シェアではなく、長く続く企業間取引と技術者の組織力にある。大手SIerとの取引は数十年に及ぶものもあり、公共や金融の複雑なシステムに関わってきた。開発の履歴や顧客固有の仕様を理解した技術者を一度に入れ替えることは簡単ではない。この乗り換えの手間は一定の競争上の守りになる。
ただし、守りと値決め力は同じではない。SIer経由の売上比率が8割を超える会社では、元請けが開発手法や外注先を変更すれば、契約量や単価が変わりうる。2026年6月期のプライム比率は前年より低下し、2030年に23%以上へ引き上げる会社の目標とは距離がある。賃金上昇時にも顧客へ十分な価格転嫁を続けられるという、長期の実証もまだ限定的だ。
資本効率には改善が見える。2016年6月期の自己資本は約102億円、純利益は約9億円だった。2026年6月期には自己資本が150億円、純利益が18億円となった。自己資本の増加額に対する純利益の増分は単純計算で2割弱だが、買収、配当、自社株買いの影響を含むため、これを増分ROICそのものとは呼べない。それでも、事業規模を拡大しながら利益率とROEを改善してきたことは評価に値する。
最大の弱点は、顧客が長く利用する記録の正本や規制対応基盤をCIJ自身が所有し、その利用料を継続的に徴収する形にはなっていないことである。LeGradには技術的な蓄積があるが、開示された解約率、年単位の規制対応義務、継続的な値上げ実績など、強固な堀を裏付ける証拠が複数そろっているわけではない。堀は部分的に存在するが、全社では弱めと評価する。
純現金と高い自己資本比率は重要な強みだ。一方、現金は将来の買収に使われる可能性があり、資金を保有しているだけでは株主価値は増えない。今後は買収先を含む利益の増分が資本コストを上回るか、余剰資金が株主に戻るかを継続的に確認したい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービス市場には、当面なお大きな需要がある。IDC Japanによれば、2025年の国内ITサービス市場は約7兆5,663億円で、2030年には約10兆2,541億円まで拡大する見通しだ。公共システムの標準化、金融機関の基幹系刷新、クラウド移行、データ整備が投資を支えている。CIJの連結売上高をこの市場と比較すると、現在の規模は約0.39%に相当する。
システム開発の直接的な競合は、NTTデータ、SCSK、TIS、野村総合研究所、富士通、NECなどであり、二次請け以降ではDTS、システナ、NSD、クレスコなどとも競合する。大手各社は最終顧客との接点、巨大な開発体制、運用基盤を持つ。CIJには特定技術での専門性があるものの、業界全体の価格を左右する規模やシェアは持たない。
会社のLeGradが関わるレガシーマイグレーション市場にも機会が残る。2025年のCIJ統合報告書が引用した民間調査では、2025年度のレガシーマイグレーション・モダナイゼーション市場見込みは5,118億円だった。さらに広い国内ITモダナイゼーションサービス市場については、IDC Japanが2025年の1兆3,044億円から2030年の2兆1,234億円への拡大を予測している。ただし、両調査は対象範囲が違い、合算する市場ではない。
市場全体が伸びても、CIJの従来型収入が同じように伸びるとは限らない。AIエージェントが要件整理、コード生成、単体テスト、障害調査、仕様書作成を担えば、人間の作業量を契約の基準とするビジネスは数量が減る。元請けが生産性向上分を自社に取り込む場合、二次請けの受注工数と価格の両方に圧力がかかる。業界統計の名目成長を、個々の受託開発会社の実質成長率にそのまま移すことは危険である。
コンサルティングにも同じ変化が起こる。IDC Japanによる2025年の国内ITコンサルティング市場は、ビジネスコンサルティングとの合計から逆算すると約5,732億円となる。AIを導入するための相談は増えるだろうが、報告書や設計資料を作成する人日への支払いは減りうる。今後の競争は人を集める能力だけでなく、顧客固有の業務成果に責任を負えるかで決まる。
システム運用保守にも二面性がある。停止を許されない基盤、現場機器との接続、セキュリティや法令への対応には人間の責任が残る。しかし、監視、一次対応、定型的な設定変更の多くは自動化できる。2036年には日本のIT市場そのものは現在より大きくても、CIJが現在の事業構成のままシェアを維持する見通しには慎重である。
資本政策と M&A
CIJの資本政策は、長年の蓄積型経営から、配当と自社株買いを併用する姿勢へ変わってきた。2025年6月期には約7億円、2026年6月期には約5億円の自己株式取得を行った。2026年6月期の配当総額はおおむね11億円で、現金収支上も株主還元が大きな支出となっている。2016年から2026年までに配当は増加し、自己株式を除く株数も減った。
第7次中期経営計画「BEIT50」は、2027年6月期の売上高310億円、営業利益27.5億円を目指す。これは当初の売上高300億円、営業利益23.5億円から見直された数字だ。さらに「CIJシナリオ2030」では売上高340億円以上、プライム比率23%以上、システム開発の請負率24%以上を掲げる。一方、中期経営計画には配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの累計額について、拘束力のある具体的な数値目標の約束は見当たらない。2027年6月期には普通配当の増配を予想しているが、長期の総還元水準が確約されているわけではない。
買収は技術者の確保と顧客領域の拡大が主眼である。2025年12月にはインフォテックソリューションを約4.3億円で取得した。2026年9月29日には名古屋のトレンドアートの全株式取得を発表し、同年10月30日の実行を予定している。取得価額は非公表で、基準時点では予定取引として扱う。いずれもCIJが買い手の案件であり、CIJ自身のTOBやMBOではない。
買収は売上と人員を増やすが、AIで工数の単価が変わる時代には、過去の人員規模を基準に買収価格を決める危険もある。2026年6月期末ののれんは約7.5億円で、今後の超過収益が想定を下回れば価値の見直しが必要になる。経営には新規買収の売上成長だけでなく、買収対価に対して残るキャッシュフローと利益を開示してほしい。
株主優待は継続保有者へのQUOカードで、年間の会社負担は詳細に開示されていない。分析では現状の株主構成と対象条件から年間約0.1億円、10年間で約1億円を便宜的に株主還元へ含めた。推計であり会社の実績開示ではない。余剰現金の株主への戻り方は、近年の増配と自社株買いの実績を評価し、帳簿の100%を価値に数える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
CIJの収益基盤は見かけほど脆くない。公共、金融、エネルギーなどの重要なシステムは、生成AIが普及しても突然なくならない。実際には古い仕様書が不完全で、例外処理の多いシステムほど移行の責任が重い。LeGradを支える構文解析技術と現場の経験は、単にコードを自動生成する技術とは違う価値を持つ。AIによる開発生産性の向上は競争を激しくするが、CIJが品質保証を含めた成果で契約できれば、技術者の人数を増やさず利益率を改善できる。
近年の実績も評価できる。2026年6月期には公共やエネルギーの需要が強く、売上高と営業利益がともに伸びた。顧客を大手SIerに持つため営業基盤の構築費用は相対的に少なく、顧客が設備投資を続ける限り一定の受注が見込める。直接契約が少ないことは弱点でもあるが、大手SIerとの強い関係は長期的な安定収入の源泉でもある。
さらに、企業の財務は健全である。純現金に加えて預金と有価証券を保有し、利益を稼ぎながら自社株買いと増配を続けてきた。技術者中心の事業は設備投資負担が軽く、既存の利益を比較的多く株主に分配できる。今後も買収を小規模にとどめ、LeGradやプライム案件の比率を着実に引き上げれば、利益率は上昇余地を持つ。
AI時代になっても、公共システムを完全に機械任せにすることは難しい。顧客の責任ある意思決定と稼働後の保証は残る。CIJが元請けや顧客から信頼される専門家集団であり続けるなら、今の事業基盤の多くを維持できる。長い期間の株主還元を含めれば、基準時点の価格を正当化する上振れも不可能ではない。
慎重な見方
最も深刻な問題は、CIJが提供する労働時間の多くが顧客にとって購入必須の数量ではなくなることである。AIエージェントが要件定義、コード生成、テスト、保守の定型部分を処理できるようになれば、元請けは従来と同じ人数を発注する必要がない。元請け自身がAIを利用するため、生産性向上の利益がCIJに残るとは限らない。実際、2026年6月期にもSIer経由の売上が増え、プライム比率は低下した。
LeGradは特色ある技術だが、それが永久に優位を保つ保証はない。大規模言語モデルは古いプログラムの解析と新しい言語への変換を得意とする方向へ進化している。機械変換に加え、業務の同等性を自動検証する技術が発達すれば、CIJ独自の構文解析技術と人間の経験による優位は一部薄れる。しかも、同社自身が開示するマイグレーション市場の見方でも、2030年代前半の後は需要の縮小が想定されている。
買収による規模拡大も慎重に見る必要がある。人的資産を保有する企業を過去の利益を基準に買収すれば、その利益がAIで減少したときに回収できないのれんが残る。売上高が増えても、一株当たりのオーナー利益と増分投資利回りが改善しなければ株主価値は増えない。
過去の利益率の下振れも忘れられない。2009年6月期の営業利益率は2.1%まで落ちた。事業そのものの存続が脅かされなくても、稼働率低下と受注単価の競争で利益が急減することはある。現在の株価が将来の改善をある程度織り込んでいる以上、重要なリスクは倒産ではなく、長期間にわたって資本コストに届かない株主利益しか得られないことである。
どちらに重みを置いたか
財務の健全性と技術的な特色には強気の主張を認める。ただし、2026年6月期のSIer売上比率82.6%、プライム比率17.4%という構成を見ると、成果報酬や独自製品へ転換できるまでの距離は長い。中立の段階で開発工数を縮小させているため、AIリスクをさらに資本コストへ加算していない。確率は会社固有の元請け依存、買収の実行リスク、独自製品の収益規模が不明なことを踏まえ、上側25%、中立34%、下側41%とした。純現金の厚さが悲観時の損失を一定程度抑えるものの、現在の時価総額との比較では慎重な結論が勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 451 円252 億円(+ 還元の換算額還元の合計 195 円109 億円)。 今の値に割り戻すと 361 円202 億円、今との差 −28.1%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 900 円502 億円 | 322 円180 億円 | +143.0% | +11.1% | 110 円61 億円 |
| やや楽観 | 16% | 705 円394 億円 | 260 円145 億円 | +91.8% | +8.0% | 154 円86 億円 |
| 中立 | 34% | 493 円275 億円 | 206 円115 億円 | +39.0% | +4.0% | 238 円133 億円 |
| やや悲観 | 26% | 226 円126 億円 | 152 円85 億円 | −24.8% | −3.5% | 98 円55 億円 |
| 悲観 | 15% | 207 円116 億円 | 99 円55 億円 | −39.3% | −5.7% | 46 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 451 円252 億円 | 195 円109 億円 | +28.5% | +3.0% | 646 円361 億円 |
今の株価時価総額 503 円281 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 専門技術と顧客関係が残り、高い採算を確保 利益 31 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 900 円502 億円
LeGradの解析・変換技術が、公共や金融の大規模システム移行で引き続き選ばれる。AIを使った変換やテストの自動化は進むが、顧客は障害時の責任、複雑な業務仕様の再現、安全な切り替えに対して十分な対価を支払う。CIJは単なる工数提供会社から、移行結果に責任を負う専門会社へ徐々に近づく。
NTTデータやSCSKなどとの長期関係は維持され、プライム比率も改善する。公共、エネルギーの案件では、上流工程と運用を含む契約が増える。AIによって生産性が高まった部分を元請けにすべて奪われず、案件の品質と納期の改善を利益率として残す。工数の実質数量は現在を超えないが、物価に沿った契約価格の引き上げが定着する。
買収先は小規模ながら専門性があり、技術者の育成と顧客の拡大に寄与する。大型のれん減損や不採算案件は避けられ、営業利益率は過去の好調期をやや上回る。増配と自社株買いを継続しながら必要な再投資も行い、長期の株主還元が維持される。AIを利益の源泉に転換できたことが、全社の収益性を守る結果となる。
- システム開発:数量 1,600(顧客へ提供した開発工数(人年相当、推定))× 価格 0.21(1人年当たりの開発売上高(億円、名目))→ 売上 334 億円・営業利益 37 億円。実質工数1.00倍、価格1.34倍。品質・上流工程の評価が定着し、営業利益率11.2%。
- コンサルテーション及び調査研究:数量 75.0(調査・コンサルティング案件(案件年相当、推定))× 価格 0.20(1案件年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。案件年1.00倍、価格1.34倍。高難度案件の継続で営業利益率12.5%。
- システム/パッケージ・インテグレーション:数量 180(年間の導入・更新案件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。導入案件1.00倍、価格1.34倍。導入技術と独自製品が一定の採算を確保。
- その他・運用保守:数量 440(年間の運用保守契約(契約年相当、推定))× 価格 0.07(1契約年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 4 億円。契約年1.00倍、価格1.34倍。高付加価値の運用保守が残り採算改善。
倍率:資本コストk=7.25%、10年以降の名目成長g=0%、moat=weak。事業ROEは約14.2%、将来の増分投資利回りRONICは約9.6%となるが、g=0%なので正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=13.79倍。楽観でも長期のAI代替が消滅したとはせず、式の上限をそのまま採用。2036年の余剰現金を90億円とし、税後受取利息1.26億円を純利益から外して、(31.15−1.26)×13.793+90×1.0≒502.3億円。
確率:長年の顧客関係とLeGradの技術がAI時代にも価値を保ち、プライム案件で採算を改善する筋書き。ただし、AI関連製品の独立した売上・受注額が確認できないため、楽観でも実質工数の数量は2026年水準を超えさせない。実現には複数の事業条件の同時達成が必要であり、確率は9%。
やや楽観 16% 工数は減るが高い稼働率と値上げが支える 利益 24 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 705 円394 億円
元請けのAI導入によって定型的な開発工数は減る。しかし、基幹系の更新、公共機関の制度対応、金融システムの刷新は引き続き必要とされる。CIJは複雑なシステムに精通した技術者を維持し、従来より少ない工数でも案件を収益化する。
大手SIerとの関係は続き、プライム案件の比率も少しずつ上がる。LeGradと福祉関連の導入支援は一定の専門性を保つが、全社を高成長の製品企業へ変えるほどには広がらない。元請けとの交渉は厳しくなるものの、物価に近い価格転嫁と安定した稼働率が利益を支える。
買収した企業の人員と技術はおおむね既存事業に統合され、大きな損失は発生しない。増配と自社株買いを続ける余地があり、財務の健全性も維持される。収益成長の速さよりも、残った案件から利益を取り、資金を株主に戻す経営へ移行する。
- システム開発:数量 1,360(顧客へ提供した開発工数(人年相当、推定))× 価格 0.21(1人年当たりの開発売上高(億円、名目))→ 売上 284 億円・営業利益 28 億円。実質工数0.85倍、価格1.34倍。高度な移行案件の採算改善。
- コンサルテーション及び調査研究:数量 63.8(調査・コンサルティング案件(案件年相当、推定))× 価格 0.20(1案件年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。案件年0.85倍、価格1.30倍。上流技術支援の需要を維持。
- システム/パッケージ・インテグレーション:数量 162(年間の導入・更新案件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。導入案件0.90倍、価格1.28倍。
- その他・運用保守:数量 396(年間の運用保守契約(契約年相当、推定))× 価格 0.07(1契約年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。保守契約年0.90倍、価格1.32倍。
倍率:k=7.25%、g_long=0%、moat=weak。2036年ROE約10.9%、RONIC約8.5%だが長期g=0%なので正当化PERは13.79倍。現在や過去のPERは参照しない。余剰現金80億円の税後受取利息1.12億円を控除し、(23.85−1.12)×13.793+80≒393.5億円。
確率:顧客関係が残り、AIで減る開発工数の一部を単価と専門性で補う筋書き。実質数量は主力開発で0.85倍とし、売上増をAI製品の架空の成功に依存させない。プライム案件の伸びに一定の根拠はあるが、比率改善の遅れがあるため確率16%。
中立 34% AIで販売工数が減り、堅実だが小さくなる事業 利益 15 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 493 円275 億円
日本のITサービス市場全体は拡大するが、成長の中心はクラウド、AIの導入基盤、独自ソフトウェア、業務成果型のサービスへ移っていく。大手SIerはAIエージェントを使って開発工数を削減する。CIJは既存の重要顧客を維持するものの、従来と同じ人月を販売することはできなくなる。
LeGradの技術は古いシステムの移行で価値を保つ。だが、首都圏の大型案件が徐々に一巡し、地方市場への展開では小規模案件と価格競争が増える。公共と金融の専門技術者は必要だが、元請けへの交渉力を大きく改善するには至らない。システム開発の実質販売工数は現在の65%程度となる。
経営は買収と採用を抑制し、利益率とキャッシュフローを優先する。従業員を急激に減らす必要はないが、新規採用の縮小や退職者の補充抑制によって販売工数の減少に対応する。運用保守は開発より底堅く、現金と有価証券が財務を支える。増配は鈍化するが、利益に応じた配当と小規模な自社株買いは継続できる。
- システム開発:数量 1,040(顧客へ提供した開発工数(人年相当、推定))× 価格 0.20(1人年当たりの開発売上高(億円、名目))→ 売上 211 億円・営業利益 17 億円。人月型の中立範囲。実質工数0.65倍、価格1.30倍。価格上昇は物価1.34倍を下回る。
- コンサルテーション及び調査研究:数量 48.8(調査・コンサルティング案件(案件年相当、推定))× 価格 0.19(1案件年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。案件年0.65倍、価格1.25倍。定型的な調査・資料作成の代替を反映。
- システム/パッケージ・インテグレーション:数量 126(年間の導入・更新案件数(件、推定))× 価格 0.08(1案件当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。導入案件0.70倍、価格1.25倍。実装作業とパッケージの競争を反映。
- その他・運用保守:数量 330(年間の運用保守契約(契約年相当、推定))× 価格 0.06(1契約年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。契約年0.75倍、価格1.28倍。継続保守の責任は残るが監視・一次対応を自動化。
倍率:k=7.25%、g_long=0%、moat=weak。中立のROEは14.70÷198=7.42%で資本コストをわずかに上回り、RONICは約7.31%。g=0%のため正当化PERの上限は1÷0.0725=13.793倍。中立もこの上限そのものを使用し、AIを理由としてさらに倍率を割り引かない。2036年の余剰現金90億円の税後受取利息1.26億円を控除し、(14.70−1.26)×13.793+90≒275.4億円。
確率:受託開発中心の事業構成を考慮し、人月型の中立数量を2036年に0.55〜0.75倍の範囲とした。現時点のプライム比率、独自製品売上の不透明さ、公共・金融の一定の需要を併せて、主力開発は0.65倍を中心とする。中心の筋書きとして34%。
やや悲観 26% 元請けの内製化と自動化で案件が減る 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 226 円126 億円
大手SIerが要件整理からコード生成、テストまでの工程を標準化し、社内のAIエージェントで処理する割合を高める。開発案件そのものが消えるわけではないが、CIJに発注される人月は大きく減少する。顧客との長期の関係は維持されても、更新契約の単価と工数が引き下げられる。
LeGradは難度の高い移行案件に残るものの、一般的な言語変換ではAI利用の競合が増える。首都圏でのレガシー更新が一巡し、地方の新規開拓には時間と営業費用がかかる。買収で増やした人員の稼働率は低下し、退職や再配置によって調整する間も人件費が利益を圧迫する。
運用保守は一定の契約が残るが、一次対応や監視は自動化される。利益率は縮み、ROEは資本コストを下回る。経営は買収を停止し、配当と自社株買いを利益水準に合わせて縮小する。財務の厚さによって存続は維持されるものの、株主が期待していた増益企業としての地位は失われる。
- システム開発:数量 880(顧客へ提供した開発工数(人年相当、推定))× 価格 0.19(1人年当たりの開発売上高(億円、名目))→ 売上 165 億円・営業利益 8 億円。実質工数0.55倍、価格1.20倍。稼働率低下と元請けによる単価引き下げ圧力。
- コンサルテーション及び調査研究:数量 41.3(調査・コンサルティング案件(案件年相当、推定))× 価格 0.18(1案件年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。案件年0.55倍、価格1.17倍。調査作業のAI代替。
- システム/パッケージ・インテグレーション:数量 99.0(年間の導入・更新案件数(件、推定))× 価格 0.07(1案件当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。導入案件0.55倍、価格1.12倍。標準的なパッケージ導入の自動化。
- その他・運用保守:数量 264(年間の運用保守契約(契約年相当、推定))× 価格 0.06(1契約年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。保守契約年0.60倍、価格1.20倍。継続契約の一部が失われる。
倍率:2036年ROE約3.9%はk=7.25%を下回る。g_long=0%の稼ぐ力の上限1÷k=13.79倍は超えない。競争力と増分再投資利回りの低下により、やや悲観の継続利益の価値を11.8倍と評価する。将来の余剰現金45億円に対応する税後利息0.63億円を控除し、(7.50−0.63)×11.8+45≒126.1億円。市場の過去PERやPBRは根拠に使用していない。
確率:大手SIerによるAI導入と外注階層の圧縮が進み、CIJの販売工数が中立より大きく減る筋書き。会社固有の元請け依存、プライム比率の低さ、買収による固定費の増加を考えると無視できない。悲観を含む下側の確率を35%以上とし、やや悲観には26%を配分。
悲観 15% 人月商売の構造が崩れ、資産価値が中心になる 利益 2 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 207 円116 億円
大手SIerはAIエージェントを標準的な開発手段として採用し、従来の下請け階層を大幅に圧縮する。CIJのような中堅の受託会社が担ってきた開発、テスト、保守作業の一部は元請け内部で完結する。発注が残るのは複雑な障害対応や人間の確認が不可欠な案件だが、競争は厳しく、販売工数と実質単価はともに大きく落ちる。
LeGradの構文解析技術も競争力を失う。旧来言語の変換に必要だった人間の知識がAIによって広く利用可能となり、複数の競合が同じ種類のサービスを提供する。CIJは高難度案件の一部を維持するものの、従来の開発量を戻せない。買収した企業の統合にも失敗し、のれんや無形資産の回収可能性が低下する。
経営は人員を縮小し、研究開発や新規採用を絞るが、システム品質と既存顧客への責任を完全には放棄できない。その結果、営業利益率は2%前後まで低下する。純利益は小さく、ROEは資本コストに遠く及ばない。増配と大規模な自社株買いは継続できず、残された現金と売却可能資産が少数株主の経済的な下支えとなる。会社は存続しても、かつての優良な収益力は取り戻せない。
- システム開発:数量 672(顧客へ提供した開発工数(人年相当、推定))× 価格 0.16(1人年当たりの開発売上高(億円、名目))→ 売上 110 億円・営業利益 2 億円。実質工数0.42倍、価格1.05倍。元請けの内製化と競争で採算が大きく悪化。
- コンサルテーション及び調査研究:数量 30.0(調査・コンサルティング案件(案件年相当、推定))× 価格 0.15(1案件年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。案件年0.40倍、価格据え置き。固定的な専門人員費用が残り赤字。
- システム/パッケージ・インテグレーション:数量 72.0(年間の導入・更新案件数(件、推定))× 価格 0.06(1案件当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。導入案件0.40倍、価格据え置き。ソフト標準化と価格競争。
- その他・運用保守:数量 220(年間の運用保守契約(契約年相当、推定))× 価格 0.06(1契約年当たりの平均売上高(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。契約年0.50倍、価格1.10倍。監視と一次対応の大部分が自動化。
倍率:2036年のROE約1.0%はk=7.25%を大きく下回り、継続利益の資本還元価値は限定的である。したがって現在の自己資本150億円を起点とし、純現金と売却可能資産の床約115億円を優先する。PBRは115.5÷150=0.77倍であり、過去の谷のPBRから採った数字ではない。将来の自己資本190億円に倍率を掛けず、稼ぐ力が損なわれた会社の現在資産価値を評価した。
確率:AIエージェントによる工数減少、元請けの内製化、LeGradの技術的差別化の低下、買収した人員の低稼働が重なる構造的敗北。事業そのものは残るが利益率は過去の深い谷に近づく。財務の厚さから破綻確率は低いため、悲観には15%を配分し、純現金と売却可能資産を床とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
システム開発
大手SIer向けの受託開発、公共・金融・情報通信・エネルギー分野のシステム構築、レガシーマイグレーションを含む。売上品目では全体の約84.7%。AI代替の型は人月・工数型。
| 数量顧客へ提供した開発工数(人年相当、推定) | 価格1人年当たりの開発売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,600 | 0.16 | 249 | 21 |
| 10 年後 中立 | 1,040 | 0.20 | 211 | 17 |
取り方:2026年6月期有報のシステム開発売上249.366億円を使用。会社は販売工数を公表していない。連結従業員約1,765人、外部協力会社の利用、国内の開発単価水準を踏まえ、売上を生む工数を約1,600人年、平均売上を年約1,559万円、月約130万円と推定した。これは社員実人数や開示済み契約単価ではない。IDCの国内ITサービス市場約7.57兆円に対する売上相当シェアは約0.33%。プロジェクト型市場を仮に全体の40〜55%とすると、開発市場は約3.0〜4.2兆円、同社のシェアは約0.6〜0.8%と推定される。競合はNTTデータ、SCSK、TIS、DTS、システナ等。営業利益21.35億円は全社利益を品目ごとの採算を考慮して仮配分した値であり、開示値ではない。
コンサルテーション及び調査研究
公共、エネルギー、情報通信分野を中心とする技術調査、システム企画、上流工程の支援。全社売上の約3.9%。AI代替の型は人月・工数型。
| 数量調査・コンサルティング案件(案件年相当、推定) | 価格1案件年当たりの平均売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 75.0 | 0.15 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 48.8 | 0.19 | 9 | 1 |
取り方:2026年6月期有報のコンサルテーション及び調査研究売上11.402億円を使用。契約件数と案件単価は非開示のため、75案件年、1案件年約1,520万円という年額換算の仮定を採用した。IDCの国内コンサルティング市場2025年約1兆4,554億円からビジネスコンサルティング約8,822億円を除いたITコンサルティング約5,732億円と比較すると、売上相当シェアは約0.20%。CIJの調査研究には純粋なITコンサル以外も含まれるため厳密な市場シェアではない。営業利益は非開示のため仮配分。
システム/パッケージ・インテグレーション
公共分野のシステム導入支援、福祉総合システムなどのパッケージ導入・組み合わせ業務。全社売上の約3.8%。独自製品収益もありうるが分離開示がなく、人月型の導入支援を基本とする。
| 数量年間の導入・更新案件数(件、推定) | 価格1案件当たりの平均売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 180 | 0.06 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 126 | 0.08 | 10 | 1 |
取り方:2026年6月期有報のSI/PI売上11.166億円を使用。導入件数は開示されていないため、年180案件、平均約620万円と仮定した。比較可能な専用市場の確定値がなく、国内ITサービスのプロジェクト型市場を約3.0〜4.2兆円と仮置きするとシェアは約0.03%。同市場はシステム開発と重複するため、各品目の市場規模を合算してはならない。製品ライセンス単独の継続課金割合が不明であり、記録の正本型の堀は認定しない。営業利益は仮配分。
その他・運用保守
情報通信分野などのシステム運用、保守、技術支援を中心とする。全社売上の約7.6%。継続性はあるが監視・一次対応・定型作業はAIエージェントによる代替対象とする。
| 数量年間の運用保守契約(契約年相当、推定) | 価格1契約年当たりの平均売上高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 440 | 0.05 | 22 | 3 |
| 10 年後 中立 | 330 | 0.06 | 21 | 2 |
取り方:2026年6月期有報のその他売上22.315億円を使用。保守契約数は非開示のため、年440契約相当、平均約507万円と推定した。矢野経済研究所の国内マネージドサービス市場は2024年度約3兆3,040億円で、翌年を名目7%増と仮定した市場約3.5兆円に対し、売上相当シェアは約0.06%。CIJのその他売上と調査対象は完全一致せず、目安に過ぎない。年ごとの契約更新数ではなく、収益を生む契約年を数量とする。営業利益は仮配分。
リスクと懸念
AI エージェント代替
最も重大な長期リスクである。CIJの売上の約85%はシステム開発であり、元請けが開発工数を購入する契約に大きく依存している。AIエージェントがプログラム生成、テスト、障害解析、仕様書作成を代行するほど、発注人月の総量が減少する。CIJ自身がAIを利用しても、その利益を元請けが価格交渉で取り込む可能性がある。中立の数量縮小とg_long=0%に反映し、資本コストの寿命項目には重ねていない。
大手SIerへの依存と値決め力の弱さ
2026年6月期のSIer経由売上比率は82.6%である。特定の顧客1社への依存は以前より低下しているが、契約構造として元請け企業全体に依存する形は変わっていない。元請けが内製化や外注先の再編を進めた場合、CIJが築いた顧客関係だけでは販売工数を守れない。人材不足を理由にした値上げが、今後もそのまま通用するとは限らない。
LeGradの技術優位と市場寿命
LeGradは20年以上の開発と実務経験を背景とする特徴的なサービスだが、技術変化によって優位の一部が失われる可能性がある。生成AIによるプログラム理解、変換、検証の自動化が進めば、構文解析技術の希少性は下がりうる。また、首都圏の大型レガシー移行が一巡する可能性を会社自身が認識しており、地方への展開が収益性を維持できるかは未確定である。
M&Aと増分投資利回りの低下
同業買収は顧客と技術者を増やすが、買収価格が将来のキャッシュフローに見合わなければ株主価値を損なう。2026年6月期末には約7.5億円ののれんがあり、今後の買収で増える可能性がある。労働集約的な受託会社の買収に対し、AI普及前の利益率や人員数をそのまま評価すれば、想定した投資回収ができなくなる。買収後の利益率、キャッシュフロー、のれんの回収状況が重要となる。
公共・金融の案件損失と品質責任
公共、金融、エネルギー向けシステムは重要性が高く、障害や納期遅延が許されにくい。受託開発では仕様変更や作業工数の見積もり違いによって、一つの案件が利益を大きく圧迫する。2025年6月期には一部案件で想定以上のコストが発生し、2026年6月期の改善にはその反動も含まれている。利益率の上昇が恒常的な値上げ力を示すと早合点すべきではない。
余剰現金と株主還元の継続性
純現金は下値を支えるが、買収資金、運転資金、人件費、研究開発費に使われれば少数株主の取り分は減る。現在の配当と自社株買いは評価できるものの、中期計画で将来の総還元性向やDOEを明確に約束しているわけではない。利益が減少した場合、経営が現金を抱えたまま低収益の事業拡大へ向かう危険がある。保有する資金の金額だけでなく、実際の還元と投資成果を見る必要がある。
見かけの成長率と株主利益の乖離
売上高がM&Aで増えても、既存事業の受注工数と単価が同じように増えているとは限らない。近年の増収には買収企業の連結効果もある。今後は既存事業の売上成長率、買収先の増分利益、開発工数の生産性向上を分けて見なければならない。会社全体の売上だけを見て高成長が継続すると判断すると、AIによる数量減少を発見する時期が遅れる。
今後の分かれ目
- プライム比率が2030年までに23%以上となり、独自製品・成果型契約の収益が開示で確認できたら
- 元請け依存の低下と価格決定力の改善を認める。人月型の数量縮小を緩和し、実証された収益部分については将来のg_longを見直す。ただし、記録の正本型には定量的な堀の証拠が2つ以上必要である。
- AI駆動開発の普及後も、既存事業の実質受注工数と平均単価が3年以上維持されたら
- 中立の実質数量0.65倍という見立てを再検証する。維持が一時的な移行需要によるものか、顧客が高度な成果へ対価を払っているものかを分けて判断する。
- SIer経由の売上比率が85%を超え、プライム比率が15%未満へ下がったら
- 元請けによる生産性向上の利益をCIJが獲得しにくい構造が強まったと判断する。中立の価格上昇と利益率を下げ、やや悲観の事業条件を重視する。
- LeGradの契約額、継続顧客数、利益率が開示され、高い価格決定力が複数年実証されたら
- 構文解析と移行責任から得られる独自の利益を、一般的な工数売上と分けて評価する。強い堀を持つ部分の価値を高める余地がある。
- 同業買収が続く一方、のれん償却前後の利益、営業キャッシュフロー、ROICが悪化したら
- 買収資金が資本コストを超える価値を生んでいないとみなし、買収による数量拡大を取り消す。減損の可能性も含めて悲観側を検討する。
- 年間の配当と自社株買いが利益の7割前後で維持され、余剰現金が減らずに推移したら
- 余剰現金を株主価値にほぼ全額反映する前提を維持する。逆に増配も買い戻しも停止し、低収益の買収に資金が回るなら、現金の戻り方を引き下げる。
- 営業利益率が5%未満へ低下し、売上減少と買収先の低稼働が重なったら
- 一時的な不採算案件ではなく事業構造の変化かを確認する。AI代替の数量縮小が実際に始まっていれば、やや悲観から悲観への移行を検討する。
見ておくもの
- 四半期と年度の売上品目別実績、とくにシステム開発の既存事業成長率
- SIer経由売上比率とプライム比率の推移。2026年6月期の82.6%と17.4%を起点とする
- LeGradの売上、契約件数、顧客更新率、案件当たり利益率の開示
- 開発工数、技術者稼働率、人月単価、AI駆動開発による工数削減と契約価格の変化
- 第7次中期経営計画の売上高310億円、営業利益27.5億円の進捗
- 2030年の売上高340億円以上、プライム比率23%以上という目標の実現状況
- 営業キャッシュフローから設備投資と買収支出を引いた実質的な資金創出
- インフォテックソリューションとトレンドアートを含む買収先の増分利益とのれん残高
- 現金同等物、3か月超定期預金、流動有価証券、満期付き債券の構成
- 配当総額、自社株取得額、自己株式を除く株数の減少と総還元率
倍率と資本コストの決め方
株価を見てから事業成長率や倍率を逆算することはしていない。2026年6月期の4品目の開示売上を起点として、工数・案件・契約年という実質数量と名目価格を分けた。中立では人月・工数型の数量を10年で0.55〜0.75倍とし、価格は物価10年1.34倍以下とした。数量の縮みとg_long=0%にAI代替を反映しており、資本コストの寿命や市場のPERから追加的な懲罰的調整は行っていない。
資本コスト7.25%とg_long=0%から、楽観から中立の正当化PERは13.793倍となる。実際のROEと将来の増分投資利回りは確認しつつ、利益の質を理由にその上限からさらに割り引いていない。悲観は現在の純現金、定期預金、売却可能債券、債権の回収価値を検討し、のれんなどを除いた約115億円を床とした。2026年末ではなく2036年6月期末の時価総額と10年間の還元を現在価値へ戻す。
株価579円と基準株数55,830,484株から計算した時価総額は323.26億円である。5筋書きの現在価値は約201.8億円、差は約マイナス37.6%であり「割高」となる。現在の株価に近づけるために倍率、利益率、確率を調整していない。なお、新リース会計基準によって将来の貸借対照表表示が変わる可能性があるが、事業の評価は現行の費用認識に相当する比較可能な営業利益ベースで統一した。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%を基準とする。景気循環の小ささと純現金の厚さが資本コストを下げる一方、元請け側の交渉力が値決め力を弱める。AI代替とM&Aの成否は利益の筋書きで扱い、上乗せ金利にはしない。