結論
AI insideは、請求書や申込書などをAIで読み取り、企業の事務作業を自動化する「DX Suite」を主力とするソフトウェア会社である。筆者の結論は「割高」だ。既存の顧客基盤と厚い預金資産には確かな価値がある。しかし、10年先の利益が現在より大きく伸びると考えるには、技術の変化に対する証拠がまだ足りない。
2026年3月期の売上高は約47.5億円で、その大半が継続課金である。契約数は3,203件に達し、月次の売上解約率は低い。顧客の業務に組み込まれ、帳票処理の面倒を引き受けていることは強みだ。もっとも、2027年3月期第1四半期の契約数は3,136件と前期末を下回った。足元の成長は、契約の大幅な増加よりも、既存顧客の利用量と費用効率の改善によって支えられている。
最大の問題は、10年後に「OCRを使って入力する」という仕事そのものがどこまで残るかである。AIエージェントが請求書の理解、照合、承認、基幹システムへの登録まで行うなら、専用OCRの操作画面や利用契約は不要になりうる。同社もDX Suiteのエージェント化やLeapnet、専用ハードウェアで対抗しているが、新事業が主力の減少を補う収益源になったとの金額的な証拠は十分ではない。
加えて、過去の買収で多額の減損を計上した後、2026年には新たなAI開発会社の買収を決めた。これは成長の選択肢を広げる一方、株主の現金を再び事業拡張に投じる判断である。10年後の中立的な企業価値は現在の時価総額をやや下回り、そこから資本コストを反映した本質価値はさらに低い。確率加重した現在価値は約33億円、基準時価総額約81億円に対して約6割低いという試算になった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、AI insideには一つの魅力と二つの難しさがある。魅力は、実際に料金を払う顧客が3,000件を超え、業務の一部に組み込まれた製品が存在することだ。まだ利益を出していない研究開発会社とは違い、帳票を処理するたびに価値を提供し、継続収入を得ている。現金及び預金も厚く、短期の業績悪化でただちに事業継続が危うくなる状態ではない。
最初の難しさは、10年後も同じ形で顧客が料金を払い続けるかを予測しにくいことである。帳票を読み取る必要は残っても、ユーザーが専用の操作画面を開く必要は消えるかもしれない。今の顧客との連携実績は乗り換えの障壁だが、AIエージェントが会計処理や承認まで引き受ける時代には、その障壁の位置が変わる。ソフトの機能が優秀であることと、株主が10年後も高い利益率を受け取れることは同じではない。
二つ目の難しさは資本配分だ。研究開発費は毎年必要であり、2025年には過去の買収に伴う減損も発生した。2026年の新しい買収や推論機器の開発が成功すれば、事業の寿命は伸びる。しかし、現金を使うたびに株主が受け取れる利益が増えるとは限らない。今の預金残高に価値を認めると同時に、それが将来も残るかを疑う必要がある。
筆者が買値を判断するときには、技術の将来性よりも、変化に負けても回収できる金額を重視する。楽観的な製品構想をすべて実現できると期待するより、主力契約が徐々に減る場合にも耐えられる価格がほしい。今回の基準時価総額には、そのための安全域が十分に見えない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は「DX Suite」である。顧客企業は紙や画像の帳票を読み取らせ、データを確認し、販売管理や会計などのシステムに受け渡す。金融機関、自治体、一般企業などが利用し、販売代理店やOEM提供も顧客への重要な経路になっている。クラウドで提供するほか、社内に機器を置く「AI inside Cube」によって、情報を外部へ出しにくい業務にも対応する。
料金の入り方は三つに分けられる。2026年3月期には固定料金が約37.0億円、従量料金が約6.9億円、その他の継続収入と機器販売などが約3.6億円だった。固定料金は契約の積み重ねが効き、従量料金は読み取る帳票や項目の増加が効く。会社全体は会計上「人工知能事業」の単一セグメントなので、以下の区分は利益の源泉を調べるための経済的な区分であり、会社が公表した事業別損益ではない。
2026年3月末のDX Suite契約は3,203件で、Liteが1,506件、Standard・Proが1,488件、Edgeが209件だった。クラウドの利用者アカウントは77,975人に達し、同年第4四半期の月平均読取項目数は3.9億個である。会社が公表する契約数と処理量を使えば、おおよその顧客単価と処理単価を推定できる。ただし、無料利用枠、代理店経由の料金、リクエストと読取項目の違いがあるため、実際の請求単価とは一致しない。
次の柱として、AIエージェントを作成・連携する「Leapnet」、自社開発モデル「PolySphere」、オンプレミス向けのCubeを展開する。2026年10月には新しい推論用機器「Cube Atlas」の提供を始めた。顧客がAIを安全に運用する需要には合うが、製品ごとの独立した売上高は十分に開示されていない。事業全体を新製品の急成長とみなすのは早い。
2026年9月には、AI開発コンサルティングを手掛けるWanderlustの株式70%を取得する方針を発表した。対象会社の直近売上高は約2.4億円で、AIの構想から実装までを担う人材を得る取引である。買収前の2026年3月期のAI insideの売上には含めず、10年後の筋書きだけに別建てで反映した。人が設計・実装する仕事は顧客との関係を深める反面、AIエージェント自身によって工数が減る可能性もある。
優良さと弱いところ
最も評価できるのは、実際に利用され続けている顧客基盤である。DX Suiteの月次売上解約率は、直近12カ月平均で0.66%だった。帳票の種類ごとの設定、例外処理、基幹システムとの連携には手間がかかり、顧客は認識精度がわずかに違うだけで簡単に乗り換えるわけではない。自治体や金融機関にはオンプレミス提供や情報管理への要求もあり、この部分は一般的な操作画面だけのソフトより守りが強い。
ただし、解約率0.66%は年率ではなく月率であり、単純に年換算すると約7.6%の売上解約に相当する。また、会社が約100億回の日本語業務データ処理実績を訴求していても、それが独占的に利用できる学習データであるとまでは確認できない。法的な記録の正本を管理しているのは顧客側の基幹システムであり、同社がその地位を握っているわけではない。強固な独占的基盤として高い永続成長を認めるには、証拠が不足している。
値決め力には小さな実績がある。2026年7月にはDX Suite Liteの月額基本料金を3万円から4万円に改定した。しかし、これは一つの料金プランでの改定であり、10年間にわたって物価並みの値上げができる証明ではない。Google、Microsoft、AWSなどが文書理解をAI基盤に組み込めば、認識機能の単価はむしろ下がりやすい。
資本効率も、過去の最高益だけを見れば判断を誤る。2021年3月期には営業利益率が50%を超えた一方、直近2026年3月期は6.5%まで低下した。研究開発、顧客開拓、推論基盤への投資が継続的に必要であり、追加投資の利回りが資本コストを上回るとの確認はできない。純現金が厚いことは強みだが、投資先を誤れば現金自体が失われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のOCR需要は、定型帳票のデータ化から、生成AIで内容を理解する非定型帳票へ移っている。デロイト トーマツ ミック経済研究所によれば、国内OCRソリューション市場は2023年度に570億円強で、当時のAI-OCR分野は高い成長率を示した。ただし、この市場にはソフトのライセンスだけでなく、システム構築、コンサルティング、BPO、保守も含まれる。DX Suiteの売上高をそのまま割って正式な市場シェアを計算することはできない。
競争相手は、インフォディオの「スマートOCR」、Cogent Labsの「SmartRead」、LINE WORKS OCR、ウイングアークの「invoiceAgent」などである。2025年1月のBOXILによる導入関与者1,588人への調査では、利用製品の構成比はスマートOCRが21.32%、SmartReadが18.04%、DX Suiteが16.84%だった。これは導入経験に基づく調査で、ベンダー売上高シェアではない。一方、同社が示すAI-OCRライセンス売上首位という調査実績も、細かなシェア率は公開情報だけでは確認できない。二つの調査は定義を分けて扱う必要がある。
さらに大きな競争相手は、個別のOCR製品ではなくクラウドAI基盤そのものである。Microsoft Azure AI Document Intelligence、Google Document AI、AWSの文書処理機能は、ほかの業務AIサービスと一体で提供しやすい。AIエージェントが書類を理解して取引を完了するようになると、利用企業が専用OCRを選ぶ機会自体が減る。反対に、機密情報を外部へ出せない企業や公共部門では、国内運用、閉域環境、専用推論機器が差別化になる余地がある。
会社は2029年の関連市場を合計6.7兆円規模と示すが、生成AI、AIエージェント、既存ソフトを束ねた広い概念である。AI insideが現実に獲得できる売上高の市場と同一視すべきではない。筆者は市場全体の名目成長を否定しない。それでも、専用OCRの契約数はAI基盤への統合によって減り、業界の成長率と同社の成長率が大きく分かれると考える。
2036年に向けては、既存の専用OCR契約の数量が縮む一方、帳票処理の実物量そのものは残るとみる。強気ではDX Suiteの調査上の存在感を保ち、中立では利用製品シェアが現在の調査値から相当低下する。実務の電子化が広がることと、独立したOCR事業者の取り分が増えることは別の話である。
資本政策と M&A
過去の資本配分は慎重に評価する必要がある。2022年にはaiforce solutionsを約16.7億円で買収したが、2025年3月期には関連するのれんなどに約6.9億円の減損損失を計上した。事業を買い、期待した収益を得られなかった経験である。これだけで今後の買収が失敗すると決めつけないが、経営者が新しい技術を見つける力と、株主資本を高利回りで運用する力は分けて評価したい。
2026年9月30日に発表したWanderlustの株式70%の取得価額は約7億円で、諸費用を含む概算は約7.5億円である。2026年10月中の実行予定とされたが、基準時点で実行完了の確認はできていない。取得先の直近営業利益は約0.31億円であり、AI開発人材と顧客接点への対価としては小さくない。今後は利益の上積みだけでなく、取得後の営業キャッシュフローと減損の有無で成果を判断すべきだ。
2026年3月末の現金及び預金は約47.7億円、借入金は10億円だった。添付の純現金約25.7億円は現金同等物を基礎とし、これとは別に3カ月超の定期預金12億円がある。預金全体から借入金を引いた金額は約37.7億円となる。将来の買収支出と運転資金を控除した余剰部分だけを株主価値に含めている。
直近の配当はなく、一般株主に向けた大規模な自己株買いの実績も確認できない。2026年の自己株式処分や信託関連の取引を、株主還元目的の買戻しと混同してはいけない。2030年に向けた中期事業成長ビジョンは製品と事業展開の方向を示すが、複数年度の売上高、営業利益、ROEに関する拘束力のある数値目標、および配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束なし。2027年3月期単年度については売上高52.3億円、営業利益5.23億円、純利益3.62億円を予想している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
DX Suiteは単なる文字認識ソフトから、書類の理解、照合、入力、後続業務の実行まで担う業務AIへ進化している。会社はすでにAIエージェント機能を主力製品へ実装し、独自モデルのPolySphereを更新している。AIエージェントによる代替を恐れるだけでは、既存顧客を持つ企業が新技術を顧客へ販売できる利点を見落とすことになる。一般的な大規模言語モデルに精度があっても、実際の企業では帳票の例外処理、権限管理、監査、既存システムへの接続が必要だからだ。
既存顧客の粘着性も軽視できない。月次の売上解約率は0.66%で、クラウド利用者数と読取項目数は伸びている。とりわけ金融機関や自治体では、外部の汎用クラウドへ機密文書を送れない場合がある。Cube Atlasのような専用推論機器と、LeapnetのAI連携機能を一体にすれば、単価競争から離れて運用全体を受託できる余地がある。Liteプランの料金改定も、既存契約に対する値決め力の兆候と見ることができる。
Wanderlustの買収は、構想から実装までを提供するための不足した人材を補う。製品だけを販売するより、大企業の現場に入り込んだほうが新しい利用用途を発見しやすい。2027年3月期第1四半期には営業利益率の回復も見え始めた。顧客数を大きく伸ばさなくても、処理能力の改善と社内業務の自動化で費用が下がれば、現在の売上規模から十分に高い利益を生み出せる可能性がある。
さらに、預金資産が厚いため時間を買うことができる。独自モデルの開発に失敗したとしても、既存顧客向けサービスを維持し、より有力な外部モデルを組み込む選択肢がある。重要なのはモデル自体の性能競争で必ず勝つことではなく、顧客の仕事を動かす位置を守ることだ。
慎重な見方
最大の危険は、製品の性能が向上しても、製品に対する独立した支払いが減ることだ。AIエージェントは書類を読み取るだけでなく、内容を検証し、基幹システムを直接操作する。MicrosoftやGoogleなどの大手クラウド事業者が、この機能を他の業務サービスと一括提供すれば、顧客がDX Suiteを別途契約する理由は薄れる。高い認識精度や独自のAIモデルは価値ある技術だが、技術単体で価格決定力を守るのは難しい。
業績にも注意すべき兆候がある。2021年3月期に50%を超えた営業利益率は、2026年3月期には6.5%となった。売上高が増えても研究開発費や販売管理費が膨らめば、株主の取り分は増えない。2027年3月期第1四半期の利益改善も、契約数が前期末を下回る状態で起きたものであり、安定した数量成長が再開した証拠ではない。月次0.66%の売上解約率も年率に直すと無視できない規模になる。
過去の買収で約6.9億円の減損を計上した後、再び約7.5億円の買収に踏み出す資本配分は厳しく見るべきだ。Wanderlustが手掛ける設計・開発・実装は優秀な人材への依存が強く、AIエージェント自身が工数を減らす対象でもある。顧客のために効率化を進めるほど、自社が請求できる人月が減る矛盾を抱える。新しい事業が既存製品の減少分を補えるかは、まだ検証されていない。
また、現金が厚いことと、現金を一般株主へ返すことは別である。これまで無配であり、経営者は研究開発と買収を優先してきた。仮に帳簿上の純資産が積み上がっても、低い資本効率で使い続ければ、それを額面どおり株式価値にはできない。10年後の株主価値を守るためには、成長より先に投資規律を示す必要がある。
どちらに重みを置いたか
既存契約の粘着性、情報管理への対応、専用推論機器という強みは認める。一方、解約率は年率で見れば決してゼロに近くなく、独自データや規制対応によって顧客の記録の正本を握る企業でもない。新しいAI事業について、主力の減少を埋めるほどの独立した売上実績はまだ確認できない。
確率は楽観側30%、中立32%、悲観側38%とした。下に寄せる理由はAI代替そのものを二度罰するためではなく、2025年の買収減損という資本配分の実績と、2026年の契約数の伸び悩みが重なっているためだ。数量と長期成長率にはすでにAI代替を反映しており、資本コストの事業寿命には重ねていない。価値を最も左右するのは、新しい製品が顧客の業務を握り、売上と利益を伴って旧製品に代わるかどうかである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,685 円67 億円(+ 還元の換算額還元の合計 35 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 823 円33 億円、今との差 −56.4%、 期待の年率 −0.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,335 円133 億円 | 201 円8 億円 | +87.1% | +6.7% | 354 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,582 円103 億円 | 75 円3 億円 | +40.6% | +3.5% | 532 円21 億円 |
| 中立 | 32% | 1,770 円71 億円 | 0 円0 億円 | −6.4% | −0.7% | 566 円23 億円 |
| やや悲観 | 25% | 816 円33 億円 | 0 円0 億円 | −56.8% | −8.1% | 204 円8 億円 |
| 悲観 | 13% | 501 円20 億円 | 0 円0 億円 | −73.5% | −12.4% | 65 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,685 円67 億円 | 35 円1 億円 | −9.0% | −0.9% | 1,721 円69 億円 |
今の株価時価総額 1,890 円75 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 既存顧客を守り、AI実装の利益率が大幅に改善 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,335 円133 億円
DX Suiteは、帳票を読み取る道具から、業務を実行するAIへ進化する。顧客の内部システムとの接続や、金融・公共分野で必要な運用管理を提供し続けることで、専用OCR市場が小さくなっても既存契約の絶対数を維持する。新たに契約数を大きく増やすのではなく、利用方法を変えながら残った顧客から十分な料金を得る姿である。
Cube AtlasとLeapnetは、一般的なクラウドAIだけでは満たしにくい閉域環境や業務連携の需要を取り込む。買収したWanderlustは大型案件の実装を助けるが、人月を際限なく増やして成長するわけではない。社内でもAIによって開発、営業支援、顧客対応が効率化し、研究開発を続けながら高い営業利益率を回復する。
2025年の買収減損の教訓が生かされ、追加買収を抑制して現金を残す。限定的な株主還元も実行されるため、既存株主は利益の一部を期間中に回収できる。ただし、この筋書きでもかつての極端な利益率への回帰までは要求しない。
- DX Suite固定料金・業務ソフト利用契約:数量 3,203(DX Suite利用契約数(件。年度末実数))× 価格 0.01(契約1件当たり年間固定料金収入(億円。代理店経由を含む実現単価))→ 売上 43 億円・営業利益 9 億円。専用契約数は現状を維持。名目単価1.15倍。研究開発費と本社費配賦後の営業利益率20%。
- DX Suite従量料金・帳票AI処理:数量 46.8(読取項目数(億項目/年。直近四半期の月平均から年換算))× 価格 0.17(読取1項目当たり実現従量収入の代理単価(円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。処理量は現状維持。単価1.15倍。性能向上がコスト削減につながる。
- Cube・Leapnet・その他継続収入・販売収入:数量 209(Edge契約数を用いた関連事業の活動量代理指標(件))× 価格 0.02(Edge契約1件を代理分母としたその他収入(億円/件))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。既存活動量維持。機器・AI基盤の売上構成改善により単価1.34倍。
- WanderlustのAI開発・実装コンサルティング:数量 8.0(実装・開発案件換算数(件/年。対象会社の売上高から作った推定))× 価格 0.40(案件1件当たり年間売上の代理単価(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。買収先の推定年8案件を維持し、案件単価を物価相当の1.34倍とする。
倍率:資本コストk=7.75%、10年を超える名目成長率g_long=0%。事業純利益は8.326-45×1.4%=7.696億円。2036年のROEは約8.8%でkを超えるが、長期gが0なので正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=1/k=12.903倍となる。事業価値約99.30億円に余剰現金45億円の株主帰属率75%を加える。AI代替をPERで二重に減額しない。
確率:独自モデルの改良、顧客の既存システムへの深い連携、推論機器の提供が同時に機能する場合。ただし新しいAIエージェント事業の独立売上実績が十分に開示されていないため、楽観でも主力契約数を現在超にはしない。2026年の契約数の伸び悩みや過去の買収減損を考えれば、好条件の連続実現には高い確率を与えられない。
やや楽観 20% 既存顧客の大半が残り、収益性を立て直す 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,582 円103 億円
AIエージェントの普及で専用OCRの新規契約は減るが、金融機関や公共部門、既存システムを長く使う企業でDX Suiteが残る。新しい汎用AIサービスに移る企業もあるため、契約数は現在より少なくなる。それでも帳票の複雑な例外処理と安全な運用が評価され、残った顧客に対して一定の価格を保てる。
Leapnetは既存製品との連携機能として使われ、Cube Atlasは閉域環境向けの案件を少しずつ獲得する。Wanderlustの実装力によって製品の導入が円滑になるが、工数の自動化が進むため受託件数自体は縮む。競合に全面的に勝つのではなく、利用用途を限定して利益を確保する姿である。
研究開発の対象を絞り、過去の大型買収のような失敗を繰り返さなければ、利益率は現在から改善する。経営者が少額の株主還元を始め、必要以上の現金を抱え込まないことも株主価値を下支えする。
- DX Suite固定料金・業務ソフト利用契約:数量 2,979(DX Suite利用契約数(件。年度末実数))× 価格 0.01(契約1件当たり年間固定料金収入(億円。代理店経由を含む実現単価))→ 売上 39 億円・営業利益 6 億円。契約数0.93倍、名目単価1.14倍。全社共通費用を内部配賦済み。
- DX Suite従量料金・帳票AI処理:数量 44.0(読取項目数(億項目/年。直近四半期の月平均から年換算))× 価格 0.16(読取1項目当たり実現従量収入の代理単価(円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。処理量0.94倍、単価1.12倍。汎用AIとの競合下でも高難度帳票が残る。
- Cube・Leapnet・その他継続収入・販売収入:数量 199(Edge契約数を用いた関連事業の活動量代理指標(件))× 価格 0.02(Edge契約1件を代理分母としたその他収入(億円/件))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。活動量0.95倍、単価1.30倍。物理機器の需要が下支えする。
- WanderlustのAI開発・実装コンサルティング:数量 6.8(実装・開発案件換算数(件/年。対象会社の売上高から作った推定))× 価格 0.39(案件1件当たり年間売上の代理単価(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。買収先実績の案件量0.85倍、単価1.28倍。工数の削減を織り込む。
倍率:k=7.75%、g_long=0%なので、10年後のROEが資本コストを下回っていても、利益を成長させない正当化PERの上限1/k=12.903倍を用いる。余剰現金40億円の税後利息0.56億円を純利益から除き、事業純利益5.66億円を評価する。現金40億円は75%の戻り方で30億円として足す。
確率:顧客の乗り換え負担や販売チャネルの強さを考えれば、競争が厳しくても契約の大半を守る余地はある。ただし、AI基盤による機能統合と旧来型OCRの値付け圧力を考慮し、契約数の純増は前提にしない。
中立 32% 中立:専用OCR契約は縮むが、利益と現金は残る 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,770 円71 億円
2036年にも帳票処理の需要は残る。しかし、書類を読み取るためだけに専用ソフトを契約する企業は減る。会計、販売管理、ワークフローを動かすAIエージェントが、文字認識を機能の一部として含むからだ。DX Suiteは既存顧客との接続、帳票処理の例外対応、閉域環境での運用によって一定の顧客を守るが、専用OCRの契約数は現在より2割ほど少なくなる。
2026年7月のLite料金改定は初期の収入を支える。それでも、10年を通じて全製品の価格を物価と同じだけ上げられるとは限らない。一般的な認識機能の料金には下押し圧力がかかり、長期の実現単価は小幅な上昇にとどまる。LeapnetやCubeは主力製品を補うものの、独立した大きな収益の柱にはまだ育たない。
買収したWanderlustでは業務の自動化によって提供工数が減り、売上高の伸びは限られる。一方、AI inside自身も開発・運用の効率を改善し、収益の急崩れは避ける。蓄積した利益の多くは会社内に残り、ROEは低下する。会社は存続し、黒字も保つが、かつての高成長企業ではなく、現金を持つ小規模な業務AI企業として落ち着く。
- DX Suite固定料金・業務ソフト利用契約:数量 2,562(DX Suite利用契約数(件。年度末実数))× 価格 0.01(契約1件当たり年間固定料金収入(億円。代理店経由を含む実現単価))→ 売上 32 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替の操作画面・利用契約型。数量0.80倍、価格1.07倍。物価1.34倍を下回る。
- DX Suite従量料金・帳票AI処理:数量 37.4(読取項目数(億項目/年。直近四半期の月平均から年換算))× 価格 0.16(読取1項目当たり実現従量収入の代理単価(円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。汎用AIへの内包で専用処理量0.80倍、単価1.07倍。
- Cube・Leapnet・その他継続収入・販売収入:数量 146(Edge契約数を用いた関連事業の活動量代理指標(件))× 価格 0.02(Edge契約1件を代理分母としたその他収入(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。導入作業等の代替を含む混合型。活動量0.70倍、名目単価1.22倍。
- WanderlustのAI開発・実装コンサルティング:数量 5.2(実装・開発案件換算数(件/年。対象会社の売上高から作った推定))× 価格 0.37(案件1件当たり年間売上の代理単価(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型。案件換算数量0.65倍、単価1.24倍。
倍率:中立の10年後ROEは3.884÷80.32=約4.8%でk=7.75%を下回る。利益に追加投資しても超過収益を得るとはみなさず、10年超の名目成長率g_long=0%による稼ぐ力の上限PER1/k=12.903倍を採用する。純利益から将来余剰現金36億円に対する税後利息0.504億円を除いた事業純利益3.38億円を評価し、余剰現金の75%相当27億円を加える。事業価値と現金価値を二重計上しない。
確率:現時点で確かなのは既存の継続課金収入と顧客基盤であり、新しいAIエージェント事業による大幅な増収ではない。契約数減少と名目単価の小幅上昇が同時に起こり、内部のAI活用による効率化が収益力を守るケースを中心とする。
やや悲観 25% 大手AI基盤に顧客を奪われ、低収益化する 利益 2 億円 · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 816 円33 億円
MicrosoftやGoogleなどが業務用AI基盤を拡張し、文書理解からデータ登録までを一体で提供する。企業は既存のOCR契約の更新時に、機能が重なる製品を整理するようになる。DX Suiteは高度な帳票や閉域運用には残るが、新規顧客の開拓より解約や契約規模の縮小が目立ち、契約数は現在の6割程度になる。
従量処理も汎用AIサービスへ移り、単価を十分に上げられない。Cubeなどの機器は一部で必要とされるが、販売数量が細るため研究開発費と販売費を吸収しにくい。Wanderlustの実装案件も、AIによる開発工数の削減と顧客の内製化によって減少する。高い専門性が残っても、請求できる工数が増えない。
それでも全製品が消えるわけではない。既存顧客との関係を維持することで営業黒字を保ち、現金の一部も温存する。配当や自社株買いがほとんど行われず、利益の使い方への不満は残る。もはや高い成長倍率で評価する事業ではなく、限られた稼ぐ力と売却できる資産の価値が株式を支える。
- DX Suite固定料金・業務ソフト利用契約:数量 1,986(DX Suite利用契約数(件。年度末実数))× 価格 0.01(契約1件当たり年間固定料金収入(億円。代理店経由を含む実現単価))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。契約数0.62倍、名目単価1.03倍。運用固定費の負担で営業利益率が低下。
- DX Suite従量料金・帳票AI処理:数量 28.1(読取項目数(億項目/年。直近四半期の月平均から年換算))× 価格 0.15(読取1項目当たり実現従量収入の代理単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。専用処理量0.60倍、単価横ばい。
- Cube・Leapnet・その他継続収入・販売収入:数量 115(Edge契約数を用いた関連事業の活動量代理指標(件))× 価格 0.02(Edge契約1件を代理分母としたその他収入(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。活動量0.55倍、単価1.10倍。導入・保守工数が減少。
- WanderlustのAI開発・実装コンサルティング:数量 3.6(実装・開発案件換算数(件/年。対象会社の売上高から作った推定))× 価格 0.35(案件1件当たり年間売上の代理単価(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.45倍、単価1.15倍。人月事業の構造的な縮小。
倍率:事業純利益1.821-22×1.4%=1.513億円。ROEがk=7.75%を大幅に下回るため、事業の継続的な稼ぐ力の正当化PER上限は1/k=12.903倍。既存契約を失い続ける不確実性を考え、やや悲観の残存事業のPERは10.6倍とする。事業価値16.04億円と余剰現金22億円の75%である16.5億円を加える。これは稼ぐ力と余剰現金による上限を超えず、純資産を積み上げてPBR評価したものでもない。
確率:汎用AIが帳票理解を基本機能として提供し、専用OCRの継続利用が縮むケース。過去の大口顧客・販路への依存による業績変動、2026年の契約伸び悩みを背景に無視できない。ただし主力の減少は中立数量にも反映済みなので、さらに過大な悲観確率にはしていない。
悲観 13% 専用OCRの存在意義を失い、資産価値に依存する 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 501 円20 億円
帳票の読み取り、照合、承認、システムへの登録がAIエージェントに一体化され、顧客は専用OCR契約を大幅に整理する。DX Suiteの契約は現在の半分以下となり、従量処理も多くが大手クラウドや顧客の自社AIへ移る。残存顧客は高い安全性や旧システムとの連携を必要とする企業に限られ、数量の減少を価格改定で補えなくなる。
Cubeの機器需要も限定され、Leapnetは独立した販売基盤として定着しない。Wanderlustは人材の流出や自動化による単価圧力に直面する。売上規模が縮む一方、既存契約の保守、研究開発、機器更新、オフィス費用は簡単に消せない。営業損失が続き、企業としての成長価値はほぼ失われる。
経営は追加投資と買収を抑え、保有する資産と残存顧客の整理を進める。前半に稼いだ利益と後半の損失・減損がおおむね相殺し、自己資本は現在の水準にとどまる。会社が必ず清算されるとは想定しないが、株主価値を支える中心は残った事業利益ではなく、最終的に回収可能な預金等の資産になる。
- DX Suite固定料金・業務ソフト利用契約:数量 1,377(DX Suite利用契約数(件。年度末実数))× 価格 0.01(契約1件当たり年間固定料金収入(億円。代理店経由を含む実現単価))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。契約数0.43倍、単価0.94倍。顧客維持の固定費を回収できず赤字。
- DX Suite従量料金・帳票AI処理:数量 17.8(読取項目数(億項目/年。直近四半期の月平均から年換算))× 価格 0.13(読取1項目当たり実現従量収入の代理単価(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。専用処理量0.38倍、価格0.88倍。汎用AIに価格競争で敗れる。
- Cube・Leapnet・その他継続収入・販売収入:数量 62.7(Edge契約数を用いた関連事業の活動量代理指標(件))× 価格 0.02(Edge契約1件を代理分母としたその他収入(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。機器・関連サービスの活動量0.30倍、単価横ばい。
- WanderlustのAI開発・実装コンサルティング:数量 1.6(実装・開発案件換算数(件/年。対象会社の売上高から作った推定))× 価格 0.30(案件1件当たり年間売上の代理単価(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.20倍。低稼働で人件費を回収できない。
倍率:2036年の純利益が赤字であり、事業利益に正当化PERを掛けて正の事業価値を求めることはしない。床の基準は今の自己資本約49.4億円であって、10年間の留保利益を積み上げた額ではない。回収可能な預金等の資産価値約20億円を企業価値の中心に据え、20÷49.4=PBR約0.405倍とする。のれんや再投資で回収できないソフトウェア価値を床へ加えず、過去に減損済みののれんも再び資産として数えない。
確率:AIエージェントが帳票処理を吸収し、汎用クラウドへの統合で専用ソフトの価格決定力がほぼ消える構造的な敗北。買収先の収益化も進まない複合事象だが、既存顧客・預金資産があるため、直ちに倒産や株主価値ゼロになるとは想定しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
DX Suite固定料金・業務ソフト利用契約
クラウドとEdgeを含むDX Suiteの継続利用料。契約数と、各料金プランの構成に左右される年間実現単価で収入を得る。
| 数量DX Suite利用契約数(件。年度末実数) | 価格契約1件当たり年間固定料金収入(億円。代理店経由を含む実現単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,203 | 0.01 | 37 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,562 | 0.01 | 32 | 4 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書の固定料金売上3,699,729千円を37.0億円として使用。2026年3月末契約3,203件で割り、年間実現単価を約115.5万円とした。期中平均件数ではなく期末件数で割るため代理変数であり、契約上の平均販売価格そのものではない。Lite・Standard・Pro・Edgeの料金が異なることを含む。2026年5月の直販月額はLite3万円、Standard10万円、Pro20万円で、Liteは同年7月に4万円への価格改定を公表。全社が単一会計セグメントであるため営業利益2.96億円は本社費・研究開発費も内部配賦した推定値。AIリスク区分は席・操作画面型業務ソフトとし、中立の実質数量0.80倍、価格1.07倍。
DX Suite従量料金・帳票AI処理
帳票の読み取りや非定型データの抽出に応じて発生する従量収入。業務処理量が増えるほど収入が増えるが、汎用AI基盤への統合による単価下落の影響を受ける。
| 数量読取項目数(億項目/年。直近四半期の月平均から年換算) | 価格読取1項目当たり実現従量収入の代理単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 46.8 | 0.15 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 37.4 | 0.16 | 6 | 1 |
取り方:有報の従量料金売上687,798千円を6.878億円として使用。決算説明資料の2026年3月期第4四半期月平均読取項目3.9億個を12倍し、年換算46.8億項目とした。6.878億円÷46.8億項目で約0.147円。実際は1リクエストで複数項目を読め、無料枠やトークン課金もあるため、請求上の1項目単価ではない。期末の処理量を年換算していることも誤差要因。市場全体の処理量は拡大しても専用OCRを介した量のシェアは低下するとみて、中立数量0.80倍、価格1.07倍。営業利益は本社費配賦後の推定。
Cube・Leapnet・その他継続収入・販売収入
オンプレミス用機器、関連ソフト、AI基盤の導入、その他のサービスを含む混合収入。物理的な機器はAIエージェントに直接置き換わらないが、導入作業やソフト部分には代替圧力がある。
| 数量Edge契約数を用いた関連事業の活動量代理指標(件) | 価格Edge契約1件を代理分母としたその他収入(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 209 | 0.02 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 146 | 0.02 | 3 | 0 |
取り方:有報で継続課金の「その他」100,289千円とセリング型260,129千円を合算して3.60418億円。正式な事業別数量と単価は非開示のため、決算説明資料のEdge契約209件を関連サービスの活動量代理指標に採用し、1件換算約172.4万円とした。Edgeの209件は固定料金区分のDX Suite契約数にも含まれるが、ここで重複計上しているのは数量の代理指標だけであり、売上高は有報の収益区分で重複なく分けた。この推定単価を実際の機器販売単価と解釈してはいけない。導入支援・ソフト部分はAI代替による人月・画面型の影響を受けるため中立数量0.70倍、名目価格1.22倍。機器の物価・部品コスト上昇とサービスの値下げが混在する。営業損失は研究開発・共通費の暫定配賦である。
WanderlustのAI開発・実装コンサルティング
2026年9月に子会社化方針を公表した企業のAI戦略、モデル開発、実装支援。買収前はAI insideの会計売上に含めない。
| 数量実装・開発案件換算数(件/年。対象会社の売上高から作った推定) | 価格案件1件当たり年間売上の代理単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.30 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 0.37 | 2 | 0 |
取り方:2026年9月30日の株式取得公表資料に記載された対象会社の2026年3月期売上約2.41億円、営業利益約0.31億円を使用。会社は案件数を開示していないため、2.41億円を仮の年8件で割って1件0.30125億円とした。8件という数字は実測ではない。AI insideの2026年3月期売上への連結寄与は0であり、シナリオだけに買収後の対象会社売上100%を加算する。純利益は非支配株主30%への帰属を考慮する。人月・工数で売る事業に分類し、中立の案件数量は買収先実績に対して0.65倍、価格1.24倍とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替による専用OCR需要の縮小
AIエージェントが帳票の理解から照合、承認、会計システムへの登録までを自動化すれば、顧客は独立したOCRの操作画面や契約を減らせる。DX Suite自身もエージェント化を進めているが、MicrosoftやGoogleなどが基盤機能として提供した場合、既存契約の数量と単価の両方が下がりうる。中立の数量と長期成長率に代替圧力を織り込み、資本コストには同じ理由を重ねていない。
主要顧客・販売代理店への依存
DX Suiteは直接販売だけでなく代理店やOEM経由でも広がってきた。大きな販売先が契約条件を変えたり、他社のAI機能へ乗り換えたりすると、個々のエンドユーザーの満足度とは別に契約数が動く。2027年3月期第1四半期の契約数は前期末比で減少した。今後は契約数だけでなく、販売経路別の獲得、解約、既存顧客単価の動きを確認する必要がある。
買収の再失敗と資本配分
aiforce solutionsの買収後には約6.9億円の減損が生じた。今回のWanderlust取得は約7.5億円の投資であり、2026年3月末自己資本の約15%に相当する。人材と顧客基盤に対する対価を回収できるかはまだ分からない。買収後の営業利益が増えても、のれん償却、追加投資、非支配株主持分、現金支出を合わせて見ると株主の利益が増えない可能性がある。
独自AIモデルと推論機器への投資負担
PolySphereやCube Atlasには、顧客の安全なAI利用を支える役割がある。しかし、モデルの精度競争や推論機器の性能競争は進歩が速く、研究開発の成果が長く独占的利益につながるとは限らない。AI insideが独自モデル開発を続けるほど、資本力の大きいクラウド事業者との競争にも近づく。投資額が増えても製品別の売上と利益が伸びなければ、増分の資本利益率は低下する。
現金の取り崩し・金利・リース固定費
2026年3月末には定期預金を含めた純現金が約37.7億円あるが、買収と研究開発に使用すれば減る。借入金約10億円の金利は将来の借り換え時に上がりうる。2026年3月末の解約不能なオペレーティング・リースの未経過支払額は約4.1億円あり、売上が落ちても固定支出は残る。現預金の全額を直ちに株主へ分配できる資産とみなさない。
情報管理事故と信用の毀損
金融機関や自治体向けに帳票データを扱う事業では、情報管理への信用が大切である。2026年10月には外部のコミュニティサービスへの不正アクセスに伴う会員情報漏えいを公表した。ただし、当該公表ではDX Suite等の製品への不正アクセスは確認されていない。外部サービスの事故と製品本体の安全性を混同せず、今後は製品側の事故、委託先管理、復旧費用の発生を監視する。
今後の分かれ目
- DX Suiteの契約数が四半期ごとに減り、売上解約率も持続的に上昇したら
- 中立の契約数0.80倍でも楽観的すぎる可能性がある。固定料金事業の数量を引き下げ、やや悲観の見込みを再評価する。利用者数だけの増加では補えない。
- LeapnetやCube Atlasの独立売上高、粗利益、継続契約が定量開示され、旧OCRの減収を実際に上回ったら
- AIエージェントを自社の売り物として収益化した証拠となる。新事業を独立セグメントで再評価し、上側の数量と長期成長率の制約を見直す。
- Lite値上げ後も解約率が低水準を保ち、Standard・Proにも価格改定が広がったら
- 顧客の乗り換え負担と価格決定力を再評価する。実現単価の長期上昇率を上げられるが、単なる料金表の改定ではなく、契約数と売上の維持を条件とする。
- Wanderlust取得後の利益・営業キャッシュフローが開示され、取得原価を上回る増分資本利益率が確認できたら
- 過去の買収減損への警戒を一部緩める。逆に追加減損や大型の資金投入が必要になれば、余剰現金と株主への戻り方を引き下げる。
- 現預金が大きく減った一方で営業利益・フリーキャッシュフローが改善しなかったら
- 現金による床の根拠が弱くなる。買収、機器開発、定期預金の解約、借入返済の内訳を確認して床を更新し、悲観の時価総額を見直す。
- 配当政策やまとまった自社株買いの実施が決まり、一般株主へ資本を返す実績が生まれたら
- 現金の戻り方を0.75から1.0へ変更する余地がある。追加還元の総額と実施時期を確認し、10年の期間中還元と終価の現金を二重に数えずに評価する。
見ておくもの
- DX Suite契約数の四半期推移とLite・Standard/Pro・Edgeの構成
- 月次売上解約率の12カ月平均と既存顧客の実現単価
- 月平均読取項目数・リクエスト数と従量料金売上の関係
- LeapnetとCube Atlasの独立売上、採算、継続顧客の開示
- Wanderlustの株式取得完了、のれん計上額、買収後の利益とキャッシュフロー
- 現金及び預金、3カ月超定期預金、借入金、設備・ソフトウェア投資の残高
- 2027年3月期の会社予想と契約数3,895件という目標の達成状況
- 株主還元方針の変更と譲渡制限付株式報酬による希薄化
- Microsoft・Google・AWSの文書理解と業務AI機能の料金体系
倍率と資本コストの決め方
現在の株価2,040円、株数3,989,560株による基準時価総額は約81.39億円である。価値の筋書きはこの数字から逆算していない。有報の固定料金・従量料金・その他売上を分け、契約数と読取項目数から実現単価を推定し、買収予定の人月事業を別に加えた。AIエージェント代替は中立数量とg_long=0%に反映したが、資本コストの寿命には重ねていない。
資本コストは7.75%、楽観から中立のPERはg_long=0%による正当化上限1/kの12.903倍とした。やや悲観は縮む事業の稼ぐ力と現金、悲観は今の自己資本に対する回収可能資産の床で評価した。過去・現在・同業のPERやPBRを根拠にしていない。2026年3月期の一時的な補助金収入は正常化し、3カ月超定期預金は一度だけ計上した。将来の現金残高はシナリオ仮定であって測定値ではない。
5筋書きの終価は133.05、103.03、70.61、32.54、20.00億円の順となり、確率は10%、20%、32%、25%、13%で合計100%となる。期間中還元を5年目に集約し、終価を10年割り引くと現在価値は約32.84億円、現時価総額との差は約-59.6%で「割高」となる。これは現在の株価に合わせるための調整結果ではなく、将来収益、回収可能な現金、株主還元の不確実性から生じた差である。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の質による0.25%を加えた。株価のベータや小型株という理由だけの上乗せはしない。買収失敗やAI代替は数量、利益率、資産回収の筋書きで扱う。